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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】プログラム、判断システム及び判断方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20240315BHJP
【FI】
G06Q10/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023209704
(22)【出願日】2023-12-12
【審査請求日】2023-12-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514323028
【氏名又は名称】株式会社ミラボ
(73)【特許権者】
【識別番号】523222574
【氏名又は名称】合同会社パブテックラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100177231
【弁理士】
【氏名又は名称】鴨志田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】谷川 一也
(72)【発明者】
【氏名】山本 武史
【審査官】牧 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-002142(JP,A)
【文献】特開2019-159960(JP,A)
【文献】特許第6869450(JP,B1)
【文献】特開2008-217151(JP,A)
【文献】特開2004-310207(JP,A)
【文献】特開2006-144421(JP,A)
【文献】特表2012-515980(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0054433(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一行為者が過去にした行為と同一類似行為をする場合に、両行為者が同一人であることの判断をするプログラムにおいて、
コンピュータに、
前記一行為者を含む複数の行為者により前記同一類似行為がされる毎に、各行為者の個人情報、行為内容及びその行為の時期を含む行為情報を記憶する記憶機能と、
前記記憶機能によって記憶される複数の前記行為情報から、複数の前記行為内容とそれらの行為の時期との相関関係を教師データとして機械学習させて、前記行為情報の相関モデルを生成する生成機能と、
前記一行為者が前記同一類似行為をする場合に、前記相関モデルに基づいて前記一行為者が過去に前記同一類似行為をした行為者と同一人であるとの判断をする判断機能であって、(1)前記一行為者の氏名及び予定の行為を取得し、(2)前記記憶機能に記憶された前記行為内容に基づいて、前記予定の行為と特定した氏名の行為者が過去にした行為内容とが同一類似行為であると判断した場合、(3)更に、前記一行為者の予定の行為が前記相関モデルから特定される行為及び当該行為の類似行為のいずれかの行為に一致するかを判断し、(4)その判断の結果、一致すると判断したときに、前記一行為者が特定した氏名の行為者と同一人であるとの判断をする判断機能と、
を実行させる、
プログラム。
【請求項2】
前記記憶機能では、前記行為情報を行為種に分けて記憶し、
前記生成機能では、前記記憶機能によって行為種に分けて記憶される複数の前記行為情報から、複数の前記行為内容とそれらの行為の時期との相関関係を教師データとして機械学習させて、行為種毎の前記行為情報の相関モデルを生成する、
請求項に記載のプログラム。
【請求項3】
前記コンピュータに、
各行為者の身分証明体を読み取る読取機能、
を実行させ、
前記記憶機能は、各行為者が初めて行為をする場合に前記読取機能により読み取られた各行為者の前記身分証明体の情報を記憶する、
請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記コンピュータに、
前記判断機能の実行時に否定判断がされた後に、前記否定判断の対象の行為者の身分証明体を読み取らせて、前記否定判断の対象の行為者が過去に前記同一類似行為をした行為者と同一人であるかの判断をする再判断機能と、
前記再判断機能の実行時に肯定判断がされた場合に、前記記憶機能により記憶された前記否定判断の対象の行為者の前記行為情報を修正する修正機能と、
を実行させる、
請求項に記載のプログラム。
【請求項5】
記憶部及び処理部を有し、前記記憶部に請求項1又は2に記載のプログラムを記憶し、前記処理部により前記プログラムを処理して、前記記憶機能、前記生成機能及び前記判断機能を実行するコンピュータと、
