(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】フレキシブル管用保温カバー、保温管およびフレキシブル管用保温カバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 59/153 20060101AFI20240315BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
F16L59/153
F16L59/02
(21)【出願番号】P 2019146192
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2022-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】太田 顕
(72)【発明者】
【氏名】井戸川 浩
(72)【発明者】
【氏名】菊地 豊美
(72)【発明者】
【氏名】川久保 良喜
(72)【発明者】
【氏名】立野 嘉一
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3149965(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0306186(US,A1)
【文献】特開平07-174291(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0126617(US,A1)
【文献】米国特許第05617900(US,A)
【文献】特表2019-503292(JP,A)
【文献】特開2003-314788(JP,A)
【文献】特開2011-220393(JP,A)
【文献】特開2009-299893(JP,A)
【文献】特開2005-106145(JP,A)
【文献】特開2010-276184(JP,A)
【文献】特開2017-180709(JP,A)
【文献】特開平06-272967(JP,A)
【文献】登録実用新案第3062539(JP,U)
【文献】米国特許第03565118(US,A)
【文献】特開2016-044750(JP,A)
【文献】特開平11-190525(JP,A)
【文献】特開2014-062515(JP,A)
【文献】特開2018-112270(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105402502(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-0979968(KR,B1)
【文献】登録実用新案第3223570(JP,U)
【文献】特開平11-280990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/153
F16L 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のフレキシブル性の断熱体であって、当該断熱体の内面および外面が耐熱クロスであり、当該内面と当該外面との間に断熱材を備える断熱体と、
前記断熱体を被覆するフレキシブル性のチューブと、を備え、
前記チューブは、アルミニウム製チューブ、ガラスクロス製チューブ、プラスチック製チューブ、フッ素樹脂製チューブおよびシリコン製チューブからなる群より選ばれる少なくとも1つであ
り、
前記断熱体は、内部に前記断熱材が充填された袋状の前記耐熱クロスが筒状に形成されたものである、フレキシブル管用保温カバー。
【請求項2】
前記耐熱クロスは、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、カーボンクロスおよびAES繊維からなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載のフレキシブル管用保温カバー。
【請求項3】
前記断熱材は、グラスウール、ロックウール、ナノシリカ成形体、ガラスマット、バルクファイバー、金属シート、アルカリアースシリケート、およびこれらのいずれかを粉体にしたものからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1または2に記載のフレキシブル管用保温カバー。
【請求項4】
前記チューブは、蛇腹形状のアルミニウム製チューブである、請求項1~3のいずれかに記載のフレキシブル管用保温カバー。
【請求項5】
前記断熱体は、内部に前記断熱材が充填された袋状の前記耐熱クロスが圧縮された状態で前記チューブに挿入されたものである、請求項1~
4のいずれかに記載のフレキシブル管用保温カバー。
