(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】微生物資材を利用した作物中マイコトキシン低減栽培法
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240315BHJP
A01G 22/20 20180101ALI20240315BHJP
A01G 22/22 20180101ALI20240315BHJP
A01N 63/34 20200101ALI20240315BHJP
【FI】
A01G7/00 605Z
A01G22/20
A01G22/22 Z
A01N63/34
(21)【出願番号】P 2021034049
(22)【出願日】2021-03-04
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2020043402
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上垣 隆一
(72)【発明者】
【氏名】内野 宙
(72)【発明者】
【氏名】須賀 晴久
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6027724(US,A)
【文献】特開2002-101870(JP,A)
【文献】特開昭53-7472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 22/00
A01N 63/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物に、
白麹菌及び/又は黒麹菌(Aspergillus luchuensis)を接種し、該作物を栽培する工程を含む、マイコトキシン濃度を低減した作物の栽培方法。
【請求項2】
作物に、
白麹菌及び/又は黒麹菌を接種し、該作物を栽培する工程を含む、作物又作物に由来する製品におけるマイコトキシン汚染の抑制方法。
【請求項3】
作物がトウモロコシ、イネ及び麦類から成る群より選択される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
絹糸抽出期のトウモロコシ、又は出穂期のイネ若しくは麦類に、
白麹菌及び/又は黒麹菌を接種する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
黒麹菌がAspergillus luchuensis IFM 61405である、
請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
マイコトキシンがフサリウム属(Fusarium)かび毒である、
請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
フサリウム属かび毒がフモニシン、デオキシニバレノール、ゼアラレノン及びT-2トキシンから成る群より選択される、
請求項6記載の方法。
【請求項8】
白麹菌及び/又は黒麹菌を含有する、
請求項1~7のいずれか1項記載の方法に
おいて使用するための、マイコトキシン濃度を低減した作物栽培用組成物、又は作物若しくは作物に由来する製品におけるマイコトキシン汚染抑制用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマイコトキシン産生菌と競合する微生物を用いて、作物中のマイコトキシン濃度を低減した栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的にトウモロコシやイネ等の基幹作物は、マイコトキシンに汚染されることが多々あることが知られている。日本においても例外ではなく、これらの作物中からフサリウム属(Fusarium)かびが産生するマイコトキシンが高頻度に検出され、中には高濃度に汚染されているものも認められている。また、作物中のフサリウム属かびが産生するマイコトキシンは、栽培期間中に対策を講じるのが有効だと考えられている。このように、作物のマイコトキシンによるリスクを低減するための栽培法が求められている。
【0003】
しかしながら、従来において、トウモロコシ等の作物の栽培におけるマイコトキシンの低減化は、品種の選定の他は特段行われていない。さらに、マイコトキシンの蓄積性の低い品種であっても、気象条件等でマイコトキシンが高濃度になるケースがあること、また、ごく限られた品種になるので、収穫時期の調節や栽培環境への適応性等で栽培が困難な場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の実情に鑑み、作物において、マイコトキシン産生菌により産生されるマイコトキシン濃度を低減する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、作物の栽培において、アスペルギルス属(Aspergillus)に属する微生物を当該作物に接種することで、当該作物中のマイコトキシン産生菌により産生されるマイコトキシン濃度を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下を包含する。
