(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】血液中のユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1レベルを測定するための、改善された方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240315BHJP
C12Q 1/34 20060101ALI20240315BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240315BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20240315BHJP
【FI】
G01N33/68
C12Q1/34
C12N15/12 ZNA
C12N15/55
(21)【出願番号】P 2019571429
(86)(22)【出願日】2018-07-02
(86)【国際出願番号】 US2018040612
(87)【国際公開番号】W WO2019010131
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-07-01
(32)【優先日】2017-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391008788
【氏名又は名称】アボット・ラボラトリーズ
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベリゲーレ,ガンガマーニ・エス
(72)【発明者】
【氏名】ブレナン,メリッサ・ビー
(72)【発明者】
【氏名】グリースハーバー,ジェシカ
(72)【発明者】
【氏名】パチェンティ,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ダトワイラー,ソール・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ランプ,ジョン
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-526764(JP,A)
【文献】国際公開第2011/093459(WO,A1)
【文献】特表2014-532179(JP,A)
【文献】特表2011-511301(JP,A)
【文献】KIISKI HEIKKI,INCREASED PLASMA UCH-L1 AFTER ANEURYSMAL SUBARACHNOID HEMORRHAGE IS ASSOCIATED WITH UNFAVORABLE NEUROLOGICAL OUTCOME,JOURNAL OF NEUROLOGICAL SCIENCES,NL,ELSEVIER SCIENTIFIC PUBLISHING CO,2015年12月29日,VOL:361,PAGE(S):144 - 149,http://dx.doi.org/10.1016/j.jns.2015.12.046
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00-15/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全血試料が対象から得られた時点から、前記試料に対してアッセイを実施する前までの間の、ユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)レベルの増大(increase)又は上昇(rise)を回避又は防止する方法であって、前記アッセイを実施する前に、前記試料の保存から生じるUCH-L1レベルの増大(increase)又は上昇(rise)を回避するために、前記試料が前記対象から得られた後、4時間、6時間又は8時間以内に、前記試料を処理するステップを含み、前記試料を処理するステップが、
a)前記試料中の血液細胞から、血漿を分離することと;その後、前記試料中のUCH-L1の量を測定する、前記血漿を使用するアッセイを実施すること、又は
b)前記試料中で発生する任意の凝血塊から、血清を分離することと;その後、前記試料中のUCH-L1の量を測定する、前記血清を使用するアッセイを実施すること
を含み、
そのことにより、8時間を超える前記試料の保存から生じるUCH-L1レベルの増大(increase)又は上昇(rise)を回避又は防止できる、方法。
【請求項2】
前記試料が、
a)ヘパリン及びEDTAからなる群から選択される抗凝固剤を含む容器、又は
b)血清回収チューブ
を使用して、前記対象から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アッセイが、イムノアッセイ、化学分析、SDS PAGE及びウェスタンブロット解析、電気泳動解析、タンパク質アッセイ、競合的結合アッセイ、機能的タンパク質アッセイ、クロマトグラフィー、並びに分光法からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アッセイが、臨床化学フォーマットにおいて利用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アッセイが、
