(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】磁性砥粒構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20240315BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20240315BHJP
【FI】
C09K3/14 550F
C09K3/14 550Z
B24B37/00 H
(21)【出願番号】P 2020040885
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】山崎 敬久
(72)【発明者】
【氏名】村岡 周音
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/207423(WO,A1)
【文献】特開2015-168029(JP,A)
【文献】YAMAZAKI, T. et al.,Magnet Formation by the Surface Modification of Diamond with Manganese Detected by the Magnetic Flux Density on the Surface,Materials Sciences and Applications,(2017), vol.8,pp.642-648,DOI: 10.4236/msa.2017.88045
【文献】ZHANG, X. et al.,Dual-Axial Motion Control of a Magnetic Levitation System Using Hall-Effect Sensors,Transactions on Mechatronics,(2015), vol.21,pp.1129-1139,DOI: 10.1109/TMECH.2015.2479404
【文献】YAMAZAKI, T. et al.,Magnetic Levitation of Diamond Modified with Manganese and Bismuth,Materials Sciences and Applications,(2021), vol.12,pp.78-88,DOI: 10.4236/msa.2021.121005
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
B24B 3/00-39/06
B24D 3/00-99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(110)面を有するダイヤモンドと、
前記ダイヤモンドの(110)面上に設けられ、前記ダイヤモンドの(110)面の中心を囲む複数の特定位置に複数の開口を有する金属層と、
前記各開口内のダイヤモンドの(110)面上に設けられ
、前記ダイヤモンドの(110)面に対して垂直方向に自発磁化している単一原子層の
フェリ磁性Mn
7C
3層と、
前記各開口内の前記
フェリ磁性Mn
7C
3層上に設けられ
、前記ダイヤモンドの(110)面に対して垂直方向に自発磁化している多層原子層の
強磁性MnBi層と
を具備し、
前記開口のうち対向する2つの開口の中心を結ぶ複数の対角線の各中点は前記ダイヤモンドの(110)面の中心と略一致
している磁性砥粒構造。
【請求項2】
前記特定位置は前記(110)面の中心を囲む正2n角形(n=2、3、…)の円状配置された頂点である請求項1に記載の磁性砥粒構造。
【請求項3】
前記特定位置は前記(110)面の中心を囲む非正2n角形(n=2、3、…)の円状配置された頂点である請求項1に記載の磁性砥粒構造。
【請求項4】
前記特定位置は前記(110)面の中心を囲む非正2n角形(n=2、3、…)の非円状配置された頂点である請求項1に記載の磁性砥粒構造。
【請求項5】
前記開口の大きさは0.5mm~5nmである請求項1に記載の磁性砥粒構造。
【請求項6】
前記金属層は金、白金又は銀よりなる請求項1に記載の磁性砥粒構造。
【請求項7】
請求項1に記載の磁性砥粒構造の製造方法であって、
前記ダイヤモンドの(110)面上に
前記金属層を形成する金属層形成工程と、
前記金属層の前記ダイヤモンドの(110)面の中心を囲む
前記複数の特定位置に
前記複数の開口を形成する開口形成工程と、
前記各開口内の
前記ダイヤモンドの(110)面上に
前記ダイヤモンドの(110)面に対して垂直方向に自発磁化した単一原子層の
前記フェリ磁性Mn
7C
3層を形成する
フェリ磁性Mn
7C
3層形成工程と、
前記各開口内の前記
