(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】研磨剤の装填を制御するシステムを備えたサンドブラスト機
(51)【国際特許分類】
B24C 7/00 20060101AFI20240315BHJP
B24C 11/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B24C7/00 B
B24C7/00 A
B24C7/00 Z
B24C11/00 Z
(21)【出願番号】P 2021533335
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(86)【国際出願番号】 IB2019059488
(87)【国際公開番号】W WO2020121081
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】102018000011036
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519202658
【氏名又は名称】バイカー ジェット エスアールエル
【氏名又は名称原語表記】BICAR JET SRL
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ソマカル,パオロ アレッサンドロ
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0332071(US,A1)
【文献】国際公開第2007/149054(WO,A1)
【文献】国際公開第1999/014015(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 7/00
B24C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般的に研磨剤の噴射によって、表面を掃除するサンドブラスト機であって、
少なくとも一種類の研磨剤を噴射する、少なくとも一つの噴射装置を備え、
前記少なくとも一つの噴射装置は、
噴射する研磨剤を入れる一つ以上の瓶または容器を載置可能な、少なくとも一つの座面と、
前記一つ以上の瓶または容器の内部から研磨剤を排出する排出手段と、
前記少なくとも一つの座面に載置される一つ以上の瓶または容器であって、該瓶内の研磨剤の識別データを含んだ少なくとも一つのラベルが付けられた少なくとも一つの瓶と、
研磨剤の入った前記瓶または容器に付けられた前記ラベルに含まれる前記データを読み取る手段を備えた、少なくとも一つの制御部、
とを備え、
前記制御部は、前記瓶に付けられた前記ラベルに含まれる前記データによって、前記瓶から研磨剤を排出するかどうかを承認する、
ことを特徴とする、サンドブラスト機。
【請求項2】
前記ラベルは、電子ラベルまたはタグであり、前記制御部および前記電子ラベルまたはタグは、RFID技術によって操作される、
ことを特徴とする、請求項1に記載のサンドブラスト機。
【請求項3】
少なくとも一つの前記瓶は、研磨剤が入る最大容量を一意に決定する硬質素材からなる、
ことを特徴とする、請求項1
または2に記載のサンドブラスト機。
【請求項4】
少なくとも一つの前記瓶は、研磨剤の残量を確認できるよう、少なくとも一つの透明部分を有する、
ことを特徴とする、請求項1
~3のいずれか一項に記載のサンドブラスト機。
【請求項5】
研磨剤に関する前記データは、少なくとも、重量および/または粒度および/または化学成分である、
ことを特徴とする、請求項1
~4のいずれか一項に記載のサンドブラスト機。
【請求項6】
少なくとも一つの前記瓶は、内容物を取り出すための開口部または口を有し、前記開口部または口には密閉蓋が設けられ、瓶が充填されると、
前記内容物の質、種類、量および
前記内容物のトレーサビリティを
保証する、
ことを特徴とする、請求項1
~5のいずれか一項に記載のサンドブラスト機。
【請求項7】
一つ以上の前記瓶を空にする工程を制御する制御手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記制御部と通信し、一つ以上の前記瓶の重量を監視するのに適した重量計を備える、
ことを特徴とする、請求項1
~6のいずれか一項に記載のサンドブラスト機。
【請求項8】
前記重量計が、少なくとも一つの瓶を測定し、重量値が所定の値よりも低い場合、および/または、前記重量計が、少なくとも一つの瓶を測定し、重量値が、該瓶の前回測定された重量値を越える場合、前記制御部は信号を送信する、
ことを特徴とする、請求項7に記載のサンドブラスト機。
【請求項9】
