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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20240315BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20240315BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/39
A61K8/40
A61K8/46
A61K8/86
A61K8/92
A61Q5/12
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018568659
(86)(22)【出願日】2018-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2018005833
(87)【国際公開番号】W WO2018151304
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2017029524
(32)【優先日】2017-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】花木 淳子
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓太
(72)【発明者】
【氏名】栗延 理絵
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】野田 定文
【審判官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-180172(JP,A)
【文献】特開2005-179197(JP,A)
【文献】特開2013-79205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)-(D):
(A)ジグリセリン、10質量%以上
(B)分子量が500以下の直鎖および/または分岐鎖を有する飽和炭化水素、トリグリセリド、及び、飽和直鎖脂肪酸と分岐低級アルコールとのエステルからなる群より選ばれる一以上を必須とする油性成分0.2~2質量%
(C)イオン性界面活性剤 1.5~4.5%
(D)高級アルコール
を含み、前記(C)と(D)がαゲルを形成していること、
を特徴とする化粧料組成物。
【請求項2】
毛髪用コンディショニング剤であることを特徴とする、請求項1に記載の化粧料組成物。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2017年2月20日付け出願の日本国特許出願2017-029524号の優先権を主張しており、ここに折り込まれるものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、化粧料組成物に関し、さらに詳しくは、毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0003】
肌や髪にやわらかさやなめらかさを付与する効果は、化粧料に期待される重要な効果である。特に、毛髪は、洗髪の度にキューティクルが開いて脆弱になるため、やわらかさとなめらかさを維持するにはヘアリンスやトリートメント剤等の毛髪化粧料の使用が欠かせない。
【0004】
一般に、リンスやトリートメント剤等の毛髪化粧料(以降、コンディショニング剤と呼ぶ場合がある)は、界面活性剤と高級アルコールを配合してリンスゲル(αゲル)を形成させたものが多く、これにより塗布に適した粘性が得られるとともに、該界面活性剤(特に、カチオン性界面活性剤)が髪に吸着することによりコンディショニング効果を発揮し得る。さらに、コンディショニング効果を高めるために、アミノ酸やアミノ酸誘導体を配合したもの(例として、特許文献1)、水溶性高分子を配合したもの(例として、特許文献2)、液状の脂肪酸とエスエル油を併用したもの(例として、特許文献3)、エステル油と炭化水素を併用したもの(特許文献4)等が知られている。
【0005】
しかしながら、洗髪後の乾燥した髪に対して十分なやわらかさとなめらかさ、特にやわらかさを付与することは難しく、改善の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-231019号公報
【文献】特開2007-169192号公報
【文献】特開2008-127337号公報
【文献】特開2011-98928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来技術が抱える問題を鑑みてなされたものであり、洗髪後の乾燥した毛髪にやわらかさとなめらかさを付与する効果、特に、やわらかくする効果に優れる化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決すべく本発明者が鋭意研究を重ねた結果、界面活性剤と高級アルコールからなるαゲルとともに、高濃度の液状多価アルコール(具体的には10質量%以上)と特定の油性成分を共配合することにより、洗髪後の毛髪をやわらかくする効果に非常に優れる化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1]下記成分(A)-(D):
