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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ノズル装置及び噴霧方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 7/08 20060101AFI20240315BHJP
   B05B 7/04 20060101ALI20240315BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20240315BHJP
【FI】
B05B7/08
B05B7/04
B05B12/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020186910
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076525
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000142023
【氏名又は名称】株式会社共立合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 直晋
(72)【発明者】
【氏名】伊達 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】下世 昭一
(72)【発明者】
【氏名】浴本 貴生
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-111466(JP,A)
【文献】特開2000-167444(JP,A)
【文献】特開平07-299389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 7/08
B05B 7/04
B05B 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と気体とを混合して微粒化した液滴の噴霧流を噴霧する吐出オリフィスと、この吐出オリフィスの外周域に周方向に間隔をおいて形成され、かつ前記吐出オリフィスの吐出口からの前記噴霧流に対して気体を衝突又は吹き付け可能な複数の気体オリフィスとを備えたノズル本体を有するノズル装置であって、
前記ノズル本体が、前記吐出オリフィスに液体を供給するための第1の吐出液体流路と;前記第1の吐出液体流路の外周部に、気体を供給するための第1の吐出気体流路とを備え;
前記第1の吐出気体流路が、気体が流通可能な環状流路と、前方方向にいくにつれて半径内方向に傾斜して、前記環状流路と連通する傾斜流路とを備えており、
複数の気体オリフィスが少なくとも3つの気体オリフィスを備えており、
前記気体オリフィスにそれぞれ連通する気体流路と、これらの気体流路での気体の流量及び/又は圧力をそれぞれ独立して調整するための流量調整弁及び/又は圧力調整弁と、これらの流量調整弁及び/又は圧力調整弁をそれぞれ独立して駆動して気体流路の流量及び/又は圧力を制御する制御ユニットとを備えているノズル装置。
【請求項2】
軸芯部又は中心部に形成された前記吐出オリフィスと、前記吐出オリフィスの外周円上に等間隔に形成された前記気体オリフィスとを備えたノズル本体と;このノズル本体に装着可能であり、かつ前記吐出オリフィス及び前記気体オリフィスにそれぞれ連通する流路を有するアダプターとを備えており、
前記ノズル本体が、前記吐出オリフィスに液体及び体をそれぞれ供給するための前記第1の吐出液体流路及び前記第1の吐出気体流路と、気体オリフィスにそれぞれ気体を供給するための第1の気体流路とを備え、
前記アダプターが、前記第1の吐出液体流路及び前記第1の吐出気体流路それぞれ連通する第2の吐出液体流路及び第2の吐出気体流路と、前記第1の気体流路にそれぞれ連通する第2の気体流路とを備え、
前記ノズル本体及び/又はアダプターのうち、第1の気体流路及び/又は第2の気体流路に対応する部位に、周方向に延びて第2の気体流路及び/又は第1の気体流路と連通可能な幅広の気体室が独立して形成されている請求項1記載のノズル装置。
【請求項3】
制御ユニットが、複数の気体流路のうち、1又は非対向位置の互いに隣接する2つの気体流路での流量及び/又は圧力を制御する請求項1又は2記載のノズル装置。
【請求項4】
第1の吐出液体流路内で第1の吐出気体流路を形成する部材を進退動させることなく、液体と気体とを混合して微粒化した液滴の噴霧流を吐出オリフィスの吐出口から噴霧させる請求項1又は2記載のノズル装置
【請求項5】
液体と気体とを混合して吐出オリフィスの吐出口から前記液体を微粒化した液滴の噴霧流を噴霧し、前記吐出オリフィスの外周域に周方向に間隔をおいて形成された複数の気体オリフィスのうち所定の気体オリフィスから、前記吐出オリフィスの吐出口からの前記噴霧流に対して気体を衝突又は吹き付けて、噴霧する方法であって、
ノズル本体に、前記吐出オリフィスに液体を供給するための第1の吐出液体流路と;
前記第1の吐出液体流路の外周部に、気体が流通可能な環状流路と、前方方向にいくにつれて半径内方向に傾斜して、前記環状流路と連通する傾斜流路とを備えた第1の吐出気体流路とを形成し;