前記コンピュータと通信可能に接続され、前記記憶機能によって記憶される複数の前記行為情報を各行為者から取得するインターフェイスと、
を備える、
判断システム。
【請求項6】
記憶部及び処理部を有し、前記記憶部に請求項に記載のプログラムを記憶し、前記処理部により前記プログラムを処理して、前記記憶機能、前記生成機能、前記判断機能、前記読取機能、前記再判断機能及び前記修正機能を実行するコンピュータと、
前記コンピュータと通信可能に接続され、前記記憶機能によって記憶される複数の前記行為情報を各行為者から取得するインターフェイスと、
を備える、
判断システム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のプログラムを用いて、一行為者が過去にした行為と同一類似行為をする場合に両行為者が同一人であることの判断をする判断方法であって、
前記コンピュータが前記記憶機能を実行する工程と、
前記コンピュータが前記生成機能を実行する工程と、
前記コンピュータが前記判断機能を実行する工程と、
を含む、
判断方法。
【請求項8】
請求項に記載のプログラムを用いて、一行為者が過去にした行為と同一類似行為をする場合に両行為者が同一人であることの判断をする判断方法であって、
前記コンピュータが前記記憶機能を実行する工程と、
前記コンピュータが前記生成機能を実行する工程と、
前記コンピュータが前記判断機能を実行する工程と、
前記コンピュータが前記読取機能を実行する工程と、
前記コンピュータが前記再判断機能を実行する工程と、
前記コンピュータが前記修正機能を実行する工程と、
を含む、
判断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、判断システム及び判断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活において、私たちは様々な申請書に所定事項を記入して手続をする。例えば、引っ越しに伴い行政機関に転出届、転入届等を提出し、出生に伴い行政機関に出生届(非特許文献1参照)、出産・子育て応援給付金の申請書、出産育児一時金の申請書等を提出する。そして、申請する事情によっては、一度に複数種の申請書を提出する場合もある。
【0003】
行政機関等に提出する複数種の申請書では、それぞれの申請項目が同じ内容であっても互いに名称(項目名)が異なっている場合がある。「氏名」、「名前」及び「お名前」がその例である。そのため、同時に複数種の申請書を提出するような場合であって、一方の申請書では「氏名」の欄に記入し、他方の申請書では「お名前」の欄に記入しなければならないようなとき、すなわち、両申請書の名称に統一性がないとき、申請者はこれを理由に戸惑い(に伴う負担)を生じ得る。また、同時に複数種の申請書を提出するような場合であって、両申請書に同じ又は同じ内容の項目名があるとき、すなわち、複数種の申請書に同じ記載を記入する必要があるとき、申請者にはこれを理由とする負担が強いられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】https://www.moj.go.jp/content/001295267.pdf、2023年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本願の発明者らは、直近の研究活動を通じて、AI(人工知能)を用いて類似する複数の言葉同士の意味の同一性の相関モデルを生成することで、上記の負担を軽減するプログラムを創作した。また、このプログラムとは別に、本願の発明者らは、複数の者が申請、購入その他の行為を行うことにより得られる行為情報をもとに、AIを用いて行為に関する相関モデルを生成することに成功した。そして、この行為に関する相関モデルを利用すれば、一定の確率で、ある行為者が過去にその行為をした者であるかを判断できるとの知見を得ることができた。
【0006】
本発明は、上記の課題を鑑みて創作されたものであって、一行為者が過去にした行為と同一類似行為をする場合に、両行為者が同一人であることの判断をすることができるプログラムの提供を目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様のプログラムは、
一行為者が過去にした行為と同一類似行為をする場合に、両行為者が同一人であることの判断をするプログラムであって、
コンピュータに、
前記一行為者を含む複数の行為者により前記同一類似行為がされる毎に、各行為者の行為内容及びその行為の時期を含む行為情報を記憶する記憶機能と、
