(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】人形の頭部連結構造
(51)【国際特許分類】
A63H 3/36 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
A63H3/36 C
(21)【出願番号】P 2019167160
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】391053917
【氏名又は名称】株式会社オビツ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】尾櫃 充代
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一裕
【審査官】遠藤 孝徳
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-103191(JP,U)
【文献】特開平7-145852(JP,A)
【文献】特許第4428660(JP,B2)
【文献】米国特許第6086447(US,A)
【文献】特許第3761523(JP,B2)
【文献】特許第4311781(JP,B2)
【文献】実開昭63-71091(JP,U)
【文献】特許第5848270(JP,B2)
【文献】実公平2-33822(JP,Y2)
【文献】特許第4913657(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 3/00 - 3/52
A47F 8/00 - 8/02
A63J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形の胴部から突出し、人形の頭部に設けられた挿入孔部を介して頭部内に挿入される頸部と、頭部内に挿入された前記頸部の所定位置に係合して頭部を着脱可能に連結する連結部材と、で構成さ
れ、前記頭部を差し替え可能な人形の頭部連結構造であって、
前記頸部は、前記頭部内に収容可能な長さを有する棒状部を含み、
前記棒状部は、その長さ方向に複数個の係合部を備えており、
前記連結部材は、前記棒状部が挿入可能な挿入口を備えるとともに、前記頭部の挿入孔部よりも大径に形成された押え部と、
前記押え部の挿入口縁部から間隔をあけて立設された左右の壁部と、
前記左右の壁部にそれぞれ接続部を介して接続され、かつ前記左右の壁部間の空間に向けて相対向して設けられた左右の係合片と、を含み、
前記左右の係合片は、前記押え部寄りの端部にそれぞれ係合爪部を対向するように突設するとともに、前記それぞれの係合爪部間の距離が、前記棒状部の係合部に係合可能な距離となるように位置する第一状態と、前記第一状態から、前記接続部を支点として左右の係合爪部同士を離間する方向に回動してなる第二状態と、に変位可能に構成されてお
り、
前記係合部は、前記棒状部の軸心に対して直交する方向若しくは軸心に対して鋭角な角度を形成する方向に突出する係合突面部と、前記係合突面部の外周縁から前記棒状部の外周面に向けて昇り傾斜状に形成される漏斗状面部とで構成されると共に、全ての係合部を構成する全ての漏斗状面部は、前記連結部材の挿入側である前記棒状部の先端側に向けて昇り傾斜状に構成されており、
前記連結部材は、前記頸部の棒状部の長さ方向にわたって、前記係合片の前記第一状態と前記第二状態とに交互に繰り返し変位して挿入移動可能に構成され、前記頸部と前記連結部材とは、前記頭部の挿入孔部の外皮肉厚に応じ、前記複数個の係合部のいずれかを選択して前記係合片の係合爪部を係合させる関係にあることを特徴とする人形の頭部連結構造。
【請求項2】
前記連結部材は、合成樹脂材にて形成されており、前記係合片は、接続部の復元力に抗してねじり変形させて第一状態から第二状態に変位可能であることを特徴とする請求項1に記載の人形の頭部連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人形(素体含む)の頭部を頸部に連結するための連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の人形には、頭部を着脱可能に構成されているものがあり、例えば、1体(1個)の人形で、様々なキャラクタを演出して遊びたい場合など、表情を変えるため頭部を交換したりする場合がある。すなわち、頭部を交換するのみで、様々なキャラクタに変えることができ、コストを掛けずに需要者の興趣を向上することができる。
