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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】光検出装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20240315BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20240315BHJP
   H01L 31/02 20060101ALI20240315BHJP
   H01L 31/107 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H01L31/10 H
H01L31/02 B
H01L27/146 D
H01L31/10 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019111528
(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公開番号】P2020096157
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2018232892
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018232895
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】園部 弘典
(72)【発明者】
【氏名】西尾 文孝
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 勇治
(72)【発明者】
【氏名】前北 和晃
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-038157(JP,A)
【文献】特開平04-256376(JP,A)
【文献】特開2007-266251(JP,A)
【文献】特開2004-303878(JP,A)
【文献】特開平04-111477(JP,A)
【文献】特開平05-235396(JP,A)
【文献】特開2006-080416(JP,A)
【文献】実開昭61-038975(JP,U)
【文献】特開昭61-289677(JP,A)
【文献】特開平08-207281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H01L 31/107
H01L 31/10
H01L 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第一及び第二主面を含むと共に、各々が少なくとも一つのアバランシェフォトダイオードを含む複数のセルを有する半導体基板と、
前記複数のセルから離間して前記第一主面に配置されている複数のパッド電極と、
前記第一主面に配置されていると共に、互いに対応する前記セルと前記パッド電極とを電気的に接続する複数の配線部と、を備え、
前記半導体基板は、周辺に位置するキャリアを吸収する周辺キャリア吸収部を有し、
前記周辺キャリア吸収部は、前記第一主面に直交する方向から見て、各前記パッド電極及び各前記配線部の周囲に設けられており
各前記配線部の幅は、前記パッド電極の径よりも小さく、
各前記セルの縁と当該セルに対応する前記パッド電極の縁との最短距離は、当該パッド電極の径よりも大きい、光検出装置。
【請求項2】
前記周辺キャリア吸収部は、連続的に各前記パッド電極及び各前記配線部を囲んでいる、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
前記周辺キャリア吸収部は、断続的に各前記パッド電極及び各前記配線部を囲んでいる、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項4】
各前記セルの縁と当該セルに対応する前記パッド電極の縁との最短距離は、50μm以上である、請求項1~のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項5】
前記周辺キャリア吸収部は、前記周辺キャリア吸収部の縁と各前記配線部の縁との間隔が25~50μmとなるように前記各配線部を囲んでいる、請求項1~のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項6】
各前記セルに接続されている電極部を更に備え、
前記複数の配線部の各々は、対応する前記セルに接続されている前記電極部に接続されており、
前記電極部の縁と前記配線部の縁との接続部分は、湾曲しており、
前記接続部分の曲率半径は、前記半導体基板の厚さ方向における前記アバランシェフォトダイオードの空乏層の厚さ以上である、請求項1~のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項7】
