(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ポータブルX線断層撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240315BHJP
A61B 6/02 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
A61B6/00 510
A61B6/02 501H
A61B6/02 503A
(21)【出願番号】P 2021565183
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2019049255
(87)【国際公開番号】W WO2021124422
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】511006476
【氏名又は名称】つくばテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194869
【氏名又は名称】榎本 慎一
(72)【発明者】
【氏名】王 波
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 典生
(72)【発明者】
【氏名】劉 小軍
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-065947(JP,A)
【文献】特開2012-066062(JP,A)
【文献】特表2019-510604(JP,A)
【文献】国際公開第2017/180507(WO,A1)
【文献】特表2011-512226(JP,A)
【文献】特表2016-534793(JP,A)
【文献】特開2014-161531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を被検体に向け順番に照射する第一X線管、第二X線管及び第三X線管と、
前記各X線管を駆動するバッテリを含む本体と、
前記被検体を透過した前記X線を感知するデジタル式の検出器と、
前記検出器で感知した前記第一X線管、前記第二X線管および前記第三X線管から照射され、前記被検体を透過した前記X線の強度に対応する少なくとも3種1セットの検出信号を基にX線断層画像を表示可能にトモシンセシス処理する制御装置と、
前記X線断層画像を表示するモニタとからなり、
前記第二X線管が被検体の略真上に位置する
とともに、
前記第一X線管、前記第二X線管及び前記第三X線管は回転可能とし前記X線の照射方向を調節することで焦点距離を可変としたことを特徴とする
ポータブルX線断層撮影装置。
【請求項2】
前記第一X線管、前記第三X線管が前記第二X線管から対向方向で略等距離に配置されることを特徴とする請求項1に記載のポータブルX線断層撮影装置。
【請求項3】
前記第一X線管、前記第二X線管および前記第三X線管が、吊下具に直接又は介在を介して間接的にスライド可能に固定され、又は前記吊下具にスライド可能に取り付けられたフレームに直接又は介在を介して間接的にスライド可能に固定され、
前記第一X線管、前記第二X線管および前記第三X線管が距離一定を維持して一体として前記吊下具又は前記フレームをスライド移動し、異なる位置で前記X線を照射し、前記3種1セットの前記検出信号を複数セット取得し、前記X線断層画像を合成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポータブルX線断層撮影装置。
【請求項4】
前記吊下具又は/及び前記フレームが、上に凸の弧状であることを特徴とする請求項3に記載のポータブルX線断層撮影装置。
【請求項5】
前記介在が、前記第一X線管、前記第二X線管および前記第三X線管を収納するボックスであることを特徴とする請求項3に記載のポータブルX線断層撮影装置。
【請求項6】
前記第一X線管、前記第二X線管および前記第三X線管が、同一のボックスに収納され、前記ボックスを任意の場所に手動移動させて使用可能としたことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のポータブルX線断層撮影装置。
【請求項7】
前記第一X線管、前記第二X線管及び前記第三X線管が、同一円周上において略等距離に配置されることを特徴とする請求項1に記載のポータブルX線断層撮影装置。
【請求項8】