フェリ磁性Mn
7C
3層上に
前記ダイヤモンドの(110)面に対して垂直方向に自発磁化した多層原子層の
前記強磁性MnBi層を形成する
強磁性MnBi層形成工程と
を具備
する磁性砥粒構造の製造方法。
【請求項8】
前記
フェリ磁性Mn
7C
3層形成工程は、
前記開口が形成された金属層上にMn粉末を散布するMn粉末散布工程と、
前記Mn粉末散布工程後にMnによる前記ダイヤモンドの表面改質を行い、前記Mn粉末と前記ダイヤモンドの(110)面のCとを反応させて前記
フェリ磁性Mn
7C
3層を形成すると共に前記Mn粉末の余剰Mnを前記金属層に蓄積させる第1のダイヤモンド表面改質工程と
を具備し、
前記
強磁性MnBi層形成工程は、
前記第1のダイヤモンド表面改質工程後にダイヤモンド上にBi粉末を散布するBi粉末散布工程と、
前記Bi粉末散布工程後にMn及びBiによる前記ダイヤモンドの表面改質を行い、前記Bi粉末と前記余剰Mnとを反応させて前記
強磁性MnBi層を前記
フェリ磁性Mn
7C
3層上に形成する第2のダイヤモンド表面改質工程と
を具備する請求項7に記載の磁性砥粒構造の製造方法。
【請求項9】
前記第1のダイヤモンド表面改質工程は、加熱温度420℃~600℃、持続時間約10秒間で行う第1の赤外線集光加熱法によって行われる請求項8に記載の磁性砥粒構造の製造方法。
【請求項10】
前記第2のダイヤモンド表面改質工程は、加熱温度270℃~355℃、持続時間約120秒間で行う第2の赤外線集光加熱法によって行われる請求項8に記載の磁性砥粒構造の製造方法。
【請求項11】
前記開口形成工程は集束イオンビーム法によって行われる請求項7に記載の磁性砥粒構造の製造方法。
【請求項12】
前記特定位置は前記(110)面の中心を囲む正2n角形(n=2、3、…)の円状配置された頂点である請求項7に記載の磁性砥粒構造の製造方法。
【請求項13】
前記特定位置は前記(110)面の中心を囲む非正2n角形(n=2、3、…)の円状配置された頂点である請求項7に記載の磁性砥粒構造の製造方法。
【請求項14】
前記特定位置は前記(110)面の中心を囲む非正2n角形(n=2、3、…)の非円状配置された頂点である請求項7に記載の磁性砥粒構造の製造方法。
【請求項15】
前記開口の大きさは0.5mm~5nmである請求項7に記載の磁性砥粒構造の製造方法。
【請求項16】
前記金属層は金、白金又は銀よりなる請求項7に記載の磁性砥粒構造の製造方法。
【請求項17】
ダイヤモンドの(110)面上に金属層を形成する金属層形成工程と、
前記金属層の前記ダイヤモンドの(110)面の中心を囲む複数の特定位置に複数の開口を形成する開口形成工程と、
前記各開口内のダイヤモンドの(110)面上に単一原子層のMn
7
C
3
層を形成するMn
7
C
3
層形成工程と、
前記各開口内の前記Mn
7
C
3
層上に多層原子層のMnBi層を形成するMnBi層形成工程と
を具備し、
前記開口のうち対向する2つの開口の中心を結ぶ複数の対角線の各中点は前記ダイヤモンドの(110)面の中心と略一致し、
前記Mn
7
C
3
層及び前記MnBi層は前記ダイヤモンドの(110)面に対して垂直方向に自発磁化し、
前記Mn
7
C
3
層形成工程は、
前記開口が形成された金属層上にMn粉末を散布するMn粉末散布工程と、
前記Mn粉末散布工程後にMnによる前記ダイヤモンドの表面改質を行い、前記Mn粉末と前記ダイヤモンドの(110)面のCとを反応させて前記Mn
7
C
3
層を形成すると共に前記Mn粉末の余剰Mnを前記金属層に蓄積させる第1のダイヤモンド表面改質工程と
を具備し、
前記MnBi層形成工程は、
前記第1のダイヤモンド表面改質工程後にダイヤモンド上にBi粉末を散布するBi粉末散布工程と、
前記Bi粉末散布工程後にMn及びBiによる前記ダイヤモンドの表面改質を行い、前記Bi粉末と前記余剰Mnとを反応させて前記MnBi層を前記Mn
7
C
3
層上に形成する第2のダイヤモンド表面改質工程と
を具備する磁性砥粒構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイヤモンドを用いた磁性砥粒構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドは典型的な共有結合結晶であり、非常に高い硬度を有する。ダイヤモンドはこのような高い硬度を利用して砥粒として広く用いられている。この場合、ダイヤモンドは鉄系材料に対しては反応性が高いので使用制限されるが、アルミ合金、超硬合金、チタン合金等の材料、研磨に使用されている。尚、ダイヤモンドは微弱な反磁性体であり、自発磁化しない。
【0003】
