(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】流体の調整方法、及び試験チャンバー
(51)【国際特許分類】
F25B 7/00 20060101AFI20240315BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240315BHJP
F24F 3/044 20060101ALI20240315BHJP
F24F 11/86 20180101ALI20240315BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20240315BHJP
F24F 11/47 20180101ALI20240315BHJP
B01L 7/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
F25B7/00 Z
F25B1/00 397B
F25B1/00 101E
F25B1/00 101F
F24F3/044
F24F11/86
F24F11/46
F24F11/47
B01L7/00
(21)【出願番号】P 2019114089
(22)【出願日】2019-06-19
【審査請求日】2022-05-30
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517381603
【氏名又は名称】バイス テヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハック クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ザハルト ヤニク
(72)【発明者】
【氏名】ラッシェル デニス
(72)【発明者】
【氏名】ジンカン アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】バレ パスカル
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-002610(JP,A)
【文献】米国特許第06460355(US,B1)
【文献】特開2017-161182(JP,A)
【文献】特開2018-071966(JP,A)
【文献】特開2017-116118(JP,A)
【文献】特開2000-105012(JP,A)
【文献】特開昭61-089429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 7/00
F25B 1/00
F24F 3/044
F24F 11/86
F24F 11/46
F24F 11/47
B01L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験チャンバーにおける、試験材料を収容するための保温された試験空間(14)内の流体を調整するための方法であって、
前記試験空間(14)は、外部環境に対して封止可能であり、
前記試験チャンバーの温度調整装置におけるカスケード式冷却装置(10)を用いることで、前記試験空間(14)内に、-60℃から+180℃までの温度が実現され、
前記カスケード式冷却装置(10)は、
第1冷媒、カスケード式熱交換器(15)、第1圧縮機(16)、凝縮器(17)及び第1膨張要素(18)を有する第1冷却回路(11)と、
第2冷媒、前記試験空間(14)内に配置される熱交換器(13)、第2圧縮機(27)、前記カスケード式熱交換器(15)及び第2膨張要素(28)を有する第2冷却回路(12)と、を備え、
前記カスケード式熱交換器(15)を、前記第1冷却回路(11)によって冷却し、
その後、前記熱交換器(13)を、前記第1冷却回路(11)におけるバイパス通路部(35)によって冷却し、
前記バイパス通路部(35)は、前記熱交換器(13)を通過し、かつ前記カスケード式熱交換器(15)に架け渡され、
前記第1圧縮機(16)をオフ状態にし、
前記第1冷媒を、前記バイパス通路部(35)の低圧側回路(22)上で、前記カスケード式熱交換器(15)内へとガス状態で案内するとともに、該カスケード式熱交換器(15)にて凝縮する
前記第2圧縮機(27)を第1ステップにおいて停止させ、前記第1圧縮機(16)を作動させるとともに、前記カスケード式熱交換器(15)を介することによって、前記第1膨張要素(18)を用いることでガス状の第1冷媒へと膨張している前記第1冷却回路(11)の高圧側回路(21)からの第1冷媒を凝縮させかつ前記低圧側回路(22)へと案内し、
前記第1圧縮機(16)を第2ステップにおいてオフ状態にし、液状の第1冷媒へと凝縮された前記第1冷媒を用いることで、前記カスケード式熱交換器(15)において、前記低圧側回路(22)と前記高圧側回路(21)との間に圧力差を実現する
ことを特徴とする流体の調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載された流体の調整方法において、
前記バイパス通路部(35)には、調整可能な第3膨張要素(36)が配置され、
前記第1冷却回路(11)の高圧側回路(21)からの液状の第1冷媒を、前記第3膨張要素(36)を用いることで前記第1冷却回路(11)においてガス状の第1冷媒へと膨張させ、前記熱交換器(13)を介して前記低圧側回路(22)へと案内する
ことを特徴とする流体の調整方法。
【請求項3】
請求項
2に記載された流体の調整方法において、
前記第2冷却回路(12)における前記第2冷媒
が、貯蔵媒体のように作用して冷却能力を蓄えることにより、前記カスケード式熱交換器に冷却能力を蓄える
ことを特徴とする流体の調整方法。
【請求項4】
請求項2に記載された流体の調整方法において、
前記第1冷却回路(11)の前記高圧側回路(21)からの液状の第1冷媒を、前記第3膨張要素(36)を用いることで前記第1冷却回路(11)においてガス状の第1冷媒へと膨張させ、前記熱交換器(13)を介して前記低圧側回路(22)へと案内する
ことを特徴とする流体の調整方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載された流体の調整方法において、
前記第1圧縮機(16)を第3ステップにおいて作動させ、液状の第1冷媒が前記カスケード式熱交換器(15)においてガス状の第1冷媒へと蒸発できるほど十分に、前記低圧側回路(22)上での圧力を低下させる
ことを特徴とする流体の調整方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載された流体の調整方法において、