前記記憶機能によって記憶される複数の前記行為情報から、複数の前記行為内容とそれらの行為の時期との相関関係を教師データとして機械学習させて、前記行為情報の相関モデルを生成する生成機能と、
前記一行為者が前記同一類似行為をする場合に、前記相関モデルに基づいて前記一行為者が過去に前記同一類似行為をした行為者と同一人であるとの判断をする判断機能と、
を実行させる。
【0008】
第2態様のプログラムは、
第1態様のプログラムにおいて、
前記相関モデルに基づいてとは、前記相関モデルにより特定される行為及び当該行為の類似行為のいずれかの行為に、前記同一類似行為が一致するかによることを意味する。
【0009】
第3態様のプログラムは、
第2態様のプログラムにおいて、
前記記憶機能では、前記行為情報を行為種に分けて記憶し、
前記生成機能では、前記記憶機能によって行為種に分けて記憶される複数の前記行為情報から、複数の前記行為内容とそれらの行為の時期との相関関係を教師データとして機械学習させて、行為種毎の前記行為情報の相関モデルを生成する。
【0010】
第4態様のプログラムは、
第1~第3態様のいずれか一態様のプログラムにおいて、
前記コンピュータに、
各行為者の身分証明体を読み取る読取機能、
を実行させ、
前記記憶機能は、各行為者が初めて行為をする場合に前記読取機能により読み取られた各行為者の前記身分証明体の情報を記憶する。
【0011】
第5態様のプログラムは、
第4態様のプログラムにおいて、
前記コンピュータに、
前記判断機能の実行時に否定判断がされた後に、前記否定判断の対象の行為者の身分証明体を読み取らせて、前記否定判断の対象の行為者が過去に前記同一類似行為をした行為者と同一人であるかの判断をする再判断機能と、
前記再判断機能の実行時に肯定判断がされた場合に、前記記憶機能により記憶された前記否定判断の対象の行為者の前記行為情報を修正する修正機能と、
を実行させる。
【0012】
第1態様の判断システムは、
記憶部及び処理部を有し、前記記憶部に第1~第3態様のいずれか一態様のプログラムを記憶し、前記処理部により前記プログラムを処理して、前記記憶機能、前記生成機能及び前記判断機能を実行するコンピュータと、
前記コンピュータと通信可能に接続され、前記記憶機能によって記憶される複数の前記行為情報を各行為者から取得するインターフェイスと、
を備える。
【0013】
第2態様の判断システムは、
記憶部及び処理部を有し、前記記憶部に第5態様のプログラムを記憶し、前記処理部により前記プログラムを処理して、前記記憶機能、前記生成機能、前記判断機能、前記読取機能、前記再判断機能及び前記修正機能を実行するコンピュータと、
前記コンピュータと通信可能に接続され、前記記憶機能によって記憶される複数の前記行為情報を各行為者から取得するインターフェイスと、
を備える。
【0014】
第1態様の判断方法は、
第1~第3態様のいずれか一態様のプログラムを用いて、一行為者が過去にした行為と同一類似行為をする場合に両行為者が同一人であることの判断をする判断方法であって、
前記コンピュータが前記記憶機能を実行する工程と、
前記コンピュータが前記生成機能を実行する工程と、
前記コンピュータが前記判断機能を実行する工程と、
を含む。
【0015】
第2態様の判断方法は、
第5態様のプログラムを用いて、一行為者が過去にした行為と同一類似行為をする場合に両行為者が同一人であることの判断をする判断方法であって、
前記コンピュータが前記記憶機能を実行する工程と、
前記コンピュータが前記生成機能を実行する工程と、
前記コンピュータが前記判断機能を実行する工程と、
前記コンピュータが前記読取機能を実行する工程と、
前記コンピュータが前記再判断機能を実行する工程と、
前記コンピュータが前記修正機能を実行する工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0016】
第1及び第2態様のプログラムによれば、一行為者が過去にした行為と同一類似行為をする場合に、両行為者が同一人であることの判断をすることができる。
【0017】
第3態様のプログラムによれば、行為情報を行為種に分けずに記憶する態様に比べて、高精度に同一人であることの判断をすることができる。
【0018】
第4態様のプログラムによれば、身分証明体の情報を利用して、行為情報の相関モデルを生成することができる。
【0019】
第5態様のプログラムによれば、過去に同一人の判断時に否定判断された行為者による修正を可能としつつ、当該修正に伴う情報で更新された相関モデルを生成することができる。
【0020】
第1態様の判断システムによれば、一行為者が過去にした行為と同一類似行為をした場合に、両行為者が同一人であることの判断をすることができる。
