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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】煙突
(51)【国際特許分類】
   F23J 13/04 20060101AFI20240315BHJP
   F23L 17/12 20060101ALI20240315BHJP
   F16L 43/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
F23J13/04 Z
F23L17/12 Z
F16L43/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022173733
(22)【出願日】2022-10-28
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】503304360
【氏名又は名称】コーキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082083
【弁理士】
【氏名又は名称】玉田 修三
(72)【発明者】
【氏名】岩成 真一
(72)【発明者】
【氏名】小林 公武
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-251466(JP,A)
【文献】特開2019-120454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 13/04
F23L 17/12
F16L 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気源から伸びる横引き管流路が煙突本体によって形成される上向き煙道に接続されていて、横引き管流路と上向き煙道との接続箇所に、横引き管流路に連通する横向き流路と、この横向き流路に連通する円弧状流路と、この円弧状流路に連通して上向き煙道に排気流を放出する立上り流路と、を備えるエルボ状の曲がり管でなる排気筒が配備されている煙突であって、
上記排気筒の立上り流路を形成している円筒状の立上り壁の上端開口によって形成されている放出口の環状口縁部が、当該排気筒の横向き流路と円弧状流路との境界である連通箇所の上方の1箇所を基点として、この基点から遠ざかる箇所ほど上位に位置するように傾斜しており、円筒状の上記立上り壁の一部に、上記環状口縁部を含む上拡がり部が形成されてなることを特徴とする煙突。
【請求項2】
排気源から伸びる横引き管流路が煙突本体によって形成される上向き煙道に接続されていて、横引き管流路と上向き煙道との接続箇所に、横引き管流路に連通する横向き流路と、この横向き流路に連通する円弧状流路と、この円弧状流路に連通して上向き煙道に排気流を放出する立上り流路と、を備えるエルボ状の曲がり管でなる排気筒が配備されている煙突であって、
上記排気筒の立上り流路を形成している円筒状の立上り壁の上端開口によって形成されている放出口の環状口縁部が、当該排気筒の横向き流路と円弧状流路との境界である連通箇所の上方の1箇所を基点として、この基点から遠ざかる箇所ほど上位に位置するように傾斜しており、円筒状の上記立上り壁の上記環状口縁部に、複数の上向き突片が切り込み状の窪み部を隔てて環状に配列されてなることを特徴とする煙突。
【請求項3】
上記上拡がり部の上記環状口縁部に、複数の上向き突片が切り込み状の窪み部を隔てて環状に配列されてなる請求項1に記載した煙突。
【請求項4】
複数の上記上向き突片のそれぞれが、上記上拡がり部の立上り方向に延び出ている請求項に記載した煙突。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気源から伸びる横引き管流路と煙突本体によって形成される上向き煙道との接続箇所に、エルボ状の曲がり管でなる排気筒が配備されている煙突に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルなどの非常用発電システムに使用される煙突には、高温でかつ高速の排気流を処理し得る性能が要求される。この種の煙突において、上向き煙道を形成する煙突本体の形状には四角筒形や円筒形が選ばれることが多い。また、この種の煙突においては、横引き管流路から煙突本体によって形成される上向き煙道に至る排気曲がり流路で排気流をスムーズに方向転換させて上昇させることが、排気流に作用する抵抗を少なくして煙突による排気効率を向上させる上で有益であるとされている。そこで、従来より、上記した排気曲がり流路での排気流に作用する抵抗を少なくして煙突による排気効率を向上させることを意図する対策が応じられている。
