(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】放射線不透過性ポリマーを含む液体塞栓組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 29/04 20060101AFI20240315BHJP
A61K 51/06 20060101ALI20240315BHJP
C08F 8/18 20060101ALI20240315BHJP
C08F 216/06 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
C08L29/04 G
A61K51/06 100
C08F8/18
C08F216/06
(21)【出願番号】P 2022100570
(22)【出願日】2022-06-22
(62)【分割の表示】P 2020561029の分割
【原出願日】2019-06-26
【審査請求日】2022-07-21
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】522368684
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック メディカル デバイス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、アンドリュー レナード
(72)【発明者】
【氏名】ロード、ジャスミン
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-531921(JP,A)
【文献】特表2016-529055(JP,A)
【文献】特許第7095112(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 29/04
A61K 51/06
C08F 8/18
C08F 216/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中の溶液状態にある、式
1のペンダント基を有するポリマーであって、
【化1】
前記式
1中、Xは結合、1~8個の炭素を有する連結基、又は、1~8個の炭素とO、N、及びSのうちの少なくとも1つから選択される1~4個のヘテロ原子とを有する連結基であり、nは1~4である前
記ポリマーと、
治療薬と、
を含
み、前記ポリマーは、20℃で通常の生理食塩水と接触すると沈殿するものである、
治療用塞栓術に適した液体
塞栓組成物。
【請求項2】
前記有機溶媒は水混和性溶媒
である、請求項1に記載の液体
塞栓組成物。
【請求項3】
前記nは1~3である、請求項1又は2に記載の液体
塞栓組成物。
【請求項4】
前記ポリマーは、式2a~2d
【化2】
から選択されるペンダント基を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体
塞栓組成物。
【請求項5】
前記Xは結合、(C
1-4)アルキレン、(C
1-4)オキシアルキレン、及びアミノ(C
1-4)アルキレンから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の液体
塞栓組成物。
【請求項6】
前記Xは結合である、請求項1~5のいずれか一項に記載の液体
塞栓組成物。
【請求項7】
前記式
1のペンダント基は、式3
【化3】
のペンダント基である、請求項1~6のいずれか一項に記載の液体
塞栓組成物。
【請求項8】
前記ポリマーは、ビニルアルコール及びそのコポリマーから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の液体
塞栓組成物。
【請求項9】
前記ポリマーは、ポリビニルアルコールホモポリマー又はコポリマーである、請求項8に記載の液体
塞栓組成物。
【請求項10】
前記nは2又は3である、請求項1~9のいずれか一項に記載の液体
塞栓組成物。
【請求項11】
前記ポリマーは非架橋である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の液体
塞栓組成物。
【請求項12】
前記ポリマーは生分解性である、請求項1~11のいずれか一項に記載の液体
塞栓組成物。
【請求項13】
前記ポリマーは非生分解性である、請求項1~11のいずれか一項に記載の液体
塞栓組成物。
【請求項14】
前記ポリマーは、乾燥ポリマーの10重量%(wt/wt)以上のヨウ素を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の液体
塞栓組成物。
【請求項15】
前記
有機溶媒に溶解した3~70重量%(wt/wt)のポリマーを含む、請求項
1~14のいずれか一項に記載の液体
塞栓組成物。
【請求項16】
前記ポリマー
