(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】スクロール圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
F04C18/02 311S
(21)【出願番号】P 2021574541
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2020047805
(87)【国際公開番号】W WO2021153099
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2020010489
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 章史
(72)【発明者】
【氏名】今井 悠介
(72)【発明者】
【氏名】作田 淳
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 敏
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-8006(JP,A)
【文献】実開昭63-171681(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機構部であって、固定スクロールと、旋回スクロールと、前記旋回スクロールを旋回駆動する回転軸と、を有する圧縮機構部と、
前記圧縮機構部を駆動する電動機構部と、
前記圧縮機構部及び電動機構部を収容し、底部に潤滑油を貯留する貯油部を有した密閉容器と、
を備え、
前記固定スクロールは、円板状の固定スクロール鏡板と、前記固定スクロール鏡板に立設された固定渦巻きラップと、前記固定渦巻きラップの周囲に配置された外周壁部と、を有し、
前記旋回スクロールは、円板状の旋回スクロール鏡板と、前記旋回スクロール鏡板に立設された旋回渦巻きラップと、を有し、
前記固定スクロール及び前記旋回スクロールは軽金属で構成され、
前記固定スクロール及び前記旋回スクロールは、前記旋回渦巻きラップと前記固定スクロール鏡板との間に軸方向の隙間Hoを有し、且つ、前記固定渦巻きラップと前記旋回スクロール鏡板との間に軸方向の隙間Hfを有するように配置され、
前記旋回スクロール鏡板は、前記固定スクロールの最大伸開角よりも大きい領域において、前記固定スクロールの前記外周壁部に対して押し付けられるように構成され、
前記固定スクロール及び前記旋回スクロールの少なくともいずれかには表面処理が施され、
前記軸方向の隙間Hfと前記軸方向の隙間Hoとが、Hf≦Hoの関係であり、
前記固定スクロールの硬度が前記旋回スクロールの硬度よりも高い、
スクロール圧縮機。
【請求項2】
前記固定スクロール及び前記旋回スクロールの少なくともいずれかに、陽極酸化被膜処理又はめっき処理による表面処理が施されている、
請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特に空気調和機、給湯器又は冷蔵庫等の冷凍機に用いられる、スクロール圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2は、空気調和機等に用いられているスクロール圧縮機を開示する。このスクロール圧縮機は、固定スクロールの固定渦巻きラップと旋回スクロールの旋回渦巻きラップとを互いに噛み合わせ、旋回スクロールを旋回運動させることで冷媒を圧縮している。上記固定スクロール及び旋回スクロールにおいて、互いに同種の金属が用いられる場合に、固定スクロール及び旋回スクロールのうちのいずれか一方の表面に陽極酸化被膜処理又はメッキ処理といった表面処理を施すことで、固定スクロールと旋回スクロールとの間の焼き付きを防いでいる。例えば、特許文献1では、固定スクロール及び旋回スクロールには、アルミニウムを主成分とする合金が用いられている。そして、旋回スクロールについて、アルマイト処理が行われたうえで、加圧処理によって旋回スクロールの表面の平滑化が行われている。また特許文献2では、固定スクロール及び旋回スクロールにはアルミニウムが用いられている。そして、固定スクロール及び旋回スクロールのうちの一方の被膜が硬質酸化アルマイトで構成されており、他方の被膜が半硬質酸化アルマイトで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-132297号公報
