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特許7454902スプリング、それを用いたポンプ、および、噴出容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】スプリング、それを用いたポンプ、および、噴出容器
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/36 20060101AFI20240315BHJP
   A47K 5/12 20060101ALI20240315BHJP
   B65D 47/34 20060101ALI20240315BHJP
   F04B 9/14 20060101ALI20240315BHJP
   F16F 1/373 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
F16F1/36 Y
A47K5/12 A
B65D47/34 110
F04B9/14 B
F16F1/36 Z
F16F1/373
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023571445
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2022038805
(87)【国際公開番号】W WO2023149022
(87)【国際公開日】2023-08-10
【審査請求日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2022014500
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000144463
【氏名又は名称】株式会社三谷バルブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富永 敏男
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/185541(WO,A1)
【文献】特開2021-104838(JP,A)
【文献】特開平09-303453(JP,A)
【文献】特開2000-213455(JP,A)
【文献】特表2016-534948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/36
B65D 47/34
F04B 9/14
F16F 1/373
A47K 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に装着されるポンプであって、
上部に開口を有するシリンダと、
前記シリンダの開口内に下端部が挿入されたピストンと、
前記シリンダの開口の前記ピストンの周囲の空間を覆う環状のシリンダブッシュと、
前記ピストンの上端に装着されたノズルと、
前記環状のシリンダブッシュの上部に搭載された、前記ピストンの周囲に環状の空間を形成する円筒と、
前記円筒の下端に連結された、前記容器の開口に装着される環状の固定具とを有し、
前記シリンダは、前記容器内に配置され、前記シリンダブッシュは、前記容器の開口の上に位置し、
前記シリンダブッシュの上面と前記ノズルとの間には、1個のスプリング、または、積み重ねられた2個以上のスプリングが配置され、前記ノズルを上方に付勢し、前記1個または2個以上のスプリングは、前記シリンダブッシュ上の前記円筒と前記ピストンとの間の前記環状の空間に位置し、
1個の前記スプリング、または、積み重ねられた2個以上の前記スプリングのうちの少なくとも一つは、対向配置された第1および第2のリング状部材と、2本以上の可撓性の柱状部材とを含み、
前記第1および第2のリング状部材と、前記2本以上の柱状部材は、いずれも樹脂製であり、
前記柱状部材は、前記第1および第2のリング状部材の周方向において、当該周方向に沿うように湾曲しながら、前記第1および第2のリング状部材の軸方向に対して傾斜し、前記柱状部材の両端は、前記第1および第2のリング状部材にそれぞれ固定され、
前記柱状部材の一端と前記第1のリング状部材との固定位置である第1固定位置から、前記柱状部材の他端と前記第2のリング状部材との固定位置である第2固定位置までの、前記第1および第2のリング状部材の周方向の角度は、2πよりも小さく、
2本以上の前記柱状部材の間には、補強部材が配置され、前記補強部材は、一端が前記柱状部材のうちの一つに固定され、他端が前記柱状部材のうちの別の一つに固定されていることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプであって、
前記第1および第2のリング状部材に力が加わっていない状態で、前記第1のリング状部材と第2のリング状部材の間隔は、第1および第2のリング状部材の直径の1.5倍以下であることを特徴とするポンプ。