【0021】
第2態様の判断システムによれば、過去に同一人の判断時に否定判断された行為者による修正を可能としつつ、当該修正に伴う情報で更新された相関モデルを生成することができる。
【0022】
第1態様の判断方法によれば、一行為者が過去にした行為と同一類似行為をする場合に、両行為者が同一人であることの判断をすることができる。
【0023】
第2態様の判断方法によれば、過去に同一人の判断時に否定判断された行為者による修正を可能としつつ、当該修正に伴う情報で更新された相関モデルを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態(以下、本実施形態という。)の判断システムの概略図である。
図2】本実施形態のサーバーの概略図である。
図3】本実施形態のプログラムのフロー図である。
図4】本実施形態のプログラムの実行時におけるユーザーインターフェイスによる一行為者とのやり取りの一例を説明するための概略図である。
図5】本実施形態のプログラムの実行時における、相関モデルの生成機能及び同一人かの判断機能の一例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本実施形態及びその複数の変形例について、これらの記載順に説明する。
【0026】
≪本実施形態≫
以下、本実施形態の判断システムJSの構成及び機能、判断方法及び効果について、これらの記載順に説明する。
【0027】
<判断システムの構成及び機能>
判断システムJSは、図1に示されるように、ユーザーインターフェイス10(以下、UI10と表記する。)と、サーバー20(コンピュータの一例)と、通信ネットワーク30(インターネットはその一例)とを備えている。
判断システムJSは、通信ネットワーク30を介してUI10と通信可能に接続されているサーバー20で動作し、UI10により取得される複数の行為者Uの行為情報を利用して、行為者U1(行為者U1とは、任意の行為者、すなわち、一行為者という意味である。以下同じ。)が過去に同一類似行為をした行為者と同一人であるか否かを判断する機能を有する。
なお、サーバー20をコンピュータの一例としたが、サーバー20とUI10との組合せ、又は、判断システムJSを構成するハードウェアをコンピュータの一例と捉えてもよい。
【0028】
ここで、本実施形態で使用する造語の意味について説明する。
========================================
「行為情報」
行為情報とは、(1)行為者U1の個人情報、並びに、(2)行為者U1がした行為内容及びその行為の時期を含む情報である。
(1)の行為者U1の個人情報とは、一例として、氏名、性別、年齢、住所、血液型その他個人情報カード(図示省略)に記録されている情報のことをいう。個人情報カードの一例は、マイナンバーカード、身分証明書等の身分証明体(図示省略)である。
(2)の行為者U1がした行為内容とは、行為者U1が施設Fとの関係でした行為を意味する。例えば、施設Fが図書館であれば、その行為内容は本を借りること、CDを借りること等である。また、例えば、施設Fが役所であれば、その行為内容は行政上の手続、申請等である。(2)の行為の時期とは、対象の行為をした時期を意味する。

「同一類似行為」
同一類似行為とは、行為者U1がした行為と、行為者U1がした行為に類似する行為との組合せを意味する。ここで、類似する行為とは、同一の行為に対して類似範囲に含まれる行為のことをいう。例えば、同一行為が書籍を借りることであれば、その類似範囲には書籍を購入することが挙げられる。また、例えば、同一行為が野菜を購入することであれば、その類似範囲には果物を購入することが挙げられる。
========================================
【0029】
〔ユーザーインターフェイス(UI)〕
UI10は、一例として、施設Fの入場口に配置され、施設Fにおいてある行為をする予定の行為者Uと対話して、行為者Uの本人確認及び行為者Uの行為情報を入手する機能を有する(図1及び図4参照)。図1及び図4に示されるUI10は、行為者Uとの対話が可能な人間型ロボットであるが、上記の機能を発揮できればUI10の形態は問わない。単なるタッチパネル付きディスプレイ(図示省略)でもよい。
UI10の具体的動作については、後述する。
【0030】
〔サーバー及び通信ネットワーク〕
前述のとおり、サーバー20は、図1に示されるように、通信ネットワーク30を介して、UI10と通信可能に接続されている。