【0003】
ところで、人形や人形の頭部の制作会社(販売会社)によって、頭部などの外皮を構成するソフトビニル樹脂などの肉厚は、厚いもの薄いもの様々である。
従来、人形の頭部を連結する構造として、特許文献1に開示の関節構造が提案されている。しかし、特許文献1に開示の人形構造にあっては、頭部の変更による興趣の向上を目的として成されているものではなく、肉厚の薄厚に対応し得ない構造であった。
【0004】
そこで、本発明者等は、特許文献2に開示の連結構造を先に提案している。
特許文献2に開示の頭部の連結構造は、円筒状に形成された頸部本体と、頸部本体内を、人形の高さ方向に出没可能で、先端に大径の押え部を備えた棒状の摺動部とで構成し、摺動部はコイルスプリングによって、常時押え部を頸部本体側へと引寄せ可能に構成している。そして、頭部の下面に形成されている押え部よりも小径の連結孔部を押し広げるようにして押え部を嵌め入れていた。押え部は、コイルスプリングの復元力により頸部本体方向に引寄せられるため、その引寄せる力によって頭部の連結孔部周囲を、押え部と頸部本体とによって挟み込んで固定させる構造である。
【0005】
このような構成を採用したため、コイルスプリングの伸長範囲で押え部と頸部本体との間の頭部連結孔部周囲を挟み込む間隔(隙間)が広狭調整可能である。従って、頭部外皮の肉厚に左右されずに頭部を差し替えることが可能であるため、頭部を変えることにより、異なるキャラクタを簡単に表現でき大変有用である。
【0006】
しかし、特許文献2の場合において頭部を交換するには、次のような課題を有していた。
コイルスプリングの復元力に抗して押え部を引き上げるとともに、連結孔部を押し広げるようにして押え部を頭部内から抜き外して頭部を分離する必要がある。また、別個の頭部を差し替える場合にも、連結孔部を押し広げるようにして押え部を頭部内に嵌め入れるとともに、コイルスプリングの復元力に抗して押え部を引き上げ、押え部と頸部本体との間に形成される頭部連結孔部周囲を挟み込む間隔(隙間)を広くして挟み込む必要がある。
このような作業は、多大な労力を要するとともに作業手間が掛かり大変面倒である。
【0007】
そこで本発明者等は、さらに改良を加え、特許文献3に開示の連結構造を提案している。
【0008】
特許文献3に開示の連結構造は、人形の胴部から突出した頸部と、頸部の一部を頭部内にて係止可能な被係止部とで構成されている。頭部に備えた挿入孔部は、挿入可能な頸部の一部の外径よりも大径で、頸部の一部が挿入可能な径をもって形成されている。
頸部は、頭部の挿入孔部に挿入可能な薄板状の係止部と、係止部を上下移動かつ左右回転可能に上端に備える頸部本体と、係止部を常時頸部本体方向に引き寄せて、係止部を上下方向に伸縮可能なスプリングとで構成されている。一方、被係止部は、頭部内に配され、頭部の挿入孔部内周縁に当接可能な当接面と、頭部内にて、挿入孔部を介して挿入された係止部を挿通可能な平面視で矩形状の挿通孔部と、弾性部材の弾性に抗して上方に引き上げるとともに、左右何れかの方向に90度回転させた係止部を、挿通孔部からずらして係止する受け部とで構成されている。
すなわち、係止部を、挿入孔部及び被係止部の挿通孔部を介して頭部内に挿入し、その後、係止部をスプリングの復元力に抗して上方に引き上げるとともに、左右何れかの方向に90度回転させて受部に係止させる。これにより頭部内にて頸部の一部である係止部の先端が係止され、頭部が着脱可能に連結されるものである。
【0009】
この特許文献3に開示の連結構造によれば、頭部の挿入孔部を押し広げることもなく、係止部の引き上げ動作と回転動作のみで頭部の差し替えが容易に成し得るため、従来の課題を有効に解消し得るものである。
しかし、特許文献3に開示の連結構造であっても、係止部をスプリングの復元力に抗して引き上げると共に、その状態を維持しつつ左右方向に回転させる手間を要していたため、特に、強い力をあまり有していない女性や子供達などにあっては、容易に頭部の差し替え作業が成し得ていたとは言えない場合もあったため改良の余地を残していたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2000-140448号公報
【文献】特開2004-222935号公報