前記複数の気体オリフィスとして、少なくとも3つの気体オリフィスを形成し、これらの気体オリフィスに連通する気体流路の気体の流量及び/又は圧力を、流量調整弁及び/又は圧力調整弁を介して、独立して制御し、前記噴霧流の噴霧方向及び/又は角度を制御して噴霧する方法。
【請求項6】
複数の気体流路のうち、1又は互いに隣接する2つの気体流路での気体流量及び/又は気体圧を制御して気体オリフィスから気体を噴射する請求項記載の方法。
【請求項7】
吐出オリフィスの気体圧に対して、5~100%の気体圧で気体オリフィスから気体を噴射する請求項又は記載の方法。
【請求項8】
吐出オリフィスの吐出口から噴霧流を円錐状の形態で噴霧する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
吐出オリフィスを中心として、噴霧流の軸方向に対して0~80°の角度範囲、及び周方向に対して360°の範囲で、前記噴霧流の角度を可変させる請求項のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液流体の噴霧方向(スプレー軸)を、360°の範囲で任意に可変可能なノズル装置及び噴霧方法(又は噴射方法)に関する。
【背景技術】
【0002】
金属プレス加工、圧延加工、鋳造などの金属加工、プラスチック成形加工などの様々な分野において、スプレー方式で金型に離型剤、潤滑剤などを塗布することが採用されている。例えば、金型の開口部から金型内にノズルを進入させ、ノズルを進退動及び/又は回転動させて離型剤を噴霧することが知られている。しかし、このような方法では、ノズルからの離型剤の噴霧パターンが限定されるため、塗布効率を向上できない。
【0003】
特開2001-276678号公報(特許文献1)には、液入口通路及びガス入口通路を有するノズル本体と、このノズル本体に配置されるエアキャップとを備え、このエアキャップが、液吐出オリフィスの両側で直径方向に対峙して形成された1対の空気通路を有し、この空気通路の軸方向端に軸心横断方向の偏向フランジを有し、前記空気通路からの空気流を、前記偏向フランジに衝突させ、前記液の流れを霧化して所定の噴射パターンにする、エアアシスト式噴射ノズルアセンブリが記載されている。特開2016-52660号公報(特許文献2)にも、中央材料ノズルと、中央材料ノズルを囲繞する空気リングノズルと、少なくとも一つのホーン空気ノズルが組み込まれた少なくとも二つの側方突出ホーンとを包含するスプレー器具用ノズルヘッドが記載されている。
【0004】
実開昭63-77649号公報(特許文献3)には、塗料供給路に接続された塗料ノズルと、この塗料ノズルから吐出される塗料を霧化するためのエアー供給路と、霧化された塗料のスプレーパターンを調整するためのエアキャップとを備え、このエアキャップに、横方向のスプレーパターンを調整するための上下一組の第1の側面空気孔と、縦方向のスプレーパターンを調整するための左右一組の第2の側面空気孔とが形成され、前記第1の側面空気孔が第1のエアー供給路に接続され、前記第2の側面空気孔が第2のエアー供給路に接続され、霧化エアー供給路、第1のエアー供給路及び第2のエアー供給路でのエアー供給量を個々に調整するスプレーパターン調整式塗装装置が記載されている。特開2007-29791号公報(特許文献4)には、塗料ノズルの先端に開口する塗料吐出口と、前記塗料吐出口の周囲に設けられ、塗料霧化用の圧縮空気を噴気する霧化用空気孔と、前記霧化用空気孔の外側で、前記塗料吐出口を中心として対となって対向して設けられ、パターン形成用の圧縮空気を噴気するパターン形成用空気孔とを備えたエア霧化ガンにおいて、前記塗料吐出口を中心としてそれぞれ異なる方向に沿って対向している2対以上の前記パターン形成用空気孔を備えたエア霧化ガンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-276678号公報
【文献】特開2016-52660号公報
【文献】実開昭63-77649号公報
【文献】特開2007-29791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載のアセンブリでは、前記1対の空気通路を利用して、液体を扁平な噴霧パターンで噴霧できる。しかし、噴霧パターンが扁平な楕円状の形態(フラットパターン)であるため、液体による処理効率を向上できない。
【0007】
特許文献3及び4に記載の装置では、塗料ノズルを中心として、楕円形状の噴霧パターン(フラットパターン)の噴霧域を2つの角度(90°の角度)で切り換えることができるため、噴霧効率及び処理効率を向上できる。しかし、噴霧方向が2つの方向に制約されるため、依然として塗装効率を向上できない。
【0008】
特に、ロボットアームに離型剤の噴霧ノズルを回転可能に保持させても、金型内でのロボットの移動空間が制約され、移動時間を含めて噴霧時間を短くするのが困難である。また、金型内では可動範囲並びに噴霧域が限定され、液滴が届かない未処理部が生じ、金型内面を全体に亘り均一に処理できない。そのため、このような金型を用いた成形加工では、離型不良が発生する。
