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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】グラインダ用のディスクパッド
(51)【国際特許分類】
   B24B 23/02 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
B24B23/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019173799
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021049599
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000206934
【氏名又は名称】株式会社マルテー大塚
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】弁理士法人アイリンク国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076163
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 浩明
(72)【発明者】
【氏名】松村 康佑
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00836911(EP,A1)
【文献】実開昭55-115750(JP,U)
【文献】特開2015-071217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 23/02
B24D 7/00 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨ディスクとともにグラインダの駆動軸に固定され、上記駆動軸と一体回転するパッド本体を備え、
このパッド本体の中央部分には平面円形で、その外周縁から中心に向かって徐々に深さを深くする漏斗状の凹部を形成するとともに、
上記凹部の外周縁から連続する外方を平坦面とし、
上記凹部の中心には、上記駆動軸に形成した雄ねじの先端又は雌ねじの開口を臨ませる軸孔を形成してなり、
上記平坦面には、
上記平坦面からの高さを有する凸部が上記パッド本体の外周に沿って断続的に複数形成され、
上記凸部は、
上記凹部に向かって長さを有するとともに、上記パッド本体の外周から凹部に向かってその高さを徐々に低くする傾斜面を有する一方、上記外周に沿った部分の高さを最高高さにするとともに、上記凹部の外周縁から間隔を保ち、
上記平坦面において、上記凹部の外周縁の全域に沿った平坦部が維持された
グラインダ用のディスクパッド。
【請求項2】
上記長さを有する複数のすべての凸部は、その長さ方向が上記パッド本体の半径に対して同じ方向に傾斜してエアの流れを作るピッチ角を保ち、これら凸部間には上記パッド本体の厚み方向に貫通するエアの流通孔を形成し、上記凸部間と上記流通孔との間にエアが流れる構成にした請求項1に記載のグラインダ用のディスクパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、研磨ディスクを支持するためのグラインダ用のディスクパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、古い塗膜や錆などが付着した被研磨面を研磨するため、特許文献1に記載されたディスクパッドが知られている。
この特許文献1のディスクパッドは、当該ディスクパッドの直径よりも大きな直径で、ある程度柔軟性を保った研磨ディスクを取り付けて使用するもので、使用時にはディスクパッドの外縁が研磨ディスク外縁よりも内側に位置するようにしている。
【0003】
また、このディスクパッドは、特許文献1の図3に示すように、その半径方向に沿った断面をV字状にし、外周に沿った部分には研磨ディスクから離れる方に傾斜するテーパー面を備えている。
このようなディスクパッドを、被研磨面に対して斜めにし、研磨ディスクにおいてディスクパッドからはみ出した部分をディスクパッドの外縁で押さえながら、上記テーパー面で研磨ディスク1を被研磨面に押し付けるようにして研磨していた。
【0004】
このようなディスクパッドを斜めにして研磨ディスクを被研磨面に押し付けた場合、図4に示すように被研磨面に接触する研磨面E1は上記テーパー面に対応する部分のほんの一部分だけになる。そのため、例えば図4の矢印x方向に研磨ディスク1を移動させたときには、研磨ディスク1の外周近傍に形成される研磨面E1の移動軌跡に沿って、幅W1の帯状に研磨されることになる。上記研磨面E1はディスクパッドのテーパー面のほんの一部に対応した部分なので、研磨される幅W1は研磨ディスク1の直径D1より狭く、研磨面積はかなり小さくなってしまう。
