(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】防霜ファンシステムおよび送風方法
(51)【国際特許分類】
A01G 13/08 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
A01G13/08
(21)【出願番号】P 2023199619
(22)【出願日】2023-11-27
【審査請求日】2023-11-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391008294
【氏名又は名称】フルタ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100181593
【氏名又は名称】庄野 寿晃
(74)【代理人】
【識別番号】100083068
【氏名又は名称】竹中 一宣
(72)【発明者】
【氏名】古田 成広
(72)【発明者】
【氏名】土屋 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】鰐部 幸政
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-127897(JP,A)
【文献】特開2018-000015(JP,A)
【文献】特開2004-016182(JP,A)
【文献】特開2008-131871(JP,A)
【文献】特開2008-043273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に送風する防霜ファンと、
少なくとも気温を測定する温度センサを備え、自律飛行するドローンと、
前記ドローンおよび前記防霜ファンを制御する制御装置と、を備え、
前記ドローンは、前記圃場の上空を飛行しながら、前記圃場の上空の気温を測定し、測定した前記気温を示す温度データを前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、前記温度データに基づいて、
前記圃場の温度分布を示す温度分布データを作成し、前記圃場における温度の低い低温領域を特定し、特定した前記低温領域に送風するように、前記防霜ファンの送風
方向を
調整する、
ことを特徴とする防霜ファンシステム。
【請求項2】
前記ドローンは、自装置の位置を検出する位置センサをさらに備え、前記圃場の上空に設定された飛行経路を飛行しながら測定した前記気温を示す前記温度データを、前記気温を測定した位置を示す位置データと共に、前記制御装置に送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の防霜ファンシステム。
【請求項3】
前記ドローンは、前記圃場の上空において、高さの異なる複数の測定ポイントにおいて、それぞれ気温を測定し、ぞれぞれの前記測定ポイントで測定した前記気温を示す温度データを、前記気温を測定した位置を示す前記位置データと共に、前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、複数の前記測定ポイントで測定された前記気温に基づいて、前記圃場の上空に逆転層があると判定すると、前記防霜ファンを稼働する、
ことを特徴とする請求項2に記載の防霜ファンシステム。
【請求項4】
前記測定ポイントのうち少なくとも1つは、前記防霜ファンの高さの3分の1以下の第1の高さであり、
前記測定ポイントのうち少なくとも1つは、前記防霜ファンの高さの3分の2以上3分の4以下の第2の高さである、
ことを特徴とする請求項3に記載の防霜ファンシステム。
【請求項5】
前記第1の高さは、地面近傍の高さであり、
前記第2の高さは、前記防霜ファンと同じ高さである、
ことを特徴とする請求項4に記載の防霜ファンシステム。
【請求項6】
前記第1の高さにおいて、複数の前記測定ポイントが設定され、
前記制御装置は、前記第1の高さの温度分布を示す温度分布データを作成し、前記第1の高さにおける温度の低い低温領域を特定し、特定した低温領域に送風するように、前記防霜ファンの送風方向を調整する、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の防霜ファンシステム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第2の高さで測定した温度と前記第1の高さで測定した温度との差温が基準値以上であると、逆転層があると判定して、前記防霜ファンを稼働する、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の防霜ファンシステム。