【文献】実開昭63-171681号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示は、固定スクロールと旋回スクロールとの間の焼き付きを防止するとともに、圧縮機の効率及び信頼性を更に向上させたスクロール圧縮機を提供する。
【0005】
本開示のスクロール圧縮機は、固定スクロールと旋回スクロールがともに軽金属で構成されており、旋回スクロールの旋回渦巻きラップと固定スクロールのラップ面側の固定スクロール底面との間、および固定スクロールの固定渦巻きラップと旋回スクロールのラップ面側の旋回スクロール底面との間に軸方向隙間が形成され、かつ、旋回スクロール鏡板が固定スクロールの外壁最大伸開角よりも大きい領域において、固定スクロールの外周壁部に押し付けられる構成である。また、固定スクロールと旋回スクロールのいずれか一方あるいは両方に表面処理が施され、いずれか一方の硬度が他方の硬度よりも高くなるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施の形態1におけるスクロール圧縮機の縦断面図である。
【
図2】
図2は、同スクロール圧縮機の圧縮機構部の固定スクロールと旋回スクロールとの噛み合わせ構成を示す拡大断面図である。
【
図3】
図3は、同スクロール圧縮機における固定スクロールの平面図である。
【
図4】
図4は、同スクロール圧縮機の固定スクロールと旋回スクロールとの軸方向の隙間を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、スクロール圧縮機は、特許文献1又は特許文献2に記載されているように、固定スクロール及び旋回スクロールのいずれか一方の表面に表面処理が施されて、固定スクロールと旋回スクロールとの間の焼き付きを防止していた。ここで仮に旋回スクロールに表面処理が施されて硬質化されている場合には、固定スクロールと旋回スクロールとは常に摺動しているため、両スクロールの摺動によって軟質である固定スクロールの固定スクロール底面が摩耗していく。このとき、旋回スクロールの渦巻きラップは、摩耗の進行が速い固定スクロールの固定スクロール底面と、旋回スクロールの旋回スクロール底面とで挟み込まれてしまい、摺動抵抗が増大して焼き付きの原因となる。また、旋回スクロールの旋回スクロール底面と固定スクロールの渦巻きラップ先端とが摺動することで、旋回スクロールにかかる回転モーメントが大きくなり、旋回スクロールが転覆してしまうという懸念がある。このような、スクロール圧縮機の効率の低下、及び、信頼性の低下の虞に対しては、更なる改善の余地がある。
【0008】
発明者らはこのような課題を見出し、これを解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0009】
本開示は、固定スクロールと旋回スクロールとの摺動抵抗及び回転モーメントの増大等を抑制して、効率及び信頼性を高めたスクロール圧縮機を提供する。
【0010】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0011】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0012】
(実施の形態1)
以下、
図1~
図4を用いて、実施の形態1を説明する。
【0013】
[1-1.構成]
図1に示すように、スクロール圧縮機100は、密閉容器1内に、冷媒を圧縮する圧縮機構部10と、圧縮機構部10を駆動する電動機構部20と、が配置されて構成されている。
【0014】
密閉容器1は、上下方向に沿って延びる円筒状に形成された胴部1aと、胴部1aの下部開口を塞ぐ下蓋1bと、胴部1aの上部開口を塞ぐ上蓋1cと、で構成されている。
【0015】
密閉容器1には、圧縮機構部10に冷媒を導入する冷媒吸込管2と、圧縮機構部10にて圧縮された冷媒を密閉容器1の外に吐出する冷媒吐出管3と、が設けられている。
【0016】
圧縮機構部10は、固定スクロール11と、旋回スクロール12と、旋回スクロール12を旋回駆動する回転軸13と、を有している。