【0009】
従って、本発明の目的は、液体と気体とを混合して微粒化した液滴を噴霧する吐出オリフィスを中心として、噴霧流の噴霧方向(噴霧軸)を簡便かつ自在に可変なノズル装置及び噴霧方法(又は噴射方法)を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、ロボットアームにノズルを回転可能に取り付けなくても、吐出オリフィスを中心として、噴霧方向(噴霧軸)をあらゆる周方向に可変なノズル装置及び噴霧方法(又は噴射方法)を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、液体による噴霧効率又は噴霧処理効率を大きく向上できるノズル装置及び噴霧方法(又は噴射方法)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、液体と気体との二流体を混合して微細化した液滴を吐出オリフィスから噴霧し、この噴霧流に対して、吐出オリフィスの外周円上に形成された複数の気体オリフィスからの気体流を衝突又は吹き付ける方法において、前記気体オリフィスとして少なくとも3つの気体オリフィスを形成し、これらの気体オリフィスにそれぞれ連通する気体流路を形成し、前記吐出オリフィスからの噴霧流に対して、各気体流路の気体の流量及び/又は圧力を、独立して制御して、気体流を衝突又は吹き付けると、前記噴霧流の噴霧方向及び/又は角度を制御して噴霧でき、噴霧域を拡大できることを見いだし、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明のノズル装置は、液体と気体とを混合して微粒化した液滴を噴霧(又は噴射)する吐出(又は中心)オリフィスと、この吐出オリフィスの外周域に周方向に間隔をおいて形成され、かつ前記吐出オリフィスからの噴霧流(又は噴射流)に対して気体を衝突又は吹き付け可能な複数の気体オリフィスとを備えている。このようなノズル装置では、複数の気体オリフィスは少なくとも3つの気体オリフィスを備えており、前記気体オリフィスにそれぞれ連通する気体流路と、これらの気体流路での気体の流量及び/又は圧力をそれぞれ独立して調整するための流量調整弁及び/又は圧力調整弁、これら調整弁をそれぞれ独立して駆動して気体流路の流量及び/又は圧力を制御する制御ユニットとを備えている。
【0014】
すなわち、各気体オリフィスはそれぞれ独立して気体流路と連通し、各気体流路にそれぞれ独立して接続された管体(供給ライン)に流量調整弁及び/又は圧力調整弁を取り付け、制御ユニットにより、各調整弁を独立して駆動することにより、各気体流路での流量及び/又は圧力をそれぞれ独立して制御する。そのため、吐出オリフィスからの噴霧流(又は噴射流)に、気体オリフィスからの気体流を衝突又は吹き付けることにより、噴霧流(又は噴射流)の噴霧方向(噴霧軸又はノズル軸)及び/又は角度を簡便かつ自在に制御でき、噴霧効率(又は噴霧処理効率)を有効に改善できる。
【0015】
前記ノズル装置は、軸芯部又は中心部に形成された前記吐出オリフィスと、前記吐出オリフィスの外周円上に等間隔に形成された前記気体オリフィスとを備えたノズル本体と;このノズル本体に装着可能であり、かつ前記吐出オリフィス及び前記気体オリフィスにそれぞれ連通する流路を有するアダプターとを備えていてもよい。前記ノズル本体は、前記吐出オリフィスに液体と気体とをそれぞれ供給するための第1の吐出気液流路(第1の吐出液体流路及び第1の吐出環状気体流路)と、気体オリフィスにそれぞれ気体を供給するための第1の気体流路とを備えていてもよい。また、前記アダプターは、前記第1の吐出気液流路にそれぞれ連通する第2の吐出気液流路(第2の吐出液体流路及び第2の吐出環状気体流路)と、前記第1の気体流路にそれぞれ連通する第2の気体流路とを備えていてもよい。このようなノズル本体及び/又はアダプターのうち、第1の気体流路及び/又は第2の気体流路に対応する部位に、周方向に幅広で延びて第2の気体流路及び/又は第1の気体流路と連通可能な気体室を独立して形成してもよい。このような気体室を形成すると、ノズル本体とアダプターとの装着位置が周方向に若干位置ずれしていても、前記気体室を介して第1の気体流路と第2の気体流路とを連通でき、装着ミスを防止できる。
【0016】
前記制御ユニットは、複数の気体流路での流量及び/又は圧力を独立して制御可能であり、複数の気体流路のうち、1又は非対向位置の2つの気体流路(特に、互いに隣接する2つの気体流路)での流量及び/又は圧力を制御してもよい。
【0017】
本発明は、前記の形態で噴霧流の噴霧方向(噴射流の噴射方向)及び/又は角度を制御可能な噴霧方法(噴射方法又は噴霧処理方法)も包含する。この方法では、液体と気体とを混合して吐出オリフィスから前記液体を微粒化して噴霧(又は噴射)し、前記吐出オリフィスの外周域に周方向に間隔をおいて形成された複数の気体オリフィスのうち所定の気体オリフィスから、前記吐出オリフィスからの噴霧流(又は噴射流)に対して気体を衝突又は吹き付けて、噴霧(又は噴射)する。このような方法において、本発明では、前記複数の気体オリフィスとして、少なくとも3つの気体オリフィスを形成し、これらの気体オリフィスに連通する気体流路の気体の流量及び/又は圧力を、流量調整弁及び/又は圧力調整弁を介して、独立して制御し、前記噴霧流(又は噴射流)の噴霧方向及び/又は角度を制御して噴霧(又は噴射)する。
