(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ポリエチレングリコール誘導体を有効成分として含む口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20240315BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240315BHJP
A61K 31/77 20060101ALI20240315BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240315BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240315BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/02
A61K31/77
A61K9/16
A61Q11/00
A61P1/02
(21)【出願番号】P 2022527814
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(86)【国際出願番号】 KR2022003921
(87)【国際公開番号】W WO2022203316
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2022-05-13
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522185173
【氏名又は名称】ソンバイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SUNBIO,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【氏名又は名称】時岡 恭平
(72)【発明者】
【氏名】ノ,カン
(72)【発明者】
【氏名】アン,ミンジョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ビョンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ソング
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドンファ
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2014-0072775(KR,A)
【文献】特表2006-516586(JP,A)
【文献】特表2000-502380(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1791399(KR,B1)
【文献】米国特許第05496558(US,A)
【文献】特表2018-511622(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0124400(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00~8/99
A61Q 1/00~90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として下記化学式1のポリエチレングリコール誘導体、酸度調節剤及び香味剤を含み、
前記ポリエチレングリコール誘導体は、分子量が8,000~15,000Daであり、
顆粒剤形を有することを特徴とする、口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物。
【化1】
化学式1
【請求項2】
前記顆粒は、200~1500μmの粒子サイズを有するものであることを特徴とする、請求項1に記載の口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物。
【請求項3】
前記組成物は、使用時に水に溶かして溶液形態で再構成されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物。
【請求項4】
前記酸度調節剤は、組成物100重量部に対して1~10重量部で含まれるものであることを特徴とする、請求項1に記載の口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物。
【請求項5】
前記組成物は、使用時に水に溶かして溶液形態で再構成するとき、pH7~8を示すものであることを特徴とする、請求項3に記載の口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物。
【請求項6】
前記溶液は、0.001~0.01Pasの粘度を示すものであることを特徴とする、請求項3に記載の口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物をこれを必要とする対象体に適用することを含むことを特徴とする、口腔乾燥症の緩和方法。
【請求項8】
前記適用は、溶液形態で再構成された口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物を投与して濯ぎ出すことを含むことを特徴とする、請求項7に記載の口腔乾燥症の緩和方法。
【請求項9】
前記適用は、1日1回~3回行われることを特徴とする、請求項7に記載の口腔乾燥症の緩和方法。
【請求項10】
分子量が8,000~15,000Daである下記化学式1のポリエチレングリコール誘導体粉末を製造する段階;
前記ポリエチレングリコール誘導体粉末に酸度調節剤及び香味剤を混合した後に気密容器に移して高温で液化させる段階;
前記液化が完了すると、気密容器を低温に移して固形化する段階;及び
前記固形化が完了すると、粉砕して顆粒を製造する段階;を含むことを特徴とする、 請求項1に記載の口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物の製造方法。
【化2】
化学式1
【請求項11】