【請求項8】
前記制御装置は、最も低い位置にある前記測定ポイントで測定した気温が基準温度以上である場合、降霜の危険性がないと判定し、前記防霜ファンを停止する、
ことを特徴とする請求項3または4に記載の防霜ファンシステム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記圃場の風速を示す風速データを受信し、前記風速が基準風速以上であると判定すると、前記防霜ファンを停止する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の防霜ファンシステム。
【請求項10】
前記防霜ファンは、第1の送風領域に送風する第1の防霜ファンと、第2の送風領域に送風する第2の防霜ファンと、を備え、
前記ドローンは、複数の高さで、前記第1の送風領域と前記第2の送風領域をそれぞれ飛行して、前記第1の送風領域と前記第2の送風領域との温度を、複数の高さで測定し、
前記制御装置は、前記ドローンにより測定された温度を示す温度データに基づいて、逆転層が形成されている領域を特定し、前記第1の送風領域と前記第2の送風領域のうち逆転層が形成されている領域に送風するように、前記第1の防霜ファンまたは前記第2の防霜ファンを稼働する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の防霜ファンシステム。
【請求項11】
圃場に送風する防霜ファンと、
少なくとも気温を測定する温度センサを備え、自律飛行するドローンと、
前記ドローンおよび前記防霜ファンを制御する制御装置と、を備える防霜ファンシステムを用いて送風する送風方法であり、
前記ドローンにより、前記圃場の上空を飛行しながら、前記圃場の上空の気温を測定し、測定した前記気温を示す温度データを制御装置に送信し、
前記制御装置により、前記温度データに基づいて、
前記圃場の温度分布を示す温度分布データを作成し、前記圃場における温度の低い低温領域を特定し、特定した前記低温領域に送風するように、前記防霜ファンの送風
方向を
調整する、
ことを特徴とする送風方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防霜ファンシステムおよび送風方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場では、農作物の凍霜害を防ぐために防霜ファンが用いられている。防霜ファンは、圃場上空の逆転層の空気を農作物に送風することで防霜を行う。
【0003】
特許文献1は、ドローン等の無人航空機を用いて農作物全体の防霜を行う防霜システムを開示する。この防霜システムは、ドローンの飛行制御等を行う管理サーバと、茶畑等の農作物の防霜飛行を実行するドローンと、を含む。管理サーバは外部から気象情報を取得し、この気象情報に基づいて、ドローンを制御し、ドローンを動作させた際の気流を利用して、農作物の防霜を行い、特に茶畑における防霜を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の防霜システムでは、外部から取得した気象情報に基づいて、ドローンを動作させた際の気流を利用して防霜を行う。外部から取得した気象情報では、圃場上空の気温と地面付近の気温が把握できない場合、圃場上空に逆転層があるか否か不明であり、適切な防霜を行うことが困難である。
【0006】
本発明は、上述の事情の下になされたものであり、適切に圃場の防霜を行う防霜ファンシステムおよび送風方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る防霜ファンシステムは、
圃場に送風する防霜ファンと、
少なくとも気温を測定する温度センサを備え、自律飛行するドローンと、
前記ドローンおよび前記防霜ファンを制御する制御装置と、を備え、
前記ドローンは、前記圃場の上空を飛行しながら、前記圃場の上空の気温を測定し、測定した前記気温を示す温度データを前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、前記温度データに基づいて、前記圃場の温度分布を示す温度分布データを作成し、前記圃場における温度の低い低温領域を特定し、特定した前記低温領域に送風するように、前記防霜ファンの送風方向を調整する、
ことを特徴とする。
【0008】
前記ドローンは、自装置の位置を検出する位置センサをさらに備え、前記圃場の上空に設定された飛行経路を飛行しながら測定した前記気温を示す前記温度データを、前記気温を測定した位置を示す位置データと共に、前記制御装置に送信するとよい。
【0009】
