(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】電子サイクルミシン
(51)【国際特許分類】
D05B 35/06 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
D05B35/06
(21)【出願番号】P 2021570085
(86)(22)【出願日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2021000364
(87)【国際公開番号】W WO2021141084
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2020003107
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520005820
【氏名又は名称】株式会社福永
(74)【代理人】
【識別番号】100101708
【氏名又は名称】中井 信宏
(72)【発明者】
【氏名】福永 佳久
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-090905(JP,A)
【文献】特開2010-75383(JP,A)
【文献】特開2016-19646(JP,A)
【文献】実開昭62-166296(JP,U)
【文献】登録実用新案第3172263(JP,U)
【文献】特開2014-151005(JP,A)
【文献】特開2008-125911(JP,A)
【文献】特開平6-248559(JP,A)
【文献】特開平8-226067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B1/00-97/12
D05C7/08
D06C9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンヘッドに設置された縫い針を上下動させる縫い針駆動手段と、
被縫製物を保持枠で保持し、保持された被縫製物を
前後左右のX軸とY軸の水平面に沿って任意の移動方向に移動させて縫い針の針落ち位置に移動させる移動手段と、
所望の縫製パターンを形成するための縫い針の一針ごとの針落ち位置又は一針ごとの保持枠で保持された被縫製物の移動量を定めた縫製データに基づいて前記移動手段及び縫い針駆動手段の駆動を制御する制御手段とを備えてなる電子サイクルミシンに
おいて、
前記縫い針の針落ち位置に帯状のゴムベルトの先端部を配置した状態でゴムベルトの後続部分を上下から挟み込んで挟持する2層の板状挟持機構を前記ミシンヘッドに設けたアーム状部材に取り付けるとともに、
当該板状挟持機構の先端部位に、前記制御手段からの動作信号によって挟持された状態のゴムベルトの先端部側のみを拘束する拘束手段を設け、
前記制御手段により、当該拘束手段によってゴムベルトを拘束している状態で前記縫い針駆動手段および移動手段を駆動してY軸方向のゴムベルト幅だけ被縫製物に縫製するようにし、最初のゴムベルト先端でのY軸方向のゴムベルト幅縫製が完了すると、前記拘束手段のゴムベルトへの拘束を解除し、前記移動手段を駆動してX軸の前方向に前記保持枠で保持された被縫製物を移動して所望のたるみを生じる長さ分だけゴムベルトを前記板状挟持機構から引き出し、所望分ゴムベルトが引き出されると、前記移動手段による駆動を停止し、前記拘束手段によりゴムベルトを拘束してから前記移動手段を駆動してX軸の後方向に前記保持枠で保持された被縫製物を移動し、ゴムベルトが所望のたるみ分上方へ膨らみが生じた位置で前記移動手段の駆動を停止し、この位置で前記縫い針駆動手段および移動手段を駆動してY軸方向のゴムベルト幅だけ被縫製物に縫製するように縫製工程を制御するようにして、被縫製物にたるみ部を形成したゴムベルトの縫製を行えるようにしたことを特徴とする電子サイクルミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被縫製物を固定する保持部材を予め設定した前後・左右(X軸、Y軸)方向に移動させ、所望の縫製パターンに基づく任意形状の模様縫い等を行えるようにした電子サイクルミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子サイクルミシンは、被縫製物を固定する保持部材を前後・左右(X軸、Y軸)方向に移動出来るようにし、上下動を行う縫い針に対して、保持部材を予め設定されたX‐Y座標に移動させ、縫い針の位置を相対移動させることにより、予め登録された縫製パターンに基づく任意形状の模様縫い等を行うことができるようにしている。
【0003】