第1冷媒を、前記第1冷却回路(11)における調整可能な第1内部補助冷却部(37)と、調整可能な第4膨張要素(39)と、を用いることによって、該第4膨張要素(39)を介して前記低圧側回路へと供給し、
前記第1内部補助冷却部(37)は、第2バイパス通路部(38)を有し、
前記第2バイパス通路部(38)は、前記第1膨張要素(18)の流れ方向上流側かつ前記凝縮器(17)の流れ方向下流側における高圧側回路(21)に接続されるとともに、前記第1圧縮機(16)の流れ方向上流側かつ前記カスケード式熱交換器(15)の流れ方向下流側における前記低圧側回路(22)に接続される
ことを特徴とする流体の調整方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載された流体の調整方法において、
第2冷媒を、前記第2冷却回路(12)における調整可能な第2内部補助冷却部(40)と、調整可能な第5膨張要素(42)と、を用いることによって、該第5膨張要素(42)を介して前記低圧側回路へと供給し、
前記第2内部補助冷却部(40)は、第3バイパス通路部(41)を有し、
前記第3バイパス通路部(41)は、前記第2膨張要素(28)の流れ方向上流側かつ前記カスケード式熱交換器(15)の流れ方向下流側における高圧側回路(29)に接続されるとともに、前記第2圧縮機(27)の流れ方向上流側かつ前記熱交換器(13)の流れ方向下流側における前記低圧側回路(30)に接続される
ことを特徴とする流体の調整方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載された流体の調整方法において、
第1冷媒を、前記第1冷却回路(11)における第1冷媒のための調整可能な第1背面側注入装置(43)と、調整可能な第6膨張要素(45)と、を用いることによって、該第6膨張要素(45)を介して前記低圧側回路(22)へと供給し、
前記第1背面側注入装置(43)は、第4バイパス通路部(44)を有し、
前記第4バイパス通路部(44)は、前記第1圧縮機(16)の流れ方向下流側かつ前記凝縮器(17)の流れ方向上流側における高圧側回路(21)に接続されるとともに、前記第1圧縮機(16)の流れ方向上流側かつ前記カスケード式熱交換器(15)の流れ方向下流側における前記低圧側回路(22)に接続される
ことを特徴とする流体の調整方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載された流体の調整方法において、
第2冷媒を、前記第2冷却回路(12)における第2冷媒のための調整可能な第2背面側注入装置(46)と、調整可能な第7膨張要素(48)と、を用いることによって、該第7膨張要素(48)を介して前記低圧側回路へと供給し、
前記第2背面側注入装置(46)は、第5バイパス通路部(47)を有し、
前記第5バイパス通路部(47)は、前記第2圧縮機(27)の流れ方向下流側かつ前記カスケード式熱交換器(15)の流れ方向上流側における高圧側回路(29)に接続されるとともに、前記第2圧縮機(27)の流れ方向上流側かつ前記熱交換器(13)の流れ方向下流側における低圧側回路(30)に接続される
ことを特徴とする流体の調整方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載された流体の調整方法において、
前記温度調整装置は、対応する前記第1及び第2冷却回路(11,12)中に、少なくとも1つの圧力センサ、及び/又は、少なくとも1つの温度センサを有する調整装置を備え、
前記第1及び/又は第2冷媒における吸入ガス温度及び/又は吸入ガス圧力は、対応する圧縮機(16,27)の上流側において、前記第1及び第2冷却回路(11,12)における対応する低圧側回路(22,30)上で調整され、及び/又は、
対応する高圧側回路(21,29)と、前記第1及び第2冷却回路(11,12)における前記低圧側回路と、の間で圧力差が補償される
ことを特徴とする流体の調整方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載された流体の調整方法において、
前記温度調整装置は、対応する前記第1及び第2冷却回路(11,12)中に、少なくとも1つの圧力センサ、及び/又は、少なくとも1つの温度センサを有する調整装置を備え、
膨張要素(18,28,36,39,42,45,48)における電磁弁(20)を、温度又は圧力の測定値に応じて、前記調整装置を用いて作動させる
ことを特徴とする流体の調整方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載された流体の調整方法において、
前記温度調整装置を用いることで、前記試験空間(14)内に、-70℃から+180℃までの温度を実現する
ことを特徴とする流体の調整方法。
【請求項13】
流体を調整するための試験チャンバーであって、
前記試験チャンバーは、
外部環境に対して封止可能であり、かつ試験材料を収容するための保温された試験空間(14)と、
前記試験空間(14)の温度を制御するための温度調整装置と、を備え、
前記温度調整装置を用いることにより、-60℃から+180℃までの温度が実現され、
前記温度調整装置は、カスケード式冷却装置(10)を有し、
前記カスケード式冷却装置(10)は、
第1冷媒、カスケード式熱交換器(15)、第1圧縮機(16)、凝縮器(17)及び第1膨張要素(18)を有する第1冷却回路(11)と、
第2冷媒、前記試験空間(14)内に配置される熱交換器(13)、第2圧縮機(27)、前記カスケード式熱交換器(15)及び第2膨張要素(28)を有する第2冷却回路(12)と、を備え、
前記カスケード式熱交換器(15)は、前記第1冷却回路(11)を用いることによって冷却可能であり、
前記第1冷却回路(11)は、前記熱交換器(13)を通過して、かつ前記カスケード式熱交換器(15)に架け渡されるバイパス通路部(35)を有し、前記熱交換器(13)は、前記第1冷却回路(11)を用いることによって冷却可能であり、前記温度調整装置は、前記第1圧縮機(16)をオフ状態にすることができる調整装置を備え、前記第1冷媒は、前記バイパス通路部(35)の低圧側回路(22)上で、前記カスケード式熱交換器(15)内へとガス状態で案内されるとともに、該カスケード式熱交換器(15)にて凝縮され、
前記第2圧縮機(27)を第1ステップにおいて停止させ、前記第1圧縮機(16)を作動させるとともに、前記カスケード式熱交換器(15)を介することによって、前記第1膨張要素(18)を用いることでガス状の第1冷媒へと膨張している前記第1冷却回路(11)の高圧側回路(21)からの第1冷媒を凝縮させかつ前記低圧側回路(22)へと案内し、