【文献】特開2007-000230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、頭部を構成する外皮の肉厚に左右されることなく、頭部を容易かつ確実に差し替えることが可能な人形の頭部連結構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために第1の本発明がなした技術的手段は、人形の胴部から突出し、人形の頭部に設けられた挿入孔部を介して頭部内に挿入される頸部と、頭部内に挿入された前記頸部の所定位置に係合して頭部を着脱可能に連結する連結部材と、で構成され、前記頭部を差し替え可能な人形の頭部連結構造であって、
前記頸部は、前記頭部内に収容可能な長さを有する棒状部を含み、
前記棒状部は、その長さ方向に複数個の係合部を備えており、
前記連結部材は、前記棒状部が挿入可能な挿入口を備えるとともに、前記頭部の挿入孔部よりも大径に形成された押え部と、
前記押え部の挿入口縁部から間隔をあけて立設された左右の壁部と、
前記左右の壁部にそれぞれ接続部を介して接続され、かつ前記左右の壁部間の空間に向けて相対向して設けられた左右の係合片と、を含み、
前記左右の係合片は、前記押え部寄りの端部にそれぞれ係合爪部を対向するように突設するとともに、前記それぞれの係合爪部間の距離が、前記棒状部の係合部に係合可能な距離となるように位置する第一状態と、前記第一状態から、前記接続部を支点として左右の係合爪部同士を離間する方向に回動してなる第二状態と、に変位可能に構成されており、
前記係合部は、前記棒状部の軸心に対して直交する方向若しくは軸心に対して鋭角な角度を形成する方向に突出する係合突面部と、前記係合突面部の外周縁から前記棒状部の外周面に向けて昇り傾斜状に形成される漏斗状面部とで構成されると共に、全ての係合部を構成する全ての漏斗状面部は、前記連結部材の挿入側である前記棒状部の先端側に向けて昇り傾斜状に構成されており、
前記連結部材は、前記頸部の棒状部の長さ方向にわたって、前記係合片の前記第一状態と前記第二状態とに交互に繰り返し変位して挿入移動可能に構成され、前記頸部と前記連結部材とは、前記頭部の挿入孔部の外皮肉厚に応じ、前記複数個の係合部のいずれかを選択して前記係合片の係合爪部を係合させる関係にあることを特徴とする人形の頭部連結構造としたことである。
【0013】
第2の本発明は、第1の本発明において、前記連結部材は、合成樹脂材にて形成されており、前記係合片は、接続部の復元力に抗してねじり変形させて第一状態から第二状態に変位可能であることを特徴とする人形の頭部連結構造としたことである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、頭部を構成する外皮の肉厚に左右されることなく、頭部を容易かつ確実に差し替えることが可能な人形の頭部連結構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明人形の頭部連結構造の一実施形態を採用した人形全体の概略正面図である。
【
図2】本実施形態の人形の頭部連結構造により、頭部が頸部に連結している状態を説明する縦断面図である。
【
図3】本実施形態の人形の頭部連結構造を構成する連結部材であって、(a)は連結部材の側面図、(b)は連結部材の正面図、(c)は連結部材の平面図、(d)は連結部材の底面図である。
【
図4】本実施形態の人形の頭部連結構造を構成する連結部材であって、(a)は
図3(c)のA-A線断面図、(b)は
図3(c)のB-B線断面図である。
【
図5】本実施形態の人形の頭部連結構造の動作を示し、(a)は連結部材の左右の係合片が、それぞれ第一状態に位置して頸部の棒状部を挟み込んで係合している状態を示す断面図、(b)は(a)にて使用した頭部を取り外し、取り外した頭部よりも肉厚の外皮を有する頭部に差し替えるとともに、連結部材の左右の係合片を、それぞれの係合片の接続部の復元力に抗してねじり変形させて第一状態から第二状態に変位させている状態を示す断面図、(c)は連結部材の左右の係合片を、それぞれの係合片の接続部の復元力によって、第二状態から第一状態に変位させるとともに、頸部の棒状部を(a)とは異なる位置で挟み込んで係合している状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態に係る人形の頭部連結構造について、添付図面に基づいて説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施形態にすぎず、何等これに限定して解釈されるものではなく、本発明の範囲内で設計可能である。