(1)作物に、アスペルギルス属に属する微生物を接種し、該作物を栽培する工程を含む、マイコトキシン濃度を低減した作物の栽培方法。
(2)作物に、アスペルギルス属に属する微生物を接種し、該作物を栽培する工程を含む、作物又作物に由来する製品におけるマイコトキシン汚染の抑制方法。
(3)作物がトウモロコシ、イネ及び麦類から成る群より選択される、(1)又は(2)記載の方法。
(4)絹糸抽出期のトウモロコシ、又は出穂期のイネ若しくは麦類に、アスペルギルス属に属する微生物を接種する、(3)記載の方法。
(5)アスペルギルス属に属する微生物が白麹菌及び/又は黒麹菌(Aspergillus luchuensis)である、(1)~(4)のいずれか1記載の方法。
(6)白麹菌が白麹菌(やさかこうじ)である、(5)記載の方法。
(7)黒麹菌がAspergillus luchuensis IFM 61405である、(5)又は(6)記載の方法。
(8)マイコトキシンがフサリウム属かび毒である、(1)~(7)のいずれか1記載の方法。
(9)フサリウム属かび毒がフモニシン、デオキシニバレノール、ゼアラレノン及びT-2トキシンから成る群より選択される、(8)記載の方法。
(10)アスペルギルス属に属する微生物を含有する、(1)~(9)のいずれか1記載の方法によるマイコトキシン濃度を低減した作物栽培用組成物、又は作物若しくは作物に由来する製品におけるマイコトキシン汚染抑制用組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、栽培中のイネ、ムギ、トウモロコシ等の食用基幹作物、及び当該作物に由来する製品において、マイコトキシン濃度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1における麹菌を共培養した時のフモニシン産生抑制効果を示すグラフである。米粉、コーングリッツ、YM+コーンスティープリカー培地において、麹菌(黒麹菌及び白麹菌)を培養後にフモニシン産生かびFusarium fujikuroiを接種した時のフモニシン産生量(B
1+B
2+B
3 μg)を示す。麹菌の培養により、培養していない時と比較してフモニシンの産生を大きく抑制した。エラーバーは標準偏差を示す(n=3)。
【
図2】実施例2における室内栽培でのイネ穂中のフモニシン濃度を示すグラフである。室内においてイネを栽培し、出穂期に麹菌(黒麹菌及び白麹菌)を、さらにその2日後にフモニシンを産生するFusarium fujikuroiを穂に接種した。完熟期にイネ穂を採取し、乾燥、粉砕後にフモニシン濃度(B
1+B
2+B
3:mg/kg乾物)を測定した。麹菌の接種により、フモニシンの濃度が低下した。エラーバーは標準偏差を示す(n=3)。
【
図3】実施例3における屋外栽培でのトウモロコシ子実中のフモニシン濃度を示すグラフである。屋外圃場においてトウモロコシを栽培し、絹糸抽出期に麹菌(黒麹菌及び白麹菌)を接種した。完熟期にトウモロコシ雌穂を30本採取し(2群)、子実を乾燥、混合、粉砕後にフモニシン濃度(B
1+B
2+B
3:mg/kg乾物)を測定した。麹菌の接種により、フモニシンの濃度が低下した。
【
図4】実施例4における破砕小麦種子で培養したフモニシン産生抑制効果を示すグラフである。
【
図5】実施例5におけるコーングリッツで培養したデオキシニバレノール・ゼアラレノン産生抑制効果を示すグラフである。
【
図6】実施例6におけるコーングリッツで培養したT-2トキシン産生抑制効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、作物に、アスペルギルス属に属する微生物(アスペルギルス属菌)を接種し、該作物を栽培することで、マイコトキシン濃度を低減した作物を栽培する(又は生産する)方法である(以下、「本方法」と称する)。本方法によれば、栽培中の作物に、フサリウム属かび等のマイコトキシン産生菌と競合するアスペルギルス属菌を接種することで、アスペルギルス属菌を接種しない作物と比較して、作物又は栽培後に収穫した作物に由来する製品中のマイコトキシン濃度を有意に低減することができる。また、本方法は、作物又作物に由来する製品におけるマイコトキシン汚染の抑制方法ということもできる。
【0010】
本方法における対象の作物としては、フサリウム属かび等のマイコトキシン産生菌が寄生し、マイコトキシンに汚染されるか又は汚染される可能性がある作物であれば特に限定されてないが、例えばトウモロコシ、イネ、麦類(例えばコムギ、オオムギ、エンバク、ライムギ)、ソルガム等が挙げられる。また、栽培後に収穫した作物に由来する製品としては、収穫した作物を貯蔵又は加工して製造される製品であり、例えば生食用トウモロコシ、缶詰コーン、トウモロコシ飼料、コーングリッツ、コーンスターチ、飼料用米及びそのサイレージ、小麦粉及びそれを原料とする食品(パン、うどん等)、各種セモリナ及びフレーク等が挙げられる。
【0011】
