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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】レールクランプ式クレーン装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 29/06 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
E01B29/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021186577
(22)【出願日】2021-11-16
(65)【公開番号】P2023073855
(43)【公開日】2023-05-26
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】391030125
【氏名又は名称】保線機器整備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】細川 誠二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀幸
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-059182(JP,A)
【文献】特開平10-226490(JP,A)
【文献】特開平10-035435(JP,A)
【文献】特開2000-327260(JP,A)
【文献】登録実用新案第3194672(JP,U)
【文献】特開2018-148735(JP,A)
【文献】実開昭60-003155(JP,U)
【文献】米国特許第05305692(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 29/06
B60P 3/28
B66C 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り荷を引掛けて移動させるクレーン部と、
前記クレーン部の下部に設けられ、前記クレーン部を支持するクレーン支持部と、
前記クレーン支持部に設けられ、線路上の一本のレールをクランプするレールクランプ部と、
前記クレーン支持部に設けられ、クランプしたレールの横に接地するアウトリガー部とを備え
前記レールクランプ部は、
前記クレーン部の下部にクランプ回動軸を介して回動可能に設けられた一対のクランプ体で構成され、
その一対のクランプ体は、
前記クランプ回動軸を中心に回動してレールの腹部に当接するレール当接部と、作業員が掴む把持部とを有すると共に、前記一対のクランプ体には、それぞれ、レールをクランプした状態を固定する固定ピンが挿入されるレールクランプ状態保持ピン挿入孔が設けられていることを特徴とするレールクランプ式クレーン装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレールクランプ式クレーン装置において、
前記クレーン支持部には、線路上の一本のレール上を走行する前輪および後輪が設けられていることを特徴とするレールクランプ式クレーン装置。
【請求項3】
請求項に記載のレールクランプ式クレーン装置において、
前記レールクランプ部は、前記クレーン支持部において前記前輪の前側および前記後輪よりも後側に設けられていることを特徴とするレールクランプ式クレーン装置。
【請求項4】
請求項1~請求項のいずれか一の請求項に記載のレールクランプ式クレーン装置において、
前記アウトリガー部は、
前記クレーン支持部に基端部が固定され、水平方向に伸縮するアウトリガー水平伸縮部と、
前記アウトリガー水平伸縮部の先端部に固定され、昇降ハンドルの回転によって鉛直方向に伸縮するアウトリガー鉛直伸縮部とを有することを特徴とするレールクランプ式クレーン装置。
【請求項5】
吊り荷を引掛けて移動させるクレーン部と、
前記クレーン部の下部に設けられ、前記クレーン部を支持するクレーン支持部と、
前記クレーン支持部に設けられ、線路上の一本のレールをクランプするレールクランプ部と、
前記クレーン支持部に設けられ、クランプしたレールの横に接地するアウトリガー部とを備え、
前記アウトリガー部は、
前記クレーン支持部に基端部が固定され、水平方向に伸縮するアウトリガー水平伸縮部と、
前記アウトリガー水平伸縮部の先端部に固定され、昇降ハンドルの回転によって鉛直方向に伸縮するアウトリガー鉛直伸縮部とを有し、