他方、精密加工が可能な磁気研磨加工法が注目されている。磁気研磨加工法は、電磁力により磁性粒子を吸着し、磁性粒子と液体中で一体化又は混合された砥粒で研磨及びバリ加工を行う(参照:非特許文献1)。
図11を参照して磁気研磨加工法を適用された円管内部研磨を説明すると、管状加工物101の内部に磁性粒体の凝集体である磁性研磨スラリ102を挿入し、管状加工物101の外部に回転する電磁石103を設ける。磁性研磨スラリ102が発生する管状加工物101の内面への垂直方向の磁気作用力が加工圧となり、電磁石103を矢印のごとく回転させることにより磁性研磨スラリ102が管状加工物101の内面を移動し、この結果、管状加工物101の内面の精密加工が可能となる。この磁気研磨加工法においては、磁性粒子は磁場に感応する磁性体で、その磁化方向はランダムである。この場合、磁化率が大きいことが必要である。
【0004】
最近、磁性研磨加工法に用いられる高硬度のダイヤモンドを用いた磁性砥粒構造が注目されている。
【0005】
ダイヤモンドを用いた第1の従来の磁性砥粒構造においては、ダイヤモンド自体は反磁性体であり、磁化しないので、ダイヤモンドに強磁性体である磁気鉄粉を混合した磁性スラリを用いる(参照:非特許文献2)。
【0006】
しかしながら、上述の第1の従来の磁性砥粒構造においては、磁性スラリがダイヤモンドと磁気鉄粉との異材混合であるので、磁性スラリ内部で、ダイヤモンドと磁気鉄粉とが分離してそれぞれが偏在し、この結果、磁性スラリの寿命が短い。
【0007】
ダイヤモンドを用いた第2の従来の磁性砥粒構造は、自発磁化した強磁性体であるフェライト磁石にダイヤモンドをコーティングして構成される(参照:非特許文献3)。
【0008】
しかしながら、上述の第2の従来の磁性砥粒構造においては、磁性砥粒構造の寿命は3時間程度であり、やはり、短い。
【0009】
ダイヤモンドを用いた第3の従来の磁性砥粒構造においては、ダイヤモンドの(110)面の特定箇所に垂直自発磁化磁石としてのフェリ磁性のMn7C3層を形成する(参照:非特許文献4)。この場合、ダイヤモンドの他の面には垂直自発磁化層としてのMn7C3層は形成されない。また、ダイヤモンドの(111)面は最硬面であり、研磨面として作用させれば、研磨の精密化、高速化が図れる。尚、対称的な形のダイヤモンドでさえ、その中心の磁束密度は最大値になるとは限らず、この結果、磁気駆動の際にダイヤモンドの(110)面の中心と最大磁束密度の場所とがずれて磁性砥粒構造に磁場に対して回転する力が作用し、加工力の損失が発生することがある。このため、上記特定箇所をダイヤモンドの(110)面の中心を囲む正六角形の頂点として円状に配置し、正六角形の中心を最大磁束密度とする(参照:非特許文献5)。これにより、ダイヤモンドの(110)面の中心と最大磁束密度の場所とを一致させて磁気駆動時の磁性砥粒構造の回転を抑制し、損失を少なくする。
【0010】
上述の第3の従来の磁性砥粒構造の製造方法は次のごとく行われる。
【0011】
始めに、ダイヤモンドの(110)面上に厚さ60nmの金(Au)層をスパッタリング法によって形成する。次に、光学的顕微鏡の基に、Au層上の中心を囲む正六角形の頂点6箇所を設定してAu層をマニピュレーション(手作業)によって剥がして開口を形成する。次に、平均直径45μm以下のマンガン(Mn)粉末をダイヤモンドの(110)面上に散布する。最後に、Mnによるダイヤモンド表面改質を温度623K、真空度8×10-4Paで赤外線照射によって行う。これにより、ダイヤモンドの(110)面上にAu層の各開口に垂直方向に自発磁化するフェリ磁性のMn7C3層が形成される。この結果、開口のばらつきによって各箇所の表面磁束密度は28~51μTとばらつくが、正六角形の中心つまり6箇所の対向する2箇所を結ぶ3つの対角線の交点をダイヤモンドの(110)面の中心とすることにより、その中心に6箇所の表面磁束密度の一部が重畳して得られる最大表面磁束密度は73μTとやや大きくなる。このダイヤモンドの(110)面の中心の最大表面磁束密度が磁性砥粒構造の加工力となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】黒部利次, 示野和弘, 今中治(1996)磁性流体を利用した研削型超精密研磨法の開発研究:平成9(1997)年度科学研究費補助金基盤研究(C)研究成果報告書1007, 109p
【文献】Osamu Nakano(Prioryty Co., Ltd):The Principle and Application of the Magnetic Polishing, Basics and latest application of polishing technology