前記ドローンは、前記圃場の上空において、高さの異なる複数の測定ポイントにおいて、それぞれ気温を測定し、ぞれぞれの前記測定ポイントで測定した前記気温を示す温度データを、前記気温を測定した位置を示す前記位置データと共に、前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、複数の前記測定ポイントで測定された前記気温に基づいて、前記圃場の上空に逆転層があると判定すると、前記防霜ファンを稼働するとよい。
【0010】
前記測定ポイントのうち少なくとも1つは、前記防霜ファンの高さの3分の1以下の第1の高さであり、
前記測定ポイントのうち少なくとも1つは、前記防霜ファンの高さの3分の2以上3分の4以下の第2の高さであるとよい。
【0011】
前記第1の高さは、地面近傍の高さであり、
前記第2の高さは、前記防霜ファンと同じ高さであるとよい。
【0012】
前記第1の高さにおいて、複数の前記測定ポイントが設定され、
前記制御装置は、前記第1の高さの温度分布を示す温度分布データを作成し、前記第1の高さにおける温度の低い低温領域を特定し、特定した低温領域に送風するように、前記防霜ファンの送風方向を調整するとよい。
【0013】
前記制御装置は、前記第2の高さで測定した温度と前記第1の高さで測定した温度との差温が基準値以上であると、逆転層があると判定して、前記防霜ファンを稼働するとよい。
【0014】
前記制御装置は、最も低い位置にある前記測定ポイントで測定した気温が基準温度以上である場合、降霜の危険性がないと判定し、前記防霜ファンを停止するとよい。
【0015】
前記制御装置は、前記圃場の風速を示す風速データを受信し、前記風速が基準風速以上であると判定すると、前記防霜ファンを停止するとよい。
【0016】
前記防霜ファンは、第1の送風領域に送風する第1の防霜ファンと、第2の送風領域に送風する第2の防霜ファンと、を備え、
前記ドローンは、複数の高さで、前記第1の送風領域と前記第2の送風領域をそれぞれ飛行して、前記第1の送風領域と前記第2の送風領域との温度を、複数の高さで測定し、
前記制御装置は、前記ドローンにより測定された温度を示す温度データに基づいて、逆転層が形成されている領域を特定し、前記第1の送風領域と前記第2の送風領域のうち逆転層が形成されている領域に送風するように、前記第1の防霜ファンまたは前記第2の防霜ファンを稼働するとよい。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明に係る送風方法は、
圃場に送風する防霜ファンと、
少なくとも気温を測定する温度センサを備え、自律飛行するドローンと、
前記ドローンおよび前記防霜ファンを制御する制御装置と、を備える防霜ファンシステムを用いて送風する送風方法であり、
前記ドローンにより、前記圃場の上空を飛行しながら、前記圃場の上空の気温を測定し、測定した前記気温を示す温度データを制御装置に送信し、
前記制御装置により、前記温度データに基づいて、前記圃場の温度分布を示す温度分布データを作成し、前記圃場における温度の低い低温領域を特定し、特定した前記低温領域に送風するように、前記防霜ファンの送風方向を調整する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、適切に圃場の防霜を行う防霜ファンシステムおよび送風方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態に係る防霜システムを示す図である。
【
図3】実施の形態に係るドローンを示すブロック図である。
【
図4】実施の形態に係るドローンの飛行経路を示す図である。
【
図5】実施の形態に係るドローンの飛行する高さを示す図である。
【
図6】実施の形態に係る制御装置を示すブロック図である。
【
図7】(A)は、実施の形態に係る測定温度DBを示す図であり、(B)は、温度分布DBを示す図である。
【
図8】実施の形態に係る温度分布測定処理を示すフローチャートである。
【
図9】実施の形態に係る送風処理を示すフローチャートである。
【
図10】変形例に係る防霜システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態に係る防霜ファンシステムおよび送風方法を、図面を参照しながら説明する。
【0021】
本実施の形態に係る防霜ファンシステム1は、
図1に示すように、圃場で作物Rが被害を受けないように防霜を行うために用いられるものである。防霜ファンシステム1は、圃場に送風する防霜ファン10と、圃場の風速を測定する風速計30と、自律飛行するドローン200と、防霜ファン10およびドローン200を制御する制御装置100と、を備える。圃場は、例えば茶畑であり、作物Rは、例えば、茶である。