【請求項6】
前記断熱体は、内部に前記断熱材が充填された袋状の前記耐熱クロスを3回巻き以上にして丸めて筒状としたものである、請求項1~
5のいずれかに記載のフレキシブル管用保温カバー。
【請求項7】
フレキシブル管と、
前記フレキシブル管を挿入する請求項1~
6のいずれかに記載のフレキシブル管用保温カバーと、を備え、
前記耐熱クロスが前記フレキシブル管の外周面を包接する、保温管。
【請求項8】
前記フレキシブル管がステンレス製である、請求項
7に記載の保温管。
【請求項9】
筒状のフレキシブル性の断熱体であって、当該断熱体の内面および外面が耐熱クロスであり、当該内面と当該外面との間に断熱材を備える断熱体と、前記断熱体を被覆するフレキシブル性のチューブと、を備えるフレキシブル管用保温カバーの製造方法であって、
前記筒状のフレキシブル性の断熱体を圧縮し、当該断熱体の外径を前記チューブの内径よりも小さくする第1圧縮工程と、
前記チューブに前記断熱体を挿入する第1挿入工程と、を含む、フレキシブル管用保温カバーの製造方法。
【請求項10】
筒状のフレキシブル性の断熱体であって、当該断熱体の内面および外面が耐熱クロスであり、当該内面と当該外面との間に断熱材を備え、内部に前記断熱材が充填された袋状の前記耐熱クロスが筒状に形成されたものである断熱体と、前記断熱体を被覆するフレキシブル性のチューブと、を備えるフレキシブル管用保温カバーの製造方法であって、
前記断熱材を圧縮する第2圧縮工程と、
袋状の前記耐熱クロスを巻いて前記断熱体を筒状とする工程と、
前記チューブに前記断熱体を挿入する第2挿入工程と、を含み、
前記第2圧縮工程および前記筒状とする工程により、前記筒状の断熱体の外径を、前記チューブの内径よりも小さくする、フレキシブル管用保温カバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル管用保温カバー、保温管およびフレキシブル管用保温カバーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、タイヤ等のゴム成形品の加硫機等では、昇降駆動する加硫チャンバーの可動部に、熱源として加熱蒸気等の加熱流体を送給するために、固定部の加熱流体の供給元にある供給口と、可動部にある加熱流体の導入口との間、すなわち固定部と可動部との間に、フレキシブル性のあるフレキシブル管が接続される。
【0003】
このようなフレキシブル管としては、金属製のものが有用であり、特に、不燃性であり、耐熱性、耐久性および耐食性等に優れるステンレス製のフレキシブル管が挙げられる。ステンレス製のフレキシブル管(以下、「SUSフレキ管」とする場合がある)としては、ステンレス製の薄板材料をパイプ成型したものが挙げられ、スパイラルタイプやワンピッチタイプの蛇腹形状のパイプ部や、ワイヤーブレードやリボンブレード等のブレードタイプのパイプ部を備えるフレキシブル管が挙げられる。
【0004】
例えば、加硫機にSUSフレキ管を用いて、SUSフレキ管に加熱蒸気を流通させる場合には、熱伝導性の高いSUSフレキ管からの放熱による熱エネルギーの損失を少なくする必要がある。また、加硫機周辺の作業環境を考慮すると、放熱による周辺の温度上昇を抑制することが好ましい。
【0005】
そこで、SUSフレキ管を保温して熱エネルギーの損失や周辺環境の温度上昇を抑制する試みがされてきた。例えば、SUSフレキ管のパイプ部を発泡ゴムホース等のスポンジ系断熱材で被覆することや、ガラステープを巻きつけることによって、SUSフレキ管を保温することができる。
【0006】
また、例えば特許文献1には、内外表面部が耐熱クロスにより構成され、内外の耐熱クロスの間に断熱材が装填された断熱カバーを、断熱カバーがSUSフレキ管のパイプ部の表面に直接接触しないように、オープンファスナーや締付ベルトでSUSフレキ管に固定する態様が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-276184号公報
【文献】特表2004-517222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、固定部と可動部との間に接続されたSUSフレキ管は、可動部が動作するたびに、屈曲等の変形をすることとなり、ガラステープを巻きつける態様では、SUSフレキ管の変形によってガラステープが徐々に解けていき、SUSフレキ管が露出して保温性能が低下する場合がある。
【0009】
また、発泡ゴムホース等のスポンジ系断熱材の場合、SUSフレキ管の変形に追従できるものの、保温性が十分ではなく、また、背割れと呼ばれるホースの長手方向に広がる割れが時間の経過と共に進行し、いずれは背割れ部分よりSUSフレキ管が露出して保温性能が大幅に低下する場合がある。