各前記セルに接続されている電極部を更に備え、
前記複数の配線部の各々は、対応する前記セルに接続されている前記電極部に接続されており、
前記周辺キャリア吸収部は、前記第一主面に直交する方向から見て、前記電極部の縁と前記配線部の縁との接続部分に対向すると共に湾曲した縁を有しており、
前記周辺キャリア吸収部の前記縁の曲率半径は、前記半導体基板の厚さ方向における前記アバランシェフォトダイオードの空乏層の厚さ以上である、請求項1~のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項8】
前記周辺キャリア吸収部は、前記第一主面に直交する方向から見て、前記電極部の縁と前記配線部の縁との接続部分に対向すると共に湾曲した縁を有しており、
前記周辺キャリア吸収部の前記縁の曲率半径は、前記半導体基板の厚さ方向における前記アバランシェフォトダイオードの空乏層の厚さ以上である、請求項に記載の光検出装置。
【請求項9】
各前記セルに接続されている電極部を更に備え、
前記アバランシェフォトダイオードは、光吸収領域を含み、
前記複数の配線部の各々は、対応する前記セルに接続されている前記電極部に接続されており、
前記電極部の縁と前記配線部の縁との接続部分は湾曲しており、
前記接続部分の曲率半径は、前記半導体基板の厚さ方向における前記光吸収領域の厚さ以上である、請求項1~のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項10】
各前記セルに接続されている電極部を更に備え、
前記アバランシェフォトダイオードは、光吸収領域を含み、
前記複数の配線部の各々は、対応する前記セルに接続されている前記電極部に接続されており、
前記周辺キャリア吸収部は、前記第一主面に直交する方向から見て、前記電極部の縁と前記配線部の縁との接続部分に対向すると共に湾曲した縁を有しており、
前記周辺キャリア吸収部の前記縁の曲率半径は、前記半導体基板の厚さ方向における前記光吸収領域の厚さ以上である、請求項1~のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項11】
前記周辺キャリア吸収部は、前記第一主面に直交する方向から見て、前記電極部の縁と前記配線部の縁との接続部分に対向すると共に湾曲した縁を有しており、
前記周辺キャリア吸収部の前記縁の曲率半径は、前記半導体基板の厚さ方向における前記光吸収領域の厚さ以上である、請求項に記載の光検出装置。
【請求項12】
前記電極部の縁と前記配線部の縁との接続部分は、曲率半径60μm~120μmで湾曲している、請求項又はに記載の光検出装置。
【請求項13】
前記周辺キャリア吸収部の前記縁は、曲率半径60μm~120μmで湾曲している、請求項10及び1のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項14】
各前記パッド電極に接続されたワイヤを更に備え、
各前記パッド電極には、前記ワイヤのボールボンドが接合されている、請求項1~1のいずれか一項に記載の光検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
受光部への入射光に応じた信号を出力する装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載された装置は、受光部に電気的に接続されたワイヤを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-275668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フォトダイオードによって受光部が構成された光検出装置においてフォトダイオードの周辺にワイヤが接続されている場合、当該ワイヤにおける光の反射による迷光が間接的にだけでなく直接的にフォトダイオードに入射するおそれがある。この場合、迷光によるノイズが検出結果に影響を及ぼすおそれがある。特に、検出対象の光の光量が大きい場合、及び、フォトダイオードの増倍率が大きい場合には、上記ノイズが顕著に表れるおそれがある。
【0005】
本発明の一つの態様は、光検出の精度が向上された光検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様に係る光検出装置は、半導体基板と、複数のパッド電極と、複数の配線部とを備える。半導体基板は、互いに対向する第一及び第二主面を含む。半導体基板は、複数のセルを有する。複数のセルの各々は、少なくとも一つのアバランシェフォトダイオードを含む。複数のパッド電極は、複数のセルから離間して第一主面に配置されている。複数の配線部は、第一主面に配置されている。複数の配線部は、互いに対応するセルとパッド電極とを接続する。半導体基板は、周辺に位置するキャリアを吸収する周辺キャリア吸収部を有する。周辺キャリア吸収部は、第一主面に直交する方向から見て、各パッド電極及び各配線部の周囲に設けられている。