【文献】夏目勝之, 進村武男, 山口ひとみ(2003)研磨剤スラリーを含浸させた磁性粒子ブラシの垂直作用力:2003年度精密工学会学術講演会講演論文集
【文献】Takahisa Yamazaki, Ryusei Ninomiya:”Magnet Formation by the Surface Modification of Diamond with Manganese Detected by the Magnetic Flux Density on the Surface”, Materials Sciences and Applications, 2017, 8, 642-648
【文献】Xiaodong Zhang, Moein Mehrtash etc. (2015) Dual-Axial Motion Control of a Magnetic Levitation System Using Hall-Effect Sensors.: Transactions on Mechatronics
【文献】津田英成(2014)マンガン粉末を用いた表面改質によるダイヤモンドの磁気特性変化 平成25年度東京工業大学修士論文
【文献】小野木哲也, 小山佳一, 渡辺和雄(2007)一時相転移物質MnBiの高温・強磁場磁気特性:日本金属学会誌 第71巻 第6号 489-493
【文献】三井好古(2011)強磁性体MnBiの強磁場中平衡状態の解明:57号 東北大学工学博士論文第4700号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述の第3の従来の磁性砥粒構造においては、バルク体ダイヤモンドの重さを1gとすれば、磁気駆動には最大100μT/g程度の磁力が必要であるが、フェリ磁性のMn7C3層のみよりなる垂直自発磁化磁石ではダイヤモンドの(110)面の中心で実測値73μTの最大表面磁束密度しか得られず、磁性砥粒構造の加工力が小さいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題を解決するために、本発明に係る磁性砥粒構造は、(110)面を有するダイヤモンドと、ダイヤモンドの(110)面上に設けられ、ダイヤモンドの(110)面の中心を囲む複数の特定位置に複数の開口を有する金属層と、各開口内のダイヤモンドの(110)面上に設けられ、単一原子層のフェリ磁性Mn7C3層と、各開口内のフェリ磁性Mn7C3層上に設けられ、多層原子層の強磁性MnBi層とを具備するダイヤモンドの(110)面に対して垂直方向に自発磁化しているものである。
【0015】
また、本発明に係る磁性砥粒構造の製造方法は、上述の磁性砥粒構造の製造方法であって、ダイヤモンドの(110)面上に金属層を形成する金属層形成工程と、金属層のダイヤモンドの(110)面の中心を囲む複数の特定位置に複数の開口を形成する開口形成工程と、各開口内のダイヤモンドの(110)面上にダイヤモンドの(110)面に対して垂直方向に自発磁化している単一原子層のフェリ磁性Mn7C3層を形成するフェリ磁性Mn7C3層形成工程と、各開口内のフェリ磁性Mn7C3層上にダイヤモンドの(110)面に対して垂直方向に自発磁化している多層原子層の強磁性MnBi層を形成するMnBi層形成工程とを具備するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、垂直自発磁化磁石をフェリ磁性のMn7C3層及び強磁性のMnBi層により構成したので、各磁石の表面磁束密度は大きくなり、この結果、ダイヤモンドの(110)面の中心の最大表面磁束密度を大きくでき、従って、磁性砥粒構造の加工力を大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る磁性砥粒構造の製造方法の実施の形態を説明するための斜視図である。
【
図2】本発明に係る磁性砥粒構造の製造方法の実施の形態を説明するための斜視図である。
【
図3】
図1の(A)のダイヤモンドの具体例を示し、(A)はUP4020(110)1/2の斜視図であり、(B)はUPT3010の上面図、側面図である。
【
図4】
図1の(C)の開口を説明するための上面図であって、(A)はダイヤモンドUP4020(110)1/2の場合を示し、(B)はダイヤモンドUPT3010の場合を示す。
【
図5】ダイヤモンドUP4020(110)1/2の場合の本発明に係る磁性砥粒構造の各磁石における表面磁束密度の測定結果を示し、(A)はMnによるダイヤモンド表面改質後の表面磁束密度を示し、(B)はMn及びBiによるダイヤモンド表面改質後の表面磁束密度を示す。