の沈殿物は少なくとも1000HUの放射線密度を有する請求項
1~15
のいずれか一項に記載の液体
塞栓組成物。
【請求項17】
前記
有機溶媒は、極性非プロトン性溶媒である、請求項
1~
16のいずれか一項に記載の液体
塞栓組成物。
【請求項18】
前記
有機溶媒は、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N、N’-ジメチルプロピレン尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、グリセロール、乳酸エチル、N-メチル-2-ピロリドン、及び、2-(オキソラン-2-イルメトキシ)エタノールから選択される、請求項
1~17のいずれか一項に記載の液体
塞栓組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線不透過性ポリマー及び塞栓術分野で有用な液体塞栓としてのそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
治療としての塞栓術は、血流を遅くしたり止めたりするために、材料を血管に導入して閉塞を形成する低侵襲の手法である。一般に、このような材料は、脚や手首などの末梢の部位から標的部位に進められるマイクロカテーテルを介して送達される。このアプローチは、とりわけ胃腸出血、動静脈奇形、肝細胞癌などの血管過多の悪性腫瘍、子宮筋腫などの良性増殖、及び近年では良性前立腺肥大症(BTH)などの状態の治療に有用である。
【0003】
生体適合性ミクロスフェアは、標的部位に容易に送達することができ且つ血管の寸法に応じてより予測可能な塞栓形成のために画定された寸法範囲で調製することができるため有用な塞栓剤である。組成物が液体として体内の標的部位に送達され、インビボで血管内に塞栓を形成する液体塞栓製剤、特には、ポリマーがその場(インサイチュ、in situ)でゲル化、固化、又は沈殿して塞栓を形成する液体塞栓製剤も調製されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのようなシステムの中には、インサイチュでのポリマーの形成又はゲル化に依存するものもあれば、塞栓物質を残して血液中に急速に消散する有機溶媒での送達に依存するものもある。液体塞栓には、血管壁に適合して、その沈着特性に応じて一般に個別の球ではなく一体化した塞栓を形成するという更なる利点がある。
【0005】
液体塞栓組成物は生体適合性があり、適切な密度、圧縮性、流動性、及びカテーテルでの送達容易性を備える必要がある。血管内の流動特性、沈着の速度及び沈着の予測可能性、並びに塞栓の堅牢性も重要である。
【0006】
ポリマー主鎖に共有結合したヨウ素化基を有する放射線不透過性ポリマーミクロスフェアが提案されている(例えば、WO2015/033092)。ポリマー主鎖に結合したヨウ素化基を有する放射線不透過性液体塞栓も記載されている(例えば、WO2011/110589)。X線で見るのに十分な放射線不透過性であるが、使いやすさの特性が改善された、改善されたヨウ素化ポリマーを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、これらの問題の1つ以上が本明細書に記載のポリマー及び組成物によって解決できることを確認した。
第1の態様では、本発明は、式Iのペンダント基を有するポリマーを含有する液体組成物を提供する。
【0008】
【0009】
式において、Xは結合、又は、1~8個の炭素と任意にO、N、及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を有する連結基であり、nは、1~4であり、好ましくは2又は3である。
【0010】
式Iのペンダント基を有するポリマーは、1,3ジオール基の繰り返しを含む任意のポリマーであってもよい。これらのポリマーでは、ヨウ素化フェニル基は、アルデヒド、アセタール、又はセミアセタール基との反応によって結合され、1,3ジオキサロン環を形成しうる。好ましくは、ポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)、又は(エチレン-ビニルアルコール)ポリマー、又はコポリマーなどのビニルアルコールポリマーであり、特には、ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)ホモポリマー又はコポリマーである。
【0011】
ポリマーは、好ましくは非架橋である。
天然のPVAポリマーは、アセチル化されていてもされていなくてもよく、一般に、天然のPVAのアセチル化のレベルは、50%から100%、好ましくは80%から100%の間である。
【0012】
本発明での使用に適したPVAは、1KDa~250kDaの範囲の重量平均分子量を有するが、好ましくは、PVAは少なくとも20kDa、好ましくは少なくとも40kDaの重量平均分子量を有する。好ましい範囲には、40~250kDa及び40~200kDaが含まれる。