【0003】
図11は煙突Aによる排気効率を向上させるための対策を講じた従来例の要部縦断面図である。また、図12は同対策を講じた他の従来例の要部縦断面図である。
【0004】
図11の従来例において、筒状の煙突本体100によって形される上向き煙道110の下端部に、排気源から伸びる横引き管流路120が略直角に接続されていて、その接続箇所に、エルボ状の曲がり管でなる排気筒200が配備されている。この排気筒200は、横引き管流路120に連通する横向き流路210と、この横向き流路210に連通する円弧状流路220と、この円弧状流路220に連通して上記上向き煙道110に排気流を放出する立上り流路230と、を備えている。このように構成されている煙突Aでは、横引き管流路120を経て供給された排気流が排気筒200を経由して上向き煙道110に放出される。そして、排気流が、排気筒200の横向き流路210、円弧状流路220及び立上り流路230を経由することによって略直角方向にスムーズに方向転換して排気筒200の放出口240から上向き煙道110に放出されて上昇する。このような排気筒200による排気流の方向転換作用によって排気流に作用する抵抗が少なくなり、煙突Aによる排気効率が向上する。図11を参照して説明した煙突構造は、煙突本体100の形状が四角筒形であっても円筒形であっても適用することが可能であるとされている。
【0005】
これに対し、図12に示した他の従来例による煙突Aは、四角筒形の煙突本体100を備え、この煙突本体100によって形される上向き煙道110の下端部に、排気源から伸びる横引き管流路120が略直角に接続されている。そして、この接続箇所の煙突本体100側に、円弧状に湾曲した整流板300が配備されている。このように構成されている煙突Aでは、横引き管流路120を経て供給された排気流が整流板300の作用によって略直角方向に方向転換して上向き煙道110に導入されて上昇する。このような整流板300による排気流の方向転換作用によって排気流に作用する抵抗が少なくなり、煙突Aによる排気効率が向上するとされている。
【0006】
一方、先行例1(特許文献1)には、排ガス発生源から吐出される排ガスを方向転換により旋回流に変換して煙道に吐出する排ガスの流れ変換手段についての記述がある。また、この先行例1には、この流れ変換手段が、排ガスを導入する上流側の真直部と、この真直部の下流側に連設された湾曲部とを備える丸管でなるという記載や、この丸管の真直部が煙道に直交姿勢で挿入され、湾曲部の曲軸線が螺旋方向に傾斜している、旨の記載がある。
【0007】
他の先行例2(特許文献2)には、排気管と煙突との接続箇所に、傾斜面と偏流板とを配備した煙突が示されている。この煙突によると、、排気管に導かれた排気ガスが偏流板の作用によって旋回流となり、傾斜面の作用によって上方へ案内される、旨説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6830071号公報
【文献】実公昭63-44667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図11を参照して説明した従来例では、排気筒200の立上り流路230を形成している円筒状の立上り壁231の上端開口によって形成されている放出口240の環状口縁部241が、立上り流路230の軸線、言い換えると、立上り流路230での排気流の流れ方向に対して直交していた。このような環状口縁部241の形状は、排気筒200を形成している曲がり管の立上り壁231の端部をその軸線に対して単純に直角に切断することによって形成されていた。
【0010】