前記アウトリガー水平伸縮部は、
前記クレーン支持部に取付けられた貫通孔を有する筒状の水平方向筒部と、
前記水平方向筒部の中を水平方向にスライドして伸縮する水平方向スライド部とを備え、前記水平方向筒部および水平方向スライド部それぞれには複数のピン孔が設けられ、これらの複数のピン孔をズラして位置合わせして固定ピンを挿入することにより、水平方向の長さを調整できるように構成されていることを特徴とするレールクランプ式クレーン装置。
【請求項6】
請求項に記載のレールクランプ式クレーン装置において、
2つの前記水平方向筒部が前記クレーン支持部の前後にズラしてそれぞれの貫通孔の貫通方向が前記クレーン支持部の横方向を向くように設けられており、前後にズラした前記各水平方向筒部から左右逆方向に前記水平方向スライド部が伸縮するように構成されていることを特徴とするレールクランプ式クレーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道のレールをクランプして使用するレールクランプ式クレーン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりレール周辺の枕木等を移動する場合、人力では人員と労力の必要があり、通常はクレーンを使用するため、道路およびレール上を走行可能な軌陸両用クレーン車等が提案されている(例えば、特許文献1等参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平1-231798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような軌陸両用クレーン車は、4つのタイヤを降下させてエンジンにより道路上を走行するだけでなく、4つの車輪を降下させてエンジンにより2本のレール上を走行するように構成されているため、非常に大型であり、移動させる吊り荷によっては大型過ぎるという問題がある。
【0005】
また、このような軌陸両用クレーン車では、荷重に対する反力を確保して安定を図るためにアウトリガーを使用するが、レール脇のスペースが住宅街を通る線路の場合、アウトリガーを使用できないと共に、エンジンの騒音によっても使用し難いという問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、レールに直接設置して使用することができるレールクランプ式クレーン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係るレールクランプ式クレーン装置は、吊り荷を引掛けて移動させるクレーン部と、前記クレーン部の下部に設けられ、前記クレーン部を支持するクレーン支持部と、前記クレーン支持部に設けられ、線路上の一本のレールをクランプするレールクランプ部と、前記クレーン支持部に設けられ、クランプしたレールの横に接地するアウトリガー部とを備え、前記レールクランプ部は、前記クレーン部の下部にクランプ回動軸を介して回動可能に設けられた一対のクランプ体で構成され、その一対のクランプ体は、前記クランプ回動軸を中心に回動してレールの腹部に当接するレール当接部と、作業員が掴む把持部とを有すると共に、前記一対のクランプ体には、それぞれ、レールをクランプした状態を固定する固定ピンが挿入されるレールクランプ状態保持ピン挿入孔が設けられていることを特徴とする。
また、本発明に係るレールクランプ式クレーン装置では、前記クレーン支持部には、線路上の一本のレール上を走行する前輪および後輪が設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係るレールクランプ式クレーン装置では、前記レールクランプ部は、前記クレーン支持部において前記前輪の前側および前記後輪よりも後側に設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係るレールクランプ式クレーン装置では、前記クレーン支持部に基端部が固定され、水平方向に伸縮するアウトリガー水平伸縮部と、前記アウトリガー水平伸縮部の先端部に固定され、昇降ハンドルの回転によって鉛直方向に伸縮するアウトリガー鉛直伸縮部とを有することも特徴とする。