【0018】
本実施形態では、手足、腰などの所要箇所が可動する、いわゆる可動人形を想定している。
【0019】
人形は、硬質合成樹脂製の骨格を、軟質合成樹脂製(ソフトビニル樹脂)の外皮(外殻)で覆って構成され、各関節箇所で可動する可動人形であって、人形の直立状態で、胴部1の上端から上方に向けて頸部3が突出状態に備えられ、頸部3を頭部19内に挿入して連結部材31によって固定、連結部材31による固定状態を解除して取り外しするなど、頭部19と頸部3とが連結部材31によって着脱可能に連結されている。(
図1参照。)。
本発明は、頸部3と頭部19を着脱可能に連結する構造に特徴を有しており、その他の構成部分については特に図示形態に限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内において任意に設計変更可能であるため、本実施形態ではその特徴部分についてのみ説明しその他の構成部分についての説明は省略する。
【0020】
頭部19は、軟質合成樹脂(ソフトビニル樹脂)で中空のボール状に成形された頭部外皮(外殻)21に、目や頭髪などが任意に備えられ、下面には、頸部3の一部を挿入する挿入孔部23が開口している。なお、挿入孔部23の周辺は、挿入孔部23に向けて窪んだ滑らかな凹面25が形成されている。
また、本実施形態では、頭部19の頂面領域を広く開放して開放口27を形成するとともに、その開放口27を着脱可能に被覆する蓋部29が備えられている。
【0021】
頸部3は、例えば図示しない胸部骨格から、人形の直立方向(図中Hで示す方向)で上方に向けて突出状に配された硬質合成樹脂からなる頸部本体5と、頸部本体5の上端部(頭部19側の端部)から、頸部本体5の軸心を共用して上方に向けて突出状に配された硬質合成樹脂材からなる棒状部7と、で構成されている。
本実施形態において棒状部7は、頸部本体5よりも小径の丸棒状に形成されている。
棒状部7は、頭部19の挿入孔部23の孔径よりも小径に形成され、挿入孔部23を介して頭部19の内部空間内に挿入される。
【0022】
頸部本体5の周囲は、胸部骨格を覆っている胸部外皮(外殻)から連続して形成されている頸部3の外皮(外殻)9によって覆われている。頸部本体5の上端部(頭部19側の端部)には、頭部19の挿入孔部23の凹面25の形状に沿った傾斜面11が形成されている。この傾斜面11は、頸部3と頭部19が連結した際に、頸部本体5の傾斜面11が頭部19の凹面25と密着することによって、頭部19の安定した保持を確保する。
【0023】
棒状部7は、頭部19の挿入孔部23を介して頭部19の内部空間内に挿入可能な長さを有しており、その周面には、係合部13が長さ方向に複数個設けられている。
【0024】
係合部13は、棒状部7の軸心に対して直交する方向に突出する環状の係合突面部15と、係合突面部15の外周縁から棒状部7の外周面に向けて昇り傾斜状に形成される環状の漏斗状面部17と、で構成されている。換言すれば、棒状部7は、先端側に向けて窄まった傘状の突条が軸方向に複数並んで形成された形状である。
なお、本実施形態において係合突面部15は、上述の通り、棒状部7の軸心に対して直交する方向に突出する構成を採用しているが、後述する連結部材31の係合片45の係合爪部49が係合されて連結部材31が容易に抜け外れない構成であればよく、例えば、棒状部7の軸心に対して鋭角な角度を形成して構成されるものであってもよい。
また、本実施形態において係合突面部15と漏斗状面部17とは、それぞれ周方向に連続した環状に形成されているが、周方向に連続していない断続的に形成されているものであっても本発明の範囲内である。
また、本実施形態において、棒状部7は、丸棒状に形成されているが、係合部13を設けてなるものであれば角棒状に形成されるものなど、本発明の範囲内において任意に形状を選択可能である。
【0025】
連結部材31は、棒状部7が挿入可能な挿入口35を備えた押え部33と、押え部33の挿入口35の縁部から間隔をあけて立設された左右の壁部39,39と、左右の壁部39,39にそれぞれ接続部43,43を介して接続されて左右の壁部39,39間の空間に向けて相対向して設けられた左右の係合片45,45と、を含んで、硬質合成樹脂材にて一体成形されている。
