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特許7454752既知座標点と対応する線路走行距離及びオフセットを逆算する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】既知座標点と対応する線路走行距離及びオフセットを逆算する方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20240314BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20240314BHJP
【FI】
G06F30/10 100
G06F30/20
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023532264
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 CN2021079198
(87)【国際公開番号】W WO2022141792
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】202011581402.7
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521269702
【氏名又は名称】チャイナ レールウェイ ナンバー2 エンジニアリング グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CHINA RAILWAY NO.2 ENGINEERING GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.16, Tongjin Rd., Jinniu Dist. Chengdu, Sichuan 610031 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ウェイユー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ヂャン
(72)【発明者】
【氏名】ヂョウ シー
(72)【発明者】
【氏名】ワン カオシォン
(72)【発明者】
【氏名】リィゥ リーヂォン
(72)【発明者】
【氏名】ジィァン ファ
(72)【発明者】
【氏名】イェン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ホー ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥァン タイシォン
(72)【発明者】
【氏名】グゥォ ピン
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-100148(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111597509(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111998867(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110348170(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110045730(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
G06F 30/20
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知座標点と対応する線路走行距離及びオフセットを人間がコンピュータを用いて又は用いずに逆算する方法であって、
0)線路の施工対象領域に実際にある建物又は目標点に対応するP点の座標を、前記建物又は目標点の位置を実測することで取得し、
1)線要素の曲線因子を既知とし、曲線要素の回転角βを取得し、曲線要素を予め設定された大きさの回転角に基づいてn段のサブ曲線要素に分け、且つ曲線要素の曲線因子及び各段のサブ曲線要素の回転角に基づいて対応するサブ曲線要素の曲線因子を算出し、曲線要素の回転角は0°以上であり、サブ曲線要素の回転角は180°より小さく且つ0°以上であり、
2)第i段のサブ曲線要素の始点A と終点B との接続線を弦線A とし、O 点を弦線A の中点とし、第i段サブ曲線要素の曲線因子及びP点座標に基づいて直線回転角θ 及びA 又はB の長さS を算出し、そのうち、直線回転角θ は方位t AiBiと方位t OiPとの夾角であり、直線回転角θ は180°より小さく且つ0°以上であり、方位t AiBiはA からB に、方位t OiPはO からP点に向かい、
3)A 又はB の長さS が予め設定された精度より大きいという循環条件を満たすと、以下の3-1)~3-3)を行い
3-1)θ <90°であれば、修正走行距離L `=L Ai+S とし、式中、L Aiは第i段サブ曲線要素の始点走行距離であり、第i段サブ曲線要素の曲線因子に基づき、修正走行距離L `に対応する第i段サブ曲線要素における修正点の座標及びその第i段サブ曲線要素の修正点における接線方位を算出し、修正点を始点とし、B 点を終点とする第i段修正サブ曲線要素を得て、
3-2)θ ≧90°であれば、修正走行距離L `=L Bi-S とし、式中、L Biは第i段サブ曲線要素の終点走行距離であり、第i段サブ曲線要素の曲線因子に基づき、修正走行距離L `に対応する第i段サブ曲線要素における修正点の座標及びその接線方位を算出し、修正点を終点とし、A 点を始点とする第i段修正サブ曲線要素を得て、
3-3)続いて第i段の修正サブ曲線要素を用いて第i段のサブ曲線要素を代替し且つステップ2)に代入し、
又はB の長さS が予め設定された精度より大きいという循環条件を満たさない場合、P点から 点までの距離F OiP`を算出し、その距離F OiP をP点に対応する第i段のサブ曲線要素のオフセットに等しいとみなし、第i段のサブ曲線要素の始点走行距離と終点走行距離の中間走行距離をP点に対応する第i段のサブ曲線要素の走行距離とし、ステップ4)に進み、
4)P点がそれぞれ全てのサブ曲線要素に対応する走行距離及びオフセットを逆算出するまでに、全てのサブ曲線要素に対してステップ2)からステップ3)までを繰り返し、実際に確定されたP点の有効走行距離及び有効オフセットと合わせて、最終的にM曲線要素が位置する線路設計段階の実行可能性を判断し又はP点に対応する構造物施工段階の値と設計値との偏差を判断し、
そのうち、曲線因子は曲線要素又はサブ曲線要素の始点と終点の走行距離、半径、接線方位及び座標を含み、曲線要素の任意の走行距離点の接線方位はいずれも走行距離増大方向に向かい、nとiはいずれも0より大きい整数であることを、含む、
ことを特徴とする既知座標点と対応する線路走行距離及びオフセットを逆算する方法。