【0013】
Xは、好ましくは結合、又は、1~4個の炭素と任意にO及びNから選択される1個のヘテロ原子を有する連結基であり、より好ましくは結合、(C1-4)アルキレン、(C1-4)オキシアルキレン、アミノ(C1-4)アルキレンの結合から選択される。特には、例には、結合、C1、C2、又はC3アルキレン、オキシメチル又はオキシエチル、アミノメチレン及びアミノエチレンが含まれる。リンカーが存在する場合には、特には、メチレン、オキシメチレン又はアミノメチレンである。最も好ましくは、環は基Gに直接結合し、Xは、結合である。
【0014】
式Iのペンダント基は、環に共有結合した1、2、3、又は4個のヨウ素を含み得る。好ましくは、ペンダント基は2、又は3つのヨウ素を含む。好ましい構成は次のとおりである。
【0015】
【0016】
最も好ましいペンダント基は、式3の基である。
【0017】
【0018】
本発明は、第2の態様において、式Iのペンダント基を有する非架橋ポリビニルアルコールホモポリマーを提供する。
【0019】
【0020】
式において、Xは結合、又は1~8個の炭素と任意にO、N、及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を有する連結基であり、nは、1~4である。
一実施形態では、ポリマーは、式1の複数の種類のペンダント基を含み、ポリマーはそれぞれ、nの値について互いに異なる。例えば、異なるnの値を有する2,3,4つ、又はそれ以上のペンダント基が存在し得る。
【0021】
例えば、ポリマーは、3つのヨウ素を有するペンダント基と1つのヨウ素を有するペンダント基、又は4つのヨウ素を有するペンダント基と1つのヨウ素を有するペンダント基、又は2つのヨウ素を有するペンダント基と3つのヨウ素を有するペンダント基、又は1つのヨウ素を有するペンダント基、2つのヨウ素を有するペンダント基と3つのヨウ素を有するペンダント基を備える。各基の比率は、必要とされる性質に合わせて変更しうる。このようにして、ポリマーの全体的な疎水性及びヨウ素含有量/放射線密度を微調整することができ、沈殿、溶解、沈殿物の密度強度などの物理的特性を改善することができる。
【0022】
あるヨウ素化値の別のヨウ素化値に対する比率は、出発物質としてn値の場合に、適切な比率を有するヨウ素化フェニル部分の適切な比率を設けること、又は適切な比率で異なるn値を有するペンダント基を有するポリマーを混合することにより達成できる。
【0023】
ポリマーは生分解性であってもよい。生分解性ポリマーは、体内で加水分解により切断される結合を有するため分解する。生分解性を設けるために、ポリマーには、体内で加水分解的に切断可能なポリマー主鎖に結合例えばエステル基等が形成される。好ましいポリマーは、1時間から1年の期間にわたって可溶性成分に分解する。代替的には、ポリマーは非生分解性であるため、1年を超える期間にわたって安定した形態で体内に存在し続ける。
【0024】
液体塞栓組成物は、ポリマーが液体として体内の所望の部位に送達されるが、インビボで血管内に塞栓を形成する組成物であり、特にはポリマーがインサイチュでゲル化、固化、又は沈殿して塞栓を形成する組成物である。そのような組成物は一般に、本明細書に記載のポリマーと、水性又は有機溶媒である溶媒とを含む。好ましくは、組成物は、溶媒に完全に溶解された式1のポリマーを含有し、溶媒内にポリマーの溶液を形成する。
【0025】
放射線不透過性又は放射線密度は、ポリマー内のヨウ素の量を調整することにより必要に応じて変更することができる。これは、環上のヨウ素の数、又はポリマーに対するペンダント基の比率を変えることにより達成できる。
【0026】
本発明のポリマーは、ポリマー主鎖の2つのヒドロキシル基に対する1つのペンダント基として測定されるペンダント基を少なくとも0.1当量好ましくは有する。より好ましくは、ポリマーは少なくとも0.4当量のペンダント基を有し、最も好ましくは少なくとも0.6当量のペンダント基を有し、具体的にはペンダント基が3つのヨウ素を含む場合である。
【0027】
ポリマー中のヨウ素の量は、乾燥重量でポリマーの好ましくは少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも30重量%(%wt/wt)、より好ましくは少なくとも40重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%である。これらのポリマーでは、ヨウ素が乾燥ポリマーの40重量%を超える場合に高い放射線密度を得ることができる。
【0028】
好ましくは、本発明のポリマーは、少なくとも1000、好ましくは少なくとも2000、より好ましくは少なくとも3000、特には少なくとも4000HUの放射線密度を有する。65kVで測定した場合、特に実施例7に従って測定した場合の数値である。