図11に示した従来例に係る煙突Aにおいて、排気筒200の内部では、円弧状流路220の圧力分布が、円弧状流路220の内周側で低く、外周側で高くなる傾向を示すことが判っている。これは、円弧状流路220を流れる排気流が、横向き流路210を流れてきた排気流により円弧状流路220の外周側に押しやられることによるものと考えられる。このような円弧状流路220の圧力分布の影響は、排気筒200の立上り流路230にも及ぶ。そして、図11のように排気筒200の放出口240を形成している環状口縁部241が立上り流路230の軸線に対して直交していると、排気筒200の放出口240から煙突本体100の上向き煙道110に向けて軸線方向の1箇所のみで排気流が放出されて一気に拡散するため、上記した円弧状流路220での圧力分布の影響が、立上り流路230を経て排気筒200の放出口240の近くの上向き煙道110での圧力分布にも及ぶことになる。このことにより、排気筒200の放出口240の近くの上向き煙道110での圧力分布が、円弧状流路220の内周側に対応する領域(以下、「煙道110の内側領域」という。)で低く、円弧状流路220の外周側に対応する領域(以下、「煙道110の外側領域」という。)で高くなり、このような内外の圧力差により生じる渦流が排気流に大きな流れ抵抗を生じさせて煙突Aによる排気効率を向上させることの妨げになっていた。
【0011】
本発明は、以上の状況の下でなされたものであり、横引き管流路と上向き煙道との接続箇所にエルボ状の曲がり管でなる排気筒を配備することを基本として、排気筒による排気流の方向転換作用によって排気流に作用する抵抗が少なくなる、という長所がそのまま発揮されるものでありながら、排気筒の放出口の近くでは、上記した煙道の内側領域と煙道の外側領域との間で生じる圧力差を緩和することのできる対策を講じることによって排気効率を向上させることのできる煙突を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る煙突は、排気源から伸びる横引き管流路が煙突本体によって形成される上向き煙道に接続されていて、横引き管流路と上向き煙道との接続箇所に、横引き管流路に連通する横向き流路と、この横向き流路に連通する円弧状流路と、この円弧状流路に連通して上向き煙道に排気流を放出する立上り流路と、を備えるエルボ状の曲がり管でなる排気筒が配備されている。そして、上記排気筒の立上り流路を形成している円筒状の立上り壁の上端開口によって形成されている放出口の環状口縁部が、当該排気筒の横向き流路と円弧状流路との境界である連通箇所の上方の1箇所を基点として、この基点から遠ざかる箇所ほど上位に位置するように傾斜している。
【0013】
このように構成された煙突によると、エルボ状の曲がり管でなる排気筒による排気流の方向転換作用によって排気流に作用する抵抗が少なくなる、という長所がそのまま発揮される。これに加えて、排気筒に備わっている円筒状の立上り壁の上端開口によって形成されている放出口の環状口縁部が所定の方向に傾斜していることにより、放出口から上向き煙道に向けて排気流が放出される領域が放出口の軸線方向(すなわち、排気流の流れ方向)に拡がることにより、排気筒の放出口の近くでは、上記した煙道の内側領域で排気流がさらに内側(排気筒の円弧状流路の内周側)に向かって流れる傾向を生じる反面で、煙道の外側領域で排気流がまっすぐ上方に向かって流れる傾向を生じる。このことにより、上向き煙道の内側領域と外側領域との間で生じる圧力差が緩和され、排気筒の放出口の近くの上向き煙道で渦流の発生が抑制される。このような圧力差緩和作用(以下、「内外圧力差緩和作用」という。)によって煙突の排気効率が向上する。
【0014】
本発明では、円筒状の上記立上り壁の一部に、上記環状口縁部を含む上拡がり部が形成されてなる、という構成を採用することが可能である。これによれば、排気筒の円筒状の立上り流路を経由して放出口から煙突本体の上向き煙道に放出される排気流が2段階に亘って拡散する。具体的には、排気流が、立上り壁の上拡がり部の内部空間に流入するときに一次拡散(1段階目の拡散)し、さらに、上拡がり部の内部空間から放出口を経て上向き煙道に放出されるときに二次拡散(2段階目の拡散)する。このような排気流の拡散に伴う圧力差緩和作用(以下、「拡散に伴う圧力差緩和作用」という。)が、上記した内外圧力差緩和作用と相まって煙突の排気効率が向上する。
【0015】