【請求項2】
ステップ1)において、曲線要素の回転角は180°以上であれば、曲線要素を同じ第一回転角を有するm段のサブ曲線要素及び第二回転角を有する0~2段のサブ曲線要素に分け、n=m又はn=m+1又はn=m+2であり、そのうち、mは0より大きい整数であり、第一回転角及び第二回転角はいずれも180°より小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の既知座標点と対応する線路走行距離及びオフセットを逆算する方法。
【請求項3】
ステップ1)において、n≧2であれば、第1段サブ曲線要素の終点走行距離から第n段サブ曲線要素の終点走行距離まで順に大きくなり、
a、曲線要素の始点から開始し、曲線要素の始点を第1段サブ曲線要素の始点とし、第1段サブ曲線要素の回転角と合わせて、シンプソンの公式を用いて第1段サブ曲線要素の曲線因子を算出し、
b、続いて第1段サブ曲線要素の終点を第2段サブ曲線要素の始点とし、第2段サブ曲線要素の回転角と合わせて第2段サブ曲線要素の曲線因子を算出し続け、上記ステップaとbを繰り返して全てのサブ曲線要素の曲線因子を算出し、
或いは、c、曲線要素の終点から開始し、曲線要素の終点を第n段サブ曲線要素の終点とし、第n段サブ曲線要素の回転角と合わせて、シンプソンの公式を用いて第n段サブ曲線要素の曲線因子を算出し、
d、続いて第n段サブ曲線要素の始点を第n-1段サブ曲線要素の終点とし、第n-1段サブ曲線要素の回転角と合わせて第n-1段サブ曲線要素の曲線因子を算出し続け、上記ステップcとdを繰り返して全てのサブ曲線要素の曲線因子を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の既知座標点と対応する線路走行距離及びオフセットを逆算する方法。
【請求項4】
ステップ3)において、シンプソンの公式を用いて修正走行距離L `に対応する第i段のサブ曲線要素における修正点の座標及び第i段のサブ曲線要素の修正点における接線方位を算出する、ことを特徴とする請求項1に記載の既知座標点と対応する線路走行距離及びオフセットを逆算する方法。
【請求項5】
ステップ1)が終了した後、ステップ2)が開始する前に、サブ曲線要素の有効性を判断し、有効サブ曲線要素を選択してステップ2)に進み、サブ曲線要素始点A の法線と終点B の法線は点D に交差し又は互いに平行であれば、サブ曲線要素始点A の法線と終点B の法線は平面を切断して複数の領域を形成し、P点と同一の領域に位置するサブ曲線要素は有効サブ曲線要素である、ことを特徴とする請求項1に記載の既知座標点と対応する線路走行距離及びオフセットを逆算する方法。
【請求項6】
方位t Aiが方位t AiPへ向かう回転角γ i1及び方位t Biが方位t BiPへ向かう回転角γ i2を計算し、γ i1<0且つγ i2>0であれば、当該サブ曲線要素は有効サブ曲線要素であり、逆であれば無効サブ曲線要素であり、そのうち、t Ai、t Biは第i段のサブ曲線要素の始点A と終点B の右法線方位であり、時計回りに回転する回転角を正と設定し、γ i1とγ i2の絶対値はいずれも180°より小さい、ことを特徴とする請求項5に記載の既知座標点と対応する線路走行距離及びオフセットを逆算する方法。
【請求項7】
ステップ3)において、予め設定された精度は2mm以下である、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の既知座標点と対応する線路走行距離及びオフセットを逆算する方法。
【請求項8】
ステップ3)において、循環条件を満たさない場合、P点からA 弦線の中点O 点までの距離F OiP`を計算し、その距離F OiP をP点が第i段のサブ曲線要素に対応するオフセットの絶対値に等しいとみなし、P点が第i段のサブ曲線要素に対応するオフセットF OiPの計算式は以下のとおりである:
OiP=F OiP`×sign(sin(t OiP-t AiBi))
OiP<0であれば、P点が第i段サブ曲線要素の走行距離増加方向の左側にあると定義し、F OiP>0であれば、P点が第i段サブ曲線要素の走行距離増加方向の右側にあると定義する、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の既知座標点で対応する線路走行距離及びオフセットを逆算する方法。
【請求項9】
ステップ4)において、P点に対応するオフセットと走行距離を複数算出すると、絶対値が小さいものから大きいものまでのうち最初のいくつかの組のオフセット及びそれらのオフセットに対応する走行距離を選択して、P点に対応する曲線要素の有効オフセットと有効走行距離とする、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の既知座標点と対応する線路走行距離及びオフセットを逆算する方法。
【請求項10】
ステップ4)において、P点に対応する曲線要素のオフセットと走行距離を複数算出すると、絶対値が所定閾値より小さいオフセット及びそれらのオフセットに対応する走行距離を選択して,P点に対応する曲線要素の有効オフセットと有効走行距離とする、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の既知座標点と対応する線路走行距離及びオフセットを逆算する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工事技術分野に関し、特に既知の座標点と対応する線路走行距離及びオフセットを逆算する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道、道路等の線路工事の設計、施工において、常に既存の建物又は他の物体が線路工事の赤線範囲内にあるか否か、施工される路盤、橋梁が設計位置まで施工されるか否か、トンネル覆工の任意点が建築限界に侵入するか否か等を予め決定する必要がある。一般的なやり方は関連する建物又は目標点の実際の座標を測定し、続いて当該座標に対応する線路走行距離及びオフセットを算出する。さらに逆算値を設計走行距離に対応するオフセットと比較し、関連建物が線路工事の赤線範囲内にあるか否か、実測された路盤が設計幅まで埋め立てられるか否か、橋梁橋脚が設計位置まで施工されるか否か、トンネル断面が建築限界に侵入するか否かを確定することができる。上記方法によって、既存構造物と線路との関係、及び線路の走行方向を確定することができ、且つ計算結果に基づいて施工を指導する。実際の線路工事において、既存の構造物に対応する線路走行距離及びオフセットの逆算方法により線路を設計する実現可能性を予め評価し、多くの問題を事前に回避することができる。従って、設計、施工前及び施工中に、既存構造物と建設中の構造物の対応する設計線路の走行距離とオフセットに対して繰り返し計算と確認を行い、実用性と恒常性を有する技術的方法である。
【0003】
