(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】軌陸車
(51)【国際特許分類】
B62D 33/023 20060101AFI20240315BHJP
B60F 1/04 20060101ALI20240315BHJP
B61D 15/00 20060101ALI20240315BHJP
B60P 1/43 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B62D33/023 E
B60F1/04
B61D15/00 A
B60P1/43 A
B60P1/43 B
(21)【出願番号】P 2020087369
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】517442410
【氏名又は名称】株式会社Die Kraft
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 力
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-284070(JP,A)
【文献】特開2004-042705(JP,A)
【文献】特開平04-129848(JP,A)
【文献】特開2019-081459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 33/023
B60F 1/04
B61D 15/00
B60P 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ輪で路上を走行する形態と、鉄輪で軌道上を走行する形態とに択一的に切換え可能な軌陸車において、
荷台部の少なくとも左右何れか一方の側あおりの長さ方向の少なくとも一部分に、上下幅拡大方向へ伸縮可能な伸縮式側あおりを設け、
前記伸縮式側あおりの下端部を側あおりのベース部材であって荷台部に回動可能に連結されたベース部材に水平軸心回りに回動可能に連結する連結機構を設け、
前記伸縮式側あおりを伸長状態に切換え且つ車幅方向外側へ90°以上回動させることで、前記伸縮式側あおりがスライドスロープとなるように構成し
、
前記伸縮式側あおりが、3段に伸縮する3段伸縮構造を有することを特徴とする軌陸車。
【請求項2】
前記伸縮式側あおりを伸長状態にロック可能なロック機構を設け、前記ロック機構のロック部材を手摺の手摺支柱で構成したことを特徴とする請求項1に記載の軌陸車。
【請求項3】
前記側あおりの長さ方向中央部分に前記伸縮式側あおりを設け、その伸縮式側あおりの前後両側に非伸縮式側あおりを設けたことを特徴とする請求項1に記載の軌陸車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側あおりの少なくとも一部分に伸縮可能な伸縮式側あおりを設けた軌陸車に関する。
【背景技術】
【0002】
軌陸車は、タイヤ輪で道路上を走行する形態と、鉄輪で軌道上を走行する形態とに択一的に切換え可能なトラックのような車両であり、鉄道の線路の補修や点検等に使用される。
通常の軌陸車やトラックでは、荷台の3辺に左右の側あおりと後部あおりとが装備され、荷物の積み込みや荷下ろしの際には、左右何れか一方の側あおりや後部あおりを回動させて下方へ垂らした状態に開放され、荷物の積み込みや荷下ろし終了後にはそれらの側あおりや後部あおりが元の状態に閉じられる。
【0003】
通常の軌陸車やトラックの側あおりは、荷台上に荷物を収容する機能を発揮できればよいため、側あおりの上下幅は一定で上下幅が変化する構造には作られてはいない。
尚、参考までに、特許文献1には、側あおりを開閉する作業負荷を軽減可能にした、自動車用荷台側あおりの開閉補助装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
軌陸車の場合、軌道上の軌陸車の荷台から駅のホーム上へ又はその反対に資材を運んだり、作業員が移動したりする必要があるが、従来の軌陸車では、荷台から駅のホーム上へ足場板やその他の板材を架設することで、上記のニーズに対処していた。
本発明の目的は、側あおりの少なくとも一部分に伸縮可能な側あおりを設け、その伸縮式側あおりを荷台とホームとの間のスライドスロープとして利用可能にした軌陸車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の軌陸車は、タイヤ輪で道路上を走行する形態と、鉄輪で軌道上を走行する形態とに択一的に切換え可能な軌陸車において、荷台部の少なくとも左右何れか一方の側あおりの長さ方向の少なくとも一部分に、上下幅拡大方向へ伸縮可能な伸縮式側あおりを設け、前記伸縮式側あおりの下端部を側あおりのベース部材であって荷台部に回動可能に連結されたベース部材に水平軸心回りに回動可能に連結する連結機構を設け、前記伸縮式側あおりを伸長状態に切換え且つ車幅方向外側へ90°以上回動させることで、前記伸縮式側あおりがスライドスロープとなるように構成し、前記伸縮式側あおりが、3段に伸縮する3段伸縮構造を有することを特徴としている。
【0007】