また、本発明に係るレールクランプ式クレーン装置では、吊り荷を引掛けて移動させるクレーン部と、前記クレーン部の下部に設けられ、前記クレーン部を支持するクレーン支持部と、前記クレーン支持部に設けられ、線路上の一本のレールをクランプするレールクランプ部と、前記クレーン支持部に設けられ、クランプしたレールの横に接地するアウトリガー部とを備え、前記アウトリガー部は、前記クレーン支持部に基端部が固定され、水平方向に伸縮するアウトリガー水平伸縮部と、前記アウトリガー水平伸縮部の先端部に固定され、昇降ハンドルの回転によって鉛直方向に伸縮するアウトリガー鉛直伸縮部とを有し、前記アウトリガー水平伸縮部は、前記クレーン支持部に取付けられた貫通孔を有する筒状の水平方向筒部と、前記水平方向筒部の中を水平方向にスライドして伸縮する水平方向スライド部とを備え、前記水平方向筒部および水平方向スライド部それぞれには複数のピン孔が設けられ、これらの複数のピン孔をズラして位置合わせして固定ピンを挿入することにより、水平方向の長さを調整できるように構成されていることも特徴とする。
また、本発明に係るレールクランプ式クレーン装置では、2つの前記水平方向筒部が前記クレーン支持部の前後にズラしてそれぞれの貫通孔の貫通方向が前記クレーン支持部の横方向を向くように設けられており、前後にズラした前記各水平方向筒部から左右逆方向に前記水平方向スライド部が伸縮するように構成されていることも特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、吊り荷を引掛けて移動させるクレーン部と、クレーン部の下部に設けられ、線路上の一本のレール上を走行する車輪が設けられたクレーン支持部と、クレーン支持部に設けられ、線路上の一本のレールをクランプするレールクランプ部と、クレーン支持部の左右両側に設けられ、上下方向に収縮して路盤に接地するアウトリガー部とを備えるため、狭い場所や傾斜した場所でも1本のレールに直接設置して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る実施形態のレールクランプ式クレーン装置の側面図である。
図2】本発明に係る実施形態のレールクランプ式クレーン装置(チェーンブロックは省略。)の正面図である。
図3】本発明に係る実施形態のレールクランプ式クレーン装置(チェーンブロックは省略。)の平面図である。
図4】本発明に係る実施形態のレールクランプ式クレーン装置のレール走行状態を示す図である。
図5】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態のレールクランプ式クレーン装置においてレールクランプ部でレールを解放しているレール解放(レールアンロック)状態を示す説明図、レール解放(レールアンロック)状態から固定ピンを抜いてクランプ体をフリーにした状態を示す説明図である。
図6】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態のレールクランプ式クレーン装置においてレールクランプ部を構成する一対のクランプ体を閉じて固定ピンを挿入する状態を示す説明図、レールクランプ部を構成する一対のクランプ体でレールの頭部をロックして固定ピンを挿入したす状態を示す説明図、
図7】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態のレールクランプ式クレーン装置のアウトリガー部においてアウトリガー水平伸縮部を伸長した状態を示す説明図、アウトリガー水平伸縮部を収縮した状態を示す説明図である。
図8】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態のレールクランプ式クレーン装置のアウトリガー部においてアウトリガー水平伸縮部を伸長させてアウトリガー鉛直伸縮部の接地部を延ばして路盤に突き当てた状態を示す説明図、アウトリガー水平伸縮部を収縮させてアウトリガー鉛直伸縮部の接地部を延ばして路盤に突き当てた状態を示す説明図である。
図9】本発明に係る実施形態のレールクランプ式クレーン装置を停止させてレールクランプ部によってレールにロックし、かつ、アウトリガー部のアウトリガー鉛直伸縮部の接地部を延ばして路盤に突き当てた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態のレールクランプ式クレーン装置1を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、下記に説明する実施形態は、あくまで本発明の一例であり、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0011】
<実施形態のレールクランプ式クレーン装置1の構成>