この電子サイクルミシンでは、上記したように、縫い針の上下動に対して被縫製物を固定した保持部材の前後・左右(X軸、Y軸)方向の移動を複数の縫製パターンが記憶された縫製データに従って行うことにより、任意形状の模様を被縫製物に縫い付けることができるようにしているので、様々な縫製パターンに対する縫い針と保持台との相対的な連動を精度よく制御することが求められている。
【0004】
また、縫製パターンによっては保持部材も複数用意されており、適宜必要な保持部材に交換される場合もある。このため、保持部材を変更した場合や被縫製物を重ねて縫製する場合等において、保持部材にセットする際の被縫製物の配置位置が異なると不良品が生じるので、特に保持部材の位置決め制御やその移動制御に関して種々の解決手段が提案されている(特許文献1)(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-154513
【文献】特開2019-201728
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、電子サイクルミシンでは、種々の縫製パターンを任意に設定して実施できるように、保持部材の配置における位置決め制御や移動制御の精度を高める提案が行われている。しかしながら、電子サイクルミシンを利用して工具収納用ケース内の基台に工具保持用ゴムベルトを縫い付ける場合等には、保持部材を左右前後に精度よく移動させて縫製する機能だけでは実施することができないという問題があった。
【0007】
例えば、レンチやスパナのような工具を収納するケースを製造する場合では、使用対象物に応じてサイズの異なるものを数種類セットして収納することが要望される。そのため、
図4に示すように、基台30にゴムベルト31を縫製するには、工具のサイズに合わせて挿入した際にゴム材として有する一定の弾性力によって保持できるように、それぞれの工具サイズに応じた山なりの挿入箇所となるたるみ部32を形成するようにしている。
【0008】
かかる縫製を行う場合には、
図5(a)に示すように、たるみ部32を形成するために、別設のたるみ形成治具40が用いられている。たるみ形成治具40は、電子サイクルミシンの固定テーブル51に基部側が固定され、山なりのたるみ部32を形成する突起体41が櫛状に設けられた櫛状治具部40aと、基部側で水平方向に回動可能に取り付けられ、櫛状治具部40a側に回動すれば、突起体41の先端部が嵌合するへこみ部42が形成された回動治具部40bとからなり、これら両部を合わせると梯子状のゴムベルト載置部となるように構成されている。
【0009】
このたるみ形成治具40を用いることで、同図(b)に示すように、電子サイクルミシンの保持部材50で保持された基台30に対し、一旦、櫛状治具部40a側に回動治具部40bを回動させ、突起体41の先端部にへこみ部42を嵌合して梯子状のゴムベルト載置部とし、この載置部にゴムベルト31を載置してゴムベルト31の縫製を開始する。作業者がゴムベルト31を押さえながらミシンを起動すれば、予め入力されて縫製データに基づいて、たるみ形成治具40の中抜きになった梯子状の突起体41の縁に沿って、保持部材50で保持された基台30を水平前後に移動させながらゴムベルト31が基台30に順次縫製されていく。
【0010】
このように縫製することで、突起体41の幅に応じたたるみ部32が形成された状態でゴムベルトの縫い付けを行うことができ、基台30への縫製が終われば、たるみ形成治具40の回動治具部40bを開く方向に回動するとともに、保持部材50の拘束を解き、ゴムベルト31が縫製された基台30を取り出し、次の基台30をセットして回動治具部40bを閉じる方向に回動し、保持部材50により基台30を拘束して、上記と同じ作業が行われる。
【0011】
このように、工具や文具などを収納する収納ケース内の基台に被収納具を保持するベルト材を縫製する作業を行う場合には、収納スペースとなるゴム材のたるみ部を形成するための治具が別途必要としていたものであり、順次縫製を行うために、治具そのものへの繰り返しセット作業を要していた。また、被収納具の種類が異なり、その収納数や収納形態が変わるごとに、たるみ形成治具40の構成も変更しなければならず、連動する保持部材への交換取り付け取り外し作業も煩雑となり、作業者の手作業の要素も多く、製造効率を高めることができなかったものである。
【0012】
また、形成するたるみ部は、たるみ形成治具40の櫛状治具部40aの厚みに依存しているため、縫い針の上下動の動き領域も確保しなければならないことから、係る厚みの制限を受けるため、大きなたるみを形成することはできなかった。特に、被縫製物が針の上下動時に浮かないようにするために針押さえ部材が設けられている場合は、針押さえもこの治具の近傍で上下動するため、例えば、ペンチ先端部やドライバーのグリップ部のように幅の狭さにくらべ厚みのあるものを収納出来るようにするには、尚更大きなたるみを形成する必要があるが、従来の治具では上記した物理的な構成理由から形成することは出来なかったものである。