【
図6】ダイヤモンドUPT3010の場合の本発明に係る磁性砥粒構造の各磁石における表面磁束密度の測定結果を示し、(A)はMnによるダイヤモンド表面改質後の表面磁束密度を示し、(B)はMn及びBiによるダイヤモンド表面改質後の表面磁束密度を示す。
【
図7】
図5、
図6の表面磁束密度をプロットしたグラフである。
【
図8】
図3の(A)のダイヤモンドUP4020(110)1/2を用いた場合の磁性砥粒構造の磁化(M-H)曲線を示し、(A)は全体図、(B)は(A)のB部分拡大図である。
【
図9】
図3の(B)のダイヤモンドUPT3010を用いた場合の磁性砥粒構造の磁化(M-H)曲線を示し、(A)は全体図、(B)は(A)のB部分拡大図である。
【
図10】
図1の(C)の開口の位置の変更例を示す図である。
【
図11】従来の磁気研磨加工法を適用された円管内部研磨を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明に係る磁性砥粒構造の製造方法の実施の形態を説明するための斜視図である。
【0019】
始めに、
図1の(A)のダイヤモンド準備工程を参照すると、ダイヤモンド1を準備する。ダイヤモンド1は直方体となっているが、必ずしも、直方体でなく、たとえばレーザ切断面(110)面が露出している
図3の(A)に示す東京ダイヤモンドの重量W=0.069gの天然ダイヤモンドUP4020(110)1/2又は
図3の(B)に示す東京ダイヤモンドの重量W=0.030gの天然ダイヤモンドUPT3010を用いる。いずれの場合も、ダイヤモンド1の(110)面は軸対称となっていない。
【0020】
次に、
図1の(B)のAuコーティング工程を参照すると、厚さ30nmの金(Au)層2をマグネトロンスパッタリング装置によってダイヤモンド1の(110)面上に形成する。この場合、(110)面を上にするので、(110)面の側面にはほとんどAu層は形成されず、(110)面の裏面には全くAu層は形成されない。Auは、赤外線を反射し、C、Bi及びこれらの反応物に対して反応性に乏しく、非常に弱い常磁性を示す。従って、Auは後述のダイヤモンド表面改質に対するマスクとして作用できる。尚、Au層2は上述の性質を有する他の金属たとえば白金(Pt)、銀(Ag)でもよい。
【0021】
次に、
図1の(C)のAu層開口工程を参照すると、集束イオンビーム(FIB)装置を用いてAu層2の中心を囲む特定の箇所たとえば正六角形の各頂点に円状に配置された6箇所に直径0.5mmの開口2a-1、2a-2、…、2a-6を形成する。
図4の(A)はダイヤモンドUP4020(110)1/2の場合を示し、
図4の(B)はダイヤモンドUPT3010の場合を示す。FIB装置においては、イオン源から放出されたイオンをコンデンサレンズによりダイヤモンド上に集束させ、静電偏向器で走査する。Au層2から放出される2次電子を検出し、走査顕微鏡像を得る。得られた画像を参考に所定加工領域を設定し、所定量のイオンビームを所定加工領域にのみ照射することで加工を行う。FIB装置を用いることでビットマップにより精密に所定加工領域を設定できるので、上述の第3の従来の磁性砥粒構造における手作業によるAu除去よりも精密に加工を行え、加工時間及びイオンドーズ量を設定することで、所定加工領域のAu層2のみを加工、除去できる。
図4に示すごとく、ダイヤモンドの中で特定6箇所を磁石とするに当って、正六角形の頂点上でダイヤモンド表面改質を行う。このため、所定加工領域で直径0.5mmの円状に金層2を剥がす。
図4においては、頂角120°の正六角形の対向する2つの頂点を結ぶ3つの対角線の各中点はダイヤモンド1の(110)面の中心Oと一致する。
【0022】
次に、
図2の(A)のMn粉末散布工程を参照すると、開口されたAu層2が形成されたダイヤモンドは図示しない赤外線を透過するセル内に収容され、ダイヤモンド上に粉径45μm以下のMn粉末3を散布する。尚、当該セルは後述の赤外線集光加熱装置内においてMn粉末3の飛散を防止する。粉末状態のMnはダイヤモンド1に触れる表面積が大きく、後述のMnによるダイヤモンド表面改質を達成し易い。尚、Mn粉末3は粒径100μm以下の市販のMn粉末をセラミックボールミルと共にミリングポットに入れ、卓上ミリングマシーンにセットして3時間回転させて粉砕することにより粒径45μm以下の粉末とする。
【0023】
次に、
図2の(B)のMnによるダイヤモンド表面改質工程を参照すると、(110)面を上向きにするためにダイヤモンドを収容したセルを株式会社サーモ理工製の赤外線集光加熱装置によってMnによるダイヤモンド表面改質を行う。赤外線集光加熱装置においては、ダイヤモンドを収容したセルを真空チャンバの試料台中央に配置し、真空チャンバの真空度を8.0×10