(A)液状多価アルコールを10質量%以上、(B)油性成分、(C)イオン性界面活性剤、及び(D)高級アルコールを含み、
前記(C)と(D)がαゲルを形成していることを特徴とする化粧料組成物。
[2]前記(A)が3価以上の液状多価アルコールであり、前記(B)が、下記成分(a)-(d):
(a)分子量が500以下の直鎖および/または分岐鎖を有する飽和炭化水素、(b)二重結合および/または分岐鎖を有するエステル油、(c)芳香族アルコール、(d)HLBが7以下のノニオン性界面活性剤、
からなる群より選ばれる1以上の油性成分であり、
毛髪化粧料であること、を特徴とする前記[1]に記載の化粧料組成物。
[3]前記(A)として、グリセリンおよび/またはジグリセリンを20質量%以上含む、前記[1]または[2]に記載の化粧料組成物。
[4]前記(B)として、前記(a)、トリグリセリド、および、飽和直鎖脂肪酸と分岐低級アルコールとのエステルからなる群より選ばれる1以上の油性成分を含む、前記[1]-[3]のいずれかに記載の化粧料組成物。
[5] 毛髪用コンディショニング剤であることを特徴とする、前記[1]-[4]のいずれかに記載の化粧料組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、洗髪後の乾燥した髪をやわらかくする効果に非常に優れる化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
(A)液状多価アルコール
本発明に用いることができる(A)液状多価アルコールは、常温常圧(20℃、一気圧)で液状の多価アルコールであればよく、通常化粧料に配合されるものを用いることができる。例として、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、イソプレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール400等が挙げられる。これらの液状多価アルコールは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
本発明においては、1分子内に水酸基を3個以上有する多価アルコール(すなわち、3価以上の多価アルコール)が好ましく、グリセリン、ジグリセリンを特に好適に用いることができる。
【0013】
本発明における(A)液状多価アルコールの配合量は、組成物全体に対し、10以上質量%、好ましくは10~70質量%、より好ましくは10~60質量%、さらに好ましくは10~50質量%、最も好ましくは15~30質量%である。10質量%未満では上記効果が十分に得られない場合があり、また、70質量%を超えて配合すると製造過程での安定性が悪化する場合がある。
【0014】
(B)油性成分
本発明には、(B)油性成分として、(a)分子量が500以下の直鎖および/または分岐鎖を有する飽和炭化水素、(b)二重結合および/または分岐鎖を有するエステル油、(c)芳香族アルコール、(d)HLBが7以下であるノニオン性界面活性剤から選ばれる1以上の油性成分を好適に用いることができる。
【0015】
(a)分子量が500以下の直鎖および/または分岐鎖を有する飽和炭化水素としては、例として、流動パラフィン、イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、水添ポリデセン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、合成ワックス等であって、分子量が500以下のものが挙げられる。
【0016】
(b)二重結合および/または分岐鎖を有し、且つ、エステル結合を有する炭化水素としては、脂肪酸とアルコールとのエステルが挙げられ、例として、オレイン酸エチル、リノール酸エチル等の二重結合を有する直鎖脂肪酸と直鎖低級アルコールとのエステル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル等の飽和直鎖脂肪酸と分岐低級アルコールとのエステル、オレイン酸イソデシル等の二重結合を有する直鎖脂肪酸と分枝高級アルコールとのエステル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、パルミチン酸エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル等の飽和直鎖脂肪酸と分枝高級アルコールとのエステル、イソステアリン酸エチル等の分枝脂肪酸と直鎖低級アルコールとのエステル、オクタン酸セチル、オクタン酸セトステアリル、オクタン酸ステアリル、イソステアリン酸ヘキシル等の分枝脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル、ジオクタン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、オレイン酸ジグリセリド、オレイン酸トリグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールとのエステル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、イソペラルゴン酸オクチル、ネオデカン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリル等の分枝脂肪酸と分枝高級アルコールとのエステル等が挙げられる。なお、脂肪酸と多価アルコールとのエステルは、モノエステル(モノグリセリド)、ジエステル(ジグリセリド)、トリエステル(トリグリセリド)であってよい。