従来のいくつかの計算方法は、現在見ると、その計算方式に制限され、これらの方法は応用する時に依然としていくつかの克服しにくい問題が存在する。例えば既知点を用いて曲線要素の始点とし、接線と垂線とを作成し、且つ接線垂線距離(すなわち、接線と垂線とのy軸上の切片の和)を累積し、接線垂線距離は段階的に近づき、という逆算方法である。ある既知の点は増加する接線垂線距離に応じて新たな走行距離を得た後、P点が新たな接線に対する足はまた小さい走行距離方向に位置する可能性があり、それにより繰り返し計算して閉ループを形成する。走行距離を計算する際に、ある既知の点で点の接線の垂線を作成し、足が本曲線要素を超える可能性があり、これらの状況は正しい結果を逆算できないか又は閉ループを引き起こし、逆算が失敗する。また解析方法の列方程式によって解く試みもあり、このような方法は高次方程式を解く必要があり、全体の計算が非常に困難であり、実際の使用効果がよくない。そのため得られた座標、曲線因子等のデータに基づき、任意の回転角の任意の曲線要素に対し、計算が常に収束して効果的であり且つ求めるのが比較的簡単な線路走行距離及びオフセットを逆算する方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、任意の回転角に対して走行距離逆算を行うことができず、計算結果が必ずしも収束して有効でなく及び計算が困難である等の従来技術に存在する問題を克服し、得られた座標・曲線因子等のデータに基づき、任意の回転角に対して、計算が常に収束して有効であり且つ求めるのが比較的簡単な走行線路距離及びオフセットを逆算する方法を提供することである。
【0005】
具体的には、本発明は以下の技術的解決手段を提供する:
既知座標点と対応する線路走行距離及びオフセットを逆算する方法であって、特徴は、以下のステップを含むことである:
1)P点の座標と曲線要素の曲線因子を測定し、曲線要素の回転角βを取得し、ここでP点は施工対象領域の実際の位置である。曲線要素を予め設定された大きさの回転角に基づいてn段のサブ曲線要素に分け、且つ曲線要素の曲線因子及び各段のサブ曲線要素の回転角に基づいて対応するサブ曲線要素の曲線因子を算出する。曲線要素の回転角は0°以上であり、サブ曲線要素の回転角は、180°より小さく且つ0°以上である。
【0006】
2)第i段のサブ曲線要素の始点A と終点B との接続線を弦線A とする。O 点を弦線A の中点とし、第i段サブ曲線要素の曲線因子及びP点座標に基づいて直線回転角θ 及びA 又はB の長さS を算出する。そのうち:直線回転角θ は方位t AiBiと方位t OiPとの夾角であり、直線回転角θ は、180°より小さく且つ0°以上である。方位t AiBiはA からB に、方位t OiPはO からP点に向かう。
【0007】
3)A 又はB の長さS が予め設定された精度より大きい循環条件を満たすと、以下の判定及び修正を行う:
θ <90°であれば、修正走行距離L `=L Ai+S とし、式中、L Aiは第i段サブ曲線要素の始点走行距離である。第i段サブ曲線要素の曲線因子に基づき、修正走行距離L `に対応する第i段サブ曲線要素における修正点の座標及びその接線方位を算出し、修正点を起点とし、B 点を終点とする第i段修正サブ曲線要素を得る。
【0008】
θ ≧90°であれば、修正走行距離L `=L Bi-S とし、式中、L Biは第i段サブ曲線要素の終点走行距離である。第i段サブ曲線要素の曲線因子に基づき、修正走行距離L ``に対応する第i段サブ曲線要素における修正点の座標及びその接線方位を算出し、修正点を終点とし、A 点を起点とする第i段修正サブ曲線要素を得る。
【0009】
続いて第i段の修正サブ曲線要素を用いて第i段のサブ曲線要素を代替し且つステップ2)に代入する。
【0010】
又はB の長さS が予め設定された精度より大きい循環条件を満たさない場合、P点からO 点までの距離F OiPを算出し、それをP点に対応する第i段のサブ曲線要素のオフセットに等しいとみなす。第i段のサブ曲線要素の始点走行距離と終点走行距離の中間走行距離をP点に対応する第i段のサブ曲線要素の走行距離とし、ステップ4)に進む。
【0011】
4)全てのサブ曲線要素に対してステップ2)からステップ3)までを繰り返し、P点がそれぞれ全てのサブ曲線要素に対応する走行距離及びオフセットを逆算出するまでである。実際に確定されたP点の有効走行距離及び有効オフセットと合わせて、設計段階の設計走行距離に対応するオフセットと比較し、それが設計要求に合致するか否かを判断する。
【0012】
そのうち、曲線因子は曲線要素又はサブ曲線要素の始点と終点の走行距離、半径、接線方位及び座標を含み、曲線要素の任意の走行距離点の接線方位はいずれも走行距離増大方向に向かい、nとiはいずれも0より大きい整数である。
【0013】
まず説明したように、本願でいう曲線要素は直線セグメント、円曲線セグメント、完全又は非完全なクロソイドセグメント曲線要素などの線の形態を含む。これらの曲線要素上の任意の点の曲率は線形に変化する。本願において、直線セグメントを特殊な曲線要素として計算し、直線セグメント曲線要素の回転角は0°であり、非直線セグメントの曲線要素に対し、その回転角は0°より大きい。
【0014】
本技術的解決手段は、既知点座標及び曲線要素の曲線因子に基づいて各タイプの曲線要素に対応する走行距離及びオフセットを逆算することができる。直線セグメント、円曲線セグメントの逆算が簡単であるため、本技術的解決手段のオフセット及び走行距離に関する逆算方法は特に、大きな回転角、完全又は非完全なクロソイドセグメント曲線要素の走行距離とオフセットの逆算に適用する。実際に応用する場合、一本の線路又は線要素群(line tuple)は複数の曲線要素の組み合わせにより得られることが多い。本技術的解決手段の前述の方法に基づき、P点が異なる曲線要素に対応する有効走行距離及び有効オフセットを算出することができる。且つP点が線路又は線要素群全体に対応するオフセット及び走行距離データを実際に確定することに基づき、本願は既知点に基づいて曲率が線形変化する任意の曲線要素のオフセット及び走行距離を逆算する手段を提供する。且つ計算結果に基づいて最終的にM曲線要素が位置する線路設計段階の実行可能性を判断し又はP点に対応する構造物施工段階の値と設計値との偏差を判断し、すなわち本技術的解決手段は線路の設計段階と施工段階に同時に適用することができる。
【0015】