【請求項3】
対向配置された第1および第2のリング状部材と、2本以上の可撓性の柱状部材とを含み、
前記第1および第2のリング状部材と、前記2本以上の柱状部材は、いずれも樹脂製であり、
前記柱状部材は、前記第1および第2のリング状部材の周方向において、当該周方向に沿うように湾曲しながら、前記第1および第2のリング状部材の軸方向に対して傾斜し、前記柱状部材の両端は、前記第1および第2のリング状部材にそれぞれ固定され、
前記柱状部材の一端と前記第1のリング状部材との固定位置である第1固定位置から、前記柱状部材の他端と前記第2のリング状部材との固定位置である第2固定位置までの、前記第1および第2のリング状部材の周方向の角度は、2πよりも小さく、
2本以上の前記柱状部材の間には、補強部材が配置され、前記補強部材は、一端が前記柱状部材のうちの一つに固定され、他端が前記柱状部材のうちの別の一つに固定されていることを特徴とするスプリング。
【請求項4】
対向配置された第1および第2のリング状部材と、2本以上の可撓性の柱状部材とを含み、
前記第1および第2のリング状部材と、前記2本以上の柱状部材は、いずれも樹脂製であり、
前記柱状部材は、前記第1および第2のリング状部材の周方向において、当該周方向に沿うように湾曲しながら、前記第1および第2のリング状部材の軸方向に対して傾斜し、前記柱状部材の両端は、前記第1および第2のリング状部材にそれぞれ固定され、
前記柱状部材の一端と前記第1のリング状部材との固定位置である第1固定位置から、前記柱状部材の他端と前記第2のリング状部材との固定位置である第2固定位置までの、前記第1および第2のリング状部材の周方向の角度は、2πよりも小さく、
前記柱状部材は、4本以上の偶数であり、半数の前記柱状部材は、残りの半数の前記柱状部材とは傾斜の方向が逆であり、前記半数の柱状部材は、残りの半数の柱状部材と交差し、交差位置において互いに固定されていることを特徴とするスプリング。
【請求項5】
対向配置された第1および第2のリング状部材と、2本以上の可撓性の柱状部材とを含み、
前記第1および第2のリング状部材と、前記2本以上の柱状部材は、いずれも樹脂製であり、
前記柱状部材は、前記第1および第2のリング状部材の周方向において、当該周方向に沿うように湾曲しながら、前記第1および第2のリング状部材の軸方向に対して傾斜し、前記柱状部材の両端は、前記第1および第2のリング状部材にそれぞれ固定され、
前記柱状部材の一端と前記第1のリング状部材との固定位置である第1固定位置から、前記柱状部材の他端と前記第2のリング状部材との固定位置である第2固定位置までの、前記第1および第2のリング状部材の周方向の角度は、2πよりも小さく、
前記柱状部材は、前記第1および第2のリング状部材の周方向に沿った形状に湾曲した板状の部材であり、
板状の前記柱状部材の一端と前記第1のリング状部材との固定位置である第1固定位置と、前記柱状部材の他端と前記第2のリング状部材との固定位置である第2固定位置とは、前記第1および第2のリング状部材の中心に対して、同じ角度にあることを特徴とするスプリング。
【請求項6】
請求項5に記載のスプリングであって、前記板状の前記柱状部材は、前記第1のリング状部材の中心と、前記第2のリング状部材の中心とを結ぶ中心軸に対して、外向きに湾曲した形状を有することを特徴とするスプリング。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれか1項に記載のスプリングであって、前記第1および第2のリング状部材の軸方向外側の面は、平面であることを特徴とするスプリング。
【請求項8】
対向配置された第1および第2のリング状部材と、2本以上の可撓性の柱状部材とを含むスプリングであって、
前記第1および第2のリング状部材と、前記2本以上の柱状部材は、いずれも樹脂製であり、
前記柱状部材は、前記第1および第2のリング状部材の周方向において、当該周方向に沿うように湾曲しながら、前記第1および第2のリング状部材の軸方向に対して傾斜し、前記柱状部材の両端は、前記第1および第2のリング状部材にそれぞれ固定され、
前記柱状部材の一端と前記第1のリング状部材との固定位置である第1固定位置から、前記柱状部材の他端と前記第2のリング状部材との固定位置である第2固定位置までの、前記第1および第2のリング状部材の周方向の角度は、2πよりも小さく、
前記第1のリング状部材の軸方向の外側の面、および、第2のリング状部材の軸方向の外側の面のうち少なくとも一方には、当該スプリングを複数個積み重ねたときに、互いに接触する前記第1のリング状部材の軸方向の外側の面と第2のリング状部材の軸方向の外側の面とを嵌合させる嵌合部が設けられていることを特徴とするスプリング。
【請求項9】