-4PaとしてMnとOとの反応を抑止し、赤外線による加熱を開始してダイヤモンド温度が450℃に到着したらその450℃を10秒間維持した後に赤外線による加熱を停止する。赤外線はMn粉末3に吸収されるが、ダイヤモンド1を透過するので、ダイヤモンド1の炭素脱離が生じにくい。この場合の加熱温度は、Mnによるダイヤモンド表面改質が可能な420℃以上かつダイヤモンド1の炭素脱離温度600℃より低くされており、たとえば450℃とされている。ダイヤモンド温度が十分下がった後にダイヤモンドを赤外線集光加熱装置から回収する。回収したダイヤモンドは超音波洗浄して余分なMn粉末を落とす。
【0024】
上述のMnによるダイヤモンド表面改質工程においては、Au層2が剥がされたダイヤモンド1の表面は通常酸素終端又は水素終端されている。この終端原子O又はHはMnによるダイヤモンド表面改質工程の赤外線によって切離され、ダイヤモンド1の表面はダングリングボイド状態となる。また、MnはCとの反応性が高い。従って、ダングリングボイド状態のダイヤモンド1の(110)面のみにおいて、赤外線を吸収したMnがCと反応してナノメータレベルの単一原子層のMn7C3層4が形成される。このMn7C3層4はダイヤモンド1の改質面(110)に垂直方向に自発磁化し、フェリ磁性を示す(参照:非特許文献6)。また同時に、Au層2はMnと反応し、余剰MnはAu層2に蓄積される。
【0025】
次に、
図2の(C)のビスマス(Bi)粉末散布工程を参照すると、開口にMn
7C
3層4が形成されたAu層2を有するダイヤモンドは図示しない別のセル内に収容され、ダイヤモンド上に粉径45μm以下のBi粉末5を散布する。尚、セルは後述の赤外線集光加熱装置内においてBi粉末5の飛散を防止する。粉末状態のBiはダイヤモンド1上のMn
7C
3層4及びAu層2の余剰Mnに触れる表面積が大きく、後述のMn及びBiによるダイヤモンド表面改質を達成し易い。尚、Bi粉末5は粒径100μm以下の市販のBi粉末をセラミックボールミルと共にミリングポットに入れ、卓上ミリングマシーンにセットして3時間回転させて粉砕することにより粒径45μm以下の粉末とする。
【0026】
最後に、
図2の(D)のMn及びBiによるダイヤモンド表面改質工程を参照すると、(110)面を上向きにするためにダイヤモンドを収容したセルを株式会社サーモ理工製の赤外線集光加熱装置によってMn及びBiによるダイヤモンド表面改質を行う。赤外線集光加熱装置においては、ダイヤモンドを収容したセルを真空チャンバの試料台中央に配置し、真空チャンバの真空度を8.0×10
-4Paとし、赤外線による加熱を開始してダイヤモンド温度が275℃(548K)に到着したらその275℃を120秒間維持した後に赤外線による加熱を停止する。赤外線はBi粉末5に吸収されるが、ダイヤモンド1を透過するので、ダイヤモンド1の炭素脱離が生じにくい。この場合の加熱温度は、Mn及びBiによるダイヤモンド表面改質においてBiとMnとが反応可能な270℃以上かつMnBiの強磁性が消失する相転移温度(キュリー温度)355℃(628K)より低くされており、たとえば275℃とされている。ダイヤモンド温度が十分下がった後にダイヤモンドを赤外線集光加熱装置から回収する。回収したダイヤモンドは超音波洗浄して余分なBi粉末を落とす。
【0027】
上述のMn及びBiによるダイヤモンド表面改質工程においては、BiはMnと反応性が高い。従って、Mn及びBiによるダイヤモンド表面改質によってBiは赤外線を吸収してAu層2に蓄積されていた余剰Mnと反応して厚さ30μm程度の多層原子層のMnBi層6をMn7C3層4上に形成する。MnBi層6は強磁性を示し、628Kをキュリー温度として有する(参照:非特許文献7、8)。
【0028】
一般に、薄膜の磁性体を形成することにより磁気異方性(垂直磁化)を担保でき、高い磁気特性及び高い透磁率が得られる。この場合、Mn7C3層4及びMnBi層6は共に十分に薄い。また、薄膜の磁性体の幅も0.5mmと小さい。磁性体の幅が小さい程、薄膜の磁気異方性を担保できる。磁性体の幅は理想的には単一原子の大きさ0.1nm程度であるが、好ましくは5nm程度あればよい。つまり、薄膜の磁性体の幅を規定する開口2a-1、2a-2、…、2a-6の幅(直径)は0.5mm~5nmである。従って、Mn7C3層4はダイヤモンド1の改質面(110)面に対して垂直方向に自発磁化する傾向を有し、MnBi層6はMn7C3層4の磁化方向に自発磁化する傾向を有する。この結果、フェリ磁性のMn7C3層4の磁化方向及び強磁性のMnBi層6の磁化方向は垂直方向に揃う。このようにして、フェリ磁性のMn7C3層4及び強磁性のMnBi層6によるダイヤモンド1の(110)面に形成された微小な薄膜磁石(Mn7C3+MnBi)は大きな表面磁束密度を発生することができる。