a)前記全血試料、血漿又は血清を、同時に、又は任意の順序において逐次的に、
(1)UCH-L1上又はUCH-L1断片上のエピトープに結合して、捕捉抗体-UCH-L1抗原複合体を形成する、少なくとも1つの捕捉抗体、及び
(2)検出可能な標識を含み、前記捕捉抗体が結合していないUCH-L1上のエピトープに結合して、UCH-L1抗原-検出抗体複合体を形成する、少なくとも1つの検出抗体
と接触させることにより、捕捉抗体-UCH-L1抗原-検出抗体複合体が形成されること、並びに
b)UCH-L1の、前記全血試料、血漿又は血清中量又は前記全血試料、血漿又は血清中濃度を、前記捕捉抗体-UCH-L1抗原-検出抗体複合体内の前記検出可能な標識により発生したシグナルに基づき測定すること
を含むイムノアッセイである、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記試料が前記対象から得られた時点と、前記アッセイが実施される時点との間の、ある時間にわたり、前記試料が、室温において維持される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料が前記対象から得られた時点と、前記アッセイが実施される時点との間の、ある時間にわたり、前記試料が、2℃~8℃の温度において維持される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記試料が前記対象から得られた時点と、前記
アッセイが実施される時点との間の時間において、前記試料が混合されない、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象に由来する、前記試料中の前記UCH-L1の量が、外傷性脳損傷の尺度として評価され、前記対象が、頭部への損傷を負った可能性がある、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願情報
本出願は、その内容が、参照により本明細書に組み込まれた、2017年7月3日に出願された、米国特許第62/528,187号に対する優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、試料を対象から得た後、約8時間以内に(すなわち、約8時間で又はそれより短い時間で)、ヒト対象から採取された血液試料を処理し、この中の、ユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)レベルを測定して検出する、改善された方法に関する。UCH-L1は、外傷性脳損傷(TBI)についての早期バイオマーカーであり;したがって、血液中のUCH-L1を評価するための、改善された方法は、頭部への損傷を負った、又は負った可能性があるヒト対象の診断及び査定の一助となりうる。
【背景技術】
【0003】
米国だけにおいても、毎年500万例を超える軽度の外傷性脳損傷(TBI)が生じている。身体検査及び問診などの臨床ツールは、主観的であり、感度及び特異度を欠く。コンピュータ断層撮影(CT)スキャン又は磁気共鳴イメージング(MRI)は、高価であり、世界の全ての地域において利用可能であるわけではなく、臨床ツール及び/又は問診が、このようなイメージングを実施する必要を示唆する場合に限りルーチン的になされる。したがって、TBIの診断及び査定には、高い偽陰性率を伴う。医師及び患者は、この状態を正確に査定して、適切なトリアージ及び回復を促進するのに、客観的で、信頼できる情報を必要とする。
【0004】
いくつかの場合、ユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、グリア原線維性酸性タンパク質(GFAP)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)及びS-100βを含む、TBIについてのバイオマーカーが同定されている。バイオマーカーデータの使用は、臨床医及び患者により求められている、客観的かつ信頼できる診断情報をもたらすために有望であるが、急性ケア状況における、患者の査定及び管理の一助となるTBIバイオマーカーの使用に利用可能なデータは限定的である。
【0005】