【0018】
このような方法では、複数の気体流路のうち、1又は互いに隣接する2つの気体流路での気体流量及び/又は気体圧を制御して気体オリフィスから気体を噴射(又は噴霧)してもよい。また、吐出オリフィスの気体圧の5~100%の気体圧で気体オリフィスから気体を噴射してもよい。また、吐出オリフィスからは、噴霧流(又は噴射流)を円錐状の形態で噴霧(又は噴射)してもよい。さらに、噴霧方向(噴霧軸)が可動であるため、吐出オリフィスを中心として、噴霧流(又は噴射流)の軸方向に対して0~80°の角度範囲、周方向に対して360°の範囲で、前記噴霧流(又は噴射流)の角度を可変させてもよく、前記噴霧流(又は噴射流)は、前記角度範囲及び周方向の範囲で、連続的、又は断続的(間欠的)に可変させてもよい。
【0019】
なお、本明細書において、「噴霧」と「噴射」とを同義に用いる場合がある。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、各気体オリフィスからの気体流の流量及び/又は圧力をそれぞれ独立して制御可能であるため、吐出オリフィスを中心として、液体と気体とを混合して微粒化した液滴の噴霧流の噴霧方向(噴霧軸)を簡便かつ自在に可変できる。また、ロボットアームにノズル装置を回転可能に取り付けなくても、吐出オリフィスを中心として、噴霧方向(噴霧軸)をあらゆる周方向に可変できる。そのため、液体による噴霧効率又は噴霧処理効率を大きく向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1はノズル装置の概略斜視図である。
図2図2はノズル装置の概略平面図である。
図3図3図2のA-A線断面図である。
図4図4図2のB-B線断面図である。
図5図5図2のC-C線断面図である。
図6図6図1のノズル本体に対するアダプターの装着部を示す概略図である。
図7図7は噴霧状態を示す概略図である。
図8図8は実施例1を説明するための図であり、図8(a)は気体オリフィスの位置関係を示す概略図、図8(b)は実施例1での気体オリフィスからのX軸及びY軸方向への空気圧と目視による噴霧流の変位角度との関係をマッピングした概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、必要に応じて添付図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は機能が共通する部材又は要素には同じ符号を付す場合がある。
【0023】
図1図6に示すノズル装置は、ノズル本体1と、このノズル本体に装着可能なアダプター21とを備えており、前記ノズル本体1は、軸芯部又は中心部に形成され、液体と気体とを混合して微粒化した液滴を吐出口2aから噴霧流として噴霧するための吐出オリフィス2と、この吐出オリフィスの外周上に周方向に等間隔に形成され、かつ前記吐出オリフィス2からの噴霧流に対して気体を衝突又は吹き付け可能な4つの気体オリフィス11とを備えている。この例では、金型内壁を処理するための液体として離型剤を含む溶液が利用され、気体として空気が利用されている。
【0024】
前記吐出オリフィス2は、軸心方向に延び、吐出口2aに液体を供給するための第1の吐出液体流路3と通じており、この第1の吐出液体流路の外周部には環状の形態で、前記吐出口2aの外周部に軸方向に延びて、気体を供給するための第1の吐出環状気体流路4が形成されており、この第1の吐出環状気体流路4は、前記第1の吐出液体流路3と合流する傾斜気体流路5を備えている。前記吐出オリフィス2は、第1の吐出液体流路3の液体が第1の吐出環状気体流路4の気体の流動で吸引される自吸式オリフィスを形成しており、第1の吐出液体流路3からの液体が、第1の吐出環状気体流路4から供給される気体と合流して吸引されつつ混合され、微細化した液滴が噴霧流として吐出口2aから噴射される。なお、第1の吐出液体流路3及び第1の吐出環状気体流路4は、前記吐出オリフィス2に液体と気体とをそれぞれ供給するための第1の吐出気液流路を形成している。
【0025】
前記ノズル本体1の外周域には、周方向に等間隔に前方に突出して、前方方向にいくにつれて半径外方向に傾斜した傾斜壁13が形成され、これらの傾斜壁では、前記気体オリフィス11が、それぞれ、前記吐出オリフィス2からの軸方向の噴霧流に対して所定の角度θ1で(前方方向にいくにつれて半径内方向に)傾斜して、吐出口11aで開口している。また、ノズル本体1には、前記気体オリフィス11から上流方向に延びる第1の気体流路12が形成されている。なお、吐出オリフィス2の軸線(噴霧流の噴霧方向)に対する前記気体オリフィス11の軸線(吹き付け方向)の角度(内角)θ1は、65~75°程度であってもよい。
【0026】