請求項3ないし6、および、8のうちのいずれか1項に記載のスプリングであって、前記第1および第2のリング状部材に力が加わっていない状態で、前記第1のリング状部材と第2のリング状部材の間隔は、第1および第2のリング状部材の直径の1.5倍以下であることを特徴とするスプリング。
【請求項10】
対向配置された第1および第2のリング状部材と、筒状部材とを含み、
前記第1および第2のリング状部材と、前記筒状部材は、いずれも樹脂製であり、
前記筒状部材は、両端が前記第1および第2のリング状部材にそれぞれ固定され、
前記筒状部材は、径が軸方向について変化しており、軸方向の両端において最も大きく、軸方向の中央で最も小さいことを特徴とするスプリング。
【請求項11】
請求項10に記載のスプリングであって、前記第1および第2のリング状部材にはそれぞれ、2以上の切り欠きが設けられ、
前記2以上の切り欠きは、前記筒状部材に達し、前記筒状部材も切り欠かれていることを特徴とするスプリング。
【請求項12】
上部に開口を有するシリンダと、前記シリンダの開口内に下端部が挿入されたピストンと、前記シリンダの開口の前記ピストンの周囲の空間を覆う環状のシリンダブッシュと、前記ピストンの上端に装着されたノズルとを有し、
前記環状のシリンダブッシュの上部には、前記ピストンの周囲に環状の空間を形成する円筒が搭載され、前記円筒内には前記ノズルを上方に付勢するスプリングが配置され、前記スプリングは、請求項3ないし5、8、10、および、11のうちのいずれか1項に記載のスプリングであることを特徴とするポンプ。
【請求項13】
請求項12に記載のポンプであって、前記スプリングの前記第2のリング状部材の下面は、前記環状のシリンダブッシュの上面に接し、前記第1のリング状部材の上面は、前記ピストンの上端に装着されたノズルの一部に接していることを特徴とするポンプ。
【請求項14】
請求項12に記載のポンプであって、前記スプリングは、複数が積み重ねられて、前記円筒が形成する前記ピストンの周囲の環状の空間に配置され、最も下に配置された前記スプリングの第2のリング状部材の下面が前記環状のシリンダブッシュの上面に接し、最も上に配置された前記スプリングの第1のリング所部材の上面は、前記ピストンの上端に装着されたノズルの一部に接していることを特徴とするポンプ。
【請求項15】
請求項12に記載のポンプであって、前記シリンダの下端には、前記シリンダ内に溶液を取り込む取り込み孔が配置され、前記取り込み孔には、逆流を防ぐプレート状の弁が配置され、前記弁は樹脂製であることを特徴とするポンプ。
【請求項16】
請求項12に記載のポンプであって、前記円筒の下端には、容器の開口に当該ポンプを装着するための環状の固定具が連結され、
前記シリンダの外周の上端には、前記容器の開口の内側の縁に押し当てられて液体の漏れを防止するシール構造が設けられていることを特徴とするポンプ。
【請求項17】
請求項12に記載のポンプであって、すべての部材が、同一の材料により形成されていることを特徴とするポンプ。
【請求項18】
開口を備える容器と、前記容器の開口に装着されたポンプとを有する噴出容器であって、
前記ポンプは、請求項12に記載のポンプであることを特徴とする噴出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の開口に取り付けられ、容器内の液体を噴出するポンプに関し、特に、ポンプを構成するスプリングが内容物に接触しない構造のポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
容器の開口に取り付けられ、容器内の液体を噴出するポンプは、一般的にはほとんどの部材が樹脂製であるが、ボール弁やスプリングには金属材料が用いられている。噴出対象である液体の成分によっては、液体が金属部品に反応して変質するものがある。そのような場合には、液体の成分を金属部品と反応しない成分に変更する必要があり、製造者は不都合を強いられる。
【0003】
特許文献1には、液体の通路に金属部品が配置されないよう工夫したポンプが提案されている。このポンプは、薬剤ディスペンサであり、通常はシリンダ内部に配置され、ピストンを押し上げるスプリングが、シリンダおよびピストンの外側に配置されている。また、この薬剤ディスペンサは、薬剤の吐出過程において、外部の塵埃や異物、細菌が内部に流入するのを遮断するために、ピストンの上端をピストンの下部とは別部材とし、ピストン上端と下部との間に第2のスプリングを配置している。これにより、吐出口から薬剤が噴出されていない状態では、ピストンの上端部材を第2のスプリングが押し上げ、吐出口が塞がれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-193338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、スプリングをシリンダの外に配置することにより、シリンダ内の薬剤によりスプリングが腐食するという現象は避けられる。しかしながら、外気の湿度が高い環境や、揮発性薬剤を含む雰囲気の環境でポンプを用いた場合、シリンダの外側に配置されていてもスプリングが腐食する。
