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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】媒体搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/36 20060101AFI20240315BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20240315BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B65H5/36
B65H5/06 F
G03G15/00 402
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019229591
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021095285
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-09-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】下坂 喜一郎
(72)【発明者】
【氏名】角田 裕俊
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-212048(JP,A)
【文献】特開2001-114448(JP,A)
【文献】特開2021-059449(JP,A)
【文献】特開2019-193217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/36
B65H 5/06
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ローラ、及び、前記第1ローラの上方側に対向する第2ローラを含み、前記第1ローラと前記第2ローラの間で媒体を搬送する搬送ローラ対と、
前記搬送ローラ対に媒体を案内するために、前記搬送ローラ対に対して媒体搬送方向の上流側に配置された下側ガイド、及び、前記下側ガイドに対向する上側ガイドを含むガイド対と、を有し、
前記第2ローラは、媒体が搬送されていない状態で前記下側ガイドと前記上側ガイドが相互に最も近接する位置における前記ガイド対の間の間隔より大きい厚さを有する媒体を搬送できるように上方に移動可能に設けられ、
搬送される媒体が、媒体が搬送されていない状態で前記下側ガイドと前記上側ガイドが相互に最も近接する位置における前記ガイド対の間の間隔より大きい厚さを有する場合に、搬送される媒体が前記ガイド対の間を通過する際に、搬送される媒体の厚さに応じて前記下側ガイドが下方に移動し且つ前記上側ガイドが上方に移動することにより、前記ガイド対の間の間隔が媒体に応じて変更可能である、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記下側ガイドは、可撓性部材で形成されている、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記下側ガイドを上方に押圧する押圧部材をさらに有し、
前記下側ガイドは、前記押圧部材により下方に移動可能に配置されている、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記下側ガイドは、下方に移動可能な移動部、及び、前記移動部を支持する支持部を含む、請求項1~3の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
前記ガイド対の間の間隔が変更されることによって、媒体の下側端部が前記第1ローラに当接する位置から前記第1ローラの上端までの距離が変更されるように構成されている、請求項1~4の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送装置に関し、特に、搬送ローラに媒体を案内する上側ガイド及び下側ガイドを有する媒体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スキャナ等の媒体搬送装置では、薄紙、プラスチック製のカード又はパスポートのような様々な厚さを有する媒体を搬送させることが要求されている。このような媒体搬送装置において、薄紙のような薄い媒体が搬送される場合には媒体のジャムが発生しやすく、一方、プラスチック製のカード又はパスポートのような厚い媒体が搬送される場合には搬送ローラと媒体の間でスリップが発生しやすい。
【0003】
定着装置を構成する一対のローラのニップに各種の複写用紙を送る電子写真複写機の用紙案内板が開示されている(特許文献1を参照)。この用紙案内板の先端部には、小サイズの厚紙の幅にほぼ等しい幅を有する段落部が設けられている。
【0004】
搬送ローラと、搬送ローラと対向するプレッシャローラと、搬送される媒体を案内する上側ガイド板と下側ガイド板とを有する媒体搬送路が開示されている(特許文献2を参照)。この媒体搬送路において、プレッシャローラの搬送方向上流側に、媒体の先端を搬送ローラとプレッシャローラの挟持部の方向に導く斜面を有する媒体案内体が設けられ、この媒体案内体の少なくとも下流側は変位可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭60-180247号公報
【文献】特開2004-189371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