これらのうち、トリグリセリドもしくは飽和直鎖脂肪酸と分岐低級アルコールのエステルが好ましい。
【0017】
(c)芳香族アルコールとしては、通常化粧料に使用されるものを用いることができる。例として、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0018】
(d)HLBが7以下であるノニオン性界面活性剤としては、通常化粧料に使用されるものであれば特に限定されることはなく用いることができる。例として、ポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、N-アルキルジメチルアミンオキシド、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルであって、HLBが7以下のものが挙げられる。なお、本発明におけるHLB値は、デイビス法によって測定した値である。
これらのうち、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、例として、POE(2)オレイルエーテル(HLB5)等が挙げられる。
【0019】
本発明において、(B)油性成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は全組成中0.001~5質量%、好ましくは0.1~3質量%、さらに好ましくは0.2~2質量%である。この範囲であれば、乾燥後の毛髪にやわらかさ、なめらかさ、及び指通りの良さを付与することができる。0.001質量%未満では上記効果が十分に得られない場合があり、また、5質量%を超えて配合するときしみ感で指通り使用性が低下したり、組成物が軟化して安定性の悪化が生じる場合がある。
【0020】
(C)イオン性界面活性剤
本発明において(C)成分として用いられるイオン性界面活性剤は、通常化粧料に使用されるものであれば特に限定されることはなく、例えば、カチオン性界面活性剤および/またはアニオン性界面活性剤を好適に用いることができる。
カチオン性界面活性剤としては、例として、第三級アミン型カチオン界面活性剤及び/又は第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤が挙げられ、ベヘントリモニウムクロライドおよび/またはセトリモニウムクロライドを好適に用いることができる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアロイルメチルタウリンナトリウム等を好適に用いることができる。
【0021】
本発明において、(C)イオン性界面活性剤は、単独で又は2種以上を併用して用いることができ、その配合量は組成中0.2~5質量%、より好ましくは1.5~4.5質量%である。
【0022】
(D)高級アルコール
本発明において(D)成分として用いられる高級アルコールは、(C)イオン性界面活性剤ととともに水中でαゲルを形成し得るものであって通常化粧品に使用されるものであれば特に限定されないが、炭素数12~24、さらに好ましくは炭素数16~22の直鎖の飽和炭化水素基を有するものが好ましい。そのような高級アルコールの例としては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、ホホバアルコール、キミルアルコール、バチルアルコール等が挙げられる。また、水添ナタネ油アルコール(主成分はステアリルアルコール、アラキルアルコール、及びベヘニルアルコール)を用いてもよい。
このうち、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、水添ナタネ油アルコールを好適に用いることができる。
【0023】
本発明において、(D)高級アルコールは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は組成中0.1~20%、好ましくは3~10%であることが好ましい。
【0024】
本発明に係る化粧料では、(C)イオン性界面活性剤と(D)高級アルコールはαゲルを形成している。
αゲルとは、高級アルコール又は未中和の脂肪酸と界面活性剤とが、水の共存下で形成するラメラ状の2分子膜からなる会合体のことである(参照:福島正二著、「セチルアルコールの物理化学」、フレグランスジャーナル社出版、第79~83頁、1992年)。高級アルコールと界面活性剤は、モル比が3:2~5:1の範囲内においてαゲルを効率良く形成することから、本発明においては、(D)高級アルコールと(C)カチオン性界面活性剤の配合量比(モル比)は3:2~5:1の範囲内であることが好ましい。特に好ましくは、5:2~9:2の範囲内である。また、(D)高級アルコールと(C)アニオン性界面活性剤の配合量比(モル比)は、5:2~11:1の範囲内であることが好ましい。
【0025】
本発明の化粧料中に形成されるαゲルは、成分(C)と(D)からなる2分子膜中に(B)油性成分を、該2分子膜の膜間に存在する水中に(A)液状多価アルコールを保持していてもよい。
【0026】
本発明の毛髪化粧料は、媒体として水を含有する。また、水には、本発明の効果を損なわない範囲において、以下に例示する任意成分のうち、水溶性の成分を適宜配合することができる。