前記アダプター21には、前記ノズル本体1の流路とそれぞれ連通した流路が形成されている。すなわち、前記第1の吐出液体流路3及び第1の吐出環状気体流路4にそれぞれ連通する第2の吐出液体流路23及び第2の吐出気体流路24が形成され、第2の吐出液体流路23及び第2の吐出気体流路24は、前記第1の吐出気液流路に連通する第2の吐出気液流路を形成している。また、前記4つの気体オリフィス11にそれぞれ連通する前記第1の気体流路12には、アダプター21の第2の気体流路22がそれぞれ連通して形成されている。
【0027】
さらに、図6に示されるように、前記アダプター21のうち、前記4つの気体オリフィス11に通じる第2の気体流路22に対応する部位には、幅広で周方向に延びて第1の気体流路12と連通可能な気体室(幅広に湾曲した凹部)25が独立して形成され、この気体室で第2の気体流路22が開口している。すなわち、ノズル本体1とアダプター21とを相対的に周方向に回転させて位置決めして締結部材30で締結すると、第1の気体流路12及び第2の気体流路22が小径であるため、ノズル本体1の第1の気体流路12とアダプター21の第2の気体流路22とが周方向に位置ずれする場合がある。しかし、前記気体室25を形成すると、第1の気体流路12と第2の気体流路22とが周方向に位置ずれしていても、第1の気体流路12と第2の気体流路22とを前記気体室25で連通可能である。
【0028】
なお、吐出オリフィス2に至る液体流路は、軸芯部に沿って直線状に形成され、4つの気体オリフィス11に至る気体流路は、アダプター21の周方向に等間隔に接続された管体27の流路(側部外方に延びて屈曲し、後方に延びる流路)と通じており、断面L字状又は階段状の形態で形成されている。また、吐出オリフィス2に至る気体流路は、アダプター21のうち隣接する前記管体27の間に接続された管体28の流路と通じており、断面L字状又は階段状の形態で形成されている。前記管体27,28には、それぞれ流体を供給するためのパイプ又は供給ラインが取り付け可能であり、前記管体27,28又はそれらのパイプ又は供給ラインにはそれぞれ流量調整弁及び/又は圧力調整弁(図示せず)が取り付け可能である。流量調整弁及び/又は圧力調整弁は、制御ユニット(図示せず)により独立して制御可能であり、各気体オリフィス11からの気体の流量及び/又は圧力を独立して制御する。なお、アダプター21には、ロボットアームに取り付けるための取付部又はハンドル部29が形成されている。また、金型の適所(例えば、雄型及び雌型のうち雄型の周縁部)にノズル本体1が収容又は取り付け可能な収容部(凹部又は孔部)を形成し、ノズル本体1を前記収容部に設置して、金型内面(例えば、雌型の内面)に直接噴射することも可能である。
【0029】
このようなノズル装置では、アダプター21の第2の吐出気体流路24から気体を所定の圧力で供給すると、吐出オリフィス2では、第1の吐出液体流路3の液体が第1の吐出環状気体流路4の気体の流動に伴って自吸式に吸引され、第1の吐出液体流路3からの液体と、第1の吐出環状気体流路4からの気体とが合流混合されつつ吸引され、微細化した液滴が吐出口2aから噴霧流として噴射する。そして、制御ユニットでは、噴霧液体の噴霧域に応じて1又は互いに隣接する2つの流量調整弁及び/又は圧力調整弁を駆動し、噴霧方向及び角度を調整可能である。例えば、所定の1つの空気オリフィス11aから吐出オリフィス2の軸線(又は中心部)に向かって延びる方向をX軸方向、前記1つの空気オリフィス11aと隣接する空気オリフィス11bから吐出オリフィス2の軸線(又は中心部)に向かって延びる方向をY軸方向としたとき、吐出オリフィス2からの噴霧流に対して、4つの気体オリフィス11のうち1つのオリフィス11aから気体を前記角度θ1でX軸方向に前記噴霧流に噴射すると、気体圧及び/又は流量に応じて、円錐状の形態で噴射又は噴霧された前記噴霧流をX軸方向に変位して(向きを変えて)噴霧でき、噴霧域を調整可能である。なお、変位した噴霧流は、部分的に歪みがあったしても、吐出オリフィス2からの噴霧流とほぼ同じ円錐状の形態を維持できる。また、隣接する2つのオリフィス11a,11bから同じ圧力及び流量で気体を前記角度θ1でX軸方向及びY軸方向に前記噴霧流に噴射すると、円錐状の形態で噴射又は噴霧された前記噴霧流をX軸及びY軸方向に変位して(向きを変えて)噴霧でき、噴霧域をY軸方向にも拡げることができる。また、隣接する2つのオリフィスから気体を互いに異なる圧力又は流量で噴射すると、X軸方向及びY軸方向に変位させて噴霧角度及び噴霧域を調整できる。
【0030】
なお、本発明のノズル装置において、吐出オリフィスからは、液体と気体とが混合して微細化した液体を噴射又は噴霧可能であればよく、前記のように自吸式に限らず、液体と気体とをそれぞれ所定の流量及び/又は圧力で供給して合流部や混合部で混合し、吐出オリフィスから噴射又は噴霧してもよい。好ましい態様では、前記のように、気体流の減圧作用(負圧作用)を利用して液体を吸引しつつ液体と気体とを混合する自吸式の吐出オリフィスが採用される。そのため、液体流路の周囲に気体流又は気体流路を導入するのが好ましく、吐出口に至る液体流路の外周部に環状の気体流路を形成し、合流部や混合部で液体と気体とを混合して吐出オリフィスから噴霧流を噴霧又は噴射する場合が多い。前記吐出オリフィスは、ノズル装置又はノズル本体の適所に形成できるが、通常、軸芯部又は中心部に形成される。
【0031】