本発明では、円筒状の上記立上り壁の上記環状口縁部に、複数の上向き突片が切り込み状の窪み部を隔てて環状に配列されてなる、という構成を採用することが可能である。これによれば、排気筒の放出口から放出される排気流の一部が、複数の上向き突片の相互間の多数の窪み部を経て上向き煙道へ放出される。これにより、排気筒の立上り流路と煙突本体の上向き煙道との間に生じる圧力差が緩和され、放出口から放出される排気流が放出口から一気に拡散してしまうという状況が抑制されるようになる。また、放出口を形成している環状口縁部が振動することなどに伴う騒音の発生も抑制される。
【0016】
本発明では、上記上拡がり部の上記環状口縁部に、複数の上向き突片が切り込み状の窪み部を隔てて環状に配列されてなる、、という構成を採用することが可能である。これによっても、上記したところと同様に、排気筒の立上り流路と煙突本体の上向き煙道との間に生じる圧力差が緩和され、放出口を形成している環状口縁部が振動することなどに伴う騒音の発生も抑制される。
【0017】
本発明において、排気筒の立上り壁が円筒状である場合、又は、排気筒の立上り壁の一部に上記環状口縁部を含む上拡がり部が形成されている場合には、複数の上記上向き突片のそれぞれが、上記上拡がり部の立上り方向に延び出ている、という構成を採用することが可能である。これによれば、複数の上向き突片が排気流の流れを妨げることがない。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る煙突によれば、排気筒による排気流の方向転換作用によって排気流に作用する抵抗が少なくなる、という長所がそのまま発揮されるものでありながら、排気筒の放出口の環状口縁部が所定方向に傾斜していることによって、排気筒の放出口の近くで煙道の内側領域と煙道の外側領域との間に生じる圧力差が緩和されるようになり、このような内外圧力差緩和作用によって煙突の排気効率が向上する。このような効果は、排気筒の立上り壁の一部に上拡がり部を形成しておいたり、立上り壁の上記環状口縁部に複数の上向き突片を切り込み状の窪み部を隔てて環状に配列しておいたりすることによっていっそう顕著に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る煙突の要部の縦断側面図である。
図2図1の煙突に採用した排気筒の斜視図である。
図3図1の煙突の横断平面図である。
図4図1の煙突の変形例の横断平面図である。
図5】煙突本体の構成を示した説明図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る煙突の要部の縦断側面図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る煙突の要部の縦断側面図である。
図8図7の煙突に採用した排気筒の斜視図である。
図9】本発明の第4実施形態に係る煙突Aの要部の縦断側面図である。
図10図9の煙突Aに採用した排気筒200の斜視図である。
図11】従来例の要部縦断面図である。
図12】他の従来例の要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明の第1実施形態に係る煙突Aの要部の縦断側面図である。図2図1の煙突Aに採用されている排気筒200の斜視図、図3図1の煙突Aの横断平面図、図4図1の煙突Aの変形例の横断平面図、図5は煙突本体100の構成を例示した説明図である。
【0021】
図1において、筒状の煙突本体100によって形される上向き煙道110の下端部に、排気源から伸びる横引き管流路120(矢印で示した)が略直角に接続されていて、その接続箇所に、エルボ状の曲がり管でなる排気筒200が配備されている。この排気筒200は、横引き管流路120に連通する横向き流路210と、この横向き流路210に連通する円弧状流路220と、この円弧状流路220に連通して上記上向き煙道110に排気流を放出する立上り流路230と、を備えている。以上は、煙突Aや排気筒200に備わっている基本的構成であって、図11を参照して説明した従来例と同様である。したがって、この煙突Aによると、排気流が、排気筒200の横向き流路210、円弧状流路220及び立上り流路230を経由することによって略直角方向にスムーズに方向転換して排気筒200の放出口240から上向き煙道110に放出されて上昇する。このような排気筒200による排気流の方向転換作用によって排気流に作用する抵抗が少なくなり、煙突Aによる排気効率が向上する。図1を参照して説明した煙突構造は、煙突本体100の形状が、図3のように円筒形であっても、図4のように四角筒形であっても適用することが可能である。