【0022】
防霜ファン10は、圃場に立設された支柱11に配置され、ファン12を備える。ファン12は、図示しないモータにより回転する。また、ファン12は、図示しない首振り部により、首振りすることにより、圃場全体に送風することができる。また、防霜ファン10の風量は、防霜ファン10が有するインバータによって、制御装置100に制御される。また、防霜ファン10は、地面から6m以上10m以下の高さに配置され、例えば、地上から8mの位置に配置される。
【0023】
風速計30は、圃場の風速を測定するものであり、測定した風速を示す風速データを制御装置100に送信する。
【0024】
ドローン200は、
図2に示すように、プロペラ21と、センサ部22と、カメラ23と、を備える。プロペラ21は、図示しないモータにより回転する。カメラ23は、少なくとも可視光または赤外線のいずれかの画像を撮像する。カメラ23は、撮像方向を調整する調整部によりドローン200の本体に取り付けられている。これにより、カメラ23の撮像方向を調整することができる。
【0025】
また、ドローン200は、機能的な構成として、
図3に示すように、制御部210と、通信部220と、ROM(Read Only Memory)230と、RAM(Random Access Memory)240と、をさらに備える。
【0026】
センサ部22は、気温を計測する温度センサ24と、ドローン200の位置を計測する位置センサ25と、を含む。
【0027】
温度センサ24は、ドローン200近傍の気温を測定するものであり、例えば白金測温抵抗体を含む。また、温度センサ24は、測定した温度を示す温度データを制御部210に出力する。
【0028】
位置センサ25は、ドローン200の位置を計測するものであり、
図4に示す高さ方向と、高さ方向に垂直な第1の方向と、高さ方向および第1の方向に垂直な第2の方向と、における位置を計測する。例えば、第1の方向は、畝方向であり、第2の方向は、畝方向に垂直な方向である。また、位置センサ25は、ドローン200の位置を計測し、位置を示す位置データを制御部210に出力する。具体的には、位置センサ25は、GPS(Global Positioning System)センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、磁気方位センサ、または超音波センサのうち1または2以上を含む。GPSセンサは、高度、緯度および経度を示すデータを取得する。加速度センサおよびジャイロセンサは、ドローン200の移動速度および姿勢を計測する。磁気方位センサは、ドローン200の磁方位を示すデータを取得する。超音波センサは、地面からドローン200までの高さを計測する。
【0029】
通信部220は、温度センサ24および位置センサ25で計測された温度データおよび位置データを制御装置100に送信する。また、通信部220は、制御装置100から送信されたデータを受信する。通信部220は、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)などの無線通信モジュールから構成される。
【0030】
ROM230は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリから構成され、上述したように制御部210が各種機能を実現するためのプログラムを記憶する。RAM240は、揮発性メモリから構成され、制御部210が各種処理を行うためのプログラムを実行するための作業領域として用いられる。
【0031】
制御部210は、CPU(Central Processing Unit)等から構成される。制御部210は、ROM230に記憶したプログラムを実行することにより、ドローン制御部211と、温度測定部212として機能する。
【0032】
ドローン制御部211は、位置センサ25により計測されたドローン200の位置と、予め定められた飛行経路を示す飛行経路データ、または制御装置100から送信された飛行経路を示す飛行経路データと、に基づいて、プロペラ21を回転するモータを制御し、ドローン200を飛行させる。ドローン制御部211は、
図4に示すように、ドローン200を測定ポイントD1から第1の方向である畝方向に沿って飛行を開始し、予め定められた飛行経路で測定ポイントDNまで飛行する。測定ポイントDn(n=1~N)を示すデータは、飛行経路データに含まれる。また、測定ポイントDn(n=1~N)は、