【0006】
また、スプリングも含めて金属を用いず、ポンプのすべての部品を同じ樹脂(例えば、ポリプロピレン)で構成することができれば、リサイクル効率を向上させることができ、環境負荷を低減することができる。そのため、樹脂製のスプリングが望まれている。
【0007】
一方、ピストンを押し上げるスプリングは、液体をシリンダ内に吸い上げるために、ピストンを所定の復元力で押し上げる必要がある。この復元力を生じるため、スプリングとしては、所定値以上のばね定数のものを用いる必要があり、自然長がある程度長いスプリングを用いる必要がある。
【0008】
特許文献1の図2に開示されているようにシリンダの外側であって、ピストン部分の外周に配置されたコイル状のスプリングは、シリンダ内に配置されるスプリングよりも径は大きく、スプリング長は長く、しかも、スプリングの外周をガイドする筒が存在しない。そのため、圧縮時にスプリングが変形して外側に広がりやすく、上下方向ではない方向に力が分散しやすい。また、製造時のポンプの組み立て工程で、スプリングが、ピストンとの連結部から外れやすい。
【0009】
本発明の目的は、樹脂製のスプリングで効率よくシリンダを押し上げることのできるポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明によれば、対向配置された第1および第2のリング状部材と、2本以上の可撓性の柱状部材とを含むスプリングを備えたポンプが提供される。第1および第2のリング部材と、2本以上の柱状部材は、いずれも樹脂製である。柱状部材は、第1および第2のリング状部材の周方向において、当該周方向に沿うように湾曲しながら、第1および第2のリング状部材の軸方向に対して傾斜し、柱状部材の両端は、第1および第2のリング状部材にそれぞれ固定されている。柱状部材の一端と第1のリング状部材との固定位置である第1固定位置から、柱状部材の他端と第2のリング状部材との固定位置である第2固定位置までの、第1および第2のリング状部材の周方向の角度は、2πよりも小さい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂製のスプリングで効率よくシリンダを押し上げることのできるポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の噴出容器1の(a)静止時の断面図、(b)作動時の断面図。
図2】(a)実施形態のスプリング40の側面図、(b)ノズル22の断面図、(c)スプリング40とノズル22を外した状態のポンプの断面図。
図3】実施形態のスプリング40の(a)~(f)六面図、(g)斜視図。
図4】変形例1のスプリング40の(a)~(f)六面図、(g)斜視図。
図5】変形例2-1のスプリング40の(a)~(f)六面図、(g)斜視図。
図6】変形例2-2のスプリング40の(a)~(f)六面図、(g)斜視図。
図7】変形例3-1のスプリング40の(a)~(f)六面図、(g)斜視図。
図8】変形例3-2のスプリング40の(a)~(f)六面図、(g)斜視図。
図9】変形例4のスプリング40の(a)~(f)六面図、(g)斜視図。
図10】変形例5のスプリング40の(a)~(f)六面図、(g)斜視図。
図11】変形例6のスプリング40の(a)~(f)六面図、(g)斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0014】
<<<実施形態>>>
図1(a)および(b)は、実施形態の噴出容器1の全体の断面図であり、図2(a)は、噴出容器1のスプリング40(1段および3段重ね)を示し、図2(b)は、ノズル22の断面図であり、図2(c)は、ノズル22とスプリング40を取り外した状態のポンプ2の断面図である。
【0015】
<<噴出容器1の全体構成>>
図1のように、噴出容器1は、開口11を備える容器10と、容器10の内容物を噴出するポンプ2とを備えて構成されている。
【0016】
ポンプ2は、図2(c)に示すように、シリンダ30と、ピストン20と、シリンダブッシュ31と、ノズル22とを備えて構成される。シリンダ30は、上部に開口を有し、ピストン20は、下端部がシリンダ30の開口内に挿入されている。ピストンは、下部ピストン20aと、下部ピストン20aの上部に被せられたピストン外筒20bと、ピストン外筒20bの下部に固定されたピストン弁20cとを含む。
【0017】
環状のシリンダブッシュは、シリンダ30の開口部において、ピストン20の周囲の空間を覆っている。
【0018】
ノズル22は、ピストン20のピストン外筒20bの上端に装着されている。
【0019】