【0005】
一方、上記研磨面積が小さくなるのを解消するものとして、図5に示すディスクパッドが従来から知られている。この図5に示したディスクパッドは、円盤状のパッド本体2からなる。このパッド本体2は、その周囲に板状の鍔部3と、この鍔部3の中心部分に形成した平面円形の凹部4とを備えている。
【0006】
上記鍔部3は、二点鎖線点で示した研磨ディスク5側の面を平坦面3aとし、上記凹部4は中心に向かって深さを徐々に深くした漏斗形状にしている。この凹部4と鍔部3の平坦面3aとの境界部分に角部6が形成されている。
【0007】
さらに、上記凹部4の中心部分には軸孔4aを形成し、この軸孔4aにはグラインダGに設けた駆動軸Sを臨ませるとともに、この駆動軸Sに形成した雄ねじを、フランジ7aを一体に形成したナット7にねじ止めできるようにしている。
また、図中符号8は補強用の金属板で、パッド本体2の凹部4とは反対側に固定されるとともに、上記軸孔4aと中心を一致させた軸孔8aを形成している。
一方、上記パッド本体2に取り付ける研磨ディスク5は、布製の基材に鉱石などの研磨材粒子を樹脂で固着させたもので、もともと平板状を保つ高い剛性を備えている。
【0008】
上記のようにしたパッド本体2に、研磨ディスク5を次のようにして固定する。まず、上記平坦面3a及び凹部4に研磨ディスク5を重ね合わせて、上記軸孔4a,8aと研磨ディスク5の貫通孔5aとを一致させるとともに、これら軸孔4a、8a及び貫通孔5aにナット7を挿入する。そして、このナット7にはグラインダGの駆動軸Sに形成した雄ねじをねじ結合する。
【0009】
さらに、ねじ結合したナット7と駆動軸Sとを強く締め付けると、研磨ディスク5はナット7のフランジ7aによって押され、研磨ディスク5の中心部分が凹部4に沈み込む。なお、上記ナット7のフランジ7aには凹部4の内周面と一致するテーパー面7bを備え、このテーパー面7bと凹部4との間に研磨ディスク5が挟持される。また、上記研磨ディスク5の中心部分とともにナット7のフランジ7aが凹部4に沈み込むことによって、研磨作業時にこのフランジ7aが被研磨面に接触しないようにしている。
【0010】
このように研磨ディスク5の中央部分がたわみながら漏斗形状の凹部4aに沈み込むが、この研磨ディスク5の外周に沿った部分は上記したように高い剛性によって平板状を維持しようとする。そのため、凹部4と平坦面3aとの境界部分である上記角部6に対応した部分には折り曲げ力が作用する。しかし、研磨ディスク5はその剛性が高いので、上記角部6に沿って曲がりきれず、上記角部6に対応した部分には研磨ディスク5が浮き上がった隆起部5bが形成される。
【0011】
このように剛性の高い研磨ディスク5において、角部6に対応する部分には隆起部5bが形成されるが、隆起部5bから外側はほぼ平坦な状態に保たれる。
そのため、上記平坦面3aに対する上記隆起部5bの最高高さは、研磨ディスク5の外周部分やその他の部分よりも高くなる。
上記のように隆起部5bの最高高さが研磨ディスク5の他の部分よりも高くなるので、研磨するときには最も高い部分である隆起部5bの部分が研磨面E2となる(図6参照)。したがって、被研磨面は、上記隆起部5bが形成する円の直径D2の円形の移動軌跡に応じて研磨される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2014-200883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のように、隆起部5bが形成された研磨ディスク5を用いて研磨した場合には、隆起部5bで形成される直径D2の円の移動軌跡が研磨範囲となる。この直径D2の円は上記角部に対応して研磨ディスク5に形成される上記隆起部5bの位置なので、研磨ディスク5の直径D1よりも小さい。
このようにパッド本体2を用いた場合には、研磨ディスク5の直径D1よりも小さな直径D2でしか研磨できず、大きな面積を効率的に研磨することはできなかった。
また、直径D1の研磨ディスク5の外周に沿った部分は研磨に寄与せず、無駄になっていた。
【0014】
この発明の目的は、大きな面積を効率的に研磨できる、グラインダ用のディスクパッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、研磨ディスクとともにグラインダの駆動軸に固定されるグラインダ用のディスクパッドに関し、パッド本体の中央部分には平面円形でその外周縁から中心に向かって深さを深くする漏斗形状の凹部を形成するとともにこの凹部よりも外方を平坦面としている。また、上記凹部に研磨ディスクを締め付け部材で締め付けて固定したとき、研磨ディスクがたわみながら、締め付け部材の頭部とともに上記凹部に沈み込むとともに、上記研磨ディスクには、上記凹部と平坦面との境界部分に対応する個所には折り曲げ力が発生して、それによって隆起部が形成される構成を前提とする。
