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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】プレス機の運用システム
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/28 20060101AFI20240315BHJP
   B30B 15/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B30B15/28 A
B30B15/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020161631
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054530
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000144795
【氏名又は名称】株式会社山田ドビー
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 茂
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-135325(JP,A)
【文献】特開平08-300065(JP,A)
【文献】実開昭59-146730(JP,U)
【文献】特開平09-220697(JP,A)
【文献】特開2016-209886(JP,A)
【文献】特開2018-161841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/28
B30B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドに取り付けられる上型と、ボルスタに取り付けられる下型と、で構成される金型を含む、プレス機の運用システムであって、
加工に関連する情報が記憶される記憶部と、
前記ボルスタに配設され、前記金型の重量及び加工荷重を計測可能な計測部と、
加工の制御をする演算制御部と、
を備え、
前記記憶部は、
前記計測部で計測された計測値に関連する計測関連情報を記憶する計測関連情報記憶部と、
前記プレス機の仕様に関連する仕様関連情報を記憶する仕様関連情報記憶部と、
を備え、
前記計測関連情報は、前記計測部で計測された、前記金型の総重量の計測値と、前記下型の重量の計測値と、前記金型の総重量の計測値と前記下型の重量の計測値とに基づいて前記演算制御部により算出される算出上型重量値と、及び、推奨上型重量データと、を含み、
前記仕様関連情報は、前記上型の重量と、前記スライドのストローク長さ、前記スライドのストローク数を含み、
前記演算制御部は、
前記算出上型重量値と、前記推奨上型重量データと、前記仕様関連情報とに基づいて、前記算出上型重量値が前記プレス機の仕様範囲内であるか否かを判定し、前記算出上型重量値が仕様範囲内でない場合に、報知手段に報知させることを特徴とするプレス機の運用システム。
【請求項2】
さらに、前記計測関連情報は、前記計測部で計測された加工荷重値を含み、
前記演算制御部は、前記加工荷重値が、所定の範囲外となった場合には、前記報知手段に異常を報知させることを特徴とする請求項1記載のプレス機の運用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適正なプレス加工が可能なプレス機の運用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、少なくとも上型及び下型を備えており、両型の間に被プレス材を入れ、これを加圧成型するプレス機において、前記上型及び下型のうち少なくとも一方に圧力センサを設け、この圧力センサの受圧面が前記被プレス材に接するように配置したものが記載されている。
【0003】
これにより、実際に被プレス材に印加された圧力を検出することができ、高い精度で品質管理を行うことができることとなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平09-220697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プレス機に取り付けて、プレス加工を行う金型の上型の重量が、プレス機の加工能力(SPM等)に影響を及ぼすことが知られているが、プレス機に取り付けるときに、上型の重量を計測する方法が無く、オーバー重量で加工されることが見られる。
【0006】
しかし、上記のプレス装置では、プレス機に取り付けた時点で、上型の重量を計測することについては、何ら記載されていない。
【0007】
上記事情に鑑み、プレス機に取り付けた時点で、上型の重量を計測可能とし、適正なプレス加工を使用者に報知し、プレス機の、トラブル防止、寿命の向上を図ることができるプレス機の運用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明では、スライドに取り付けられる上型と、ボルスタに取り付けられる下型と、で構成される金型を含む、プレス機の運用システムであって、
加工に関連する情報が記憶される記憶部と、
前記ボルスタに配設され、前記金型の重量及び加工荷重を計測可能な計測部と、
加工の制御をする演算制御部と、
を備え、
前記記憶部は、
前記計測部で計測された計測値に関連する計測関連情報を記憶する計測関連情報記憶部と、
前記プレス機の仕様に関連する仕様関連情報を記憶する仕様関連情報記憶部と、
を備え、
前記計測関連情報は、前記計測部で計測された、前記金型の総重量の計測値と、前記下型の重量の計測値と、前記金型の総重量の計測値と前記下型の重量の計測値とに基づいて前記演算制御部により算出される算出上型重量値と、及び、推奨上型重量データと、を含み、
前記仕様関連情報は、前記上型の重量と、前記スライドのストローク長さ、前記スライドのストローク数を含み、