まず曲線要素の曲線因子に基づいてその回転角βを得て、曲線要素を予め設定された大きさの回転角に基づいてn段のサブ曲線要素に分け、すなわち各段のサブ曲線要素の回転角が既知である。またいずれかのサブ曲線要素ABに対し、当該サブ曲線要素の曲線因子を算出し且つさらにその半弦長(すなわちAO又はBOの長さ)S及び直線回転角θを算出する。予め半弦長Sを循環条件の判定対象に設定し、循環条件が成立する時、半弦長S及び直線回転角θに基づき、サブ曲線要素を適宜修正し短縮して代替し、続いて循環条件が成立しなくなるまで、次の計算を行う。このときP点からO点までのオフセットF OPを算出し、それをP点に対応する第i段サブ曲線要素のオフセットに等しいとみなし、第i段サブ曲線要素の始点走行距離と終点走行距離の中間走行距離をP点に対応する第i段サブ曲線要素の走行距離とする。当然のことながら、具体的に実施する時に、当業者はAB弦線又はAB弧線上の任意の点からP点までのずれを選択してP点に対応する第i段のサブ曲線要素のオフセットに等しいとみなし、且つ第i段のサブ曲線要素の始点走行距離と終点走行距離との間の任意の走行距離を選択してP点に対応する第i段のサブ曲線要素の走行距離とすることができる。この種類の置換は本技術的解決手段の等価置換に属し、本技術的解決手段と実質的に同じと見なすべきである。
【0016】
上記計算過程において、半弦長Sは常に修正代替前のサブ曲線要素の弧長(すなわち終点と始点との走行距離差)の半分より小さいため、半弦長SとL 又はL との加算又は減算を介して原サブ曲線要素を代替することにより、修正サブ曲線要素の弧長を常に短縮させることができ、すなわち収束しつつ近づく。且つ、直線回転角θの大きさによって修正後のサブ曲線要素の新たな始点又は終点を確定し、修正後のサブ曲線要素は常にP点について対応する走行距離及びオフセットが存在することを保証し、すなわちP点が当該原サブ曲線要素に対応する真のオフセット及び走行距離は常に調整後のサブ曲線要素の中にある。上記方式で循環条件が成立しなくなるまで収束計算し、この時、予め設定された精度要求を満たす計算結果を出力することができる。最後に、全て又は一部のサブ曲線要素に対して上記収束計算を行い、且つ実際状況を結合して総合的に対比して最終結果を得る。
【0017】
上記方法により、異なる曲線要素に対して処理及び計算を柔軟に行うことができ、特に現在処理できない大きな回転角曲線要素の走行距離及びオフセットの逆算問題を処理することができる。且つ計算過程は段階的に収束し、計算過程が収束せず計算できない状況が発生しない。また、全体の計算過程は解析幾何学に関する知識だけに関し、全体が比較的簡単であり、施工者にとって比較的優しく、比較的高い普及価値を有する。
【0018】
特に説明するように、本技術的解決手段において、半弦長Sを用いて精度判定対象とし、同様に半弦長Sから直接延伸して得られた他のデータを判定対象とすることができ、例えば半弦長Sの2倍又は二分の一などである。上記判定対象の簡単な置換も本願の保護範囲に属する。
【0019】
本願の前述の方位すなわち量子化の方向であり、特に説明しない場合、本願において方位t ABはすなわちA点からB点に向かう方位であり、他の類似する方位説明は本説明を参照すればよい。
【0020】
説明を容易にするために、本願は第i段サブ曲線要素の説明を採用する。第i段のサブ曲線要素とは、ある曲線要素をn段のサブ曲線要素に分けた後に取ったそのうちのいずれかの段を指し、iに対して異なる値を取る時、第i段のサブ曲線要素は異なるサブ曲線要素を代表する。
【0021】
また、ステップ4)において、当業者はP点の実際の位置、線路軌跡及び各段曲線要素に対応するオフセット値を算出し、本分野の公知常識を結合して当該オフセットが有効であるか否かを明確に判断することができる。ここでは具体的に説明しないが、実際の状況に基づき、当業者は算出されたオフセット値が有効であるか否かを明確に判断することができ、従って明確で完全な技術的解決手段を構成する。例えば:計算の対象が直線セグメントであり、且つP点が当該直線セグメントの両端点の法線(又は垂線)の間の中間領域内にない場合、本願の上記技術的解決手段に基づいてオフセット値を計算した後、当業者は上記実際の状況を結合し、当該オフセット値が無効であることを容易に判断することができる。他の例:算出されたオフセットは線路路盤の最大掘削幅の数倍より大きく、又はオフセットが二本以上の曲線要素を貫通する等の状況はいずれも無効オフセットと見なすことができる。
【0022】
本発明の好ましい技術的解決手段として、ステップ1)において、曲線要素の回転角は、180°以上であれば、曲線要素をm段の同じ第一回転角を有するサブ曲線要素及び0-2段の第二回転角を有するサブ曲線要素に分ける。n=m又はn=m+1又はn=m+2である。そのうち、mは0より大きい整数であり、第一回転角及び第二回転角はいずれも、180°より小さい。本技術的解決手段は曲線要素を分割する一般的な方法を提供し、適切な分割又は分割しないことにより、P点と曲線要素の対応する走行距離及びオフセット、及びP点と目標線要素群の対応する走行距離及びオフセットを逆算することができる。一般に、曲線要素の回転角が180°以上である場合、第一回転角および第二回転角は180°未満の任意の角度値であってもよい。そうでなければセグメント化の意味が失われる。例えば一般的な30°、45°、60°、90°又は他の適切な角度であってもよく、当業者は実際の状況に応じて任意に選択することができ、ここで説明を省略する。
【0023】
説明すべきものとして、固定角度で曲線要素をセグメント化する時、一般的に曲線要素の先端及び/又は末端に異なる回転角のサブ曲線要素が存在し、該種の状況を回避するために、セグメント数を予め設定することができ、且つ曲線要素の回転角βに基づいて等回転角分割を行う。また、ここで第一回転角及び第二回転角を用いて等回転角でセグメント化のサブ曲線要素及びセグメント化された残りのサブ曲線要素を区別し且つ曲線要素を、180°より小さい任意の回転角で分割できることを説明し、曲線要素に対して等角度分割のみを行うことができると理解しなくてもよい。該説明に基づき、上記限定は、m段第一回転角のサブ曲線要素の回転角が同じであると理解すべきであるが、第二回転角のサブ曲線要素を二段有する場合、当該二段のサブ曲線要素の回転角は等しくてもよく、等しくなくてもよく、それらの回転角はいずれも第二回転角と呼ばれる。二つの等しくない第二回転角が発生する状況は、一般的に曲線要素の始点及び終点からセグメント化しないことである。
【0024】
本発明の好ましい技術的解決手段として、ステップ1)において、n≧2であれば、第1段サブ曲線要素の終点走行距離から第n段サブ曲線要素の終点走行距離まで順に大きくなる。
【0025】
曲線要素の始点から開始し、曲線要素の始点を第1段サブ曲線要素の始点とし、第1段サブ曲線要素の回転角と合わせて、シンプソンの公式(compound Simpson formula)を用いて第一段サブ曲線要素の曲線因子を算出する。続いて第1段サブ曲線要素の終点を第2段サブ曲線要素の始点とし、第2段サブ曲線要素の回転角を結合して第2段サブ曲線要素の曲線因子を算出し続け、上記ステップを繰り返して全てのサブ曲線要素の曲線因子を算出する。
【0026】
或いは、曲線要素の終点から開始し、曲線要素の終点を第n段サブ曲線要素の終点とし、第n段サブ曲線要素の回転角と合わせて、シンプソンの公式を用いて第n段サブ曲線要素の曲線因子を算出する。続いて第n段サブ曲線要素の始点を第n-1段サブ曲線要素の終点とし、第n-1段サブ曲線要素の回転角を結合して第n-1段サブ曲線要素の曲線因子を算出し続け、上記ステップを繰り返して全てのサブ曲線要素の曲線因子を算出する。