前記第一X線管、前記第二X線管および前記第三X線管が、吊下具に直接又は介在を介して間接的にスライド可能に固定され、又は前記吊下具にスライド可能に取り付けられたフレームに直接又は介在を介して間接的にスライド可能に固定され、
前記第一X線管、前記第二X線管および前記第三X線管が距離一定を維持して一体として前記吊下具又は前記フレームをスライド移動し、異なる位置で前記X線を照射し、前記3種1セットの前記検出信号を複数セット取得し、前記X線断層画像を合成することを特徴とする請求項1又は請求項7
の何れか1項に記載のポータブルX線断層撮影装置。
【請求項9】
前記吊下具又は/及び前記フレームが、ドーナツ状又は円盤であることを特徴とする請求項8に記載のポータブルX線断層撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影場所に携帯していける小型で、被検体の断層撮影を可能にするポータブルX線断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のX線断層撮影装置は、非特許文献1のように、病院に設置し、被験者が備え付けのベッドに横になり、あるいは検出器の前に立ち、1つのX線源が移動して、被検体の多数方向からのX線断層用の画像データを取得(撮影)し、トモシンセシス処理にてX線断層画像を合成し、モニタで表示する。
【0003】
しかしながら、非特許文献1では、高価で大掛かりな装置なため、個人開業医での設置は困難である。また、可搬式とすることはできない。そして、被曝量も高い。患者にとっては、低被曝で、鮮明画像を得られることが望ましい。
【0004】
他方、災害、事故時の救急、緊急診察、在宅介護の回診に用いられる小型の可搬式の医療用、工業製品を対象とした品質管理等に用いられるX線断層撮影装置は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】http://gecommunity.on.arena.ne.jp/ITEM2015/fr001.php
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、撮影場所に携帯していけるほど小型であっても、被検体の断層撮影を可能にするポータブルX線断層撮影装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、
(1)
X線を被検体に向け順番に照射する第一X線管、第二X線管及び第三X線管と、
前記各X線管を駆動するバッテリを含む本体と、
前記被検体を透過した前記X線を感知するデジタル式の検出器と、
前記検出器で感知した前記第一X線管、前記第二X線管および前記第三X線管から照射され、前記被検体を透過した前記X線の強度に対応する少なくとも3種1セットの検出信号を基にX線断層画像を表示可能にトモシンセシス処理する制御装置と、
前記X線断層画像を表示するモニタとからなり、
前記第二X線管が被検体の略真上に位置するとともに、
前記第一X線管、前記第二X線管及び前記第三X線管は回転可能としX線の照射方向を調節することで焦点距離を可変としたことを特徴とする
ポータブルX線断層撮影装置。
(2)
前記第一X線管、前記第三X線管が前記第二X線管から対向方向で略等距離に配置されることを特徴とする(1)に記載のポータブルX線断層撮影装置。
(3)
前記第一X線管、前記第二X線管および前記第三X線管が、吊下具に直接スライド可能に固定され、又は前記吊下具にスライド可能に取り付けられたフレームにスライド可能に固定され、
前記第一X線管、前記第二X線管および前記第三X線管が距離一定を維持して一体として前記吊下具又は前記フレームをスライド移動し、異なる位置で前記X線を照射し、前記検出信号を複数セット取得し、前記X線断層画像を合成することを特徴とする(1)に記載のポータブルX線断層撮影装置。
(4)
前記吊下具又は/及び前記フレームが、上に凸の弧状であることを特徴とする(3)に記載のポータブルX線断層撮影装置。
とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、小型化で携帯可能な大きさのため、工業生産用では、製造場所での迅速簡易品質検査が可能になる。医療用では被災地或いは事故現場などの屋外での使用、医師の自宅回診に携帯することができる。
【0010】