前記演算制御部は、
前記算出上型重量値と、前記推奨上型重量データと、前記仕様関連情報とに基づいて、前記算出上型重量値が前記プレス機の仕様範囲内であるか否かを判定し、前記算出上型重量値が仕様範囲内でない場合に、報知手段に報知させる。
【0009】
これによれば、金型をプレス機に取り付けるときに、上型の重量を計測可能としたうえで、算出上型重量値と、推奨上型重量データと、仕様関連情報とに基づいて、算出上型重量値がプレス機の仕様範囲内であるか否かを判定し、算出上型重量値が仕様範囲内でない場合に、報知手段により適正なプレス加工を使用者に報知して、プレス機の、トラブル防止、寿命の向上を図ることが可能となる。
【0010】
また、さらに、前記計測関連情報は、前記計測部で計測された加工荷重値を含み、
前記演算制御部は、前記加工荷重値が、所定の範囲外となった場合には、前記報知手段に異常を報知させる。
【0011】
これによれば、計測部を、金型の重量の計測に加えて、加工荷重値の計測に用いることで、荷重監視システムとしても運用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態のプレス機の運用システムのプレス機の正面図である。
図2】同実施形態の概略構成図である。
図3】運用手順を示すフローチャートである。
図4図3の続きのフローチャートである。
図5】推奨上型重量の判定の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明のプレス機の運用システムの一実施形態を図面に基づいて説明する。図1においては、図1紙面における上下を上下方向、図1紙面における左右を左右方向、図1紙面における手前方向を前、紙面奥方向を後ろとする。
【0014】
プレス機の運用システム1(運用システム1とする)は、図1、2に示すように、プレス機10と、パーソナルコンピュータ30と、を備える。
【0015】
プレス機10は、図1に示すように、クラウン11a、コラム11b、ベッド11cに分割されたフレーム11と、クラウン11a内に回転可能に支持された図示しないクランクシャフトと、図示しないクランクシャフトに連結されてコラム11b内に上下往復運動可能に配置されるスライド13と、を備えている。
【0016】
ベッド11cの上面には、スライド13と対向するようにボルスタ17が配置されている。
【0017】
金型18は、上型18aと下型18bで構成されている。スライド13の下面には、上型18aが取り付けられ、ボルスタ17の上面には、下型18bが取り付けられる。
【0018】
さらに、プレス機10は、図2に示すように、演算制御部22、記憶部23、通信部24、操作表示部25、計測部26、を備えている。
【0019】
演算制御部22は、CPU、RAM、ROM等から構成されている。記憶部23は、半導体メモリ、ハードディスク装置、コンパクト・ディスク装置等から構成されている。通信部24は、通信回線を介してパーソナルコンピュータ30と通信を行うためのものである。操作表示部25は、タッチパッド機能を有した液晶ディスプレイ等から構成されている。計測部26は、既存の歪みゲージが用いられ、ボルスタ17の上面に埋設され、プレス機20に配された金型18の重量、加工荷重等を計測し、計測値をパーソナルコンピュータ30に送信可能とされている。
【0020】
パーソナルコンピュータ30は、演算制御部32、記憶部33、及び、通信部34、を備えている。
【0021】
演算制御部32は、CPU、RAM、ROM等から構成されている。記憶部33は、半導体メモリ、ハードディスク装置、コンパクト・ディスク装置等から構成されている。通信部34は、通信回線を介してプレス機10と通信を行うためのものである。
【0022】
記憶部23に記憶される情報としては、仕様関連情報がある。仕様関連情報は、上型18aの重量と、金型番号、スライド13のストローク長さ、スライド13のストローク数(Max.SPM)、ダイハイト、等が挙げられる。
【0023】
本実施形態では、仕様関連情報を記憶する記憶部23の領域が、仕様関連情報記憶部とされる。
【0024】
記憶部33に記憶される情報としては、計測関連情報、加工関連情報がある。
【0025】
計測関連情報は、計測部26で計測された、金型18の総重量の計測値と、下型18bの重量の計測値と、金型18の総重量の計測値と下型18bの重量の計測値とに基づいて演算制御部32により算出される算出上型重量値と、加工荷重値と、下型重量+クランプ力の計測値と、及び、推奨上型重量データ、が挙げられる。
【0026】
推奨上型重量データについて詳説すると、図5では、横軸にストローク数(SPM)をとり、縦軸に上型重量(kg)をとり、矢印で示される、30mmST、15mmSTの線分が、仕様範囲内か否かの境界を示している(左側が仕様範囲内、右側が仕様範囲外とされる)。
【0027】
例えば、図5において、30mmSTの場合、上型重量が100kgであるならば、ストローク数(SPM)が、800SPMであれば、推奨されるストローク数(SPM)であるので仕様範囲内であり、1000SPMであれば、推奨されるストローク数(SPM)ではないので仕様範囲外となる。
【0028】
加工関連情報は、基準荷重値、オーバーロードレベル値(%)となる加工荷重の値、等が挙げられる。
【0029】
本実施形態では、計測関連情報を記憶する記憶部33の領域が、計測関連情報記憶部とされる。
【0030】
次に、運用システム1の動作を、図3、4に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0031】
まず、使用者が、手作業で、ボルスタ17に配される図示しないダイリフターを上昇させ、金型18をプレス機10のボルスタ17上に載せ、金型18のセット位置にて、ダイリフターを下降させる(S10)。
【0032】
そして、運用システム1は、計測部26(歪みゲージ)で、金型18の総重量を自動計測し、操作表示部25(操作画面)に重量計測中のメッセージを表示する(S11)。このとき、金型18の総重量の計測値が、記憶部33に記憶される。