上記の構成によれば、前記伸縮式側あおりをスライドスロープとして使用する場合には、前記伸縮式側あおりを伸長状態に切換え、前記連結機構を介して前記側あおりのベース部材に対して水平軸心回りに車幅方向外側へ90°以上回動させてスライドスロープとする。
伸縮式側あおりをスライドスロープとして使用することができるため、軌陸車の荷台部とホームとの間の交通のため足場板を架設する等の労力を解消することができる。
前記伸縮式側あおりは、収縮状態にして側あおり内に収容できるため邪魔になることもない。
更に、前記伸縮式側あおりは3段伸縮構造を有するため、伸長状態における伸縮式側あおりの上下幅を大きくすることができる。
【0008】
一方、前記伸縮式側あおりをスライドスロープではなく通常の側あおりとして使用する場合は、前記側あおりのベース部材と共に側あおりを回動させることで開閉することができる。
【0009】
請求項2の軌陸車は、請求項1の発明において、前記伸縮式側あおりを伸長状態にロック可能なロック機構を設け、前記ロック機構のロック部材を手摺の手摺支柱で構成したことを特徴としている。
上記の構成によれば、前記伸縮式側あおりをロック機構により伸長状態にロック可能であり、そのロック機構のロック部材を手摺の手摺支柱で構成したため、部材数を少なくして製作費を低減することができる。
【0010】
【0011】
請求項3の軌陸車は、請求項1の発明において、前記側あおりの長さ方向中央部分に前記伸縮式側あおりを設け、その伸縮式側あおりの前後両側に非伸縮式側あおりを設けたことを特徴としている。
上記の構成によれば、伸縮式側あおりをスライドスロープとした場合に、軌陸車の荷台の中央部にアクセスしやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記のような種々の作用、効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る軌陸車の側面図である。
【
図2】前記伸縮式側あおりを伸長状態に切換えた場合の軌陸車の背面図である。
【
図3】前記伸縮式側あおりをスライドスロープとした場合の軌陸車の背面図である。
【
図5】前記伸縮式側あおり(非伸長状態)の背面図である。
【
図6】前記軌陸車の伸長状態の伸縮式側あおりを含む側あおりの側面図である。
【
図7】前記伸縮式側あおり(伸長状態)の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
図1~
図3に示すように、軌陸車1は、トラックをベースにした車両であり、運転部3と荷台部4とを有する車体2を備え、この車体2には、道路走行用の車輪5,6(左右1対の前車輪5、左右1対の後車輪6)と、軌道走行用の複数の鉄輪7,8(左右1対の前鉄輪7、左右1対の後鉄輪8)と、車体2の昇降・旋回を行う車体昇降用油圧装置9と、複数の鉄輪7,8の出し入れを行う鉄輪用油圧装置10,11等を装備している。荷台部4には、軌道上の工事や点検等の作業に必要な機材が搭載される。
【0015】
複数の鉄輪7,8は複数の枢支部材7a,8aに回転自在に支持され、これら複数の枢支部材7a,8aは鉄輪7,8を出し入れ可能に車体2に回動可能に連結されている。鉄輪出入装置10,11は複数の油圧シリンダ10a,11aにより複数の枢支部材7a,8aを回動させて、複数の鉄輪7,8を
図1に実線で示す使用位置と
図1に二点鎖線で示す退避位置とに切り換える。
【0016】
軌陸車1は、道路を走行する際にはエンジンを含む駆動系により1対の後車輪6を駆動輪として走行する。軌道上を走行する際には、道路を走行してきた軌陸車1を例えば踏切内等に停止させ、車体昇降用油圧装置9により車体2を上昇させてから90°旋回させ、次に鉄輪出入装置10,11により複数の鉄輪7,8を退避位置から使用位置へ切換え、次に車体昇降用油圧装置9により車体2を下降させて複数の鉄輪7,8を1対のレール15上に当接させる。
【0017】
軌陸車1は、軌道上を走行する際にも道路走行用のエンジンを駆動源とし、後鉄輪8を駆動輪として軌道上を走行する。そのため、1対の後車輪6から1対の後鉄輪8に動力を伝達する左右1対の動力伝達輪12が設けられている。1対の動力伝達輪12は1対の枢支部材8aに付設され、1対の後鉄輪8が使用位置にあるときにだけ、1対の後車輪6及び後鉄輪8と同軸の1対の被駆動輪12aと接触し、摩擦により回転駆動力を1対の被駆動輪12aに伝達して1対の後鉄輪8を回転駆動する。
【0018】
次に、本願特有の側あおりについて説明する。
荷台部4の左右の側部に側あおり20が設けられ、荷台部4の後端部に後部あおり24が設けられている。尚、左右の側あおり20は左右対称の構造であるので、左側の側あおり20を例として説明する。
【0019】
図1、
図4に示すように、側あおり20の下端部分に帯状のベース部材20aが設けられ、このベース部材20aは、荷台部4の側端に2組のヒンジ機構25を介して前後向きの水平軸心回りに回動可能に連結されている。上記の2組のヒンジ機構25を介して側あおり20を約180°回動させて開閉することができる。
【0020】