前記第1圧縮機(16)を第2ステップにおいてオフ状態にし、液状の第1冷媒へと凝縮された前記第1冷媒を用いることで、前記カスケード式熱交換器(15)において、前記低圧側回路(22)と前記高圧側回路(21)との間に圧力差を実現するように構成されている
ことを特徴とする試験チャンバー。
【請求項14】
請求項13に記載された試験チャンバーにおいて、
前記第1冷却回路(11)は、前記カスケード式熱交換器(15)を用いることにより、前記第2冷却回路(12)と熱的に結合されている
ことを特徴とする試験チャンバー。
【請求項15】
請求項13又は14に記載された試験チャンバーにおいて、
前記カスケード式熱交換器(15)は、プレート式熱交換器によって構成され、
前記プレート式熱交換器(15)の一次側は、前記第1冷却回路(11)に接続され、
前記プレート式熱交換器(15)の二次側は、前記第2冷却回路(12)に接続されることを特徴とする試験チャンバー。
【請求項16】
請求項13から15のいずれか1項に記載された試験チャンバーにおいて、
前記バイパス通路部(35)は、前記第1膨張要素(18)の流れ方向上流側かつ前記凝縮器(17)の流れ方向下流側における前記第1冷却回路(11)の高圧側回路(21)と、前記第1圧縮機(16)の流れ方向上流側かつ前記カスケード式熱交換器(15)の流れ方向下流側における前記第1冷却回路(11)の前記低圧側回路(22)と、に接続される
ことを特徴とする試験チャンバー。
【請求項17】
請求項13から16のいずれか1項に記載された試験チャンバーにおいて、
前記温度調整装置は、前記試験空間(14)内に、ヒータ及び加熱式熱交換器を有する加熱装置を備える
ことを特徴とする試験チャンバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体、特に空気を調整するための方法及び試験チャンバーに関する。この方法及び試験チャンバーは、試験材料を収容するための保温された試験空間を備え、この試験空間は、外部環境に対して封止可能であり、試験チャンバーの温度調整装置におけるカスケード式冷却装置を用いることで、試験空間内に、-60℃から+180℃までの温度が実現され、カスケード式冷却装置は、第1冷媒、カスケード式熱交換器、第1圧縮機、凝縮器及び第1膨張要素を有する第1冷却回路と、第2冷媒、試験空間内に配置される熱交換器、第2圧縮機、カスケード式熱交換器及び第2膨張要素を有する第2冷却回路と、を備え、カスケード式熱交換器は、第1冷却回路によって冷却される。
【背景技術】
【0002】
そうした試験チャンバーは、一般に、物体、特にデバイスの物理的及び/又は化学的な性質を試験するために用いられる。それ故に-60℃から+180℃までの温度に設定可能な温度試験チャンバー又は気候試験チャンバーが知られている。気候試験チャンバーにおいては、デバイス、より正確には材料が所定期間にわたって曝されることになる所望の気候条件が付加的に設定され得る。そうした試験チャンバーは、正式に又は部分的に、要求される供給ラインのみを用いた建造物に接続される移動機器として実現されるとともに、温度及び空調を制御するための全ての必要な構成部材を備えている。試験されることになる試験材料を収容する試験空間の温度は、定期的に、試験空間内の空気循環ダクトにおいて制御される。空気循環ダクトは、空気循環ダクト又は試験空間をそれぞれ流通する空気を加熱又は冷却するための熱交換器が配置される試験空間内に、空調スペースを構成する。この目的のため、ファン又は通風機が、試験空間内に存在する空気を吸入するとともに、空気循環ダクトにおける空気を対応する熱交換器に案内したり、その逆の動作を実現したりする。そうして、試験材料を温度について制御することができたり、試験材料を所定の温度変化に曝すことさえもできたりする。例えば、試験の合間、温度は、試験チャンバーの最大温度と最低温度との間で繰り返し交互に変化する。そうした試験チャンバーは、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
試験チャンバーの前記温度範囲内での温度制御のための高度な要求に起因して、試験チャンバーが作動している最中、負荷要求が定期的に変動する。したがって、対応する圧縮機及び膨張要素によって生成される冷却能力(refrigerating capacity)は、連続的に調整可能でなければならない。にもかかわらず、圧縮機の耐用年数を延長するためには、その圧縮機が、例えば、過度に頻繁にオンオフされないことが望ましい。この要求は、標準的には、冷却回路の高圧側回路と低圧側回路との間に形成される、冷却回路における別の調整可能な膨張要素を有する管路部によって解決される。この場合、冷却能力は、熱交換器又はカスケード式熱交換器を通り過ぎて、かつ膨張要素を介して対応する圧縮機へと導き戻すことができる。対応する冷却回路における対応する圧縮機によって引き起こされる、質量流の需要に応じた分配において、対応する圧縮機における不利な負荷状況の発生を必要とすることなく、実温度と設定温度との間の僅かな温度差を、熱交換器又はカスケード式熱交換器において補償することができる。しかしながら、これに関して、冷却装置によって補償される温度差の大小にかかわらず、熱交換器に僅かな温度差が存在する際には、圧縮機が常に作動しなければならないという不都合がある。例えば熱交換器において要求される設定温度を維持可能とするためには、圧縮機における最大限の冷却能力が、全能力のうちたった1%未満の冷却要求に対して利用可能とされなければならない。それ故、冷却能力の大部分は、管路部を介して対応する圧縮機へと導き戻される。圧縮機を連続的にオンオフさせることは出来ず、凝縮器において必要に応じてファンが作動しなければならないため、カスケード式冷却装置も、上述した公知の運転方法を用いて熱交換器にて補償されることになる僅かな温度差のために、比較的多量のエネルギーを消費する。
【0005】
本発明における手近な課題は、試験チャンバー、及び、試験チャンバーの試験空間内の空気を調整するための方法において、エネルギー効率に優れた方法で試験チャンバーを運用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題は、請求項1の特徴部を有する方法、又は、請求項15の特徴部を有する試験チャンバーによって解決される。
【0007】