【0010】
さらに、特許文献1のような断熱カバーでは、断熱カバーとSUSフレキ管の間にある隙間から、断熱カバーの両端にある開口部を介して外部へ放熱するおそれがある。そして、オープンファスナーや締付ベルトがSUSフレキ管の繰り返しの変形によって徐々に弛んでしまい、弛んだところから外部へ放熱するおそれがある。さらに、SUSフレキ管の繰り返しの変形によって断熱カバーも繰り返し変形することにより、耐熱クロスが摩耗して摩耗粉が発生する場合がある。また、耐熱クロスが摩耗していくと、その摩耗部分に穴が開いて断熱材が飛散してしまい、これらの摩耗粉や飛散した断熱材が異物として製品へ混入するおそれがある。
【0011】
上記の問題に鑑み、本発明では、耐久性と保温性に優れ、特に可動部と固定部の間に接続するフレキシブル管に好適な保温カバー、これを用いた保温管および保温カバーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のフレキシブル管用保温カバーは、筒状のフレキシブル性の断熱体であって、当該断熱体の内面および外面が耐熱クロスであり、当該内面と当該外面との間に断熱材を備える断熱体と、前記断熱体を被覆するフレキシブル性のチューブと、を備える。
【0013】
前記耐熱クロスは、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、カーボンクロスおよびAES繊維からなる群より選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0014】
前記断熱材は、グラスウール、ロックウール、ナノシリカ成形体、ガラスマット、バルクファイバー、金属シート、アルカリアースシリケート、およびこれらのいずれかを粉体にしたものからなる群より選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0015】
前記チューブは、アルミニウム製チューブ、ステンレス製チューブ、ガラスクロス製チューブ、プラスチック製チューブ、フッ素樹脂製チューブおよびシリコン製チューブからなる群より選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0016】
前記断熱体は、内部に前記断熱材が充填された袋状の前記耐熱クロスが筒状に形成されたものであってもよい。
【0017】
前記耐熱クロスはフッ素樹脂加工された耐熱クロスであってもよい。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の保温管は、フレキシブル管と、前記フレキシブル管を挿入する本発明のフレキシブル管用保温カバーと、を備え、前記耐熱クロスが前記フレキシブル管の外周面を包接する。
【0019】
前記フレキシブル管がステンレス製であってもよい。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明のフレキシブル管用保温カバーの製造方法は、前記筒状のフレキシブル性の断熱体を圧縮し、当該断熱体の外径を前記チューブの内径よりも小さくする第1圧縮工程と、前記チューブに前記断熱体を挿入する第1挿入工程と、を含む。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明のフレキシブル管用保温カバーの製造方法は、前記断熱材を圧縮する第2圧縮工程と、袋状の前記耐熱クロスを巻いて前記断熱体を筒状とする工程と、前記チューブに前記断熱体を挿入する第2挿入工程と、を含み、前記第2圧縮工程および前記筒状とする工程により、前記筒状の断熱体の外径を、前記チューブの内径よりも小さくする。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、耐久性と保温性に優れ、特に可動部と固定部の間に接続するフレキシブル管に好適な保温カバー、これを用いた保温管および保温カバーの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明のフレキシブル管用保温カバーの一例を示す概略図である。
【
図2】
図1とは異なる本発明のフレキシブル管用保温カバーの一例を示す概略図である。
【
図3】ステンレス製のフレキシブル管の一例を示す概略側面図である。
【
図4】固定部と可動部との間に接続されたステンレス製のフレキシブル管の使用態様の一例を示す概略側面図である。
【
図6】固定部と可動部との間に接続された本発明の保温管の使用態様の一例を示す概略側面図である。
【
図7】