図5に示すように、第1の高さH1と、第2の高さH2と、第3の高さH3と、にそれぞれ1つ以上設定される。好ましくは、測定ポイントDn(n=1~N)は、第1の高さH1、第2の高さH2または第3の高さH3において、複数設定される。例えば、第1の高さH1に、測定ポイントDn(n=1~N)が複数設定されると、圃場の近傍付近の高さの温度分布を測定することができる。第1の高さH1は、圃場の地面近傍の高さであり、例えば、防霜ファン10の高さの3分の1以下であり、具体的には、1m以上3m以下である。第2の高さH2は、例えば、防霜ファン10の高さの3分の2以上3分の4以下であり、具体的には、防霜ファン10の高さと同じであり、詳細には、6m以上10m以下である。第3の高さH3は、防霜ファン10より高い高さであり、例えば、防霜ファン10の高さの3分の4以上であり、具体的には、15m以上20m以下である。
【0033】
温度測定部212は、測定ポイントDn(n=1~N)において、温度センサ24により温度を計測する。計測した温度を示す温度データは、それぞれの測定ポイントDn(n=1~N)の高さ方向と、第1の方向と、第2の方向とにおける位置を示す位置データと共にRAM240に記憶する。また、温度測定部112は、通信部220を介して、温度センサ24および位置センサ25で計測された温度データおよび位置データを制御装置100に送信する。
【0034】
制御装置100は、
図6に示すように、制御部110と、通信部120と、ROM130と、RAM140と、防霜ファンDB(Data Base)150を備える。
【0035】
通信部120は、ドローン200を制御するデータを送信し、ドローン200から送信された温度データおよび位置データを受信する。通信部120は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)などの無線通信モジュールから構成される。
【0036】
ROM130は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリから構成され、制御部110が各種機能を実現するためのプログラムを記憶する。RAM140は、揮発性メモリから構成され、制御部110が各種処理を行うためのプログラムを実行するための作業領域として用いられる。
【0037】
制御部110は、CPU等から構成される。制御部110は、ROM130に記憶したプログラムを実行することにより、温度分布計測部111と、防霜ファン制御部112として機能する。
【0038】
温度分布計測部111は、ドローン200から送信された、
図4に示す測定ポイントDn(n=1~N)を示す位置データと、測定ポイントDn(n=1~N)において測定した温度データと、を受信する。また、温度分布計測部111は、受信した位置データと温度データを測定温度DB151に記憶する。つぎに、温度分布計測部111は、測定温度DB151に記憶した位置データおよび温度データに基づいて、圃場上空の温度分布を示す温度分布データを作成する。作成した温度分布データは、測定ポイントDn(n=1~N)毎の測定した温度データを含み、温度分布DB152に記憶される。つぎに、温度分布計測部111は、風速計30で測定された圃場の風速を示す風速データを受信する。測定された風速を示すデータは、温度分布DB152に記憶される。
【0039】
防霜ファン制御部112は、温度分布DB152に記憶された圃場上空の温度分布を示す温度分布データと圃場の風速を示す風速データとに基づいて、防霜ファン10を制御する。まず、防霜ファン制御部112は、風速計30で測定された圃場の風速が基準風速未満か否かを判定する。風速計30で測定された圃場の風速が基準風速以上であると判定されると、防霜ファン10を停止する。風速計30で測定された風速が基準風速未満であると判定されると、防霜ファン制御部112は、圃場上空に逆転層があるか否かを判定する。防霜ファン制御部112は、差温が基準値以上であると、逆転層があると判定する。差温は、第2の高さH2にある測定ポイントDnで測定された気温から第1の高さH1にある測定ポイントDnで測定された気温を引いた値である。基準値は、例えば、2℃である。具体的には、
図4および
図5に示すように、防霜ファン制御部112は、温度分布DB152に記憶された温度分布データに基づいて、第1の高さH1の測定ポイントDnで測定された気温より、第2の高さH2の測定ポイントDnで測定された気温が、基準値以上高い場合、圃場上空に逆転層があると判定する。例えば、第1の高さH1にある測定ポイントDnで測定された気温は、3℃であり、第2の高さH2にある測定ポイントDnで測定された気温は、5℃である場合、差温は2℃であり逆転層があると判定される。逆転層がないと判定されると、防霜ファン10を停止する。逆転層があると判定されると、防霜ファン制御部112は、降霜の危険性があるか否かを判定する。降霜の危険性は、ドローン200で測定された温度データのうち、第1の高さH1の測定ポイントDnで測定された気温が基準温度以下であるか否かを判定し、基準温度以下である場合、降霜の危険性があると判定する。基準温度は、例えば、5℃である。降霜の危険性がないと判定されると、防霜ファン10を停止する。降霜の危険性があると判定されると、防霜ファン制御部112は、防霜ファン10を稼働する。