pH7~8になるように酸度調節剤を添加する段階を含むことを特徴とする、請求項10に記載の口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物の製造方法。
【請求項12】
前記液化させる段階は、50~70℃で1時間の間行われることを特徴とする、請求項10に記載の口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物の製造方法。
【請求項13】
前記固形化する段階は、
常温で1時間の間 1次硬質化する段階;及び
-20℃で2次硬質化する段階を含むことを特徴とする、請求項10に記載の口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物の製造方法。
【請求項14】
1回使用量の水15~30mlを計測し得る容器及び1回使用量の請求項1に記載の顆粒剤形1~1.5gの口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物が包装されたパッケージを含むことを特徴とする、口腔乾燥症緩和用製品。
【請求項15】
1回使用量の水は20mlであり、1回使用量の口腔リンス組成物は1gであることを特徴とする、請求項14に記載の口腔乾燥症緩和用製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレングリコール誘導体を有効成分として含む口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔乾燥症(xerostomia)は、様々な原因により唾液の分泌量が減少して口腔粘膜が乾燥化する疾患である。唾液は、口腔の主要機能を円滑に維持して口腔粘膜を保護する重要な役目をするので、唾液分泌量が減少して口腔乾燥症が生じれば非常に深刻な障害が起こるが、主に咀嚼機能と言語機能の異常を訴えるようになり、ひどい口臭と虫歯が発生し、程度によって口腔粘膜の灼熱感又は口腔粘膜の潰瘍などによりひどい苦痛を経験するようになる。
【0003】
口腔乾燥症の原因は、唾液腺無発生(salivary gland agenesis)のような先天性奇形(congenital malformation)、シェーグレン(Sjogren)症侯群や慢性移植片対宿主病(graft-versus-host disease)のような自己免疫疾患(autoimmune diseases)、そして精神医学的異常、糖尿病、放射線治療合併症、C型ウイルス肝炎、慢性心不全症、後天性慢性欠乏症、一次胆汁性肝硬変、その他薬物服用、ストレス及び精神疾患、ひどい高熱や下痢、多量の利尿による脱水、唾液腺管が唾石や癌などにより塞いだとき、流行性耳下腺炎のような唾液腺の感染性病巣のような身体異常などが一時的又は長期的な口腔乾燥症誘発の原因となった。また、人体老化、更年期障害の原因で覚めて活動中には多くの刺激により唾液の分泌が増加するのに比べ、睡眠中には著しく唾液の分泌量が減少して睡眠中に起こる低唾液症により不便感を訴える患者の割合が23%に達し、大部分が老人性により現われた(Thie et al.、2002)、
【0004】
口腔乾燥症の治療は、副交感神経刺激薬(parasympathomimeticdrugs)のうちコリン性薬剤(pilocarpine(Salagen、MGI Pharmaceuticals.、Minneapolis)、Cevimeline(Evoxac);一日3~4回食後服用、薬効持続は、2~4時間)を用いて唾液の分泌を促進させるが、身体の他の部位にも影響を及ぼして涙や鼻水の分泌を増加させるか汗の分泌が増加し得る。喘息、急性虹彩炎、挟隅角、緑内障患者には禁忌であり、心血管疾患、慢性気管支炎、慢性閉塞性疾患の場合、副作用の可能性がある。また、唾液分泌を促進させるxylitol、lactoperoxidase又はglucose oxidase)が含有されている砂糖無しガム、キャンデーなどが販売されている。粘液成分を含有するチューインガムが長期間の唾液分泌促進効果を持続し(Aagaard et al.、1992)、粘液成分の噴霧が老人性口腔乾燥症に大きい効果があった(Momm and Guttenberger、2002)。
【0005】
従来技術としては、オイゲノール及び竹塩を含むことで口腔疾患の予防及び改善が可能な口腔リンス組成物に対して開示しており(大韓民国公開特許第10-2020-0050801号)、海藻抽出物を含むことで口臭を緩和し得る組成物に対して開示している(大韓民国登録特許第10-2313830号)。
【0006】
しかし、前記従来技術は、口腔内有害菌の死滅及び口臭除去を主な目的として提示しているため、口内刺激が一部同伴されるか一時的な水分供給効果を示すので、口腔乾燥症緩和の持続性が低いため改善効果を期待しにくいという問題点がある。
【0007】
また、本発明者らによる以前研究(大韓民国登録特許第10-1526258号)では、口腔粘膜と結合し得る口腔乾燥症の予防、治療又は改善のための組成物として多様な反応基により改質したポリエチレングリコール誘導体を有効成分として含む内容を開示した。これを土台で、実際の製品化のために各誘導体の効能及び安定性結果を根拠としながら人体に適用が可能であるか否かを確認して、口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】大韓民国公開特許第10-2020-0050801号
【文献】大韓民国登録特許第10-2313830号
【文献】大韓民国登録特許第10-1526258号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような背景下で、本発明者らは、ポリエチレングリコール誘導体を有効成分として刺激なしに口腔粘膜の共有結合により口腔保湿持続力を増加させ得るだけでなく、携帯が簡便で且つ使用が容易な顆粒タイプの口腔保湿剤として、口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物を完成した。
【0010】
したがって、本発明の目的は、ポリエチレングリコール誘導体を有効成分として含む口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、ポリエチレングリコール誘導体を有効成分として含む口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物を提供する。