そして、本願発明は、従来のX線断層撮影装置のように、1つのX線源を移動させて複数回の撮影をするものでなく、順次X線を照射する3管のX線管を予め備えるため、X線源の移動時間のロス、断層画像を確認できる画像精度を確保しつつ撮影(X線照射回数)を最小限に抑え最小限のデータを取得し、最小限のデータによる合成時間の短縮か可能になる。それより撮影時間が短縮され、作業時間の効率化に資するとともに、X線放射総線量の抑制が図れる。被検体が負傷、疾病患者であれば、患者の負担軽減に資する。したがって、工業用、医療用として、迅速に簡易にX線断層撮影が可能になる。
【0011】
また、本発明は、従来の病院設置型X線断層撮影装置より遙かに安価製造可能であるので、個人病院でも容易に導入することができる。また、発展途上国などにおいては、安価、簡易な工業生産品の品質管理、医療用X線断層撮影装置として大いに利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明であるポータブルX線断層撮影装置の第一の実施の形態の模式図である。
【
図2】
図2は、本発明であるポータブルX線断層撮影装置の第二の実施の形態の模式図である。
【
図3】
図3は、本発明であるポータブルX線断層撮影装置の第三の実施の形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はそれら実施形態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
図1に示すように、本発明の第一実施形態であるポータブルX線断層撮影装置10は、第一X線管1a、第二X線管1b及び第三X線管1cと、本体2と、検出器3と、制御装置4と、モニタ4aと、フレーム5からなる。
【0015】
第一X線管1a、第二X線管1b及び第三X線管1c(以下、単に「各X線管」、「X線管」と省略することもある)は、同じもので、フレーム5に固定され、X線1d(破線)を被検体7に向け順番に、放射状に照射する。
【0016】
ここでは、第二X線管1bが被検体7の略真上に位置する。略真上に位置することで、第二X線管1bで単純撮影と同じ正面撮影ができるメリットがあり、そうすると正面撮影とトモシンと両方撮影可能になる。さらに、第一X線管1a、第三X線管1cが第二X線管1bから対向方向で略等距離にフレーム5に固定、配置される。これにより、より鮮明なX線断層画像を生成する検出信号3aを取得することができる。
【0017】
それらX線管としては、例えば、乾電池でも駆動するカーボンナノ構造体三極式冷陰極X線管を採用でき、その詳細は特許文献1の
図3及びその関連記載に説明されているので参照されたい。
【0018】
フレーム5は、上に凸の弧状で、各X線管を固定するとともに、本体に接続するリード線2bが、各X線管にまで引き廻される。フレーム5を、上に凸の弧状にすることで、被検体7と各X線管との距離をそれぞれ近づけ、等しくすることができ、撮影時のX線量の差を小さくし、画像の明るさを同じにすることができるようになる。被検体7と各X線管との距離の差が大きいと、撮影後の画像の明るさ補正が必要になる。
【0019】
被検体7としては、工業製品、患者などが例示できる。工業製品では、製造現場での簡易品質管理、非破壊欠陥探知、故障個所の特定、精度確認などに利用できる。患者であれば、緊急、災害時に、屋外での簡易患部観察、疾病探知に利用できる。なお、図中の被検体7に描かれた3本の平行な一点鎖線は、X線断層画像における、断面位置の例示である。
図2においても同じ。
【0020】
本体2は、筐体内に供えられX線管にリード線2bを介して印加する電圧を生成する回路(図示省略)と、X線管、前記回路を駆動するバッテリ2aなどを備える。バッテリ2aには商用電源も含むものとし、AC-DCアダプタを介して商用電源を利用することができる。
【0021】
検出器3は、被検体7を透過したX線1dを感知するデジタル式のX線検出器で、二次元画像データ(検出信号3a)として感知し、制御装置4に、有線或いは無線で、検出信号3aとして送信する。検出器3としては、例えば、シンチレータ、CCD、CMOS、CdTe半導体などが例示される。検出器3は、X線管の照射タイミングに、制御装置4の制御信号4cで同期して、検出信号3aを取得する。
【0022】
制御装置4は、パーソナルコンピュータ(PC)などで、検出器3で検出した検出信号3aを基にX線断層画像を表示可能にトモシンセシス処理する。検出信号3aは、検出器3で感知した第一X線管1a、第二X線管1b及び第三X線管1cから照射され、被検体7を透過したX線1dの強度に対応する少なくとも3種1セットを必要とする。