さらに、患者から試料を得た後において、バイオマーカーの評価によりもたらされた特異性及び精度が、確立されかつ維持されうるように、患者試料を得て処理するために最も有利な臨床パラメータ及び条件を決定することは、困難であった。例えば、当技術分野のポイントオブケア検査を含む血液検査の領域において、解析前の誤差が、極めて高頻度であることは周知である(その内容が、参照により本明細書に組み込まれた、Heyerら、Effectiveness of practices to reduce blood sample hemolysis in EDs:A laboratory medicine best practices systematic review and meta-analysis、Clin.Biochem.、45(0):1012~1032(2012年9月)を参照されたい)。残念ながら、検査誤差のうちの約60~80%は、解析フェーズの外において生じ、極めてしばしば、検査室の外(例えば、すなわち、時に解析前フェーズ及び解析後フェーズ)において生じる。さらに、最も誤差を生じやすいのは、解析前フェーズである。最も一般的な解析前誤差は以下を含む:
1.不正確な時間におけるサンプリングなどの、患者の調整誤差。多くの解析物及び血液パラメータは、1日、1カ月なお又は1シーズンにおいて、時間と共に変動することが公知であるため、サンプリング時間は、重要である;
2.毛細管サンプリング時の「ミルキング」及びシリンジを使用する経静脈サンプリングなどのサンプリング法の誤差。穿刺部位周囲の過剰なマッサージ及び圧迫(一般に、「ミルキング」と呼ばれる)は、毛細管の血流が、チューブを充填するのに必要な血液容量を得るために十分ではない場合に、なされることが多い。過剰なマッサージは、組織液による血液試料の希釈に起因する一部の解析濃度の不当な低下(10%以下)及び試料溶血に起因するカリウム濃度の不当な上昇を、引き起こしうる。シリンジの使用は、一般に、溶血及び凝血塊の形成の危険性を上昇させる;
3.回収チューブの充填不足又は不適正な充填。添加物を伴う回収チューブが使用される場合、サンプリング時に、真空がなくなり血流が止まるまで、チューブに充填するように注意しなければならない。適正な血液対添加物比を確保することが、重要である。チューブの充填不足は、最も一般的な解析前誤差のうちの1つである。チューブに完全に充填した場合、添加物(例えば、抗凝固剤)の、チューブ内数量は、血液と抗凝固剤との適正な比を確保する数量である;
4.血液の溶解により引き起こされる溶血。溶血は、最も高頻度な解析前誤差である。溶血はまた、中央検査室による試料の棄却の、最も一般的な原因でもある。溶血例は、溶解した血液細胞からの、血液細胞成分の放出に起因して、多くのアッセイに干渉する。血液試料が溶血すると、新たな臨床試料が必要とされることが多い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Heyerら、Effectiveness of practices to reduce blood sample hemolysis in EDs:A laboratory medicine best practices systematic review and meta-analysis、Clin.Biochem.、45(0):1012~1032(2012年9月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、試料を得て処理する改善された方法であって、解析前誤差を低減することにより、とりわけ急性ケアの文脈において、患者を診断及び処置するのに使用されうる、TBIのバイオマーカーのより正確な測定を可能とする方法が、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本開示は、対象から得られた血液試料中のユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)の量を測定する方法の改善を、対象とする。一実施形態において、本方法は、試料の保存から生じるUCH-L1レベルの上昇を回避するために、試料が対象から得られた後、約8時間以内に(又は約8時間以下のうちに)、対象に由来する試料を処理するステップを含む。例えば、一態様において、試料は、試料が対象から得られた後、約0時間~約6時間以内に処理される。例えば、別の態様において、試料は、試料が対象から得られた後、約0時間~約2時間以内に処理される。さらに別の例において、試料は、試料が対象から得られた後、約0~約1時間の時間のうちに処理される。なお、さらに別の例において、試料は、試料が対象から得られた後、約1時間~約8時間以内に処理される。なお、さらに別の例において、試料は、試料が対象から得られた後、約1時間~約6時間以内に処理される。なお、さらに別の例において、試料は、試料が対象から得られた後、約1時間~約2時間以内に処理される。なお、さらに別の例において、試料は、試料が対象から得られた後、約8時間以下のうちに処理される。なお、さらに別の例において、試料は、試料が対象から得られた後、約6時間以下のうちに処理される。なお、さらに別の例において、試料は、試料が対象から得られた後、約4時間以下のうちに処理される。なお、さらに別の例において、試料は、試料が対象から得られた後、約2時間以下のうちに処理される。なお、さらに別の例において、試料は、試料が対象から得られた後、約1時間以下のうちに処理される。
【0009】
別の態様において、上記された方法は、その後、UCH-L1の、試料中量を測定するアッセイ又は検査を実施するステップをさらに含む。