【0027】
本技術的解決手段は、曲線要素の曲線因子及び各サブ曲線要素の曲線回転角に対して各サブ曲線要素の曲線因子を算出する算出方法を提供し、以下のように考えられる。曲線要素の曲線因子に基づき、各サブ曲線要素の回転角は、シンプソンの公式を用いて曲線要素両端のいずれかの一端から他端へ順次段階的に各段のサブ曲線要素の曲線因子を算出する。本技術的解決手段は、比較的簡単なサブ曲線要素の曲線因子の算出方法を提供することを目的とし、当業者は同様に他の方法を用いていずれかのサブ曲線要素の曲線因子を算出することができる。
【0028】
本発明の好ましい技術的解決手段として、ステップ3)では、シンプソンの公式を用いて修正走行距離L `に対応する第i段のサブ曲線要素における修正点の座標及びその接線方位を算出する。
【0029】
本技術的解決手段は、具体的に修正走行距離L i`が第i段サブ曲線要素における座標及びその接線方位の算出方法を提供する。該種類の算出方法は主にシンプソンの公式を使用して計算し、全体論理が明瞭で、計算過程が比較的簡単である。
【0030】
本発明の好ましい技術的解決手段として、ステップ1)が終了した後、ステップ2)が開始する前に、サブ曲線要素の有効性を判断し、有効サブ曲線要素を選択してステップ2)に進む。サブ曲線要素始点A の法線と終点B の法線は点D に交差し又は互いに平行であれば、サブ曲線要素始点A の法線と終点B の法線は平面を切断して複数の領域を形成し、P点と同一の領域に位置するサブ曲線要素は有効サブ曲線要素である。
【0031】
本技術的解決手段は全体的な計算量を減少する方法を提供する。当該方法はステップ2)の前にまずサブ曲線元に対して有効性判定を行い、P点との位置が比較的遠く、方位偏差が比較的大きいため、明らかに実際意味を持たないサブ曲線要素の相関計算を排除することができ、それにより全体的な計算量を減少するという技術的効果を奏する。
【0032】
あるサブ曲線要素に対し、P点が当該サブ曲線要素から遠く又はP点と当該サブ曲線要素との偏差が大きい場合、P点は当該サブ曲線要素に対して走行距離逆算を行う実際的な意味がない。該種サブ曲線要素を無効サブ曲線要素と呼び、無効サブ曲線要素に対し、P点が無効サブ曲線要素に関する走行距離及びオフセットが存在しないとみなされる。
【0033】
あるサブ曲線要素に対し、当該曲線要素の始点A と終点B の法線を作成し、二つの法線は互いに平行又はD 点に交差し、二つの法線は平面を複数の領域に切断する。P点とサブ曲線要素が同一領域にある場合、P点は当該サブ曲線要素に対して実際意味のあるオフセットと走行距離が存在し、次の計算を行うことができる。P点と当該サブ曲線要素が同一領域にないと、P点が当該サブ曲線要素に関する走行距離及びオフセットが存在しないと直接みなされ、それにより当該サブ曲線要素に対する後続計算を省略する。そのうち、サブ曲線要素が直線セグメントである時、その回転角は0であり、その始点と終点の法線は互いに平行であり、この時二つの法線は平面を三つの領域に分ける。
【0034】
P点が点D 上にある場合も、Pとサブ曲線要素が同一領域にないとみなし、すなわち当該サブ曲線元が無効サブ曲線要素であるとみなし、この場合の最も顕著なケースは、P点が円曲線セグメントの円心である。
【0035】
本発明の好ましい技術的解決手段として、第i段サブ曲線要素の有効性を判断する定量的計算方法は以下のとおりである:方位t Aiが方位t AiPへ向かう回転角γ i1及び方位t Biが方位t BiPへ向かう回転角γ i2を計算し、γ i1<0且つγ i2>0であれば、当該サブ曲線要素は有効サブ曲線要素であり、逆であれば無効サブ曲線要素である。そのうち、t Ai、t Biは第i段のサブ曲線要素の始点A と終点B の右法線方位であり、時計回りに回転する回転角を正と設定し、γ i1とγ i2の絶対値はいずれも、180°より小さい。そのうち、右法線方位は、線路の任意の走行距離点が走行距離増加方向に指向する接線方位が時計回りに90°回転する時に指向する方位であり、該種の説明は本分野の公知常識に属する。
【0036】
本技術的解決手段は曲線因子、座標等のパラメータの定量計算によってサブ曲線要素が有効であるか否かを確定する。そのうち方位t Ai、t Bi等のパラメータは第i段のサブ曲線要素の曲線因子によって簡単に計算して得られ、且つP点座標を結合してさらに方位t AiP、t BiP及びγ i1、γ i2を計算する。そのうち、具体的な計算方法は解析幾何学の基本演算に関し、ここで具体的に説明しないが、当業者が本技術的解決手段を実現することに影響しない。
【0037】
γ i1、γ i2に対する分析によりP点と第i段のサブ曲線要素が同一領域にあるか否かを確認し、すなわち当該サブ曲線要素がP点に対して有効であるか否かを定量的に判断することができる。
【0038】
本発明の好ましい技術的解決手段として、ステップ3)において、予め設定された精度は2mm以下である。
【0039】
本発明は、循環条件の実施形態を提供する。明らかに、予め設定された精度S値が大きい場合、全体の計算量が相応に減少し、対応する計算結果の精度が低く、逆に計算精度が高いが、計算量が相応に増加する。実際の状況を考慮し、本技術的解決手段は予め設定された精度が2mm以下である方法を選択して良好なバランス性を有し、ほとんどの逆算精度要求を満たすことができる。
【0040】
本発明の好ましい技術的解決手段として、ステップ3)において、循環条件を満たさない場合、P点からA 弦線の中点O 点までの距離の大きさF OiP`を計算し、それをP点が第i段のサブ曲線要素に対応するオフセットの絶対値に等しいとみなし、P点が第i段のサブ曲線要素に対応するオフセットF OiPの計算式は以下のとおりである:
OiP=F OiP`×sign(sin(t OiP-t AiBi))
OiP<0であれば、P点が第i段サブ曲線要素の走行距離増加方向の左側にあると定義する。F OiP>0であれば、P点が第i段サブ曲線要素の走行距離増加方向の右側にあると定義する。本技術的解決手段において、循環が終了した後、すなわち一定の計算精度要求を満たした後、O とPとの距離の大きさF OiP`をP点に対応する第i段サブ曲線要素のオフセットの絶対値と等しいとみなす。さらに上記式によってP点に対応する第i段サブ曲線要素のオフセットF OiPを得て、当該オフセット値は正負符号を有し、P点に対応する第i段サブ曲線要素の相対位置を直接判定することができ、すなわち第i段のサブ曲線要素の左側又は右側に位置する。具体的には、F OiPの正負性に基づいてP点が第i段サブ曲線要素の走行距離増大方向の左側又は右側にあることを判断し、後期のさらなる設計、計算を容易にする。F OiP<0の場合、P点は第i段のサブ曲線要素の走行距離の増大方向の左側に位置し、逆にP点は第i段のサブ曲線要素の走行距離の増大方向の右側に位置し、該種類の説明も本分野の常識に属する。