【0029】
体内の標的部位で沈殿することを意図した本発明の組成物は一般に、20℃で通常の生理食塩水と接触して沈殿し、これらの条件下でポリマーが沈殿する組成物は、本発明のさらなる実施形態を提供する。これらの沈殿物の放射線密度及びヨウ素含有量は、好ましくは本発明の別の実施形態について好ましい範囲内である。
【0030】
1つのアプローチでは、本明細書に記載のポリマーは、有機溶媒の溶液として調製される。一般に、このような溶媒は水と混和性がある。水混和性とは、0.5mlの溶媒が1リットルの生理食塩水に20℃で完全に溶解することを意味する。
【0031】
好ましくは、これらの溶媒は生体適合性である。好ましくは、溶媒は極性非プロトン性溶媒である。好ましい溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、DMPU(N、N’-ジメチルプロピレン尿素)、DMI(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)、グリセロール、乳酸エチル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)及びグリコフロール(2-(オキソラン-2-イルメトキシ)エタノール)である。溶媒は、好ましくは、DMSOとNMPから選択される。
【0032】
一実施形態では、有機溶媒は最大50%、好ましくは最大25%、最も好ましくは最大10%の水を含み得る。
好ましい一実施形態では、水性溶媒は、薬学的に許容される緩衝液を含む。そのような緩衝液の例には、リン酸塩、クエン酸塩、トロメタミン及び酢酸塩が含まれる。
【0033】
好ましくは、液体組成物は、3~70%wt/wt、好ましくは少なくとも20%含有する。5%~40%、又は5%~25%の溶解したポリマーの組成物は、有用な特性を有する。
【0034】
液体塞栓組成物は、任意に活性剤をさらに含有する。一定量の活性剤は、沈殿する時、ポリマー内に閉じ込められて、その後、ある期間にわたって放出される。このアプローチは、疎水性の高い薬物で特に有用であり、それは、それらがポリマーと共に沈殿してより多く閉じ込められるためである。
【0035】
活性剤は、化学療法剤、セツキシマブ、トラスツジマブ及びニボルマブなどの抗体、抗体フラグメント、ペプチド、低分子量タンパク質、又はそれらの組み合わせであり得る。
例示的な化学療法剤には、限定ではないがドキソルビシン、ダウナルビシン、エピルビシン、及びイダルビシンなどのアントラサイクリン系、限定ではないがイリノテカン、トポテカン、エキサテカンなどのカンプトテシン系、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ミリプラチンなどのプラチン系、マイトマイシンC、5-フルオロウラシルなどの代謝抵抗物質、限定ではないがソラフェニブ、スニチニブ、レゴラフェニブ、ブリビンブ、ダセタニブ、ボスチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ及びバンデチニブ、ラパマイシン又はそれらの任意の組み合わせなどのマルチチロシンキナーゼ阻害剤が含まれる。
【0036】
本発明のさらなる態様は、塞栓を形成するなど、それを必要とする対象の血管に本明細書に記載の式Iのポリマーを含む液体塞栓組成物を送達することを含む医学的治療方法を提供する。
【0037】
ポリマーは、血流中に散逸して塞栓を形成する溶媒、一般には上記有機溶媒を含む組成物の形態で送達することができる。
さらなる実施形態において、本発明は、医学的治療方法で使用するための本明細書に記載の薬学的活性成分を提供し、治療は、本明細書に記載の活性物質を含有する塞栓組成物の形態で医薬活性物質を患者に送達することを含み、そこから活性物質が治療中に溶出される。
【0038】
本明細書に記載の液体塞栓は動静脈奇形、胃腸出血、動脈瘤の充満、固形腫瘍、特に肝臓、前立腺、腎臓、脳、結腸、骨、肺などの血管過多腫瘍の治療を含む様々な状態を治療するために使用することができる。前立腺肥大症や子宮筋腫などの良性の過形成状態も同様である。このアプローチは、肥満や関節痛の治療にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】231nmでのUV吸収にて測定された本発明の液体塞栓製剤の選択物からのDMSOの放出を示す図。
【
図2】液体塞栓サンプルの沈殿充填体積の変化を示す図。
【
図3】低分子量ポリマーの凝固時間とポリマー濃度との関係を示す図。
【
図5】1~5のスコア値での典型的な粒子形成を示す図。
【
図6】流動条件下で沈殿量を観測するために使用した設定を示す図。矢印は最初の沈殿の方向を示す。
【
図7】試験条件における凝固時間と塞栓の逆流との関係を示すグラフ。
【