【0007】
上記一つの態様では、セルとパッド電極とが離間して配置され、配線部で接続されている。このため、パッド電極に接続されたワイヤで反射した迷光がセルに入射し難い。
【0008】
アバランシェフォトダイオードには比較的高い電圧が印加されるため、半導体基板においてパッド電極に接している部分の電子又は正孔の濃度が変化してしまうおそれがある。同様に、半導体基板において配線部に接している部分の電子又は正孔の濃度も変化してしまうおそれがある。この場合、上記部分に光が入射することによって、キャリアが発生するおそれがある。この部分でキャリアが発生すると、検出結果においてノイズとなる。上記光検出装置では、各配線部の周囲に周辺キャリア吸収部が設けられている。したがって、上記部分で不要なキャリアが発生しても、発生したキャリアは周辺キャリア吸収部で吸収される。この光検出装置では、光検出の精度が向上されている。
【0009】
上記一つの態様では、周辺キャリア吸収部は、連続的に各パッド電極及び各配線部を囲んでいてもよい。
【0010】
上記一つの態様では、周辺キャリア吸収部は、断続的に各パッド電極及び各配線部を囲んでいてもよい。
【0011】
上記一つの態様では、各配線部の幅は、パッド電極の径よりも小さくてもよい。この場合、半導体基板と配線部とが接する部分が小さい。したがって、配線部に印加される電圧に起因して、半導体基板において電子又は正孔の濃度が変化してしまうことを抑制できる。
【0012】
上記一つの態様では、各セルの縁と当該セルに対応するパッド電極の縁との最短距離は、当該パッド電極の径よりも大きくてもよい。この場合、パッド電極に接続されたワイヤで反射した光がセルにさらに入射し難い。
【0013】
上記一つの態様では、各セルの縁と当該セルに対応するパッド電極の縁との最短距離は、50μm以上であってもよい。この場合、パッド電極に接続されたワイヤで反射した光がセルにさらに入射し難い。
【0014】
上記一つの態様では、周辺キャリア吸収部は、周辺キャリア吸収部の縁と各配線部の縁との間隔が25~50μmとなるように各配線部を囲んでいてもよい。この場合、周辺キャリア吸収部と配線部とのショートがさらに抑制されながら、周辺キャリア吸収部において不要なキャリアがさらに吸収される。
【0015】
上記一つの態様では、各セルに接続されている電極部を更に備えてもよい。複数の配線部の各々は、対応するセルに接続されている電極部に接続されていてもよい。電極部の縁と配線部の縁との接続部分は、湾曲していてもよい。接続部分の曲率半径は、半導体基板の厚さ方向における、アバランシェフォトダイオードの空乏層の厚さ以上であってもよい。この場合、上記接続部分における電界の集中が抑制される。ESD耐性も向上する。
【0016】
上記一つの態様では、各セルに接続されている電極部を更に備えてもよい。複数の配線部の各々は、対応するセルに接続されている電極部に接続されていてもよい。周辺キャリア吸収部は、第一主面に直交する方向から見て、電極部の縁と配線部の縁との接続部分に対向すると共に湾曲した縁を有していてもよい。周辺キャリア吸収部の縁の曲率半径は、半導体基板の厚さ方向におけるアバランシェフォトダイオードの空乏層の厚さ以上であってもよい。この場合、周辺キャリア吸収部の上記縁における電界の集中が抑制される。ESD耐性も向上する。
【0017】
上記一つの態様では、各セルに接続されている電極部を更に備えてもよい。アバランシェフォトダイオードは、光吸収領域を含んでもよい。複数の配線部の各々は、対応するセルに接続されている電極部に接続されていてもよい。電極部の縁と配線部の縁との接続部分は湾曲していてもよい。接続部分の曲率半径は、半導体基板の厚さ方向における光吸収領域の厚さ以上であってもよい。この場合、上記接続部分における電界の集中が抑制される。ESD耐性も向上する。
【0018】
上記一つの態様では、各セルに接続されている電極部を更に備えてもよい。アバランシェフォトダイオードは、光吸収領域を含んでもよい。複数の配線部の各々は、対応するセルに接続されている電極部に接続されていてもよい。周辺キャリア吸収部は、第一主面に直交する方向から見て、電極部の縁と配線部の縁との接続部分に対向すると共に湾曲した縁を有していてもよい。周辺キャリア吸収部の縁の曲率半径は、半導体基板の厚さ方向における光吸収領域の厚さ以上であってもよい。この場合、周辺キャリア吸収部の上記縁における電界の集中が抑制される。ESD耐性も向上する。
【0019】
上記一つの態様では、光検出装置は、電極部の縁と配線部の縁との接続部分は、曲率半径60μm~120μmで湾曲していてもよい。この場合、上記接続部分における電界の集中が抑制される。ESD耐性も向上する。
【0020】
上記一つの態様では、周辺キャリア吸収部の縁は、曲率半径60μm~120μmで湾曲していてもよい。この場合、周辺キャリア吸収部の上記縁における電界の集中が抑制される。ESD耐性も向上する。