媒体搬送装置では、それぞれ異なる厚さを有する複数の媒体を適切に搬送することが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、それぞれ異なる厚さを有する複数の媒体を適切に搬送することが可能な媒体搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る媒体搬送装置は、第1ローラ、及び、第1ローラの上方側に対向する第2ローラを含み、第1ローラと第2ローラの間で媒体を搬送する搬送ローラ対と、搬送ローラ対に媒体を案内するために、搬送ローラ対に対して媒体搬送方向の上流側に配置された下側ガイド、及び、下側ガイドに対向する上側ガイドを含むガイド対と、を有し、上側ガイドが、媒体の搬送に応じて上方に移動可能に配置され、且つ、下側ガイドが、媒体の搬送に応じて下方に移動可能に配置されることによって、ガイド対の間の間隔が媒体に応じて変更可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、媒体搬送装置は、それぞれ異なる厚さを有する複数の媒体を適切に搬送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る媒体搬送装置100を示す斜視図である。
図2】媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
図3A】第1下側ガイド121等について説明するための模式図である。
図3B】第1下側ガイド121等について説明するための模式図である。
図4】第1移動部121aについて説明するための模式図である。
図5A】第1移動部121a等の動作について説明するための模式図である。
図5B】第1移動部121a等の動作について説明するための模式図である。
図6A】第1移動部121a等の動作について説明するための模式図である。
図6B】第1移動部121a等の動作について説明するための模式図である。
図7A】媒体の搬送力と搬送負荷の関係について説明するための模式図である。
図7B】媒体にかかる力とローラの外径との関係を示すグラフ700である。
図8】他の第1下側ガイド221について説明するための模式図である。
図9A】他の第2搬送ローラ215について説明するための模式図である。
図9B】他の第2搬送ローラ215について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一側面に係る媒体搬送装置について図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0012】
図1は、イメージスキャナとして構成された媒体搬送装置100を示す斜視図である。媒体搬送装置100は、原稿である媒体を搬送し、撮像する。媒体は、薄紙等の用紙、又は、厚紙、プラスチック製のカード、冊子もしくはパスポート等の厚みのある媒体(例えば2mmを超える厚さを有する媒体)である。即ち、媒体搬送装置100がサポートする媒体には、それぞれ異なる厚さを有する複数の媒体が含まれる。媒体搬送装置100は、ファクシミリ、複写機、プリンタ複合機(MFP、Multifunction Peripheral)等でもよい。なお、搬送される媒体は、原稿でなく印刷対象物等でもよく、媒体搬送装置100はプリンタ等でもよい。
【0013】
媒体搬送装置100は、下側筐体101、上側筐体102、載置台103及び排出台104等を備える。
【0014】
上側筐体102は、媒体搬送装置100の上面を覆う位置に配置され、媒体つまり時、媒体搬送装置100内部の清掃時等に開閉可能なようにヒンジにより下側筐体101に係合している。
【0015】
載置台103は、搬送される媒体を載置可能に下側筐体101に係合している。排出台104は、排出された媒体を保持可能に下側筐体101に係合している。
【0016】
図2は、媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【0017】
媒体搬送装置100内部の搬送経路は、給送ローラ111、ブレーキローラ112、センサ113、第1搬送ローラ114、第2搬送ローラ115、第1撮像装置116a、第2撮像装置116b、第3搬送ローラ117及び第4搬送ローラ118等を有している。なお、各ローラの数は一つに限定されず、各ローラの数はそれぞれ複数でもよい。図2において矢印A1は媒体搬送方向を示す。以下では、上流とは媒体搬送方向A1の上流のことをいい、下流とは媒体搬送方向A1の下流のことをいう。
【0018】
下側筐体101の上面は、媒体の搬送路の下面を形成する第1下側ガイド121、第2下側ガイド122及び第3下側ガイド123を形成する。一方、上側筐体102の下面は、媒体の搬送路の上面を形成する第1上側ガイド124、第2上側ガイド125及び第3上側ガイド126を形成する。
【0019】
第1下側ガイド121は、下側ガイドの一例であり、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115に対して媒体搬送方向A1の上流側に配置され、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115に媒体を案内する。第2下側ガイド122は、媒体搬送方向A1において第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115に対応する領域を含み、第1下側ガイド121に対して下流側且つ第1撮像装置116a及び第2撮像装置116bに対して上流側に配置される。第2下側ガイド122は、第1撮像装置116a及び第2撮像装置116bに媒体を案内する。第3下側ガイド123は、第1撮像装置116a及び第2撮像装置116bに対して下流側に配置され、排出台104に媒体を案内する。第1下側ガイド121、第2下側ガイド122及び第3下側ガイド123は、それぞれ別個の部材で形成されている。なお、第1下側ガイド121、第2下側ガイド122及び第3下側ガイド123は、単一の部材で形成されてもよい。
