(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】排水桝用蓋構造体
(51)【国際特許分類】
E03F 5/04 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
E03F5/04 D
(21)【出願番号】P 2023178277
(22)【出願日】2023-10-16
【審査請求日】2023-10-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】393013618
【氏名又は名称】光海陸産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】野村 敏晴
(72)【発明者】
【氏名】山越 慶太
(72)【発明者】
【氏名】高野 雄造
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3016558(JP,U)
【文献】登録実用新案第3225075(JP,U)
【文献】実開昭63-076087(JP,U)
【文献】実開平01-084386(JP,U)
【文献】特開2016-061021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水桝の上面に位置する上面開口を覆う排水桝用蓋構造体であって、
前記上面開口の縁部に取り付けられる蓋本体を備え、
前記蓋本体は、液体が通過可能な開口部が形成された蓋板と、前記開口部の対向する縁部の間に架け渡される架設部と、を有し、
前記架設部は、高さ方向の大きさが、前記蓋板の厚さ方向の大きさよりも大きく形成され
、
前記蓋本体の下面側に設けられ、前記蓋本体を前記排水桝に対して傾けながら上方に移動させた場合に、前記排水桝の内壁に当接することで前記排水桝に対する前記蓋本体の脱離を防止する脱離防止部を備え、
前記脱離防止部は、前記蓋本体の下面側において互いに間隔をおいて配置され、下端部が前記排水桝の底部の近傍に位置する長さに形成された一対の当接部を有している
排水桝用蓋構造体。
【請求項2】
前記脱離防止部は、一対の前記当接部を互いに連結する連結部を有している
請求項1に記載の排水桝用蓋構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高速道路における高架橋の部分の路側帯に設置された排水桝の上面開口を覆う排水桝用蓋構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、高速道路における高架橋の部分の路側帯には、路面の雨水等の排水を流入させて排水管に案内する排水桝が設置されている。排水桝の上面に位置する上面開口には、排水を通過可能な排水桝用の蓋が取り付けられている。
【0003】
排水桝用の蓋は、例えば、金属製の板状部材に対して複数の開口部を形成することによって排水を通過可能としている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
排水桝が設置される路側帯は、一時的に車両が走行した場合に、排水桝用の蓋の上面を車両のタイヤが転動する可能性がある。このため、排水桝用の蓋は、車両の重さに耐えうる強度を有することが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の排水桝用の蓋は、金属板に対して複数の開口部を形成することによって形成されているため、開口部と開口部との間の幅寸法が小さくなる部分の強度が不足する可能性がある。
【0007】
本発明の目的とするところは、必要な強度を保持可能な排水桝用蓋構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る排水桝用蓋構造体は、排水桝の上面に位置する上面開口を覆う排水桝用蓋構造体であって、前記上面開口の縁部に取り付けられる蓋本体を備え、前記蓋本体は、液体が通過可能な開口部が形成された蓋板と、前記開口部の対向する縁部の間に架け渡される架設部と、を有し、前記架設部は、高さ方向の大きさが、前記蓋板の厚さ方向の大きさよりも大きく形成され、前記蓋本体の下面側に設けられ、前記蓋本体を前記排水桝に対して傾けながら上方に移動させた場合に、前記排水桝の内壁に当接することで前記排水桝に対する前記蓋本体の脱離を防止する脱離防止部を備え、前記脱離防止部は、前記蓋本体の下面側において互いに間隔をおいて配置され、下端部が前記排水桝の底部の近傍に位置する長さに形成された一対の当接部を有している。
【0011】
また、本発明に係る排水桝用蓋構造体は、前記脱離防止部は、一対の前記当接部を互いに連結する連結部を有している、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蓋板における開口部を含む中央部側が架設部によって補強されることになるため、車両の重さが作用することによる蓋板の変形等の破損を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る排水桝用蓋構造体および排水桝の平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る
図1のA-A断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る
図1のB-B断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る排水桝用蓋構造体と排水桝との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至