【0012】
以下、本発明の構成を詳しく説明する。
【0013】
本発明は、ポリエチレングリコール誘導体を有効成分として含む口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物に関する。
【0014】
ポリエチレングリコールは、保湿効果があるとよく知られている。しかし、口腔粘膜内に塗布されている途中水や唾液により容易に洗われるので、口腔乾燥症緩和効果の持続性が低い。
【0015】
さて、本発明では、下記化学式1で示したように、ポリエチレングリコールの末端反応基を改質して口腔粘膜の上皮細胞と共有結合し得るようにすることによって、ポリエチレングリコール誘導体が口腔粘膜の上皮細胞に長時間付着されているようにして、このような問題点を解決した。
【0016】
【0017】
本出願人の従来研究を通じて、様々なPEG誘導体のうち口腔粘膜の上皮細胞上のアミン基と共有結合し得る反応基を有した多様なPEG誘導体が開発されたことがある。多様なPEG誘導体を用いて口腔適用に適合する製品を開発、研究する過程で、本発明者らは、そのうちハロゲン、アミン(amine;NH2)、エポキシド(epoxide)、マレイミド(maleimide)反応基は、細胞のアミン基とアミド(amide)結合反応のための所要時間が長く、これによって、口腔内への適用時間が長い必要があるという問題点があることを見つけた。また、PEG誘導体の反応基の合成工程上toxicantの使用及び副産物が残存し得、最終完製PEG誘導体のodor特性上化学的合成で誘発される香が残存して口腔内適用に不適合するという点も明らかにした。そして、アルデヒド(aldehyde;CHO)反応基は、アミド(amide)結合反応のためにreducing agent(Sodium cyanoborohydride)が要求され、ニトロフェニルカーボネート(nitrophenyl carbonate;NPC)反応基は、amide反応過程で有害な副産物(nitrophenol)を発生させて口腔内適用に適合しないことを確認した。
【0018】
それで、本発明者らは、化学式1の-NHS(N-Hydroxysuccinimide)反応基を有し、分枝型に改質されたポリエチレングリコール誘導体を用いると、口腔内に適用時にアミド反応速度が速く、反応の前/後に要求される試薬及び副産物がなく、口腔内に適用するとき不便感がほとんどなく、安全であることを確認して、本発明を完成した。
【0019】
本発明は、有効成分として化学式1のポリエチレングリコール誘導体、酸度調節剤及び香味剤を含み、
前記ポリエチレングリコール誘導体は、分子量8,000~15,000Daであり、
顆粒剤形を有する、口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物を提供する。
【0020】
下記実施例から確認し得るように、化学式1のポリエチレングリコール誘導体は、線形PEG誘導体と比較して吸湿率が高いことを確認した。これは、前記ポリエチレングリコール誘導体が口腔粘膜と結合するとき水分子をより多く捕まえておくことができるので、保湿持続力を強化し得る。
【0021】
また、本発明による口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物は、吸湿及び静電気など保管安定性を改善するために顆粒剤形で製造される。
【0022】
本発明の一具体例で、前記顆粒は、200~1500μmの粒子サイズを有することができる。例えば、前記顆粒は、300~1000μmの粒子サイズを有することができる。製造(生産)及び1回使用量のパッケージ包装、そして、製造及び保管時の安定性のために顆粒の粒子サイズは、200~1500μmが好ましい。
【0023】
本発明の顆粒剤形の組成物は、使用時に水に溶かして溶液形態で再構成される。
【0024】
本発明による顆粒剤形の組成物1gを20mlの水に迅速に溶かして口腔内に適用すると、乾燥した口腔粘膜に前記化学式1のポリエチレングリコール誘導体が口腔粘膜と堅たく結合された水分層を形成して既存製品の一時的な水分層に比べて長時間保湿が維持される特徴がある。したがって、本発明の顆粒剤形の組成物は、口内の乾燥感を感じるとき、特に、就寝前の口腔乾燥患者、老人、一般人が1回使用量を20mlの水と混ぜた後溶液で再構成して、約30~60秒間口の中に含んでから吐き出す製品である。効果としては、口腔内保湿作用、虫歯予防機能、清浄効果などがある。
【0025】
本発明の組成物において、前記酸度調節剤は、組成物100重量部に対して1~10重量部、例えば、2重量部~8重量部、3~7重量部で含まれる。好ましくは、前記酸度調節剤は、4~6重量部で含まれる。
【0026】
一方、前記組成物は、使用時に水に溶かして溶液形態で再構成するとき、前記溶液の粘度は、0.001Pas~0.01Pasであってもよい。溶液の粘度は、使用者の便宜と口腔内適用、使用感などに影響を及ぼすことができるので前記範囲程度が適切である。前記粘度は、口腔に適用するとき嗜好性を改善するだけでなく、顆粒剤を直接投与したときに発生する細胞毒性及び刺激を防止することができる。また、前記組成物は、使用時に水に溶かして溶液形態で再構成するとき、前記溶液の濃度は、4~5%であってもよい。
【0027】
酸度調節剤を含ませることによって、前記組成物は、使用時に水に溶かして溶液形態で再構成するとき、pH7~8を示すようにすることが好ましい。本発明者らの研究結果によると、pH7~8は、本発明によるPEG誘導体と口腔内アミンとの共有結合に有利な条件である。また、口腔乾燥症患者の唾液pHは、6.4以下に低く、口腔乾燥症状と唾液pHは、有意な陰の相関関係を示すので、口腔乾燥症状の緩和のための組成物のpHは、pH7~8が好ましい。
【0028】
香味剤としては、例えば、シトラス(Citrus)、フルーツ(fruit)、ベリー(berry)、バニラ(Vanilla)、ミント(Mint)などのように口腔内適用に適合する粉末型食品香料を用いることができ、その種類は特に制限されない。香味剤は、組成物100重量部に対して1~10重量部、例えば、4~10重量部で使用可能であるが、これに制限されるものではない。
