(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】外科用パッドおよびその入手方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/36 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
A61F13/36
(21)【出願番号】P 2020513585
(86)(22)【出願日】2018-02-05
(86)【国際出願番号】 TR2018050040
(87)【国際公開番号】W WO2019151961
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-11-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】512081166
【氏名又は名称】イェディテペ・ウニヴェルシテシ
【氏名又は名称原語表記】YEDITEPE UNIVERSITESI
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ヤシャルギル マームト ガジ
(72)【発明者】
【氏名】ヤシャルギル ディアンヌ キャスリン ヘレナ
(72)【発明者】
【氏名】アタレイ バシャール
【合議体】
【審判長】山崎 勝司
【審判官】金丸 治之
【審判官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202168858(CN,U)
【文献】国際公開第2012/066932(WO,A1)
【文献】特表2015-532174(JP,A)
【文献】中国実用新案第201912332(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0112585(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々、外科手術、特に脳および脊髄手術で使用するための角張った形状を有する
、複数の外科用パッド(10)を含む、外科用パッド束(20)を得る方法であって、
各外科用パッド(10)に関して、
-上層(112)および下層(111)を形成するために圧縮綿をその長さに沿って手で折り畳み、そしてそれらを所定の長さに切断するステップと、
-放射線不透過性中間層(113)を形成するために上層(112)と下層(111)との間にX線検出可能材料を配置するステップと、
-最終形状を取得するために前記圧縮綿の少なくとも1つの縁部(15)で切断
することにより、角張った形状を有する頭部(11)を得るステップと、
-
得られた頭部(11)に綿糸を縫い付け
てこれにより頭部(11)のX線検出可能材料でマークされる尾部(12)を形成するステップと、
を含み、
得られた頭部(11)および尾部(12)を有する外科用パッド(10)を複数用いて、各外科用パッド(10)のそれぞれの尾部(12)を、少なくとも1つの接続点(14)を介して接続することにより、外科用パッド束(20)が得られるステップ、
を含む、ことを特徴とする外科用パッド束(20)を得る方法。
【請求項2】
各々、外科手術、特に脳および脊髄手術で使用するための角張っていない形状を有する
、外科用パッド(10)を含む、外科用パッド束(20)を得る方法であって、
各外科用パッド(10)に関して、
-親水性綿を所望のパッドサイズで幾何的形状に手で形成するステップと、
-放射線不透過性中間層(113)を形成するためにX線検出可能材料を前記親水性綿内に配置するステップと、
-前記X線検出可能材料の周りを前記親水性綿で包み、端部(16)を縫い付け、そして上層(112)および下層(111)を有するディスクに形成するステップと、
-前記親水性綿がその最終形状を獲得するように、前記親水性綿の周囲を超える部分を切断することにより、角張っていない形状を有する頭部(11)を得るステップと、
-
得られた頭部(11)に綿糸を縫い付け
てこれにより頭部(11)のX線検出可能材料でマークされる尾部(12)を形成
するステップと、を含み、
得られた頭部(11)および尾部(12)を有する外科用パッド(10)を複数用いて、各外科用パッド(10)のそれぞれの尾部(12)を、少なくとも1つの接続点(14)を介し
て接続することにより、外科用パッド束(20)が得られるステッ
プ、
を含む、ことを特徴とする外科用パッド束(20)を得る方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳および脊髄手術などの顕微手術活動で特に使用される外科用パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、外科手術、特に脳および脊髄の外科手術では、血液、リンパ液、脳脊髄液などの体液を吸収するためにパッドが使用される。これらの手術で使用されるパッドは、サイズが小さいという要件に加えて、手術中に放射線学的に検出されるために、X線を反射する、つまり放射線不透過性であるべきである。さらに、組織に接触するパッドの部分に付着物があってはならない。