図4は、本発明の一実施形態を示すものである。
図1は排水桝用蓋構造体および排水桝の平面図であり、
図2は
図1のA-A断面図であり、
図3は
図1のB-B断面図であり、
図4は排水桝用蓋構造体と排水桝との関係を示す図である。
【0015】
本発明の排水桝用蓋構造体10は、例えば、高速道路における高架橋の部分の路側帯に設置された排水桝1に取り付けられるものである。
【0016】
排水桝1は、鋳造によって形成された金属製の箱状の部材であり、
図1乃至
図3に示すように、上面側に上面開口1aが形成され、下面側に図示しない排水管が接続されるようになっている。排水桝1は、上面に位置する上面開口1aが路側帯の上面と面一となるように路側帯に埋め込まれており、路面の雨水等の排水を、上面開口1aを介して内部に流入させ、内部に流入した排水を排水管に案内する。排水桝1は、平面視における長手方向が道路の延伸方向に向けられている。排水桝1の上面開口1aの縁部には、排水桝用蓋構造体10の後述する蓋本体を収容するための蓋収容凹部1bが形成されている。蓋収容凹部1bは、上面開口1aの外周部の全体にわたって形成されている。これにより、蓋本体は、蓋収容凹部1bに嵌合した状態となる。
【0017】
排水桝用蓋構造体10は、
図1乃至
図3に示すように、排水桝1の蓋収容凹部1bに嵌合する蓋本体11と、路側帯に設置された排水桝1に対して蓋本体11を傾けながら上方に移動させた場合に、排水桝1の内壁に当接することで排水桝1に対する蓋本体11の脱離を防止する脱離防止部12と、を備えている。
【0018】
蓋本体11は、液体が通過可能な開口部11a1が形成された蓋板11aと、開口部11a1の対向する縁部の間に架け渡される複数の架設部11bと、を有している。
【0019】
蓋板11aは、例えば、長手方向寸法が344mm、短手方向寸法が212mm、厚さ寸法が19mmの矩形状に形成された金属板からなる。蓋板11aの長手方向および短手方向の中央部側には、例えば、レーザカット加工によって切断することによって、例えば、長手方向寸法が230mm、短手方向寸法が138mmの矩形状の開口部11a1が形成されている。
【0020】
複数の架設部11bは、それぞれ、開口部11a1の長手方向に間隔をおいて配置され、開口部11a1の短手方向に延在している。複数の架設部11bは、それぞれ、長手方向寸法が138mm、短手方向寸法が38mm、厚さ方向寸法が9mmに形成された板状部材からなり、板状部材の短手方向を上下方向に向けた姿勢で、長手方向の両端部を、開口部11a1の対向する縁部のそれぞれに溶接することによって接合されている。このとき、複数の架設部11bは、それぞれの上端部が、蓋板11aの上面と面一となるように開口部11a1の縁部に接合される。即ち、複数の架設部11bは、それぞれの下端側が蓋板11aの下面から下方に張り出しており、高さ方向の大きさが、蓋板11aの厚さ方向の大きさよりも大きく形成されている。ここで、上面開口1aを介して排水桝1の内部に流入する排水は、蓋板11aの開口部11a1における、開口部11a1の縁部と架設部11bとの間、および、隣り合う架設部11bと架設部11bとの間を通過する。
【0021】
脱離防止部12は、それぞれ蓋本体11の下面から下方に延在する一対の当接部12aと、一対の当接部12aを連結する連結部12bと、を有している。
【0022】
一対の当接部12aは、それぞれ、蓋本体11の下面側における道路を走行する車両の走行方向の両側に、互いに間隔をおいて配置されている。一対の当接部12aは、それぞれ、例えば、長手方向寸法が135mm、短手方向寸法が125mm、厚さ寸法が6mmの板状部材からなり、短手方向を上下方向に向けた状態で、蓋本体11の下面に溶接によって接合されている。一対の当接部12aは、それぞれ、例えば、排水桝1の内壁に対して5mmの間隔をおいた配置することが好ましく、下端部が、排水桝1の底部に接触することなく、底部の近傍に位置する長さであることが好ましい。
【0023】
連結部12bは、一対の当接部12aのそれぞれの幅方向一端部を互いに連結している。連結部12bは、例えば、長手方向寸法が230mm、短手方向寸法が100mm、厚さ方向寸法が6mmの板状部材からなる。連結部12bは、短手方向一方の端面を一対の当接部12aの下端面と面一となるように配置した状態で、長手方向の両端部のそれぞれを一対の当接部12aのそれぞれに溶接によって接合されている。
【0024】
ここで、排水桝用蓋構造体10の製造方法について説明する。
【0025】
まず、金属板をレーザカット加工によって矩形状に形成し、矩形状に形成された金属板の中央部側に矩形状の開口部11a1を形成することで蓋板11aを形成する。
【0026】
次に、蓋板11aの開口部11a1に複数の架設部11bを溶接によって接合することで蓋本体11を形成する。
【0027】
一方、一対の当接部12aおよび連結部12bを溶接によって一体に形成することで脱離防止部12を形成する。
【0028】
さらに、蓋本体11の蓋板11aの下面に、脱離防止部12を溶接によって接合する。
【0029】
最後に、一体に形成された蓋本体11および脱離防止部12の外面の全体に対して、バリ取りを行った後、溶融亜鉛メッキを施す。
【0030】
以上のように構成された排水桝用蓋構造体10を、排水桝1に対して取り付ける場合には、排水桝1の上面開口1aの直上から排水桝用蓋構造体10を下方に移動させて、脱離防止部12を上面開口1aから排水桝1の内部に挿入し、蓋本体11を蓋収容凹部1bに嵌合させる。
【0031】