具体的に、本発明に係る流体、特に空気を調整するための方法は、試験材料を収容するための保温された試験空間を備え、この試験空間は、外部環境に対して封止可能であり、試験チャンバーの温度調整装置におけるカスケード式冷却装置を用いることで、試験空間内に、-60℃から+180℃までの温度が実現され、カスケード式冷却装置は、第1冷媒、カスケード式熱交換器、第1圧縮機、凝縮器及び第1膨張要素を有する第1冷却回路と、第2冷媒、試験空間内に配置される熱交換器、第2圧縮機、カスケード式熱交換器及び第2膨張要素を有する第2冷却回路と、を備える。本発明に係る方法は、カスケード式熱交換器を第1冷却回路によって冷却し、その後、熱交換器を第1冷却回路におけるバイパス通路部によって冷却し、バイパス通路部は、熱交換器を通過して、かつカスケード式熱交換器に架け渡され、第1圧縮機をオフ状態にし、第1冷媒を、バイパス通路部の低圧側回路上で、カスケード式熱交換器内へとガス状態で案内するとともに、該カスケード式熱交換器にて凝縮する。
【0008】
本発明の方法によれば、試験空間の外部環境との熱交換が、試験チャンバーの側壁部、底壁部及び頂壁部の保温を介して大いに妨げられる。熱交換器は、第2冷却回路を循環している第2冷媒が熱交換器を流通するように、第2冷却回路に接続されたり、第2冷却回路と一体化されたりする。第2冷却回路における熱交換器は、試験空間(より正確には、試験空間の空調スペース)内に配置される。カスケード冷却装置は、2つのカスケード式冷却回路を備えている。そのうち、第2冷却回路は、カスケード式熱交換器が第2冷却回路のための凝縮器として機能するように、カスケード式熱交換器を介して第1冷却回路と結合する。第1及び第2冷却回路は、それぞれ、第1及び第2圧縮機を備えている。第1冷却回路においては、圧縮された第1冷媒のための凝縮器が、第1冷媒の流れ方向において、第1圧縮機の下流側に配置されている。圧縮された第1冷媒は、圧縮によって高圧とされて本質的にガス状となるが、凝縮器において凝縮されて、本質的に液化状態で利用することができるようになる。液化された第1冷媒は、第1膨張要素を流れ続けるとともに、この第1膨張要素において、圧力の減少に起因した膨張を通じて、再度ガス状になる。したがって、液状の第1冷媒は、カスケード式熱交換器を流通し、その第1冷媒によってカスケード式熱交換器が冷却される。その後、ガス状の第1冷媒が、再度、第1圧縮機に吸い込まれて、この第1圧縮機によって圧縮される。この場合、第2冷却回路は、第1冷却回路の凝縮器ではなく、凝縮器として機能するカスケード式熱交換器を用いることで、第1冷却回路に対応して作動する。ここで、カスケード式熱交換器自体は、第1冷却回路によって冷却される。膨張要素は、少なくとも1つの、膨張弁、スロットル、スロットル弁、又は、流体ラインの異なる適切な締め付け部になると理解されよう。
【0009】
本発明によれば、熱交換器を通過してカスケード式熱交換器に架け渡されるバイパス通路部を用いることによって、熱交換器を冷却するようになっている。温度要求に応じて、第1冷却回路と第2冷却回路との双方を組み合わせて熱交換器を冷却したり、第1冷却回路のみを介して熱交換器を冷却したりすることができる。2つの冷却回路を用いた冷却は、特段低い温度が達成されないことになった場合に、その場合は非作動状態にされ得る第2圧縮機を用いて行われるようになっている。この方法を用いるだけで、試験空間を作動させる際のエネルギーを節約することができるようになる。
【0010】
カスケード式熱交換器は、第1圧縮機が作動状態にあるときには、熱交換器に要求される冷却能力が小さい場合さえも基本的に常時冷却されるため、第1冷媒(より正確には、圧縮された冷媒の質量流量)を、圧縮機の上流側の管路部を介して質量流を方向転換させる前に、カスケード式熱交換器に案内することができる。その後、第1冷媒は、第1圧縮機にも再度供給されるものの、カスケード式熱交換器に、又は、不要であれば第2冷却回路に、冷却エネルギーを蓄えることができる。圧縮された第1冷媒において見出される熱エネルギーは、カスケード式熱交換器へと放出することができる。或いは、この熱エネルギーは、冷却能力がカスケード式熱交換器に蓄えられるように、カスケード式熱交換器から差し引くことができる。熱交換器ではなく、架け渡されているバイパス通路部を介することで、結果的に、カスケード式熱交換器を冷却したり、このカスケード式熱交換器に冷却能力を供給したりすることができる。第1圧縮機をオフ状態にする場合は、第1冷媒を用いることで、その冷却能力を、低圧側回路へ案内して戻すことができる。このような方法を介することで、第1圧縮機を早期にオフ状態にすることができる。
【0011】
第1圧縮機がオフ状態にされた場合、第1圧縮機の流れ方向上流側における、第1冷却回路の低圧側回路上のガス状の冷媒は、バイパス通路部を介してカスケード式熱交換器へと案内することができる。この場合、第1冷媒は、カスケード式熱交換器に蓄えられた前述の冷却能力、又は、低い熱エネルギーに起因して、カスケード式熱交換器において凝縮される。第1冷却回路の低圧側回路上での圧力は、凝縮のために増加していた第1冷媒の密度低下に起因して低下する。架け渡されているバイパス通路部における凝縮圧力は、第1圧縮機をオフ状態にした後には僅かのみ変化する。熱交換器の上流側におけるバイパス通路部には、依然として圧力差が存在する。この圧力差は、熱交換器を冷却するために用いることができる。第1熱交換器、及び、ことによると凝縮器上のファンを早期にオフ状態にすることができたり、熱交換器における設定温度を依然として維持することができたり、所定期間にわたって圧力差を補償することができたりするのが本質的である。第1圧縮機により生成される不要な冷却能力は、直ちにカスケード式熱交換器に蓄えることができ、第1冷媒を凝縮することによって、再び放出させることができる。そうして、第1及び第2圧縮機の作動時間の減少に起因して、試験チャンバーを、取り分けエネルギー効率に優れた方法で運用することができる。
【0012】
バイパス通路部には、調整可能な第3膨張要素が配置され、第1冷却回路において、この第1冷却回路の高圧側回路からの液状の第1冷媒を、第3膨張要素を用いることでガス状の第1冷媒へと膨張させ、熱交換器を介して低圧側回路へと案内する、としてもよい。これによれば、第1冷媒が熱交換器に案内されるよう、第3膨張要素を介して高圧側回路からの液状の第1冷媒を蒸発させることができるようになる。そのことで、熱交換器が冷却され、第1冷媒は、圧力の低下に起因した膨張を通じて新たにガス状態となる。熱交換器から流出するガス状の第1冷媒は、熱交換器において冷却能力を放出した結果、比較的高い温度レベルを有するとともに、第1圧縮機へと再び案内することができる。バイパス通路部は、基本的には、第2冷却回路又は第2圧縮機のそれぞれの作動とは独立して作動させることができる。第2冷媒の第2冷却回路が、比較的低い温度レベルのために実現される場合、第2圧縮機をオフ状態にするとともに、第1圧縮機もオフ状態にするように構成することもできる。
【0013】
