IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-水素生成装置 図1
  • 特許-水素生成装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】水素生成装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20240315BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALN20240315BHJP
【FI】
C01B3/38
H01M8/0612
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021004089
(22)【出願日】2021-01-14
(65)【公開番号】P2022108883
(43)【公開日】2022-07-27
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 康章
(72)【発明者】
【氏名】武田 憲有
(72)【発明者】
【氏名】吉村 光生
(72)【発明者】
【氏名】西崎 柾峻
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-102223(JP,A)
【文献】国際公開第2015/115071(WO,A1)
【文献】特開2007-320812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00-6/34
H01M 8/04-8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼して燃焼排ガスを生成する加熱部と、
略鉛直方向に中心軸を有し、前記加熱部を囲むように前記加熱部の外側に配される内筒と、
前記内筒の下側の開口部を塞ぐ、下に凸の底鏡板と、
略鉛直方向に中心軸を有し、前記内筒を囲むように前記内筒の外側に配される中筒と、
前記内筒と前記中筒との間に形成される空間に保持された改質触媒と、
前記底鏡板における前記加熱部と対向する面を覆う断熱材と、を備えた水素生成装置であって、
前記内筒は、前記底鏡板との接合部が外周面側で略面一になるように、下端が縮管加工されており、
前記内筒における前記縮管加工された縮管加工部の内径が、前記断熱材の外径よりも小さく、
前記縮管加工部の端面が、前記断熱材に当接して、前記断熱材を前記底鏡板に固定している水素生成装置。
【請求項2】
前記内筒の板厚が、前記底鏡板の板厚よりも薄い、請求項1に記載の水素生成装置。
【請求項3】
前記内筒と前記底鏡板とは、溶接により接合されている、請求項1または2に記載の水素生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、水素生成装置を開示する。この水素生成装置は、燃料を燃焼して燃焼ガスを生成する加熱部と、加熱部の外側に配される内筒と、内筒の下側の開口部を塞ぐ内筒底板(以下、底鏡板)と、内筒の外側に配される中筒と、内筒と中筒との間で形成される空間に保持された改質触媒と、底鏡板の加熱部と対向する位置に設置された断熱材と、断熱材を固定する固定部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-102223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、固定金具を用いなくても断熱材を底鏡板に確実に固定することができる水素生成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における水素生成装置は、燃料を燃焼して燃焼排ガスを生成する加熱部と、略鉛直方向に中心軸を有し、加熱部を囲むように加熱部の外側に配される内筒と、内筒の下側の開口部を塞ぐ、下に凸の底鏡板と、略鉛直方向に中心軸を有し、内筒を囲むように内筒の外側に配される中筒と、内筒と中筒との間に形成される空間に保持された改質触媒と、底鏡板における加熱部と対向する面を覆う断熱材と、を備えている。
【0006】
そして、内筒は、底鏡板との接合部が外周面側で略面一になるように、下端が縮管加工されており、内筒における縮管加工された縮管加工部の内径が、断熱材の外径よりも小さく、縮管加工部の端面が、断熱材に当接して、断熱材を底鏡板に固定している。
【発明の効果】
【0007】
本開示における水素生成装置は、縮管加工部の端面が断熱材を上から常に押さえる固定部となるので、固定金具を用いなくても断熱材を底鏡板に確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における水素生成装置の概略構成図
図2】着想時に発見した課題を説明する概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、都市ガスなどの炭化水素系の燃料から、水蒸気改質反応によって水素を生成し、さらに副生した一酸化炭素(CO)などの不純物を除去することで、燃料電池発電装置の燃料ガス等に適用可能な水素リッチな改質ガスを生成するという技術があった。
【0010】
この技術は、全体形状が円筒形状である多重筒で構成された反応管を有し、反応管は、内部に加熱部である燃焼器を配し、燃焼器の外壁を形成する燃焼筒と、燃焼筒の外側に配
