(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】マッサージデータ更新装置及びマッサージ機
(51)【国際特許分類】
A61H 7/00 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
A61H7/00 323L
(21)【出願番号】P 2018097603
(22)【出願日】2018-05-22
【審査請求日】2021-05-08
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000112406
【氏名又は名称】ファミリーイナダ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】稲田 二千武
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】栗山 卓也
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-215671(JP,A)
【文献】特開2017-158918(JP,A)
【文献】特開2006-34840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに対してマッサージを行うマッサージ部と、
マッサージデータを記憶する記憶部
と前記マッサージデータの更新処理を実行する制御部と
を有するマッサージデータ更新装置と、を備えるマッサージ機であって、
前記マッサージデータは、前記マッサージ機によって実行されるマッサージ動作が初期設定されたマッサージデータと、初期評価のために実行されるマッサージ動作を規定する予備動作マッサージデータと、で、構成されており、
前記初期設定されたマッサージデータは、所定の目的をもって複数のマッサージ動作を順次実行するよう構成された第1マッサージコースであり、
前記第1マッサージコースは、前記マッサージ機に複数設けられており、
予備動作マッサージデータは、各施療位置におけるマッサージ動作に対するユーザの反応又はユーザの好み等を初期評価として得るための第2マッサージコースであり、
前記第2マッサージコースは、前記第1マッサージコースの実行前に、前記マッサージ部によるマッサージ動作を施療可能な各施療部位に対して実行するように構成されており、
前記更新処理は、
前記複数の第1マッサージコースのうち、前記第2マッサージコースの実行により得られた初期評価に基づいて選択された第1マッサージコースのマッサージ動作を、変化させるよう構成された変化処理と、
変化処理後の第1マッサージコースのマッサージ動作を評価する評価処理と、
前記マッサージ動作の評価に基づいて、前記変化処理後の第1マッサージコースのマッサージ動作を更に変化させる再変化処理と、を含み、
前記再変化処理は、前記第1マッサージコースが次回実行されるときのための次世代の更新マッサージデータを生成する処理であり、
前記記憶部は、前記再変化処理により得られた更新マッサージデータを更に記憶することができ、
前記変化
処理後の第1マッサージコースのマッサージ動作は、
前記初期設定されたマッサージデータについてマッサージ動作の種類、施療回数、施療強さのうち少なくとも1つを変更するものであることを特徴とするマッサージデータ更新装置を備えるマッサージ機。
【請求項2】
前記マッサージデータは、前記評価処理及び前記再変化処理の繰り返し実行によって、繰り返し変化する請求項1記載のマッサージデータ更新装置を備えるマッサージ機。
【請求項3】
前記評価処理は、マッサージ動作の評価をユーザから取得する処理を含む請求項1又は2に記載のマッサージデータ更新装置を備えるマッサージ機。
【請求項4】
マッサージ動作の評価をユーザから取得する前記処理は、ユーザから評価を音声入力により取得することを含む請求項3に記載のマッサージデータ更新装置を備えるマッサージ機。
【請求項5】
前記評価処理は、マッサージ動作が施されたユーザの測定データに基づいて評価する処理を含む請求項1から4のいずれか1項に記載のマッサージデータ更新装置を備えるマッサージ機。
【請求項6】
前記マッサージ動作の評価は、前記マッサージ動作に対する肯定的な評価を含む請求項1から5のいずれか1項に記載のマッサージデータ更新装置を備えるマッサージ機。
【請求項7】
前記マッサージ動作の評価は、前記マッサージ動作に対する否定的な評価を含む請求項1から6のいずれか1項に記載のマッサージデータ更新装置を備えるマッサージ機。
【請求項8】
前記再変化処理は、前記マッサージ動作の評価に基づかずに前記変化
処理後のマッサージデータを変化させることを更に含む請求項1から7のいずれか1項に記載のマッサージデータ更新装置を備えるマッサージ機。
【請求項9】
前記マッサージ動作の評価に基づかずに前記変化
処理後のマッサージデータを変化させることは、前記変化
処理後のマッサージデータをランダムに変化させることである請求項8に記載のマッサージデータ更新装置を備えるマッサージ機。
【請求項10】
前記予備動作マッサージデータは、前記ユーザの複数の位置それぞれに対するマッサージ動作を規定しており、
前記初期評価は、各位置に対するマッサージ動作について、ユーザから取得される評価を含む請求項1~9のいずれかに記載のマッサージデータ更新装置を備えるマッサージ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マッサージデータ更新装置及びマッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、施療に係る負荷の影響を受ける施療子の駆動手段の作動速度変化を検知し、この変化に基づいて駆動手段をより適切な作動状態に調整制御するマッサージ機を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
一般に、マッサージ機には、マッサージ動作を規定した複数のマッサージコースが用意されている。しかし、予め用意されているマッサージコースの数には限りがあるため、ユーザが、マッサージ機によるマッサージに対して飽きてしまうおそれがある。マッサージ機がユーザによって積極的に活用されるには、マッサージ機によるマッサージに対する飽きをユーザが抱かないようにする必要がある。
【0005】