【0021】
各パッド電極に接続されたワイヤを更に備えてもよい。各パッド電極には、ワイヤのボールボンドが接合されていてもよい。この場合、パッド電極の大きさが縮小され得ると共に、ワイヤボンディングにおいて半導体基板に生じるダメージが軽減される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一つの態様は、光検出の精度が向上された光検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係る光検出装置の平面図である。
図2】受光素子の平面図である。
図3】受光素子の断面図である。
図4】受光素子の断面図である。
図5】本実施形態の変形例に係る受光素子の平面図である。
図6】本実施形態の変形例に係る受光素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有している要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0025】
まず、図1から図4を参照して、本実施形態に係る光検出装置を説明する。図1は、本実施形態に係る光検出装置の平面図である。図2は、受光素子10の平面図である。図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。図4は、図2のIV-IV線に沿った断面図である。
【0026】
光検出装置1は、受光素子10と、ICチップ50と、を備える。受光素子10とICチップ50とは、ワイヤボンディングによって設けられた複数のワイヤWを介して接続されている。図1に示されているように、受光素子10にはボールボンドが接合されている。ICチップ50にもボールボンドが接合されている。受光素子10及びICチップ50に接合されたワイヤWにおいて、ボールボンドの他端にはスティッチボンドが設けられている。受光素子10に接合されたワイヤWのスティッチボンドは、光検出装置1に設けられたプリント配線によってICチップ50に接合されたワイヤWのスティッチボンドに電気的に接続されている。
【0027】
受光素子10は、半導体基板20を備える。半導体基板20は、複数のセル22を有している。複数のセル22は、一方向に配列されている。各セル22は、受光部として機能する。各セル22には、少なくとも一つのアバランシェフォトダイオードが含まれている。以下、「アバランシェフォトダイオード」を「APD」と称する。本実施形態では、各APD23は、リニアモードで動作する。各セル22に含まれるAPDは、ガイガーモードで動作するものであってもよい。APD23がガイガーモードで動作する構成では、APD23にクエンチング抵抗が接続される。
【0028】
光検出装置1に入射した光は、複数のセル22に導かれる。各セル22に光が入射すると、APD23において光子が電子に変換され増倍される。APD23で増倍された電子は、信号として出力される。各セル22から出力された信号は、対応するワイヤWを通して、ICチップ50に入力される。
【0029】
半導体基板20は、互いに対向する主面20a,20bを有する。半導体基板20は、主面20a側に複数のセル22を有する。本実施形態では、各セル22は、1つのAPD23を含んでいる。各セル22は、複数のAPD23を含んでいてもよい。各APD23は、リーチスルー型のAPDであってもよいし、リバース型のAPDであってもよい。以下、一例として、各APD23がリーチスルー型のAPDである場合の半導体基板20の構成について説明する。
【0030】
半導体基板20は、APD23を含む複数のセル22に加えて、周辺キャリア吸収部24を有する。周辺キャリア吸収部24は、APD23を囲んでいる。周辺キャリア吸収部24は、周辺に位置するキャリアを吸収する領域である。
【0031】
半導体基板20は、半導体領域31と、複数の半導体層32と、複数の半導体層33と、半導体層34,35,36とを含む。APD23は、半導体領域31及び半導体層32,33,36を含む。周辺キャリア吸収部24は、半導体領域31及び半導体層34,36を含む。周辺キャリア吸収部24は、半導体層34において周辺に位置するキャリアを吸収する。すなわち、半導体層34は、周辺のキャリアを吸収する周辺キャリア吸収層として機能する。
【0032】
半導体領域31及び半導体層33,35,36は第一導電型であり、半導体層32,34は第二導電型である。半導体の不純物は、たとえば拡散法又はイオン注入法によって添加される。本実施形態では、第一導電型はP型であり、第二導電型はN型である。半導体基板20がSiをベースとする場合、P型不純物としてはBなどのIII族元素が用いられ、N型不純物としてはN、P又はAsなどのV族元素が用いられる。
【0033】
半導体領域31は、半導体基板20の主面20a側に位置している。半導体領域31は、主面20aの一部を構成している。半導体領域31は、たとえばP型である。本実施形態では、半導体領域31は、APD23における光吸収領域を構成する。