【0013】
さらに、
図5に示すような櫛状治具部40aと回動治具部40bとで構成されたたるみ形成治具40のタイプを使用する場合、回動治具部40bの可動域が必要なため、
図6に示すように、ゴムベルトの縫製が狭い間隔で上下に2列以上行う必要がある場合も可動域が干渉しあうため、実施が不可能となり、配置全体を考慮した形状の治具によらなければならず、一層作業性が悪くなっていた。
【0014】
そこで、本発明は、保持部材の配置における位置決め制御や移動制御の精度を高めるように機能が向上されてきた電子サイクルミシンであっても、平面的な縫製ではないゴムベルトのような部材を基台にたるみを生じさせて縫製する際に、従来のような治具を用いた作業者の手作業を低減できるとともに、たるみ形成の形態を幅が狭くてもたるみ量を大きくでき、近接領域にゴムベルトを2本以上縫製する場合も可能にできるなど、移動制御に優れた機能を発揮させながら、効率よくゴムベルト材を様々なバージョンに対応させて所望の形態で被縫製物に縫製することできる電子サイクルミシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は次のように構成した。すなわち、本発明に係る電子サイクルミシンは、ミシンヘッドに設置された縫い針を上下動させる縫い針駆動手段と、被縫製物を保持枠で保持し、保持された被縫製物を前後左右のX軸とY軸の水平面に沿って任意の移動方向に移動させて縫い針の針落ち位置に移動させる移動手段と、
所望の縫製パターンを形成するための縫い針の一針ごとの針落ち位置又は一針ごとの保持枠で保持された被縫製物の移動量を定めた縫製データに基づいて前記移動手段及び縫い針駆動手段の駆動を制御する制御手段とを備えてなる電子サイクルミシンにおいて、
前記縫い針の針落ち位置に帯状のゴムベルトの先端部を配置した状態でゴムベルトの後続部分を上下から挟み込んで挟持する2層の板状挟持機構を前記ミシンヘッドに設けたアーム状部材に取り付けるとともに、
当該板状挟持機構の先端部位に、前記制御手段からの動作信号によって挟持された状態のゴムベルトの先端部側のみを拘束する拘束手段を設け、
前記制御手段により、当該拘束手段によってゴムベルトを拘束している状態で前記縫い針駆動手段および移動手段を駆動してY軸方向のゴムベルト幅だけ被縫製物に縫製するようにし、最初のゴムベルト先端でのY軸方向のゴムベルト幅縫製が完了すると、前記拘束手段のゴムベルトへの拘束を解除し、前記移動手段を駆動してX軸の前方向に前記保持枠で保持された被縫製物を移動して所望のたるみを生じる長さ分だけゴムベルトを前記板状挟持機構から引き出し、所望分ゴムベルトが引き出されると、前記移動手段による駆動を停止し、前記拘束手段によりゴムベルトを拘束してから前記移動手段を駆動してX軸の後方向に前記保持枠で保持された被縫製物を移動し、ゴムベルトが所望のたるみ分上方へ膨らみが生じた位置で前記移動手段の駆動を停止し、この位置で前記縫い針駆動手段および移動手段を駆動してY軸方向のゴムベルト幅だけ被縫製物に縫製するように縫製工程を制御するようにして、被縫製物にたるみ部を形成したゴムベルトの縫製を行えるようにしたことを特徴としている。
【0016】
上記のように構成された電子サイクルミシンの作動を説明する。先ず、ゴムベルトの先端を挟持機構の先端部より縫い針の針落ち位置直下に配置した状態にして後続のゴムベルトを挟持機構によって挟持すると、ゴムベルト先端部位が予め決められた縫製位置で被縫製物(例えば、工具収納ケースの基台、以下基台という)に対し最初の縫製がおこなわれる。この時、挟持機構の拘束手段を駆動してゴムベルトをしっかりと拘束して縫製時のゴムベルトがズレないようにする。縫製が終了すると、この拘束は解かれる。
【0017】
次に、ゴムベルトが最初の縫製位置で基台に縫製されると、移動手段を駆動し、移動台上の保持枠で保持された基台がゴムベルトの縫製送り方向である前側に移動させる。基台にはゴムベルトの先端が縫製されているので、基台の移動に伴って挟持機構で挟持された状態のゴムベルトも拘束手段による拘束が解かれており、前側に引き出される。この時の移動は、次のゴムベルトに対する縫製位置への移動長さと所望のたるみを生じる長さとを合わせた長さとなるように移動手段を制御して行われる。
【0018】
次に、基台が前側に移動したことにより挟持機構からゴムベルトも同様に前側に引き出されているが、この引き出された位置で挟持機構の拘束手段を駆動し、挟持機構の先端部位で挟持された状態のゴムベルトを拘束する。この拘束が行われると、ゴムベルトを拘束したまま、移動手段を駆動して基台を縫い針側の後方へ移動させる。この移動は、ゴムベルトの次の縫製位置が縫い針直下の位置に来るように制御される。
【0019】