【0016】
上記構成を前提とし、第1の発明では、記平坦面には、上記平坦面からの高さを有する凸部が形成され、上記凸部は、上記パッド本体の外周に沿って連続もしくは断続するとともに、上記凹部の外周縁から間隔を保ち、上記平坦面において、上記凹部の外周縁の全域に沿った平坦部が維持されている。
なお、研磨ディスクにおける上記隆起部の高さの方向は、研磨作業時に被研磨面に対向させる面を上面にしたときの上方となる方向である。また、上記凸部の高さの方向は、被研磨面に対向させるパッド本体の平坦面を上面としたときの上方となる方向である。
【0017】
また、上記研磨ディスクは、中央部分をパッド本体の凹部に沈みこませたとき、凹部と平坦面との境界部分に対応する個所に折り曲げ力が作用し、この折り曲げ力によって隆起部が形成される高い剛性を有するものである。
上記隆起部が形成される位置は、凹部と平坦面との境界部分に対応する個所であるが、研磨ディスクの剛性や折り曲げ力の大きさや方向などによって凹部と平坦面との境界部と厳密に一致するとは限らず、上記境界部から多少ずれることもある。
【0018】
また、上記締め付け部材は、駆動軸に雄ねじが形成されている場合にはナットなど雌ねじを有する部材であり、駆動軸に雌ねじが形成されている場合にはボルトなど雄ねじを有する部材である。そして、この締め付け部材は、締め付けたときパッド本体の凹部との間に研磨ディスクを挟み込むフランジなどの頭部を備えている。
【0019】
さらに、パッド本体の外周に沿って断続的に、凹部に向かって長さを有する凸部が複数形成され、これら凸部の上記高さが外周側から上記凹部に向かって徐々に低くなるようにしている。
【0020】
の発明は、長さを有する複数の全ての凸部は、その長さ方向がエアの流れを作るピッチ角を保つとともに上記凸部間には流通孔を形成して、上記凸部間と上記流通孔との間にエアが流れる構成にしている。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、研磨ディスクが、中央部分がたわんで漏斗形状の凹部に沈みこんだとき、当該研磨ディスクの外周縁に沿った部分がパッド本体に形成された凸部に圧接する。この凸部に圧接した部分は、高さが高くなるので、隆起部を被研磨面に接触させることなく、上記凸部に圧接した部分を被研磨面に確実に押し付けることができる。
したがって、研磨ディスクの直径を最大限利用して広い面積を効率的に研磨することができる。
【0022】
また、この発明のパッド本体は、研磨作業のとき被研磨面に強く押し付けられる。このように強く押し付けられると、パッド本体全体がたわむので、研磨ディスクの外側所定範囲が凸部の傾斜面に押し付けられて、研磨ディスクの外側所定範囲が被研磨面に強く押し付けられる。
したがって、研磨ディスクの外周縁に沿った部分において被研磨面に接触する部分の幅を大きくすることができる。
【0023】
の発明によれば、パッド本体と研磨ディスクとの間にエアを流通させることができるので、研磨ディスクの摩擦熱によって高温になるパッド本体や研磨ディスクを冷却することができる。したがって、摩擦熱でパッド本体が変形したり損傷したりしない。
また、研磨ディスクが過熱して研磨能力が落ちることもない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態のディスクパッドの平面図である。
図2】実施形態のディスクパッドに研磨ディスクを支持させた状態の断面図である。
図3】実施形態のディスクパッドの移動軌跡を示した説明図である。
図4】従来例のディスクパッドの移動軌跡を示した説明図である。
図5図4とは別の従来例のディスクパッドに研磨ディスクを支持させた状態の断面図である。
図6図5のディスクパッドの移動軌跡を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1~3を用いて、この発明の一実施形態を説明する。
この実施形態のディスクパッドは、図5に示した従来のパッド本体2と同様に、図1,2に示す硬質樹脂製の円盤状のパッド本体9からなる。このパッド本体9は、鍔部10とその中心部分に形成された平面円形状の凹部11とからなる。
また、上記パッド本体9の鍔部10は、研磨ディスク5を取り付ける側を平坦面10aとし、上記凹部11は中心に向かってその深さを徐々に深くする漏斗形状にしている。そして、この凹部11と上記平坦面10aとの境界部分には角部12が形成されている。ただし、この角部12は厳密な角ではなく面取りされていてもよい。
【0026】