【0020】
第1上側ガイド124は、上側ガイドの一例であり、第1下側ガイド121に対向する位置に配置され、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115に媒体を案内する。第2上側ガイド125は、第2下側ガイド122に対向する位置に配置され、第1撮像装置116a及び第2撮像装置116bに媒体を案内する。第3上側ガイド126は、第3下側ガイド123に対向する位置に配置され、排出台104に媒体を案内する。第1上側ガイド124、第2上側ガイド125及び第3上側ガイド126は、それぞれ別個の部材で形成されている。なお、第1上側ガイド124、第2上側ガイド125及び第3上側ガイド126は、単一の部材で形成されてもよい。
【0021】
給送ローラ111は、下側筐体101に設けられ、載置台103に載置された媒体を下側から順に給送する。ブレーキローラ112は、上側筐体102に設けられ、給送ローラ111と対向して配置される。
【0022】
センサ113は、媒体搬送方向A1において給送ローラ111及びブレーキローラ112より下流側且つ第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115より上流側に配置される。センサ113は、その位置に媒体が存在するか否かを検出し、給送ローラ111及びブレーキローラ112と第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115との間を通過する媒体を検知する。センサ113は、媒体の搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器と、搬送路を挟んで発光器及び受光器と対向する位置に設けられたミラー等の反射部材とを含む。発光器は、搬送路に向けて光を照射する。一方、受光器は、発光器により照射され、反射部材により反射された光を受光し、受光した光の強度に応じた電気信号である媒体信号を生成して出力する。センサ113の位置に媒体が存在する場合、発光器により照射された光はその媒体により遮光されるため、センサ113の位置に媒体が存在する状態と存在しない状態とで媒体信号の信号値は変化する。なお、発光器及び受光器は、搬送路を挟んで相互に対向する位置に設けられ、反射部材は省略されてもよい。
【0023】
第1搬送ローラ114は、第1ローラの一例であり、下側筐体101に設けられる。第2搬送ローラ115は、第2ローラの一例であり、上側筐体102に設けられ、第1搬送ローラ114の上方側に対向して配置される。第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115は、給送ローラ111及びブレーキローラ112に対して媒体搬送方向A1の下流側に配置される。第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115は、搬送ローラ対の一例であり、第1搬送ローラ114と第2搬送ローラ115の間で、給送ローラ111及びブレーキローラ112により給送された媒体を下流側に搬送する。
【0024】
第1撮像装置116aは、主走査方向に直線状に配列されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)による撮像素子を有する等倍光学系タイプのCIS(Contact Image Sensor)によるラインセンサを有する。また、第1撮像装置116aは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第1撮像装置116aは、不図示の処理回路からの制御に従って、搬送された媒体の表面を撮像した入力画像を生成して出力する。
【0025】
同様に、第2撮像装置116bは、主走査方向に直線状に配列されたCMOSによる撮像素子を有する等倍光学系タイプのCISによるラインセンサを有する。また、第2撮像装置116bは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第2撮像装置116bは、処理回路からの制御に従って、搬送された媒体の裏面を撮像した入力画像を生成して出力する。
【0026】
なお、媒体搬送装置100は、第1撮像装置116a及び第2撮像装置116bを一方だけ配置し、媒体の片面だけを読み取ってもよい。また、CMOSによる撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサの代わりに、CCD(Charge Coupled Device)による撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサが利用されてもよい。また、CMOS又はCCDによる撮像素子を備える縮小光学系タイプのラインセンサが利用されてもよい。
【0027】
第3搬送ローラ117は、下側筐体101に設けられる。第4搬送ローラ118は、上側筐体102に設けられ、第3搬送ローラ117の上方側に対向して配置される。第3搬送ローラ117及び第4搬送ローラ118は、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115に対して媒体搬送方向A1の下流側に配置される。第3搬送ローラ117及び第4搬送ローラ118は、第3搬送ローラ117と第4搬送ローラ118の間で、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115により搬送された媒体をさらに下流側に搬送する。
【0028】