【0040】
防霜ファンDB150は、防霜ファンシステム1を制御するデータを記憶するものであり、測定温度DB151と、温度分布DB152と、を備える。
【0041】
測定温度DB151は、
図7(A)に示すように、通し番号である「No.」と、測定した「日時」と、温度センサ24により測定された温度データと、測定ポイントDn(1~N)の位置データと、を対応させて記憶する。
【0042】
温度分布DB152は、
図7(B)に示すように、防霜ファン10を制御したデータを記憶するものであり、通し番号である「No.」と、測定した「日時」と、圃場上空の温度分布を示す温度分布データと、圃場の風速を示すデータとを対応させて記憶する。温度分布DB152に記憶された「日時」は、測定温度DB151に記憶された測定した「日時」と対応している。
【0043】
つぎに、ドローン200および制御装置100を含む防霜ファンシステム1が実行する温度分布測定処理および送風処理について説明する。
【0044】
ユーザによる温度分布測定処理を開始させる指示、または制御装置100から温度分布測定処理を開始させる指示を示すデータの受信に応答し、ドローン200は、
図8に示す温度分布測定処理を開始する。
【0045】
温度分布測定処理が開始されると、
図3に示すドローン制御部211は、引数n=1を設定する(ステップS101)。
【0046】
つぎに、ドローン制御部211は、ドローン200を制御して、
図4に示す測定ポイントD1まで飛行する(ステップS102)。測定ポイントD1を示す位置データは、予めドローン200のRAM240に記憶していてもよく、測定毎に制御装置100から送信されてもよい。
【0047】
つぎに、温度測定部212は、温度センサ24により測定ポイントD1の気温を測定する(ステップS103)。また、温度測定部212は、測定した気温を示す温度データをRAM240に記憶する。
【0048】
つぎに、温度測定部212は、測定ポイントD1を示す位置データと共に、測定した温度データを制御装置100に送信する(ステップS104)。
【0049】
つぎに、ドローン制御部211は、引数n=Nであるか否か判定する(ステップS105)。Nは、測定ポイントDnの総数である。
【0050】
引数n=Nでないと判定されると(ステップS105;NO)、nをインクリメントし(ステップS106)、ステップS102からステップS106を繰り返す。これにより、温度測定部212は、測定ポイントDn(1~N)を示す位置データと共に、測定ポイントDn(1~N)において測定した温度データを制御装置100に送信することができる。測定ポイントDn(1~N)は、
図5に示すように、第1の高さH1と、第2の高さH2と、第3の高さH3と、にそれぞれ1つ以上設定される。第1の高さH1は、圃場の地面近傍の高さであり、例えば、防霜ファン10の高さの3分の1以下である。第2の高さH2は、例えば、防霜ファン10の高さの3分の2以上3分の4以下であり、具体的には、防霜ファン10の高さと同じである。第3の高さH3は、防霜ファン10より高い高さであり、例えば、防霜ファン10の高さの3分の4以上である。
【0051】
引数n=Nであると判定されると(ステップS105;NO)、温度分布測定処理を終了する。その後、ドローン200は、所定の位置まで飛行する。
【0052】
また、制御装置100は、ユーザによる送風処理を開始させる指示に応答し、
図9に示す送風処理を開始する。
【0053】
まず、温度分布計測部111は、ドローン200から送信された、測定ポイントDn(n=1~N)を示す位置データと、測定ポイントDn(n=1~N)において測定した温度データと、を受信する(ステップS201)。また、温度分布計測部111は、受信した位置データと温度データを測定温度DB151に記憶する。
【0054】
つぎに、温度分布計測部111は、測定温度DB151に記憶した位置データおよび温度データに基づいて、圃場上空の温度分布を示す温度分布データを作成する(ステップS202)。作成した温度分布データは、測定ポイントDn(n=1~N)毎の測定した温度データを含み、温度分布DB152に記憶される。