なお、図2に二点鎖線で示したこの実施形態で用いる研磨ディスク5は、従来の研磨ディスク5と全く同じで高い剛性を有するものである。
したがって、この研磨ディスク5は、上記従来例で説明した原理とまったく同じ原理で、従来と同じような箇所に隆起部5cが形成される。そして、この実施形態では、研磨ディスク5の外周縁から隆起部5cの最高高さをhとしている。
なお、上記隆起部5cの高さの方向は、研磨作業時に被研磨面に対向させる面を上面にしたときの上方となる方向である。また、隆起部5cの最高高さhは上記角部12の近傍で研磨ディスク5が曲がりきれずにパッド本体から浮き上がった部分において、最も高い部分の平坦面10aからの高さである。
【0027】
また、上記凹部11の中心には軸孔11aを形成している。
さらに、パッド本体9において凹部11と反対側の面には中心に軸孔13aが形成された補強用の金属板13が固定されている。この金属板13の軸孔13aの中心と上記凹部11の軸孔11aの中心とを一致させて、グラインダGの駆動軸Sに形成された雄ねじの先端を臨ませる、この発明の軸孔を構成している。
【0028】
また、上記平坦面10aには、その外周に沿って平坦面10aから高さを有する2種類の凸部14,15が周方向にそれぞれ複数、交互に形成されている。これら凸部14,15の高さの方向は、被研磨面に対向させるパッド本体9の平坦面10aを上面としたときの上方となる方向である。
【0029】
上記一方の凸部14は、パッド本体9の外周から凹部11に向かって長さを有する。そして、上記凸部14は平坦面10aからの高さを、パッド本体9の外周に沿った部分から凹部11に向かって高さを徐々に低くした傾斜面14aにしている。
そして、この凸部14の外周縁に沿った部分の高さHが凸部14における最高高さとなり、この高さHが研磨ディスク5の上記隆起部5cの最高高さhより高い寸法に設定されている。また、凹部11に向かって徐々に低くなる上記凸部14は、凹部11側の端部で平坦面10aと一致するようにしている。
【0030】
また、凸部14,14間には長さの短い他方の凸部15がパッド本体9の外周に沿って断続的に形成されている。この凸部15は、凸部14のような長さを備えていないが、パッド本体9の外周に沿った部分の平坦面12aからの高さを凸部14と同じ高さHにし、凹部11aに向かって高さを低くした傾斜面15aを備えている。なお、この実施形態では、傾斜面15aと上記傾斜面14aとの傾斜角度をほぼ等しくしている。
【0031】
さらに、この実施形態では、凹部11aに向かって長さを有する凸部14の長さ方向は、凹部11aの中心ではなく、中心から少しずれた位置に向かうようにしている。具体的には、全ての凸部14の長さ方向が、パッド本体9の半径に沿った直線rに対して等しいピッチ角θを保つように形成されている。
このように、凸部14の長さ方向を、上記直線rに対して傾斜させて上記ピッチ角θを保つようにしたのは、パッド本体9を図1の矢印α方向に回転させたときにパッド本体9の外周から凸部14,14間にエアを流入させやすくするためである。
【0032】
また、長さを有する上記一方の凸部14,14間であって、パッド本体9の外周より凹部11に近い位置には鍔部10を貫通するエアの流通孔16が形成されている。したがって、パッド本体9が回転したときに、凸部14,14間に流入したエアをこの流通孔16から外部へ流出させ、空冷機能を発揮させることができる。
【0033】
このようなパッド本体9は、研磨ディスク5とともにグラインダGの駆動軸Sに固定して使用されるが、その固定方法は上記した図5に示す従来と同じである。
すなわち、外周に雄ねじが形成された駆動軸Sを、パッド本体9の軸孔11a,13aと研磨ディスク5の貫通孔5aに差し込んで、駆動軸Sの先端にこの発明の締め付け部材であるナット7を締め付ける。
【0034】
上記ナット7は従来のパッド本体2に用いたものと同じで、締め付け部材の頭部であるフランジ7aには、上記凹部11の内周面に一致するテーパー面7bを備えている。
このナット7を締め付ければ、フランジ7aのテーパー面7bと凹部11とが研磨ディスク5を挟み込んで、パッド本体9と研磨ディスク5とが一体的に駆動軸Sに固定される。
上記のようにナット7を十分に締め付ければ、ナット7の頭部であるフランジ7aは凹部11a内に沈み込む。
【0035】
このようにナット7を凹部11に沈み込ませたとき、研磨ディスク5の中央部分はたわみながら凹部11aに沈み込み、上記角部12の近くには上記隆起部5cが形成される。
なお、この隆起部5cは、研磨ディスク5において上記角部12の近傍で平坦面10aから浮き上がった部分のことであるが、その位置は研磨ディスク5の剛性や折り曲げ力の大きさや方向などによって決まり、必ずしも角部12と一致するとは限らない。
【0036】