サーバー20は、自身に記憶されているプログラムPG(図2及び図3参照)によって、後述する、記憶機能、生成機能、判断機能、読取機能、再判断機能及び修正機能(以下、本実施形態の複数の機能という。)を実行する機能(図3参照)を有する。
【0031】
サーバー20は、図2に示されるように、処理部22(CPU(Central Processing Unit(中央演算処理装置))はその一例)と、記憶部24(RAM(Random Access Memory(読み書き可能な記憶装置))はその一例)とを有している。
処理部22は、記憶部24に格納されているデータを読み出して演算処理を行う。当該データには、一例として、アプリケーションAPが含まれている。アプリケーションAPは、プログラムPGと、データファイルDFと、各種ライブラリLBとを含んで構成されている。
【0032】
〈プログラム〉
プログラムPGは、行為者U1が過去にした行為と同一類似行為をする場合に、両行為者が同一人であることの判断をするためのものである。そして、プログラムPGは、この目的を実現するために、サーバー20に、前述の本実施形態の複数の機能を実行させる機能を有する。
【0033】
以下、本実施形態の複数の機能について説明する。以下、当該複数の機能を構成する各機能について説明するが、各機能は互いに連携することで全体として有機的な技術的意義を発揮する。この点について、後述する本実施形態の判断方法の説明を参照されたい。
【0034】
(記憶機能)
記憶機能とは、(1)行為者U1を含む複数の行為者Uにより同一類似行為がされる毎に、各行為者Uの行為内容及びその行為の時期を含む行為情報を記憶する機能、及び、(2)各行為者Uが初めて行為をする場合に後述する読取機能により読み取られた各行為者Uの個人情報カード(図示省略)の情報を記憶する機能である。
これらの情報は、記憶部24を構成するデータファイルDFに記憶される。
【0035】
(生成機能)
生成機能とは、記憶機能によって記憶される複数の行為情報から、複数の行為内容とそれらの行為の時期との相関関係を教師データとして機械学習させて、行為情報の相関モデルを生成する機能である。
【0036】
(判断機能)
判断機能とは、行為者U1が過去にした行為と同一類似行為をする場合に、相関モデルに基づいて行為者U1が過去に同一類似行為をした行為者と同一人であるかの判断をする機能である。
ここで、相関モデルに基づいてとは、相関モデルにより特定される行為及び当該行為の類似行為のいずれかの行為に、前述の同一類似行為が一致するかによることを意味する。
【0037】
(読取機能)
読取機能とは、各行為者Uの個人情報カード(図示省略)に記憶されている個人情報を読み取る機能である。
【0038】
(再判断機能)
再判断機能とは、判断機能の実行時に否定判断がされた後に、否定判断の対象の行為者U1の個人情報カード(図示省略)を読み取らせて、否定判断の対象の行為者U1が過去に同一類似行為をした行為者と同一人であるかの判断をする機能である。
【0039】
(修正機能)
修正機能とは、再判断機能の実行時に肯定判断がされた場合に、記憶機能により記憶された否定判断の対象の行為者U1の行為情報を修正する機能である。
【0040】
以上が、本実施形態の判断システムJSの構成及び機能についての説明である。
【0041】
<判断方法(判断システムの動作フローSP)>
次に、本実施形態の判断方法(判断システムJSの動作フローSP)について、図3図4及び図5を参照しながら説明する。判断システムJSの動作フローSPは、図3に示されるS10(ステップ10の略称である。S10以外についても同様の解釈を準用する。)~S140により構成されている。S10~S140は、サーバー20がプログラムPGに基づいて前述の複数の機能を実行することで進行する。
ここで、以下の説明では、一例として、施設Fを図書館とし、行為者U1がこれから希望する行為及び行為者U1が過去にした行為を書籍を借りることとする。
【0042】
〔S10〕
S10は、施設F(図書館)への入場(入館)を希望する行為者U1に対して身分証明書(個人情報カード)があるかについて確認する工程である。
S10の結果が肯定判断の場合は、S20の判断工程に進む。これに対して、否定判断の場合は、S60の判断工程に進む。
この確認は、図4の対話の一例であるQ1及びA1に示されるように、UI10が行為者U1に対して対話をし、UI10からの送信情報を受信したサーバー20により行われる。
【0043】
〔S20〕
S20は、S10で肯定判断をした行為者U1に対してその真偽を確認する工程である。
この工程では、UI10が行為者U1に対して身分証明書を提示するように指示し、前述の読取機能により読み取った身分証明書の情報をサーバー20に送信し、サーバー20が記憶部24又は外部の認証サーバー(図示省略)に記憶されている情報との同一性を確認する。そして、S20の結果が肯定判断の場合はS30に進む。これに対して、S20の結果が否定判断の場合はS60の判断工程に進む。