この基台の後方への移動により、ゴムベルトは拘束されたままなので、ゴムベルトの次の縫製位置が縫い針直下の位置まで移動すると、最初に縫製されたゴムベルトの先端から次の縫製位置にかけてのゴムベルトが上方へ膨らみ、たるみが生じることになる。このたるみ長さは、上記した移動手段による移動距離を制御することで自在に設定することができる。
【0020】
たるみが生じた状態で、ゴムベルトは依然拘束されたままであり、このタイミングで縫い針手段を駆動して次のゴムベルトの縫製位置として設定された箇所で基台に対して縫製すれば、ゴムベルトにたるみ部を形成した状態で基台に縫い付けることができる。この縫製が完了すれば、拘束手段による拘束を解いて移動手段を駆動し、次のゴムベルトに対する縫製位置への移動長さと所望のたるみを生じる長さとを合わせた長さとなるように基台を前方へ移動させ、上記した一連の縫製作業を繰り返し行えば、基台に対して工具等を収納するスペースとなるたるみ部を作業効率よく形成しながら、ゴムベルトの縫い付けを完了することができる。
【0021】
ゴムベルトの縫製位置やたるみ部形成時に求められる幅や大きさの設定は、挟持機構の拘束手段、縫い針駆動手段、移動手段の上記したそれぞれの駆動制御において、制御手段への制御データとして予めプログラミングしておけば、自在に設定することができる。また、挟持機構の拘束手段は、電磁力若しくは空気圧によって拘束力を発揮できるように構成することで、他の駆動手段との連携動作制御を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる電子サイクルミシンによれば、ゴムベルトのような部材を基台にたるみを生じさせて立体的に縫製する際に、従来のような治具を不要にして、たるみ部の形成を自在に設定し実施することができるので、移動制御に優れた本来の機能を発揮させながら、効率よくゴムベルト材を様々なバージョンに対応させて所望の形態で被縫製物に縫製することできる。また、従来の冶具では不可能であった狭い間隔で隣接した被縫製物にも、縫製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明にかかる電子サイクルミシンの構成の概略を示す概略斜視図である。
【
図2】本発明の実施例の要部であるゴムベルトの挟持機構の動作を説明する概略図である。
【
図3】実施例にかかる電子サイクルミシンによりゴムベルト縫製の一工程が終了した状態を説明する概略斜視図である。
【
図4】基台にたるみ部を形成してゴムベルトを縫製した状態を説明する図である。
【
図5】たるみ部の形成に治具を使用して行う場合を説明する図である。
【
図6】基台に上下2列にゴムベルトを縫い付けた状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づき説明する。
【0025】
本発明の実施例である電子サイクルミシン1は、
図1に示すように、従来の電子サイクルミシンと同様に、ミシンヘッド2に設置された縫い針3を、図示しないミシンヘッド2内の縫い針駆動手段20によって上下動するように駆動され、被縫製物6を縫い付けるように動作する。被縫製物6は、ミシン本体の固定テーブル5に載置され、保持枠4によって保持される。保持枠4は、これも従来と同様に、前後左右に所謂X軸、Y軸に沿って固定テーブル5上を自在に移動できるように移動手段21によって駆動される。これらの縫い針駆動手段20と移動手段21の駆動は、被縫製物6に対して求められる縫製パターンの縫製データが制御手段22に入力され、予め設定されたプログラムによってその動作が制御される。
【0026】
このように制御手段22は、所望の縫製パターンを形成するための縫い針3の一針ごとの針落ち位置又は一針ごとの被縫製物6の移動量を定めた縫製データに基づいて縫い針駆動手段20及び移動手段21の駆動を制御する。
【0027】
本発明に係る実施例には、上記した従来と同様の構成要素の他に、被縫製物6がレンチやスパナのような工具を収納するケース内に設けられる基台の場合であって、この基台6(以下、被縫製物を基台という)に帯状のゴムベルト10を、
図4に示すような工具サイズに応じた山なりの挿入箇所となるたるみ部32の形成を行う際に、容易に効率よく行うことができるようにした機構が付設されている。
【0028】
ミシンヘッド2の側面にはアーム部材7が取り付けられており、このアーム部材7の下端には、ゴムベルト10の先端が縫い針3の針落ち位置に配置され、後続するゴムベルト10の一定長さを挟持する挟持機構8が設置されている。挟持機構8は、ゴムベルト10を上下から挟み込む2層の板状材で構成され、その先端が上記したように、ゴムベルト10の先端が縫い針3の針落ち位置に配置できるように、縫い針3の直ぐ近傍に設置されている。ゴムベルト10は、挟持機構8の2層になった板状材の間に挟み込めるように隙間が形成されている。この挟持機構8は、固定テーブル5に支持部材を設けて取り付けられる場合もある。