【0027】
本発明に係る化粧料には、上記必須成分の他に、通常化粧料に用いられる成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。かかる任意成分としては、例えば、粉末成分、増粘剤、皮膜剤、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、ビタミン、酸化防止剤、防腐剤、香料等が挙げられる。
【0028】
本発明に係る化粧料は、定法に従って製造することができる。
【0029】
本発明に係る毛髪化粧料は、リンス(コンディショナー)、トリートメント等に代表されるコンディショニング剤として好適に用いることができる。特に、シャンプーによる洗髪後、リンス処理する前に使用することにより、リンスのコンディショニング効果増強剤として用いることができる。すなわち、本発明に係る毛髪化粧料を、シャンプーによる洗浄とすすぎを終えた髪に塗布してよくなじませた後、温水で洗い流し、その後通常のリンス処理をすることで、髪を非常にやわらかくすることができる。
【0030】
本発明に係る組成物は、髪に適用後、洗い流して使用する(すなわち、インバス用の)コンディショニング剤として、好適に使用することができる。
【実施例
【0031】
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。また、本実施例における配合量は、特に断りがない限り質量%である。
【0032】
[実施例1]
下表1及び2に示す処方の試験組成物(コンディショナー)を下記製法に従って製造し、下記の官能評価試験及び物性試験を行って毛髪に対する効果を評価した。
【0033】
<製法>
下表に示す処方において、各配合成分を80℃にて攪拌融解し、これを冷却することによりコンディショナーを得た。
【0034】
<官能評価試験>
毛髪ストランド(株式会社ビューラックス製、25cm)20gをお湯(約40℃)で30秒間濡らし、市販のシャンプー1gを塗布して30秒間洗髪した。当該毛髪ストランドをお湯(約40℃)で30秒間すすいだ後、試験組成物1gを塗布して30秒間なじませた。その後、当該毛髪ストランドをお湯(約40℃)で60秒間すすぎ、タオルで水分を除去した後、ドライヤーを用いて十分に乾燥させた。
乾燥後の毛髪ストランドについて、専門パネラー10名に対し、下記(1)~(3)の項目について下記評価基準に従って評価してもらった。
【0035】
(評価項目と基準)
(1)やわらかさ
5:やわらかい、4:やややわらかい、3:普通、2:やや硬い、5:硬い
(2)なめらかさ
5:なめらか、4:ややなめらか、3:普通、2:ややなめらかでない、5:なめらかでない
(3)指通りの良さ
5:指通りが良い、4:やや指通りが良い、3:普通、2:やや指通りが悪い、5:指通りが悪い
【0036】
得られた評価の平均値を算出し、下記に従って表中に記号で表示した。
(1)やわらかさについては、A-Bを合格(非常になめらか)、C-Dを不合格とし、(2)なめらかさと(3)指通りの良さについては、A-Cを合格、Dを不合格とした。
A:評価の平均値が4以上、5以下
B:評価の平均値が3以上、4未満
C:評価の平均値が2以上、3未満
D:評価の平均値が1以上、2未満
【0037】
<物性試験>
毛髪のやわらかさを物理的に評価するために、毛髪の曲げ応力を測定した。毛髪の曲げ応力は、毛髪の硬さやハリ、こし感の指標として一般に用いられているパラメーターである。
市販の毛髪ストランドに対し、上記官能評価試験と同様の処理(市販シャンプーによる洗髪、試験組成物による処理、及び乾燥処理)を行った後、毛髪の曲げ試験機(カトーテック株式会社製、KES-FB2-S)を用いて、毛髪の曲げ応力を測定した。なお、曲げ応力が小さいほど、毛髪が柔軟であることを示す。
前記処理前後での毛髪の曲げ応力を測定し、下記数式(1)で表されるP値を算出した。P値に対する評価基準も合わせて示す。
【0038】
【数1】
【0039】
(評価基準)
P値が1未満:毛髪をやわらかくする効果あり
P値が1以上:毛髪をやわらかくする効果なし
【0040】
試験結果について、実施例の結果を表1に、比較例の結果を表2に示す。表中、物性試験結果の欄における“-”は、当該測定を行っていないことを表す。
なお、アスタリスクで表した化合物としては、以下のものを用いた。
*1:精製マカデミア油(日清株式会社製)
*2:エマレックス502P(日本エマルジョン株式会社製)
*3:エマレックス550P(日本エマルジョン株式会社製)
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
表1に示されるように、イオン性界面活性剤と高級アルコールからなるαゲルを含み、液状多価アルコールを20-50質量%含み、さらに、油性成分として(a)分子量が500以下の直鎖および/または分岐鎖を有する飽和炭化水素(実施例1、2、8-10)、(b)二重結合および/または分岐鎖を有するエステル油(実施例3-5)、(c)芳香族アルコール(実施例6)、または(d)HLBが7以下であるノニオン性界面活性剤(実施例7)を含むコンディショナーで処理した毛髪は、官能評価において非常にやわらかく、さらに、なめらかであった。また、これらの毛髪のP値は1未満であり(実施例1-4、7)、やわらかくなったことが物理的にも示された。