【0044】
〔S30、S40及びS50〕
S30は、S20において行為者U1の本人確認ができた場合に行われる工程であって、UI10が行為者U1に入場を許可する工程である。
S40は、施設Fに入場して実際に書籍を借りた行為者U1の行為内容(具体的に借りた書籍の情報)及びその行為の時期(借りた日付)を記憶部24に記憶する工程である。すなわち、S40は、記憶機能を実行する工程である。
S50は、S40の終了後に行われる工程であって、S40において記憶部24に記憶された今回の行為者U1の行為情報を過去に記憶した複数の行為情報に追加し、追加後の複数の行為情報から行為情報の相関モデルを生成する工程である。すなわち、S50は、前述の生成機能を実行する工程である。
そして、行為者U1が施設Fを退場すると、S30を経由した場合の判断システムJSの動作フローSPは終了となる。
【0045】
〔S60及びS90〕
S60は、図3に示されるように、S10の結果が否定判断の場合及びS20の結果が否定判断の場合に、すなわち、身分証明書による本人認証ができなかった場合に行われる工程であって、UI10が行為者U1に過去に施設Fを利用したことがあるかを確認する工程である。
S60の結果が肯定判断の場合は、S70の判断工程に進む。これに対して、否定判断の場合は、S90に進む。この確認は、図4の対話の一例であるQ2及びA2に示されるように、UI10が行為者U1に対して対話をすることで行われるが、S60の結果が肯定判断であることは、プログラムPGの実行上は単に行為者U1の自己申告に過ぎない。
なお、S60の結果が否定判断となってS90に進んだ場合には、行為者U1は施設Fへの入場を拒否されて、判断システムの動作フローSPが終了となる。
【0046】
〔S70及びS80〕
S70は、図3に示されるように、S60の結果が肯定判断の場合に、UI10が行為者U1と対話をして、今日の予定の行為(これから施設Fに入場した後に予定している行為)を聞き出して、当該行為を特定する工程である。図4の対話のQ3及びA3は、この工程において行われる対話の一例である。
次いで、UI10によって行為者U1の今日の予定の行為が特定されると、S80の処理が行われる。図4の対話の例では、行為者U1の氏名が「鈴木A子」で、今日の予定の行為が「村上春樹の『ノルウェイの森』を借りること」であると特定される。
S80は、行為者U1が過去にした行為と同一類似行為をする場合に、相関モデルに基づいて行為者U1が過去に同一類似行為をした行為者と同一人であるかの判断をする工程である。すなわち、S80は、前述の判断機能を実行する工程である。
ここで、行為者U1が過去にした行為とは、図5に示されるように、「村上春樹の『風の歌を聴け』を借りること」(3回前)、「村上春樹の『1973年のピンボール』を借りること」(2回前)、及び、「村上春樹の『羊をめぐる冒険』を借りること」(前回)となっており、これらの行為内容は記憶部24に記憶されている。そして、S70で特定された今日の予定の行為は、「村上春樹の『ノルウェイの森』を借りること」であるから、サーバー20は今回の予定の行為が過去にした同一類似行為であると判断する。
他方、複数の行為者Uの行為情報の相関モデルは、過去に施設Fで村上春樹の書籍を借りたことのある行為者Uの行為情報を教師データとして機械学習させて生成されたものであり、この行為者U1の過去の行為に基づく相関モデルから特定される行為は、図5に示されるように、「村上春樹の『ノルウェイの森』を借りること」であり、当該行為の類似行為は、「村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』又は「村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』を借りること」のいずれかの行為とされる。
そして、上記の場合、サーバー20は、行為者U1の今回の予定の行為が相関モデルから導き出される同一類似行為のいずれかに一致すると判断して(図4及び図5参照)、S80で肯定判断をする(図3参照)。この場合、図3に示されるように、S30に進み、行為者U1は施設Fへの入場を許可される。
これに対して、S80の結果が否定判断の場合は後述するS100に進む。
【0047】
〔S100、S110及びS120〕
S100は、S80において行為者U1の過去に施設Fを利用した者であると認定されなかった場合(行為者U1が過去に施設Fを利用して同一類似行為をした者と同一人ではないと判断された場合)に行われる工程であって、UI10が行為者U1に入場を拒否する工程である。