前記排出手段は、前記瓶が、前記少なくとも一つの座面に正しく載置され、前記制御部が研磨剤の排出を許容した際、前記瓶に挿入して、前記蓋に穴を開けるのに適した、針、刃、その他特定の排出装置を備える、
ことを特徴とする、請求項
6に記載のサンドブラスト機。
【請求項10】
前記排出手段の、針、刃、その他特定の装置は、専用形状
であることを特徴とする、請求項9に記載のサンドブラスト機。
【請求項11】
前記研磨剤は、重曹
であることを特徴とする、請求項10に記載のサンドブラスト機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の重曹、例えば、重炭酸ナトリウムおよび/またはその他重曹混合物からなる研磨剤による、産業サンドブラスト処理を行う機器に関し、特に、研磨剤の装填を制御するシステムを備えた、新たなサンドブラスト機に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製・非金属製の物体から塗料を除去する必要がある場合、また、一般的に、除去が困難な固形状の堆積汚れ、および/または、グリース、油、その他類似の頑固な汚れが付着した物体の硬質表面をクリーニングする必要がある場合、今日では、空気圧や水圧により、粒状の固形材料を物体に噴射する等の機械動作によるクリーニング工程が実施される。こうした動作において、研磨作用により、クリーニング対象表面にこびりついた物質を全て除去することができる。
【0003】
簡単に言えば、加圧空気流が、粒状の研磨剤を排出するベンチュリ管に送られ、噴射ノズルを通して、クリーニング対象表面に研磨剤を高速で噴射する。
【0004】
剥がれた汚れまたは塗料を除去するため、必要であれば、空気流および研磨剤に、水が追加される。
【0005】
研磨剤は、通常、サンドブラスト機および研磨剤を排出し送り出す機械の種類に合わせて、制御された圧力または大気圧下のタンクまたはホッパーに入れられている。
【0006】
既知のサンドブラスト機は、例えば、必須ではないが、排出部およびアクセラレータの二つの部分からなる研磨剤噴射装置を備える。排出部は、一つ以上の研磨剤タンクおよび圧縮空気ラインに接続した第1ベンチュリ室を備え、一方、アクセラレータは、ディスペンサ、圧縮空気ライン、そして、場合によっては、噴射を加湿状態にする水を送り出すよう設計されたダクトに接続した第2ベンチュリ室を備える。
【0007】
アクセラレータ内の空気圧を調整することで、クリーニング対象である物体の特性や、実施する特定の操作(単純なクリーニング、塗料除去、研磨等)に合わせて、研磨剤噴射速度を変更することができる。既知のサンドブラスト機は、重曹、例えば、重炭酸ナトリウムおよび/またはその他重曹混合物を、研磨剤として使用する。この研磨剤は、表面に対する研磨効果を発揮することに加え、界面活性剤を含まないため、汚濁負荷を削減することができ、洗浄性も高く、消毒効果を有する。さらに、重曹を研磨剤として使用する際、例えば、異なる多孔性度合を有する表面、消毒対象となる表面といった、異なる特性を有する表面に対して、効率的に処理を行うことができる。これは、使用する研磨剤の粒度を変化させることで、また、噴射工程で混合する水の量を変化させ、噴流において、水中に溶解した重曹の量や、未溶解の重曹の量を変化させることで、可能となる。
【0008】
従って、処理対象の表面の種類や、落としたい汚れの種類に合わせて、流動性、および/または、すすぎ性、および/または、溶解性を向上させるのに適した添加剤の追加を判断し、特定の成分および特定の粒度を有する重曹を使用するとよい。
【0009】
逆に、例えば、処理対象である、特定の表面種類に適したものよりも、大きい粒度を有する重曹を使用してしまうと、研磨剤が小さな隙間に到達できず、また、表面自体の確実かつ完全な消毒に充分な程度までは溶け切らない。そのため、クリーニング効率が低下しかねない。
【0010】
前述した欠点を克服するため、研磨剤の装填を制御するシステムを備えた、新たな種類のサンドブラスト機を設計し、考案した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の主たる目的は、処理対象となる表面の種類や実施する操作に合わせて、使用する研磨剤の種類・質を、確実に、正しく選択できるサンドブラスト機を提供することにある。
【0012】
本発明のさらなる目的は、正しい種類の使用研磨剤を、素早く装填できるサンドブラスト機を提供することにある。
【0013】