【0029】
本発明による口腔リンス組成物に含まれる上述した成分それぞれは、各国家別食品安全規範に規定された最大使用量を超過しない範囲内で本発明の口腔リンス組成物に含まれ得る。
【0030】
また、本発明は、前記口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物をこれを必要とする対象体に適用することを含む口腔乾燥症の緩和方法を提供する。
【0031】
前記適用は、溶液形態で再構成された口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物を投与して濯ぎ出すことを含む。
【0032】
例えば、本発明による顆粒剤形の口腔リンス組成物1gを20mlの水に迅速に溶かして口腔内に適用すると、乾燥した口腔粘膜に前記化学式1のポリエチレングリコール誘導体が口腔粘膜と堅たく結合された水分層を形成して既存製品の一時的な水分層に比べて長時間保湿が維持される。したがって、口腔乾燥症を有している対象体又は患者に有用に用いられ得る。前記適用は、1日1回~3回行われ得るが、これに制限されるものではない。口内の乾燥感を感じるときに随時に適用することができ、特に、就寝前に適用することが有利である。
【0033】
また、本発明は、口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物を製造する方法を提供する。
【0034】
以下、本発明の製造方法の構成を詳しく説明する。
【0035】
本発明の製造方法において、分子量が8,000~15,000Daである化学式1のポリエチレングリコール誘導体粉末を製造する段階;前記ポリエチレングリコール誘導体粉末に酸度調節剤及び香味剤を含んだ後気密容器に移して高温で液化させる段階;前記液化が完了すると、気密容器を低温に移して固形化する段階;及び前記固形化が完了すると、粉砕して顆粒を製造する段階を含むことができる。
【0036】
本発明による化学式1のポリエチレングリコール誘導体の製造には、反応基として-NHSを用いた。これは、NHS esterの半減期が比較的長く、生産工程数が少ないため簡単であり、生産工程上の危険性が低いため大量生産にも適合する。
【0037】
前記化学式1のポリエチレングリコール誘導体の粉末を製造する段階で、ポリエチレングリコール誘導体は、分子量8,000~15,000Daが好ましい。分子量が8,000Da未満である場合、分子量が15,000Daを超過する場合は、吸湿率が低くなるだけでなく、生産工程中に結晶化、パウダー化工程が複雑になり、生産収率が低くなる問題点がある。
【0038】
前記ポリエチレングリコール誘導体を選定する段階で、ポリエチレングリコール誘導体は、分枝型構造が線形構造より有利である。分枝型構造の場合、吸湿率がより高く、口腔粘膜と結合する誘導体反応基の数が多いので、口腔粘膜に結合したときにより長時間多い水分を含んでしっとりした口腔を維持し得る。
【0039】
本発明の製造方法において、pH7~8に合わせて酸度調節剤を添加する段階を含むことができる。
【0040】
前記液化させる段階は、50℃~70℃で1時間の間行われ得る。このとき、50℃未満であると、液化が十分に行われず、70℃を超過すると、誘導体分子が一部分解されて効果が減少する。
【0041】
前記固形化する段階は、常温で1時間の間1次硬質化する段階;及び-20℃(冷凍)で2次硬質化する段階を含むことができる。
【0042】
前記顆粒を製造する段階で顆粒の粒子サイズは、200~1500μmであるとき保管安定性及び製品包装時の静電気減少のために好ましい。
【0043】
また、本発明は、1回使用量の水15ml~30mlを計測し得る容器及び1回使用量1g~1.5gの顆粒剤形の口腔乾燥症緩和用組成物が包装されたパッケージを含む口腔乾燥症緩和用製品を提供する。
【0044】
前記製品は、1回使用量が包装された顆粒剤形の口腔乾燥症緩和用組成物を1回使用量の水を計測した容器に入れて混合して溶解させた後、乾燥した口腔に適用してうがいをしてから吐き出すという指示がある指示書を含むことができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明による口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物は、化学式1のポリエチレングリコール誘導体を有効成分として刺激なしに口腔粘膜と共有結合して口腔保湿の持続力を増加させ得るだけでなく、顆粒剤形を有することによって製造及び包装が容易であり、保管及び使用に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1A及び
図1Bは、本発明による口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物の粉末剤形及び顆粒剤形のNMR(Nuclear Magnetic Resonance)分析結果を示す。
【0047】
図2は、本発明による口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物の剤形による表面静電気の比較結果である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明を下記実施例によって詳しく説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記実験によって限定されるものではない。
【0049】
実験例1.口腔内の吸湿力のためのPEG誘導体の吸湿率確認試験
【0050】
口腔内の吸湿率が高いPEG-OH構造を確認して決定するために、互いに異なる構造を有するPEG誘導体の吸湿率を試した。
【0051】
試験物質:吸湿率の試験のためのPEG誘導体として液体型(ワックス型)PEGではない分子量3,000Da以上の乾燥粉末を用い、下のような構造の線形構造のPEG(化学式A)分子量3,400Daと10,000Da、そして、分枝型構造の4arm PEG(化学式B)と6arm PEG(化学式C)分子量10,000DaのPEG粉末を用いて試験を進行した。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