図1に示す本発明のフレキシブル管用保温カバーの製造例を示す概略図である。
【
図8】
図2に示す本発明のフレキシブル管用保温カバーの製造例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のフレキシブル管用保温カバー、保温管およびフレキシブル管用保温カバーの製造方法の一態様について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0025】
[フレキシブル管用保温カバー]
本発明のフレキシブル管用保温カバーは、断熱体と、チューブと、を備える。例えば、
図1の概略図に示すような、フレキシブル管用保温カバーが挙げられる。
図1(a)は、フレキシブル管用保温カバー100の側面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のAA断面図である。
【0026】
〈断熱体〉
断熱体10の形状は筒状であり、筒状の断熱体10の内面11および外面12が耐熱クロスであり、内面11と外面12との間に断熱材20が充填されている。内面11の内側は、後述するフレキシブル管が挿入可能なように中空15となっている。
【0027】
また、断熱体10はフレキシブル性を有する。例えばフレキシブル管用保温カバー100の端部101と102が接触するように曲げる操作と、
図1(a)に示すような直線状に戻す曲げ伸ばし操作を繰り返しても、断熱体10に損傷や破壊等が生じることなく、十分な屈曲性を有する。
【0028】
(耐熱クロス)
耐熱クロスとしては、例えばガラスを融解して繊維状にしたものであり、伸びにくく、寸法安定性に優れる繊維を用いることができる。例えば、一般的なアルカリガラスや、石英ガラス等の無アルカリガラスを繊維状にしたものを用いることができる。本発明では、特にガラス繊維を織ってクロス状にしたガラス繊維クロスを耐熱クロスとし、内面11および外面12として使用することで、断熱材20の繊維が内面11および外面12を突き破って外部へ飛散することにより、異物としてタイヤ等の製品へ混入してしまうことを防止することができる。
【0029】
ガラス繊維クロスとしては、平織り、綾織り、模紗織り、からみ織り、朱子織等の織り方で織物としたクロスを用いることができる。また、耐熱クロスの織り密度も、断熱材20の飛散を防止できる程度の密度であればよい。例えば、朱子織で織り密度がタテ密度:55±2本/25mm、ヨコ密度:52±2本/25mm、質量:300g±30g/m2のガラス繊維クロスを内面11および外面12に用いることができる。
【0030】
例えば、
図6に示すように、本発明のフレキシブル管用保温カバー100にフレキシブル管が挿入され、固定部400と可動部500との間に接続された場合、矢印で示す可動部500の上下運動の動きに応じて、フレキシブル管用保温カバー100も変形する。この変形によって、内面11は断熱材20やフレキシブル管と、外面12は断熱材20やチューブ30と擦れることで、耐熱クロスが摩耗して外部へ飛散し、異物としてタイヤ等の製品へ混入してしまうおそれがある。
【0031】
そこで、耐熱クロスの耐摩耗性を考慮して、シリコンやフッ素樹脂等をコーティングすることが好ましく、フッ素樹脂をコーティングすることで、さらに耐熱性、耐スチーム性、耐炎性、耐食性等を向上させることができる。フッ素樹脂のコーティングとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂を0.04~0.06mmの厚みとするコーティングが挙げられ、このようなコーティングをした耐熱クロスを内面11および外面12として用いることができる。
【0032】
前記耐熱クロスとしては、上記したガラス繊維に加え、耐熱性の高い繊維を用いることができ、例えばセラミックファイバー、シリカ繊維、アルミナ繊維、カーボンクロス、AES繊維(Alkaline Earth Silicate Fiber)およびポリイミド繊維からなる群より選ばれる少なくとも1つを用いることができる。また、これらの素材はチューブやフレキシブル管との擦れを抑え、また擦れにより摩耗し難い素材である。
【0033】
(断熱材)
断熱材20としては、断熱性能を有し、フレキシブル管からの放熱を抑制して保温効果を発揮できるものであれば、特に限定されない。例えば、ガラスウールを糊で固めたものが挙げられ、密度が10~40Kg/m3であり、厚さが5~40mmのガラスマットを用いることができる。
【0034】