さらに、油性成分として(a)分子量が500以下の直鎖および/または分岐鎖を有する飽和炭化水素(実施例1、2、8-10)、(b)マカデミアナッツ油またはミリスチン酸イソプロピル(実施例3、4)、または(d)POE(2)オレイルエーテル(実施例7)を配合したコンディショナーで処理した毛髪は、指通りの良さにも優れていた。
【0044】
これに対し、液状多価アルコール(グリセリンまたはジグリセリン)を常温常圧で固体のソルビトールに置換したコンディショナーで処理した場合には、なめらかさと指通りの良さは得られたが、やわらかさに非常に劣る結果となった(実施例2と比較例1、実施例3と比較例2、実施例6と比較例3の比較)。また、油性成分として、分子量が500を超える炭化水素(比較例4)、またはHLBが16であるノニオン性界面活性剤(比較例5)を配合したコンディショナーで処理した毛髪は、やわらかさ、なめらかさ、指通りの良さのいずれにおいても劣っていた。また、油性成分(比較例6、8)または多価アルコール(比較例7)を配合しなかったコンディショナーでは、毛髪に対し、やわらかさ、なめらかさ、及び指通りの良さを付与する効果は見られなかった(比較例6)。
【0045】
一般に、αゲルは、当該2分子膜中に油性成分を、該2分子膜の膜間に存在する水中に水性成分をそれぞれ保持できることが知られている。本発明者は、本願組成物中での(A)液状多価アルコールと(B)油性成分の局在を理解するために、成分(C)と成分(D)がαゲルを形成しているが成分(A)と(B)を含まないコンディショナーを製造した(比較例9)。そして、当該コンディショナー、(A)グリセリン、及び(B)水添ポリデセンを毛髪ストランドにそれぞれ直接塗布して、前記官能評価を行った。
この処理を行った毛髪では、やわらかさ、なめらかさ、及び指通りの良さのいずれも認められなかった(表2、比較例9)。
【0046】
この結果より、本発明にかかる化粧料組成物では、(A)液状多価アルコールと(B)油性成分がαゲルの2分子膜の膜間と膜中にそれぞれ保持されており、そのような構造体が形成されることで毛髪にやわらかさやなめらかさ、さらには指通りの良さが付与される可能性が示唆された。
【0047】
[実施例2]
次に、液状多価アルコールの配合量を検討した。
下表3に示す処方の試験組成物(コンディショナー)を実施例1の製法に従って製造し、実施例1と同じ試験を行って毛髪に対する効果を評価した。
【0048】
【表3】
【0049】
表3に示されるように、液状多価アルコールを5-7質量%配合したコンディショナーで処理した毛髪では、官能評価において、なめらかさと指通りの良さが認められたが、やわらかさには劣っていた(比較例10、11)。また、これらの毛髪のP値は1以上であり、やわらかくないことが物理的にも示された。
これに対し、液状多価アルコールを12.5-65質量%配合したコンディショナーで処理した毛髪では、官能評価において、やわらかさに非常に優れ、さらに、なめらかさと指通りの良さにも優れていた(実施例11-16)。また、これらの毛髪のP値は1未満であり、やわらかいことが物理的にも示された。
【0050】
よって、本発明に係る毛髪化粧料には多量の液状多価アルコールを配合することができ、10-65質量%となる範囲で配合すると、毛髪を非常にやわらかくする効果に優れることが示された。
【0051】
[実施例3]
続いて、油性成分の配合量を検討した。
下表4に示す処方の試験組成物(コンディショナー)を実施例1の製法に従って製造し、実施例1と同じ試験を行って毛髪に対する効果を評価した。なお、実施例3で用いたツバキ種子油は(b)二重結合および/または分岐鎖を有するエステル油、流動パラフィンは(a)分子量が500以下の直鎖および/または分岐鎖を有する飽和炭化水素にそれぞれ属する油性成分である。
【0052】
【表4】
【0053】
表4に示されるように、油性成分を含まないコンディショナーで処理した毛髪は、官能評価において、やわらかさに非常に劣り、なめらかさと指通りの良さにも劣っていた(比較例12)。また、当該毛髪のP値は1以上であり、やわらかくないことが物性試験においても示された。
これに対し、油性成分としてツバキ種子油を0.001~0.5質量%または流動パラフィンを0.5質量%配合したコンディショナーで処理した毛髪は、非常にやわらかいことが官能評価において示され、さらに、物性試験においてもやわらかいことが示された(実施例17-21)。さらに、当該油性成分の配合量が0.1質量%以上の試験例では、なめらかさと指通りの良さにも優れていた(実施例19~21)。
【0054】
よって、本発明に係る毛髪化粧料に油性成分を0.001~5質量%となるように配合すると、毛髪を非常にやわらかくする効果に優れ、さらに、0.1質量%以上の配合量では、毛髪になめらかさと指通りの良さを付与する効果にも優れることが示された。
【0055】
以上の結果より、イオン性界面活性剤と高級アルコールがαゲルを形成している毛髪化粧料において、液状多価アルコールを高配合し(具体的には10質量%以上)、さらに、(a)分子量が500以下の直鎖および/または分岐鎖を有する飽和炭化水素、(b)二重結合および/または分岐鎖を有するエステル油、(c)芳香族アルコール、及び(d)HLBが7以下であるノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上の油性成分を共配合することで、毛髪をやわらかくする効果に非常に優れる毛髪化粧料が得られることが明らかとなった。