【0017】
電動機構部20は、密閉容器1に固定されたステータ21と、ステータ21の内側に配置されたロータ22と、を備える。ロータ22には回転軸13が固定される。
【0018】
回転軸13の上端には、回転軸13に対して偏心した偏心軸13aが形成されている。偏心軸13aには、偏心軸13aの上面に開口する凹部によってオイル溜まりが形成されている。
【0019】
固定スクロール11及び旋回スクロール12の下方には、固定スクロール11及び旋回スクロール12を支持する主軸受30が設けられている。
【0020】
主軸受30には、回転軸13を軸支する軸受部31と、ボス収容部32と、が構成されている。主軸受30は、溶接又は焼き嵌め等によって密閉容器1に固定される。回転軸13の下端部13bは、密閉容器1の下部に配置された副軸受18に軸支されている。
【0021】
固定スクロール11は、円板状の固定スクロール鏡板11aと、固定スクロール鏡板11aから立設された渦巻状の固定渦巻きラップ11bと、固定渦巻きラップ11bの周囲を取り囲むように立設された外周壁部11cと、を備える。固定スクロール鏡板11aの略中心部に吐出ポート14が形成されている。
【0022】
旋回スクロール12は、円板状の旋回スクロール鏡板12aと、旋回スクロール鏡板12aのラップ側端面から立設された旋回渦巻きラップ12bと、旋回スクロール鏡板12aの反ラップ側端面(旋回スクロール鏡板12aのラップ側端面と反対側の面)に形成された円筒状のボス部12cと、を備えている。
【0023】
固定スクロール11の固定渦巻きラップ11bと旋回スクロール12の旋回渦巻きラップ12bとは相互に噛み合わされ、固定渦巻きラップ11bと旋回渦巻きラップ12bとの間に複数の圧縮室15が形成される。
【0024】
ボス部12cは、旋回スクロール鏡板12aの略中央に形成される。偏心軸13aはボス部12cに挿入され、ボス部12cはボス収容部32に収容される。
【0025】
固定スクロール11は、外周壁部11cで複数本のボルト(図示せず)を用いて主軸受30に固定される。一方、旋回スクロール12は、オルダムリングなどの自転拘束部材17を介して固定スクロール11に支持されている。旋回スクロール12の自転を拘束する自転拘束部材17は、固定スクロール11と主軸受30との間に設けられている。これにより、旋回スクロール12は、固定スクロール11に対して自転しないで旋回運動をする。
【0026】
密閉容器1の底部には、潤滑油を貯留する貯油部4が形成されている。回転軸13の下端には容積型のオイルポンプ5が設けられている。オイルポンプ5は、オイルポンプ5の吸い込み口が貯油部4内に存在するように配置される。オイルポンプ5は、回転軸13によって駆動され、密閉容器1の底部に設けられた貯油部4にある潤滑油を、圧力条件や運転速度に関係なく確実に吸い上げるので、オイル切れの心配が解消される。
【0027】
回転軸13には、回転軸13の下端部13bから偏心軸13aに至る回転軸オイル供給孔13cが形成されている。
【0028】
オイルポンプ5で吸い上げられた潤滑油は、回転軸13内に形成された回転軸オイル供給孔13cを通じて、副軸受18の軸受、軸受部31及びボス部12c内に供給される。
【0029】
冷媒吸込管2から吸入される冷媒は、吸入ポート15aから圧縮室15に導かれる。圧縮室15は、外周側から中央部に向かって容積を縮めながら移動する。圧縮室15で所定の圧力に到達した冷媒は、固定スクロール11の中央部に設けられた吐出ポート14から吐出室6に吐出される。吐出ポート14には吐出リード弁(図示せず)が設けられている。圧縮室15で所定の圧力に到達した冷媒が吐出リード弁を押し開くことで、冷媒が吐出室6に吐出される。吐出室6に吐出された冷媒は、密閉容器1内の上部に導出され、冷媒吐出管3から吐出される。
【0030】
図2は、本実施の形態のスクロール圧縮機100における固定スクロール11と旋回スクロール12との噛み合わせ構成を示している。固定渦巻きラップ11bの先端面と旋回スクロール底面12eとの間、および、固定スクロール底面11dと旋回渦巻きラップ12bの先端面との間には、それぞれ軸方向の隙間が形成されている。
【0031】