【0022】
図1及び図2に示したように、この第1実施形態では、排気筒200の立上り流路230を形成している円筒状の立上り壁231の上端開口によって形成されている放出口240の環状口縁部241が傾斜している。さらに具体的には、放出口240の環状口縁部241が、排気筒200の横向き流路210と円弧状流路220との境界である連通箇所イの上方の1箇所を基点Pとして、この基点Pから遠ざかる箇所ほど上位に位置するように傾斜している。このように、環状口縁部241が傾斜していると、排気筒200の放出口240から煙突本体100の上向き煙道110に向けて排気流が放出される領域(放出領域)Zが放出口240の軸線方向、言い換えると、排気流の流れ方向に拡がる。このため、排気筒200の放出口240の近くでは、上記した煙道110の内側領域で排気流が矢印a2で示したようにさらに内側に向かって流れる傾向を生じる反面で、煙道110の外側領域で排気流が矢印a1で示したようにまっすぐ上方に向かって流れる傾向を生じる。このことにより、排気筒200の放出口240の近くでは、煙道110の内側領域と煙道110の外側領域との間で生じる圧力差が緩和されるようになり、このような内外圧力差緩和作用によって煙突の排気効率が向上する。
【0023】
この点を、図11に示した従来例と対比すると、従来例では、排気筒200の放出口240を形成している環状口縁部241が立上り流路230の軸線に対して直交しているため、排気筒200の放出口240から煙突本体100の上向き煙道110に向けて軸線方向の1箇所のみで一気に排気流が放出されて拡散され、円弧状流路220での圧力分布の影響が、立上り流路230を経て排気筒200の放出口240の近くの上向き煙道110での圧力分布にも強く及ぶことになって、排気筒200の放出口240の近くの上向き煙道110では、煙道110の内側領域から煙道110の外側領域にいくほど圧力が高くなる。このような内外の圧力差により生じる渦流が排気流に大きな流れ抵抗を生じさせる。これに対して、図1の第1実施形態では、排気筒200の放出口240から煙突本体100の上向き煙道110に向けて排気流の放出領域Zが放出口240の軸線方向に拡がっている。このために、図1の実施形態では、軸線方向の1箇所のみで排気流が放出口240から放出されて一気に拡散するという事態が起こらない。このため、排気筒200の放出口240の近くでは、煙道110の内側領域と煙道110の外側領域との間に生じる圧力差が緩和されて小さくなる。このような内外圧力差緩和作用によって煙突の排気効率が向上する。
【0024】
この第1実施形態において、煙突本体100は、図5に示したように、鋼板製の外筒101とステンレス製の薄肉鋼板でなる内筒102と、これらの外筒101と内筒102との間に介在された断熱層103とを有してなる。煙突本体100の構造が図5のものに限定されないことは勿論である。
【0025】
図6は本発明の第2実施形態に係る煙突Aの要部の縦断側面図である。図6の煙突Aについても、筒状の煙突本体100によって形成される上向き煙道110の下端部に、排気源から伸びる横引き管流路120(矢印で示した)が略直角に接続されていて、その接続箇所に、エルボ状の曲がり管でなる排気筒200が配備されている。この排気筒200は、横引き管流路120に連通する横向き流路210と、この横向き流路210に連通する円弧状流路220と、この円弧状流路220に連通して上記上向き煙道110に排気流を放出する立上り流路230と、を備えている。以上は、煙突Aや排気筒200に備わっている基本的構成であって、図11を参照して説明した従来例と同様である。したがって、この排気筒200を備える煙突Aにおいても、排気筒200の作用により、排気流が略直角方向にスムーズに方向転換して排気筒200の放出口240から上向き煙道110に放出されて上昇し、排気筒200による排気流の方向転換作用によって排気流に作用する抵抗が少なくなり、煙突Aによる排気効率が向上する。図5を参照して説明した煙突構造は、図6の煙突Aの煙突本体100に対しても適用することが可能である。また、煙突本体100の形状は、円筒形であっても四角筒形であってもよい。