【0055】
つぎに、温度分布計測部111は、風速計30で測定された圃場の風速を示す風速データを受信する(ステップS203)。測定された風速を示すデータは、温度分布DB152に記憶される。
【0056】
つぎに、防霜ファン制御部112は、風速計30で測定された圃場の風速が基準風速未満か否かを判定する(ステップS204)。
【0057】
風速計30で測定された圃場の風速が基準風速以上であると判定されると(ステップS204;NO)、防霜ファン10を停止する(ステップS209)。その後、送風処理を終了する。
【0058】
風速計30で測定された風速が基準風速未満であると判定されると(ステップS204;YES)、防霜ファン制御部112は、圃場上空に逆転層があるか否かを判定する(ステップS205)。具体的には、防霜ファン制御部112は、温度分布DB152に記憶された温度分布データに基づいて、防霜ファン10より低い位置にある第1の高さH1の測定ポイントDnで測定された気温より、防霜ファン10より高い位置にある第2の高さH2の測定ポイントDnで測定された気温が、基準値以上高い場合、圃場上空に逆転層があると判定する。例えば、基準値は、2℃である。この場合、第1の高さH1にある測定ポイントDnで測定された気温は、3℃であり、第2の高さH2にある測定ポイントDnで測定された気温は、5℃である場合、差温が2℃であり、逆転層があると判定される。
【0059】
逆転層がないと判定されると(ステップS205;NO)、防霜ファン10を停止する(ステップS209)。その後、送風処理を終了する。
【0060】
逆転層があると判定されると(ステップS205;YES)、防霜ファン制御部112は、降霜の危険性があるか否かを判定する(ステップS206)。降霜の危険性は、ドローン200で測定された温度データのうち、第1の高さH1の測定ポイントDnで測定された気温が基準温度以下であるか否かを判定し、基準温度以下である場合、降霜の危険性があると判定する。基準温度は、例えば、5℃である。
【0061】
降霜の危険性がないと判定されると(ステップS206;NO)、防霜ファン10を停止する(ステップS209)。その後、送風処理を停止する。
【0062】
降霜の危険性があると判定されると(ステップS206;YES)、防霜ファン制御部112は、防霜ファン10を稼働する(ステップS207)。
【0063】
つぎに、温度分布計測部111は、ドローン200に圃場の上空の気温を再測定させる(ステップS208)。なお、再測定は、前回の測定から基準期間経後に実施する。温度分布計測部111は、通信部120を介して、ドローン200に温度分布測定処理を開始させる指示を示すデータを送信する。ドローン200は、制御装置100から送信された温度分布測定処理を開始させる指示を示すデータを受信すると、温度分布測定処理を再度実施する。その後、ステップS201~ステップS208を繰り返す。
【0064】
以上のように、本実施の形態の防霜ファンシステム1によれば、ドローン200により圃場上空の温度分布を計測することで、制御装置100は、圃場上空に逆転層が形成されているか否かを判定できる。制御装置100は、圃場上空に逆転層が形成されている場合、防霜ファン10を稼働することができる。これにより、圃場の農作物の凍霜害を防ぐために適切に圃場の防霜を行うことができる。
【0065】
(変形例)
上述の実施の形態の防霜ファンシステム1では、圃場上空に逆転層が形成されている場合、防霜ファン10を稼働する例について説明した。制御装置100は、第1の高さH1に設定された複数の測定ポイントDn(n=1~N)において、温度センサ24により計測された温度データにより、第1の高さH1の温度分布を示す温度分布データを作成し、第1の高さH1における温度の低い低温領域を特定し、特定した低温領域に送風するように、防霜ファン10の送風方向を調整してもよい。このようにすることで、霜が発生しやすい領域に送風することが可能である。この場合、防霜ファン10は、送風方向の俯角を調整する俯角調整部と、送風方向の水平角を調整する水平角調整部と、を備える。送風方向の調整は、制御装置100が、防霜ファン10の俯角調整部および水平角調整部を制御することで実現される。この場合、防霜ファン10は、制御装置100に制御され、圃場の温度の低い部分に重点的に送風することが可能である。また、防霜ファン10は、圃場の温度の低い部分に重点的に送風しつつ、圃場の温度の低い部分以外の圃場全体に、ファン12の首振りおよび複数の防霜ファン10により送風するようにしてもよい。
【0066】
上述の実施の形態の防霜ファンシステム1では、1つの防霜ファン10を備える例について説明したが、防霜ファンシステム1は、