載置台103に載置された媒体は、給送ローラ111が図2の矢印A2の方向、即ち媒体給送方向に回転することによって、第1下側ガイド121と第1上側ガイド124の間を媒体搬送方向A1に向かって搬送される。ブレーキローラ112は、媒体搬送時、矢印A3の方向、即ち媒体給送方向の反対方向に回転する。給送ローラ111及びブレーキローラ112の働きにより、載置台103に複数の媒体が載置されている場合、載置台103に載置されている媒体のうち給送ローラ111と接触している媒体のみが分離される。これにより、分離された媒体以外の媒体の搬送が制限されるように動作する(重送の防止)。
【0029】
媒体は、第1下側ガイド121と第1上側ガイド124によりガイドされながら、第1搬送ローラ114と第2搬送ローラ115の間に送り込まれる。媒体は、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115がそれぞれ矢印A4及び矢印A5の方向に回転することによって、第2下側ガイド122と第2上側ガイド125によりガイドされながら、第1撮像装置116aと第2撮像装置116bの間に送り込まれる。媒体は、第1撮像装置116a及び第2撮像装置116bにより読み取られる。その後、媒体は、第3搬送ローラ117及び第4搬送ローラ118がそれぞれ矢印A6及び矢印A7の方向に回転することによって、第3下側ガイド123と第3上側ガイド126によりガイドされながら、排出台104上に排出される。
【0030】
図3A及び図3Bは、第1下側ガイド121及び第1上側ガイド124について説明するための模式図である。図3Aは、第1下側ガイド121及び第1上側ガイド124が、初期位置である第1位置に配置された状態を示す模式図である。図3Bは、第1下側ガイド121及び第1上側ガイド124が、それぞれ最も下端側及び上端側に移動した第2位置に配置された状態を示す模式図である。
【0031】
図3A及び図3Bに示すように、上側筐体102と第2搬送ローラ115の回転軸であるシャフトの間には、圧縮コイルばね115aが設けられる。第2搬送ローラ115は、搬送される媒体により上方に移動可能に設けられており、圧縮コイルばね115aは、第2搬送ローラ115に下方に、即ち第1搬送ローラ114側に力が加えられるように設けられている。
【0032】
第1下側ガイド121は、第1移動部121a、第1支持部121b及び凹部121cを含む。第1移動部121aは、移動部の一例であり、可撓性部材で形成されている。第1支持部121bは、支持部の一例であり、下流側の端部において、第1移動部121aの上流側の端部を支持している。凹部121cは、第1移動部121aと対向し且つ第1移動部121aの下方側の位置に設けられる。第1支持部121b及び凹部121cにより、第1移動部121aは、下方(矢印A8の方向)に移動(揺動)可能に設けられている。なお、第1移動部121a及び第1支持部121bは、別個の部材で形成されている。第1移動部121a及び第1支持部121bは、単一の部材で形成されてもよい。
【0033】
第1上側ガイド124は、第2移動部124a及び第2支持部124bを含む。第2移動部124aは、上流側の端部に突起部124cを有し、第2支持部124bは、下流側の端部に凹部を有する。第2移動部124aの突起部124cの先端が第2支持部124bの凹部に係合されることにより、第2支持部124bは、下流側の端部において、第2移動部124aを回転(揺動)可能に支持している。また、第2移動部124aと第2支持部124bの間には、ねじりコイルばね124dが設けられる。ねじりコイルばね124dは、突起部124cの周りに、第2移動部124aに下方(矢印A9の反対方向)に力が加えられるように設けられる。第2移動部124aは、不図示のストッパにより、図3Aに示した第1位置より下方に移動しないように停止されている。第2支持部124b及びねじりコイルばね124dにより、第2移動部124aは、上方(矢印A9の方向)に移動(揺動)可能に設けられている。
【0034】
なお、第2移動部124a及び第2支持部124bは、別個の部材で形成されている。第2移動部124a及び第2支持部124bは、単一の部材で形成されてもよい。また、ねじりコイルばね124dの代わりに、第2移動部124aを下方に押圧する圧縮コイルばね又はゴム部材等が用いられてもよい。
【0035】
図3Aに示すように、第1下側ガイド121及び第1上側ガイド124と直交する高さ方向A10において、第1搬送ローラ114は、第1位置に配置された第1移動部121aに対して上方に突出するように設けられる。これにより、第1下側ガイド121は、媒体を第1搬送ローラ114に確実に接触するように搬送し、第1搬送ローラ114は媒体を適切に搬送させることができる。但し、第1搬送ローラ114の突出量Y1が大きすぎると、媒体の先端が第1搬送ローラ114と略直角に衝突してしまい、媒体のジャムが発生する可能性がある。そのため、第1搬送ローラ114の突出量Y1は、極力小さいことが好ましい。
【0036】
第1搬送ローラ114の突出量Y1は、例えば0.5mm以上且つ1.0mm以下の範囲内に設定される。突出量Y1は、第1位置に配置された第1移動部121aの下流側の端部から、第1搬送ローラ114の上端(第1搬送ローラ114と第2搬送ローラ115のニップ部)までの高さ方向A10の距離である。
【0037】
同様に、高さ方向A10において、第2搬送ローラ115は、第1位置に配置された第2移動部124aに対して下方に突出するように設けられる。これにより、第1上側ガイド124は、媒体が撓んで上方に浮き上がった場合でも、媒体を第1搬送ローラ114と第2搬送ローラ115のニップ部に確実に搬送し、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115は媒体を適切に搬送させることができる。但し、第2搬送ローラ115の突出量X1が大きすぎると、撓んで上方に浮き上がった媒体の先端が第2搬送ローラ115と略直角に衝突してしまい、媒体のジャムが発生する可能性がある。そのため、第2搬送ローラ115の突出量X1は、極力小さいことが好ましい。
