(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】建物の防水構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/66 20060101AFI20240315BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
E04B1/66 A
E04H9/14 Z
(21)【出願番号】P 2020103439
(22)【出願日】2020-06-16
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】591260029
【氏名又は名称】株式会社内藤ハウス
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【氏名又は名称】浅川 哲
(72)【発明者】
【氏名】桑原 幸雄
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-190011(JP,U)
【文献】実開昭56-047009(JP,U)
【文献】特開2013-151856(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0266658(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/66
E04H 9/14
E04B 2/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎と、該基礎の上方に配設される外壁パネルとの間に形成される隙間を防水する構造であって、
前記外壁パネルの内側には下地材が配設され、外壁パネルと対向する側の下地材の表面に第1の防水材が設けられる一方、前記基礎の外表面には第2の防水材が設けられ、
前記第1の防水材の下端部と前記第2の防水材の上端部との間に両者の重なり部が設けられることにより前記隙間が塞がれる建物防水構造。
【請求項2】
前記下地材が前記基礎の外表面とほぼ同一面上に配設され、前記下地材の表面に設けられる第1の防水材と前記基礎の外表面に設けられる第2の防水材が同一面上に配置される請求項1に記載の建物防水構造。
【請求項3】
前記第1の防水材の下端部が前記基礎の外表面まで延び、その下端部を第2の防水材の上端部が被覆することで、両者の重なり部が設けられる請求項1又は2に記載の建物防水構造。
【請求項4】
前記両者の重なり部が密着している請求項1乃至3のいずれかに記載の建物防水構造。
【請求項5】
前記第1の防水材が防水シートからなる請求項1乃至3のいずれかに記載の建物防水構造。
【請求項6】
前記第2の防水材が防水性塗布剤からなる請求項1乃至3のいずれかに記載の建物防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洪水などが発生した時に建物の床下に浸水するのを防止するための建物の防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洪水などによって建物の床下高さまで水位が上がった場合でも床下浸水を防止することができる水切構造が知られている(特許文献1参照)。この水切構造は、建物における外壁パネルの外側の下端側に、当該外壁パネルと対向して土台水切を配設し、この土台水切の下端部と布基礎とを封止部材によってつなぎ、土台水切の下端部と布基礎との間の隙間を封止した状態にしたものであり、洪水などにより床下の高さまで水位が上がったとしても、床下空間への水の浸入を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の建物の防水構造にあっては、土台水切の下端部と布基礎とをつなぐための封止部材が別途必要となる他、封止部材と土台水切との間および封止部材と布基礎との間は水密を保った状態で接合する作業が必要となり、その接合作業が面倒なものとなっていた。
【0005】
そこで本発明は、洪水時などにおける床下空間への水の浸入を簡易な手段により防ぐことができる建物の防水構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る建物の防水構造は、基礎と、該基礎の上方に配設される外壁パネルとの間に形成される隙間を防水する構造であって、前記外壁パネルの内側には下地材が配設され、外壁パネルと対向する側の下地材の表面に第1の防水材が設けられる一方、前記基礎の外表面には第2の防水材が設けられ、前記第1の防水材の下端部と前記第2の防水材の上端部との間に両者の重なり部が設けられることにより前記隙間が塞がれる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る建物の防水構造によれば、第1の防水材の下端部と第2の防水材の上端部とを互いに重ね合わせるだけで、基礎の外壁パネルとの間に形成される隙間を確実に防ぐことができ、床下空間への水の浸入を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る建物の防水構造の第1実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る建物の防水構造の第2実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る建物の防水構造の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面は、本発明に係る建物の防水構造を模式的に表したものである。これらの実物の寸法および寸法比は、図面上の寸法および寸法比と必ずしも一致していない。また、重複説明は適宜省略させることがあり、同一部材には同一符号を付与することがある。さらに、本発明の技術的範囲は以下で説明する各実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0010】