【0034】
各半導体層32は、主面20aの一部を構成している。各半導体層32は、主面20aに直交する方向から見て、半導体領域31に接し、半導体領域31に囲まれている。各半導体層32は、対応するAPD23を構成する。したがって、半導体層32は、APD23の数だけ設けられている。半導体層32は、たとえばN型である。本実施形態では、半導体層32は、APD23においてカソードを構成する。
【0035】
各半導体層33は、対応する半導体層32と半導体領域31との間に位置している。半導体層33は、主面20a側で半導体層32に接し、主面20b側で半導体領域31に接している。各半導体層33は、対応するAPD23を構成する。したがって、半導体層33は、APD23の数だけ設けられている。半導体層33は、半導体領域31よりも不純物濃度が高い。半導体層33は、たとえばP型である。半導体層33は、APD23においてアバランシェ領域を構成する。
【0036】
半導体層34は、主面20aの一部を構成している。半導体層34は、主面20aに直交する方向から見て、半導体領域31に接し、半導体領域31に囲まれている。半導体層34は、半導体領域31を介して、複数の半導体層32を囲んでいる。上述したように、半導体層34は、周辺キャリア吸収部24を構成する。半導体層34は、半導体基板20において半導体領域31のみと接している。周辺キャリア吸収部24は、アバランシェ領域に相当する層を含んでいない。本実施形態では、半導体層34は、半導体層32と同一の不純物濃度である。半導体層34は、たとえばN型である。
【0037】
半導体層35は、主面20aの一部を構成している。半導体層35は、主面20aに直交する方向から見て、半導体領域31に接している。半導体層35は、半導体基板20の縁20cに沿って設けられている。半導体層35は、半導体領域31を介して半導体層32,33を囲んでいる。本実施形態では、半導体層35は、半導体領域31及び半導体層33よりも不純物濃度が高い。半導体層35は、たとえばP型である。半導体層35は、図示されていない部分で半導体層36に接続されている。半導体層35は、光検出装置1のアノードを構成する。半導体層35は、たとえば、APD23及び周辺キャリア吸収部24のアノードを構成する。
【0038】
半導体層36は、半導体領域31よりも半導体基板20の主面20b側に位置している。半導体層36は、主面20bの全面を構成している。半導体層36は、主面20a側で半導体領域31に接している。本実施形態では、半導体層36は、半導体領域31及び半導体層33よりも不純物濃度が高い。半導体層36は、たとえばP型である。半導体層36は、光検出装置1のアノードを構成する。半導体層36は、たとえば、APD23及び周辺キャリア吸収部24のアノードを構成する。
【0039】
光検出装置1は、複数の電極部41と、複数のパッド電極42と、複数の配線部43と、電極部44と、電極部45とを備える。複数の電極部41、複数のパッド電極42、複数の配線部43、電極部44、及び、電極部45は、主面20aに配置されている。複数の電極部41、複数のパッド電極42、複数の配線部43、電極部44、及び、電極部45は、いずれも、アルミニウムなどの金属からなる。
【0040】
各電極部41は、主面20aに直交する方向から見て、対応するセル22を囲んでいる。各電極部41は、対応するセル22に接続されている。本実施形態では、各電極部41は、環状であるがこれに限定されない。たとえば、本実施形形態では、各電極部41は、連続的に対応するセル22を囲んでいるが、断続的に対応するセル22を囲んでいてもよい。各電極部41が連続的に対応するセル22を囲む場合には、各セル22は1つの部分からなる電極部41に囲まれる。各電極部41が断続的に対応するセル22を囲む場合には、各セル22は複数の部分からなる電極部41に囲まれる。
【0041】
セル22の少なくとも一部は、電極部41から露出している。各電極部41は、対応するセル22に含まれるAPD23に電位を印加する。各電極部41は、対応するセル22を構成する半導体層32に接している。本実施形態では、各電極部41は、セル22のカソードを構成する。
【0042】
複数のパッド電極42は、複数のセル22の配列方向に沿って配列されている。複数のパッド電極42は、主面20aに直交する方向から見て、複数のパッド電極42と重なる領域には、半導体領域31が設けられ、半導体層32は設けられていない。複数のパッド電極42は、不図示の絶縁膜を介して半導体領域31上に配置される。各パッド電極42は、主面20aに直交する方向から見て円形である。各パッド電極42は、円形でなくてもよく、たとえば、主面20aに直交する方向から見て楕円形又は矩形でもよい。
【0043】
複数のパッド電極42は、複数のセル22及び複数の電極部41から離間している。各セル22の縁と当該セル22に対応するパッド電極42の縁との最短距離は、たとえば、50μm以上である。セル22の縁とは、主面20aに直交する方向から見た場合における半導体領域31と半導体層32との境界をいう。