マッサージ機によるマッサージに対する飽きをユーザが抱かないようにするには、マッサージ機によって実行されるマッサージ動作を規定するマッサージデータを、ユーザに合わせて進化させることが望まれる。この点に関し、特許文献1は、施療子の駆動手段の作動速度変化に基づいて、駆動手段の作動状態を調整することを開示しているにすぎず、マッサージデータをユーザに合わせて進化させることは開示していない。
【0006】
本開示の一の側面は、マッサージデータ更新装置である。本開示のマッサージデータ更新装置は、マッサージデータを変化させ、変化後のマッサージデータに従ったマッサージ動作を評価し、前記マッサージ動作の評価に基づいて、前記変化後のマッサージデータを更に変化させる。
【0007】
本開示の他の側面は、マッサージ機である。マッサージ機は、前記マッサージ機によって実行されるマッサージ動作を規定するマッサージデータを記憶する記憶部と、前記マッサージデータの更新処理を実行する制御部と、を備える。
【0008】
更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】
図3は、マッサージ機の機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、マッサージ機の姿勢を説明する側面図である。
【
図5】
図5は、マッサージユニットの正面図である。
【
図6】
図6は、モータを出力軸方向からみた図である。
【
図7】
図7は、マッサージデータ更新装置のブロック図である。
【
図8】
図8は、予備動作処理と更新処理のフローチャートである。
【
図9】
図9は、予備動作マッサージデータのデータ構造図である。
【
図12】
図12は、予備動作評価データのデータ構造図である。
【
図13】
図13は、遠心マッサージデータの更新を示す図である。
【
図14】
図14は、更新された遠心マッサージデータのコース実行中の変更を示す図である。
【
図15】
図15は、再変化処理後のマッサージデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<1.マッサージデータ更新装置及びマッサージ機の概要>
【0011】
(1)実施形態に係るマッサージデータ更新装置は、マッサージ機によって実行されるマッサージ動作を規定するマッサージデータを記憶する記憶部と、前記マッサージデータの更新処理を実行する制御部と、を備える。前記更新処理は、前記マッサージデータを変化させる変化処理と、変化後のマッサージデータに従ったマッサージ動作を評価する評価処理と、前記マッサージ動作の評価に基づいて、前記変化後のマッサージデータを更に変化させる再変化処理と、を含むことができる。マッサージ動作を変化させ、それを評価し、さらに再変化させることで、マッサージデータを進化させることができる。
【0012】
(2)前記マッサージデータは、前記評価処理及び前記再変化処理の繰り返し実行によって、繰り返し変化するのが好ましい。この場合、マッサージデータを繰り返し進化させることができる。
【0013】
(3)前記評価処理は、マッサージ動作の評価をユーザから取得する処理を含むことができる。この場合、ユーザ評価によって、マッサージデータを進化させることができる。
【0014】
(4)マッサージ動作の評価をユーザから取得する前記処理は、ユーザから評価を音声入力により取得することを含むのが好ましい。この場合、ユーザ評価の取得が容易である。
【0015】
(5)前記評価処理は、マッサージ動作が施されたユーザの測定データに基づいて評価する処理を含むことができる。この場合、客観的な測定データに基づいて、マッサージデータを進化させることができる。
【0016】
(6)前記マッサージ動作の評価は、前記マッサージ動作に対する肯定的な評価を含むことができる。肯定的な評価によってマッサージを重点化する変化が行える。
【0017】
(7)前記マッサージ動作の評価は、前記マッサージ動作に対する否定的な評価を含むことができる。否定的な評価によってマッサージを省略又は軽くする変化が行える。
【0018】
(8)前記再変化処理は、前記マッサージ動作の評価に基づかずに前記変化後のマッサージデータを変化させることを更に含むことができる。この場合、マッサージの進化に偶然的要素を利用でき、より効率的な進化が期待される。
【0019】
(9)前記マッサージ動作の評価に基づかずに前記変化後のマッサージデータを変化させることは、前記変化後のマッサージデータをランダムに変化させることであるのが好ましい。
【0020】
(10)前記変化処理は、マッサージ動作の初期評価に基づいて、前記マッサージデータを変化させるよう構成され、前記記憶部は、前記初期評価のために実行されるマッサージ動作を規定する予備動作マッサージデータを記憶しているのが好ましい。この場合、予備動作マッサージデータを用いて適切な初期評価を行うことができる。
【0021】
(11)前記予備動作マッサージデータは、前記ユーザの複数の位置それぞれに対するマッサージ動作を規定しており、前記初期評価は、各位置に対するマッサージ動作について、ユーザから取得される評価を含むことができる。この場合、各位置に対するユーザ評価が得られる。
【0022】
(12)実施形態に係るマッサージ機は、マッサージ動作を実行する。マッサージ機は、前記マッサージ機によって実行されるマッサージ動作を規定するマッサージデータを記憶する記憶部と、前記マッサージデータの更新処理を実行する制御部と、を備える。前記更新処理は、前記マッサージデータを変化させる変化処理と、変化後のマッサージデータに従ったマッサージ動作を評価する評価処理と、前記マッサージ動作の評価に基づいて、前記変化後のマッサージデータを更に変化させる再変化処理と、を含むことができる。
【0023】
<2.マッサージ機の例>
【0024】
図1から
図6は、実施形態に係るマッサージデータ更新装置を備えるマッサージ機1を示している。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、
図1に示すマッサージ機1に着座したユーザから見たときの方向の概念と一致するものとし、その他の場合は適宜説明するものとする。また、身体の表裏の定義については、起立したユーザの胸側を「表面」、背中側を「背面」として説明する。
【0025】
<2-1.マッサージ機の全体構成>
【0026】
図1~