【0010】
さらに別の態様において、上記された方法は、その後、試料中のUCH-L1を検出するアッセイ又は検査を実施するステップをさらに含む。
【0011】
上記された方法の、さらに別の態様において、試料を処理するステップは、試料中の血液細胞から血漿を分離することと、その後、UCH-L1の試料中量を測定する血漿を使用するアッセイを実施することとを含む。
【0012】
上記された方法の、さらに別の態様において、試料は、ヘパリン及びEDTAからなる群から選択される抗凝固剤を含む容器を使用して、対象から得られる。
【0013】
上記された方法の、さらに別の態様において、試料を処理するステップは、試料中の任意の凝血塊から血清を分離することと、その後、UCH-L1の試料中量を測定する血清を使用するアッセイを実施することとを含む。
【0014】
上記された方法において、試料は、血清回収チューブを使用して回収される。
【0015】
上記された方法において、アッセイは、UCH-L1の量が評価されうる、任意の方法(例えば、UCH-L1は、検出及び/又は測定される)を含む。例えば、アッセイは、イムノアッセイ、化学分析、SDS PAGE及びウェスタンブロット解析、電気泳動解析、タンパク質アッセイ、競合的結合アッセイ、機能的タンパク質アッセイ、クロマトグラフィー、並びに分光法からなる群から選択されうる。一態様において、アッセイは、臨床化学フォーマットにおいて利用される。別の態様において、利用されるアッセイは、
a)試料を、同時に、又は任意の順序において逐次的に、
(1)UCH-L1上又はUCH-L1断片上のエピトープに結合して、捕捉抗体-UCH-L1抗原複合体を形成する、少なくとも1つの捕捉抗体、及び
(2)検出可能な標識を含み、捕捉抗体が結合していないUCH-L1上のエピトープに結合して、UCH-L1抗原-検出抗体複合体を形成する、少なくとも1つの検出抗体
と接触させることにより、捕捉抗体-UCH-L1抗原-検出抗体複合体が形成されること、並びに
b)UCH-L1の、試料中量又は試料中濃度を、捕捉抗体-UCH-L1抗原-検出抗体複合体内の前記検出可能な標識により発生したシグナルに基づき測定すること
を含むイムノアッセイである。
【0016】
上記された方法の、さらに別の態様において、試料が対象から得られた時点とアッセイが実施される時点との間の、ある時間にわたり、試料は室温において維持される。
【0017】
上記された方法の、さらに別の態様において、試料が対象から得られた時点とアッセイが実施される時点との間の、ある時間にわたり、試料は約2℃~約8℃の温度において維持される。
【0018】
上記された方法の、さらに別の態様において、試料が対象から得られた時点とアッセイが実施される時点との間の時間において、又はこの時間にわたり、試料は混合されない。
【0019】
上記された方法の、さらに別の態様において、対象に由来する試料中のUCH-L1量は、外傷性脳損傷の尺度として評価され、対象は、頭部への損傷を負った、又は負った可能性がある。
【0020】
別の実施形態において、本発明は、全血試料が対象から得られた時点から、試料に対してアッセイ(例えば、UCH-L1の、試料中量を検出及び/又は測定するアッセイなど)を実施する前までの間の、UCH-L1レベルの増大(increase)すなわち上昇(rise)を回避又は防止する方法を対象とする。具体的に、方法は、偽陽性、誤った結果又は他の間違った結果をもたらしうる、試料が対象から得られた時点からアッセイを実施する前までの間の、試料中のUCH-L1の誤った高レベルを、回避又は防止する。方法は、アッセイを実施する前に試料の保存から生じるUCH-L1レベルの増大(increase)すなわち上昇(rise)を回避するように、試料が対象から得られた後、約8時間以内(例えば、8時間以下のうちなど)に試料を処理するステップを伴う。例えば、一態様において、試料は、試料が対象から得られた後、約0時間~約6時間以内に処理される。例えば、別の態様において、試料は、試料が対象から得られた後、約0時間~約2時間以内に処理される。さらに別の例において、試料は、試料が対象から得られた後、約0~約1時間の時間のうちに処理される。なお、さらに別の例において、試料は、試料が対象から得られた後、約1時間~約8時間以内に処理される。なお、さらに別の例において、試料は、試料が対象から得られた後、約1時間~約6時間以内に処理される。なお、さらに別の例において、試料は、試料が対象から得られた後、約1時間~約2時間以内に処理される。なお、さらに別の例において、試料は、試料が対象から得られた後、約8時間以下のうちに処理される。なお、さらに別の例において、試料は、試料が対象から得られた後、約6時間以下のうちに処理される。なお、さらに別の例において、試料は、試料が対象から得られた後、約4時間以下のうちに処理される。なお、さらに別の例において、試料は、試料が対象から得られた後、約2時間以下のうちに処理される。なお、さらに別の例において、試料は、試料が対象から得られた後、約1時間以下のうちに処理される。