【0023】
さらに、制御装置4は、本体2に制御信号4bを送り、各X線管に印加する電圧の生成、調整、例えば電圧値、電流値、印加時間、タイミングを制御する。また、X線1dの放射と、検出器3の検出タイミングを同期(制御信号4c)させることで、放射線の放射量時間を抑制し、放射線の被爆量、漏洩量を低下させることができる。
【0024】
モニタ4aは、検出信号3aからトモシンセシス処理により合成されたX線断層画像(図示省略)を表示する。PCのディスプレイが利用できる。制御装置4とモニタ4aは、一体のタブレットPC、ノートパソコンなどを用いることができる。
【実施例2】
【0025】
図2に示すように、本発明の第二実施形態であるポータブルX線断層撮影装置11は、第一X線管1a、第二X線管1b及び第三X線管1cと、本体2と、検出器3と、制御装置4と、モニタ4aと、フレーム5aと、吊下具6からなる。
【0026】
すなわち、実施例2は、実施例1と、主にフレーム5a、吊下具6が異なるので、それら相違点、その他相違点についてここで説明する。その他の構成は、実施例1と同様である構成については説明を省略する、実施例1参照のこと。
【0027】
フレーム5aは、実施例1のフレーム5aに、吊下具6をスライド(
図2弧状破線両矢印)する機能を付加したものである。すなわち、フレーム5aは、吊下具6を左右方向にスライド可能に設置されている。スライドは、本体2、或いは制御装置4での設定プログラムによって、或いは手動で操作でき、その手段は特に限定されない。
【0028】
フレーム5aのスライド機構の一例としては、
図2に示すように、吊下具6内にモータ6aを設置し、制御装置4の指令で、モータ6aの回転でフレーム5aをスライドさせ、X線管(図中点線)の当初のX線1dの照射位置から、X線管同士の距離を保持したまま一定で、さらに一体として、左右にずらして、異なる位置のX線管(図中破線)からX線を照射(ここでは、右にズレてX線1eを照射)し、複数セットの検出信号3aを取得する。そうすることで、調査が簡単でより鮮明な、解像度の高いX線断層画像を生成することもできる。
【0029】
吊下具6は、例えば、本体2から起立して、上下に伸縮(水平実線両矢印)、左右に伸縮(垂直実線両矢印)可能とすることができる。伸縮は、自動、手動操作でき、これにより、X線管の位置決めを簡易、制度良く調整することができる。
【0030】
ここでは、吊下具6は、水平のバーとしたが、各X線管を直接吊下具6に固定する場合には、吊下具6は、フレーム5a同様に上に凸の弧状とするとよい。また、フレーム5aをスライド可能に備える場合であっても、フレーム5a同様に上に凸の弧状としてもよい。
【0031】
なお、検出器3も上下、左右にスライド可能としてもよい。また、各X線管は、各々、制御装置4による自動制御、手動にて回転可能とし、X線の照査方向を調節できるようにしてもよい。
【0032】
なお、各X線管は、吊下具6に直接固定しても、フレーム以外の介在を介して吊下具6に固定されてもよい。介在の例としては、ポータブルX線断層撮影装置10、11に着脱可能なボックスなどが例示でき、任意の場所に各X線管を収納したボックス手動移動させて断層撮影可能とする。
【実施例3】
【0033】
図3に示すように、本発明の第三実施形態であるポータブルX線断層撮影装置12は、実施例1におけるフレーム5をドーナツ形状のフレーム5bとしたものである。その他、円盤形状のフレームが採用できる。さらに、それらをボックス化(モールド化)してもよい。
【0034】
また、実施例2同様に、吊下具6にフレーム5bを下げた直線状に一体でスライドさせることができる。同一円周位置にX線管の数を追加する(例えば、同一円周位置に3個などX線管を等角度で配置する)ことで、トモシンセシス処理した断層画像の画質を良くなる。
【符号の説明】
【0035】
1a 第一X線管
1b 第二X線管
1c 第三X線管
1d X線
1e X線
2 本体
2a バッテリ
2b リード線
3 検出器
3a 検出信号
4 制御装置
4a モニタ
4b 制御信号
4c 制御信号
5 フレーム
5a フレーム
5b フレーム
6 吊下具
6a モータ
7 被検体
10 ポータブルX線断層撮影装置
11 ポータブルX線断層撮影装置
12 ポータブルX線断層撮影装置