環状のシリンダブッシュ31の上部には、ピストン20の周囲に環状の空間を形成する円筒70が搭載されている。円筒70内にはノズル22を上方に付勢するスプリング40が配置されている。すなわち、ピストン20は、スプリング40の中央の空間を貫いている。スプリング40は、図1(a)、(b)および図2(a)のように複数個積み重ねられていてもよいし、図2(a)のように、1個のみでもよい。
【0020】
<<スプリング40>>
スプリング40の構造について図3を用いて説明する。
【0021】
図3(a)~(f)は、スプリング40の六面図であり、図3(g)は、スプリング40の斜視図である。
【0022】
スプリング40は、対向配置された第1および第2のリング状部材41,42と、2本の可撓性の柱状部材43,44とを含む。第1および第2のリング状部材41,42と、2本の柱状部材43,44は、いずれも樹脂製である。
【0023】
柱状部材43,44は、第1および第2のリング状部材41,42の周方向において、当該周方向に沿うように湾曲しながら、第1および第2のリング状部材の軸方向に傾斜し、柱状部材43,44の両端は、第1および第2のリング状部材41,42にそれぞれ固定されている。
【0024】
柱状部材43の一端(上端)と第1のリング状部材41との固定位置を、第1固定位置43aと呼ぶ。柱状部材43の他端(下端)と第2のリング状部材42との固定位置を、第2固定位置43bと呼ぶ。第1固定位置43aから第2固定位置43bまでの第1および第2のリング状部材の周方向の角度は、2πよりも小さい。図3(a)~(g)のスプリング40の場合、上記角度は、約200度である。
【0025】
同様に、柱状部材44も一端(上端)と第1のリング状部材41との固定位置を、第1固定位置44aと呼び、柱状部材44の他端(下端)と第2のリング状部材42との固定位置を、第2固定位置44bと呼ぶ。第1固定位置44aから第2固定位置44bまでの第1および第2のリング状部材の周方向の角度は、2πよりも小さく、図3(a)~(g)のスプリング40の場合、上記角度は、約200度である。
【0026】
2本の柱状部材43、44の一端はそれぞれ、等間隔に前記第1のリング状部材に固定され、他端はそれぞれ、等間隔に前記第2のリング状部材に固定されている。
【0027】
第1および第2のリング状部材41,42に力が加わっていない状態で、第1のリング状部材41と第2のリング状部材42の間隔は、第1および第2のリング状部材41,42の直径の1.5倍以下であることが好ましい。
【0028】
図1(a)に示すように、スプリング40の第2のリング状部材42の下面は、環状のシリンダブッシュ31の上面に接するように、円筒70内に配置される。また、スプリング40の第1のリング状部材41の上面は、ピストン20の上端に装着されたノズル22の一部に接するように、スプリング40の積み重ねの個数、もしくは、ポンプ2の高さが設計されている。
【0029】
なお、スプリング40を安定させて積み重ねるために、第1および第2のリング状部材41,42の軸方向外側の面(すなわち、第1のリング状部材41の上面と、第2のリング状部材42の下面)は、平面であることが好ましい。ただし、本実施形態のスプリング40は、第1および第2のリング状部材41,42の軸方向外側の面は、平面に限定されるものではない。複数のスプリング40を積み重ねた際に、互いに接触する第1のリング状部材41および第2のリング状部材42の軸方向の外側の面(すなわち第1のリング状部材41の上面と、第2のリング状部材42の下面)を嵌合させる凹凸等の嵌合部を、第1のリング状部材41の上面および第2のリング状部材42の下面の少なくとも一方に設けてもよい。
【0030】
これにより、ポンプ2の作動時に、図1(b)のようにノズル22がユーザによって押し下げられると、スプリング40はノズル22によって圧縮される。ユーザがノズル22から手を離すと、スプリング40の復元力により、ノズル22を押し上げ、元の位置まで戻すことができる。
【0031】
このように、本実施形態のスプリング40は、樹脂製で、柱状部材43,44が湾曲して、リング状部材41の周方向に沿う角度が2πより小さいため、一般的なコイル状のスプリングよりも、軸方向の長さを短く(すなわち高さを小さく)することができる。
【0032】
一般的なコイル状のスプリングを用いた場合、ポンプ2の高さがスプリングの長さで決まってしまうが、本実施形態の短いスプリング40を用いた場合、ポンプ2の高さを小さくすることが可能である。よって、ポンプ2の高さ設計の自由度が増す。
【0033】
また、図1(a)、(b)や図2(a)に示したように、本実施形態のスプリング40は、上端と下端にリング状部材41,42が備えられているため、積み重ねて用いることができる。ポンプ2に積み重ねて配置するスプリングの個数を変えることで、いろいろな高さのポンプ2を、同じスプリング40を用いて組み立てることができる。
【0034】