【0003】
最先端の特許文献1は、両面が液体を吸収できる柔軟な発泡ポリマーで両面がコーティングされた多孔性布でできている外科用スポンジを開示する。スポンジは、X線検出可能材料を含む。
【0004】
別の特許文献2は、手術中にパッド表面のいかなる残留物も部位に留まるのを防ぐ樹脂でコーティングされ、互いに上に層をなす複数の吸収力のある繊維構造を含み、X線不透過性物質を含む層を有する、外科用パッドを開示する。
【0005】
別の特許文献3は、X線検出可能材料を含む外科用タオルを開示する。外科用タオルは、X線検出可能材料を有する織物のシートでできている。X線検出可能材料は、縫製されているか、さもなければ布に取り付けられている。タオルがX線検出可能材料を含むことを示すために、縁が異なる色の糸で縫われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第3911922号
【文献】欧州特許出願公開第2641560A号
【文献】米国特許出願第2005109347号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、脳および脊髄手術などの顕微手術での使用に適したサイズで、かつ身体組織に付着しない外科用パッド、および外科用パッド取得方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、外科手術、特に脳および脊髄手術で使用するためのX線検出可能材料を含む中間層を含む頭部を有する外科用パッドである。外科用パッドにおいて、中間層が層間に設けられ、層は、綿100%から作られ、手で形成された幾何的形状を有する。したがって、顕微手術活動のために望ましい小さいサイズであり、かつ身体組織にくっつかない放射線不透過性外科用パッドが提供される。
【0009】
本発明の可能な実施形態では、頭部は、圧縮綿または親水性綿材料から作られる。このようにして、身体組織にくっつかない頭部が得られる。
【0010】
本発明の別の可能な実施形態では、頭部は、正方形、長方形または円形の幾何的形状を有する。したがって、異なる幾何的形状の外科用パッドが顕微手術活動用に提供される。
【0011】
本発明の別の可能な実施形態は、頭部に接続された尾部を含む。したがって、手術用パッドに尾部が提供される。
【0012】
本発明の別の可能な実施形態では、尾部は、X線検出可能材料でマークされるように頭部に縫い付けられる。したがって、外科用パッドは、放射線不透過性の縫い付けでマークされる。
【0013】
本発明の別の可能な実施形態では、尾部は綿材料から作られた糸である。このように、尾部は体組織にくっつかない材料で作られる。
【0014】
本発明の別の可能な実施形態では、複数の外科用パッドの尾部を接続することにより、外科用パッド束が形成される。したがって、パッケージングのために、互いに接続された複数の外科用パッドを含む外科用パッド束が得られる。
【0015】
本発明の可能な実施形態では、X線検出可能材料は、酸化バリウムまたはイオンを含むインジケータである。
【0016】
前記目的を達成するために、本発明は、外科手術、特に脳および脊髄手術で使用するための角張った形状を有する外科用パッドを得る方法である。外科用パッドを得る方法は、上層および下層を形成するために圧縮綿をその長さに沿って手で折り畳み、そしてそれらを所定の長さに切断するステップと、放射線不透過性中間層を形成するために上層と下層との間にX線検出可能材料を配置するステップと、最終形状を取得するために前記圧縮綿の少なくとも1つの縁部で切断し、そして頭部を得るステップと、頭部がX線検出可能材料でマークされるように頭部に綿糸を縫い付け、したがって尾部を形成するステップと、を含む。したがって、外科用パッドを手で得る方法が導入される。
【0017】
本発明の代替実施形態では、外科用パッドの頭部の下層および上層は、綿材料から作られたミルクフィルタであり得る。本発明の別の代替実施形態では、外科用パッドは、角張っているかまたは角張っていない異なる幾何的形状で得ることができる。
【0018】
本発明の別の代替実施形態では、外科用パッド束は、包装のために複数の外科用パッドの尾部を接続することにより得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、円形の頭部を有する外科用パッドを示す図である。
【
図2】
図2は、包装用の円形の頭部を有する外科用パッドを含む外科用パッド束を示す図である。
【
図3】
図3は、長方形の頭部を有する外科用パッドを示す図である。
【
図4】
図4は、包装用の長方形の頭部を有する外科用パッドを含む外科用パッド束を示す図である。
【
図5】