図4に示すマッサージ機1は、主として、ユーザが着座する座部2と、座部2の後部にリクライニング可能に設けられたユーザが凭れる背凭れ部3と、座部2の前部に上下揺動可能に設けられたユーザの下肢を支持するフットレスト4と、背凭れ部3の上部前面に設けられたユーザの頭及び/又は首を支持する枕部5と、座部2の左右両側には肘掛け部6と、背凭れ部3の左右両側には側壁部7と、を有している。座部2、背凭れ部3、フットレスト4、枕部5、肘掛け部6、及び側壁部7は、ユーザの身体を支持する身体支持部として機能する。
【0027】
身体支持部2~7の各所には、ユーザの身体に対してマッサージを行う後述するエアセル20や後述するバイブレータ21によるマッサージ部15が設けられている。また、マッサージ機1は、背凭れ部3に後述する揉み動作及び/又は叩き動作を行うマッサージ部15としてのマッサージユニット8と、マッサージ機1の各動作を制御する制御部9と、後述するユーザに各種操作を行わせるコントローラ10と、を有している。
【0028】
図1,
図3及び
図4に示すとおり、背凭れ部3は、座部2の下方に設けられた第1アクチュエータ11(
図3参照)により、座部2に対して前後にリクライニング可能に構成されており、
図1に示す起立姿勢から背凭れ面が略水平となるリクライニング姿勢(
図4参照)まで変更可能となっている。なお、肘掛け部6は背凭れ部3のリクライニングに連動して後方へ移動し、背凭れ部3の起立に連動して前方へ移動するよう構成されている。フットレスト4は、座部2の下方に設けられた第2アクチュエータ12(
図3参照)により、座部2に対して上下に揺動可能に構成されており、
図1に示す垂下姿勢から膝を伸ばした状態で下腿及び足部が支持される上昇姿勢(
図4参照)まで変更可能となっている。
【0029】
図1~3に示すとおり、座部2の左右両側には、ユーザの臀部及び/又は大腿部の外側面に対向して設けられた壁部22が設けられている。この壁部22は、座部の側方において上方へ立設されている。そして、壁部22の内側面には、臀部及び/又は大腿部の外側面をマッサージする臀部マッサージ部a4が設けられている。座部2の左右両側の肘掛け部6の内側壁を壁部22として利用してもよく、臀部マッサージ部a4を肘掛け部6の内側壁に設ければよい。また、座部2には、ユーザの臀部及び/又は大腿部を下方(背面)からマッサージする臀部マッサージ部a5が設けられていてもよい。臀部マッサージ部a4,a5は、エアの給排気により膨張収縮するエアセル20により構成されている。このように、臀部マッサージ部a4は左右で対をなしてマッサージ部群A4を構成し、臀部マッサージ部a5は左右で対をなしてマッサージ部群A5を構成している。
【0030】
<2-2.背凭れ部の構成>
【0031】
図1~
図3に示すとおり、背凭れ部3は、硬質の背フレーム3aと、背フレーム3aに組み付けられたマッサージ部15であるマッサージユニット8の昇降をガイドするガイドレール18と、背フレーム3aを被覆するカバー部材3cと、により構成されている。背フレーム3aは、金属部材及び/又は樹脂部材により構成されている。また、背フレーム3aは、左右中央に形成された前後方向に開口する開口部3bを有し、正面視で略門型をなしている。また、カバー部材3cは、開口部3bを前方から覆っている。マッサージユニット8の施療子62(
図5参照)が開口部3bより前方へ突出しており、カバー部材3cを介してユーザの胴体を後方からマッサージできるようになっている。
【0032】
<2-3.マッサージユニットの構成>
【0033】
以下、マッサージユニット8の構成について説明する。
図1~
図3,
図5に示すとおり、背凭れ部3には、ユーザの上半身を後方(背面)からマッサージするマッサージユニット8が設けられている。このマッサージユニット8は、身長方向に沿って複数(本実施形態では1つ)設けられていてもよい。このマッサージユニット8は、左右で対をなすアーム61と、アーム61の上下両端部に設けられた施療子62と、により構成されており、マッサージモータM1,M2の駆動により左右の施療子62が近接離反する揉み動作、及び左右の施療子62が交互にユーザ側へ進退する叩き動作を行わせることができる。また、マッサージユニット8は、昇降モータM3の駆動により身長方向に沿って上方又は下方へ移動して、身体に対する位置を変更したり、ローリングマッサージを行わせたりすることができる。背フレーム3aには、身長方向に延設された左右で対をなすガイドレール18が設けられており、マッサージユニット8はガイドレール18に沿って移動する。マッサージユニット8が身長方向に移動可能であるため、ユーザの首から腰の間を施療子62でマッサージすることができる。
【0034】
図5に示すとおり、マッサージユニット8は、ベースフレーム60aと、ベースフレーム60aに支持された可動フレーム60bと、を有している。ベースフレーム60aは、その左右両側においてガイドレール18に嵌合するガイドローラ63を有している。そして、ラックピニオン等よりなる昇降機構(図示せず)によって、身長方向に沿って移動することができる。可動フレーム60bは、左右方向の揺動軸64を介してベースフレーム60aに支持されている。ベースフレーム60aと可動フレーム60bの間には、エアセル等よりなる進退駆動部65が設けられている。進退駆動部65の駆動により、可動フレーム60bは揺動軸64を中心として前後方向に進退することができる。なお、可動フレーム60bを進退させる構造でなくてもよく、アーム61に進退駆動部65を設けてアーム61のみを進退させる構造であってもよい。
【0035】
アーム61は、左右方向に延設された揉み軸66及び叩き軸67に連結されている。揉み軸66の左右両側には、傾斜軸部66bを有する傾斜カム66aが設けられており、この傾斜カム66aにアーム61が取り付けられている。左右の傾斜軸部66bは、正面視で略ハの字型となるように揉み軸66の軸心に対して傾斜している。叩き軸67の左右両側には、叩き軸67の軸心に対して偏心した偏心軸部67bを有する偏心カム67aが設けられており、この偏心カム67aにアーム61がコンロッド68を介して取り付けられている。左右の偏心軸部67bは、叩き軸67の軸心に対する位相が互いに異なっており、具体的には180度だけ異なっている。揉み軸66及び叩き軸67は、それぞれマッサージモータM1,M2の駆動により回転する。施療子62は揉み軸66の回転により揉み動作を行い、ユーザに対して揉みマッサージを行うことができる。また、施療子62は叩き軸67の回転により叩き動作を行い、ユーザに対して叩きマッサージを行うことができる。その他に、施療子62は揉み軸66と叩き軸67の回転により揉み叩き動作を行い、ユーザに対して揉み叩きマッサージを行うことができ、揉み動作と進退駆動部65の駆動を組合せることで指圧動作を行い、ユーザに対して指圧マッサージを行うこともできる。なお、施療子62が設けられたアーム61、揉み軸66、及び叩き軸67は、可動フレーム60bに支持されている。従って、施療子62は、可動フレーム60bの移動を介してユーザに対して進退可能である。