気体オリフィスは、前記吐出オリフィスからの噴霧流に対して、気体流を噴霧又は噴射して衝突又は吹き付け、噴霧流の方向及び/又は角度を調整可能であればよい。そのため、吐出(又は中心)オリフィスの外周域に周方向に間隔をおいて形成された複数の気体オリフィスは、少なくとも3以上の気体オリフィスを備えていればよく、複数の気体オリフィスは、必ずしも対向して位置する必要もない。また、複数の気体オリフィスは、前記吐出オリフィスの外周域(又は外周円)の1/4周域、半周域(1/2周域)、3/4周域などの所定の外周域(セクター域又は扇状域)に間隔をおいて形成していてもよく、前記外周域(又は外周円)の全周に亘って間隔をおいて形成してもよい。気体オリフィスの数は、3~10程度の範囲から選択でき、例えば、3、5、7などの奇数であってもよい。好ましい態様では、前記噴霧流を種々の方向、特に周方向の360°に亘り噴霧又は噴射するため、前記吐出オリフィスの外周円上に等間隔に形成された4以上の偶数の前記気体オリフィス、例えば、4、6、8などの偶数の前記気体オリフィス、特に、簡単な構造で、噴霧流の方向又は角度を周方向の360°に変更するためには、4つの前記気体オリフィス(X軸及びY軸方向で対向する4つの気体オリフィス)を備えている。前記気体オリフィスは、周方向の所定の角度位置、例えば、30°、45°、60°、90°などの角度位置で互いに隣接していてもよい。
【0032】
ノズル装置において、必ずしもノズル本体及びアダプターは必要ではないが、装置の組み立て効率の観点から、互いに装着可能なノズル本体及びアダプターを備えているのが好ましい。ノズル本体は、通常、軸芯部又は中心部に形成された前記吐出オリフィスと、この吐出オリフィスを中心として、吐出オリフィスの外周域(特に外周円上)に等間隔に形成された前記気体オリフィスとを備えている。具体的には、前記ノズル本体は、前記吐出オリフィスに液体と気体とをそれぞれ供給するための第1の吐出気液流路(例えば、第1の吐出液体流路及び第1の吐出環状気体流路)と、各気体オリフィスにそれぞれ気体を供給するための第1の気体流路とを備えている。アダプターは、通常、前記ノズル本体の前記吐出オリフィス及び前記気体オリフィスにそれぞれ連通する流路を備えている。具体的には、前記アダプターは、前記第1の吐出気液流路に連通する第2の吐出気液流路(例えば、第2の吐出液体流路と第2の吐出環状気体流路)と、前記第1の気体流路にそれぞれ連通する第2の気体流路とを備えている。
【0033】
なお、第1の吐出気液流路及び第2の吐出気液流路の経路は特に制限されず、第1の吐出液体流路は、吐出オリフィスの軸線に沿って形成する必要はなく、軸線に対して傾斜又は湾曲して形成してもよく、第1の吐出環状気体流路は、少なくとも吐出オリフィスで合流すればよく、吐出オリフィスよりも上流部で第1の吐出液体流路と合流してもよい。第1の吐出環状気体流路は、前方方向にいくにつれて半径内方向に傾斜し、少なくとも吐出オリフィスと合流可能な傾斜流路を有するのが好ましい。また、第1の気体流路及び第2の気体流路の経路も特に制限されず、気体オリフィスと連通する第1の気体流路は、軸線に対して湾曲又は傾斜していてもよく、好ましくは少なくとも軸方向に延びる流路を有している。また、第2の気体流路も、ノズル本体及び/又はアダプターの側部から半径内方向に延びる流路を備えている必要はなく、軸方向に延びて形成してもよい。ノズル装置をコンパクトにするためには、第2の気体流路は、側部から半径内方向に延びる流路(半径方向の流路)と、軸方向に延びて第1の気体流路に至る流路(軸方向の流路)とを備えているのが有利である。
【0034】
なお、前記気体オリフィスの延出軸方向は、前記吐出オリフィスの軸方向に対して、前方方向にいくにつれて半径内方向に傾斜しており、吐出オリフィスからの噴射流に対して、気体オリフィスから気体を噴射又は吹き付け可能である。吐出オリフィスからの噴射流(又は吐出オリフィスの軸方向)に対する気体オリフィスからの気体流の噴射又は吹き付け角度(又は気体オリフィスの傾斜角度)θ1は、25~85°(30~80°など)程度の範囲から選択でき、広い範囲を液体で処理するためには、50~80°(55~75°など)、好ましくは60~80°(65~75°など)、さらに好ましくは70~80°(70~75°など)である。
【0035】
ノズル本体の先端部には、必ずしも傾斜壁を形成する必要はなく、傾斜壁は、ノズル本体の外周縁部のうち少なくとも気体オリフィスに対応する部位に形成してもよく、ノズル本体の外周縁部の全周に亘り形成してもよい。傾斜壁は、ノズル本体の前方方向にいくにつれて半径外方向に傾斜した傾斜面を有し、この傾斜面で空気オリフィスが開口している。
【0036】
なお、前記の例では、アダプターに気体室を形成しているが、この気体室は、前記ノズル本体及びアダプターの少なくとも一方(すなわち、前記ノズル本体及び/又はアダプター)に形成してもよい。例えば、前記の例とは逆に、前記ノズル本体のうち、第1の気体流路に対応する部位に、幅広で周方向に延びて第2の気体流路と連通可能な気体室が独立して形成してもよく、前記ノズル本体及びアダプターの双方において、第1の気体流路及び第2の気体流路に対応する部位に、幅広で周方向に延びて第1の気体流路及び第2の気体流路と連通可能な気体室をそれぞれ独立して形成してもよい。なお、気体室は、第1の気体流路及び/又は第2の気体流路に対応する部位で幅広であればよく、湾曲状に限らず、円形状、楕円形状、四角形状などの形態を有する凹部で形成してもよい。