【0038】
第2搬送ローラ115の突出量X1は、例えば0.1mm以上且つ1.0mm以下の範囲内に設定される。突出量X1は、第1位置に配置された第2移動部124aの下流側の端部から、第1搬送ローラ114の上端までの高さ方向A10の距離である。
【0039】
一方、図3Bに示すように、高さ方向A10において、第1搬送ローラ114は、第2位置に配置された第1移動部121aに対して上方に、第1移動部121aが第1位置に配置された場合より大きく突出するように設けられる。プラスチック製のカード又はパスポートのように厚みのある媒体が搬送される場合に、媒体と第1搬送ローラ114が接触する面積が小さすぎると、第1搬送ローラ114による媒体の搬送力が小さくなり、媒体がスリップして良好に搬送されない可能性がある。したがって、第2位置に配置された第1移動部121aに対する第1搬送ローラ114の突出量Y2は、ある程度大きいことが好ましい。但し、第1搬送ローラ114の突出量Y2が大きすぎると、媒体の先端が第1搬送ローラ114と略直角に衝突してしまい、媒体のジャムが発生する可能性がある。
【0040】
第1搬送ローラ114の突出量Y2は、例えば媒体搬送装置100がサポートする媒体の最大厚さの1/3以上且つ第1搬送ローラ114のローラ径の1/2以下の範囲内に設定される。突出量Y2は、より好ましくは、媒体搬送装置100がサポートする媒体の最大厚さの1/2以上に設定される。例えば媒体搬送装置100がサポートする媒体の最大厚さが7mmであり、第1搬送ローラ114のローラ径が16mmである場合、突出量Y2は2.3mm以上且つ8mm以下の範囲内(より好ましくは3.5mm)に設定される。突出量Y2は、第2位置に配置された第1移動部121aの下流側の端部から、第1搬送ローラ114の上端までの高さ方向A10の距離である。即ち、突出量Y1及び突出量Y2は、搬送される媒体の下側端部が第1搬送ローラ114に当接する位置から第1搬送ローラ114の上端までの高さ方向A10の距離である。
【0041】
また、高さ方向A10において、第2搬送ローラ115は、第2位置に配置された第2移動部124aに対して下方に、第2移動部124aが第1位置に配置された場合より大きく突出するように設けられる。プラスチック製のカード又はパスポートのように厚みのある媒体が搬送される場合に、媒体と第2搬送ローラ115が接触する面積が小さすぎると、第2搬送ローラ115による媒体の搬送力が小さくなり、媒体がスリップして良好に搬送されない可能性がある。したがって、第2位置に配置された第2移動部124aに対する第2搬送ローラ115の突出量X2は、ある程度大きいことが好ましい。但し、第2搬送ローラ115の突出量X2が大きすぎると、媒体の先端が第2搬送ローラ115と略直角に衝突してしまい、媒体のジャムが発生する可能性がある。
【0042】
第2搬送ローラ115の突出量X2は、例えば媒体搬送装置100がサポートする媒体の最大厚さ以上且つその最大厚さの3/2以下の範囲内に設定される。また、突出量X2は、第2搬送ローラ115のローラ径の2/3以下に設定されることが好ましい。例えば媒体搬送装置100がサポートする媒体の最大厚さが7mmである場合、突出量X2は7mm以上且つ10.5mm以下の範囲内(例えば10mm)に設定される。突出量X2は、第2位置に配置された第2移動部124aの下流側の端部から、第1搬送ローラ114の上端までの高さ方向A10の距離である。即ち、突出量X1及び突出量X2は、第1上側ガイド124によってガイドされる媒体の上側端部が第2搬送ローラ115に当接する位置から第1搬送ローラ114の上端までの高さ方向A10の距離である。
【0043】
第2位置に配置された第1移動部121aと第2移動部124aの間の高さ方向A10の距離Hは、突出量Y2と突出量X2の合計となり、9.3mm以上且つ22mm以下の範囲内(より好ましくは13.5mm)に設定される。
【0044】
このように、媒体搬送装置100では、第1上側ガイド124(第2移動部124a)が、媒体の搬送に応じて上方に移動可能に配置され、且つ、第1下側ガイド121(第1移動部121a)が、媒体の搬送に応じて下方に移動可能に配置される。これによって、第1上側ガイド124と第1下側ガイド121の間の間隔が媒体に応じて変更可能である。また、第1上側ガイド124と第1下側ガイド121の間の間隔が変更されることによって、媒体の下側端部が第1搬送ローラ114に当接する位置から第1搬送ローラ114の上端までの距離(突出量Y1及び突出量Y2)が変更されるように構成されている。
【0045】
図4は、第1移動部121aについて説明するための模式図である。図4は、上側筐体102を取り外した状態で下側筐体101を上方から見た模式図である。
【0046】
図4に示すように、第1下側ガイド121は、媒体搬送方向A1において、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115の上流側に配置される。第1支持部121bは、媒体搬送方向A1において、給送ローラ111及びブレーキローラ112の下流側に形成される。第1移動部121aは、媒体搬送方向A1において、第1支持部121bと第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115との間に配置される。
【0047】