された内筒と、内筒の下側の開口部を塞ぐ鏡底板と、内筒の外側に配された中筒と、中筒の外側に配された外筒と 、内筒と中筒との間に形成される環状空間に充填された改質触媒と、中筒と外筒との間に形成される環状空間に充填されたCO低減触媒及びCO除去触媒と、で構成される水素生成装置により得るものであった。
【0011】
また、底鏡板の加熱部と対抗する位置には断熱材が設置され、断熱材を固定する固定部が備えられていた。
【0012】
固定部は、水素生成装置を設置する前の輸送による激しい振動に耐え、水素生成装置の運転時に800℃以上の燃焼排ガスに晒されても外れないようにするために、一般的に、金具で断熱材を押さえるようにして、金具を溶接などで内筒に確実に取り付ける必要がある。
【0013】
しかしながら、内筒と底鏡板とが一部品で製造されていると、内筒の上部開口部から固定部へ溶接を行うためのアプローチをするには距離が長くなるので、断熱材を確実に金具などで抑えて固定することが困難であった。
【0014】
そうした状況下において、発明者らは、水素生成装置を低コストで高耐久性を実現して製品を設計するという視点も考慮して、内筒の底鏡板と筒とをそれぞれ別部品で構成し、底鏡板は高耐久性確保のために筒に比べて厚肉とし、筒は底鏡板に比べて薄肉として設計することを考えた。
【0015】
そうして、底鏡板の材料使用料を小さくするために底鏡板の高さを最低にして、底鏡板の高さを最低にする代わりに筒の長さを長くして溶接で繋ぎ合わせるという着想を得た。
【0016】
図2は着想時に発見した課題を説明する概略構成図である。発明者らは、その着想を実現するには、図2に示す通り、底鏡板と金具とを溶接する工程において、後から溶接する溶接部Bの溶接信頼性を確保する(2度焼きになることを防ぐ)ためには、溶接部Aと溶接部Bとの距離を内筒の外周面において10mm以上は離す必要があり、底鏡板の高さを最低にすることはできず、10mm以上の長さ分が無駄になるという課題があることを発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0017】
そこで、本開示は内筒の底鏡板と内筒の筒とを別部品とし、底鏡板の高さをできるだけ低くしたうえで、固定金具を用いなくても断熱材を確実に固定することができる水素生成装置を提供する。
【0018】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0019】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0020】
(実施の形態1)
以下、図1を用いて、実施の形態1を説明する。
【0021】
[1-1.構成]
図1に示すように水素生成装置100は、加熱部20と、内筒21と、底鏡板22と、
中筒23と、改質触媒24と、断熱材25と、縮管加工部26と、外筒27と、水供給部28と、原料供給部29と、蒸発器30と、CO低減触媒31と、CO除去触媒32と、出口配管33と、排ガス出口配管34と、改質触媒温度検出部35と、を備える。
【0022】
加熱部20は、燃料を燃焼して燃焼排ガスを生成する燃焼器であり、水素生成装置の100の中心部に配置される。内筒21は、略鉛直方向に中心軸を有し、加熱部20を囲むように、加熱部20の外側に配置される。底鏡板22は、下に凸形状で、内筒21の下側の開口部を塞ぐように配置される。中筒23は、略鉛直方向に中心軸を有し、内筒21を囲むように、内筒21の外側に配置される。
【0023】
改質触媒24は、内筒21と中筒23との間に形成される空間に保持されている。断熱材25は、底鏡板22における加熱部20と対向する面を覆っている。外筒27は、略鉛直方向に中心軸を有し、中筒23を囲むように、中筒23の外側に配置される。
【0024】
水供給部28は、内筒21と中筒23との間の上流部に、水を供給するように構成されている。原料供給部29は、内筒21と中筒23との間の上流部に、原料を供給するように構成されている。
【0025】
蒸発器30は、水と原料とが供給された後に、加熱部20で加熱された内筒21からの熱により、水と原料との混合ガスを生成するように、内筒21と中筒23との間に構成されている。
【0026】
CO低減触媒31は、改質触媒24で反応した改質後ガス中のCOを低減するために、中筒23と外筒27との間に形成される空間に保持されている。
【0027】
CO除去触媒32は、CO低減触媒31で反応した変成後ガス中のCO濃度をさらに低下させるために、CO低減触媒31の下流で、中筒23と外筒27との間に形成される空間に保持されている。
【0028】
出口配管33は、CO除去触媒32で反応したCO除去後ガスを外部に排出できるように、外筒27の上部に、中筒23と外筒27との間の空間と連通するように構成されている。
【0029】
排ガス出口配管34は、加熱部20で燃料を燃焼して生成された燃焼排ガスを外部に排出できるように、水素生成装置100の上部に、加熱部20と内筒21との間の空間と連通するように構成されている。
【0030】
改質触媒温度検出部35は、底鏡板22の下方で、改質触媒24で反応した改質後ガスが、内筒21と中筒23との間の流路から中筒23と外筒27との間の流路に移る部分において、改質触媒24の代表温度を検知するように構成されている。
【0031】
内筒21は、底鏡板22との接合部が外周面側で略面一になるように、下端が縮管加工されている。また、内筒21における縮管加工された縮管加工部26の内径が、断熱材25の外径よりも小さくなっている。
【0032】
そして、縮管加工部26の端面が、断熱材25に当接して、断熱材25を底鏡板22に固定している。