【0037】
本発明では、前記3以上の複数の気体オリフィスからの気体流の流量及び/又は圧力をそれぞれ独立して制御する。そのため、各気体オリフィスはそれぞれ独立して各気体流路と連通しており、特許文献3及び4と異なり、吐出オリフィスを中心として対向する2つの気体オリフィスが、1つの気体流路と連通することはない。各気体流路には、通常、管体(供給ライン)が接続され、気体流の流量及び/又は圧力をそれぞれ独立して制御するため、各管体(供給ライン)には、それぞれ、流量調整弁及び/又は圧力調整弁を取り付けることができる。
【0038】
制御ユニットは、各流量調整弁及び/又は圧力調整弁を独立して駆動することにより、各気体流路での流量及び/又は圧力をそれぞれ独立して制御可能である。そのため、吐出オリフィスからの噴霧流に対して、所定の気体オリフィスから気体流を衝突又は吹き付けることにより、噴霧流の噴霧方向(噴霧軸又はノズル軸)及び/又は角度を簡便かつ自在に制御でき、噴霧効率を有効に改善できる。
【0039】
制御ユニットは、噴霧域の表面形状に応じて所定の流量調整弁及び/又は圧力調整弁を駆動してもよく、例えば、吐出オリフィスの噴霧軸に対する噴霧域の変位を検出可能な変位センサ(レーザ変位センサ、又は音波センサ)と、この変位センサからの変位信号に基づいて、複数の気体オリフィスのうち所定の気体オリフィスを選択するための選択回路と、この選択回路で選択された所定の気体オリフィスに対応する流量調整弁及び/又は圧力調整弁を、変位信号(変位度)に基づいて駆動し、気体の流量及び/又は気体圧を制御するための制御回路とを備えていてもよい。さらに、必要であれば、噴霧域を撮像可能な撮像センサ(又は画像センサ)と、前記変位センサ(又は吐出オリフィスから噴霧域への距離を検出又は計測可能な反射センサ又は音波センサ)と、前記撮像センサからの画像情報と、前記変位センサ又は反射センサからの深度又は距離情報とを重ね合わせて前記噴霧域の表面形状情報を生成する表面形状情報生成回路と、この生成回路からの表面形状情報を表示する表示回路とを備えていてもよい。
【0040】
制御ユニットは、3以上の複数の気体流路のうち、噴霧域に対応して所定の気体流路での流量及び/又は圧力を制御すればよく、1つの気体流路又は非対向位置の気体流路、特に、1つの気体流路又は互いに隣接する2つの気体流路での流量及び/又は圧力を制御するのが好ましい。このような気体流路を利用すると、噴霧流による噴霧域を拡げることができ、被処理体を効率よく噴霧処理できる。
【0041】
本発明の噴霧方法(又は噴霧処理方法)では、液体と気体とを混合して吐出オリフィスから前記液体を微粒化して噴霧し、前記吐出オリフィスの外周域に周方向に間隔をおいて形成された複数の気体オリフィスのうち所定の気体オリフィスから、前記吐出オリフィスからの噴霧流に対して気体を衝突又は吹き付けて、噴霧流を角度変位させた形態で噴霧する。この方法では、前記のように、少なくとも3つの気体オリフィスに連通する気体流路の気体の流量及び/又は圧力を、流量調整弁及び/又は圧力調整弁を介して、独立して制御し、前記噴霧流の噴霧方向及び/又は角度を制御して噴霧できる。
【0042】
液体としては、水;エタノールなどの有機溶媒;塗料などの液状組成物などの種々の液体が使用でき、液体の形態は、溶液(水溶液など)、分散液(水分散液など)などであってもよい。また、液体としては、微細な液滴を形成可能であればよく、低粘度から高粘度まで広い範囲の液体又は液状組成物(例えば、室温20℃で1~300mPa・sなどの液体又は液状組成物)が使用できる。また、気体は、空気、酸素、不活性ガス(窒素ガスなど)などであってもよく、空気を利用する場合が多い。
【0043】
吐出オリフィスの気体圧は、温度20℃において、例えば、0.1~1MPa、好ましくは0.2~0.7MPa、さらに好ましくは0.3~0.5MPa程度であってもよい。吐出オリフィスからの気体流量は、例えば、0.1~10Nm/h、好ましくは0.25~5Nm/h、さらに好ましくは0.5~3Nm/h、特に、0.7~1.5Nm/h程度であってもよい。吐出オリフィスからの液体の噴霧流量は、温度20℃において、用途に応じて、0.5~500mL/分、好ましくは1~300mL/分、さらに好ましくは10~200mL/分、特に、30~100mL/分程度であってもよい。なお、吐出オリフィスから自吸式で液体を噴霧する場合、液体の圧力は0MPaである。
【0044】
気体オリフィスの気体圧は、温度20℃において、噴霧流の噴霧角度に応じて、0.05~1MPa、好ましくは0.1~0.7MPa、さらに好ましくは0.15~0.5MPa程度であってもよい。気体オリフィスの気体圧は、吐出オリフィスの気体圧に対して、5~100%(10~100%など)、好ましくは20~100%(25~100%など)、さらに好ましくは30~100%(35~100%など)であってもよい。
【0045】