また、スプリング40は、上端と下端にリング状部材41,42を備えているため、圧縮しても柱状部材43,44が外側に広がりにくい。よって、圧縮または伸長する力を、径方向に分散させにくく、軸方向の変位に変換することができる。
【0035】
具体的には、配置されている柱状部材43,44が2本であって、リング状部材41,42に加わる力が周方向に均等でなくても、リング状部材41,42が楕円に変形して柱状部材43,44を支えるため、柱状部材43,44が外に大きく膨らむように変形することを防ぐことができる。
【0036】
また、リング状部材41,42が楕円形に変形した場合であっても、スプリング40を貫いているピストン20に触れないように、リング状部材41,42の外径および内径、樹脂の材質を設計しておく。これによって、ピストン20とスプリング40のクリアランスを確保することができる。
【0037】
<ポンプ2の全部品を樹脂製するための構造>
本実施形態では、スプリング40のみならず、ポンプ2の全部品を同一の樹脂製にするために、以下のような構造を採用している。
【0038】
シリンダ30の下端には、シリンダ30内に溶液を取り込む取り込み孔32が配置されている。取り込み孔32には、逆流を防ぐプレート状の弁33が配置されている。弁33は樹脂製である。これにより、一般的に、弁として用いられる金属製のボールを用いる必要がない。
【0039】
円筒70の下端には、容器10の開口11に当該ポンプ2を装着するための環状の固定具3が連結されている。シリンダ30の外周の上端には、容器10内の液体の漏れを防止するシール構造34が備えられている。具体的には、開口11の内側の縁に押し当てられる微小な円筒状の部材34aと、開口11の縁の上端に押し当てられリング状部材34bとがシール構造34として設けられている。これにより、一般的に用いられるゴム等の弾性部材を固定具3の内側に配置する必要がなく、シリンダ30等と同一の樹脂材料で、シール構造34を形成することができる。
【0040】
スプリング40のみならず、ポンプ2のすべての部材を、同一の樹脂材料により形成することできる。例えば、ポリプロピレンによりポンプ2のすべての部材を形成することができるため、ポンプ2の廃棄時に分別する必要がなく、リサイクルが容易である。
【0041】
<作動時>
ポンプ2の作動時の各部の変化について説明する。
【0042】
図1(a)の静止時の状態から、図1(b)のようにノズル22がユーザによって押し下げられると、ノズル22が装着されているピストン20の下端も、シリンダ30内で押し下げられる。このとき、スプリング40-1~40-3も圧縮されている。
【0043】
ピストン20の下端が押し下げられたことにより、シリンダ30内の圧が高まり、シリンダ内の液体が、図2(b)のように下部ピストン20aとピストン弁20cとの隙間を通って、下部ピストン20aとピストン外筒20bの間をさらに通過し、ピストン外筒20bの内部に入り、ノズル22を通って外部に噴出される。
【0044】
ユーザがノズル22から手を放すと、スプリング40-1~40-3の復元力によりノズル22が押し上げられ、これにより、シリンダ30内の空間が広がり、圧が低下する。容器10内の液体は、管12により吸い上げられ、取り込み孔32および弁33を通過して、シリンダ30内を満たす。
【0045】
以降、ノズル22がユーザによって押し下げられるたびに図1(a)および(b)が繰り返される。
【0046】
このように、本実施形態の噴出容器1は、シリンダ30内にスプリング40が配置されていないので、液体によってスプリング40が腐食される恐れがない。また、外部の雰囲気が揮発性の薬剤を含んでいても、スプリング40は樹脂製であるため、腐食される恐れがない。
【0047】
また、スプリング40は小型で、積み重ねてポンプ2内に配置できるため、スプリング40の長さ(高さ)を調節可能であり、ポンプ2の設計の自由度が高い。
【0048】
<<<スプリング40の変形例1>>>
スプリング40の変形例1を図4に示す。
【0049】
図4のスプリング40は、2本の柱状部材43、44の間に、4本の補強部材45~48が配置されている。補強部材45~48は、一端が柱状部材43,44のうちの一つに固定され、他端が別の一つに固定されている。
【0050】
このように補強部材45~48を配置することにより、スプリング40が圧縮された際に、2本の柱状部材43,44が、横方向に広がるのを抑制することができる。
【0051】
<<<スプリング40の変形例2-1>>>
スプリング40の変形例2-1を図5に示す。
【0052】
図5のスプリング40は、図3のスプリング40と同様の構成であるが、柱状部材43,44の傾斜の角度が、図3よりも小さい。
【0053】
他の構成および効果は、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0054】