試験物質は、DAECHANG化学から購入し、試験のために有機溶媒を用いて抽出及びパウダー化工程で粉末粒子を均一に前処理した後に試験を進行した。
【0056】
吸湿度測定方法:吸湿度は、PEG(polyethylene glycol)の質量当たり吸湿する水蒸気の重さで確認した。温度25±1℃のデシケーターでPEGを乾燥させて前処理した後、吸湿条件である温度25±1℃、相対湿度60±2%の条件で24時間放置し、PEG 1g当たりの重さ増加(mg)をそのPEGの吸湿度で規定した。各PEGの吸湿率は、前記吸湿条件の放置前後の重さ差を比較して%で計算して判断した。その結果を下記表1に示した。
【0057】
【0058】
前記結果のように、線形Di-PEG-OHの分子量3,400Da(比較例1)が最も低い10.14%、10,000Da(比較例2)は12.31%であると確認され、分枝型4-arm PEG-OHの分子量10,000Da(実施例1)が15.48%として最も高い吸湿率を示した。
【0059】
線形及び分枝型構造のPEG-OHの吸湿率を確認した結果、固体粉末の線形PEG-OHは、分子量が高いほど吸湿率が高く(すなわち、分子量3,400Da(比較例1)より10,000Da(比較例2)の吸湿率が高い)、同じ分子量10,000Daを基準として線形と分枝型PEG構造の吸湿率を比較したとき、分枝型PEGの吸湿率が高かった。特に、6-arm PEG-OH(比較例3)に比べて4-arm PEG-OH(実施例1)構造が最も高い吸湿率を示して本発明の主原料として4-arm PEG-OH(実施例1)を選定した。
【0060】
分枝型4arm-PEG-OH以外に6arm-PEG-OHと8arm-PEG-OHは、口腔内の保湿用途として用いることができるが、PEG誘導体のための合成/製造工程及び保湿効果において4arm-PEG-OHより優秀性を確認することができなかった。
【0061】
実験例2.口腔内の吸湿力のための4arm-PEG-OH分子量別水分量の確認試験
【0062】
実験例1の結果によって分枝型4arm-PEG-OH構造の吸湿率が高いということを確認し、同一構造の分子量による吸湿力を確認するために4arm PEG-OHの10,000Da、20,000Da、30,000Da分子量による水分量確認試験を行った。試験方法は、それぞれの分子量別4arm-PEG-OH試験物質を吸湿条件である温度25±1℃、相対湿度60±2%に露出する前と4時間の間露出した後、それぞれの試験物質が含有している水分量を水分測定器(MS-70;METTLER TOLEDO社、400W straight halogen lamp heating system with SRA filter and SHS weighting technology)を用いて分析した。すなわち、吸湿条件に露出前、後の水分量の差を用いて吸湿力を確認した。
【0063】
下表のように4arm-PEG-OH構造の10,000Da、20,000Da、30,000Daの分子量による水分量及び吸湿水分量を測定した。4arm-PEG-OHの分子量5,000Da未満のPEG誘導体(例えば、2,000Da及び5,000Da)は、生産/合成工程で粉末化が容易ではないため本試験物質から除いた。各分子量の4arm-PEG-OHは、DAECHANG化学から購入し、試験のために有機溶媒を用いて抽出及びパウダー化工程で粉末粒子を均一に前処理した後に試験を進行した。その結果を下記表2に示した。
【0064】
【0065】
前記結果のように、分子量が小さいほど相対湿度60%で4時間露出した前後の水分量の差が大きかった。すなわち、4arm-PEG-OHの分子量が大きくなるほど吸湿力が低いことで現われた。
【0066】
すなわち、4arm-PEG-OHの分子量10,000Da、20,000Da、30,000Daのうち10,000Daの4arm-PEG-OH(実施例1)が相対湿度60%で露出した前後の水分量の差(A-B)が最も大きく、多くの水分を吸収することが確認された。
【0067】
上述したように、4arm-PEG-OHの分子量2,000Da又は5,000Daは、PEG誘導体のための最終粉末製造工程の難しさとそれによる生産収率が低いため除いた。PEG誘導体化のための全体反応工程で結晶及び粉末製造工程は、化学反応過程及び濾過/濃縮後に有機溶媒を用いた結晶及び再結晶工程で生産収率に影響を与える。また、有機溶媒で不純物を除去する洗浄/再結晶過程、乾燥後の最終均一粒子の粉末化工程においても生産収率が低くなるので必須考慮事項である。実験例2の結果によって、4arm-PEG-OHの分子量20,000Daと30,000Daは、分子量の増加による保湿効果が低いため口腔内保湿用途で用いることが不適切であった。
【0068】
このような理由で、本発明の口腔内保湿用途のための主成分であるPEG誘導体の合成及び製造のために4arm-PEG-OH構造の分子量10,000Da(実施例1)を主原料で用いた。
【0069】
実験例3.PEG誘導体反応基の選定
【0070】
口腔内粘膜に存在するアミン基と共有結合を形成するPEG誘導体の反応基を選定するために、PEG誘導体の反応基による半減期及び該当反応基の合成に要求される生産工程数(step数)を比較分析した。半減期が短いと、組成物を水に溶かす間に加水分解が速く起きるので、口腔粘膜のアミン基との共有結合が起きられない。したがって、半減期が短い反応基は、口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物の製造に使いにくい。
【0071】
半減期の測定は、25℃のpH8バッファー条件で加水分解するN-hydroxysuccinimide(NHS)groupのUV吸光度を土台で測定した。その結果を下記表3に示した。
【0072】
【0073】