【0044】
各パッド電極42の径は、たとえば、100μm~120μmである。本発明において、パッド電極42の径とは、平面視でパッド電極42の重心位置を通る直線上におけるパッド電極42の縁から縁までの最小距離である。したがって、パッド電極42が矩形である場合には、短辺の長さがパッド電極42の径である。各セル22の縁と当該セル22に対応するパッド電極42の縁との最短距離は、当該パッド電極42の径よりも大きい。
【0045】
複数の配線部43は、複数のセル22の配列方向に沿って配列されている。複数の配線部43は、主面20aに沿って配列方向と直交する方向に延在している。複数の配線部43は、互いに対応するセル22と電極部41とを電気的に接続する。複数の配線部43は、半導体領域31と接している。主面20aに直交する方向から見て、複数の配線部43と重なる領域には、半導体領域31が設けられ、半導体層32は設けられていない。複数の配線部43は、不図示の絶縁膜を介して半導体領域31上に配置される。本実施形態では、複数の配線部43は、同一方向に、互いに平行に延在している。
【0046】
各配線部43の一端は、パッド電極42に接続されている。各配線部43の幅は、パッド電極42の径よりも小さい。各配線部43の幅は、たとえば、10μm~50μmである。配線部43の幅とは、たとえば、配線部43が延在している方向に直交する方向での、配線部43の長さである。
【0047】
各配線部43の他端は、対応する電極部41に接続されており、当該電極部41を介して対応するセル22に電気的に接続されている。各配線部43は、電極部41の縁と配線部43の縁との接続部分47は、滑らかに湾曲している。接続部分47は、APD23の動作電圧印加時に生じる空乏層の厚さ以上の曲率半径で湾曲している。すなわち、この曲率半径は、主面20aに直交する方向における、主面20aと半導体層36との間の距離以上である。したがって、上記曲率半径は、少なくとも、半導体基板20の厚さ方向における光吸収領域の厚さ以上である。本実施形態では、光吸収領域は、半導体層33と半導体層36との間において半導体領域31によって構成される。接続部分47は、たとえば、曲率半径60μm~120μmで湾曲している。
【0048】
各パッド電極42に電位を印加することで、当該パッド電極42に接続された配線部43及び電極部41を通して、対応するセル22に電位が印加される。本実施形態では、各パッド電極42は、カソード用のパッド電極である。パッド電極42には、たとえば、ワイヤボンディングによってワイヤWが接続される。本実施形態では、ボールボンディングによってパッド電極42にワイヤWが接続される。パッド電極42には、1stボンドが形成される。したがって、パッド電極42には、ボールボンドが接合される。
【0049】
電極部44は、主面20aにおいて半導体層34に接しており、半導体層34を覆っている。電極部44は、主面20aに直交する方向から見て、複数の電極部41、複数のパッド電極42、及び複数の配線部43を囲んでいる。電極部44は、半導体層34に電位を印加する。電極部44は、電極部41、パッド電極42、及び電極部45から離間している。本実施形態では、電極部44は、周辺キャリア吸収部24のカソードを構成する。
【0050】
電極部44は、主面20aに直交する方向から見て、電極部41の縁と配線部43の縁との接続部分47に対向する縁44aを有している。縁44aは、湾曲している。縁44aは、APD23の動作電圧印加時に生じる空乏層の厚さ以上の曲率半径で湾曲している。すなわち、この曲率半径は、主面20aに直交する方向における、主面20aと半導体層36との間の距離以上である。したがって、上記曲率半径は、少なくとも、半導体基板20の厚さ方向における光吸収領域の厚さ以上である。本実施形態では、光吸収領域は、半導体層33と半導体層36との間において半導体領域31によって構成される。縁44aは、たとえば、曲率半径60μm~120μmで湾曲している。
【0051】
電極部45は、主面20aにおいて半導体層35に接しており、半導体層35を覆っている。電極部45は、主面20aに直交する方向から見て、複数の電極部41、複数のパッド電極42、及び複数の配線部43を囲んでいる。電極部45は、半導体層35に電位を印加する。電極部45は、電極部41、パッド電極42、配線部43、及び電極部44から離間している。本実施形態では、電極部45は、光検出装置1のアノードを構成する。
【0052】
光検出装置1では、上述したように、周辺キャリア吸収部24を構成する半導体層34は、電極部44に覆われている。電極部44は、周辺キャリア吸収部24に電気的に接続されている。半導体層34の縁は、電極部44の縁44aに沿って配置されている。したがって、主面20aに直交する方向から見て、電極部44が配置されている領域に、半導体層34を含む周辺キャリア吸収部24が配置されている。図3に示されているように、周辺キャリア吸収部24は、主面20aに直交する方向から見て、複数のパッド電極42及び複数の配線部43の周囲に設けられている。