【0026】
押え部33は、頭部19の挿入孔部23よりも大径に形成された平面視で略円形板状に形成されている。
挿入口35は、押え部33の中央領域に平面視で略矩形状に穿設されている。
挿入口35の孔形状は図示形状に限定解釈されず、棒状部7が挿入可能な形状であれば本発明の範囲内である。
なお、本実施形態では、図示したように、押え部33の下面33aから上面33bにわたる外周面37が、R状に面取り形成されている(
図2乃至
図5参照。)。
【0027】
左右の壁部39は、押え部33の上面に開口している挿入孔部23の長辺に沿った挿入口35の縁部からそれぞれ相対向して立設されている。本実施形態では、側面視で略矩形板状に形成されている。また、本実施形態では、それぞれの壁部39の縦辺39aの縁部を対向する方向に向けてR状に折り曲げ形成している(
図3(c)参照)。
なお、図中符号41は、それぞれの壁部39の内面中央領域にて壁部39の上下方向(図中Hで示す人形の直立方向と同じ方向)にわたって一体成形されているリブである(
図3(c)、
図4(a)参照。)。
【0028】
左右の係合片45は、側面視で略矩形状に形成されて左右の壁部39の相対向する縦辺39aの縁部間に備えられた係合片本体47と、係合片本体47の押え部33寄りの端部にてそれぞれ対向するように形成されている係合爪部49と、を含んで構成されている。
そして、それぞれの係合片本体47,47は、左右の壁部39,39にわたって細長板状の接続部43,43を介して一体に備えられている。
また、本実施形態では、壁部39よりも長尺板状に形成し、壁部39の上端よりも突出して配されるとともに、係合爪部49が挿入口35内に配されており、係合爪部49の下面と、挿入口35の開口下端縁、すなわち、係合片本体47の下端47aと押え部33の下面33aとが同一レベル位置(面一状態)となるように構成されている(
図3(a)(b)参照。)。なお、図中符号55は、それぞれの係合片本体47の内面領域にて係合片45の上下方向(図中Hで示す人形の直立方向と同じ方向)にわたって一体成形されているリブである(
図3(c)、
図4参照。)。
【0029】
本実施形態では、左右の係合片本体47,47のそれぞれの上端47a,47a側をつまんで引寄せるようにして接近させると、硬質合成樹脂からなる接続部43,43の復元力に抗して接続部43,43がねじり変形する。
これにより、接続部43,43を支点として(軸として)左右の係合爪部49,49同士が離間する方向に回動して変位する(第二状態)。
そして、左右の係合片本体47,47のそれぞれの上端47a,47a側をつまんでいる力を解放すると、接続部43,43の復元力により、接続部43,43を支点として(軸として)左右の係合爪部49,49同士が、棒状部7の係合部13に係合可能な距離となるよう(それぞれの係合爪部49,49間の距離が接近するよう)に回動して変位する(第一状態)。
従って、接続部43,43は、左右の係合片45,45が、第一状態と第二状態とに変位可能な程度、すなわち、復元力に抗してねじり変形可能な程度の厚さと幅をもって構成されている。
【0030】
係合爪部49は、係合片本体47の押え部33寄りの端部にて、係合片本体47から直交する方向に突出形成される係合面51と、係合面51先端から係合片本体47の下端47aにわたって傾斜状に形成されるテーパ面53と、を含んで構成されており、係合片45が第一状態に変位しているときに、頸部3を構成する棒状部7の係合突面部15に係合面51が面接触し、かつ漏斗状面部17にテーパ面53が面接触して係合(噛合)するように形成されている(
図5(a)(c)参照。)。
また、本実施形態の係合片45は、係合爪部49のテーパ面53が漏斗状面部17と面接触可能に形成されているため、連結部材31の押し込み方向(連結する方向)、すなわち、頸部本体5に向かう方向に連結部材31を押し込むときは、漏斗状面部17の傾斜状の面部に沿ってテーパ面53が案内される。
すなわち、本実施形態の棒状部7と連結部材31との関係は、ラチェット式の係合(噛合)構造を採用しているため、自由かつ容易に押し込み作業がなし得るが、反対に持ち上げる方向(連結を解除する方向)には係合爪部49の係合面51が棒状部7の係合突面部15に係合(噛合)されて連結部材31の不意の抜け外れを確実に阻止できる。
【0031】