【0036】
アーム61は、前後方向に揺動自在であり、上側の施療子62が前方へ突出するようにバネ等よりなる付勢手段(図示せず)により付勢されている。また、マッサージユニット8は、ユーザの身体情報を検出するセンサ69を有している。このセンサ69は、アーム61が所定の揺動位置となったことを検出することで身体情報を得ることができる。具体的に説明すると、マッサージユニット8を身長方向に沿って上昇させる過程で、上側の施療子62が肩の上方に到達すると、施療子62に作用する負荷が解除されて、アーム61が前方へ揺動して所定の揺動位置となる。アーム61が所定の揺動位置となったことをセンサ69が検出し、その際のマッサージユニット8の上下位置に基づいて肩の位置を検出する。肩の位置を基準として、その他の部位(首、背中、腰等)の位置を計算により求める。検出された身体情報は後述する記憶部50に記憶される。
【0037】
<2-4.側壁部の構成>
【0038】
図1~
図3に示すとおり、背フレーム3a(背凭れ部3)の左右両側には、ユーザの肩又は上腕の外側面に対向して設けられた側壁部7が設けられている。この側壁部7は、背凭れ部3の側方において前方へ立設されている。そして、側壁部7の内側面には、肩又は上腕の外側面をマッサージする肩側マッサージ部a2が設けられている。肩側マッサージ部a2は、エアの給排気により膨張収縮するエアセル20により構成されている。このように、肩側マッサージ部a2は左右で対をなしてマッサージ部群A2を構成している。
【0039】
<2-5.枕部の構成>
【0040】
図1~
図3に示すとおり、背凭れ部3の上部前面には、ユーザの頭及び/又は首を支持する枕部5が設けられている。枕部5の前面には、頭及び/又は首の後面に対向して設けられた左右で対をなす頭部マッサージ部a1が設けられている。頭部マッサージ部a1は、エアの給排気により膨張収縮するエアセル20により構成されている。このように、頭部マッサージ部a1は、左右で対をなしてマッサージ部群A1を構成している。この頭部マッサージ部a1は、頭及び/又は首の外側面に対向して設けてもよい。この場合は、前方へ立設された壁部(図示せず)の内側面に設けるとよい。また、頭部マッサージ部a1は、枕部5に設けるのではなく、背凭れ部3の上部前面に直接設けてもよい。
【0041】
<2-6.ひじ掛け部の構成>
【0042】
図1~
図3に示すとおり、座部2の左右両側には、ユーザの手先と前腕を支持する肘掛け部6が設けられている。肘掛け部6の手先と前腕の上下方向には、腕マッサージ部a3が設けられている。腕マッサージ部a3は、エアの給排気により膨張収縮するエアセル20により構成されている。このように、腕マッサージ部a3は、左右で対をなしてマッサージ部群A3を構成している。
【0043】
<2-7.フットレストの構成>
【0044】
図1~
図3に示すとおり、フットレスト4は、ユーザの下腿を支持する左右一対の脚支持部40と、ユーザの足部を支持する左右一対の足支持部41と、を有している。脚支持部40は、ユーザの下腿の背面に対向して設けられた底壁40aと、底壁40aの左右両端から前方に向かって立設された側壁40bと、底壁40aの左右中央から前方に向かって立設された中央壁40cと、を有している。
【0045】
側壁40bの内側面には、下腿の外側面をマッサージする脚マッサージ部a6が設けられている。中央壁40cの両外側面には、下腿の内側面をマッサージする脚マッサージ部a6が設けられている。また、底壁40aには、ユーザの下腿の背面からマッサージする脚マッサージ部a7が設けられている。脚マッサージ部a6,a7は、エアの給排気により膨張収縮するエアセル20により構成されている。脚マッサージ部a6は、下腿の内側面に対向する脚マッサージ部a6と、下腿の外側面に対向する脚マッサージ部a6、により左右で対をなしてマッサージ部群A6を構成している。脚マッサージ部a7は、中央壁40cを挟んで左側の下腿の背面に対向する脚マッサージ部a7と、中央壁40cを挟んで右側の下腿の背面に対向する脚マッサージ部a7と、により左右で対をなしてマッサージ部群A7を構成している。
【0046】
足支持部41は、ユーザの足裏を置く底壁41aと、底壁41aの左右両端から上方に向かって立設された側壁41bと、底壁41aの左右中央から上方に向かって立設された中央壁41cと、底壁41aの後部から上方へ立設された足部の背面(踵付近)に対向する後壁41dと、を有している。各壁41a~41dより上方及び前方が開口した凹部42が形成されており、凹部42に足部を収容できるようになっている。
【0047】
各壁41a~41cには、ユーザの足をマッサージする足マッサージ部a8が設けられ、左右で対をなしてマッサージ群A8を構成している。足マッサージ部a8は、エアの給排気により膨張収縮するエアセル20により構成されている。
【0048】
<2-8.コントローラの構成>
【0049】
図1~
図4に示すとおり、肘掛け部6の上部にはコントローラ10が備えられており、ユーザが着座した状態で操作することができる。このコントローラ10は、ユーザが目視で確認できる画面10aと、ユーザが画面10a上を指先操作するタッチパネル10bを有している。コントローラ10を操作することにより、リクライニングさせて背凭れ部3の姿勢を変更することができ、上下に揺動させてフットレスト4の姿勢を変更することができる。また、動作させるマッサージユニット8,各マッサージ部a1~a8を選択したり、マッサージユニット8,各マッサージ部a1~a8の動作(手技又は強さ等)を変更したりすることもできる。コントローラ10の画面10a上に選択部30を表示させて、タッチパネル10bによる操作によって、ユーザはマッサージコースを選択することができる。