【0053】
本実施形態では、周辺キャリア吸収部24は、主面20aに直交する方向から見て、複数の電極部41、複数のパッド電極42及び複数の配線部43を完全に囲んでいる。換言すれば、周辺キャリア吸収部24は、断続的でなく、連続的に複数の電極部41、複数のパッド電極42及び複数の配線部43を囲んでいる。周辺キャリア吸収部24が連続的に複数の電極部41、複数のパッド電極42及び複数の配線部43を囲む場合には、周辺キャリア吸収部24は1つの部分からなってもよい。
【0054】
本実施形態では、周辺キャリア吸収部24は、各パッド電極42及び各配線部43の縁に沿って、これらの縁に対して一定の間隔で設けられている。主面20aと平行かつ配線部43の延在方向に直交する方向において、周辺キャリア吸収部24は、配線部43に向かって突出している。
【0055】
周辺キャリア吸収部24は、主面20aに直交する方向から見て、周辺キャリア吸収部24の縁と各配線部43の縁との間隔がたとえば25~50μmとなるように各配線部43を囲んでいる。同様に、周辺キャリア吸収部24は、主面20aに直交する方向から見て、周辺キャリア吸収部24の縁と各パッド電極42の縁との間隔がたとえば25~50μmとなるように各パッド電極42を囲んでいる。
【0056】
周辺キャリア吸収部24は、主面20aに直交する方向から見て、電極部41の縁と配線部43の縁との接続部分47に対向する縁24aを有している。縁24aは、湾曲している。縁24aは、APD23の動作電圧印加時に生じる空乏層の厚さ以上の曲率半径で湾曲している。すなわち、この曲率半径は、主面20aに直交する方向における、主面20aと半導体層36との間の距離以上である。したがって、上記曲率半径は、少なくとも、半導体基板20の厚さ方向における光吸収領域の厚さ以上である。本実施形態では、光吸収領域は、半導体層33と半導体層36との間において半導体領域31によって構成される。縁24aは、たとえば、曲率半径60μm~120μmで湾曲している。周辺キャリア吸収部24の縁24aは、電極部44の縁44aに沿って配置されている。
【0057】
次に、図5及び図6を参照して、本実施形態の変形例に係る光検出装置について説明する。図5は、受光素子10の平面図である。図6は、図5のVI-VI線に沿った断面図である。本変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じである。本変形例は、周辺キャリア吸収部24が断続的に複数の電極部41、複数のパッド電極42及び複数の配線部43を囲んでいる点に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と変形例との相違点を主として説明する。
【0058】
図5に示されているように、本変形例においても、周辺キャリア吸収部24は、主面20aに直交する方向から見て、複数のパッド電極42及び複数の配線部43の周囲に設けられている。しかし、本変形例では、周辺キャリア吸収部24は、主面20aに直交する方向から見て、複数の電極部41、複数のパッド電極42及び複数の配線部43を断続的に囲んでいる。周辺キャリア吸収部24が断続的に対応するセル22を囲む場合には、周辺キャリア吸収部24は複数の部分からなる。本変形例では、周辺キャリア吸収部24は、各パッド電極42を囲む部分において、分断されている。本変形例では、周辺キャリア吸収部24は、複数の領域に分けて設けられている。
【0059】
各配線部43の延在方向において、パッド電極42と電極部45との間の領域αには、周辺キャリア吸収部24が設けられていない。領域αでは、半導体領域31が露出している。このため、半導体領域31が露出している部分が、複数のパッド電極42の配列方向に直交する方向において、各パッド電極42から当該パッド電極42に最も近い電極部45まで延在している。
【0060】
複数のパッド電極42の配列方向において、最も端に位置するパッド電極42と電極部45との間の領域βには、周辺キャリア吸収部24が設けられていない。領域βでは、半導体領域31が露出している。このため、半導体領域31が露出している部分が、複数のパッド電極42の配列方向において、最も端に位置するパッド電極42から当該パッド電極42に最も近い電極部45まで延在している。
【0061】
次に、上述した実施形態及び変形例における光検出装置の作用効果について説明する。セル22の周辺にパッド電極が配置された場合、当該パッド電極に接続されたワイヤWで光が反射し、迷光によるノイズが検出結果に影響を及ぼすおそれがある。ボールボンドは光が反射する領域が広いため、例えば、ボールボンディングによってセル22の周辺のパッド電極にボールボンドが接合された場合には迷光がセル22にさらに入射しやすい。光検出装置1は、セル22とパッド電極42とが離間して配置され、配線部43で接続されている。このため、パッド電極42に接続されたワイヤで反射した迷光がセル22に入射し難い。