実施形態のレールクランプ式クレーン装置1は、図1図3に示すように、クレーン部11と、クレーン部11の下部に設けられ、線路上の一本のレール上を走行する車輪が設けられたクレーン支持部12と、クレーン支持部12に設けられ、線路上の一本のレールをクランプするレールクランプ部13と、クレーン支持部12の左右両側に設けられ、上下方向に収縮して路盤に接地するアウトリガー部14とを備える。
【0012】
(クレーン部11)
クレーン部11は、先端にフック11a1が設けられたチェーン11a2を昇降させるチェーンブロック11aと、チェーンブロック11aが先端部に設けられ末端伸縮ブーム11b1および基端伸縮ブーム11b2等の複数段のブームによって伸縮する伸縮ブーム11bと、伸縮ブーム11bの基端部を回動可能に支持し、基端部がクレーン支持部12に対し旋回可能に設けられた旋回ブーム11cと、旋回ブーム11cの基端部(下端部)を水平方向に360度旋回可能に支持する旋回ブーム支持体12a11と、末端伸縮ブーム11b1の長手方向の中間点と旋回ブーム11cの長手方向の中間点との基端部間を連結するように設けられ、伸縮ブーム11bを支持するように伸縮するジャッキ11e等を備えて構成される。
【0013】
チェーンブロック11aには、チェーンブロック用車輪(図示せず。)が設けられており、伸縮ブーム11bの末端伸縮ブーム11b1の上面に設けられたレール(図示せず。)上を走行できるように構成されている。
【0014】
なお、チェーンブロック11aにおけるフック11a1およびチェーン11a2の昇降や、伸縮ブーム11bにおける末端伸縮ブーム11b1の伸縮および基端伸縮ブーム11b2の旋回、ジャッキ11eの伸縮は、従来の周知の方法によって作業員が手動で行う。
【0015】
(クレーン支持部12)
クレーン支持部12は、クレーン部11の旋回ブーム支持体12a11が上面に固定されたクレーン支持部本体12aの前後に、軌道であるレールR上を走行する前輪12bおよび後輪12cが設けられて構成されている。尚、クレーン支持部12によりレールR上の走行も、作業員が手動で実施形態のレールクランプ式クレーン装置1を押すことにより行う。
【0016】
(レールクランプ部13)
レールクランプ部13は、クレーン支持部本体12aの前後端、つまり前輪12bの前側および後輪12cの後側に設けられて、クレーン部11で作業を行う際にクレーン支持部12をレールRに固定するもので、後述する図5(a),(b)および図6(a),(b)に示すようにクレーン支持部本体12aの前後端にそれぞれクランプ回動軸13cを介して回動可能に設けた一対のクランプ体13a,13bで構成されている。
【0017】
一対のクランプ体13a,13bは、それぞれ、クランプ回動軸13cで回動可能に連結されており、クランプ回動軸13cを中心に回動してレールの腹部に当接するレール当接部13a1,13b1と、作業員が掴む把持部13a2,13b2とを有すると共に、レールRをクランプしないレール解放状態を保持するようにクランプ体固定ピン13dが挿入されるレール解放状態保持ピン挿入孔13a3,13b3と、レールRをクランプした際にクランプ体固定ピン13dが挿入されるレールクランプ状態保持ピン挿入孔13a4,13b4等を設けている。
【0018】
(アウトリガー部14)
アウトリガー部14は、図1図3に示すようにクレーン支持部12の左右両側に1基ずつ伸縮できるようにクレーン支持部本体12aの旋回ブーム支持体12a11の前後にずらして設けたもので、後述する図7(a),(b)および図8(a),(b)に示すようクレーン支持部本体12a1の旋回ブーム支持体12a11に取付けられ水平方向に伸縮するアウトリガー水平伸縮部14aと、アウトリガー水平伸縮部14aの先端部に固定され、昇降ハンドル14b2の回転によって鉛直方向に伸縮するアウトリガー鉛直伸縮部14bとを有する。
【0019】
アウトリガー水平伸縮部14a,14aは、それぞれ、クレーン支持部本体12aの旋回ブーム支持体12a11の前後に取付けた中空の水平方向筒部14a1,14a1と、水平方向筒部14a1,14a1の中を水平方向にスライドして伸縮する水平方向スライド部14a2,14a2とを備えており、水平方向筒部14a1,14a1および水平方向スライド部14a2それぞれに設けられた複数のピン孔14a11,14a21を位置合わせしてアウトリガー水平伸縮固定ピン14cを挿入することにより、図7(a),(b)に示すように水平方向の長さを調整できるように構成されている。
【0020】