S110は、施設Fへの入場を拒否された行為者U1が予定していた行為内容(具体的に借りる予定の書籍の情報)及びその予定の行為の時期(日付)を記憶部24に記憶する工程である。すなわち、S110は、記憶機能を実行する工程である。
S120は、S110の終了後に行われる工程であって、S110において記憶部24に記憶された今回の行為者U1の行為情報を過去に記憶した複数の行為情報に追加し、追加後の複数の行為情報から行為情報の相関モデルを生成する工程である。すなわち、S120は、前述の生成機能を実行する工程である。
そして、行為者U1が施設Fを退場して定められた期間(一例として1ヶ月)が経過すると、S100を経由した場合の判断システムJSの動作フローSPは終了となる。
【0048】
〔S130及びS140〕
S130は、S80の結果が否定判断のためにS100で入場を拒否された行為者U1が拒否された日から定められた期間(一例として1ヶ月)内に、再度施設Fを訪問してUI10に身分証明書を読み取らせて、S80の否定判断の対象の行為者U1が過去に同一類似行為をした行為者と同一人であると判断する工程である。すなわち、S130は、前述の再判断機能を実行する工程である。S130の結果が肯定判断の場合、S140に進んで、過去にS110で記憶された行為情報及びS120で生成された相関モデルが修正される。すなわち、S140は、前述の修正機能を実行する工程である。S140が実行されると、判断システムJSの動作フローSPは終了となる。
これに対して、S130の結果が否定判断の場合及び前述の定められた期間にS130が実行されなかった場合、S140を実行することなく、判断システムJSの動作フローSPは終了となる。
【0049】
以上が、本実施形態の判断方法(判断システムJSの動作フローSP)についての説明である。
【0050】
<効果>
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0051】
〔第1の効果〕
本実施形態のプログラムPGは、サーバー20又は判断システムJSに、前述の記憶機能(図3のS40及びS110参照)、生成機能(図3のS50及びS120並びに図5参照)及び判断機能(図3のS80参照)を実行させる。判断システムJSは、生成機能により生成される行為情報の相関モデルを、記憶機能によって記憶される複数の行為情報から、複数の行為内容とそれらの行為の時期との相関関係を教師データとして機械学習させて生成する(図5参照)。また、判断機能によって、行為者U1が過去にした行為と同一類似行為をする場合に、相関モデルに基づいて(相関モデルにより特定される行為及び当該行為の類似行為のいずれかの行為に、前述の同一類似行為が一致するかにより)行為者U1が過去に同一類似行為をした行為者と同一人であるかの判断をする(図5参照)。
したがって、本実施形態のプログラムPG、判断システムJS及び判断方法によれば、行為者U1が過去にした行為と同一類似行為をする場合に、両行為者が同一人であることの判断をすることができる。これに伴い、本実施形態の判断システムJSによれば、一行為者が過去にした行為と同一類似行為をした場合に、両行為者が同一人であることの判断をすることができる。
【0052】
〔第2の効果〕
本実施形態の判断方法は、図3に示されるように、施設Fへの入場時に行うものであるが、初期の段階で身分証明書による本人証明ができなかった後に(図3参照)、前述の記憶機能(図3のS40及びS110参照)、生成機能(図3のS50及びS120並びに図5参照)及び判断機能(図3のS80参照)を実行する工程を行うようになっている。
したがって、行為者Uが身分証明書を持参していないような場合であって、過去に施設Fを利用したことがある場合に行為者Uの入場が可能となる点で有効である。
【0053】
〔第3の効果〕
本実施形態のプログラムPGは、サーバー20又は判断システムJSに、S80の結果が否定判断の場合にS100に進んで行為者U1の入場を拒否するが、後日、S120で当該行為者U1が身分証明書をUI10に読み取らせて本人認証ができれば、S130で過去にS110で記憶された行為情報及びS120で生成された相関モデルが修正される。
したがって、本実施形態のプログラムPGによれば、過去に同一人の判断時に否定判断された行為者U1による修正を可能としつつ、当該修正に伴う情報で更新された相関モデルを生成する(相関モデルを修正する)ことができる。すなわち、人間の行動に伴う正しい情報を相関モデルにフィードバックすることができる。
【0054】
以上が本実施形態の効果についての説明である。また、以上が本実形形態についての説明である。