【0050】
タッチパネル10bによる操作の代わりに、コントローラ10内に配置した物理ボタン31のみやコントローラ10内に設置されたマイク(図示せず)を使った音声認識部32による操作のみであってもよい。このようにすることで、ユーザは容易に選択することができる。なお、音声認識部32であるマイク(図示せず)をコントローラ10内ではなく、背凭れ部3の上部や枕部5に設置してもよい。このようにすることで、ユーザはわざわざ姿勢を変えなくても背凭れ部3に凭れたまま、音声認識部32で選択を行うことができる。また、コントローラ10は、報知部33を有している。報知部33は、上述した画面10aでもいいし、コントローラ10内に設置されたスピーカ(図示せず)であってもよい。このようにすることで、後述する身体の硬さを検出したユーザの身体部位をユーザに報知することができ、ユーザは自身の身体の硬い部位を知ることができる。
【0051】
図2,
図3に示すとおり、座部2の下方には、エアセル20よりなる各マッサージ部a1~a8に対してエアを給排気するポンプ13a及びバルブ13bを有する給排気装置13と、前述した制御部9と、が設けられている。各マッサージ部a1~a8と同じ場所にモータにより駆動されるバイブレータ21を設けてもよい。エアセル20は、エアを給排気することでユーザを押圧することができる。バイブレータ21は、偏心分銅が回転することでユーザに振動を与えることができる。
【0052】
制御部9は、プロセッサ等を有する。制御部9は、各アクチュエータ11,12、マッサージ部15、及び給排気装置13を駆動制御する。制御部9には、コントローラ10や記憶部50が電気的に接続されている。制御部9は、記憶部50に記憶されたマッサージデータに従ってマッサージコースを実行する。制御部9が、マッサージコースを実行すると、マッサージ部15等がマッサージデータに規定されたマッサージ動作をするように、マッサージ部15等が駆動制御される。なお、マッサージ機1は、ユーザによるコントローラ10からの指示に従って動作することもできる。
【0053】
また、ユーザの各身体部位に対する身体の硬さを直接的又は間接的に検出するセンサ70,71が設けられている。本実施形態では、2種類のセンサ70,71が設けられているが、少なくともいずれか一方が設けられていればよい。第一センサ70は、マッサージモータM1,M2の回転速度を検出することで身体の硬さを間接的に検出する。ユーザの身体の硬さの変化が、マッサージモータM1,M2の回転速度の変化となって現れる。すなわち、揉み軸66及び叩き軸67の回転によりユーザの身体部位に対して揉み動作や叩き動作を行う時に、マッサージモータM1,M2の回転速度が目標回転速度と一致するように制御するが、身体の硬さが硬い部位においてはマッサージモータM1,M2の回転速度は目標回転速度とならず、目標回転速度より遅くなる。マッサージモータM1,M2の回転速度が目標回転速度と一致すれば、身体の硬さにおいて所定値の硬さとみなすが、マッサージモータM1,M2の回転速度が目標回転速度以下になれば、身体の硬さにおいて所定値以上の身体の硬さとなる。従って、回転速度の変化から身体の硬さを検出することができる。
【0054】
図6はマッサージモータM1を出力軸方向から見た図である。下記説明するマッサージモータM1と第一センサ70の構成とマッサージモータM2の構成は同様であるため、下記ではマッサージモータM1を例に挙げて説明する。
【0055】
図6に示すとおり、第一センサ70は、マッサージモータM1の出力軸M1aの周囲に設けられた複数(本実施形態では5個)の非接触式の検出部70aと、マッサージモータM1の出力軸M1aに設けられた検出部70aによって存否が検出される磁石等よりなる被検出部70bと、を有している。検出部70aは、被検出部70bを有する出力軸M1aの回転位置を検出することができる。より具体的には、出力軸M1aの回転位置を複数箇所(本実施形態では5個)把握することができる。そして、第一センサ70は、所定時間内における出力軸M1aの回転位置の変化量からマッサージモータM1の回転速度を検出する。
【0056】
図5に示すとおり、第二センサ71としては、マッサージユニット8に設けられている。具体的には、第二センサ71は、可動フレーム60bとエアセル等よりなる進退駆動部65の間に設けられている。第二センサ71は、ユーザ側からマッサージ部15であるマッサージユニット8に加わる圧力を直接的に検出する圧力センサにより構成されている。ユーザの身体の硬さの変化が、マッサージ部15に加わる圧力の変化となって現れる。すなわち、進退駆動部65の駆動により、可動フレーム60bを前後方向に進退させ目標圧力になるように圧力を増減させる。マッサージを行う際、ユーザに当接する施療子62に対して、身体の硬さが硬い部位においてはユーザ側から負荷がかかり、目標圧力以上の圧力が検出される。従って、身体の硬さが硬い部位(ユーザ側からの負荷が大きい箇所)は、第二センサ71が検出する圧力は大きくなる。圧力が目標圧力以上となることは、身体の硬さにおいて所定値以上の身体の硬さということになる。従って、圧力の変化から身体の硬さを検出することができる。
【0057】
<3.マッサージデータ更新装置>
【0058】
図7は、実施形態に係るマッサージデータ更新装置100を示している。更新装置100は、制御部9と記憶部50とを備えるコンピュータによって構成されている。記憶部50は、コンピュータを、更新装置100として機能させるためのコンピュータプログラム400を記憶している。制御部9のプロセッサは、コンピュータプログラム400を実行することで、コンピュータを、更新装置100として機能させる。
【0059】
記憶部50は、マッサージデータ200,201,20n、301,30nを記憶している。マッサージデータ200,201,20n、301,30nは、マッサージ機1のマッサージ部15によって実行されるマッサージ動作を規定する。マッサージ動作は、施療位置、動作の種類、施療回数(施療時間)、マッサージ強さ等によって規定される。マッサージデータ200,201,20n、301,30nは、更新装置100によって更新される。
【0060】