図3に示す固定スクロール11において、固定スクロール11の外壁最大伸開角よりも大きい領域をハッチングで示している。このハッチングされた領域は、固定スクロール11の平面視において、固定スクロール11の最大伸開角までのインボリュート曲線の外側に存在する固定スクロール11の部分であり、外周壁部11cに該当する。旋回スクロール12の旋回スクロール鏡板背面12dに圧力が印加されることで、旋回スクロール鏡板12aの外周部が
図3のハッチングで示す領域において、固定スクロール11の外周壁部11cに押し付けられるように構成されている。
【0032】
本実施の形態によるスクロール圧縮機100は、固定スクロール11及び旋回スクロール12のいずれか一方、あるいは両方に、表面処理が施されている。これにより、固定スクロール11及び旋回スクロール12のいずれか一方の硬度が他方の硬度よりも高くなるようにしている。表面処理の方法としては、例えば陽極酸化被膜(アルマイト)処理が知られている。
【0033】
[1-2.動作]
以上のように構成されたスクロール圧縮機100について、以下その動作、作用について説明する。
【0034】
上記構成のスクロール圧縮機100は、固定スクロール11の硬度と旋回スクロール12の硬度との間に差が設けられているので、固定スクロール11及び旋回スクロール12のうち硬度の低いスクロールが適度に摩耗する。ここで、本実施の形態においては、固定スクロール11の固定渦巻きラップ11bの先端面と旋回スクロール12の旋回スクロール底面12eとの間、および、固定スクロール底面11dと旋回渦巻きラップ12bの先端面との間には、軸方向に隙間が形成されている。このため、硬度の低いスクロールが適度に摩耗しても、旋回スクロール12の旋回渦巻きラップ12bが固定スクロール底面11dと旋回スクロール底面12eとの間に挟み込まれることが回避される。よって、旋回スクロール12の摺動による固定スクロール11と旋回スクロール12との間の焼き付きを防止して、信頼性を向上させることができる。また、旋回スクロール12にかかる回転モーメントが大きくなることが回避されるため、旋回スクロール12の転覆も抑制できる。
【0035】
更に、上記の如く硬度の低いスクロールに適度な摩耗が生じても、前述したように旋回スクロール12の旋回渦巻きラップ12bが固定スクロール底面11dと旋回スクロール底面12eとの間に挟み込まれるようなことが回避されるので、固定スクロール11に旋回スクロール12を押し付けることが可能になる。従って、圧縮室15から吸入ポート15aへの冷媒の漏れを減少させて、漏れ損失を低減することができる。
【0036】
また、本実施の形態のスクロール圧縮機100は、固定スクロール11の外壁最大伸開角よりも大きい領域11e(
図3のハッチング部分)と旋回スクロール鏡板12aの外周部とを摺動させることで、旋回スクロール12の転覆モーメントを小さくし、旋回スクロール12の転覆耐力を向上させている。よって、旋回スクロール12の転覆によるガス漏れを抑制することができる。従って、上述の冷媒の漏れ損失の低減効果と合わさることで、圧縮機の効率をさらに向上させることができる。なお、転覆とは、圧縮室15から押し返される力によって、旋回スクロール12が固定スクロール11から離間してしまう状態のことを指す。
【0037】
図4は、固定渦巻きラップ11bと旋回スクロール底面12eとの軸方向の隙間Hfと、旋回渦巻きラップ12bと固定スクロール底面11dとの軸方向の隙間Hoとの関係を示した断面図である。
【0038】
固定渦巻きラップ11bと旋回スクロール底面12eとの間の軸方向の隙間Hfと、旋回渦巻きラップ12bと固定スクロール底面11dとの間の軸方向の隙間Hoは、この実施の形態ではHf≦Hoとなるように設定されている。また、本実施の形態では、固定スクロール11の硬度が旋回スクロール12の硬度よりも高くなるように構成されている。
【0039】
このように、固定渦巻きラップ11bと旋回スクロール底面12eとの間の軸方向の隙間Hfよりも旋回渦巻きラップ12bと固定スクロール底面11dとの間の軸方向の隙間Hoが大きく構成されることで、旋回渦巻きラップ12bの先端面が固定スクロール底面11dと摺動することがなくなるため、転覆耐力がより高くなる。
【0040】