図8】0.10(A)、0.15(B)、及び0.20(C)TIBA当量で調製した液体塞栓ポリマーの沈殿物を示すmicroCT画像。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に本発明について図面を参照して以下の非限定的な例によりさらに説明する。図面は、例示のみを目的として提供されており、特許請求の範囲内に入る別例は、これらに照らして当業者に生じるであろう。本明細書で引用するすべての参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。参考文献と本願との不一致は、本願が支配するものとする。
【0041】
実施例
実施例1:一般的な液体塞栓合成条件
窒素ブランケット下で予備乾燥した反応器に、PVA(通常、5~10g)、無水溶媒(通常、DMSO又はNMP、PVA質量に対して40体積量)、及び触媒(PVA質量に対して通常2.2体積量)を加えた。次に、攪拌した懸濁液を高温(約90℃)に加熱してPVAを溶解した。均一な溶液が得られたら混合物を所望の反応温度(通常50~80℃)に冷却した。2,3,5トリヨードベンズアルデヒド(TIBA-通常PVAジオール官能基に対して0.1~0.6当量)を加えた。反応物を窒素ブランケットの下で撹拌し、反応の変換を、TIBAの消費について高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってモニターした。所定時間(通常、化学基質の消費が停止したとき)に、逆溶媒(通常、アセトン、ジクロロメタン(DCM)、アセトニトリル(MeCN)、又はメチルtert-ブチルエーテル(TBME)、約40体積量)を滴下漏斗から滴下して加えた。上澄み液をフィルター膜を通して吸引して除去し、さらに反応溶媒(通常、40体積量)を加えて、固体が完全に溶解するまで撹拌した。この溶媒洗浄工程を最大3回繰り返した。次に、固体を反応溶媒に再溶解して水をゆっくりと加えることによって沈殿させた(通常、最大100体積量)。得られた凝集固体を上澄みから除去して、ブレンダー内において水(約1リットル)中で均質化した。懸濁液を濾過し、水(通常、100体積量)に再懸濁し、最大30分間懸濁して濾過した。中性pHが得られるまで水懸濁を繰り返し、次に湿った固体をアセトンに懸濁して(100体積量、30分間撹拌、2回繰り返し)、濾過して、30℃の高真空オーブンで最大24時間乾燥させた。表1は、液体塞栓製剤のヨウ素含有量を示す。
【0042】
表1
【0043】
【0044】
Eqは、PVA主鎖上の遊離ジオール単位に対する当量を指す。
*=80%加水分解される。
**=88%加水分解される。
【0045】
***=100%加水分解される。
実施例2:ヨウ素化PVA液体塞栓プロトタイプの処方
プロトタイプ製剤は、以下のように調製した。実施例1に従って調製したヨウ素化PVAを10mlのバイアルに量り取り、全量が10ml未満で全体の濃度が4~20%(w/w)の範囲になるように目的の溶媒(通常はDMSO又はNMP)をバイアルに加えた。次に、懸濁液を含むバイアルを密封して超音波処理器に入れ、完全に溶解するまで(通常、約4時間)超音波処理した。表2は、液体塞栓製剤の例を示す。
【0046】
表2:液体塞栓製剤の例
【0047】
【0048】
実施例3:沈殿物の凝固
液体サンプルからの溶媒(DMSO)の溶出を凝固の進行の尺度として用いた。テストは、UV分光光度計に接続したSotaxUSPII溶解浴で実施した。溶解浴を37.5℃に設定して、各容器を50rpmで撹拌しながら500mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で満たした。
【0049】
容器内のDMSOの溶出を波長231nmのUVで経時的に測定した(最大2時間)。これを塞栓沈殿物が固化する速度の指標とした。3mLのDMSO適合シリンジを使用して1mlの液体塞栓サンプルを採取した。これを、送達ポートを介して溶解容器に滴下して加えた。2分間隔で追加のサンプルを残っているSotaxUSPII溶解容器に追加した。すべてのサンプルを追加して、システムを総測定実行時間の間、実行した。測定実行時間の完了時に、システムを停止して、沈殿物をさらなる分析のために保持した。記録された凝固時間は、DMSOの90%が沈殿物から溶出した時点とした。液体塞栓から溶出したDMSOの割合は、PBSの衝撃ですぐに沈殿するサンプルで観察されたDMSOのフラッシュの影響を取り除くために曲線がプラトーになったポイントに基づくものとした(
図1を参照)。
【0050】
表2aから2cは、液体塞栓製剤の沈殿時間を示す。
表2a:低分子量製剤の沈殿時間
【0051】
【0052】
表2b:中分子量製剤の沈殿時間
【0053】
【0054】
表2c:高分子量製剤の沈殿時間
【0055】
【0056】