【0029】
図1、
図2に示す製造方法によって製造された磁性砥粒構造の特定位置の磁束密度を東陽テクニカ製BHT921のホール素子を用いて測定した結果を
図4、
図5、
図6を参照して説明する。一般に、ホール効果によれば、垂直に自発磁化した物体にホール素子のアクティブ部分を近づけると、該物体の表面磁束密度の垂直成分によってホール効果を生じ、ホール素子の出力電圧を測定することにより各測定箇所の表面磁束密度を評価できる。
【0030】
図5は
図3の(A)のダイヤモンドUP4020(110)1/2を用いた場合の表面磁束密度を示し、(A)はMnによるダイヤモンド表面改質後、(B)はMn及びBiによるダイヤモンド表面改質後を示す。
【0031】
図5の(A)に示すように、Mnによるダイヤモンド表面改質後の各測定箇所(開口2a-1、2a-2、…、2a-6)での表面磁束密度は最大で71.1μTである。但し、正六角形の中心つまり6箇所の対向する2箇所を結ぶ3つの対角線の交点はダイヤモンド1の(110)面の中心となり、中心の最大表面磁束密度は6箇所の表面磁束密度の一部が重畳して138.2μTとやや大きい。これに対し、
図5の(B)に示すように、Mn及びBiによるダイヤモンド表面改質後の各測定箇所(開口2a-1、2a-2、…、2a-6)での表面磁束密度は218.0~391.4μTである。この場合、正六角形の中心つまり6箇所の対向する2箇所を結ぶ3つの対角線の交点はダイヤモンド1の(110)面の中心となり、中心の最大表面磁束密度は6箇所の表面磁束密度の一部が重畳して408.7μTとさらに大きくなる。
【0032】
図6は
図3の(B)のダイヤモンドUPT3010を用いた場合の表面磁束密度を示し、(A)はMnによるダイヤモンド表面改質後、(B)はMn及びBiによるダイヤモンド表面改質後を示す。
【0033】
図6の(A)に示すように、Mnによるダイヤモンド表面改質後の各測定箇所(開口2a-1、2a-2、…、2a-6)での表面磁束密度は最大で61.1μTである。但し、正六角形の中心つまり6箇所の対向する2箇所を結ぶ3つの対角線の交点はダイヤモンド1の(110)面の中心となり、中心の最大表面磁束密度は6箇所の表面磁束密度の一部が重畳して104.1μTとやや大きい。これに対し、
図6の(B)に示すように、Mn及びBiによるダイヤモンド表面改質後の各測定箇所(開口2a-1、2a-2、…、2a-6)での表面磁束密度は124.1~155.2μTである。この場合、正六角形の中心つまり6箇所の対向する2箇所を結ぶ3つの対角線の交点はダイヤモンド1の(110)面の中心となり、中心の最大表面磁束密度は6箇所の表面磁束密度の一部が重畳して232.1μTとさらに大きくなる。
【0034】
図7は
図5、
図6の測定箇所(開口2a-1、2a-2、…、2a-6)での表面磁束密度をプロットしたグラフである。
【0035】
図7に示すように、Mn及びBiによるダイヤモンド表面改質を行った場合、Mnのみによるダイヤモンド表面改質を行った場合に比べて2~3倍の表面磁束密度が得られた。また、Mn及びBiによるダイヤモンド表面改質後の表面磁束密度の標準偏差は57(UP4020(110)1/2の場合)、17(UPT3010の場合)であり、第3の従来の磁性砥粒構造の場合の標準偏差68より小さい。これは開口2a-1、2a-2、…、2a-6の開口形成を第3の従来の磁性砥粒構造の場合光学顕微鏡の基での手作業で行い、本発明の場合FIB装置を用いて行ったことによる。尚、UP4020(110)1/2の場合の標準偏差57がUPT3010の場合の標準偏差17より大きいのはUPT3010の場合に結果的にBiの添加量が少なくなったためと考えられる。
【0036】
6箇所に磁石が形成された磁性砥粒構造を電磁石で駆動させる場合、6箇所の磁石の中心の最大表面磁束密度が大きい程、駆動力は増加する。他方、6箇所の磁石の表面磁束密度のばらつき(標準偏差)が小さい程、回転を招かないので損失が少ない。駆動力の点からはダイヤモンドUP4020(110)1/2の場合の方がよいが、損失が少ない点からはダイヤモンドUPT3010の方がよい。
【0037】
図1、