また、第1下側ガイド121は、媒体搬送方向と直交する幅方向A11において、媒体搬送路の両端にわたって形成される。第1移動部121aは、幅方向A11において、媒体搬送路の略中央部に配置される。一般に、プラスチック製のカード又はパスポートのように、媒体搬送装置で搬送される厚みのある媒体の幅方向A11の大きさは、A4用紙のような一般に使用される用紙の幅方向A11の大きさと比較して小さい。第1移動部121aは、媒体搬送路の両端にわたるのでなく、中央部のみに配置されることにより、厚みのある媒体が搬送された場合には移動しつつ、一般に使用される用紙が搬送される場合には移動しない。これにより、媒体搬送装置100は、一般に使用される用紙が搬送される場合に、媒体のジャムが発生することを抑制することができる。
【0048】
また、第1移動部121aには、幅方向A11において、両端のそれぞれから所定距離の位置に、二つのスリット121dが形成される。これにより、第1移動部121aは、厚みのある媒体が通過する際に、より撓みやすくなり、厚みのある媒体を良好に搬送させることができる。特に、第1移動部121aは、二つのスリット121dの間を媒体が通過する際に、より撓みやすくなる。したがって、二つのスリット121dの間の距離は、プラスチック製のカード又はパスポートの幅方向A11の長さにマージンを加えた長さに設定されることが好ましい。
【0049】
また、図4に示す例では、センサ113が三つ設けられている。媒体搬送装置100は、媒体がセンサ113を通過したタイミングに従って、媒体のジャムが発生しているか否かを判定する。また、媒体搬送装置100は、媒体が三つのセンサ113を通過した各タイミングを比較することにより、媒体のスキューが発生しているか否かを判定する。第1移動部121aには、各センサ113の発光器113a及び受光器113bと対向する位置に、開口部が設けられている。これにより、各センサ113は、媒体を適切に検出することができる。
【0050】
図5A図5B図6A図6Bは、媒体搬送時の第1移動部121a及び第2移動部124aの動作について説明するための模式図である。図5Aは、媒体として用紙Pが搬送されたときの第1移動部121a及び第2移動部124aを示す図である。図5Bは、媒体として用紙Pが搬送され且つ用紙Pが上方に撓んで浮き上がったときの第1移動部121a及び第2移動部124aを示す図である。図6Aは、媒体としてプラスチック製のカードCが搬送されたときの第1移動部121a及び第2移動部124aを示す図である。図6Bは、媒体としてプラスチック製のカードCが搬送され且つカードCが給送ローラ111及びブレーキローラ112のニップ部まで搬送されたときの第1移動部121a及び第2移動部124aを示す図である。
【0051】
図5Aに示すように、媒体として用紙Pが搬送された場合、第1移動部121a及び第2移動部124aは、第1位置から移動しない。これにより、第1移動部121aは、媒体を第1搬送ローラ114に接触させて第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115のニップ部に案内する。第1搬送ローラ114の突出量Y1は十分に小さいため、搬送される媒体が第1搬送ローラ114と略直角に衝突してジャムが発生する可能性は低い。
【0052】
図5Bに示すように、媒体として用紙Pが搬送され且つ用紙Pが上方に撓んで浮き上がった場合、第1移動部121a及び第2移動部124aは、第1位置から移動しない。これにより、第2移動部124aは、上方に浮き上がった媒体を第2搬送ローラ115又は第1搬送ローラ114に接触させて、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115のニップ部に案内する。第2搬送ローラ115の突出量X1は十分に小さいため、搬送される媒体が第2搬送ローラ115と略直角に衝突してジャムが発生する可能性は低い。
【0053】
図6Aに示すように、媒体としてカードCが搬送された場合、第1移動部121aは、カードCの重量により、第1位置から下方に移動する。これにより、第1移動部121aは、媒体と第1搬送ローラ114が接触する面積が十分に大きくなるように、媒体を第1搬送ローラ114に案内する。これにより、第1搬送ローラ114と媒体の間の摩擦力が大きくなり、第1搬送ローラ114は十分な搬送力で媒体を搬送させることができる。また、第1移動部121aが下方に移動することより、カードCは第2搬送ローラ115に対して下方側から接触する。これにより、第2搬送ローラ115は、カードCによって、より良好に押し上げられる。
【0054】
図6Bに示すように、第1搬送ローラ114によって搬送されたカードCの上部が第2移動部124aに接触すると、第2移動部124aは、カードCの厚さにより押し上げられて、第1位置から上方に移動する。これにより、第2移動部124aは、媒体と第2搬送ローラ115が接触する面積が十分に大きくなるように、媒体を第2搬送ローラ115に案内する。また、第2移動部124aが、上方に移動することにより、第1移動部121a及び第2移動部124aによってカードCが押圧されるように挟まれて、カードCと第2移動部124aの間の摩擦力が大きくなりすぎることが抑制される。これにより、第2搬送ローラ115と媒体の間の摩擦力が大きくなり且つ媒体と第2移動部124aの間の摩擦力が小さくなるため、媒体は良好に搬送される。
【0055】
図7Aは、媒体の搬送力と搬送負荷の関係について説明するための模式図である。
【0056】
図7Aに示すように、媒体Mには、給送ローラ111及びブレーキローラ112と媒体Mとの間の摩擦力と、ブレーキローラ112を給送ローラ111側に押圧する圧縮コイルばね112aによる押圧力とに応じた第1搬送力F1が媒体搬送方向A1に加えられる。また、媒体Mには、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115と媒体Mとの間の摩擦力と、第2搬送ローラ115を第1搬送ローラ114側に押圧する圧縮コイルばね115aによる押圧力とに応じた第2搬送力F2が媒体搬送方向A1に加えられる。