第2圧縮機を第1ステップにおいて停止させ、又は、オフ状態とし、第1圧縮機を作動させるとともに、カスケード式熱交換器を介することによって、第1冷却回路に在るときに第1膨張要素を用いることでガス状の第1冷媒へと膨張している第1冷却回路の高圧側回路からの第1冷媒を凝縮させかつ低圧側回路へと案内する、としてもよい。これによれば、熱交換器において要求されない冷却能力を、依然として、第1冷却回路の高圧側回路から、第1膨張要素を介してカスケード式熱交換器へと案内することができ、そこで冷媒を蒸発させることができ、カスケード式熱交換器の熱エネルギーを第1冷媒へと放出させることができる。そのことで、カスケード式熱交換器の冷却に至る。この場合、第2圧縮機をオフ状態にしたことに起因して、第2冷媒は、最早カスケード式熱交換器を通じて流通しない。
【0014】
しかしながら、カスケード式熱交換器には、依然として第2冷媒が在るため、第2冷却回路における第2冷媒から、第1冷却回路における第1冷媒へと熱エネルギー(thermal energy)を放出させ、この熱エネルギー(thermal energy)をカスケード式熱交換器に蓄積させることができる。第2冷媒は、ある種の貯蔵媒体のように作用することによって冷却能力を蓄えることができる。カスケード式熱交換器に冷却能力を蓄えることは、熱交換器に冷却能力が殆ど要求されていない場合に取り分け合理的となる。これと同時に、熱交換器は、必要に応じてバイパス通路部によって冷却されることになる。熱エネルギー(thermal energy)は、ジュールで表される熱エネルギー(heat energy)又は熱容量と理解されよう。熱の供給は、放熱を妨げる一方で、熱エネルギー(thermal energy)を増加させる。それ故、カスケード式熱交換器は、放熱によって冷却能力が蓄積され得るように、熱エネルギー(thermal energy)を蓄えることもできる。
【0015】
続いて、第1圧縮機を第2ステップにおいてオフ状態にし、液状の第1冷媒へと第1冷媒を凝縮させることで、カスケード式熱交換器において、低圧側回路と高圧側回路との間に圧力差を実現する、としてもよい。このことは、カスケード式熱交換器が十分に冷却されていたり、カスケード式熱交換器が、ガス状の第1冷媒が凝縮するほどには熱エネルギーを蓄えていなかったりすることを前提とする。この目的のため、カスケード式熱交換器が、冷却を通じて著しい温度差が得られるまで十分に冷却されるように構成することができる。カスケード式熱交換器において第1冷媒を凝縮させるとともに、第1冷却回路における低圧側回路と高圧側回路との間に差圧を実現することによって、少なくとも、カスケード式熱交換器において第1冷媒を凝縮することができる限り、又は、カスケード式熱交換器が液状の第1冷媒で満たされていない限りは、バイパス通路部を介した第1冷媒の吸入を保証することができる。
【0016】
第1冷却回路において、第1冷却回路の高圧側回路からの液状の第1冷媒を、前記差圧を介することで、第3膨張要素を用いることでガス状の第1冷媒へと膨張させ、熱交換器を介して低圧側回路へと案内する、としてもよい。カスケード式熱交換器は、ある種のコールドシンクとして用いることができる。第1冷媒からカスケード式熱交換器へと熱エネルギーを移し替えることで、第2冷媒(より正確には貯蔵媒体)が再度加熱され、第2冷媒が蒸発するともに、第1冷媒は冷却されて凝縮へと至る。第1冷媒と第2冷媒との間の温度差が僅かであり、カスケード式熱交換器において第1冷媒を凝縮させることができない場合、又は、カスケード式熱交換器が液状の第1冷媒で満たされている場合は、第1圧縮機を再び作動させてもよい。第1冷媒は、カスケード式熱交換器において流れ方向を変更するとともに、圧縮機の作動のために設定された差圧に起因して再度蒸発し、第1圧縮機に吸引させることができる。
【0017】
第1圧縮機を第3ステップにおいて作動させ、液状の第1冷媒がカスケード式熱交換器においてガス状の第1冷媒へと蒸発できるほど十分に、低圧側回路上での圧力を低下させる、としてもよい。
【0018】
第1冷媒を、第1冷却回路における調整可能な第1内部補助冷却部と、調整可能な第4膨張要素と、を用いることによって、該第4膨張要素を介して低圧側回路へと供給し、第1内部補助冷却部は、第2バイパス通路部を有し、第2バイパス通路部は、第1膨張要素の流れ方向上流側かつ凝縮器の流れ方向下流側における高圧側回路に接続されるとともに、第1圧縮機の流れ方向上流側かつカスケード式熱交換器の流れ方向下流側における低圧側回路に接続される、としてもよい。第2バイパス通路部又は第4膨張要素を介することにより、それぞれ、第1冷媒における吸入ガス温度及び/又は吸入ガス圧力が、第1圧縮機の流れ方向上流側における第1冷却回路の低圧側回路上で調整可能となるように、第1冷媒を供与することができる。これを通じて、数ある中で、第1圧縮機が過度に加熱してダメージを受けることを防止することができる。したがって、第4膨張要素を作動させることにより、依然として液状の第1冷媒をドーズ量にて加えることで、第1圧縮機の上流側におけるガス状の第1冷媒を、第2バイパス通路部を介して冷却することができる。第4膨張要素は、調整装置によって作動させることができる。この調整装置は、第1圧縮機の流れ方向上流側における第1冷却回路において、調整装置自身が圧力及び/又は温度センサに結合されている。吸入ガス温度が、第2バイパス通路部を介して30℃未満、好ましくは40℃未満に設定されていれば取り分け有効である。第1圧縮機を自動的にオフ状態にすることから延期するために、又は、第1圧縮機の作動期間を延長するために、第1冷媒は、第2バイパス通路部を介してカスケード式熱交換器を通り越すように案内することができる。その上、カスケード式熱交換器に対し動的に第1冷媒を供給したり、或いは、手近な負荷条件に応じて、第1圧縮機を作動させつつ、カスケード式熱交換器又は熱交換器に対し、吸入ガス温度を低下させるためには不要となる、過剰な第1冷媒を供給したりすることができるようになる。
【0019】
さらに、第2冷媒を、第2冷却回路における調整可能な第2内部補助冷却部と、調整可能な第5膨張要素と、を用いることによって、該第5膨張要素を介して低圧側回路へと供給し、第2内部補助冷却部は、第3バイパス通路部を有し、第3バイパス通路部は、第2膨張要素の流れ方向上流側かつカスケード式熱交換器の流れ方向下流側における高圧側回路に接続されるとともに、第2圧縮機の流れ方向上流側かつ熱交換器の流れ方向下流側における低圧側回路に接続される、としてもよい。第1内部補助冷却部について上述したように、第2冷却回路について、より良好な動作を実現することができる。
【0020】