本方法では、栽培中の作物にアスペルギルス属菌を接種する。接種するアスペルギルス属菌としては、例えば白麹菌、黒麹菌(Aspergillus luchuensis)、又はこれらの混合物が挙げられ、特に白麹菌及び黒麹菌から成る混合物が好ましい。
【0012】
白麹菌としては、食品由来の麹が使用でき、例えば島根県浜田市「やさか共同農場」から市販されている「やさか 生麹(こうじ)」において繁殖した状態の白麹菌(やさかこうじ)が挙げられる。白麹菌(やさかこうじ)は、「やさか 生麹(こうじ)」から、滅菌水で撹拌後の上澄より得ることができる。
【0013】
一方、黒麹菌としては、例えばAspergillus luchuensis IFM 61405が挙げられる。IFM 61405株は、千葉大学真菌医学研究センター(MMRC)において保有されており、ここより入手することができる。
【0014】
また、白麹菌及び黒麹菌から成る混合物は、双方の麹菌を等量混合したものであってよい。
【0015】
アスペルギルス属菌の接種時期としては、例えばトウモロコシであれば絹糸抽出期、イネ又は麦類であれば出穂期が挙げられる。接種は、1又は複数回(1~5回、1~3回、1又は2回)行われる。また、これら時期後にも、アスペルギルス属菌を1又は複数回(1~5回、1~3回、1又は2回)接種してもよい。
【0016】
接種は、例えば作物に対するアスペルギルス属菌の胞子液の噴霧により行われる。噴霧の際には、手動であってもよく、あるいは動力噴霧器を用いてもよい。噴霧等により接種する箇所としては、例えば栽培する作物全体、作物の穂、葉、茎、根、花、種子、あるいは作物が栽培されている土壌、水田、苗栽培用のポットが挙げられる。
【0017】
1回の接種量としては、例えばトウモロコシであれば2.7-4.1×109-10CFU/10a、イネや麦類であれば穂当たりアスペルギルス属菌の胞子液(1×105-6CFU/mL)25mLが挙げられる。
【0018】
本方法によれば、このように栽培中の作物にアスペルギルス属菌を接種することで、アスペルギルス属菌を接種しない作物と比較して、作物中のマイコトキシン濃度を有意に低減することができる。低減されるマイコトキシンとしては、例えばフサリウム属かび毒が挙げられる。また、フサリウム属かび毒としては、例えばフモニシンB群(B1、B2及びB3、特にB1)等のフモニシン、T-2トキシン、HT-2トキシン、ゼアラレノン、デオキシニバレノール及びニバレノールが挙げられる。
【0019】
また、本発明は、本方法により使用される、上述のアスペルギルス属菌を含有する、マイコトキシン濃度を低減した作物栽培用組成物、又は作物若しくは作物に由来する製品におけるマイコトキシン汚染抑制用組成物(以下、「本組成物」と称する)に関する。本組成物は、含有されるアスペルギルス属菌の胞子液が使用時に上述の接種量となるように適宜希釈して用いてもよく、又は上述の接種量における使用濃度でアスペルギルス属菌の胞子液を含有していてもよい。
【実施例】
【0020】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0021】
〔実施例1〕
1.実験と方法
3種類の培地(米粉、コーングリッツ、YM+コーンスティープリカー[YMC])を実験に供した。米粉又はコーングリッツ1gを試験管に入れて滅菌(オートクレーブ)した。また、YMCは、YM培地(Difco)1000mLにコーンスティープリカー(Sigma-Aldrich)を100mL加えてよく撹拌後に、セライトろ過(ハイフロスーパーセル)を行なったものを50mLずつ200mL三角フラスコに入れてシリコン栓をして滅菌(オートクレーブ)した。
【0022】
それぞれの培地に、白麹菌(やさかこうじ)、黒麹菌(Aspergillus luchuensis IFM 61405)の胞子液、又は乳酸菌(Lactobacillus plantarum)培養液を添加(10μL:1×105-6CFU/mL)し、2日間30℃で静置培養した。そこにFusarium fujikuroi MO409の胞子液10μL(1×105-6CFU/mL)を添加し、さらに7日間30℃で静置培養した。
【0023】
培養後の試験管又は三角フラスコを滅菌(オートクレーブ)した後、米粉とコーングリッツには、メタノール水混合液(3/1)を10mL加えてガラス棒でよく撹拌した。その上澄み1mLを、精製カラム(Bond Elute SAX(登録商標)アジレント)で精製した後に、LC-MS/MSでフモニシンを測定した。
【0024】
サンプルは、以下の通りである:
(1): 培養なしの培地
(2): F. fujikuroiのみを培養したもの
(3): 白麹菌を2日間培養後にF. fujikuroiを培養したもの
(4): 黒麹菌を2日間培養後にF. fujikuroiを培養したもの
(5): 白麹菌+黒麹菌を2日間培養後にF. fujikuroiを培養したもの
(6): 乳酸菌を2日間培養後にF. fujikuroiを培養したもの
※各処理n=3
【0025】
2.結果と考察
フモニシン濃度をフモニシンの産生量に変換して