さらに、固定スクロール11の硬度を旋回スクロール12の硬度よりも高くすることで、圧縮機の運転状態の過渡期や異常状態においても硬度の高い固定スクロール11の固定渦巻きラップ11bと旋回スクロール底面12eとを摺動させることで、固定渦巻きラップ11bと旋回渦巻きラップ12bの摩擦が抑制されるため、スクロール圧縮機100の信頼性を担保することができる。もし仮に、隙間HfとHoとの関係が逆になった場合(Hf>Ho)は、硬度の高いスクロールのラップ先端で荷重を受けることになるため、スクロール圧縮機100の信頼性の低下が懸念される。
【0041】
なお、本実施の形態では、表面処理として陽極酸化被膜(アルマイト)処理が行われる場合について説明した。しかしながら、表面処理の方法としては、陽極酸化被膜処理に限定されない。例えば、めっき処理であっても固定スクロール又は旋回スクロール等の部材の硬度を高くすることができるため、本開示と同様の効果が得られる。
【0042】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態におけるスクロール圧縮機は、固定スクロール及び旋回スクロールをともに軽金属で構成し、旋回スクロールの旋回渦巻きラップと固定スクロールのラップ面側の固定スクロール底面との間、および、固定スクロールの固定渦巻きラップと旋回スクロールのラップ面側の旋回スクロール底面との間に軸方向の隙間を形成している。また、旋回スクロールの鏡板が固定スクロールの外壁最大伸開角よりも大きい領域に押し付けられる構成とするとともに、固定スクロールと旋回スクロールのいずれか一方あるいは両方に表面処理を施し、いずれか一方の硬度を他方の硬度よりも高く構成している。
【0043】
これにより、固定スクロールと旋回スクロールとの摺動による焼き付きを防止し、信頼性を向上させることができる。また、旋回スクロールの転覆モーメントを小さくして、旋回スクロールの転覆等によるガス漏れ、又は圧縮室から吸入ポートへのガス漏れを減少させることで、スクロール圧縮機の効率を向上させることができる。
【0044】
なお、上記スクロール圧縮機において、固定スクロールの固定渦巻きラップと旋回スクロール底面の軸方向の隙間Hfと、旋回スクロールの旋回渦巻きラップと固定スクロール底面の軸方向の隙間Hoとが、Hf≦Hoとなるように構成されている。また、固定スクロールの硬度が旋回スクロールの硬度よりも高くなるように構成されている。
【0045】
これにより、旋回スクロールの転覆耐力をより確実に向上させることができるとともに、圧縮機の運転状態の過渡期や異常状態においても固定渦巻きラップと旋回渦巻きラップとの摩擦が抑制されるため、スクロール圧縮機の信頼性を向上させることができる。
【0046】
以上、本開示について上記実施の形態を用いて説明したが、上記実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、又は省略などを行うことができる。
【0047】
なお、本開示のスクロール圧縮機の冷媒としては、R32、二酸化炭素、又は炭素間に二重結合を有する冷媒を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本開示にかかるスクロール圧縮機は、信頼性及び効率を向上させることができるため、温水暖房装置、空気調和装置、給湯器、又は冷凍機などの冷凍サイクル装置に有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 密閉容器
1a 胴部
1b 下蓋
1c 上蓋
2 冷媒吸込管
3 冷媒吐出管
4 貯油部
5 オイルポンプ
6 吐出室
10 圧縮機構部
11 固定スクロール
11a 固定スクロール鏡板
11b 固定渦巻きラップ
11c 外周壁部
11d 固定スクロール底面
11e 外壁最大伸開角よりも大きい領域
12 旋回スクロール
12a 旋回スクロール鏡板
12b 旋回渦巻きラップ
12c ボス部
12d 旋回スクロール鏡板背面
12e 旋回スクロール底面
13 回転軸
13a 偏心軸
13b 下端部
13c 回転軸オイル供給孔
14 吐出ポート
15 圧縮室
15a 吸入ポート
17 自転拘束部材
18 副軸受
20 電動機構部
21 ステータ
22 ロータ
30 主軸受
31 軸受部
32 ボス収容部
100 スクロール圧縮機