第1冷媒を、第1冷却回路における第1冷媒のための調整可能な第1背面側注入装置と、調整可能な第6膨張要素と、を用いることによって、該第6膨張要素を介して低圧側回路へと供給し、第1背面側注入装置は、第4バイパス通路部を有し、第4バイパス通路部は、第1圧縮機の流れ方向下流側かつ凝縮器の流れ方向上流側における高圧側回路に接続されるとともに、第1圧縮機の流れ方向上流側かつカスケード式熱交換器の流れ方向下流側における低圧側回路に接続される、としてもよい。低圧側回路上でのカスケード式熱交換器における第1冷媒の再凝縮の後に、カスケード式熱交換器における温度上昇に起因してその再凝縮が最早生じなくなった場合は、第1圧縮機は、再び作動されなければならない。蒸気圧の低下に起因して、第1冷媒がカスケード式熱交換器において蒸発するとともに、その第1冷媒の流れ方向が、カスケード式熱交換器において変化する。これに関連して、カスケード式熱交換器において再凝縮された第1冷媒が第1圧縮機に吸引されると不都合となる。これは、第1圧縮機の流れ方向上流側へと高温かつガス状の第1冷媒を供給するように構成された第4バイパス通路部(より正確には第1背面側注入装置)によって防止することができ、そのことで、カスケード式熱交換器に収集される液状の第1冷媒の蒸発を促進することができる。それにもかかわらず、第1圧縮機の流れ方向上流側での吸入ガス温度及び/又は吸入ガス圧力を、第1背面側注入装置を介して設定することができる。第1背面側注入装置は、いわゆるホットガスバイパスを構成することになる。
【0021】
さらに、第2冷媒を、第2冷却回路における第2冷媒のための調整可能な第2背面側注入装置と、調整可能な第7膨張要素と、を用いることによって、該第7膨張要素を介して低圧側回路へと供給し、第2背面側注入装置は、第5バイパス通路部を有し、第5バイパス通路部は、第2圧縮機の流れ方向下流側かつカスケード式熱交換器の流れ方向上流側における高圧側回路に接続されるとともに、第2圧縮機の流れ方向上流側かつ熱交換器の流れ方向下流側における低圧側回路に接続される、としてもよい。第1背面側注入装置について上述したように、第2冷却回路を、より良好に作動させることができる。
【0022】
第1及び第2冷却回路における対応する低圧側回路からの第1及び/又は第2冷媒における吸入ガス温度及び/又は吸入ガス圧力が、対応する圧縮機の上流側で調整され、及び/又は、対応する高圧側回路と、冷却回路における対応する低圧側回路と、の間で圧力差が補償される、とすれば取り分け有効である。数ある中で、対応する圧縮機が過剰に加熱してダメージを受けることを防止することができる。吸入ガス温度が、30℃未満、好ましくは40℃未満に設定されていれば、取り分け有効である。対応する圧縮機の作動期間を調整することができるように、それに対応する冷媒を供与することもできる。基本的に、圧縮機が頻繁にオンオフされるのは不都合である。圧縮機が、一度に、より長い期間にわたって作動する場合は、その圧縮機の耐用年数を延長することができる。にもかかわらず、一度に、より長い期間にわたって圧縮機をオフ状態にすることもできる。
【0023】
温度調整装置は、対応する冷却回路中に、少なくとも1つの圧力センサ、及び/又は、少なくとも1つの温度センサを有する調整装置を備え、膨張要素における電磁弁を、温度又は圧力の測定値に応じて、調整装置を用いて作動させる、としてもよい。調整装置は、センサから出力されるデータセットを処理するデータ処理手段を有し、電気制御式バルブを制御する、としてもよい。カスケード式冷却装置の機能性を調整することは、相応して使用される冷媒にも適合され得る。その上、調整装置は、試験チャンバーの致命的な又は望まれていない作動状況による損傷から試験チャンバー又は試験材料を守るために、必要に応じて、故障を知らせるとともに、試験チャンバーをオフ状態にすることができる。
【0024】
膨張要素が、電磁弁のような電気駆動式バルブを有するスロットルとして実現される場合、スロットル及び電磁弁を介して冷媒を供与することができる。そのスロットルは、調整可能なバルブ又は毛細管とすることができ、電磁弁を用いることで、バルブ又は毛細管を介して冷媒を案内することができる。続いて、電磁弁は、調整装置を用いて作動させることができる。
【0025】
温度調整装置を用いることで、試験空間内に、-70℃から+180℃まで、好ましくは、-80℃から+180℃までの温度を実現する、としてもよい。温度調整装置を用いることによって、試験空間内に、+60℃から+180℃までに温度範囲を切り詰めることができる、ということが重要である。対応する冷媒は、試験空間内で比較的高い温度を用いる熱交換器において多大に加熱され、そのために、技術的観点から、第1及び第2冷却回路の設計は、少なくとも、対応する冷却回路における低圧側回路上で、この温度範囲まで加熱される冷媒に適合させることができる。したがって、加熱される冷媒は、対応する冷却回路における高圧側回路上では、さもなければ、理想的には最早用いることはできない。
【0026】
本発明に係る流体、特に空気を調整するための試験チャンバーは、外部環境に対して封止可能であり、かつ試験材料を収容するための保温された試験空間と、試験空間の温度を制御するための温度調整装置と、を備え、温度調整装置を用いることにより、-60℃から+180℃までの温度が実現され、温度調整装置は、カスケード式冷却装置を有し、カスケード式冷却装置は、第1冷媒、カスケード式熱交換器、第1圧縮機、凝縮器及び第1膨張要素を有する第1冷却回路と、第2冷媒、試験空間内に配置される熱交換器、第2圧縮機、カスケード式熱交換器及び第2膨張要素を有する第2冷却回路と、を備え、カスケード式熱交換器は、第1冷却回路を用いることによって冷却可能であり、第1冷却回路は、熱交換器を通過して、かつカスケード式熱交換器に架け渡されるバイパス通路部を有し、熱交換器は、第1冷却回路を用いることによって冷却可能であり、温度調整装置は、第1圧縮機をオフ状態にすることができる調整装置を備え、第1冷媒は、バイパス通路部の低圧側回路上で、カスケード式熱交換器内へとガス状態で案内されるとともに、該カスケード式熱交換器にて凝縮される。
【0027】
本発明に係る試験チャンバーの利点を引き出すために、本発明に係る方法の利点についての記載が引用される。全体的に見て、カスケード式冷却装置の熱効率を、相当量のエネルギーを節約することによって向上させることができる。第1及び第2圧縮機を作動させないことにより、熱交換器を、バイパス通路部及び第3膨張要素を介して比較的長期間にわたり冷却することができる。第1圧縮機をオフ状態にするのに加えて、圧縮機のファン等、カスケード式冷却装置における他の部材をオフ状態にしたり、或いは、水冷式圧縮機における水冷をオフ状態にしたり、することもできる。その上、第1及び第2冷却回路における圧力及び温度条件は、圧縮機によって否定的な影響を受けるため、オフ状態にされた圧縮機を用いることで、カスケード式熱交換器をより正確に制御することができる。試験空間内に配置される熱交換器は、ファンによって循環される空気が熱交換器と接触可能となるように、試験空間における空調スペース内に配置することもできる。したがって、カスケード式冷却装置を用いることで、熱交換器を介して試験空間における或る量の循環空気を直接的に冷却することができるようになる。