実施形態において、マッサージデータ200,201,20n、301,30nは、マッサージコース用である。マッサージコースは、複数のマッサージ動作を順次実行するよう構成されている。マッサージコースは、例えば、所定の目的をもって複数のマッサージ動作が組み合わされている。マッサージコースには、例えば、全身マッサージコース、求心マッサージコース、遠心マッサージコースなどがある。全身マッサージコースでは、例えば、全身の疲労回復のため、首から脚までの全身における複数の位置が順次マッサージされる。求心マッサージコースでは、身体の末端から血流を心臓に送り返すため、心臓から遠い位置から心臓に近づくように施療位置を順次変更しながらマッサージされる。遠心マッサージコースでは、心臓から血流を身体の末端へ促すため、心臓に近い位置から遠ざかるように施療位置を順次変更しながらマッサージされる。
【0061】
実施形態のマッサージデータには、初期マッサージデータ201,20nが含まれる。初期マッサージデータ201,20nは、記憶部50に初期設定されたマッサージデータ(オリジナルマッサージデータ)である。記憶部50は、複数(n個)の初期マッサージデータ201,20nを記憶している。複数の初期マッサージデータ201,20nのうち、第1マッサージデータは、例えば、遠心マッサージコースのために初期設定されたデータである。第nマッサージデータは、例えば、全身マッサージコースのために初期設定されたデータである。
【0062】
実施形態のマッサージデータには、更新マッサージデータ301,30nが含まれる。更新マッサージデータ301,30nは、更新処理により更新されたマッサージデータである。更新マッサージデータ301,30nは、初期マッサージデータ201,20nを更新して得られたマッサージデータ又は現世代の更新マッサージデータを更新して得られた次世代のマッサージデータである。ここで、「世代」は、更新の前後を区別するための概念であり、現世代のマッサージデータを更新することにより、次世代のマッサージデータになる。世代は、更新を繰り返すことで、順次変化する。マッサージデータの更新については後述する。
【0063】
実施形態のマッサージデータには、予備動作マッサージデータ200が含まれる。予備動作マッサージデータ200は、予備動作コースのために設定されたマッサージデータである。予備動作コースについては後述する。
【0064】
実施形態の制御部9は、予備動作処理S10を実行する。予備動作処理S10は、予備動作マッサージデータ200に従ったマッサージ動作(予備動作コース)をマッサージ部15に実施させる。予備動作コースは、マッサージ動作に対するユーザの反応又はユーザの好み等を初期評価として得るためのマッサージコースである。予備動作コースは、例えば、ユーザのコース選択操作によって実施される。
【0065】
予備動作コースは、各施療位置におけるユーザの反応又はユーザの好み等を把握するため、例えば、マッサージ機1による施療可能範囲を一通り施療するよう構成される。
図9は、予備動作コースを規定する予備動作マッサージデータ200の例を示している。
図9の予備動作マッサージデータ200は、順次実行される複数のマッサージ動作が、動作順に配列された構造を有する。各マッサージ動作は、施療位置200a、マッサージ動作の種類200b、施療回数(施療時間)200c、及び施療強さ200dの組み合わせによって規定されている。
【0066】
例えば、
図9の予備動作マッサージデータ200は、首から腰の範囲を一通り施療するよう構成されている。すなわち、
図9の予備動作マッサージデータ200は、第1首位置、第2首位置、第3首位置、第1肩位置、第2肩位置、第3肩位置、第1背中位置、第2背中位置、第3背中位置、第1腰位置、第2腰位置、第3腰位置の各位置に対して、この順番で施療が行われる。例えば、第1首位置に対しては、マッサージ動作種類200bとして「もみ」が設定され、施療回数200cとして「1回」が設定され、強さ200dとして「中」が設定されている。なお、施療回数とは、例えば、所定時間長さを持つマッサージの実行回数であり、施療回数が多いほど、マッサージ時間が長くなる。
【0067】
なお、首位置、肩位置、背中位置、及び腰位置が、それぞれ、第1、第2、及び第3の3つで区別されているのは、首位置、肩位置、背中位置、及び腰位置それぞれを、3つの領域に細分化したものである。例えば、第1首位置は、首まわりの領域のうちの最も下の位置であり、第2首位置は、首まわりの領域のうち第1首位置よりも上の位置であり、第3首位置は、首まわりの領域のうち第2首位置よりも上の位置である。
【0068】
図10に示すように、予備動作コースでは、予備動作マッサージデータ200に従って、各施療位置に対するマッサージが行われる。予備動作コースでは、各施療位置に対するマッサージが実行されるほか(ステップS101,S103,S105,S107,S119,S121,S123)、各施療位置に対するマッサージ動作の評価処理が行われる(ステップS102,S104,S106,S108,S120,S122,S124)。
【0069】
図11に示すように、動作評価処理は、施療位置に対するマッサージに対するユーザの反応(評価)を取得することを含む。例えば、動作評価処理では、各施療位置に対するマッサージ動作の実行中においてユーザの反応があったか否かを判定する(ステップS201)。ユーザの反応は、例えば、ユーザの発話であってもよいし、コントローラ10に対するユーザの操作であってもよい。ユーザの発話は、音声認識部32への音声入力により取得される。ユーザの反応の有無は、例えば、施療位置に対するマッサージ動作の実行中におけるユーザ発話が、音声認識部32によって検出されるか否かによって判定できる。
【0070】
ユーザ発話があった場合、ユーザの発話内容が、マッサージ動作に対する肯定的な評価であるか、否定的な評価であるかが、識別される(ステップS202)。発話内容は、音声認識処理によってテキストデータ化され、テキストデータに対する自然言語処理によって意味解析が行われる。発話内容の意味解析により、肯定的な評価の発話であったか、否定的な評価の発話であったかが識別される。意味解析では、例えば、肯定的な意味の単語(例えば「そこそこ」)の集合を有する肯定語辞書と、否定的な意味の単語(例えば「いや」)の集合を有する否定語辞書と、が用いられる。
【0071】
制御部9は、ユーザ発話が、「そこそこ」などの肯定的な評価である場合、評価対象位置におけるユーザ評価として「肯定的評価(そこそこ)」を記憶する。また、制御部9は、ユーザ発話が、「いや」などの否定的な評価である場合、評価対象位置におけるユーザ評価として「否定的評価(いや)」を記憶する。