図3は、低分子量ポリマーの凝固時間とポリマー濃度の関係を示す。
実施例4:沈殿充填体積
沈殿充填体積は、サンプルがPBS内で沈殿した後の液体塞栓サンプルの体積の減少率の測定値、及び、既知の液体体積からどのくらいの固体沈殿物が生成されるかについての測定値を提供する。
【0057】
15mlのPBSを清潔で乾燥した中型のガラスシャーレ(直径約10cm)に加え、試験する既知の量の液体塞栓(好ましくは0.5ml)をPBS溶液に滴下して10分間固化させた。サンプルが10分間固化したら、沈殿物を除去して、濾紙上で風乾した。次に、沈殿物の量をPBSでの置換によって測定した。
図2は、液体塞栓サンプルの体積減少値を示す。
【0058】
表3は、ポリマー濃度による沈殿充填体積の変化を示す。
図4は、充填体積に対するポリマー濃度の影響を示す
表3
【0059】
【0060】
実施例5:粒子状物質の生成。
粒子の生成は、液体塞栓性沈殿物の凝集性と安定性の尺度である。
針のない注射器を使用して、0.5mLの液体塞栓製剤を50mLのデュランボトル内の30±5mlのPBSに滴下して沈着させた。シリンジは、PBSの表面から12cmの高さに配置した。液体塞栓を10分間固化した。
【0061】
次に、デュランボトルに蓋をして、240rpmで30分間プレートシェーカーに移した。テストする液体塞栓サンプルをさらに複製し、プレートシェーカーの速度を400rpmと640rpmに変更して上記手順を繰り返した。デュランボトルをプレートシェーカーから取り出しサンプルを沈殿させた。デュランボトルの肉眼による目視検査を実施して、振とう中に沈殿物の大きな断片が主沈殿物から離れていないかどうかを確認して写真画像を撮影した。プラスチックピペット(先端を切り取った状態)を使用して、各デュランボトルからの溶液の一定分量をシャーレに移し、光学顕微鏡で評価した。
図3に粒子状物質と破片の例を示す。得られた画像を評価し、生成された粒子の量と観察された断片化に基づいて1~5のスコアを付けた。スコア1は、粒子の生成と断片化の程度が最小であることを示し、5は、粒子の生成の程度が高いことを示す。
【0062】
表4は、低分子量ポリマーの粒子生成スコアを示す。
表4
【0063】
【0064】
実施例6:流動条件下での沈殿
透明な取り外し可能なチューブをフローシステムに取り付け、取り外し可能なチューブを通してPBSを蠕動ポンプを使用して送り、血流状態を模倣した。2.4フレンチ(Fr)カテーテルを使用して、液体塞栓製剤を取り外し可能なチューブに送った。液体塞栓がカテーテルを離れてPBSと接触すると、取り外し可能なチューブ内に沈殿した。次に、沈殿物の長さをカテーテル先端の端から測定した。流量と速度の低下も記録した。「最長の前進」を記録した。逆流が生じた場合、その長さは「逆流の最長の長さ」(cm)としても記録した。カテーテルを沈殿試験装置のチューブから取り外して、取り外しの容易さを記録した。
【0065】
表5は、液体塞栓製剤の沈殿特性を記録したものである。
表5
【0066】
【0067】
実施例7:放射線不透過性の測定
材料の放射線不透過性測定値を得るために、実施例6からの沈殿した製剤の1cmの切片を切り取り、温かい1%アガロースゲル(シグマアルドリッチ社製品コードA9539で調製)に包埋した。サンプルは、Nuncクライオチューブバイアル(シグマアルドリッチ社製品コードV7634、48mmx12.5mm)で調製し、タングステンアノードに適合する、英国バークシャーのRSSLラボラトリーズのBruker Skyscan 1172 Micro-CTスキャナーを使用してMicro-CTを使用してスキャンした。各サンプルは、64kVの電圧と155μAの電流とで動作するタングステンアノードを備えた同一の機器構成を使用して分析した。アルミフィルター(500μm)を使用した。
【0068】
取得パラメータの概要を表6に示す。
表6
【0069】
【0070】
水(MilliQ(登録商標))ブランクは、取得日にサンプルの前に別個にスキャンした。次に、各サンプルをX線マイクロコンピューターで分析した。次に、NReconを使用してサンプルを再構築し、精製水リファレンスの対象体積(VOI)に対してキャリブレーションを行った。TwoPart分析法を使用した。まず、プラグと任意のボイド構造を含むようにチューブの内径をカバーする補間した関心領域(region of
interest)を作成した。次に画像をセグメント化してボイド構造からポリマーを分離した。次に、同日に取得した水標準を使用して、HUの放射線密度を計算した。
【0071】
表8は、DMSO中の8%w/w溶液として調製され、PVAに対するTIBAの比が異なる、実施例1、表1からの液体塞栓調製物の放射線密度値を示す。
図8は、0.10(A)、0.15(B)、及び0.20(C)TIBA当量で調製された沈殿した液体塞栓ポリマーのmicroCTスキャンを示す。
【0072】
表8
【0073】