【0055】
≪複数の変形例≫
以上のとおり、本発明について前述の実施形態を一例として説明したが、本発明の技術的範囲に含まれる実施形態は前述の実施形態に限定されるものではない。例えば、以下のような変形例も含まれる。ここで、以下の複数の変形例において、前述の実施形態で説明した構成要件と同じ又は同じような構成要件については、前述の実施形態の名称及び符号を準用する点に留意されたい。
【0056】
例えば、本実施形態では、UI10が行為者U1から行為情報を取得する場合に対話を利用するとした。この場合に、行為者U1から伝達される行為の名称に言葉のゆらぎ(不正確に伝達される言葉の類似)が生じる虞がある。このような場合に、判断機能の実行時に否定判断とならないように、言葉のゆらぎを以下のような相関モデルで修正するようにしてもよい。この相関モデルは、生成機能による付加的機能として生成すればよい。
ここで、生成機能が行う機能とは、各名称(言葉)同士の記載が同一か否かに関わらずに意味の同一性に基づく相関関係を教師データとして機械学習させて相関モデルを生成することをいう。また、各名称(言葉)同士の記載が同一か否かに関わらずに意味の同一性に基づく相関関係とは、例えば、(1)「氏名」、「名前」及び「お名前」を名称(言葉)とした場合、(2)「住所」、「御住所」及び「お住まい」を名称(言葉)とした場合、並びに、(3)「子」、「子供」、「子ども」及び「お子様」を名称(言葉)とした場合は、各グループの名称(言葉)同士は互いに同じ内容(同じ意味)になるため、互いに同じ関係となる。これに対して、例えば、「生年月日」及び「生まれたところ」を名称(言葉)とした場合は、これらの項目名同士は互いに異なる内容(異なる意味)になるため、互いに異なる関係となる。
【0057】
また、本実施形態の判断システムJSは、図1に示されるように、UI10と、サーバー20と、通信ネットワーク30とを備えていると説明した。
しかしながら、UI10が単独のコンピュータとしてサーバー20としての機能も発揮することができれば、UI10のみで判断システムJSを構成してもよい。
【0058】
また、本実施形態においてUI10が設置される施設Fは一例として図書館であるとした。そのため、施設Fの場合に予定される行為は書籍を借りることとなり得る。
しかしながら、施設Fは、入場する行為者Uを複数種の行為対象に分けて入場させるような複合施設であってもよい。ここで、複合施設の一例としては、複数種の医療サービス(内科、外科、皮膚科、歯科、小児科等)を有する総合病院、複数種の行政サービスを有する行政機関、複数種の学部を有する総合大学その他の複合施設であってもよい。すなわち、これらの複合施設の利用者(行為者)からすると、複合施設とは複数の行為種を有するものといえる。
また、このような場合、記憶機能では、行為情報を行為種に分けて記憶してもよい。また、生成機能では、記憶機能によって行為種に分けて記憶される複数の行為情報から、複数の行為内容とそれらの行為の時期との相関関係を教師データとして機械学習させて、行為種毎の行為情報の相関モデルを生成するようにしてもよい。
この変形例のプログラムによれば、行為情報を行為種に分けずに記憶するプログラムに比べて、高精度に同一人であることの判断をすることができる点で有効である。
【0059】
以上が、複数の変形例についての説明である。
【符号の説明】
【0060】
10 ユーザーインターフェイス(UI)
20 サーバー
22 処理部
24 記憶部
30 通信ネットワーク
AP アプリケーション
DF データファイル
F 施設
JS 判断システム
LB 各種ライブラリ
PG プログラム
SP 判断システムの動作フロー(判断方法)
U 行為者
U1 行為者(一行為者)
【要約】
【課題】本発明は、一行為者が過去にした行為と同一類似行為をする場合に、両行為者が同一人であることの判断をすることができるプログラムの提供を目的とする。
【解決手段】本発明のプログラムPGは、コンピュータ20に、一行為者U1を含む複数の行為者Uにより前記同一類似行為がされる毎に、各行為者Uの行為内容及びその行為の時期を含む行為情報を記憶する記憶機能と、前記記憶機能によって記憶される複数の前記行為情報から、複数の前記行為内容とそれらの行為の時期との相関関係を教師データとして機械学習させて、前記行為情報の相関モデルを生成する生成機能と、一行為者U1が前記同一類似行為をした場合に、前記相関モデルに基づいて一行為者U1が過去に前記同一類似行為をした行為者と同一人であるとの判断をする判断機能と、を実行させる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5