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  • 特許-シリンジ用キャップ組体 図1
  • 特許-シリンジ用キャップ組体 図2
  • 特許-シリンジ用キャップ組体 図3
  • 特許-シリンジ用キャップ組体 図4
  • 特許-シリンジ用キャップ組体 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】シリンジ用キャップ組体
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20240315BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
A61M5/31 502
A61M5/28
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019007497
(22)【出願日】2019-01-21
(65)【公開番号】P2020115965
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-20
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 裕也
(72)【発明者】
【氏名】兼村 晃一
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】近藤 利充
【審判官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-29561(JP,A)
【文献】国際公開第2013/146296(WO,A1)
【文献】特表2008-502422(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179313(WO,A1)
【文献】特開2004-16772(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0178627(US,A1)
【文献】特開2009-240684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジの先端の吐出口に装着されるシリンジ用キャップ組体であって、
前記シリンジの先端の吐出口に装着されるロックカラーと、
前記ロックカラーに螺合により締め付けられるプラキャップと、
を備え、
前記ロックカラーの外表面には、軸方向に延びる凸条リブが周方向に沿って複数設けられることにより、周方向に沿って隣接する前記凸条リブの間に軸方向に延びる複数の凹部溝が規定され、
前記プラキャップの外表面の底部は、前記ロックカラー側に向かって延びる突起を含み、
前記プラキャップの前記ロックカラーへの螺合による締め付け回転が終了した段階では、前記突起は、前記凸条リブの間の前記凹部溝に位置し、
前記プラキャップの内周面には、ゴムキャップが嵌められており、前記ゴムキャップの底面側には軸方向にに延びる凹部が設けられており、前記凹部が前記シリンジの先端の吐出口に液密状態に圧接している、
シリンジ用キャップ組体。
【請求項2】
前記凸条リブは、前記ロックカラーの外表面に等間隔で複数配置されることにより、前記凹部溝も、前記ロックカラーの外表面に等間隔で複数規定され、
前記突起は、前記プラキャップの前記ロックカラーへの螺合による締め付け回転が終了した段階では、前記プラキャップの回転方向から見て後流側に位置する前記凸条リブの近傍に位置している、
請求項1に記載のシリンジ用キャップ組体。
【請求項3】
前記凸条リブは、前記ロックカラーの外表面に等間隔で8箇所に配置されている、
請求項2に記載のシリンジ用キャップ組体。
【請求項4】
前記突起は、180度対向する位置に合計2箇所設けられている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシリンジ用キャップ組体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジ用キャップ組体に関する。
【背景技術】
【0002】
無菌的に液状製剤がシリンジ内に充填されたプレフィルドシリンジが知られている。たとえば、特開2007-29561号公報(特許文献1)には、このプレフィルドシリンジに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-29561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレフィルドシリンジにおいては、シリンジの先端の吐出口にシリンジ用キャップ組体が装着されている。具体的には、シリンジ用キャップ組体としては、ロックカラーおよびプラキャップを含む。ロックカラーは、シリンジの先端の吐出口に直接装着される。プラキャップは、ロックカラーに対して、螺合による締め付けにより固定される。プラキャップには、ゴムキャップが内装され、このゴムキャップがシリンジの先端の吐出口を覆うようにして当接することで、シリンジの先端の吐出口の液密性が確保される。