【0033】
再度、使用者が、手作業で、操作表示部25(操作画面)において、ダイハイト等の自動設定を開始し(記憶部23に仕様関連情報を入力し)、スライド13下面にて上型18aをクランプ固定し、スライド13を上死点に移動させる(S12)。
【0034】
そして、運用システム1は、計測部26(歪みゲージ)で、下型18bの重量を自動計測し、記憶部33に下型18bの重量の計測値を記憶し、操作表示部25(操作画面)に重量計測中のメッセージを表示する(S13)。このとき、下型18bの重量の計測値と、金型18の総重量の計測値と下型18bの重量の計測値との差が、算出上型重量値として、記憶部33に記憶される(S13-1)。
【0035】
さらに、使用者が、手作業で、スライド13を低速で2~3回上下動させて、下型18bの位置だしをし、スライド13を下死点に移動させ、下型18bをボルスタ17にクランプ固定する(S14)。
【0036】
運用システム1は、下型重量+クランプ力を計測し、計測値を記憶部33記憶し、下型重量+クランプ力の重量から増加する分を加工荷重とする(S15)。
【0037】
そして、運用システム1は、推奨上型重量データを出力し、自動設定値(記憶部23に入力した仕様関連情報)と、推奨上型重量データとで、Max.SPMの判定結果は、仕様範囲内か、を判断する(S16、図5参照)。
【0038】
仕様範囲内でなければ(S16でNo)、運用システム1は、Max.SPM修正の警報メッセージを操作表示部25(操作画面)に表示し、仕様範囲外のSPMでの運転禁止処理を行う(S17)。そして、使用者が手作業で、自動設定画面にて、Max.SPMを仕様範囲内に修正し(S18)、S16に戻る。
【0039】
仕様範囲内であれば(S16でYes)、運用システム1は、仕様範囲内Max.SPMの値を記憶部23に記憶する(S19)。
【0040】
そして、運用システム1は、プレス生産を開始し、実荷重(加工荷重)を計測部26(歪みゲージ)で測定する(S20)。
【0041】
運用システム1は、実荷重測定の結果が、オーバーロードレベル値を超えていないか、を判断する(S21)。
【0042】
運用システム1は、オーバーロードレベル値を、超えていなければ(S21でYes)、S20に戻り、超えていれば(S21でNo)プレス機10を上死点停止させ、操作表示部25(操作画面)にオーバーロードのメッセージを表示する(S22)。なお、オーバーロードが発生したときの実荷重(加工荷重)の計測値は、記憶部23に記憶され、トラブルシューティングに役立てることにする。
【0043】
上記構成の運用システム1では、スライド12に取り付けられる上型18aと、ボルスタ17に取り付けられる下型18bと、で構成される金型18を含む、プレス機の運用システムであって、
加工に関連する情報が記憶される記憶部23、33と、
ボルスタ17に配設され、金型18の重量及び加工荷重を計測可能な計測部26(歪みゲージ)と、
加工の制御をする演算制御部22、32と、
を備え、
記憶部23、33は、
計測部26で計測された計測値に関連する計測関連情報を記憶する計測関連情報記憶部と、
プレス機10の仕様に関連する仕様関連情報を記憶する仕様関連情報記憶部と、
を備え、
計測関連情報は、計測部26で計測された、金型18の総重量の計測値と、下型18bの重量の計測値と、金型18の総重量の計測値と下型18bの重量の計測値とに基づいて演算制御部32により算出される算出上型重量値と、及び、推奨上型重量データと、を含み、
仕様関連情報は、上型18aの重量と、スライド13のストローク長さ、スライド13のストローク数を含み、
演算制御部22、32は、
算出上型重量値と、推奨上型重量データと、仕様関連情報とに基づいて、算出上型重量値がプレス機10の仕様範囲内であるか否かを判定し、算出上型重量値が仕様範囲内でない場合に、報知手段としての操作表示部25に報知させる。
【0044】
これによれば、金型18をプレス機10に取り付けるときに、上型18aの重量を計測可能としたうえで、算出上型重量値と、推奨上型重量データと、仕様関連情報とに基づいて、算出上型重量値がプレス機10の仕様範囲内であるか否かを判定し、算出上型重量値が仕様範囲内でない場合に、報知手段としての操作表示部25により適正なプレス加工を使用者に報知して、プレス機10の、トラブル防止、寿命の向上を図ることが可能となる。
【0045】
また、さらに、計測関連情報は、計測部26で計測された加工荷重値を含み、
演算制御部22、32は、加工荷重値が、所定の範囲外となった場合には、報知手段としての操作表示部25に異常を報知させる。
【0046】
これによれば、計測部26を、金型18の重量の計測に加えて、加工荷重値の計測に用いることで、荷重監視システムとしても運用することができる。
【0047】
なお、本発明は上記構成に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない限り各種の設計変更等が可能である。
【0048】
例えば、運用システム1は、プレス機10と、パーソナルコンピュータ30と、で構成したが、プレス機10にパーソナルコンピュータ30の機能を持たせて、プレス機10を単独で構成することができる。また、プレス機10を多数で構成する場合には、さらに、上位コンピュータを用いて、集中管理することも可能である。
【0049】
また、計測部26は、歪みゲージを用いたが、金型18の重量、加工荷重の値を計測できるのであれば、既存の他の計測機器を用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 運用システム
10 プレス機
13 スライド
17 ボルスタ
18 金型
18a 上型
18b 下型
22 演算制御部
23 記憶部
25 操作表示部
26 計測部
32 演算制御部
33 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5