本発明のさらなる目的は、認定材料や、最適または推奨材料とは異なる研磨剤を意図せず誤って使用してしまうことを防ぐサンドブラスト機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これら主要な目的および副次的な目的は、研磨剤の装填を制御するシステムを備えた、新たなサンドブラスト機によって達成される。サンドブラスト機は、噴射装置を備える。噴射装置は、噴射する研磨剤を入れる一つ以上の瓶または容器を載置可能な、少なくとも一つの座面と、前記一つ以上の瓶または容器の内部から研磨剤を排出する排出手段と、前記少なくとも一つの座面に載置される一つ以上の瓶または容器であって、該瓶内の研磨剤の識別データを含んだ少なくとも一つのラベル(限定はしないが、好ましくは電子ラベルまたはタグ)が付けられた少なくとも一つの瓶と、研磨剤の入った前記瓶または容器に付けられた前記ラベルに含まれる前記データを読み取るのに適した、少なくとも一つの制御部、とを備える。前記制御部は、前記瓶に付けられた前記ラベルに含まれる前記データによって、前記瓶から研磨剤を排出するかどうかを承認する。
【0015】
好ましい形態において、ラベルは、電子ラベルであり、制御部および電子ラベルまたはタグは、RFID技術によって操作される。
【0016】
本発明によれば、ラベルは、バーコード、QRコード(登録商標)、その他コード等、光学装置によって素早く読み取られ、瓶およびその内容物を一意に識別するデータを特定可能なものであれば、代用可能である。
【0017】
各瓶は、研磨剤が入る最大容量を一意に決定する硬質素材からなることが好ましい。
【0018】
さらに、各瓶は、必須ではないが、研磨剤の残量を確認できるよう、少なくとも一つの透明部分を有することが好ましい。容器または瓶には、重量、質、特定の粒度といった特性において認定を受けた特定の研磨剤が充填されている。重量、粒度、化学成分、製造ロットがデータと紐づけられているため、充填されている研磨剤に関するデータが含まれたラベルを読み取ることで、そのデータを確認することができ、製品のトレーサビリティが保証される。
【0019】
上述のように、粒度は、材料自体の研磨性、吐出時における流れの均一性および適性といった流動性、そして水に混ぜた際の溶解性を決定する要素であるため、特に重要である。
【0020】
少なくとも一つの瓶は、内容物を取り出すための開口部または口を有し、開口部または口には密閉蓋が設けられ、瓶が充填されると、内容物の質、種類、量を確保する。
【0021】
新たなサンドブラスト機は、研磨剤を瓶から排出するための排出手段を備え、排出手段は、使用時に、瓶を、少なくとも一つの座面上の正しい位置に載置、固定するよう構成される。
【0022】
例えば、蓋が閉まった状態の瓶を、座面上に上下逆さにして載置する。瓶が座面に正しく挿入されると、例えば、蓋に穴を開ける針、刃、その他特定の排出装置によって、蓋が開く仕組みとなっている。これにより、必要な時に、内容物を取り出すことができるようになる。
【0023】
瓶を対応する座面に挿入する時、あるいは挿入する前に、制御部はデータを読み取る、もしくは、瓶自体に付属した電子ラベルまたはタグと通信する。制御部が読み取ったデータが、設定データと一致し、矛盾がない場合、制御部は、瓶の使用を許可、つまり、サンドブラスト機が、意図した用途において、瓶の内容物を使用することを許可する。
【0024】
本発明によれば、新たなサンドブラスト機は、一つ以上の瓶、特にラベルまたは電子ラベルが付属した瓶を空にする工程を制御する制御手段をさらに備える。この制御手段は、例えば、一つ以上の瓶の重量を監視するのに適した重量計を備える。重量計が測定した重量値が所定の値よりも低い場合、重量計は、制御部に対し、信号を送信し、各瓶の交換を促す。
【0025】
さらに、瓶の重量測定値が、同じ瓶で前回測定した重量値を上回る場合、制御部は、この状況を異常事態とみなした信号を出し、ラベルまたは電子ラベルが付属した特定の瓶からの排出を承認しない。
【0026】
瓶が空、あるいはほとんど空の状態になると、量、種類、粒度が合わない、製造元が確かでない研磨剤が充填されるのを防ぐ。もし、誤った研磨剤が充填されれば、サンドブラスト処理の質、およびサンドブラスト機の良好な動作にまで影響しかねない。
【0027】
本発明によれば、上述した特性の代替として、あるいはその特性と組み合わせて、排出手段の、針、刃、その他特定の装置は、専用形状、例えば、鉤形状を有していてもよい。これにより、針が瓶の口に挿入する際、蓋に穴を開けることができる。また、瓶の内容物を使い切った際には、針を取り出すことで、蓋および可能であれば電子ラベルが破れるため、同じ瓶の再利用が防がれる。
【0028】
研磨剤としては、重曹、例えば、重炭酸ナトリウム、その混合物、または混合物であると都合がよい。
【0029】
したがって、上記説明を参照して、以下の請求項を記載する。