【0041】
本発明の好ましい技術的解決手段として、ステップ4)において、P点に対応するオフセットと走行距離を複数算出すると、絶対値が小さいものから大きいものまでのうち最初のいくつかのオフセット及びそれに対応する走行距離を選択して、P点に対応する曲線要素の有効オフセットと有効走行距離とする。
【0042】
ある曲線要素に対し、複数のサブ曲線要素がP点に関して有効である可能性があるため、P点に対応する走行距離及びオフセットが複数ある可能性があることを算出する。本技術的解決手段は最も簡単な処理方法を提供し、すなわち絶対値が小さいものから大きいものまでのうち最初のいくつかのオフセット及びそれに対応する走行距離を選択して、P点が当該段曲線要素に対応する有効オフセット及び有効走行距離とする。P点が当該曲線要素に対する絶対値が小さいオフセットは赤線範囲外にある場合、絶対値が大きいオフセットは必ず赤線範囲外にあり、そのため、この処理方式は比較的迅速で簡単である。実際の応用では、当業者は実際の状況に合わせて計算結果を柔軟に処理すべきであり、当該処理手段は本分野の周知技術であり、ここで具体的に説明しないが、当業者が本技術的解決手段を実現することに影響を与えない。
【0043】
本発明の好ましい技術的解決手段として、ステップ4)において、P点に対応する曲線要素のオフセットと走行距離を複数算出すると、絶対値が所定閾値より小さいオフセット及びそれに対応する走行距離を選択して,P点に対応する曲線要素の有効オフセットと有効走行距離とする。本技術的解決手段において、所定閾値を用いて複数のオフセット値と比較して有効オフセットを決定する。そのうち、所定閾値は施工状況に応じて具体的に設定すべきである。例えば路盤の左、右側の最大掘削幅が80mである場合、所定閾値は100m又は他の合理的な数値である。明らかに、算出されたオフセット値が所定閾値より大きい場合、P点は当該曲線要素又はサブ曲線要素に対して必然的に遠く離れ、それの対応する目標線路の走行距離及びオフセット値は実際の意味がない。
【0044】
本発明の、既知座標点と対応する線路走行距離及びオフセットを逆算する方法は少なくとも以下の有益な効果を有する:
1)走行距離を修正することによってサブ曲線要素を繰り返し修正し、計算過程は常に収束し、同時にP点に対応する線路の走行距離及び実際のオフセットは常に修正後のサブ曲線要素にあり、そのため、本方法の計算過程は常に有効であり、常に有効な結果を得ることができる。
【0045】
2)曲線要素をセグメントに分割して計算することにより、P点に対応する、大きな回転角の曲線要素を含む各曲線要素の全ての対応する走行距離及びオフセットを逆算することができ、算出漏れが存在しない。
【0046】
3)本願の前述の方法は平面解析幾何等の一般的に使用される数学的ツールのみに関し、全体計算過程が比較的簡単であり、且つプログラム化処理を行うことができ、当業者にとって比較的優しく、実際に使用しやすい。
【0047】
4)異なる精度要求に基づき、精度を予め設定することにより、計算結果の精度及び計算量を柔軟に制御することができ、コンピュータプログラムで計算するとき、高精度のオフセット及び対応する走行距離を算出することができる。
【0048】
5)ステップ2)の前にサブ曲線要素に対して有効性判定を行うことにより、無効サブ曲線要素の計算を省略することができ、そのため計算量を顕著に低減させ、且つ計算結果の正確性、完全性を保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、実施例1におけるM曲線要素を複数のサブ曲線要素に分割する処理概略図である。
図2図2は、実施例1における第i段のサブ曲線要素に対する計算処理の概略図である。
図3図3は、実施例2、実施例3における第i段のサブ曲線要素に対する有効性判定処理の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、図面及び具体的な実施例を参照し本発明をさらに詳細に説明する。しかし、本発明に上記主題の範囲が以下の実施例に限定されると理解すべきではなく、本発明の内容に基づいて実現される技術はいずれも、本発明の範囲に属する。
【0051】
実施例1
図1を参照し、本実施例において、具体的にM曲線要素を例とし、それぞれa、b、cという三つの既知座標点と対応する、M曲線要素に関する走行距離及びオフセットを逆算する。そのうちM曲線要素は目標線路における走行距離が0+100から0+150までの1段の曲線要素である。具体的には、M曲線要素の始点走行距離L は0+100であり、半径R は1であり、M曲線要素の終点走行距離L は0+150であり、半径R は800である。したがって、M曲線要素の曲線タイプは不完全なクロソイドである。
a、b、cの3点の座標は以下の表のように知られている:
【0052】
[表0001]
M曲線要素の曲線因子は以下の表のとおりである:
【0053】
[表0002]
【0054】
M曲線要素の曲線因子は具体的に以下を含む:
曲線要素始点の走行距離L 、半径R 、接線方位T 及び座標(x 、y )、
曲線要素終点の走行距離L 、半径R 、接線方位T 及び座標(x 、y )、
そのうちa、b、c点は即ちそれぞれ前述のP点に等しい。
【0055】
本実施例において、曲線要素とサブ曲線要素の回転角はいずれも0より大きく、各走行距離点の接線方位はいずれも走行距離の増大方向を指す。
【0056】
上記既知の条件に基づき、まずa点と対応する、M曲線要素に関する走行距離及びオフセットを逆算し、具体的には以下のステップを含む:
1)クロソイド曲線要素の任意点曲率の線形変化の特徴に基づき、次式でM曲線要素の曲線回転角βを算出する:
式中、L はM曲線要素始点の走行距離であり、
はM曲線要素終点の走行距離であり、
ρ はM曲線要素始点の曲率であり、
ρ はM曲線元終点の曲率であり、
ρ =1/R ,ρ =1/R を容易に得る、
式(1)に基づいてM曲線要素の回転角β=1434.184981°を算出する(説明及び算出を容易にするために、本願では、弧度法及び度数法を同時に採用する)。βは、180°より大きい。
【0057】
回転角を等分する方法に基づいてM曲線要素を各サブ曲線要素の回転角が90°に近い17段のサブ曲線要素に分割し、n=17である。各サブ曲線要素の曲線回転角δ=β/n=84.3638224°である。第1段のサブ曲線要素の終点走行距離から第n段のサブ曲線要素の終点走行距離まで順次増大すると設定する。
【0058】
当然のことながら、当業者は予め設定された固定サイズの回転角でM曲線要素をセグメント化してもよく、又は他の類似方法でセグメント化してもよい。
【0059】
回転角を等分する方法に基づいてM曲線要素を17段に分けた後、M曲線要素の始点から、順次各サブ曲線要素を取り、各サブ曲線要素の始点曲線因子に基づき、当該サブ曲線要素の終点の曲線因子を計算する。且つ当該サブ曲線要素終点の曲線因子を次のサブ曲線要素始点の曲線因子とし、次のサブ曲線要素終点の曲線因子を算出する。