図1には本発明に係る建物防水構造の第1実施形態が示されている。
図1において、符号1は建物の荷重を支える基礎、2は基礎1の立上り部である。また、符号3は、立上り部2の上方に配設される外壁パネルである。外壁パネル3は、一例としてはサイディングボードであるが、これに限定されないことは勿論である。外壁パネル3の内側には下地材4が配設される。下地材4は、一例としてはプラスターボードや各種合板材などである。この下地材4は、柱や間柱の間に水平に配設された横胴縁5に取付けられる。また、この実施形態において、前記下地材4は前記基礎1の立上り部2の外表面2aとほぼ同一面上に配設されている。
【0011】
前記基礎1の立上り部2の上端部2bと外壁パネル3の下端部3aとの間には隙間6が形成され、この隙間6を隠すようにして水切7が設置されている。水切7は断面鉤型の金物からなり、上端が下地材4の下端4bに固定され、下端が外壁パネル3の下端部3a近傍に配置される。水切7を設置することで外壁パネル3を伝って流れる雨水の大部分が水切7からしずくとなって落ちるので、雨水による外壁パネル3の汚れや床下空間10への雨水の浸入を防ぐことができる。
【0012】
本実施形態では、前記外壁パネル3と対向する側の下地材4の表面4aに第1の防水材8が設けられる。この第1の防水材8は、一例では防水シートからなり、前記下地材4の表面4aに接着剤などを用いて貼り付けられる。防水シートを貼る下地材4の高さは、少なくとも下地材4の下端部4bから床下の高さが望ましい。床下高さまで水位11が上がったとしても床下空間10への浸水を確実に防ぐためにである。この実施形態では第1の防水材8の下端部8aが前記基礎1の立上り部2の外表面2aまでまっすぐに延びている。なお、防水シートの材質は限定されない。
【0013】
一方、前記基礎1の立上り部2の外表面2aには第2の防水材9が設けられる。この第2の防水材9は、一例では防水性塗布剤からなり、前記基礎1の外表面2aのほぼ全体に一定の厚みで塗布される。基礎1の外表面2aを防水性塗布剤によって保護することで、基礎1の防水機能が高まるだけでなく、基礎1のクラック発生を有効に防止することもできる。この実施形態では、基礎1の外表面2aまで延びる第1の防水材8の下端部8aの上に防水性塗布剤を重ねて塗布し、第2の防水材9の上端部9aで第1の防水材8の下端部8aを被覆することで、両者の重なり部12が設けられる。この重なり部12は、第1の防水材8の下端部8aに第2の防水材9の上端部9aが密着した状態にある。また、両者は接着されている。なお、防水性塗布剤としては、防水性、耐候性、耐薬品性などに優れた能力を発揮し、施工性もよくて対象物の強度を高めるポリウレア樹脂が好ましい。
【0014】
このように、第1の防水材8の下端部8aと第2の防水材9の上端部9aとが互いに密着した状態で重なり合うことによって、基礎1の立上り部2の上端部2bと外壁パネル3の下端部3aとの間に形成される隙間6が塞がれる。その結果、大雨などによって床下高さまで水位11が上がったとしても床下空間10への浸水を確実に防ぐことができる。
【0015】
図2には本発明に係る建物の防水構造の第2実施形態が示されている。この実施形態における建物の防水構造は、前述した第1実施形態とほぼ同一の構成からなる。そのため、第1実施形態と同一の構成部材については、
図1における第1実施形態と同一の符号を付すことによって詳細な説明を省略する。
【0016】
この第2実施形態が前記第1実施形態と異なる主な点は、前記外壁パネル3と対向する側の下地材4の表面4aに設けられる第1の防水材18が防水性塗布剤からなり、前記基礎1の立上り部2の外表面2aに設けられる第2の防水材19が防水シートからなる点である。第1の防水材18となる防水性塗布剤は、前記第1実施形態における防水性塗布剤と同じ材料からなる。また、第2の防水材19となる防水シートは、第1実施形態における防水シートと同じ材料からなる。
【0017】
第2の実施形態では、横胴縁5に下地材4を取付けた後に、基礎1の立上り2部の外表面2aに第2の防水材19となる防水シートを接着剤などで貼り付ける。防水シートの上端19aは、基礎1の立上り部2の上端部2bと外壁パネル3の下端部3aとの間に形成される隙間6を跨いで下地材4の表面4aの下端部4bまで延びている。次に、下地材4の表面4aに第1の防水材となる防水性塗布剤をほぼ均一の厚みで塗布する。塗布する範囲は、第1の実施形態における防水シートの貼付範囲とほぼ同じである。下地材4の下端部4b付近では防水シートの上に防水性塗布剤を重ねて塗布し、両部材の重なり部分を設ける。
【0018】
このように、第2の防水材19の上端部19aに第1の防水材18の下端部18aを重ねて塗布することで、両者の重なり部20が密着した状態で設けられる。その結果、基礎1の立上り部2の上端部2bと外壁パネル3の下端部3aとの間に形成される隙間6が塞がれるため、第1実施形態と同様、大雨などによって床下高さまで水位11が上がったとしても床下空間10への浸水を確実に防ぐことができる。
【0019】
本発明に係る建物の防水構造では、第1の防水材及び第2の防水材が上述した実施形態の防水シート及び防水性塗布剤に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0020】
1 基礎
2 立上り部
2a 立上り部の外表面
2b 立上り部の上端部
3 外壁パネル
3a 外壁パネルの下端部
4 下地材
4a 下地材の表面
4b 下地材の下端部
5 横胴縁
6 隙間
7 水切
8 第1の防水材
8a 第1の防水材の下端部
9 第2の防水材
9a第2の防水材の上端部
10 床下空間
11 水位
12 重なり部
18 第1の防水材
18a 第1の防水材の下端部
19 第2の防水材
19a 第2の防水材の上端部
20 重なり部