また、排水桝用蓋構造体10を、排水桝1に対して取り外す場合には、排水桝1に対して排水桝用蓋構造体10を上方に移動させて、脱離防止部12を上面開口1aから排水桝1の外側に抜き出す。
【0032】
また、排水桝用蓋構造体10は、高速道路等の道路の路肩に設置された排水桝1に取り付けられているため、車両が路肩を走行すると、車両のタイヤTが排水桝用蓋構造体10の上面を転動することになる。
【0033】
このとき、排水桝用蓋構造体10の蓋本体11には、タイヤTを介して車両の重さが作用する。しかし、蓋板11aの開口部11a1には、高さ方向の大きさが、蓋板11aの厚さ方向の大きさよりも大きい架設部11bが架け渡されている。このため、蓋本体11の開口部11a1を含む長手方向および短手方向の中央部側は、複数の架設部11bによって補強された状態となっている。したがって、蓋本体11は、車両の重さが作用した場合においても、変形等の破損が生じにくくなる。
【0034】
また、排水桝用蓋構造体10の蓋本体11には、
図4に示すように、まず、車両の進行方向の手前側の部分にタイヤTの重さが加わることで、車両の進行方向の手前側に対して奥側が上方に向かって跳ね上がる力が作用する。即ち、排水桝用蓋構造体10の蓋本体11には、排水桝1に対して傾けながら上方に移動する力が作用する。
【0035】
しかし、蓋本体11を排水桝1に対して傾けながら上方に移動させると、脱離防止部12の当接部12aが排水桝1の内壁に当接して蓋本体11の移動が規制される。これにより、蓋本体11は、排水桝1に対して傾けながら上方に移動する力が作用した場合に、排水桝1に対する脱離を防止することが可能となる。
【0036】
このように、本実施形態の排水桝用蓋構造体10によれば、排水桝1の上面に位置する上面開口1aを覆う排水桝用蓋構造体10であって、上面開口1aの縁部に取り付けられる蓋本体11を備え、蓋本体11は、液体が通過可能な開口部11a1が形成された蓋板11aと、開口部11a1の対向する縁部の間に架け渡される架設部11bと、を有し、架設部11bは、高さ方向の大きさが、蓋板11aの厚さ方向の大きさよりも大きく形成されている。
【0037】
これにより、蓋板11aにおける開口部11a1を含む中央部側が架設部11bによって補強されることになるため、車両の重さが作用することによる蓋板11aの変形等の破損を防止することが可能となる。
【0038】
また、蓋本体11の下面側に設けられ、蓋本体11を排水桝1に対して傾けながら上方に移動させた場合に、排水桝1の内壁に当接することで排水桝1に対する蓋本体11の脱離を防止する脱離防止部12を備える、ことが好ましい。
【0039】
これにより、排水桝1に対して蓋本体11が跳ね上がる力が作用し、蓋本体11が排水桝1に対して傾いた姿勢で上方に移動した場合に、脱離防止部12を排水桝1の内壁に当接させることで、排水桝1に対する蓋本体11の脱離を防止することが可能となり、排水桝1の上面開口1aが意図せず開放されることを防止することが可能となる。
【0040】
また、脱離防止部12は、蓋本体11の下面側において互いに間隔をおいて配置される一対の当接部12aを有している、ことが好ましい。
【0041】
これにより、蓋本体11の下面側における車両の進行方向の両側に当接部12aが配置されることになるため、車両の進行方向のいずれの端部側から傾けて上方に移動させた場合においても、当接部12aを排水桝1の内壁に確実に当接させることが可能となり、排水桝1に対する蓋本体11の脱離をより確実に防止することが可能となる。
【0042】
また、脱離防止部12は、一対の当接部12aを互いに連結する連結部12bを有している、ことが好ましい。
【0043】
これにより、一対の当接部12aを連結部12bによって一体に形成することによって、一対の当接部12aのそれぞれを補強することが可能となるので、一対の当接部12aを含む脱離防止部12の破損を防止することが可能となる。
【0044】
尚、前記実施形態では、それぞれ直線状に形成された複数の架設部11bを、蓋板11aの開口部11a1に取り付けたものを示したが、これに限られるものではない。架設部としては、排水を通過可能で、開口部11a1に取り付け可能なものであれば、例えば、格子状の部材であってもよい。
【0045】
また、前記実施形態では、一対の当接部12aを、それぞれ板状部材によって形成したものを示したが、板状部材に限られるものではない。当接部としては、排水桝1の内壁に当接するものであれば、例えば、蓋本体11の下面から下方に延在する棒状の部材であってもよい。
【0046】
また、前記実施形態では、一対の当接部12aを互いに連結する連結部12bを、板状部材によって形成したものを示したが、これに限られるものではなく、所定の幅寸法の帯状の部材や所定の外径寸法の棒状の部材を連結部として用いてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 排水桝
1a 上面開口
10 排水桝用蓋構造体
11 蓋本体
11a 蓋板
11a1 開口部
11b 架設部
12 脱離防止部
12a 当接部
12b 連結部
【要約】
【課題】必要な強度を保持可能な排水桝用蓋構造体を提供する。
【解決手段】排水桝1の上面に位置する上面開口1aを覆う排水桝用蓋構造体10であって、上面開口1aの縁部に取り付けられる蓋本体11を備え、蓋本体11は、液体が通過可能な開口部11a1が形成された蓋板11aと、開口部11a1の対向する縁部の間に架け渡される架設部11bと、を有し、架設部11bは、高さ方向の大きさが、蓋板11aの厚さ方向の大きさよりも大きく形成されている。
【選択図】
図2