【0060】
すなわち:第1段のサブ曲線要素の終点の曲線因子を算出する際には、M曲線要素の始点を第1段のサブ曲線要素の始点とする。第1段のサブ曲線要素の回転角δに基づいて、第1段のサブ曲線要素の終点走行距離及び曲率を算出し、シンプソンの公式を用いて第1段のサブ曲線要素の終点の座標及び接線方位等の曲線因子を算出する。
【0061】
第2段のサブ曲線要素の終点の曲線因子を算出する際には、第1段のサブ曲線要素の終点の曲線因子を第2段のサブ曲線要素の始点の曲線因子とする。第2段のサブ曲線要素の回転角δに基づいて、第2段のサブ曲線要素の終点走行距離及び曲率を算出し、シンプソンの公式を用いて第2段のサブ曲線要素の終点の座標及び接線方位等の曲線因子を算出する。このように類推して必要なサブ曲線要素に対応する曲線因子を得る。
【0062】
そのうち、第1段サブ曲線要素終点の曲線因子を計算する時、以下のようになる:
【0063】
第1段サブ曲線要素終点の走行距離:
【0064】
第1段サブ曲線要素終点の曲率及び曲率半径はそれぞれ以下のとおりである:
式(2)、式(3)、式(4)において、δは第1段サブ曲線要素の回転角であり、
はM曲線要素の終点走行距離であり、
はM曲線要素の終点の曲率であり、
11、L 12はそれぞれ第1段サブ曲線要素の始点、終点の走行距離であり、
ρ 11、ρ 12はそれぞれ第1段サブ曲線要素の始点、終点の曲率であり、
ρ 11、ρ 12はそれぞれ第1段サブ曲線要素の始点、終点の曲率半径であり、ここでρ 11=1/R 11であり、
第1段サブ曲線要素の始点の曲線因子がM曲線要素の始点の曲線因子と同じであることは明らかである。すなわち第一サブ曲線要素始点の接線方位T 11はM曲線要素始点の接線方位T に等しく、その座標x 11、y 11はM曲線要素始点の座標x、yに等しい。続いて、シンプソンの公式を用いて第1段サブ曲線要素の終点の接線方位T 12及び座標(x 12,y 12)を計算し、すなわち第1段サブ曲線要素の終点の曲線因子を求める。
【0065】
第2段サブ曲線要素に対して、第1段サブ曲線要素の終点を第2段サブ曲線要素の始点とし、上記方法に従って第2段サブ曲線要素の終点の曲線因子を求め続ける。同様に、全てのサブ曲線要素の曲線因子を求める。
【0066】
もちろん、当業者は同様に曲線要素の終点から始点への方向に基づいて演算することができ、その算出方法は完全に一致する。
【0067】
ちなみに、円曲線セグメントに対し、曲線要素をnセグメントに分割した後、各サブ曲線要素の曲線回転角に基づき、各サブ曲線要素の始点・終点の走行距離、曲率及び曲線因子を算出しやすく、本方法は説明しない。
【0068】
2)図2を参照し、説明しやすいために、既知座標点aが図におけるP点に相当すると仮定し、すなわちa点でP点を代表する。第i段サブ曲線要素に対し、その始点A と終点B との接続線は当該サブ曲線要素の弦線であり、弦線中点はO であり、第i段サブ曲線要素の曲線因子及びa点座標に基づき、A 又はB の長さS と直線の回転角度θ とを算出する。そのうち、直線角度θ は、方位t AiBiと方位t Oiaとのなす角度を意味し、180°未満で最小0°である。本実施例において、上記直線回転角θ は即ち図2における方位t AiBi又はt AiOiが反時計回りに図2に示す方位t OiPに回転する最小夾角である。A 、B 及びa点の座標が既知であるか又は既に計算されているため、従来の解析幾何を用い、上記データを容易に計算し、ここで具体的に説明しない。
【0069】
3)ステップ2)の計算結果により、第i段サブ曲線要素は、A 又はB の長さS が予め設定された精度より大きいという循環条件を満たす場合、以下の判定・修正を行い、本実施例では、予め設定された精度を2mmとする:
θ <90°であれば、修正走行距離L `=L Ai+S とし、式中、L Aiは第i段サブ曲線要素の始点走行距離である。第i段サブ曲線要素の曲線因子に基づき、修正走行距離L `に対応する第i段サブ曲線要素における修正点の座標及びその接線方位を算出し、修正点を起点とし、B 点を終点とする第i段修正サブ曲線要素を得る。
【0070】
θ ≧90°であれば、修正走行距離L `=L Bi-S とし、式中、L Biは第i段サブ曲線要素の終点走行距離である。第i段サブ曲線要素の曲線因子に基づき、修正走行距離L `に対応する第i段サブ曲線要素における修正点の座標及びその接線方位を算出し、修正点を終点とし、A 点を起点とする第i段修正サブ曲線要素を得る。
【0071】
本実施例で、シンプソン公式を用いて、修正走行距離L `に対応する第i段サブ曲線要素上の修正点の座標とその接線方位を計算する。
【0072】
次に、第i段サブ曲線要素の代わり第i段修正サブ曲線要素を使用して、ステップ2)に代入する。
【0073】
又はB の長さS が予め設定された精度より大きいという循環条件を満たさない場合、点aからO までのF Oia`距離を算出し、当該距離を点aの第i段サブ曲線要素に対するオフセットの絶対値に等しいとみなす。そして、第i段サブ曲線要素の始点走行距離と終点走行距離との間の中間走行距離を、a点が第i段サブ曲線要素に対応する走行距離とし、また、a点が第i段サブ曲線要素の左側又は右側に位置するのかを判断しやすいように、F Oiaを次式で計算する:
Oia=F Oia`×sign(sin(t Oia-t AiBi)) (6)
Oia<0の場合、点aが第i段サブ曲線要素の走行距離増加方向の左側に位置すると定義する。F Oia>0の場合、点aが第i段サブ曲線要素の走行距離増加方向の右側に位置すると定義する。
【0074】
計算完了後にステップ4)に進み、
4)他のサブ曲線要素に対し、a点が全てのサブ曲線要素に対応する走行距離及びオフセットを逆算出するまでにステップ2)及びステップ3)を繰り返し、最終的にa点がM曲線要素に対応する有効走行距離及び有効オフセットを総合的に確定し、
a点の有効走行距離及び有効オフセットを算出し且つ確定した後、上記方法に従ってb、c点がM曲線要素に対応する全走行距離及びオフセットを確定し続け且つオフセット及び走行距離の有効性を確定する。
【0075】
a、b、c各点の計算結果に対し、最終的に各点のそれぞれ逆算オフセット絶対値が最も小さい二つの値を選択して総合判定を行う。
【0076】
当該方法により、a、b、cの三点がM曲線要素に対応する全ての逆算走行距離とオフセット結果は以下の表に示す:
【0077】
表中の既知点が走行距離増加方向の左側に位置する場合、オフセットは0より小さく、逆にオフセットは0より大きい。
【0078】
説明すべきものとして、当業者は直接a点からA 弦線中点O 点までの距離F Oia`をa点に対応する第i段サブ曲線要素のオフセットに等しいとみなしてもよい。この方式のオフセットは正負性を有さず、後期に応用する時に依然として実際の状況に合わせてa点が各サブ曲線要素に対する左右側関係を判断する必要があり、そのため、本実施例において前記式によって正負性を有するオフセットを得ることはより実用的である。