側あおり20の前部側部分(全長の約25%)がベース部材20aと一体の非伸縮式前部側あおり21に構成され、側あおり20の後部側部分(全長の約25%)がベース部材20aと一体の非伸縮式後部側あおり22に構成され、側あおり20の長さ方向中央部分(全長の約50%)が、上下幅拡大方向へ伸縮可能な伸縮式側あおり23に構成され、この伸縮式側あおり23が3組の副ヒンジ機構26aからなる連結機構26を介してベース部材20aに前後向きの水平軸心回りに回動可能に連結されている。
【0021】
非伸縮式前部側あおり21の後端部の上端部に回動式の規制部材27がピン結合され、
この規制部材27はU形断面を有し、
図4に実線で図示のように、伸縮式側あおり23に架け渡した水平状態では、非伸縮式前部側あおり21と伸縮式側あおり23を一直線状に整列させる。非伸縮式後部側あおり22の前端部の上端部に回動式の規制部材28がピン結合され、この規制部材28はU形断面を有し、
図4に実線で図示のように、伸縮式側あおり23に架け渡した水平状態では、非伸縮式後部側あおり22と伸縮式側あおり23を一直線状に整列させる。
【0022】
図2、
図6、
図7に示すように、伸縮式側あおり23は、上下幅拡大方向へ3段に伸縮する3段伸縮構造を有する。伸縮式側あおり23は、2枚の板材で袋状に形成した1段目部材23aと、この1段目部材23aの内部に進退可能で且つ2枚の板材で袋状に形成した2段目部材23bと、2段目部材23bの内部に進退可能で且つ1枚の板材で形成された3段目部材23cとを有する。
【0023】
図3に示すように、伸縮式側あおり23を伸長状態に切換え且つ車幅方向外側へ90°以上回動させることで、伸縮式側あおり23が荷台部4からホームHに架け渡したスライドスロープとなるように構成してある。
【0024】
伸縮式側あおり23を伸長状態にロック可能なロック機構30を設け、ロック機構30のロック部材30aを以下に説明するように手摺の手摺支柱で構成した。
伸縮式側あおり23を伸長したスライドスロープにし、伸縮式側あおり23の前後両端部において、1段目部材23aと2段目部材23bの重複部の立向き嵌合孔にロック部材30aを嵌合させて伸縮式側あおり23に対し直交状に立て、2段目部材23bと3段目部材23cの重複部の立向き嵌合孔にロック部材30aを嵌合させて伸縮式側あおり23に対し直交状に立て、それらロック部材30aの上端部に架着したチェーン部材31を非伸縮式前部側あおり21と非伸縮式後部側あおり22の上端に架け渡して手摺りを構成する。
【0025】
次に、以上説明した軌陸車1の側あおり20の作用、効果について説明する。
伸縮式側あおり23をスライドスロープとして使用する場合には、伸縮式側あおり23を伸長状態に切換え、連結機構26を介して側あおり20のベース部材20aに対して水平軸心回りに車幅方向外側へ90°以上回動させてスライドスロープとする。
このように、伸縮式側あおり23をスライドスロープとして使用することができるため、軌陸車1の荷台部4とホームHとの間の交通のため足場板を架設する等の労力を解消することができる。
【0026】
伸縮式側あおり23は、収縮状態にして1段目部材23a内に収容できるため邪魔になることもない。一方、伸縮式側あおり23をスライドスロープではなく通常の側あおりとして使用する場合は、非伸縮式前部側あおり21や非伸縮式後部側あおり22と共に、側あおり20のベース部材20aと一体的に伸縮式側あおり23を回動させることで開閉することができる。
【0027】
しかも、伸縮式側あおり23をロック機構30により伸長状態にロック可能であり、そのロック機構30のロック部材30aを手摺の手摺支柱で構成したため、部材数を少なくして製作費を低減することができる。
また、伸縮式側あおり23が3段伸縮構造を有するため、伸長状態における伸縮式側あおり23の上下幅を大きくすることができる。
【0028】
特に、側あおり23の長さ方向中央部分に伸縮式側あおり23を設け、伸縮式側あおり23をスライドスロープとした場合には、軌陸車1の荷台4の中央部にアクセスしやすくなる。
【0029】
前記実施形態を部分的に変更する例について説明する。
1)前記実施形態では、伸縮式側あおり23を側あおり20の長さ方向の中央部分に設けたが、伸縮式側あおり23を設ける部位は、上記の部位に限定されるものではなく、側あおり20の前部に設けてもよく、側あおり20の後部に設けてもよい。
【0030】
2)伸縮式側あおり23を2本の油圧シリンダにより開閉可能に構成することができる。
この場合、伸縮式側あおり23の下方において車体2に2本の立向きの油圧シリンダを設け、それらの油圧シリンダのピストンロッドの先端を伸縮式側あおり23の1段目部材23aの中段部に連結する。伸縮式側あおり23を開いてスライドスロープとする場合にはピストンロッドを収縮させ、伸縮式側あおり23を閉じる場合にはピストンロッドを伸長させる。
【0031】
3)その他、当業者ならば本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加して実施可能であり、本発明はそのような変更形態をも包含するものである。
【符号の説明】
【0032】
1 軌陸車
4 荷台部
5,6 タイヤ輪
7,8 鉄輪
20 側あおり
20a ベース部材
21 非伸縮式前部側あおり
22 非伸縮式後部側あおり
23 伸縮式側あおり
26 連結機構
30 ロック機構
30a ロック部材