なお、断熱材20としては、寸法の調整が容易となるようフェルト状に加工できる素材を用いることが好ましく、具体的には、グラスウール、ロックウール、ナノシリカ成形体、ガラスマット、バルクファイバー、金属シート、アルカリアースシリケート、およびこれらのいずれかを粉体にしたものからなる群より選ばれる少なくとも1つを用いることができる。また、特許文献2に記載されるような、ナノシリカ成形体と無機繊維の複合材を用いることができる。
【0035】
〈チューブ〉
チューブ30は、断熱体10を被覆するチューブである。特に、不燃性、耐熱性、耐久性および耐食性等に優れる点から、アルミニウム製のものを使用することができる。その形状としては、断熱材20を被覆することが可能であり、断熱材20が飛散しないよう、また、長期の使用による緩みがないよう、周方向に継ぎ目の無いチューブを用いることができる。具体的には、アルミニウム製の薄板材料をパイプ成型したものが挙げられ、スパイラルタイプやワンピッチタイプの蛇腹形状が挙げられる。
【0036】
また、チューブ30はフレキシブル性を有する。例えばフレキシブル管用保温カバー100の端部101と102が接触するように曲げる操作と、
図1(a)に示すような直線状に戻す曲げ伸ばし操作を繰り返しても、チューブ30に損傷や破壊等が生じることなく、十分な屈曲性を有する。例えば、アルミニウム製のダクトホースを応用して用いることができ、具体的には、内径が30mm~150mm程度の、カナフレックスコーポレーション株式会社製のアコーディオンダクトホースを用いることができる。
【0037】
また、チューブ30としては、上記のアルミニウム製チューブ以外のものも、用いることができる。具体的には、アルミニウム製チューブ、ステンレス製チューブ、ガラスクロス製チューブ、プラスチック製チューブ、フッ素樹脂製チューブおよびシリコン製チューブからなる群より選ばれる少なくとも1つを用いることができ、用途に応じてこれらを併用してもよい。なお、ガラスクロス製チューブとしては、ガラス繊維生地にシリコン樹脂をコーティングしたものが挙げられるが、これに限定されず、シリコン樹脂コーティングが施されていないものも用いることができる。また、フッ素樹脂製チューブに用いるフッ素樹脂の種類として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/フルオロアルコキシトリフルオロエチレン共重合体(PFA)、四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等のようなものが挙げられる。
【0038】
本発明のフレキシブル管用保温カバーとしては、
図1に示す態様に限定されず、例えば、
図2に示すフレキシブル管用保温カバー110の断熱体10のように、内部に断熱材20が充填された袋状の耐熱クロス40が筒状に形成されたものであってもよい。
図2(a)は、フレキシブル管用保温カバー110の側面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のAA断面図である。筒状に形成された耐熱クロス40は、その内面13の内側が後述するフレキシブル管が挿入可能なように中空15となっている。また、外面14が、チューブ30によって被覆されている。
【0039】
[保温管]
本発明の保温管は、フレキシブル管と、本発明のフレキシブル管用保温カバーと、を備える。フレキシブル管用保温カバーとしては、例えば、フレキシブル管用保温カバー100や110を用いることができる。
【0040】
〈フレキシブル管〉
フレキシブル管は、例えば、固定部と可動部との間に接続され、内部に液体や気体等の流体を流通させて、固定部と可動部の一方から他方へ流体を運搬するために用いられる。なお、フレキシブル管は、可動部と可動部との間に接続される場合もある。
【0041】
また、フレキシブル管は、その両端が接触するように曲げる操作と、直線状に戻す曲げ伸ばし操作を繰り返しても、損傷や破壊等が生じることなく、十分な屈曲性を有する。
【0042】
このようなフレキシブル管としては、LPGガス、水などの流通させる流体の種類によって、ゴムやポリエチレン等の樹脂製のものや、シリコン製等の耐熱性のあるもの、アルミニウムや、ステンレス等の金属製のものが挙げられる。
【0043】
例えば、タイヤ等のゴム成形品の加硫機等に用いられ、加熱蒸気を流通させるのであれば、不燃性、耐熱性、耐久性、耐食性等に優れるステンレス製のフレキシブル管を用いることができる。このようなステンレス製のフレキシブル管としては、ステンレス304製の薄板材料をパイプ成型したものが挙げられ、スパイラルタイプやワンピッチタイプの蛇腹形状のパイプ部や、ワイヤーブレードやリボンブレード等のブレードタイプのパイプ部を備えるフレキシブル管が挙げられる。
【0044】
例えば、ステンレス304製のフレキシブル管としては、