前記結果のように、Succinimidyl Carbonate(SC)ester(比較例7)は、生産工程が1stepとして簡単であり、半減期が比較的長いが、製造工程上phosgene gasを用いる危険及び環境的為害性があった。一方、本発明によるSuccinimidyl Glutarate(SG)で改質された誘導体(実施例2)の場合、口腔内に適用するときアミド反応速度が速く、反応の前/後に要求される試薬及び副産物がなく、口腔内に適用するとき不便感及び安全性に問題がない。また、他の反応基と比較したとき、実施例2の半減期が比較的長く、生産工程数が少ないため簡単であり、生産工程上の危険性が低かった。したがって、下記製造例1を通じてSuccinimidyl Glutarate(SG)で改質された誘導体(化学式1)を製造して以後の実験に用いた。
【0074】
<製造例1.化学式1のポリエチレングリコール誘導体の製造>
【0075】
【0076】
【0077】
常温でメチレンクロリド(methylene chloride)に化学式2の化合物を溶かした後、トリエチルアミン(triethyamine)を添加した。反応溶液にグルタル酸無水物(glutaric anhydride)を入れた後に常温で20~24時間撹拌する。反応溶液に14%の塩化アンモニウム(Ammonium chloride)水溶液を入れて洗浄して層が分離されると下の部分の有機溶液層を収集した。水溶液層をメチレンクロリド(methylene chloride)を用いて抽出した。取り合わせた有機溶液層は、硫酸マグネシウム(magnesium sulfate)を用いて水分を除去して溶媒を濃縮した後にジエチルエーテル(diethyl ether)に入れて沈澱させた。沈殿物を濾過して常温で真空下で24時間乾燥させて化学式3化合物を得た。
【0078】
化学式3化合物をメチレンクロリド(methylene chloride)に溶かしてN-ヒドロキシコハク酸イミド(N-Hydroxy succinimide、NHS)とジシクロへキシルカルボジイミド(Dicyclohexyl carbodiimide、DCC)を添加した。反応溶液を常温で15~20時間撹拌した。反応後、副産物であるジシクロへキシルウレア(dicyclohexyl urea、DCU)は、ガラスろ過器(glass filter)を用いて濾過し、濾過された溶液は、溶媒を濃縮した後にジエチルエーテル(diethyl ether)に入れて沈澱させた。沈殿物を濾過した後、55±5℃で酢酸エチル(ethyl acetate)に溶かして0-5℃で15~17時間再結晶した。再結晶物は、濾過してジエチルエーテル(diethyl ether)で3回洗浄した後、常温の真空下で24時間乾燥させて重量平均分子量が10,000である化学式1の化合物(n=57)を得た。
【0079】
実験例4.pH調節剤を用いた組成試験
【0080】
本発明者らの研究結果、口腔内粘膜のアミン基と化学式1のPEG-SG誘導体の反応基が共有結合を形成する条件は、pH6.0~8.0であると確認された。
【0081】
しかし、口腔の保湿のための主成分で用いられる化学式1のPEG-SG誘導体と香味剤を水に溶かしたとき、弱酸性(pH4.5)を示して、前記pH条件に適合しなかった。
【0082】
本発明の組成物を口腔内の共有結合に適合するpH条件に調整するために、食品添加物として用いられる酸度調節剤(Sodium bicarbonate)を添加してpH6.0~8.0となるように酸度調節剤の用量を決定した。
【0083】
試験物質:下記表4のように、酸度調節剤(Sodium Bicarbonate)を製品含量(1.5g)の0(control)、1、5、10%で添加して準備した。各組成当たり3個の1g試料を用いてpH testを行った。
【0084】
【0085】
試験方法:準備したsampleのpHを正確に測定するために、pH測定器の矯正を3区間(pH4.0、7.0、10.0標準バッファー)で行い、許容可能な媒介変数pH勾配90~105%と0±30mV(25℃で0.5pH units)を確認した。それぞれの試験物質1gを蒸溜水20mlに完全に溶かした後、pHを確認した。その結果を下記表5に示した。
【0086】
【0087】
前記結果のように、酸度調節剤1、5、10%を添加したそれぞれの試料の平均pHは、7.0、7.5、7.8であった。結果的に、酸度調節剤の添加量1~10%は、共有結合pH6.0~8.0条件に適合する用量範囲であることが確認された。
【0088】
しかし、官能評価結果、酸度調節剤の添加量が10%以上である組成物(実施例5)は、口腔内に適用するとき苦みと舌に刺激を誘発して除いた。その後の実験では、酸度調節剤の添加量が5%である組成物(実施例4)を下記製造例2によって製造して用いた。
【0089】
<製造例2.口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物の製造>
【0090】
化学式1のポリエチレングリコール誘導体、酸度調節剤及び香味剤を含む口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物を多様な剤形で製造し、細胞毒性(人体安全性)、保湿効果(機能性)などの人体適用可能性及び製品化過程でのハンドリングの容易性、製品安定性などを下記実験例を通じて評価した。
【0091】
<製造例2-1.粉末型口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物の製造>
【0092】
ポリエチレングリコール誘導体89重量部、酸度調節剤として炭酸水素ナトリウム5重量部、香味剤としてミント6重量部をV型混合基にそれぞれ添加した後、20~25rpmで15分混合して、粉末形態の完製組成物を製造した。
【0093】
<製造例2-2.液状型口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物の製造>
【0094】
製造例2-1の粉末型組成物1.5gを30ml水に溶かして液状型組成物を製造した。
【0095】
<製造例2-3. 顆粒型口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物の製造>
【0096】