【0028】
したがって、第1冷却回路は、カスケード式熱交換器を用いることにより、第2冷却回路と熱的に結合されている、としてもよい。第1冷却回路は、高温の冷却回路とすることができ、第2冷却回路は、低温の冷却回路とすることができる。特に、試験空間内に-70℃から-20℃までの温度が実現されることになる場合は、第2冷却回路のみを使用するように構成することができる。第1冷却回路のみの使用(より正確には、第2圧縮機をオフ状態にすること)は、試験空間内に-20℃を上回る温度が実現されることになる場合に可能となる。
【0029】
カスケード式熱交換器は、プレート式熱交換器によって構成され、プレート式熱交換器の一次側は、第1冷却回路に接続され、プレート式熱交換器の二次側は、第2冷却回路に接続される、としてもよい。第1冷媒は一次側を流通し、第2冷媒は二次側を流通することができる。第2圧縮機をオフ状態にする場合、第2冷媒は、最早、二次側では輸送されずに、貯蔵媒体として機能することができる。この目的のため、貯蔵媒体の密度又は温度を変更することによって圧力の増減を補償することができる適切な手段を備えた第2冷却回路を提供するように構成することもできる。
【0030】
バイパス通路部は、第1膨張要素の流れ方向上流側かつ第1凝縮器の流れ方向下流側における第1冷却回路の高圧側回路と、第1圧縮機の流れ方向上流側かつカスケード式熱交換器の流れ方向下流側における第1冷却回路の低圧側回路と、に接続される、としてもよい。
【0031】
温度調整装置は、試験空間内に、ヒータ及び加熱式熱交換器(heating heat exchanger)を有する加熱装置を備える、としてもよい。加熱装置は、例えば、加熱式熱交換器を介して試験空間内の温度を上昇させることができるように加熱式熱交換器を加熱する電気抵抗式ヒータとすることができる。熱交換器及び加熱式熱交換器が、具体的に、調整装置(regulating device)を用いることによって試験空間内を循環する空気の冷却及び加熱のために制御可能な場合は、温度調整装置を用いることによって前述した温度範囲内に収まる温度を試験空間内に実現することができる。これに関連して、±1K、好ましくは±0.3Kから±0.5Kを下回ることになる温度の時間的な一貫性を、試験材料(より正確には試験材料の運用条件)とは独立して、試験間隔の最中に、試験空間内に実現することができる。試験間隔は、試験材料が本質的に一貫した温度又は気候条件に曝されることになる、全体的な試験期間における時間区分となることが理解されよう。加熱式熱交換器は、第1及び第2冷媒が流通可能でかつ共有される熱交換器の本体が形成されるように、第1及び第2冷却装置における熱交換器と結合させることができ、この熱交換器は、電機抵抗式ヒータにおける加熱要素を備えている。第1冷却回路における凝縮器は、空冷式、水冷式、又は、異なる冷却用液体を有して実現され得る。一般に、凝縮器は、任意の適切な液体を用いて冷却され得る。第1冷媒が完全に液化するように第1冷媒を凝縮させるよう、凝縮器に生じる熱的な負荷を空冷又は水冷によって消散させることが重要である。
【0032】
試験チャンバーの他の態様は、請求項1に係る方法を引用した従属項の特徴部の記載から得られる。
【0033】
以下、本発明の好ましい実施形態を、添付された図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、カスケード式冷却装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、第1冷却回路11及び第2冷却回路12を備えるカスケード式冷却装置10の概略図を示している。カスケード式冷却装置10はさらに、図示された試験空間14内に配置され、かつ第1冷却回路11と第2冷却回路12とに接続される熱交換器13を備えている。
【0036】
第1冷却回路11は、カスケード式熱交換器15と、第1圧縮機16と、凝縮器17と、第1膨張要素18と、を有してなる。第1冷却回路11においては、第1圧縮機16を作動させることにより、第1冷媒を循環させることができる。第1膨張要素18は、スロットル19と、電磁弁20と、からなる。カスケード式冷却装置10における他の全ての膨張要素は、同様に実現することができる。第1冷却回路11は、第1冷媒の流れ方向に沿って第1圧縮機16から第1膨張要素18まで通じる高圧側回路21と、同方向に沿って第1膨張要素18から第1圧縮機16まで通じる低圧側回路22と、を有している。第1圧縮機16から凝縮器17まで延びる管路部23においては、第1冷媒は、ガス状でありかつ相対的に高い温度を有している。第1圧縮機16によって圧縮された第1冷媒は、第1冷却回路11に沿って凝縮器17に向って流れる。このガス状の第1冷媒は、凝縮器17において液化される。第1膨張要素18は、第1冷媒の流れ方向に沿って、第1冷却回路11において凝縮器17に続いて現れる。したがって、凝縮器17と第1膨張要素18とを結ぶ第1冷却回路11の管路部24においては、液化状態にある第1冷媒を利用することができる。第1膨張要素18の下流側で第1冷媒を膨張させることで、カスケード式熱交換器15が冷却されるとともに、第1膨張要素18とカスケード式熱交換器15とを結ぶ管路部25において第1冷媒をガス状態に相転移させ、これを、カスケード式熱交換器15の管路部26を介して第1圧縮機16へ案内することができる。
【0037】
第2冷却回路12は、熱交換器13と、第2圧縮機27と、カスケード式熱交換器15と、第2膨張要素28と、を有する。第2冷却回路12は、第2冷媒の流れ方向に沿って第2圧縮機27から第2膨張要素28まで通じる高圧側回路29と、同方向に沿って第2膨張要素28から第2圧縮機27まで通じる低圧側回路30と、を有している。第2冷媒は、第2圧縮機27からカスケード式熱交換器15まで延びる管路部31においてはガス状であり、かつ相対的に高い温度を有している。第2圧縮機27によって圧縮された第2冷媒は、第2冷却回路12に沿ってカスケード式熱交換器15に向って流れる。このガス状の第2冷媒は、カスケード式熱交換器15において液化される。第2冷却回路12において、第2膨張要素28は、第2冷媒の流れ方向に沿ってカスケード式熱交換器15に続いて現れる。したがって、カスケード式熱交換器15と第2膨張要素28とを結ぶ第2冷却回路12の管路部32においては、液化状態にある第2冷媒を利用することができる。第2膨張要素28の下流側で第2冷媒を膨張させることで、熱交換器13が冷却されるとともに、第2膨張要素28と熱交換器13とを結ぶ管路部33(特に熱交換器13)において第2冷媒をガス状態に相転移させ、これを、管路部34を介して熱交換器13から第2圧縮機27へ案内することができる。