【0079】
表において*が付された逆算オフセット及び対応する逆算走行距離はそれぞれa、b、c各点がM曲線要素に対して最終的に確認した有効なオフセット及び走行距離である。
【0080】
逆算結果の有効性に対する確認方法は以下のとおりである:a、b、cのいずれかの計算点、例えばa点に対し、a点に対応する曲線要素Mのオフセットの絶対値が小さいものから大きいものまでのうち最初の2組のオフセット及びそれに対応する走行距離を選択して有効値とし、続いて、所定閾値を設定し、さらに所定閾値によって二次スクリーニングを行い、オフセットの絶対値が当該所定閾値より大きいと、当該オフセットは無効オフセットであり、そうでなければ有効オフセットである。本分野の技術者は必要に応じて閾値を予め設定することができ、例えば当該目標線路路盤の最も広い値に基づいて設定し又は区間幅の最も広い赤線値に基づいて設定するなど。
【0081】
図1によれば、a、b、cのいずれかの点はM曲線要素に関して1組又は2組の有効オフセット及び走行距離のみが存在し、b点はM曲線要素の全体的な内側に存在し、c点はM曲線要素の全体的な外側に存在するため、b、c点はいずれも一つの有効オフセット及びそれに対応する走行距離のみが存在し、a点は二つの有効オフセット及びそれに対応する走行距離が存在する。c点オフセットが所定閾値を超えると、c点はM曲線要素に対して有効オフセット及び走行距離がない。
【0082】
本実施例において、M曲線要素の全てのサブ曲線要素に対してa、b、c点について対応する線路走行距離及びオフセットの算出を行い、当該算出方法は算出過程が段階的に収束することを保証することができ、そのため算出できないという問題が発生しない。セグメント化方法を採用して計算し、対応する走行距離とオフセットを漏れず、最終的に精度が制御可能な全ての対応する走行距離とオフセットの逆算データを得ることができる。オフセットの有効性判断に基づき、精度が制御可能な全ての有効対応走行距離とオフセットの逆算データを得ることができる。
【0083】
本実施例は方程式を解く方式に比べ、その計算量と計算難易度がより優しく、比較的高い普及価値を有する。
【0084】
実施例2
実施例1の基礎で、本実施例は実施例1の方法のステップ1)が終了した後、ステップ2)が開始する前に、サブ曲線要素の有効性判定ステップを追加し、具体的には以下のとおりである:
図3を参照し、図中Pは本実施例におけるa点を表す。P点について、有効サブ曲線要素は以下を満たす:サブ曲線要素の始点A と終点B の法線は点D に交差し、二つの法線は平面を切断して四つの領域を形成し、P点と同一の領域内に位置するサブ曲線要素は有効サブ曲線要素である。M曲線要素の任意のサブ曲線要素はいずれも直線セグメントではないため、したがって、本実施例において、任意のサブ曲線要素の始点A と終点B の法線はいずれも平行ではない。
【0085】
具体的に:第i段サブ曲線要素の始点と終点の法線が点D に交差すると設定し、第i段サブ曲線要素とP点が前述の二法線で平面を切断して形成された複数の領域(図3におけるI領域、II領域、III領域、IV領域)の同一領域に位置する場合、当該第i段サブ曲線要素を有効サブ曲線要素とみなし、上記条件を満たさないサブ曲線要素は無効サブ曲線要素であり、有効サブ曲線要素を選択してステップ2)に進んで計算する。
【0086】
M曲線要素をn段のサブ曲線要素に分割した後、n段のサブ曲線要素はそれぞれ複数の有効サブ曲線要素及び複数の無効サブ曲線要素で構成される。無効なサブ曲線要素については、実際の計算上の意味が存在しないため、無効なサブ曲線要素に関するP点の走行距離及びオフセットは存在しないとみなす。
【0087】
サブ曲線要素の有効性について、一般的な描画ソフトウェアを用いて描画方式によって上記直感的な定性判定を行うことができる。
【0088】
本実施例は実施例1の基礎で、ステップ1)が終了した後、ステップ2)を計算する前に、サブ曲線要素に対して有効性判定を予め行う。その意味は、いくつかのサブ曲線要素において、比較的明らかに、一部のサブ曲線要素と既知点との距離及び/又は方位偏差が比較的大きい。このようなサブ曲線要素の計算結果に対し、その逆算のオフセット絶対値は明らかに他の距離及び/又は方位偏差が相対的に小さいサブ曲線要素より大きく、したがって、走行距離の逆計算の実際の目的のために、それを直接除去することができ、計算せず、当該スクリーニング方式は最終結果に影響を与えない。本実施例の提供する方法により、さらに計算する前にそれを除去することができ、それにより計算量を低減させ、計算効率を向上させる。
【0089】
本実施例において、他の言及しない部分は、いずれも実施例1と同じである。
【0090】
実施例3
実施例2の基礎で、本実施例はさらにサブ曲線要素の有効性を判断する定量的な判定方法を提供し、具体的には以下のとおりである:
上記方法に基づいて、方位t Aiから方位t AiPへ回転する回転角γ i1及び方位t Biから方位t BiPへ回転する回転角γ i2を算出し、γ i1<0且つγ i2>0であれば、当該サブ曲線要素は有効サブ曲線要素であり、逆であれば無効サブ曲線要素である。そのうち、t Ai、t Biはサブ曲線要素の始点A と終点B の右法線方位であり、時計回りに回転する回転角を正と設定し、γ i1とγ i2の絶対値は、180°より小さい。
【0091】
本実施例は、サブ曲線要素の有効性を判断する定量的な判定方法を提供する。サブ曲線要素始点と終点が既知点までの方位を計算し、且つサブ曲線要素始点と終点の右法線方位が上記方位に回転する回転角を計算することにより、判定結果を得ることができる。該種方法は計算が簡単で、プログラム化判定でき、特にコンピュータ等の補助ツールと合わせて計算効率を顕著に向上できる。
【0092】
サブ曲線要素の有効性を予め判断する意義は、第iサブ曲線要素と既知点との距離が明らかに遠く、又はP点と第iサブ曲線要素が同一領域にない場合、当該サブ曲線要素をスキップして次のサブ曲線要素の相関計算を行い又は他の既知座標点が当該サブ曲線要素に対する走行距離及びオフセット逆計算を行い、それにより計算量を低減させ、計算効率を向上させることである。このスクリーニング方式は最終結果に影響を与えない。
【0093】
本実施例において、他の言及しない部分は、いずれも実施例2と同じである。
【0094】
上記各実施例の同じ部分は、簡単に主題を強調する目的で引用省略処理しているため、相互に参照すればよい。以上は本発明の好適な実施例にすぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の精神と原則内で行われた全ての修正、均等置換及び改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
図1
図2
図3