また、水平方向筒部14a1は、中空で貫通しており、左右いずれの方向にも水平方向スライド部14a2を突出させることができるため、作業現場に応じて、図3に示す状態とは逆に、図3上、前輪12b側のアウトリガー部14では、その水平方向筒部14a1から右側(図3上、上側)に水平方向スライド部14a2を突出させる一方、図3上、後輪12c側のアウトリガー部14では、その水平方向筒部14a1から左側(図3上、下側。)に水平方向スライド部14a2を突出させることも出来る。
【0021】
アウトリガー鉛直伸縮部14bは、アウトリガー水平伸縮部14aの水平方向スライド部14a2先端部に設けられるもので、昇降ハンドル14b2の回転によって鉛直方向に伸縮する周知のスクリュージャッキである。
【0022】
つまり、アウトリガー鉛直伸縮部14bは、円筒状のジャッキ本体(ラムガイド)14b1と、ジャッキ本体(ラムガイド)14b1に設けられ作業者の操作によって回転する昇降ハンドル14b2と、昇降ハンドル14b2の回転によってジャッキ本体14b1に対し伸縮する伸縮部(ラム)14b3と、伸縮部(ラム)14b3下端部に設けられた接地部14b4等から構成されている。
【0023】
<実施形態のレールクランプ式クレーン装置1の使用方法>
次に、以上のように構成された実施形態のレールクランプ式クレーン装置1の使用方法について説明する
【0024】
(レールクランプ式クレーン装置1の走行移動作業)
レールクランプ式クレーン装置1の走行移動作業は、図4に示すように作業員がクレーン部11を掴んで押してクレーン支持部12の前輪12bおよび後輪12cによって一本のレールR上を走行する。
【0025】
(クレーン支持部12によるレールクランプ式クレーン装置1の走行)
その際、レールクランプ部13は、図4および図5(a)に示すように解放状態でレールRをクランプせず、かつ、アウトリガー部14の接地部14b4は図4および図7(a),(b)に示すように接地部14b4は宙に浮いた状態で路盤に着いてない状態である。
【0026】
レールクランプ部13は解放状態でレールRをクランプしない状態とは、図12(a)に示すように一対のクランプ体13a,13bそれぞれの把持部13a2,13b2が重なっており、クランプ体13aのピン孔13a3とクランプ体13bの解放時用ピン孔13b3とにクランプ体固定ピン13dが挿入された状態である。
【0027】
(レールクランプ部13,13によるレールRのクランプ)
作業員がクレーン部11を掴んで押してレールクランプ式クレーン装置1を走行させて作業場所まで移動すると、次に作業員は、作業場所でレールクランプ式クレーン装置1を停止させるため、前後それぞれのレールクランプ部13,13によってレールRをクランプする。
【0028】
具体的には、レールクランプ式クレーン装置1の走行状態では、図5(a)に示すように一対のクランプ体13a,13bそれぞれのレール解放状態保持ピン挿入孔13a3,13b3にクランプ体固定ピン13dが挿入されていて、レールRをクランプしていないため、作業現場に到着して一対のクランプ体13a,13bによってレールRをクランプする場合は、まず、図5(b)に示すように一対のクランプ体13a,13bそれぞれのレール解放状態保持ピン挿入孔13a3,13b3からクランプ体固定ピン13dを抜く。
【0029】
次に、作業員は一対のクランプ体13a,13bそれぞれの把持部13a2,13b2を掴んで、図6(a)に示すようにそれぞれのレール挟持部13a1,13b1がレールRの頭部RH下の腹部を挟持するように回転させ、図6(b)に示すように一対のクランプ体13a,13bそれぞれのレール挟持部13a1,13b1がレールRの頭部RH下の腹部を挟持すると、一対のクランプ体13a,13bそれぞれのレールクランプ状態保持ピン挿入孔13a4,13b4が一致するので、レールクランプ状態保持ピン挿入孔13a4,13b4にクランプ体固定ピン13dを挿入して一対のクランプ体13a,13bによるレールクランプ状態を保持する。
【0030】
(アウトリガー部14によるレールクランプ式クレーン装置1の安定化)
次に、作業員はクレーン部1を使用して吊り荷2の移動作業を行う前に、クレーン支持部12の左右両側に設けたアウトリガー部14を使用してレールクランプ式クレーン装置1を安定化させる。
【0031】