以下、本実施形態の連結構造による頭部19の交換作業の一例について説明する。
【0032】
図5(a)は、頭部19の交換前の連結構造の拡大断面図を示し、係合片45が第一状態に変位している状態である。
すなわち、頸部3を構成する棒状部7の係合突面部15に、係合片45の係合爪部49を構成する係合面51が面接触し、かつ漏斗状面部17にテーパ面53が面接触して係合(噛合)している(第一状態)。
この状態で、頭部19の外皮21は、その挿入孔部23の孔周辺領域が、連結部材31の押え部33の下面33aと、頸部本体5の傾斜面(上端部)11とによって挟み込まれて保持される。
図5(a)にて図示されている本実施形態の頭部19の外皮21は薄肉である。
【0033】
次に、
図5(a)で装着していた頭部19を取り外して異なった頭部19に交換するには、連結部材31を構成する左右の係合片45,45のそれぞれの上端側をつまんで引寄せるようにして接近させる。すると、硬質合成樹脂からなる接続部43,43の復元力に抗して接続部43,43がねじり変形する。
これにより、接続部43,43を支点として(軸として)左右の係合爪部49,49同士が離間する方向に回動して変位し、係合突面部15と係合面51との係合(噛合)が解除される(第二状態)。
そして、連結部材31を上方に引き抜くと共に、装着していた頭部19を上方に引き抜く。
【0034】
そして次に、交換する頭部19を用意し、その挿入孔部23に、頸部3を構成する棒状部7を挿し込んで、頭部19の挿入孔部23の外周囲の凹面25と、頸部本体5の傾斜面(上端部)11とを当接させる。
【0035】
そして、連結部材31の双方の係合片45,45の上端側をつまんで引寄せるようにして接近させると、下端側の係合爪部49,49が離間して拡開状態となる(第二状態)。
その状態で、開放口27から頭部19内に連結部材31を差し入れる。そして、連結部材31の押え部33の挿入口35内に、頭部19内に突出している棒状部7の上端を挿入し、予め配していた頭部19の挿入孔部23方向へと連結部材31を押し込んでいく(
図5(b))。
【0036】
このとき、連結部材31の係合片45は、係合爪部49のテーパ面53が、棒状部7の漏斗状面部17と面接触可能に形成されているため、連結部材31の押し込み方向(連結する方向)、すなわち、頭部19の挿入孔部23に向かう方向(頸部本体5に向かう方向)に連結部材31を押し込んでいけば、漏斗状面部17の傾斜状の面部に沿って係合爪部49のテーパ面53が容易に案内される。
【0037】
そして、押え部33の下面33aが、頭部19の外皮21に設けられている挿入孔部23の開口周面に当接し、押え部33によって頭部19の外皮21の挿入孔部23の開口周面を押圧して頸部本体5の傾斜面(上端部)11と挟みこむ位置で、連結部材31の双方の係合片45,45の上端側をつまんで引寄せていた力を解除すると、復元力に抗して接続部43,43をねじり変形させていた力が解かれるため、接続部43,43を支点として(軸として)左右の係合爪部49,49同士が、棒状部7の係合部13に係合可能な距離となるよう(それぞれの係合爪部49間の距離が接近するよう)に回動して変位する(第一状態)。
【0038】
これにより、係合爪部49の係合面51が棒状部7の係合突面部15に係合(噛合)され、連結部材31が棒状部7の任意の位置に固定されるため、頭部19を構成する外皮21の厚みが異なる頭部19を連結するような要望に対しても対応することができる。
本実施形態によれば、いわゆるラチェット機構を採用しているため、連結部材31の押し込み作業が容易になし得るが、反対に持ち上げる方向(連結を解除する方向)には係合爪部49の係合面51が棒状部7の係合突面部15に係合(噛合)されて連結部材31の不意の抜け外れを確実に阻止できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、手足腰など関節部分が可動する構造の人形、手足腰などが動かない人形、のいずれにも利用可能である。さらに、人間の男性・女性を模写した人形に限らず、動物や空想上の生物若しくはロボットなどを模写した人形にも利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 胴部
19 頭部
23 挿入孔部
7 棒状部
13 係合部
33 押え部
35 挿入口
39 壁部
43 接続部
45 係合片
49 係合爪部