図1に示した。全ての培地において、F. fujikuroiのみを培養したものに対し、白麹菌も黒麹菌もフモニシンの産生を抑制した結果であった。それぞれ単独でも強く抑制の効果が認められたが、混合することでより強い抑制効果が認められた。乳酸菌も抑制効果が認められているが、麹菌はさらに強い抑制効果を示した。
【0026】
〔実施例2〕
1.実験と方法
イネ(夢あおば)を屋内で栽培し、出穂して2~3日後に、白麹菌(やさかこうじ)、黒麹菌(Aspergillus luchuensis IFM 61405)の胞子液(1×105-6CFU/mL)の等量混合液25mLを穂毎に噴霧した。穂をビニール袋で覆いをして2日経過した後に、F. fujikuroi MO409の胞子液25mL(1×105-6CFU/mL)を噴霧した。40~50日後に、穂をサンプリングし、フモニシン濃度をLC-MS/MSにて測定した(n=3)。
【0027】
2.結果と考察
フモニシン濃度を
図2に示した。無処理の穂に、F. fujikuroi MO409の胞子液を噴霧したものは、2100μg/kgであったが、あらかじめ白麹菌と黒麹菌の混合液を噴霧したものは140μg/kgであった。麹菌より、フモニシンの産生を有意に(p<0.05)抑制することができた。
【0028】
〔実施例3〕
1.実験と方法
トウモロコシ(きみまる)を、農業・食品産業技術総合研究機構東北農業研究センター内実験圃場にて栽培した。絹糸抽出期及びその1週間後に、白麹菌(やさかこうじ)と黒麹菌(Aspergillus luchuensis IFM 61405)の混合液を動噴で散布した。その際、展着材を添加した。黄熟後期(絹糸抽出から約50日後)に、にサンプリングを行なった。試験区内の連続する100個体から雌穂を採取した後、苞葉と芯を除去し、子実のみを取り出した。70℃で3日間以上乾燥した後に、粉砕(1mmメッシュ)し、LC-MS/MSでフモニシン濃度を測定した(2群)。
【0029】
2.結果と考察
トウモロコシ子実中のフモニシン濃度を
図3に示した。無処理のトウモロコシ子実は、2500と2300μg/kgであったが、白麹菌と黒麹菌の混合液を噴霧したものは1100と950μg/kgであった。麹菌散布により、トウモロコシ子実のフモニシンの濃度を抑制することができた。
【0030】
〔実施例4〕
1.実験と方法
破砕した小麦種子(農林1号)1gに、黒麹菌(Aspergillus luchuensis IFM 61405)及び/又は白麹菌(やさかこうじ)の胞子液を接種し、滅菌精製水を1mL添加し、30℃で2日間培養した。その後、Fusarium fujikuroiの菌液を接種し、30℃で7日間インキュベートした。培養種子をオートクレーブにかけ、メタノール/水抽出を行い、機器分析にてフモニシンの定量分析を行なった。
【0031】
2.結果と考察
破砕小麦種子中のFusarium fujikuroiによるフモニシン産生量を
図4に示した。麹菌を無添加の場合(無)、フモニシン生産量が平均99ng(標準偏差91)に対し、麹菌接種のものは、ほぼ産生されなかった(白麹菌、黒麹菌、白麹菌+黒麹菌)。
【0032】
〔実施例5〕
1.実験と方法
コーングリッツ1gに、黒麹菌(Aspergillus luchuensis IFM 61405)及び/又は白麹菌(やさかこうじ)の胞子液を接種し、滅菌精製水を1mL添加し、30℃で2日間培養した。その後、Fusarium graminearumの菌液を接種し、30℃で7日間インキュベートした。培養したコーングリッツをオートクレーブにかけ、アセトニトリル/水抽出を行い、機器分析にてデオキシニバレノールの定量分析を行なった。
【0033】
2.結果と考察
コーングリッツ中のFusarium graminearumによるデオキシニバレノール及びゼアラレノン産生量を
図5に示した。麹菌を無添加の場合(無)、デオキシニバレノール生産量が平均32ng(標準偏差29)、麹菌接種のものは、4-6ngの産生量であった(白麹菌、黒麹菌、白麹菌+黒麹菌:○表記)。また、ゼアラレノンは、無添加の場合(無)平均14ng(標準偏差14)に対し、麹菌接種のものはほぼ産生されなかった(白麹菌、黒麹菌、白麹菌+黒麹菌:△表記)。
【0034】
〔実施例6〕
1.実験と方法
コーングリッツ1gに、黒麹菌(Aspergillus luchuensis IFM 61405)及び/又は白麹菌(やさかこうじ)の胞子液を接種し、滅菌精製水を1mL添加し、30℃で2日間培養した。その後、Fusarium sporotrichioidesの菌液を接種し、30℃で7日間インキュベートした。培養したコーングリッツをオートクレーブにかけ、アセトニトリル/水抽出を行い、機器分析にてT-2トキシンの定量分析を行なった。
【0035】
2.結果と考察
コーングリッツ中のFusarium sporotrichioidesによるT-2トキシン産生量を
図6に示した。麹菌を無添加の場合(無)、T-2トキシン生産量が平均14μg(標準偏差0.29)に対し、麹菌接種のものは、ほぼ産生されなかった(白麹菌、黒麹菌、白麹菌+黒麹菌)。