具体的には、まず、作業場所に応じてアウトリガー水平伸縮部14aを水平方向に伸長した方が都合の良い場所では、図7(a)に示すように水平方向筒部14a1に対し水平方向スライド部14a2を伸長しピン孔14a11,14a21を位置合わせしてピン(図示せず。)を挿入して固定する一方、アウトリガー水平伸縮部14aを水平方向に収縮させた方が都合の良い場所では、図7(b)に示すように水平方向筒部14a1に対し水平方向スライド部14a2を収縮しピン孔14a11,14a21を位置合わせしてピン(図示せず。)を挿入して固定する。
【0032】
次に、作業員は、図7(a),(b)に示すようにアウトリガー水平伸縮部14aの水平方向の長さを固定した後、アウトリガー鉛直伸縮部14bの昇降ハンドル14b2を回転させ、ジャッキ本体(ラムガイド)14b1に対し伸縮部(ラム)14b3を下降させて、伸縮部(ラム)14b3下端部の接地部14b4を路盤に押し付ける。
【0033】
これにより、図9に示すようにクレーン支持部11左右のアウトリガー部14,14によってレールクランプ式クレーン装置1を作業場所に応じて安定化させることができる。
【0034】
その後は、作業員は、クレーン部1を使用してフック11a1に吊り荷2を引掛け、チェーンブロック11aを操作して吊り荷2を上下させたり、伸縮ブーム11bの末端伸縮ブーム11b1および基端伸縮ブーム11b2等の複数段のブームを伸縮させたり、旋回ブーム11cを旋回させて吊り荷2の昇降や移動を行う。
【0035】
(本発明に係る実施形態のレールクランプ式クレーン装置1のまとめ)
本発明に係る実施形態のレールクランプ式クレーン装置1では、吊り荷を引掛けて移動させるクレーン部11と、クレーン部11を支持するクレーン支持部12と、クレーン支持部12に設けられ、線路上の一本のレールをクランプするレールクランプ部13と、クレーン支持部12に設けられ、上下方向に収縮して路盤に接地するアウトリガー部14とを備えるため、狭い場所や傾斜した場所でも1本のレールに直接設置して使用することができる。
【0036】
その結果、本発明に係る実施形態のレールクランプ式クレーン装置1をレールRに容易に設置することにより、従来、人力でマクラギ等を移動する場合に必要であった人員と労力を大幅に削減することが可能になる。
【0037】
また、レールクランプ式クレーン装置1をレールRに直接設置できるため、設置場所に困らず、また、設置に必要なエリアが少なく済むので、都市部の鉄道等のレール等に好適である。
【0038】
また、クレーン部11による作業時に吊り荷2の荷重に対する反力は、レールクランプ部13,13とアウトリガー部14,14で受けるため、アウトリガー部14,14の大きさやその設置幅等を比較的狭くでき、且つ、自重も比較的軽量化することができる。
【0039】
また、本発明に係る実施形態のレールクランプ式クレーン装置1では、レールクランプ部13は、クレーン部11の下部にクランプ回動軸13cを介して回動可能に設けられた一対のクランプ体13a,13bで構成され、その一対のクランプ体13a,13bは、クランプ回動軸13cを中心に回動してレールRの腹部RSに当接するレール当接部13a1,13b1と、作業員が掴む把持部13a2,13b2とを有すると共に、一対のクランプ体13a,13bには、それぞれ、レール解放状態保持ピン挿入孔13a3,13b3と、レールクランプ状態保持ピン挿入孔13a4,13b4とを有する。
【0040】
そのため、レール移動時には一対のクランプ体13a,13bそれぞれのレール解放状態保持ピン挿入孔13a3,13b3にクランプ体固定ピン13dを挿入してレール解放状態を保持したり、作業時にはレールクランプ状態保持ピン挿入孔13a4,13b4にクランプ体固定ピン13dを挿入してレールのクランプ状態を保持することができるので、作業効率を向上させることができる。
【0041】
また、本発明に係る実施形態のレールクランプ式クレーン装置1では、クレーン支持部12には、線路上の一本のレールR上を走行する前輪12bおよび後輪12cを設けている。
【0042】
そのため、レールクランプ式クレーン装置1は、レールRに沿って移動が容易となるので、この点でもレール交換作業の作業効率を向上させることができる。
【0043】
また、本発明に係る実施形態のレールクランプ式クレーン装置1では、レールクランプ部13は、クレーン支持部12において前輪12bの前側および後輪12cの後側に設けている。
【0044】
※請求項4の効果
そのため、レールクランプ部13のクランプ操作や解放操作を行い易くなるので、この点でもレール交換作業の作業効率を向上させることができる。
【0045】