【0062】
APD23には比較的高い電圧が印加されるため、半導体基板20においてパッド電極42に接している部分の電子又は正孔の濃度が変化してしまうおそれがある。同様に、半導体基板20において配線部43に接している部分の電子又は正孔の濃度も変化してしまうおそれがある。この場合、上記部分に光が入射することによって、キャリアが発生するおそれがある。この部分でキャリアが発生すると、検出結果においてノイズとなる。光検出装置1では、各配線部43の周囲に周辺キャリア吸収部24が設けられている。したがって、上記部分で不要なキャリアが発生しても、発生したキャリアは周辺キャリア吸収部24で吸収される。したがって、光検出装置1では、光検出の精度が向上されている。
【0063】
各配線部43の幅は、各パッド電極42の径よりも小さい。この場合、半導体基板20と配線部43とが接する部分が小さい。したがって、配線部43に印加される電圧に起因して、半導体基板20において電子又は正孔の濃度が変化してしまうことを抑制できる。
【0064】
各セル22の縁と当該セル22に対応するパッド電極42の縁との最短距離は、当該パッド電極42の径よりも大きい。この場合、パッド電極42に接続されたワイヤで反射した光がセル22にさらに入射し難い。
【0065】
各セル22の縁と当該セル22に対応するパッド電極42の縁との最短距離は、50μm以上である。この場合、パッド電極42に接続されたワイヤで反射した光がセル22にさらに入射し難い。
【0066】
周辺キャリア吸収部24は、周辺キャリア吸収部24の縁と各配線部43の縁との間隔が25~50μmとなるように各配線部43を囲んでいる。当該間隔が25μm以上であれば、周辺キャリア吸収部24と配線部43とのショートがさらに抑制される。上記間隔が50μm以下ならば、周辺キャリア吸収部24において不要なキャリアがさらに吸収される。
【0067】
電極部41は、主面20aに配置され、各セル22に接続されている。複数の配線部43の各々は、対応するセル22に接続されている電極部41に接続されている。電極部41の縁と配線部43の縁との接続部分47は、湾曲している。接続部分47の曲率半径は、半導体基板20の厚さ方向における、APD23の空乏層の厚さ以上である。この場合、上記接続部分47における電界の集中が抑制される。
【0068】
APD23は、半導体領域31によって構成された光吸収領域を含んでいる。接続部分47の曲率半径は、半導体基板20の厚さ方向における光吸収領域の厚さより大きい。この場合、上記接続部分47における電界の集中が抑制される。
【0069】
電極部41の縁と配線部43の縁との接続部分47は、曲率半径60μm~120μmで湾曲している。この場合、上記接続部分47における電界の集中が抑制される。
【0070】
光検出装置1は、各パッド電極42に接続されたワイヤを更に備えている。各パッド電極42には、ワイヤのボールボンドが接合されている。この場合、パッド電極42の大きさが縮小され得る。ワイヤボンディングにおいて半導体基板20に生じるダメージが軽減される。しかし、ボールボンドは、スティッチボンドよりも光が反射する領域が広い。ボールボンドはボール状に形成されるため、ボールボンドで反射した光はスティッチボンドで反射した光と比べて半導体基板に向かいやすい。したがって、上述したように、ボールボンディングによってセル22の周辺のパッド電極にボールボンドが接合された場合には、スティッチボンドがパッド電極42に接合された場合よりも、迷光がセル22に入射しやすい。セル22に入射する迷光の光量が大きいほど、検出結果に表れるノイズも増加する。光検出装置1は、セル22とパッド電極42とが離間して配置され、配線部43で接続されている。このため、パッド電極42にボールボンドが接合されたとしても、ボールボンドで反射した迷光がセル22に入射し難い。したがって、パッド電極42の縮小と、ワイヤボンディングにおいて半導体基板20に生じるダメージの軽減と、迷光によるノイズの低減とが並立される。
【0071】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0072】
たとえば、周辺キャリア吸収部24は、複数のAPD23を別々に囲んでいてもよい。換言すれば、周辺キャリア吸収部24は、複数のAPDを一つずつ囲んでいてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…光検出装置、20…半導体基板、20a,20b…主面、22…セル、23…APD、24…周辺キャリア吸収部、24a,44a…縁、41…電極部、42…パッド電極、43…配線部、47…接続部分、W…ワイヤ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6