【0038】
第1冷却回路11には、熱交換器13を通過して、かつ該第1冷却回路11のカスケード式熱交換器15に架け渡されるバイパス通路部35が形成されている。このバイパス通路部35は、第1膨張要素18の流れ方向上流側かつ凝縮器17の流れ方向下流側における高圧側回路21に接続されるとともに、第1圧縮機16の流れ方向上流側かつカスケード式熱交換器15の流れ方向下流側における低圧側回路22に接続される。さらに、熱交換器13の流れ方向上流側におけるバイパス通路部35には、調整可能な第3膨張要素36が配置されている。第3膨張要素36を用いることで、第1冷媒を膨張させるとともに、熱交換器13を介して低圧側回路22へと案内することができる。熱交換器13において特段低い温度を実現する必要がない限り、第2冷却回路12は、第2圧縮機27を用いてオフ状態にすることができ、そのことで、熱交換器13を、第1冷却回路11におけるバイパス通路部35を介して冷却することができる。
【0039】
この場合、カスケード式熱交換器15を冷却する必要がないため、第1膨張要素18は、閉状態に維持される。
【0040】
それにもかかわらず、第2圧縮機27が停止して第1圧縮機16が作動している場合は、カスケード式熱交換器15を通じることで、第1膨張要素18を介して高圧側回路21から低圧側回路22へと第1冷媒を案内することができ、カスケード式熱交換器15、より正確には第2冷却回路12からの第2冷媒を冷却することができる。第2冷媒は循環していないため、カスケード式熱交換器15は、冷熱貯蔵装置として役立つことになる(より正確には、第2冷媒から第1冷媒へと熱エネルギーを放出させ、ひいては、カスケード式熱交換器15に冷却能力(cold capacity)が蓄えられることになる)。第1冷却回路11を用いることで、相対的に低い冷却能力がバイパス通路部35を介して熱交換器13において生み出される場合(より正確には、補償されるべき温度差が、相対的に僅かな場合)、第1圧縮機16もオフ状態にすることができる。その後、第1冷媒は、カスケード式熱交換器15を流通し、そのカスケード式熱交換器15において凝縮させることができる。この場合、冷媒の密度に生じる変化に起因して、第1冷却回路11における低圧側回路22と高圧側回路21との間の圧力差が保たれることになる。これにより、第1冷媒を、第1圧縮機16がオフ状態とされていてもなお、カスケード式熱交換器15において最早凝縮させることができなくなるまで、第3膨張要素36を介して熱交換器13へと第1冷媒が流れ続けることになる。その後、第1圧縮機16を再度作動させて、液化された第1冷媒が再度ガス状とされてカスケード式熱交換器15から吸い込まれるほど十分に、カスケード式熱交換器15において圧力を十分に低下させることができる。全体的に見れば、カスケード式冷却装置10を作動させるときに、十分な量のエネルギーを節約することができる。
【0041】
さらに、第1冷却回路11には、調整可能な第1内部補助冷却部37が配置されている。この第1内部補助冷却部37は、第2バイパス通路部38を有してなる。この第2バイパス通路部38は、第1膨張要素18の流れ方向上流側かつ凝縮器17の流れ方向下流側における高圧側回路21に接続されるとともに、第1圧縮機16の流れ方向上流側かつカスケード式熱交換器15の下流側における低圧側回路22に接続されていて、調整可能な第4膨張要素39を有している。第1冷媒は、第4膨張要素39を介して低圧側回路22へと供給することができ、そのことで、第1冷媒は、第1圧縮機16の下流側で吸入ガス温度を低下させることができる。
【0042】
第2冷却回路12も、調整可能な第2内部補助冷却部40を備えている。この第2内部補助冷却部40は、第2冷却回路12における高圧側回路29と低圧側回路30との間に第3バイパス通路部41を有する。この第3バイパス通路部41は、第5膨張要素42を有する。この場合、第2冷媒は、必要に応じて第2内部補助冷却部40を用いることによって、第2圧縮機27の上流側で冷却することができる。
【0043】
第1冷却回路11はさらに、第1冷媒のための、調整可能な第1背面側注入装置(an adjustable first back-injection device)43を有している。この第1背面側注入装置43は、第4バイパス通路部44を有している。第4バイパス通路部44は、第1圧縮機16の流れ方向下流側かつ凝縮器17の流れ方向上流側における高圧側回路21に接続されるとともに、第1圧縮機16の流れ方向上流側かつカスケード式熱交換器15の流れ方向下流側における前記低圧側回路22に接続される。第4バイパス通路部44には、第6膨張要素45が配置されている。この第6膨張要素45を用いることによって、高圧側回路21から低圧側回路22へと、高温かつガス状の第1冷媒を供給することができる。そのことで、第1冷媒の吸入ガス温度及び/又は吸入ガス圧力を、第1圧縮機16の上流側における低圧側回路22で調整することができるようになる。その上、高圧側回路21と低圧側回路22との間の圧力差を補償することができる。
【0044】
第2冷却回路12も、調整可能な第2背面側注入装置(an adjustable first back-injection device)46を有している。この第2背面側注入装置46は、第5バイパス通路部47と、第7膨張要素48と、を有している。この第7膨張要素48を介して、高圧側回路29から低圧側回路30へと、高温かつガス状の第2冷媒を案内することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 カスケード式冷却装置
11 第1冷却回路
12 第2冷却回路
13 熱交換器
14 試験空間
15 カスケード式熱交換器
16 第1圧縮機
17 凝縮器
18 第1膨張要素
20 電磁弁
21 高圧側回路
22 低圧側回路
27 第2圧縮機
28 第2膨張要素
29 高圧側回路
30 低圧側回路
35 バイパス通路部
36 第3膨張要素
37 第1内部補助冷却部
38 第2バイパス通路部
39 第4膨張要素
40 第2内部補助冷却部
41 第3バイパス通路部
42 第5膨張要素
43 第1背面側注入装置
44 第4バイパス通路部
45 第6膨張要素
46 第2背面側注入装置
47 第5バイパス通路部
48 第7膨張要素