また、本発明に係る実施形態のレールクランプ式クレーン装置1では、アウトリガー部14は、レールクランプ部13の左右両側に基端部が固定され、水平方向に伸縮するアウトリガー水平伸縮部14aと、アウトリガー水平伸縮部14aの先端部に固定され、昇降ハンドル14b2の回転によって鉛直方向に伸縮するアウトリガー鉛直伸縮部14bとを有する。
【0046】
そのため、作業現場に応じてアウトリガー水平伸縮部14aを伸縮させることによってアウトリガー鉛直伸縮部14bの水平位置を変更することができるので、この点でもレール交換作業の作業効率を向上させることができる。
【0047】
また、本発明に係る実施形態のレールクランプ式クレーン装置1では、アウトリガー部14のアウトリガー水平伸縮部14aは、クレーン支持部本体12aの旋回ブーム支持体12a11の前後に取付けられた水平方向筒部14a1と、水平方向筒部14a1の中を水平方向にスライドして伸縮する水平方向スライド部14a2とを備え、水平方向筒部14a1および水平方向スライド部14a2それぞれに設けられた複数のピン孔14a11,14a21を位置合わせしてアウトリガー水平伸縮固定ピン14cを挿入することにより水平方向の長さを調整できるように構成されている。
【0048】
そのため、アウトリガー部14のアウトリガー水平伸縮部14aは、簡単な構造で水平方向に伸縮することができるので、コストを低減することが出来ると共に、水平方向筒部14a1から水平方向スライド部14a2を取り外して分解することもできるので、使用勝手を向上させることができる。また、アウトリガー部14では、水平方向筒部14a1の左右のいずれの方向からも水平方向スライド部14a2を突出させてアウトリガー部14を使用することができるので、作業現場に応じて前後それぞれの水平方向筒部14a1からの水平方向スライド部14a2の突出方向を変更することが可能となり、この点でも狭い場所でも効率良く水平方向スライド部14a2を突出させてレールクランプ式クレーン装置1を安定化させることが出来る。
【0049】
また、本発明に係る実施形態のレールクランプ式クレーン装置1では、アウトリガー部14を2基設けており、2つの水平方向筒部14a1,14a1をクレーン支持部本体12aの旋回ブーム支持体12a11の前後にずらしてそれぞれの貫通孔の貫通方向がクレーン支持部12の横方向を向くように設け、前後にズラした各水平方向筒部14a1,14a1から左右逆方向に水平方向スライド部14a2,14a2が伸縮できるように構成している。
【0050】
そのため、2基のアウトリガー部14は、それぞれ前後にズラして設けているので、2基のアウトリガー部14を前後で同じ位置に設ける場合よりも水平方向筒部14a1の長さを長く確保することができるので、その分だけアウトリガー部14全体の大きさを小型化することができる。また、前後にズラして設けた2基のアウトリガー部14は、それぞれ、水平方向筒部14a1の左右のいずれの方向からも水平方向スライド部14a2を突出させてアウトリガー部14を使用することができるので、作業現場に応じて前後それぞれの水平方向筒部14a1からの水平方向スライド部14a2の突出方向を変更することが可能となり、この点でも狭い場所でも効率良く水平方向スライド部14a2を突出させてレールクランプ式クレーン装置1を安定化させることが出来る。
【符号の説明】
【0051】
1 レールクランプ式クレーン装置
11 クレーン部
11a チェーンブロック
11a1 フック
11a2 チェーン
11b 伸縮ブーム
11b1 末端伸縮ブーム
11b2 基端伸縮ブーム
11c 旋回ブーム
11e ジャッキ
12 クレーン支持部
12a クレーン支持部本体
12a11 旋回ブーム支持体
12b 前輪
12c 後輪
13 レールクランプ部
13a,13b クランプ体
13a1,13b1 レール当接部
13a2,13b2 把持部
13a3,13b3 レール解放状態保持ピン挿入孔
13a4,13b4 レールクランプ状態保持ピン挿入孔
13c クランプ回動軸
13d クランプ体固定ピン
14 アウトリガー部
14a アウトリガー水平伸縮部
14a1 水平方向筒部
14a11 ピン孔
14a2 水平方向スライド部
14a21 ピン孔
14b アウトリガー鉛直伸縮部
14b1 ジャッキ本体(ラムガイド)
14b2 昇降ハンドル
14b3 伸縮部(ラム)
14b4 接地部
14c アウトリガー水平伸縮固定ピン
R レール
RH 頭部
RS 腹部
図1
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図9