【0057】
一方、媒体Mには、ブレーキローラ112が媒体給送方向の逆方向A3に回転することにより媒体を分離する力に応じた第1負荷L1が媒体搬送方向A1の逆方向に加えられる。また、媒体Mには、第1下側ガイド121及び第1上側ガイド124が媒体Mと接触することにより発生する摩擦力に応じた第2負荷L2が媒体搬送方向A1の逆方向に加えられる。また、媒体Mには、第2搬送ローラ115を上方に押し上げる際に受ける第3負荷L3が媒体搬送方向A1の逆方向に加えられる。
【0058】
第1搬送力F1及び第2搬送力F2の合計が、第1負荷L1、第2負荷L2及び第3負荷L3の合計より大きい場合、媒体は媒体搬送方向A1に搬送される。但し、第1搬送力F1に対して第2搬送力F2が十分に小さい場合、又は、第1搬送力F1に対して第2負荷L2及び/又は第3負荷L3が十分に大きい場合、媒体Mは座屈し、媒体のジャムが発生する可能性がある。
【0059】
上記したように、第1移動部121aは媒体Mの重量により下方に移動し、第2移動部124aは媒体Mの厚さにより上方に移動する。そのため、所定の重量及び厚さを有する媒体が搬送される場合、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115と媒体Mとが接触する面積が大きくなり、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115と媒体Mとの間の摩擦力に応じた第2搬送力F2は大きくなる。
【0060】
また、その場合、第1移動部121a及び第2移動部124aによって媒体Mが押圧される力が小さくなり、第1下側ガイド121及び第1上側ガイド124が媒体Mと接触することにより発生する摩擦力に応じた第2負荷L2は小さくなる。
【0061】
また、媒体Mは、第2搬送ローラ115に側方から接触して第2搬送ローラ115を押し上げるが、媒体Mが第2搬送ローラ115に接触する位置が低い程、媒体Mは小さい力で第2搬送ローラ115を押し上げることができる。第1移動部121aが媒体Mの重量により下方に移動することより、媒体Mは第2搬送ローラ115をより下方から押し上げることができ、第2搬送ローラ115を上方に押し上げる際に受ける第3負荷L3は小さくなる。
【0062】
したがって、媒体搬送装置100は、厚みのある媒体によって第1移動部121a及び第2移動部124aを移動可能に設けることにより、厚みのある媒体を良好に搬送させることが可能となる。
【0063】
図7Bは、ローラにより媒体にかかる力と、ローラの外径との関係を示すグラフ700である。
【0064】
図7Bに示すグラフ700の横軸はローラの外径の大きさを示し、縦軸は第1負荷L1、第2負荷L2及び第3負荷L3の合計に対する第1搬送力F1及び第2搬送力F2の合計の比を示す。グラフ701は、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115の両方を回転させる場合の比を示し、グラフ702は、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115の内の一方のみを回転させる場合の比を示す。グラフ700において、比が閾値T以上である場合、媒体は安定的に搬送されるが、比が閾値T未満である場合、媒体は安定的に搬送されない可能性がある。したがって、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115の両方を回転させる場合、各搬送ローラの外径はD1以上とする必要がある。また、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115の内の一方のみを回転させる場合、各搬送ローラの外径はD2以上とする必要がある。
【0065】
即ち、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115の外径を大きくすることにより、負荷に対する搬送力の比を増大させることが可能となり、媒体を良好に搬送させることが可能となる。しかしながら、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115の外径を大きくすると、媒体搬送装置100のサイズ及び重量が大きくなる。媒体搬送装置100は、厚みのある媒体によって第1移動部121a及び第2移動部124aを移動可能に設けることにより、媒体搬送装置100のサイズ及び重量を増大させることなく、媒体を良好に搬送させることが可能となる。
【0066】
なお、ローラの外径だけでなく、ローラの材質(ゴム硬度又はローラと媒体の間の摩擦力等)によっても、そのローラによる負荷に対する搬送力の比は変化する。しかしながら、ローラの材質を限定すると、媒体搬送装置100の装置コストが大きくなる可能性がある。媒体搬送装置100は、厚みのある媒体によって第1移動部121a及び第2移動部124aを移動可能に設けることにより、ローラの材質が最適でない場合でも、媒体を良好に搬送させることが可能となる。
【0067】
以上詳述したように、媒体搬送装置100は、搬送路の上下に設けられたガイド対を上下方向に移動させて搬送ローラの突出量を制御する。これにより、媒体搬送装置100は、厚みのある媒体が搬送される場合には十分な搬送力を得られるようにしつつ、薄紙が搬送される場合にはジャムが発生しないように適切にガイドする。したがって、媒体搬送装置100は、それぞれ異なる厚さを有する複数の媒体を適切に搬送することが可能となった。
【0068】