<<<スプリング40の変形例2-2>>>
スプリング40の変形例2-2を図6に示す。
【0055】
図6のスプリング40は、図5のスプリングの2本の柱状部材43、44の間に、4本の補強部材45~48を配置した構造である。
【0056】
このように補強部材45~48を配置することにより、スプリング40が圧縮された際に、2本の柱状部材43,44が、横方向に広がるのを抑制することができる。
【0057】
<<<スプリング40の変形例3-1>>>
スプリング40の変形例3-1を図7に示す。
【0058】
図7のスプリング40は、3本の柱状部材143、144、145を等間隔に配置した構造である。
【0059】
<<<スプリング40の変形例3-2>>>
スプリング40の変形例3-2を図8に示す。
【0060】
図8のスプリング40は、図7のスプリング40の3本の柱状部材143、144、145の間に、6本の補強部材146~151を配置した構造である。
【0061】
<<<スプリング40の変形例4>>>
スプリング40の変形例4を図9に示す。
【0062】
図9のスプリング40の柱状部材は、4本以上の偶数(ここでは4本)であり、半数の柱状部材445,446は、残りの半数の柱状部材443、444とは逆方向に傾斜するように、第1固定位置443a~446aに対する第2固定位置443b~446bのずれの方向が設定されている。これにより、半数の柱状部材445,446は、残りの半数の柱状部材443、444と交差し、交差位置450,451等において互いに固定されている。
【0063】
これにより、半数の柱状部材445,446と、残りの半数の柱状部材443、444とが、相互に補強部材として作用し、柱状部材443~446が、横方向に広がるのを抑制することができる。
【0064】
<<<スプリング40の変形例5>>>
スプリング40の変形例5を図10に示す。
【0065】
図10のスプリング40の柱状部材243、244は、第1および第2のリング状部材41,42の周方向に沿った形状に湾曲した板状の部材である。
【0066】
板状の柱状部材243の一端(上端)と第1のリング状部材41との固定位置である第1固定位置243aと、柱状部材243の他端(下端)と第2のリング状部材42との固定位置である第2固定位置243bは、第1および第2のリング状部材41,42の中心に対して、同じ角度である。すなわち、第1の固定位置243aの直下に第2の固定位置がある。
【0067】
また、板状の柱状部材243、244は、第1のリング状部材41の中心と、第2のリング状部材42の中心とを結ぶ中心軸に対して、外向きに湾曲した形状である。
【0068】
図10のスプリング40は、図3のスプリングや各変形例のスプリングと同等の作用および効果が得られる。
【0069】
<<<スプリング40の変形例6>>>
スプリング40の変形例6を図11に示す。
【0070】
図11のスプリング40は、対向配置された第1および第2のリング状部材41,42と、筒状部材343とを備えて構成される。第1および第2のリング状部材41,42と、筒状部材343は、いずれも樹脂製である。
【0071】
筒状部材343は、両端が第1および第2のリング状部材41,42にそれぞれ固定されている。筒状部材343は、その径が軸方向について変化しており、軸方向の両端において最も大きく、軸方向の中央で最も小さい。
【0072】
例えば、図11の例では、筒状部材343は、両端で径が最も大きく、中央に向かって直線的に傾斜しており、中央の径が最も小さい。
【0073】
また、第1および第2のリング状部材41,42にはそれぞれ、2以上(図11では4つ)の切り欠き343a、343bが設けられている。
【0074】
切り欠き343a、343bは、筒状部材343に達し、筒状部材343も切り欠かれている。
【0075】
図11のスプリング40は、図3のスプリングや各変形例のスプリングと同様に、ユーザがノズル22に力が加えると筒状部材343が変形して圧縮され、ユーザが手を離すと、図11のスプリング40の復元力により、ノズル22を押し上げることができる。
【符号の説明】
【0076】
1 噴出容器
2 ポンプ
3 固定具
10 容器
11 開口
12 管
20 ピストン
20a 下部ピストン
20b ピストン外筒
20c ピストン弁
22 ノズル
30 シリンダ
31 シリンダブッシュ
32 孔
33 弁
34 シール構造
34a 部材
34b リング状部材
40 スプリング
41 リング状部材
42 リング状部材
43 柱状部材
44 柱状部材
45 補強部材
70 円筒
143 柱状部材
146 補強部材
243 柱状部材
243a 固定位置
243b 固定位置
343 筒状部材
443 柱状部材
445 柱状部材
450 交差位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11