図3に示すステンレス製のフレキシブル管200の概略側面図のように、リボンブレードタイプのパイプ部210と、パイプ部210の両端にある継手部220を備えるものが挙げられる。なお、パイプ部210には、フレキシブル管用保温カバー100、110からフレキシブル管200が抜けるのを防止する凸部等の抜け止めは、通常は備えられていない。
【0045】
そして、フレキシブル管200を加硫機600に用いる場合には、
図4に示すように、一方の継手部220を固定部400の供給口410と接続し、他方の継手部220を加硫機600の可動部500にある導入口510に接続する。これにより、内部に加熱蒸気を流通させ、固定部400から加硫機600に加熱蒸気を導入することができる。そして、矢印に示すように、可動部500の加硫チャンバー520の昇降駆動に応じて、フレキシブル管200も固定部400と可動部500との接続状態を維持したまま、パイプ部210が屈伸して変形することができる。
【0046】
ただし、ステンレス製のフレキシブル管200を加硫機600に用いて、その内部に加熱蒸気を流通させる場合には、熱伝導性の高いフレキシブル管200からの放熱による熱エネルギーの損失を少なくする必要がある。また、加硫機600周辺の作業環境を考慮すると、放熱による周辺の温度上昇を抑制することが好ましい。
【0047】
そこで、フレキシブル管用保温カバーの耐熱クロスがフレキシブル管の外周面を包接する保温管を用いることで、熱エネルギーの損失や周辺の温度上昇の抑制が可能となる。例えば、
図5(a)の概略側面図に示す保温管500のように、フレキシブル管用保温カバー110の端部101、102から継手部220が露出するように、フレキシブル管用保温カバー110の中空15にフレキシブル管200を挿入した状態にした保温管を、固定部400と可動部500との間に接続して使用することができる。
図5(a)のAA断面図である
図5(b)に示すように、フレキシブル管用保温カバー110の耐熱クロス40が、フレキシブル管200のパイプ部210の表面と接触するように包み込み、内面11とパイプ部210との間の隙間を出来るだけ少なくすることで、フレキシブル管200からの放熱を効果的に抑制し、加熱蒸気を保温することができる。
【0048】
そして、保温管300を加硫機600に用いる場合には、例えば、
図6に示すように、一方の継手部220を固定部400の供給口410と接続し、他方の継手部220を加硫機600の可動部500にある導入口510に接続する。これにより、内部に加熱蒸気を流通させ、固定部400から加硫機600に加熱蒸気を導入することができる。そして、矢印に示すように、可動部500の加硫チャンバー520の昇降駆動に応じて、保温管300も固定部400と可動部500との接続状態を維持したまま、フレキシブル管用保温カバー110が屈伸して変形することができる。
【0049】
本発明の保温管300であれば、保温性にすぐれ、例えば、耐熱クロスとしてガラス繊維、断熱材としてガラスウール(厚み20mm)、チューブとしてアルミニウム製チューブを備えるフレキシブル管用保温カバー110を使用し、フレキシブル管としてステンレス製のフレキシブル管200(15A配管、内径16.1mm、外径21.7mm)を使用すると、外気温20℃において、フレキシブル管200の中を通る水蒸気の温度が180℃であるのに対し、アルミニウム製チューブ30の表面温度は35~50℃となり、保温性に優れる。
【0050】
このように保温性に優れるのは、フレキシブル管用保温カバー100や110と断熱体10が密着し、さらに、断熱材10とフレキシブル管200が密着していることで、熱が外部へ漏れないことによるものである。また、断熱材10とフレキシブル管200が密着していることにより、フレキシブル管200に抜け止めが無くても、フレキシブル管200がフレキシブル管用保温カバーから容易に抜けることはない。
【0051】
なお、
図5、6では、フレキシブル管200のパイプ部210のみをフレキシブル管用保温カバー100や110によって被覆する態様を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、フレキシブル管用保温カバー100や110によって、更に継手部220の一部も被覆する態様や、継手部220を完全に被覆する態様もとることができる。
【0052】
また、継手部220は、固定部400や可動部500に接続して固定した状態であり、屈伸して変形する部分ではないため、擦れや摩耗によるコンタミの発生のおそれがない。そこで、例えばガラス繊維を一定の長さにカットし、フェルト状に仕上げた後、ニードル加工を施した断熱マット(具体的には、TOMBO No.4517(ガラスマット)またはTOMBO No.4518(シリカマット) いずれもニチアス株式会社製)のような、固定部分を保温する保温手段により、継手部220からの放熱を防止することができる。