【0072】
図12は、予備動作コースで施療される各位置に対するユーザ評価を示す予備動作評価データ250を示している。評価データ250は、記憶部50に保存される。
図12の評価データ250は、施療位置250aと評価250bとの組み合わせによって構成されている。
【0073】
図12の評価データ250は、第1首位置、第3首位置、第2肩位置、第3背中位置では、ユーザの反応がなく、評価「無し」であること示している。また、第2首位置、第1肩位置、第1腰位置、第2腰位置では、ユーザの反応が「そこそこ」であって、肯定的評価であることを示している。さらに、第3肩位置、第1背中位置、第2背中位置、第3腰位置では、ユーザの反応が「いや」であって、否定的評価であることを示している。
【0074】
実施形態の予備動作処理は、ユーザの測定データに基づいてユーザを初期評価する処理を含む。測定データは、例えば、ユーザに装着されたウェアラブル端末(図示省略)又はスマートフォンなどのモバイル端末(図示省略)によって測定される。測定データは、例えば、ユーザのバイタルデータである。バイタルデータは、例えば、血圧又は脈拍数である。制御部9が、ユーザのウェアラブル端末又はモバイル端末と通信することにより、ユーザの測定データを取得する。
【0075】
初期評価のための測定データは、予備動作コース実行中に測定されたデータであってもよいし、予備動作コース実行後に測定されたデータであってもよいし、予備動作コース実行前に測定されたデータであってもよい。
【0076】
例えば、測定データが、血圧及び脈拍数である場合、制御部9は、血圧及び脈拍数に基づいて、ユーザのストレス状態を識別する。例えば、血圧が高く脈拍数が多い場合、高ストレス状態と識別される。
【0077】
図8に戻り、制御部9は、予備動作コース実行後に、予備動作コース実行時の初期評価(例えば、予備動作評価データ250及び測定データに基づくユーザ評価)に基づいて、ユーザに適したマッサージコースが生成する(ステップS20)。
【0078】
ステップS20では、初期マッサージデータ201,20nのいずれか一つを、初期評価に基づいて、変化させることで、ユーザに適したマッサージコースが生成される。すなわち、ステップS20のマッサージコース生成は、初期マッサージデータの変化処理として、初期マッサージデータ201,20nのうちの一つを選択し、選択された初期マッサージデータ201,20nを更新することによって行われる。
【0079】
例えば、初期評価において、ユーザが高ストレス状態と識別された場合、複数の初期マッサージデータ201,20nのうち、ストレスを解消するのに適した遠心法のマッサージ(遠心マッサージ)を規定した遠心マッサージデータ201が選択される。
図13は、遠心マッサージデータ201と、初期マッサージデータ201を変化させて得られた更新マッサージデータ301と、を示している。
【0080】
図13は、初期マッサージデータとしての遠心マッサージデータ201と、遠心マッサージデータ201を変化させて得られた更新マッサージデータ301と、を示している。遠心マッサージデータ201では、心臓に近い肩位置をマッサージした後に、心臓からより遠い首位置をマッサージし、心臓に近い背中位置をマッサージした後に、心臓からより遠い腰位置をマッサージするよう構成されている。なお、
図13の遠心マッサージデータ201では、第2腰位置は、動作無しに設定されている。マッサージデータ201において、動作無しの施療位置が設定されていることで、マッサージデータ201の更新の際に、動作無しの施療位置を動作有に変化させるのが容易になる。
【0081】
ステップS20では、元々の遠心マッサージデータ201が規定するマッサージ動作の内容を、予備動作評価データ250が示す評価に基づいて変化させて、更新された遠心マッサージデータ301が生成される。更新された遠心マッサージデータ301は、遠心マッサージデータ201と同様に、施療位置301a、マッサージ動作種類301b、施療回数(時間)301c、施療強さ301dを有する。
【0082】
例えば、予備動作評価データ250において、肩位置に関しては、第1肩位置が肯定的評価で、第2肩位置は、評価無しで、第3肩位置が、否定的評価である。したがって、肯定的評価である第1肩位置は重点的にマッサージするように変更される一方、否定的評価である第3肩位置はマッサージをしないか軽いマッサージに変更される。
図13の更新された遠心マッサージデータ301では、第1肩位置は、施療回数が、3回に増加し、第3肩位置は、マッサージ動作無しに変更されている。なお、評価無しである第2肩位置については、マッサージ動作は変化していない。
【0083】
また、予備動作評価データ250において、首位置に関しては、第2首位置が肯定的評価で、第1及び第3首位置は、評価無しである。したがって、肯定的評価である第2首位置は、施療回数が、3回に増加している。
【0084】
さらに、予備動作評価データ250において、背中位置に関しては、第1背中位置及び第2背中位置が否定的評価で、第3背中位置は評価無しである。したがって、否定的評価である第1背中位置及び第2背中位置は、マッサージ動作無しに変更され、評価なしである第3背中位置については、マッサージ動作は変化していない。
【0085】
さらに、予備動作評価データ250において、腰位置に関しては、第1及び第2腰位置が肯定的評価であり、第3腰位置は否定的評価である。したがって、肯定的評価である第1腰位置は、施療回数が2回から3回に増加し、同じく肯定的評価である第2腰位置は、動作無しから、強さ中のもみ動作が1回に変更される。否定的評価である第3腰位置については、マッサージ動作なしに変更される。前述のように、初期マッサージデータ201において、動作無しとして設定された施療位置が設けられていると、予備動作評価において、その施療位置が肯定的に評価された場合、その施療位置を動作有に変更するのが容易となる。
【0086】
ステップS20により更新された遠心マッサージデータ301は、記憶部50に保存される。更新された遠心マッサージデータ301は、初期評価によってオリジナルの遠心マッサージデータ301がユーザに応じて修正されたものとなっているため、ユーザにとってより適切なマッサージの実施が期待される。