【0026】
この第2実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、排気筒200の円筒状の立上り流路230を形成している筒状の立上り壁231の上端開口によって形成されている放出口240の環状口縁部241が傾斜している。具体的には、放出口240の環状口縁部241が、排気筒200の横向き流路210と円弧状流路220との境界である連通箇所イの上方の1箇所を基点Pとして、この基点Pから遠ざかる箇所ほど上位に位置するように傾斜している。このため、排気筒200の放出口240による排気流の放出領域Zが排気流の流れ方向に拡がる。このため、排気筒200の放出口240の近くでは、上記した煙道110の内側領域で排気流が矢印a2で示したようにさらに内側に向かって流れる傾向を生じる反面で、煙道110の外側領域で排気流が矢印a1で示したようにまっすぐ上方に向かって流れる傾向を生じる。このことにより、排気筒200の放出口240の近くで煙道110の内側領域と煙道110の外側領域との間で生じる圧力差が緩和されるようになり、このような内外圧力差緩和作用によって煙突の排気効率が向上する。
【0027】
さらに、この第2実施形態では、排気筒200の筒状の立上り壁231の立上り壁231の一部に、環状口縁部241を含む上拡がり部242が形成されている。この上拡がり部242は、その全周のどの部分も同一の勾配を有している。
【0028】
第2実施形態に係る煙突Aによれば、排気筒200の立上り流路230を経由して放出口240から煙突本体100の上向き煙道110に放出される排気流が2段階に亘って拡散する。すなわち、排気流が、立上り壁231の上拡がり部242の内部空間に流入するときに一次拡散(1段階目の拡散)し、さらに、上拡がり部242の内部空間から放出口240を経て上向き煙道110に放出されるときに二次拡散(2段階目の拡散)する。このため、排気流の急激な拡散が抑制されて、拡散に伴う圧力差緩和作用が発揮される。この拡散に伴う圧力差緩和作用が、上記した内外圧力差緩和作用と相まって煙突の排気効率が向上する。第2実施形態に係る煙突Aにおいても、煙突本体100には図5に示した構成を採用することが可能であることは勿論、煙突本体100の形状が円筒形であっても四角筒形であってもよい。
【0029】
図7は本発明の第3実施形態に係る煙突Aの要部の縦断側面図である。図8図7の煙突Aに採用した排気筒200の斜視図である。
【0030】
この第3実施形態に係る煙突Aについても、筒状の煙突本体100によって形される上向き煙道110の下端部に、排気源から伸びる横引き管流路120(矢印で示した)が略直角に接続されていて、その接続箇所に、エルボ状の曲がり管でなる排気筒200が配備されている。この排気筒200は、横引き管流路120に連通する横向き流路210と、この横向き流路210に連通する円弧状流路220と、この円弧状流路220に連通して上記上向き煙道110に排気流を放出する立上り流路230と、を備えている。以上は、煙突Aや排気筒200に備わっている基本的構成であって、図11を参照して説明した従来例と同様である。したがって、この排気筒200を備える煙突Aにおいても、排気筒200の作用により、排気流が略直角方向にスムーズに方向転換して排気筒200の放出口240から上向き煙道110に放出されて上昇し、排気筒200による排気流の方向転換作用によって排気流に作用する抵抗が少なくなり、煙突Aによる排気効率が向上する。図7の煙突構造においても、煙突本体100の形状は、円筒形であっても四角筒形であっても適用することが可能である。
【0031】