図10に示すように複数の防霜ファン10を備えてもよい。この例では、防霜ファンシステム1は、第1の送風領域A1に送風する第1の防霜ファン10Aと、第2の送風領域A2に送風する第2の防霜ファン10Bと、第3の送風領域A3に送風する第3の防霜ファン10Cと、を備える。ドローン200は、複数の高さで、第1の送風領域A1から第3の送風領域A3をそれぞれ飛行して、第1の送風領域A1から第3の送風領域A3の温度を、それぞれ第1の高さH1と第2の高さH2とにおいて測定する。制御装置100は、ドローン200により測定された温度を示す温度データに基づいて、逆転層が形成されている領域を特定し、第1の送風領域A1から第3の送風領域A3のうち逆転層が形成されている領域に送風するように、第1から3の防霜ファン10A~10Cを稼働する。これにより、第1から3の防霜ファン10A~10Cより送風された第1の送風領域A1から第3の送風領域A3の圃場B1~B3において、農作物の凍霜害を防ぐことができる。このようにすることで、1台のドローン200で、複数の防霜ファン10を制御するために圃場の上空の温度を測定することができる。これにより、複数の防霜ファン10を用いたとしても、制御装置100は、第1の送風領域A1から第3の送風領域A3それぞれにおいて、圃場の上空に逆転層があるか否かを効率的に判定でき、逆転層が発生している送風領域A1~A3の防霜ファン10A~10Cを稼働することができる。
【0067】
また、CPU、RAM、ROM等から構成される制御装置100およびドローン200が実行する温度分布測定処理および送風処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常の情報携帯端末(スマートフォン、タブレットPC)、パーソナルコンピュータなどを用いて実行可能である。たとえば、上述の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)等)に格納して配布し、このコンピュータプログラムを情報携帯端末などにインストールすることにより、上述の処理を実行する情報端末を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置にこのコンピュータプログラムを格納しておき、通常の情報処理端末などがダウンロード等することで情報処理装置を構成してもよい。
【0068】
また、温度分布測定処理および送風処理の機能を、OS(Operating System)とアプリケーションプログラムとの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0069】
また、搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にこのコンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介してこのコンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の処理を実行できるように構成してもよい。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1…防霜ファンシステム
10…防霜ファン
10A…第1の防霜ファン
10B…第2の防霜ファン
10C…第3の防霜ファン
11…支柱
12…ファン
21…プロペラ
22…センサ部
23…カメラ
24…温度センサ
25…位置センサ
30…風速計
100…制御装置
110、210…制御部
120、220…通信部
130、230…ROM
140、240…RAM
150…防霜ファンDB
151…測定温度DB
152…温度分布DB
111…温度分布計測部
112…防霜ファン制御部
200…ドローン
211…ドローン制御部
212…温度測定部
R…作物
H1…第1の高さ
H2…第2の高さ
H3…第3の高さ
Dn、D1、D2、DN…測定ポイント
A1…第1の送風領域
A2…第2の送風領域
A3…第3の送風領域
B1~B3…圃場
【要約】
【課題】適切に圃場の防霜を行う防霜ファンシステムおよび送風方法を提供する。
【解決手段】防霜ファンシステム1は、圃場に送風する防霜ファン10と、少なくとも気温を測定する温度センサを備え、自律飛行するドローン200と、ドローン200および防霜ファン10を制御する制御装置100と、を備える。ドローン200は、圃場の上空を飛行しながら、圃場の上空の気温を測定し、測定した気温を示す温度データを制御装置100に送信する。制御装置100は、温度データに基づいて、防霜ファン10の送風を制御する。
【選択図】
図1