【0005】
液状製剤がシリンジ内に充填されたプレフィルドシリンジは、個別包装された状態で運搬されるが、運搬時の振動等によりプラキャップが微振動して、ロックカラーに対する締結が緩められるおそれがある。この場合には、液状製剤の無菌状態が脅かされることとなる。
【0006】
この発明は上記の課題に鑑みてなされたものであって、プラキャップのロックカラーに対する締結の緩みを抑制することが可能な構成を備えるシリンジ用キャップ組体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このシリンジ用キャップ組体においては、シリンジの先端の吐出口に装着されるシリンジ用キャップ組体であって、上記シリンジの先端の吐出口に装着されるロックカラーと、上記ロックカラーに螺合により締め付けられるプラキャップと、を備え、上記ロックカラーの外表面には、軸方向に延びる凸条リブが周方向に沿って複数設けられることにより、周方向に沿って隣接する上記凸条リブの間に軸方向に延びる複数の凹部溝が規定され、上記プラキャップの外表面の底部は、上記ロックカラー側に向かって延びる突起を含み、上記プラキャップの上記ロックカラーへの螺合による締め付け回転が終了した段階では、上記突起は、上記凸条リブの間の凹部溝に位置している。
【0008】
他の局面においては、上記凸条リブは、上記ロックカラーの外表面に等間隔で複数配置されることにより、上記凹部溝も、上記ロックカラーの外表面に等間隔で複数規定され、上記突起は、上記プラキャップの上記ロックカラーへの螺合による締め付け回転が終了した段階では、上記プラキャップの回転方向から見て後流側に位置する上記凸条リブの近傍に位置している。
【0009】
他の形態においては、上記凸条リブは、上記ロックカラーの外表面に等間隔で8箇所に配置されている。
【0010】
他の形態においては、上記突起は、180度対向する位置に合計2箇所設けられている。
【発明の効果】
【0011】
このシリンジ用キャップ組によれば、プラキャップのロックカラーに対する締結の緩みを抑制することが可能な構成を備えるシリンジ用キャップ組体の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態のプレフィルドシリンジの全体構成を示す図である。
図2】実施の形態のシリンジの先端部に装着されるシリンジ用キャップ組体を示す斜視図である。
図3】実施の形態のプラキャップの底面側から見た斜視図である。
図4図2中のIV-IV線矢視断面図である。
図5図4中のV-V線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態のプレフィルドシリンジについて図面を参照して説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。図においては、実際の寸法比率では記載しておらず、構造の理解を容易にするために、一部比率を異ならせて記載している。
【0014】
(プレフィルドシリンジ1)
図1から図5を参照して、本実施の形態のプレフィルドシリンジ1の構成について説明する。図1は、プレフィルドシリンジ1の全体構成を示す図、図2は、シリンジ11の先端部に装着されるシリンジ用キャップ組体10を示す斜視図、図3は、プラキャップ14aの底面側から見た斜視図、図4は、図2中のIV-IV線矢視断面図、図5は、図4中のV-V線矢視断面図である。
【0015】
図1を参照して、プレフィルドシリンジ1は、内部に薬液等が充填されるシリンジ11、シリンジ11の内部に挿入されるピストン12、シリンジ11の先端の吐出口に装着されるシリンジ用キャップ組体10を備えている。
【0016】
シリンジ用キャップ組体10は、ロックカラー13、ロックカラー13に螺合されるプラキャップ14、および、プラキャップ14に内装されるゴムキャップ15を含む。
【0017】
プレフィルドシリンジ1は、通常、シリンジ11の内部に液状製剤等が充填された後の状態を意味する。したがって、図1においては、ピストン12がシリンジ11の先端側にまで押し込まれた状態を図示しており、シリンジ11の内部には薬液が充填されていない状態を図示しているが、この状態であっても、本明細書ではプレフィルドシリンジと称するものとする。
【0018】
図2から図4を参照して、本実施の形態のシリンジ用キャップ組体10は、上記したように、ロックカラー13、ロックカラー13に螺合されるプラキャップ14、および、プラキャップ14に内装されるゴムキャップ15を含む。
【0019】
プラキャップ14、および、プラキャップ14には、たとえば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリアミド(たとえば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、ポリエーテルスルホン、メタクリル-スチレン共重合体、ポリアリレート、スチレン-アクリロニトリル共重合体のような樹脂材料が用いられる。