製造例2-1で製造された粉末型組成物が含まれた気密容器を60℃で1時間の間液化させた。前記液化が完了すると、気密容器を常温に移して1時間の間1次硬質化した後、-20℃で2次硬質化して固形化した。前記固形化が完了すると、355~1400μm粒子サイズに粉砕した。
【0097】
実験例5.細胞毒性試験
【0098】
細胞毒性試験は、本発明による組成物の安全性を確認するための試験であって、培養細胞(L-929)で細胞毒性反応有無と程度を評価した。試験は、ISO 10993に提示された各試験法によってGLP(Good Laboratory Practice)機関で委託して行った。
【0099】
試験物質:
【0100】
下記表6のように、酸度調節剤が含まれない粉末剤形(A)、酸度調節剤が含まれた粉末剤形(B、製造例2-1)、粉末剤形(B)を30mlの水に溶かした液状型(C、製造例2-2)試験物質でそれぞれの試験液を製造した。
【0101】
【0102】
細胞毒性試験(Cytotoxicity Test)5-1.粉末試料試験方法:抽出液(E-MEM+5%FBS)に粉末試験物質と対照群を0.2g/ml濃度で溶かし、24±2時間の間溶解させて試験液を作った。細胞L-929の培養培地をplate wellで除去し、1mLの試験液、対照液培地(抽出液)に交替した後に細胞を培養した。培養するうちに、24、48、72±4時間別に顕微鏡検査を行って細胞毒性に対して評価した。陽性対照群と陰性対照群も試験に用いた。
【0103】
5-2.液体試料試験方法:希釈液(2X E-MEM+10%FBS)と液体試験物質を1:1で組み合わせ/希釈した液体試験液を製造した。細胞L-929の培養培地をplate wellで除去し、1mLの試験液、対照液培地(希釈液)に交替した後に細胞を培養した。培養するうちに、24、48、72±4時間別に顕微鏡検査を行って細胞毒性に対して評価した。陽性対照群である塩化カドミウム(100uM CdCl2)と陰性対照群であるE-MEM+5%FBSも試験に用いた。
【0104】
細胞毒性試験の評価基準は、細胞の形態学的変化及び溶解又は分離による生存細胞の変化ていどを評価して0~4の点数で記録した。3と4点数は、細胞毒性があると判定し、1と2の点数は、細胞毒性がないと判断した。その結果を下記表7及び表8に示した。
【0105】
【0106】
前記結果のように、各組成物及び二つの剤形で細胞毒性試験を確認した結果、比較例13及び14は、細胞毒性点数「4」点で記録されて強い細胞毒性を示し、実施例6は、細胞毒性点数「0」として細胞毒性を全く示さなかった。実施例6は、酸度調節剤を含み、その組成物を30mlの水に溶かして液状で細胞に適用することによって、L-929細胞の形態学的変化及び生存に影響を及ぼさない安全な組成物及び剤形であると確認された。
【0107】
【0108】
前記結果のように、粉末組成物(比較例13及び14)は細胞毒性を示すので、唾液分泌量が少ない口腔乾燥患者に乾燥した粉末剤形を直接適用するのが適合しない。
【0109】
したがって、本発明の粉末剤形に水分を添加して液状剤形に変更した後、細胞毒性試験のための試験物質の濃度が0.2g/mlで0.025g/ml(1.5g/30mlx1/2)に減少して細胞毒性が現われなかった。また、乾燥した口腔粘膜に粉末形態の組成物を適用すれば、鋭敏な粘膜に異物感の刺激性を与えることとは異なり、粉末を液状型剤形で再構成する場合、口腔内の不足な水分を追加供給し、患者が製品を容易に口腔内に適用し得るようにして保湿効果を増加させる期待効果を示した。
【0110】
実験例6.細胞生存率による保湿効果の確認試験
【0111】
本発明の組成物をヒト上皮細胞に適用して主成分PEG誘導体が細胞の表面に共有結合することによって保湿層が形成され、この細胞を乾燥な環境に露出させて細胞生存率を確認する試験管内テストを行った。
【0112】
試験物質:
【0113】
試験例5で細胞毒性の安全性が確認された本発明の実施例6とColgate社の口腔乾燥緩和製品であるHydris Oral Rinse製品を試験物質で用いた。二つの試験物質は全て液体として同一剤形である。陰性対照群としては、PBS(phosphate-buffered saline;Gibco)を用いた。
【0114】
【0115】
試験方法:ヒト咽頭上皮細胞株(human pharynx epithelial cell)を用いて本発明の組成物とColgate社のHydris Oral Rinse及びPBS(phosphate-buffered saline)を37℃で15分間細胞に適用して培養した後、試験物質を除去して細胞をPBSで洗浄した後に25℃、湿度30%の乾燥した条件に露出させて細胞生存率を測定した。処理した試験物質が乾燥による細胞死滅を減少させて細胞を保護する効果を細胞生存率として確認した。陽性対照群でPBSを細胞に処理し、細胞を乾燥条件に露出しない細胞の生存率を1(100%)に設定し、試験物質処理による細胞生存率を百分率で表示した。細胞生存率は、Cell Counting Kit8(CCK8;Dojindo Molecular Technologies、Inc、。Rockville、MD、USA)を用いて分析した。このキットは、水溶性テトラゾリウム塩(tetrazolium salt)を用いて電子運搬体がある状態でbio reduction時にオレンジ色のformazan dyeを生成して生きている細胞の数を定量化するのに用いられる。その結果を下記表10に示した。
【0116】
【0117】
前記結果のように、陽性対照群の細胞生存率(%)を基準として本発明の実施例6の細胞生存率mean値は、71.9%(median:81.5%)として最も高い細胞生存率を示し、既存GSK社のHydris製品は、mean値が12.0%(median:11.5%)の比較的低い生存率を示した。
【0118】
実施例6の主成分PEG誘導体と口腔細胞の共有結合により細胞洗浄後にも保湿成分が細胞に残って保湿コーティングの効果を維持したので、細胞を洗浄後に乾燥した環境に露出するとき、乾燥による細胞の死滅を最小化して細胞生存率を維持させたことである。すなわち、既存の保湿剤を含む組成物は、口腔内に適用後、話すか飲料/飲食物などの摂取により洗われて保湿剤としての役目に制限的であるか保湿効果が一時的であり、それによって、随時に口腔内に適用しなければならない。しかし、本発明の主成分PEG誘導体は、細胞と共有結合して物理的刺激により洗われなくて長く保湿効果を維持することである。