図5は、外科用パッドの頭部を形成する層を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この詳細な説明において、外科用パッド(10)および前記外科用パッド(10)を得るための方法は、いかなる限定効果も生じることなく本発明のより良い理解を促すためにのみ提供される例によって説明される。
【0021】
脳や脊髄の手術などの顕微手術で体液を吸収するために使用される外科用パッド(10)は、基本的に頭部(11)および尾部(12)で構成される。頭部(11)は、外科用パッド(10)が体液を吸収できるようにする材料で作られる。尾部(12)の一端は、縫合部(13)からの縫合により頭部(11)に接続されている。尾部(12)の他端はフリーである。
【0022】
図5を参照すると、頭部(11)は、下層(111)と、下層(111)に対応する上層(112)とを含む。上層(112)および下層(111)は綿100%から作られて、手作業で形成された幾何的形状を有する。より詳細には、上記の100%綿素材は、圧縮綿または親水性綿である。可能な実施形態では、頭部(11)は、正方形、長方形、または円形の形状を有してよい。X線検出可能材料を含む中間層(113)が前記下層(111)と上層(112)との間に提供される。可能な実施形態では、X線検出可能材料は、酸化バリウムまたはイオンを含むインジケータである。
【0023】
図3に示される長方形の頭部(11)を有する外科用パッド(10)は、以下の方法により得られる。まず、上層(112)および下層(111)を作るために、圧縮された綿をその長さに沿って手で折り畳む。次に、カッターを使用して、圧縮された綿を折り畳まれた部分から所定の長さに切断する。したがって、下層(111)および上層(112)は、それらが一致する幾何的形状を有するように提供される。中間層(113)は、前記上層(112)と下層(111)との間にX線検出可能材料を配置することにより形成される。圧縮された綿の少なくとも1つの縁部(15)が最終形状を得るために切断され、したがって頭部(11)が得られる。綿糸が頭部(11)に縫い付けられ、X線検出可能材料でマークされ、このようにして、尾部(12)および頭部(11)が互いに接続される。したがって、長方形の外科用パッド(10)が得られる。
図4を参照すると、最終手順として、複数の外科用パッド(10)が少なくとも1つの接続点(14)を介して接続され、それにより外科用パッド束(20)が提供される。前記外科用パッド束(20)は、ブドウ束と同様の外観を有する。外科用パッド束(20)における外科用パッド(10)の頭部(11)は、互いに少なくとも部分的に接触し、互いに隣接するように配置される。可能な実施形態では、外科用パッド束(20)は、少なくとも5つの外科用パッド(10)を互いに接続することにより提供される。前記頭部(11)は、正方形および長方形などの任意の角度の幾何的形状を有することができる。
【0024】
図1に示される円形の頭部(11)を有する外科用パッド(10)は、以下の方法により得られる。まず、親水性綿を手作業で所望のパッドサイズで幾何的形状に成形する。X線検出可能材料が親水性綿の上に置かれ、中間層(113)を形成する。前記親水性綿は、頭部(11)の下層(111)および上層(112)を形成する。親水性綿がX線検出可能材料の周りに巻き付けられると、X線検出可能材料は上層(112)と下層(111)との間に配置される。そして、開いている頭部(11)の端部(16)を縫い合わせると、下層(111)と上層(112)とが接続される。このようにして、頭部(11)は、上層(112)および下層(111)を有するディスクに形成される。前記端部(16)は、親水性綿の周縁の少なくとも一部に設けられる。頭部(11)は、親水性綿がその最終形状を獲得するように、親水性綿の周囲を超える部分が切断されるときに得られる。頭部(11)がX線検出可能材料でマークされ、したがって外科用パッド(10)の尾部(12)および頭部(11)が互いに接続されるように、綿糸が頭部(11)に縫い付けられる。したがって、円形の外科用パッド(10)が得られる。
図2を参照すると、最終手順として、複数の外科用パッド(10)が少なくとも1つの接続点(14)を介して接続され、それにより外科用パッド束(20)が提供される。前記外科用パッド束(20)は、ブドウ束と同様の外観を有する。外科用パッド束(20)における外科用パッド(10)の頭部(11)は、互いに少なくとも部分的に接触し、互いに隣接するように配置される。可能な実施形態では、外科用パッド束(20)は、少なくとも5つの外科用パッド(10)を互いに接続することにより提供される。前記頭部(11)は、円などの角のない任意の幾何的形状を有することができる。上記の方法のいずれかによって得られた外科用パッド(10)および外科用パッド束(20)は、滅菌され、それにより外科手術での使用に適した外科用パッド(10)が得られる。
【符号の説明】
【0025】
10…外科用パッド
11…頭部
111…下層
112…上層
113…中間層
12…尾部
13…縫合部
14…接続点
15…縁部
16…端部
20…外科用パッド束