また、利用者は、厚みのある媒体を搬送させる場合に、その媒体を専用シート等に格納して搬送させる必要がなくなり、媒体搬送装置100は、利用者の利便性を向上させることが可能となった。
【0069】
図8は、他の実施形態に係る媒体搬送装置における第1下側ガイド221について説明するための模式図である。
【0070】
図8に示すように、本実施形態に係る媒体搬送装置は、第1下側ガイド121の代わりに、第1下側ガイド221を有する。第1下側ガイド221は、下側ガイドの一例であり、第1移動部221a、第1支持部221b及び凹部221cを含む。第1移動部221aは、移動部の一例であり、樹脂部材又は金属部材で形成され、上流側の端部に突起部221dを有する。第1支持部221bは、支持部の一例であり、下流側の端部に凹部を有する。第1移動部221aの突起部221dの先端が第1支持部221bの凹部に係合されることにより、第1支持部221bは、下流側の端部において、第1移動部221aを回転(揺動)可能に支持する。
【0071】
また、第1移動部221aと第1支持部221bの間には、ねじりコイルばね221eが設けられる。ねじりコイルばね221eは、突起部221dの周りに、第1移動部221aに上方(矢印A8の反対方向)に力が加えられるように設けられる。ねじりコイルばね221eは、押圧部材の一例であり、第1下側ガイド221を上方に押圧する。第1移動部221aは、不図示のストッパにより、図8に示した第1位置より上方に移動しないように停止されている。また、凹部221cは、第1移動部221aと対向し且つ第1移動部221aの下方側の位置に設けられる。第1支持部221b、凹部221c及びねじりコイルばね221eにより、第1移動部221aは、下方(矢印A8の方向)に移動(揺動)可能に設けられている。
【0072】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、押圧部材を用いて第1移動部221aを移動可能に設ける場合も、それぞれ異なる厚さを有する複数の媒体を適切に搬送することが可能となった。
【0073】
なお、押圧部材として、ねじりコイルばね221eの代わりに、圧縮コイルばね又はゴム部材等が用いられてもよい。その場合、圧縮コイルばね又はゴム部材は、第1移動部221aと凹部221cの間に、第1移動部221aを上方に押圧するように設けられる。また、押圧部材が省略され、第1移動部自体が、ゴム等の弾性部材で形成されてもよい。
【0074】
図9A及び図9Bは、さらに他の実施形態に係る媒体搬送装置における第2搬送ローラ215について説明するための模式図である。
【0075】
図9A及び図9Bに示すように、本実施形態に係る媒体搬送装置は、第2搬送ローラ115の代わりに、第2搬送ローラ215を有する。第2搬送ローラ215は、第1搬送ローラ114に対して媒体搬送方向A1の下流側に(第1撮像装置116a及び第2撮像装置116b側に)ずらして配置される。
【0076】
本実施形態の媒体搬送装置における突出量Y1、突出量Y2及び突出量X1は、それぞれ媒体搬送装置100における突出量Y1、突出量Y2及び突出量X1と同一の範囲内に設定される。なお、本実施形態の媒体搬送装置における突出量X1は、媒体搬送装置100における突出量X1と同様に、第1位置に配置された第2移動部124aの下流側の端部から、第1搬送ローラ114の上端までの高さ方向A10の距離である。
【0077】
一方、本実施形態の媒体搬送装置における突出量X2’は、媒体搬送装置100における突出量X2より小さい値に設定される。なお、本実施形態の媒体搬送装置における突出量X2’は、媒体搬送装置100における突出量X2と同様に、第2位置に配置された第2移動部124aの下流側の端部から、第1搬送ローラ114の上端までの高さ方向A10の距離である。例えば第2搬送ローラ215が第1搬送ローラ114に対して1mmずらして配置される場合、突出量X2’は、媒体搬送装置がサポートする媒体の最大厚さの2/3以上且つその最大厚さの4/3以下の範囲内に設定される。また、突出量X2’は、第2搬送ローラ215のローラ径の2/3以下に設定されることが好ましい。例えば媒体搬送装置100がサポートする媒体の最大厚さが7mmである場合、突出量X2’は4.7mm以上且つ9.3mm以下の範囲内(例えば7mm)に設定される。
【0078】
第2位置に配置された第1移動部121aと第2移動部124aの間の高さ方向A10の距離H’は、突出量Y2と突出量X2’の合計となり、7.0mm以上且つ17.3mm以下の範囲内(より好ましくは10.5mm)に設定される。
【0079】
第2搬送ローラ215が第1搬送ローラ114に対して媒体搬送方向A1の下流側にずらして配置される場合、媒体は第1搬送ローラ114に乗り上げるように搬送されるため、媒体と第1搬送ローラ114が接触する面積は増大する。そのため、第1搬送ローラ114と媒体の間の摩擦力が大きくなり、第1搬送ローラ114は十分な搬送力で媒体を搬送させることができる。したがって、媒体搬送装置は、突出量X2’及び距離H’が突出量X2及び距離Hより小さくても、媒体を良好に搬送することができる。
【0080】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、第2搬送ローラ215が第1搬送ローラ114に対して媒体搬送方向A1の下流側にずらして配置される場合も、それぞれ異なる厚さを有する複数の媒体を適切に搬送することが可能となった。
【符号の説明】
【0081】
100 媒体搬送装置、114 第1搬送ローラ、115 第2搬送ローラ、121 第1下側ガイド、121a 第1移動部、121b 第1支持部、124 第1上側ガイド、221e ねじりコイルばね
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B