【0119】
実験例7.主成分4arm-PEG-SG誘導体の反応基活性及び静電気試験
【0120】
一般的なPEG誘導体は、化学的反応、合成、製造工程、結晶化及び洗浄後の再結晶過程などを経て最終粉末(powder type)形態に製造される。このような粉末形態のPEG誘導体を添加剤と混合し、定量(1g)パッケージ包装のために回収した混合物を装備のホッパー(hopper)に満たした後に粉末が振動板で秤(ロードセル)に供給されて重さを測定し、定量をアルミニウムパッケージに充填するようになる。しかし、製造例2-1のような粉末型製剤の場合、生産過程初期の秤量及び混合、混合物の回収過程で静電気による損失が発生し、同じ理由で回収率も低くなる問題点が発見された。
【0121】
したがって、本発明の主成分PEG誘導体である4arm-PEG-SGの物理的形態、すなわち、粉末剤により発生する製造工程上の静電気問題を解決するために製造例2-3の顆粒剤形で物理的形態を変化させて反応基活性変化有無及び静電気発生有無を分析した。
【0122】
試験物質:上述した実験例と同様に粉末状態のPEG誘導体である4arm-PEG-SGと顆粒剤形の試料を準備した。
【0123】
試験方法
【0124】
静電気試験の前に、粉末形態の4arm-PEG-SGを融解及び堅く凝固させる物理的状態変化後にもPEG誘導体の反応基活性及び安定性に問題がないことをNMR(Nuclear Magnetic Resonance)分析で確認した。
図1A及び
図1Bは、本発明による口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物の粉末剤形及び顆粒剤形のNMR(Nuclear Magnetic Resonance)分析結果として、物理的状態の変更と関係なく反応基活性及び安定性に問題がないことを確認した。
【0125】
静電気試験は、二つの剤形の主成分PEG誘導体の表面静電気力を測定し得るelectrostatic meter(EYE-02)を用いて測定した。粉末剤と顆粒剤の主成分PEG誘導体を製造工程上秤量するときに用いるPET材質である保管用パック(ビニルパック)にそれぞれ50g、100gずつを入れ、表面静電気力を測定し比較した。
【0126】
図2に示したように、PEG誘導体である4arm-PEG-SGの物理的形態、すなわち、粉末剤と顆粒剤により発生する表面静電気力を比較確認した結果、粉末剤の表面静電気が顆粒剤に形態が変化したときに約50%以上表面静電気が減少することを確認した。
【0127】
その結果、製造例2-3の顆粒剤形は、製造例2-1の粉末剤形とは異なり静電気によるホッパーでの損失が減少してパッケージ充填が容易になった。
【0128】
実験例8.最終完製組成物の剤形による安定性確認試験
【0129】
剤形による製品安定性を確認するための試験を次のように行った。
【0130】
試験物質:本発明の製造例2-1の粉末剤形(比較例15)及び製造例2-3の顆粒剤形(実施例7)の口腔リンス組成物を製造し、1gずつアルミニウムパッケージに包装した。
【0131】
安定性試験方法:粉末及び顆粒形態の完製組成物1gずつをアルミニウムパッケージ(9cm×2cm)に充填して熱接着器で密封した後、25±2℃の相対湿度、60%±5%の恒温恒湿器チャンバーに保管した。安定性試験分析は、保管した試料0、1、2、3、4、5、6、7、8日及び10日目に分析し、分析試料は、10mgを秤量した後にNMR tubeに入れてCDCl3 0.62mLに溶かして1H-NMR(400MHz)で分析した。分析方法は、主成分4arm-PEG-SG誘導体の反応基活性度、NMR spectrumの2.80~2.90ppm(parts per Million;Proton)のsuccinimidyl group peakで確認した。すなわち、4arm-PEG-SGは、口腔粘膜と結合して保湿効果を与える主成分であるので、口腔粘膜のamine(NH2)と共有結合する4arm-PEG-SGのfunctional group(succinimidyl group)activityを1H-NMRで分析して完製組成物の安定性を確認することである。完製組成物の安定性の判断は、主成分4arm-PEG-SGのNMR活性度値が90%以上である場合、「stable」であると判断し、未満である場合、「Not stable」であると判断した。その結果を下記表11に示した。
【0132】
【0133】
*7日目結果で、3個の配置のうち一つの配置が基準(90%以上)に満たすが、3配置の平均値が基準以下であるので、Not stableであると判定する。前記結果のように、完製組成物の剤形による苛酷条件(25±2℃、相対湿度60%±5%)で安定性試験を確認した結果、主成分4arm-PEG-SG誘導体の反応基活性度が粉末形態の組成物(比較例15)は、3日目に92.15%、92.19%、92.25%、顆粒形態の組成物(実施例7)は、6日目に90.26%、90.29%、92.68%として安定的な結果を示した。
【0134】
完製組成物の剤形が粉末形態(比較例15)である場合、苛酷条件で3日間安定した結果と比較して、顆粒形態の完製組成物(実施例7)は、6日間安定した結果を示し、安定性が改善されたことを確認した。組成物の剤形が顆粒形態に変化されて粉末形態と比較して空気中の露出面積が減少し、露出減少による空気中水分の吸収が減少して安定性が増加したと判断できる。
【0135】
したがって、最終完製組成物の剤形を顆粒型で決定した。1回使用量の水を計測し得る容器及び1回使用量の顆粒剤形の口腔乾燥症緩和用組成物が包装されたパッケージを含む口腔乾燥症緩和用製品を最終製品として開発した。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明による口腔乾燥症緩和用口腔リンス組成物は、化学式1のポリエチレングリコール誘導体を有効成分として刺激なしに口腔粘膜と共有結合して口腔保湿持続力を増加させ得るだけでなく、顆粒剤形を有することによって製造及び包装が容易になり、保管及び使用に有利である。