図2に示す製造方法によって製造された磁性砥粒構造の磁化曲線を日本カンタムデザイン株式会社製の物理特性測定システム(PPMS)に試料振動型磁力測定(VSM)ユニットを追加した装置で測定した。この装置においては、磁性砥粒構造を直流磁場中にて一定振動数で振動させることにより設置されている検出コイルにより磁力線の変化を測定する。この磁力線の変化は磁性砥粒構造の磁気モーメントに比例した信号である交流の誘導起電力を示している。装置を磁気特性の特徴が出易い低温度たとえば10Kにしたまま、磁場H(A/m)を4000→0→-4000→0→4000と変化させてその間の磁化M(μT)を測定して磁化(M-H)曲線を得る。
【0038】
図8は
図3の(A)のダイヤモンドUP4020(110)1/2を用いた場合の磁性砥粒構造の磁化(M-H)曲線を示し、(A)は全体図、(B)は(A)のB部分拡大図である。
【0039】
図8に示すように、H-M曲線はヒステリシスループをなし、磁性砥粒構造は自発磁化していることが分る。
図8の(A)において、傾きが変化するH
1=150kA/m、H
1’=-150kA/mはMn
7C
3の飽和磁束密度に相当し、傾きが変化するH
2=2000kA/m、H
2’=-2000kA/mはMnBiの飽和磁束密度に相当する。また、傾きの符号が負(正)に変化した部分Cはダイヤモンド及びBiの反磁性によるものである。さらに、
図8の(B)において、H=0における磁化Mは残留磁束密度B
r=421μT、B
r’=-421μTに相当し、H=0における磁化Mの傾きは磁化率χ
m=2.64に相当し、共に大きい。磁化Mにおける符号反転は保持力H
C=21.2kA/m、H
C’=-21.2kA/mに相当し、硬磁性材料として十分扱える。このように、フェリ磁性体Mn
7C
3、強磁性体MnBi、反磁性体ダイヤモンド及び表面に残存した反磁性体Biを確認できた。
【0040】
図9は
図3の(B)のダイヤモンドUPT3010を用いた場合の磁性砥粒構造の磁化(M-H)曲線を示し、(A)は全体図、(B)は(A)のB部分拡大図である。
【0041】
図9に示すように、H-M曲線はヒステリシスループをなし、磁性砥粒構造は自発磁化していることが分る。
図9の(A)において、傾きが変化するH
1=150kA/m、H
1’=-150kA/mはMn
7C
3の飽和磁束密度に相当し、傾きが変化するH
2=1500kA/m、H
2’=-1500kA/mはMnBiの飽和磁束密度に相当する。また、傾きの符号が負(正)に変化した部分Cはダイヤモンド及びBiの反磁性によるものである。さらに、
図9の(B)において、H=0における磁化Mは残留磁束密度B
r=389μT、B
r’=-389μTに相当し、H=0における磁化Mの傾きは磁化率χ
m=2.91に相当し、共に大きい。磁化Mにおける符号反転は保持力H
C=15.0kA/m、H
C’=-15.0kA/mに相当し、硬磁性材料として十分扱える。このように、フェリ磁性体Mn
7C
3、強磁性体MnBi、反磁性体ダイヤモンド及び表面に残存した反磁性体Biを確認できた。
【0042】
本発明においては、Mn7C3層及びMnBi層よりなる垂直自発磁化磁石を2n角形(n=2、3、…)の頂点に設け、対向する2頂点を結ぶn個の対角線の各中点をダイヤモンド1の(110)面の中心Oに一致させることにより、当該中心Oと最大磁束密度の場所とを一致させる。これにより、磁気駆動時の磁性砥粒構造の回転を抑制し、損失を少なくする。尚、対角線の中点をダイヤモンド1の(110)面の中心Oに完全に一致させる必要はなく、略一致すればよい。たとえば、対角線の中点は中心Oから±0.05mm以内の近傍でもよい。
【0043】
尚、上述の実施の形態においては、Mn
7C
3層及びMnBi層よりなる磁石をダイヤモンドの(110)面の中心Oを囲む頂角120°の正六角形の円状配置された頂点に設けているが、
図10の(A)に示すごとく、ダイヤモンドの(110)面の中心Oを囲む非正六角形(正六角形を除く六角形を意味する)の円状配置された頂点に設けてもよく、また、
図10の(B)に示すごとく、ダイヤモンドの(110)面の中心Oを囲む非正六角形(正六角形を除く六角形を意味する)の非円状配置された頂点に設けてもよい。さらに、いずれの場合でも、六角形でない四角形、八角形、…等の多角形でもよい。但し、四角形は平面安定性が悪く、また、八角形、十角形、…は製造が複雑となるので、六角形が最良である。
【0044】
また、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲でいかなる変更にも適用し得る。
【符号の説明】
【0045】
1:ダイヤモンド
2:Au層
2a-1、2a-2、…、2a-6:開口
3:Mn粉末
4:Mn7C3層
5:Bi粉末
6:MnBi層
101:管状加工物
102:磁性研磨スラリ
103:電磁石