【0020】
ゴムキャップ15には、たとえば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン-プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、ポリエチレン、塩化ビニル樹脂のような比較的柔軟な樹脂材料等、または、これらの組み合わせを用いることができる。
【0021】
円筒形状のロックカラー13の外表面には、軸方向(図中矢印Y方向)に延びる凸条リブ13aが周方向に沿って複数設けられている。この構成により、この凸条リブ13aの周方向に沿って隣接する凸条リブ13aの間には、軸方向に延びる複数の凹部溝13bが規定される。本実施の形態では、凸条リブ13aは、ロックカラー13の外表面に等間隔で8箇所に配置されているが、この配置形態に限定されるものではなく、凸条リブ13aの数量、配置ピッチ等は、仕様に応じて適宜変更されるものである。
【0022】
円筒形状のプラキャップ14の外表面にも、ロックカラー13と同様に、軸方向(図中矢印Y方向)に延びる凸条リブ14aが周方向に沿って複数設けられている。この構成により、この凸条リブ14aの周方向に沿って隣接する凸条リブ14aの間には、軸方向に延びる複数の凹部溝14bが規定される。プラキャップ14の外表面の底部側(ロックカラー13側)には、全周を取り囲む環状リブ14cが設けられている。
【0023】
本実施の形態では、凸条リブ14aは、プラキャップ14の外表面に等間隔で8箇所に配置されているが、この配置形態に限定されるものではなく、凸条リブ14aの数量、配置ピッチ等は、仕様に応じて適宜変更されるものである。
【0024】
図2および図3を参照して、プラキャップ14の外表面の底部14zには、ロックカラー13側に向かって延びる突起14pが設けられている。本実施の形態では、突起14pは、180度対向する位置に合計2箇所設けられている。
【0025】
図4を参照して、筒状のロックカラー13の内周面には、らせんネジ山13nが設けられ、筒状のプラキャップ14の底部からロックカラー13側に延びる底部筒状部14yの外周面には、らせんネジ山13nに螺合するネジ山14nが設けられている。プラキャップ14の内周面14hには、上述のゴムキャップ15が嵌め入れられている。
【0026】
ゴムキャップ15の底面側には、軸方向に延びる凹部15yが設けられており、ロックカラー13にプラキャップ14を螺合締結した状態では、凹部15yがシリンジ11の先端の吐出口に液密状態に圧接することとなる。
【0027】
図2および図5を参照して、プラキャップ14のロックカラー13への螺合による締め付け回転(図5中の矢印R方向)が終了した段階では、突起14pは、凸条リブ13aの間の凹部溝13bに位置しているとよい。より好ましくは、図5によく現れてるように、プラキャップ14の回転方向から見て後流側に位置する凸条リブ13aの側壁に当接しているとよい。
【0028】
以上、本実施の形態におけるシリンジ用キャップ組体10によれば、プラキャップ14のロックカラー13への螺合による締め付け回転(図5中の矢印R方向)が終了した段階では、突起14pが凸条リブ13aの間の凹部溝13bに位置している。これにより、仮にプラキャップ14のロックカラー13に対する緩みが発生しても、突起14pが凸条リブ13aの側面に当接することにより、プラキャップ14の回転を阻止することができる。
【0029】
より好ましくは、図5によく現れてるように、プラキャップ14のロックカラー13への螺合による締め付け回転(図5中の矢印R方向)が終了した段階で、プラキャップ14の回転方向から見て後流側に位置する凸条リブ13aの側壁に当接するように設計を行なうことで、プラキャップ14のロックカラー13への螺合による締め付け終了段階からプラキャップ14の回転を阻止することが可能となる。必ずしもプラキャップ14が凸条リブ13aの側壁に当接していなくても、近傍に位置する場合であってもほぼ同等の効果が得られる。
【0030】
以上の実施の形態では、凸条リブ14aは、プラキャップ14の外表面に等間隔で8箇所に配置し、突起14pは、180度対向する位置に合計2箇所設ける構成を採用したが、この構成に限定されることはなく、突起14pは、一箇所以上に設けられていればよい。
【0031】
今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0032】
1 プレフィルドシリンジ、11 シリンジ、12 ピストン、10 シリンジ用キャップ組体、13 ロックカラー、13a 凸条リブ、13b 凹部溝、13n らせんネジ山、14 プラキャップ、14a 凸条リブ、14b 凹部溝、14c 環状リブ、14h 内周面、14n ネジ山、14p 突起、14y 底部筒状部、14z 底部、15 ゴムキャップ、15y 凹部。
図1
図2
図3
図4
図5