【0053】
[フレキシブル管用保温カバーの製造方法1]
次に、
図7を参照しつつ、本発明のフレキシブル管用保温カバーの製造方法の一例として、
図1に示すフレキシブル管用保温カバー100の製造方法について、その一態様を説明する。
【0054】
〈第1圧縮工程〉
本工程は、筒状のフレキシブル性の断熱体10を圧縮し、断熱体10の外径OD1をチューブ30の内径IDよりも小さくする工程である。
【0055】
断熱体10の外径OD1がチューブ30の内径IDよりも大きい場合や、同一径の場合、断熱体10をチューブ30に挿入することが困難となる場合がある。また、外径OD1が内径IDより小さい場合でも、断熱体10を圧縮しておくことで、チューブ30への挿入が容易となる。そこで、本工程を行うことが重要となる。
【0056】
断熱体10の圧縮方法は、特に限定されない。例えば、断熱体10を手動や自動で押し潰して断熱材20が含む空気を押し出す方法や、密閉した容器等へ断熱体10を入れて容器内を減圧状態にして、断熱材20が含む空気を押し出す方法等により、断熱体10を圧縮することができる。
【0057】
〈第1挿入工程〉
本工程は、チューブ30に断熱体10を挿入する工程である(
図7(a))。この工程により、フレキシブル管用保温カバー100が完成する(
図7(b))。
【0058】
第1挿入工程後は、経時にて断熱材20が空気を抱き込むことで、圧縮された断熱体10が元の状態に回復しようとする。これにより、挿入前の外径OD1が内径IDより大きい場合には、断熱体10の外面12がチューブ30の内面を外側へ押し出す力が発生することにより、断熱体10がチューブ30から抜け難くなり、また、擦れの発生を抑制することができる。そして、挿入前の外径OD1と内径IDが同一の場合には、断熱体10の外面12とチューブ30の内面との隙間が無くなることにより、断熱体10がチューブ30から抜け難くなり、また、擦れの発生を抑制することができる。一方、外径OD1が内径IDより小さい場合には、断熱体10の外面12とチューブ30の内面との隙間が少なくなることにより、断熱体10がチューブ30から抜け難くなり、また、擦れの発生を抑制することができる。
【0059】
また、圧縮された断熱体10が元の状態に回復しようとすることにより、挿入前の中空15の直径がパイプ部210の外径より小さい場合には、断熱体10の内面11がパイプ部210の表面を内側へ押し出す力が発生することにより、フレキシブル管200がフレキシブル管用保温カバー100から抜け難くなり、また、擦れの発生や放熱を抑制することができる。そして、挿入前の中空15の直径とパイプ部210の外径が同一の場合には、断熱体10の内面11とパイプ部210の表面との隙間が無くなることにより、フレキシブル管200がフレキシブル管用保温カバー100から抜け難くなり、また、擦れの発生や放熱を抑制することができる。一方、挿入前の中空15の直径がパイプ部210の外径より大きい場合には、断熱体10の内面11とパイプ部210の表面との隙間が少なくなることにより、フレキシブル管200がフレキシブル管用保温カバー100から抜け難くなり、また、擦れの発生や放熱を抑制することができる。
【0060】
なお、第1圧縮工程や第1挿入工程では、断熱体10の形状が型崩れしないよう、中空15に棒状のガイドを挿入し、圧縮や挿入を補助することができる。
【0061】
[フレキシブル管用保温カバーの製造方法2]
次に、
図8を参照しつつ、上記とは異なる本発明のフレキシブル管用保温カバーの製造方法の一例として、
図2に示すフレキシブル管用保温カバー110の製造方法について、その一態様を説明する。
【0062】
〈筒状とする工程〉
本工程は、袋状の耐熱クロス40を巻いて断熱体10を筒状とする工程である(
図8(a)、(b))。袋状の耐熱クロス40は、例えば2枚のガラス繊維織物をガラス繊維等の糸で縫合して袋状としたものである。この袋状の耐熱クロス40の内部に、ガラス繊維マット20が充填されて、ガラス繊維マット20が露出しないように耐熱クロス40の周囲を全て縫合することで、布団形状の断熱体10を形成することができる(
図8(a))。この布団形状の断熱体10を丸めて筒状とするのが、本工程である(
図8(b))。
【0063】
なお、
図2(b)では、袋状の耐熱クロス40を3回巻きにして丸めて筒状としているが、中空15に挿入するフレキシブル管を完全に被覆することができれば、2回巻きや4回巻き以上でもよく、また、若干の重ね代を有する1回巻きにして丸めて筒状としてもよい。