この第3実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、排気筒200の立上り流路230を形成している筒状の立上り壁231の上端開口によって形成されている放出口240の環状口縁部241が傾斜している。具体的には、放出口240の環状口縁部241が、排気筒200の横向き流路210と円弧状流路220との境界である連通箇所イの上方の1箇所を基点Pとして、この基点Pから遠ざかる箇所ほど上位に位置するように傾斜している。このため、排気筒200の放出口240による排気流の放出領域Zが排気流の流れ方向に拡がる。このため、排気筒200の放出口240の近くでは、上記した煙道110の内側領域で排気流が矢印a2で示したようにさらに内側に向かって流れる傾向を生じる反面で、煙道110の外側領域で排気流が矢印a1で示したようにまっすぐ上方に向かって流れる傾向を生じる。このことにより、排気筒200の放出口240の近くで煙道110の内側領域と煙道110の外側領域との間で生じる圧力差が緩和されるようになり、このような内外圧力差緩和作用によって煙突の排気効率が向上する。
【0032】
さらに、この第3実施形態では、排気筒200の円筒状の立上り壁231の環状口縁部241に、複数の上向き突片251…が切り込み状の窪み部252…を隔てて環状に配列されてなり、それぞれの上向き突片251…が立上り壁231の立上り方向に延び出ている。
【0033】
第3実施形態に係る煙突Aによれば、排気筒200の放出口240から放出される排気流の一部が、複数の上向き突片251…の相互間の多数の窪み部252…を経て上向き煙道110へ放出される。これによっても、排気筒200の放出口240の近くで煙道110の内側領域と煙道110の外側領域との間で生じる圧力差が緩和され、放出口240から放出される排気流が放出口240から一気に拡散してしまうという状況が抑制されるようになる。また、放出口240を形成している環状口縁部241が振動することなどに伴う騒音の発生も抑制される。この第3実施形態では、それぞれの上向き突片251…が立上り壁231の立上り方向に延び出ていることにより、複数の上向き突片251…が排気流の流れを妨げることがないという利点がある。なお、複数の上向き突片251…の向きは、必ずしも立上り壁231の立上り方向に延び出ていることを要しない。
【0034】
図9は本発明の第4実施形態に係る煙突Aの要部の縦断側面図である。図10図9の煙突Aに採用した排気筒200の斜視図である。
【0035】
この第4実施形態に係る煙突Aについても、筒状の煙突本体100によって形される上向き煙道110の下端部に、排気源から伸びる横引き管流路120(矢印で示した)が略直角に接続されていて、その接続箇所に、エルボ状の曲がり管でなる排気筒200が配備されている。この排気筒200は、横引き管流路120に連通する横向き流路210と、この横向き流路210に連通する円弧状流路220と、この円弧状流路220に連通して上記上向き煙道110に排気流を放出する立上り流路230と、を備えている。以上は、排気筒200に備わっている基本的構成であって、図11を参照して説明した従来例と同様である。したがって、この排気筒200を備える煙突Aにおいても、排気筒200の作用により、排気流が略直角方向にスムーズに方向転換して排気筒200の放出口240から上向き煙道110に放出されて上昇し、排気筒200による排気流の方向転換作用によって排気流に作用する抵抗が少なくなり、煙突Aによる排気効率が向上する。図7の煙突構造においても、煙突本体100の形状は、円筒形であっても四角筒形であっても適用することが可能である。
【0036】
この第4実施形態においては、排気筒200の立上り流路230を形成している円筒状の立上り壁231の上端開口によって形成されている放出口240の環状口縁部241が傾斜していると共に、排気筒200の筒状の立上り壁231の一部に、環状口縁部241を含む上拡がり部242が形成されている。さらに、具体的に説明すると、放出口240の環状口縁部241が、排気筒200の横向き流路210と円弧状流路220との境界である連通箇所イの上方の1箇所を基点Pとして、この基点Pから遠ざかる箇所ほど上位に位置するように傾斜している。このため、排気筒200の放出口240による排気流の放出領域Zが排気流の流れ方向に拡がる。このため、排気筒200の放出口240の近くでは、上記した煙道110の内側領域で排気流が矢印a2で示したようにさらに内側に向かって流れる傾向を生じる反面で、煙道110の外側領域で排気流が矢印a1で示したようにまっすぐ上方に向かって流れる傾向を生じる。