そして、研磨ディスク5はパッド本体9に重ね合わされた状態で、その中央部分を凹部11に沈み込ませれば、研磨ディスク5の外周縁はパッド本体9に形成された凸部14,15に圧接することになる。
また、上記したように上記凸部14,15の最高高さHを、上記隆起部5cの最高高さhよりも高くしている。そのため、この高さHの凸部14,15に圧接した研磨ディスク5の外周縁は、上記角部12の近くに形成された隆起部5cの最高高さhより高くなる。
【0037】
このように上記研磨ディスク5では、凸部14,15で支持された外周縁の部分が被研磨面に対して最も突出しているので、研磨作業時には、隆起部5cを被研磨面に接触させることなく、上記凸部14,15に圧接した部分を被研磨面に確実に押し付けることができる。
【0038】
そのため、研磨ディスク5の外周縁に沿った部分が被研磨面に接触する研磨面E3となり、これを矢印x方向に移動させれば、図3に示すように研磨ディスク5の直径D1の円の移動軌跡に沿って研磨される。このようにこの実施形態では、研磨ディスク5の外周縁に沿った部分を有効利用でき、大きな面積を効率的に研磨できる。
【0039】
さらに、研磨作業時にはパッド本体9を強く被研磨面に強く押し付けるので、パッド本体9が全体的にたわんで鍔部10が外径方向に開く様に変形し、凸部14,15の傾斜面14a,15aと研磨ディスク5との接触面積が大きくなる。その結果、研磨ディスク5の外周に沿った部分で、上記傾斜面14a,15aによって被研磨面に押し付けられる部分である研磨面E3の幅が大きくなる。このように研磨面E3が大きくなれば、研磨ディスク5をより有効に利用することができるとともに、確実な研磨ができる。
【0040】
また、この実施形態では、長さを有する上記凸部14,14間にエアの通路が形成される。そのため、この通路と通気孔16とによって、パッド本体9の外周からパッド本体9と研磨ディスク5との間にエアを取り込んで研磨ディスク5の摩擦熱を冷ますことができる。
特に、上記凸部14の長さ方向を、パッド本体9の半径に沿った直線rに交差させてピッチ角θを設けているので、エアをより効率的に流入及び流出させることができ、研磨による摩擦熱を放出させることができる。
【0041】
長時間の研磨作業で研磨面が高温になれば、研磨ディスク5やパッド本体9が変形したり損傷したりするだけでなく、研磨能力が落ちてしまうこともある。しかし、この実施形態のようにエアの通路を形成して空冷機能を発揮させれば、熱による問題は回避でき連続作業も可能になる。
【0042】
なお、パッド本体9が図示の矢印α方向に回転した場合には、パッド本体9の外周側から流入したエアが通気孔16から流出するが、回転方向を反対にすればエアは上記通気孔16から流入してパッド本体9の外周から流出することになる。
ただし、空冷機能を必要としない場合には、上記のようなピッチ角θやエアの通路を形成する必要はない。
【0043】
また、上記実施形態では、凹部11に向かって長さを有する凸部14と短い凸部15とを交互に配置しているが、凸部の形状や配置は上記に限らない。
例えば、長さを有する凸部14のみをパッド本体9の外周縁に沿って断続的に配置してもよいし、凸部15のような短い凸部のみを断続的に配置してもよい。
あるいは、パッド本体9の外周に沿って連続する環状の凸部を設けてもよい。
要するに、パッド本体9の外周に沿って凸部が形成され、この凸部に圧接した研磨ディスク5の外周縁を上記隆起部5cの最高高さhよりも高くするような凸部であればよい。
【0044】
ただし、凹部11に向かって長さを有する一方の凸部14の場合にはその上面を傾斜面14aとして、凸部14の高さは、凹部11側の端部で平坦面10aとほぼ等しくなるまで低くすることが好ましい。凹部11側における凸部14の端部の高さが高過ぎた場合には、その凸部14の端部付近で隆起部5cが持ち上げられ、隆起部5cの平坦面10aからの最高高さが高くなってしまう可能性があるからである。
なお、上記他方の凸部15のように凹部11に向かう方向の長さが小さい凸部の場合には凹部11側の端部の影響は小さいので、その上面を傾斜させなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
この発明は、特に広い面積の古い塗膜の剥離や錆落としなどの作業に有用である。
【符号の説明】
【0046】
G グラインダ
S 駆動軸
5 研磨ディスク
5a 貫通孔
5c 隆起部
7 (締め付け部材)ナット
9 パッド本体
10a 平坦面
11 (漏斗形状の)凹部
11a 軸孔
12 (境界部分)角部
13a 軸孔
14 (長さを有する)凸部
14a (凸部の)傾斜面
15 凸部
15a (凸部の)傾斜面
16 流通孔
h (隆起部の)最高高さ
H (凸部の)高さ
θ ピッチ角
図1
図2
図3
図4
図5
図6