【0087】
図8に戻り、例えば、ユーザのコース選択操作により、更新された遠心マッサージデータ301による遠心マッサージコースの実行が選択されると、制御部9は、記憶部50から更新された遠心マッサージデータ301を読み出し、遠心マッサージデータ301に従った遠心マッサージコースを実行する(ステップS30)。
【0088】
遠心マッサージコースでは、遠心マッサージデータ301に従って、各施療位置に対するマッサージが実行されるほか、予備動作コース実行時と同様に、各施療位置に対するマッサージ動作の評価処理が行われる。マッサージ動作の評価処理は、
図11に示すように、施療位置に対するマッサージに対するユーザの反応(評価)を取得することを含む。取得された、ユーザ評価は、予備動作評価データ250と同様の形式で、記憶部50に保存される。
【0089】
実施形態において、ステップS30中に行われるマッサージ動作の評価処理は、マッサージ動作が施されたユーザの測定データに基づいて評価する処理を含むことができる。測定データは、例えば、第一センサ70又は第二センサ71の検出結果を示すデータである。前述のように、第一センサ70によって検出されるモータ回転速度の変化から施療中の位置の硬さ、すなわち、施療位置のコリを検出することができる。また、第二センサ71によって検出される圧力の変化から、施療中の位置の硬さ、すなわち、施療位置のコリを検出することができる。
【0090】
測定データは、ユーザに装着されたウェアラブル端末(図示省略)又はスマートフォンなどのモバイル端末(図示省略)によって測定されてもよい。測定データは、例えば、ユーザのバイタルデータである。バイタルデータは、例えば、血圧又は脈拍数である。制御部9が、ユーザのウェアラブル端末又はモバイル端末と通信することにより、ユーザの測定データを取得する。マッサージ中のバイタルデータの変化によって、各施療位置についてのマッサージ動作を評価することができる。
【0091】
ステップS30のマッサージコース実行中においては、動作評価に基づいて、適宜動作内容を変更する動作変更処理(コース実行中の動作変更処理)が実行される。
図14に示すように、コース実行中の動作変更は、例えば、第2肩位置へ施療中に、第2肩位置のコリが第一センサ70によって検出された場合、第2肩位置を重点的にマッサージするため、施療回数301cが1回から2回へ増加される。また、第3首位置への施療中に、否定的評価がユーザから得られた場合、第3首位置へのマッサージを軽くするため、施療強さ301dが、中から弱に変更される。さらに、第1腰位置への施療中に、肯定的評価がユーザから得られた場合、第1腰位置を重点的にマッサージするため、施療回数301cが3回から4回に変更される。
【0092】
マッサージコース実行中における動作変更により、動作評価をマッサージコースにおけるマッサージ動作に直ちに反映させることができる。
【0093】
マッサージコース実行後において、マッサージデータ再変化処理が実行される(ステップS40)。ステップS40の再変化処理は、マッサージコースが次回実行されるときのための次世代の更新マッサージデータ301を生成する処理である。再変化処理では、ステップS30の実行当初の更新マッサージデータ301を、コース実行中の動作変更処理における動作変更に合わせて、変化させる。例えば、
図15に示すように、再変化処理によって、更新マッサージデータ301における第2肩位置の施療回数301cが1回から2回へ増加され、第3首位置の施療強さ301dが、中から弱に変更され、第1腰位置の施療回数301cが3回から4回に変更される。
【0094】
実施形態の再変化処理では、コース実行中の動作変更処理における動作変更(動作評価に基づく変更)だけでなく、動作評価に基づかない変化も行われる。実施形態において、動作評価に基づかない変化は、例えば、ランダムな変化である。ランダムな変化は、例えば、マッサージ動作種類301bのランダムな変化であってもよいし、施療回数301cのランダムな変化であってもよいし、施療強さ301dのランダムな変化であってもよい。変化させるデータもランダムに決定される。
図15では、第1首位置のマッサージ動作種類301bが変化対象としてランダムに決定され、マッサージ動作種類301bが、「もみ」から「たたき」へランダムに変化する。
【0095】
ランダムな変化は、遺伝的アルゴリズムにおける突然変異に対応させて理解することができる。ランダムな変化によってマッサージデータの更新に偶然的要素を利用でき、マッサージデータを進化させることができる。動作評価に基づかない変化は、遺伝的アルゴリズムにおける交叉であってもよい。交叉は、複数のデータの一部を入れ替える操作である。例えば、更新マッサージデータ301と更新マッサージデータ30nの一部を入れ替えることで、再変化された更新マッサージデータ301を生成することができる。マッサージデータの交叉も、マッサージデータの更新に偶然的要素を利用でき、マッサージデータを進化させることができる。
【0096】
実施形態において、マッサージコース実行中の動作評価処理(ステップS30)及びマッサージデータ再変化処理(ステップS40)は、マッサージコースが実行される毎に実行される。したがって、更新マッサージデータ301,30nは、前記評価処理及び前記再変化処理の繰り返し実行によって繰り返し変化する。繰り返し進化によって、更新マッサージデータ301,30nは繰り返し進化することができる。このように、実施形態によれば、マッサージデータを、ユーザに合わせて進化させることができる。
【0097】
なお、実施形態においては予備動作コースを実行する予備動作処理S10が行われているが、予備動作処理S10は省略してもよい。例えば、マッサージコースデータ301を用いた1回目のマッサージコース実行(ステップS30)の後のステップS40の処理を、マッサージ変化処理として扱い、2回目以降のマッサージコース実行(ステップS30)の後のステップS40の処理をマッサージ再変化処理として扱ってもよい。
【0098】
<4.付記>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 マッサージ機
9 制御部
50 記憶部
100 マッサージデータ更新装置
201 マッサージデータ
20n マッサージデータ
301 マッサージデータ
302 マッサージデータ
200 予備動作マッサージデータ