このことにより、排気筒200の放出口240の近くで煙道110の内側領域と煙道110の外側領域との間で生じる圧力差が緩和されるようになり、このような内外圧力差緩和作用によって煙突の排気効率が向上する。また、上拡がり部242は、その全周のどの部分も同一の勾配を有している。したがって、この第4実施形態に係る煙突Aにおいても、排気筒200の立上り流路230を経由して放出口240から煙突本体100の上向き煙道110に放出される排気流が2段階に亘って拡散する。すなわち、排気流が、立上り壁231の上拡がり部242の内部空間に流入するときに一次拡散(1段階目の拡散)し、さらに、上拡がり部242の内部空間から放出口240を経て上向き煙道110に放出されるときに二次拡散(2段階目の拡散)する。このため、排気流の急激な拡散が抑制されて、拡散に伴う圧力差緩和作用が発揮される。この拡散に伴う圧力差緩和作用が、上記した内外圧力差緩和作用と相まって煙突の排気効率が向上する。第2実施形態に係る煙突Aにおいても、煙突本体100には図5に示した構成を採用することが可能であることは勿論、煙突本体100の形状が円筒形であっても四角筒形であってもよい。
【0037】
さらに、この第4実施形態においては、排気筒200の上拡がり部242の環状口縁部241に、複数の上向き突片251…が切り込み状の窪み部252…を隔てて環状に配列されてなり、それぞれの上向き突片251が上記上拡がり部242の立上り方向に延び出ている。このため、排気筒200の放出口240から放出される排気流の一部が、複数の上向き突片251…の相互間の多数の窪み部252…を経て上向き煙道110へ放出される。これによっても、排気筒200の放出口240の近くで煙道110の内側領域と煙道110の外側領域との間で生じる圧力差が緩和され、放出口240から放出される排気流が放出口240から一気に拡散してしまうという状況が抑制されるようになる。また、放出口240を形成している環状口縁部241が振動することなどに伴う騒音の発生も抑制される。この第4実施形態では、それぞれの上向き突片251…が立上り壁231の立上り方向に延び出ていることにより、複数の上向き突片251…が排気流の流れを妨げることがないという利点がある。なお、複数の上向き突片251…の向きは、必ずしも立上り壁231の立上り方向に延び出ていることを要しない。
【0038】
上記した第2及び第4の各実施形態において、排気筒200の円筒状の立上り壁231に形成されている上拡がり部242は、放出口240の環状口縁部241を含んでいることを条件として、その軸方向長さは短くても長くてもよい。第2実施形態を示している図6や第4実施形態を示している図9では、上記上拡がり部242の長さが立上り壁231の長さに比べて比較的長くなっていることにより、側面視において上記環状口縁部241の基点Pが属している上拡がり部242の長さが短く表れている。また、第2及び第4の各実施形態のように、放出口240の環状口縁部241を傾斜させた場合、その傾斜角度は立上り壁231の横断方向に対して45度程度にしておいても、あるいは、45度より小さい角度、又は、大きい角度にしておいてもよい。
【0039】
図1図12においては、説明及び図面の理解を容易にすることを意図して同一又は相応する要素に同一符号を付している。
【符号の説明】
【0040】
A 煙突
100 煙突本体
110 上向き煙道
120 横引き管流路
200 排気筒
210 横向き流路
220 円弧状流路
230 立上り流路
240 放出口
241 環状口縁部
231 立上り壁
242 上拡がり部
251 上向き突片
252 窪み部
イ 横向き流路と円弧状流路との境界である連通箇所
P 基点
【要約】
【課題】高温でかつ高速の排気流を処理するのに適した煙突を提供する。排気流の抵抗低減対策を講じる。
【解決手段】横引き管流路120と上向き煙道110との接続箇所にエルボ状の曲がり管でなる排気筒200を配備する。排気筒200の放出口240の環状口縁部241を傾斜させる。排気筒200の立上り壁231の一部に上拡がり部を形成してもよい。立上り壁231の環状口縁部241に、複数の上向き突片251を環状に配列しておいてもよい。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12