【0033】
[1-2.動作]
以上のように構成された水素生成装置100について、以下、その動作、作用を説明す
る。
【0034】
水素生成装置100で必要な水素量を得るために、原料供給部29から都市ガスを、水供給部28から水を、それぞれ、内筒21と中筒23との間の蒸発器30に供給する。
【0035】
このとき、都市ガスの平均分子式中の炭素原子数1モルに対して水蒸気が3モル程度になるように、都市ガスと水を蒸発器30に供給する。供給された水は、蒸発器30で蒸発し水蒸気となり、都市ガスと混合される。
【0036】
都市ガスと水蒸気の混合ガスは、改質触媒24部へ供給され、改質触媒24の作用により、水蒸気改質反応が行われて改質ガスとなる。改質触媒24部から排出された改質ガスは、CO低減触媒31部に供給され、CO低減触媒31の作用により、改質ガス中のCOと水蒸気が反応し、改質ガス中のCO濃度が0.1~0.2%程度まで低減される。
【0037】
CO低減触媒31でCO濃度を低減された改質ガスは、さらにCO除去触媒32部に供給され、CO除去触媒32の作用により、CO濃度数ppm程度にまでCOが除去され、出口配管33から外部に排出される。
【0038】
燃焼器である加熱部20から排出される燃焼排ガスは、底鏡板22に向かって排出された後に、底鏡板22部近辺で折り返し、内筒21を介して改質触媒24を加熱し、蒸発器30と熱交換された後に排ガス出口配管34から排出される。
【0039】
底鏡板22は高温の燃焼排ガスが直接当たるので、高温強度を保つために内筒21よりも材料板厚を厚くし、さらに断熱材25を設けて底鏡板22の温度上昇を抑制している。また断熱材25の厚みを調整することにより、改質触媒24の温度と改質触媒温度検出部35との温度が略同じになるようにして、改質触媒温度検出部35で改質触媒24の温度を検出している。
【0040】
縮管加工部26の内径は、断熱材25の外径よりも小さく、縮管加工部26の端面は断熱材25に当接させることによって、断熱材25を底鏡板22に固定している。
【0041】
底鏡板22と内筒21とは、それぞれ別部品で構成され、底鏡板22は高耐久性確保のために高温強度に優れかつ内筒21に比べて厚肉とし、内筒21は底鏡板22に比べれば薄肉として構成している。
【0042】
底鏡板22と内筒21とは、溶接で接合されている。
【0043】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、水素生成装置100は、加熱部20と、内筒21と、底鏡板22と、中筒23と、改質触媒24と、断熱材25と、を備えている。
【0044】
加熱部20は、燃料を燃焼して、燃焼排ガスを生成するように構成されている。内筒21は、略鉛直方向に中心軸を有し、加熱部20を囲むように加熱部20の外側に配置されている。底鏡板22は、下に凸の形状で、内筒21の下側の開口部を塞ぐように構成されている。中筒23は、略鉛直方向に中心軸を有し、内筒21を囲むように内筒21の外側に配置される。改質触媒24は、内筒21と中筒23との間に形成される空間に保持されている。断熱材25は、底鏡板22における加熱部20と対向する面を覆っている。
【0045】
内筒21は、底鏡板22との接合部が外周面側で略面一になるように、下端が縮管加工されている。また、内筒21における縮管加工された縮管加工部26の内径が、断熱材2
5の外径よりも小さくなっている。
【0046】
そして、縮管加工部26の端面が、断熱材25に当接して、断熱材25を底鏡板22に固定している。
【0047】
これにより、縮管加工部26の端面が断熱材25を上から常に押さえる固定部を形成することができる。そのため、固定金具を別に用いなくても断熱材25を底鏡板22に確実に固定することができる。
【0048】
本実施の形態のように、水素生成装置100は、内筒21の板厚を、底鏡板22の板厚よりも薄くしてもよい。
【0049】
これにより、高温強度が必要な底鏡板22のみ板厚を厚くして、底鏡板22よりも高温強度が必要でない内筒21は、底鏡板22より薄肉にすることができる。そのため、必要以上に内筒21に材料費をかけることなく安価な水素生成装置100を実現することができる。
【0050】
本実施の形態のように、水素生成装置100は、内筒21と底鏡板22とは、溶接により接合してもよい。
【0051】
これにより、水素生成装置100の輸送中の振動が加わっても、内筒21と底鏡板22との当接部分が外れることはなく、また、内筒21及び底鏡板22の内側を流れる排気ガスと、内筒21及び底鏡板22の外側を流れる改質ガスとが混ざらないように確実にシールすることができる。
【0052】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において、様々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本開示は、鏡板の底面に固定用の金具を用いずに断熱材を固定することが容器に適用可能である。具体的には、水素生成装置や一般的な鏡板を有する耐圧容器などに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
20 加熱部
21 内筒
22 底鏡板
23 中筒
24 改質触媒
25 断熱材
26 縮管加工部
27 外筒
28 水供給部
29 原料供給部
30 蒸発器
31 CO低減触媒
32 CO除去触媒
33 出口配管
34 排ガス出口配管
35 改質触媒温度検出部
100 水素生成装置
図1
図2