このような噴霧方法では、吐出オリフィスから噴霧流を円錐状の形態で噴霧し、所定の気体オリフィスから気体流を噴射又は噴霧することにより、吐出オリフィスを中心として、噴霧流の軸方向(吐出オリフィスの軸方向)及び周方向に対して前記噴霧流の角度を可変できる。例えば、、噴霧流の軸方向(吐出オリフィスの軸方向)に対して、0~80°(2~80°など)、好ましくは5~75°(10~75°など)、さらに好ましくは15~70°(20~70°など)程度の角度範囲で噴霧流を可変又は変位させて噴霧でき;25~80°(30~80°など)、好ましくは35~75°、さらに好ましくは40~70°、特に、45~67°程度の角度範囲で噴霧流を可変又は変位させて噴霧することもできる。また、気体オリフィスを選択することにより、吐出オリフィスを中心として、周方向に対して360°の範囲で前記噴霧流を噴霧できる。そのため、被処理体に対する噴霧効率(又は処理効率)を大きく向上できる。また、前記噴霧流は、前記角度範囲及び周方向の範囲で、連続的、又は断続的(間欠的)に可変させることができる。
【実施例
【0046】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0047】
実施例1
図1に示すノズル装置において、吐出オリフィスを中心として外周上に等間隔で形成した4つの気体オリフィス(孔径1.0mm)に、図8(a)に示すように、順次に符号A1、A2、A3、A4を付した。下記条件で、水と空気とを混合して吐出オリフィスから、角度約45°で拡がる円錐状の形態で気液混合噴霧流を噴射しつつ、所定の気体オリフィス(1つの気体オリフィスA1又は隣接する2つの気体オリフィスA1及びA2)から空気を、空気圧0~0.4MPa、空気流量0~2.0Nm/hで、前記噴霧流の軸線に対して角度θ1=70°で噴射した。なお、吐出オリフィスにおいて、水は自吸式で供給した(水圧=0MPa)。また、4つの気体オリフィスのうち、気体オリフィスA3及びA4では空気圧=0MPaとし、空気を噴射しなかった。
【0048】
[吐出オリフィス]
吐出水量=60mL/min(1mL/s)
環状空気流路:空気圧=0.4MPa、空気流量=約0.9Nm/h
【0049】
結果を下表1及び図8(b)に示す。なお、1つの気体オリフィスA1から空気圧0.4MPaで空気を噴射したとき、噴霧流の軸線(中心軸)の向きを45°の角度に変更でき、噴霧流(スプレーパターン)の噴霧幅の角度は約20°となった。噴霧流の到達位置は、吐出オリフィスからの噴霧距離150mmでのX軸及びY軸方向の位置(mm)を示す。また、X軸は、気体オリフィスA1から気体オリフィスA3に延びる方向を示し、Y軸は、気体オリフィスA2から気体オリフィスA4に延びる方向を示す。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例2
吐出オリフィスからの水の流量を24mL/分、4つの気体オリフィスの孔径を1.5mm、気液混合噴霧流の軸線に対する所定の気体オリフィス(1つの気体オリフィスA1又は隣接する2つの気体オリフィスA1、A2)から空気の噴射角度θ1を75°とする以外、実施例1と同様にして、噴霧軸の可変角度、及び吐出オリフィスからの噴霧距離200mmでの噴霧流の到達位置(X軸及びY軸方向の位置(mm))を調べたところ、下表2に示す結果を得た。
【0052】
【表2】
【0053】
前記表1及び図8(b)並びに表2から明らかなように、所定の気体オリフィスから気体流を噴射することにより、吐出オリフィスからの噴霧流の方向を可変でき、噴霧域をコントロールできる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のノズル装置及び噴霧方法では、気体オリフィス(気体流路)の気体の流量又は圧力を流量調整弁及び/又は圧力調整弁で調整し、吐出オリフィスからの噴霧流に対して、所定の気体オリフィスから気体流を噴霧衝突させることにより、対象物の噴霧又は塗布位置に対応させて、噴霧流の噴霧方向(噴霧軸、軸心方向)を自由に可変できる。このような噴霧角度を可動又は制御できるため、被処理部のどの部位にでも噴霧液を噴霧でき、任意の位置にピンポイントに噴霧して塗布又は処理することもできる。そのため、本発明のノズル装置及び噴霧方法は、液体と気体とを混合して微粒化液体を噴霧する種々の用途、例えば、冷却、洗浄、調湿、薬液(消臭剤、除菌剤など)、コーティング剤(離型剤、潤滑剤、塗料やインキなど)などを被処理体又は対象物に対して噴霧するのに利用できる。例えば、金型内の任意の被処理部を、液体、例えば、離型剤や潤滑剤などで、短時間で噴霧して塗布又は処理可能であり、前記液体の使用量を低減することもできる。
【符号の説明】
【0055】
1…ノズル本体
2…吐出オリフィス
2a…吐出口
3…第1の吐出液体流路
4…第1の吐出環状気体流路
5…傾斜気体流路
11…気体オリフィス
11a,11b…吐出口
12…第1の気体流路
13…傾斜壁
21…アダプター
22…第2の気体流路
23…第2の吐出液体流路
24…第2の吐出気体流路
25…気体室
27,28…管体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8