【0029】
また、この挟持機構8の縫い針3側の先端部には、縫い針3によってゴムベルト10を基台6に縫い付ける際に、ずれが生じないように挟持したゴムベルト10をさらに拘束する拘束手段9が設けられている。その詳細な構成は図示していないが、制御手段22からの駆動信号によって動作する電磁力により2層の板状先端部同士が吸着してゴムベルト10の先端部を拘束するように構成されている。拘束力としては、電磁力を利用する場合もあれば、空気圧を利用する場合もある。
【0030】
電子サイクルミシン1は、上記のように構成されており、基台6にゴムベルト10を縫い付ける際には以下のように動作する。
【0031】
図2は、本発明の実施例の要部であるゴムベルト10の挟持機構8の動作を説明する概略図である。先ず、同図(a)に示すように、ゴムベルト10の先端を挟持機構8の先端部より縫い針3の針落ち位置直下に配置した状態にして後続の帯状ゴムベルト10を挟持機構8によって挟持すると、ゴムベルト10の先端部位の基台6における縫製位置h1で最初の縫製がおこなわれる。この時、挟持機構8の拘束手段9を駆動してゴムベルト10をしっかりと拘束して縫製時のゴムベルト10がズレないようにする。この縫製が終了すると、同図(b)に示すように、拘束手段9での拘束を解除する。
【0032】
次に、ゴムベルト10が最初の縫製位置h1で基台6に縫製されると、同図(c)に示すように、移動手段21を駆動して、固定テーブル5上の保持枠4で保持された基台6がゴムベルト10の縫製送り方向である前側(同図ではA方向)に移動させる。基台6にはゴムベルト10の先端が縫製されており、基台6の移動に伴って挟持機構8で挟持された状態のゴムベルト10も拘束手段9による拘束が解除されているので、A方向に引き出される。この時の移動は、次のゴムベルト10に対する縫製位置h2への移動長さと所望のたるみを生じる長さとを合わせた長さとなるように移動手段21を駆動制御して行われる。
【0033】
次に、基台6がA側に移動したことにより挟持機構8からゴムベルト10も同様にA側に引き出されているが、この引き出された位置で挟持機構8の拘束手段9を駆動し、同図(d)に示すように、挟持機構8の先端部位で挟持された状態のゴムベルト10を拘束する。この拘束が行われると、ゴムベルト10を拘束したまま、移動手段21を駆動して基台6を縫い針3側(B方向)へ移動させる。この移動は、次の縫製位置h2が縫い針3直下の位置に来るように制御される。この基台6のB側への移動により、ゴムベルト10は拘束されたままなので、ゴムベルト10の次の縫製位置h2が縫い針3直下の位置まで移動すると、同図(e)に示すように、最初に縫製されたゴムベルトの先端から次の縫製位置h2にかけてのゴムベルト10が上方へ膨らみ、たるみが生じることになる。
【0034】
次に、たるみが生じた状態で、ゴムベルト10は依然拘束されたままであり、このタイミングで縫い針駆動手段20を駆動して次のゴムベルトの縫製位置h2として設定された箇所で基台6に対して縫製すれば、同図(f)に示すように、ゴムベルト10にたるみ部を形成した状態で基台6に縫い付けることができる。
図3に、ゴムベルト縫製の一工程が終了した状態を示す。
【0035】
このようにしてゴムベルト10の基台6への縫製が完了すれば、拘束手段9による拘束を解除して移動手段21を駆動し、次のゴムベルト10に対する縫製位置へ上記した一連の縫製作業を順次繰り返して行えば、ゴムベルト10の基台6への縫い付けを完了することができる。以上の一連の縫製工程は、ゴムベルトの縫製位置やたるみ部形成時に求められる幅や大きさの設定を、挟持機構8の拘束手段9、縫い針駆動手段20、移動手段21の上記したそれぞれの駆動制御において、制御手段22への制御データとして予めプログラミングしておけば、全て自動で行うことができるので、従来のような治具を不要にし、治具をセットする場合の手作業なども不要にすることができ、大幅に製造効率を高めることができる。
【0036】
また、A,B方向のX軸のみの移動においてたるみ部を形成するので、ゼロからかなり大きなものまで形成することができ、さらに、プログラミングの設定を変えることで、容易にたるみ部の幅や大きさを自在に変更でき、従来実施することができなかった複数列にゴムベルトを様々なパターンで縫製することもできる。そのため、従来のような工具や文具などを含め、収納ケースを構成する際の収納物に従来では実施出来なかったものまで対象とすることが可能となり、その汎用的な使用価値も高めることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 電子サイクルミシン
2 ミシンヘッド
3 縫い針
4 保持枠
5 固定テーブル
6 基台(被縫製物)
7 アーム部材
8 挟持機構
9 拘束手段
10 ゴムベルト
20 縫い針駆動手段
21 移動手段
22 制御手段