【0064】
〈第2圧縮工程〉
本工程は、断熱材20を圧縮する工程である。断熱材20の圧縮方法は、特に限定されない。例えば、断熱材20を手動や自動で押し潰して断熱材20が含む空気を押し出す方法や、密閉した容器等へ袋状の耐熱クロス40ごと断熱材20を入れて容器内を減圧状態にして、断熱材20が含む空気を押し出す方法等により、断熱材20を圧縮することができる。
【0065】
なお、第2圧縮工程は、前記筒状とする工程の前や後に行ってもよく、前記筒状とする工程が第2圧縮工程を兼ね備えてもよい。例えば、筒状にする前の布団形状断熱体10(
図8(a))の状態で、第2圧縮工程を行ってもよく、断熱材20を圧縮しながら筒状にしてもよく(
図8(b))、筒状にした後に、第2圧縮工程を行ってもよい(
図8(c))。
【0066】
前記筒状とする工程および前記第2圧縮工程により、前記筒状の断熱体10の外径OD2を、チューブの内径IDよりも小さくする。断熱体10の外径OD2がチューブ30の内径IDよりも大きい場合や、同一径の場合、断熱体10をチューブ30に挿入することが困難となる場合がある。また、外径OD2が内径IDより小さい場合でも、断熱体10を圧縮しておくことで、チューブ30への挿入が容易となる。そこで、これらの工程を行うことが重要となる。
【0067】
〈第2挿入工程〉
本工程は、チューブ30に断熱体10を挿入する工程である(
図8(c))。この工程により、フレキシブル管用保温カバー110が完成する(
図8(d))。
【0068】
第2挿入工程後は、経時にて断熱材20が空気を抱き込むことで、圧縮された断熱体10が元の状態に回復しようとする。これにより、挿入前の外径OD2が内径IDより大きい場合には、断熱体10の外面14がチューブ30の内面を外側へ押し出す力が発生することにより、断熱体10がチューブ30から抜け難くなり、また、擦れの発生を抑制することができる。そして、挿入前の外径OD2と内径IDが同一の場合には、断熱体10の外面14とチューブ30の内面との隙間が無くなることにより、断熱体10がチューブ30から抜け難くなり、また、擦れの発生を抑制することができる。一方、外径OD2が内径IDより小さい場合には、断熱体10の外面14とチューブ30の内面との隙間が少なくなることにより、断熱体10がチューブ30から抜け難くなり、また、擦れの発生を抑制することができる。
【0069】
また、圧縮された断熱体10が元の状態に回復しようとすることにより、挿入前の中空15の直径がパイプ部210の外径より小さい場合には、断熱体10の内面13がパイプ部210の表面を内側へ押し出す力が発生することにより、フレキシブル管200がフレキシブル管用保温カバー110から抜け難くなり、また、擦れの発生や放熱を抑制することができる。そして、挿入前の中空15の直径とパイプ部210の外径が同一の場合には、断熱体10の内面13とパイプ部210の表面との隙間が無くなることにより、フレキシブル管200がフレキシブル管用保温カバー110から抜け難くなり、また、擦れの発生や放熱を抑制することができる。一方、挿入前の中空15の直径がパイプ部210の外径より大きい場合には、断熱体10の内面13とパイプ部210の表面との隙間が少なくなることにより、フレキシブル管200がフレキシブル管用保温カバー110から抜け難くなり、また、擦れの発生や放熱を抑制することができる。
【0070】
なお、第2圧縮工程や筒状とする工程、第2挿入工程では、断熱体10の形状が型崩れしないよう、中空15に棒状のガイドを挿入し、圧縮や挿入を補助することができる。
【0071】
以上のように、本発明のフレキシブル管用保温カバーおよび保温管によれば、断熱材によって保温性に優れ、また、耐熱クロスが断熱材を被覆することで、屈伸変形による擦れに強く、断熱材の飛散により異物として製品に混入することを防止することができる。また、耐久性に優れたチューブによって断熱体を保護することで、長期間にわたって保温性能を維持することができる。
【0072】
また、本発明のフレキシブル管用保温カバーの製造方法であれば、本発明のフレキシブル管用保温カバーを容易に製造することができる。
【符号の説明】
【0073】
10 断熱体
11 内面
12 外面
13 内面
14 外面
15 中空
20 断熱材
30 チューブ
40 耐熱クロス
100 フレキシブル管用保温カバー
101 端部
102 端部
110 フレキシブル管用保温カバー
200 フレキシブル管
210 パイプ部
220 継手部
300 保温管
400 固定部
410 供給口
500 可動部
510 導入口
520 加硫チャンバー
600 加硫機
ID 内径
OD1 外径
OD2 外径