【0021】
別の態様において、上記された方法は、その後、UCH-L1の試料中量を測定するアッセイ又は検査を実施するステップをさらに含む。
【0022】
さらに別の態様において、上記された方法は、その後、試料中のUCH-L1を検出するアッセイ又は検査を実施するステップをさらに含む。
【0023】
上記された方法の、さらに別の態様において、試料を処理するステップは、試料中の血液細胞から血漿を分離することと、その後、UCH-L1の試料中量を測定する血漿を使用するアッセイを実施することとを含む。
【0024】
上記された方法の、さらに別の態様において、試料は、ヘパリン及びEDTAからなる群から選択される抗凝固剤を含む容器を使用して、対象から得られる。
【0025】
上記された方法の、さらに別の態様において、試料を処理するステップは、試料中の任意の凝血塊から血清を分離することと、その後、UCH-L1の試料中量を測定する血清を使用するアッセイを実施することとを含む。
【0026】
上記された方法において、試料は、血清回収チューブを使用して回収される。
【0027】
上記された方法において、アッセイは、UCH-L1の量が評価されうる、任意の方法(例えば、UCH-L1は、検出及び/又は測定される)を含む。例えば、アッセイは、イムノアッセイ、化学分析、SDS PAGE及びウェスタンブロット解析、電気泳動解析、タンパク質アッセイ、競合的結合アッセイ、機能的タンパク質アッセイ、クロマトグラフィー、並びに分光法からなる群から選択されうる。一態様において、アッセイは、臨床化学フォーマットにおいて利用される。別の態様において、利用されるアッセイは、
a)試料を、同時に、又は任意の順序において逐次的に、
(1)UCH-L1上又はUCH-L1断片上のエピトープに結合して、捕捉抗体-UCH-L1抗原複合体を形成する、少なくとも1つの捕捉抗体、及び
(2)検出可能な標識を含み、捕捉抗体が結合していないUCH-L1上のエピトープに結合して、UCH-L1抗原-検出抗体複合体を形成する、少なくとも1つの検出抗体
と接触させることにより、捕捉抗体-UCH-L1抗原-検出抗体複合体が形成されること、並びに
b)UCH-L1の、試料中量又は試料中濃度を、捕捉抗体-UCH-L1抗原-検出抗体複合体内の前記検出可能な標識により発生したシグナルに基づき測定すること
を含むイムノアッセイである。
【0028】
上記された方法の、さらに別の態様において、試料が対象から得られた時点とアッセイが実施される時点との間のある時間にわたり、試料は、室温において維持される。
【0029】
上記された方法の、さらに別の態様において、試料が対象から得られた時点とアッセイが実施される時点との間のある時間にわたり、試料は、約2℃~約8℃の温度において維持される。
【0030】
上記された方法の、さらに別の態様において、試料が対象から得られた時点とアッセイが実施される時点との間の時間において、又はこの時間にわたり、試料は混合されない。
【0031】
上記された方法の、さらに別の態様において、対象に由来する試料中のUCH-L1量は、外傷性脳損傷の尺度として評価され、対象は、頭部への損傷を負った、又は負った可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1A】UCH-L1の、全血試料中レベルについての、代表的な棒グラフを示す図である。
【
図1B】UCH-L1の、全血試料中レベルについての、代表的な棒グラフを示す図である。
【
図2A】UCH-L1の、血漿試料中レベルについての、代表的な棒グラフを示す図である。
【
図2B】UCH-L1の、血漿試料中レベルについての、代表的な棒グラフを示す図である。
【
図3A】ヘパリンリチウム回収チューブを使用して得られた全血試料中の、UCH-L1レベルについての、代表的な棒グラフを示す図である。
【
図3B】EDTA回収チューブを使用して得られた全血試料中の、UCH-L1レベルについての、代表的な棒グラフを示す図である。
【
図4A】室温において、EDTA回収チューブを使用して得られた血漿試料中の、UCH-L1レベルについての、代表的な棒グラフを示す図である。
【
図4B】2~8℃において、EDTA回収チューブを使用して得られた血漿試料中の、UCH-L1レベルについての、代表的な棒グラフを示す図である。
【
図5A】室温において、ヘパリンリチウム回収チューブを使用して得られた血漿試料中の、UCH-L1レベルについての、代表的な棒グラフを示す図である。
【
図5B】2~8℃において、ヘパリンリチウム回収チューブを使用して得られた血漿試料中の、UCH-L1レベルについての、代表的な棒グラフを示す図である。
【
図6A】UCH-L1の、室温の血清試料中レベルについての、代表的な棒グラフを示す図である。
【
図6B】UCH-L1の、2~8℃の血清試料中レベルについての、代表的な棒グラフを示す図である。
【
図7】凝血塊への曝露を伴う血清試料又はこれを伴わない血清試料中の、UCH-L1レベルについての、代表的な棒グラフを示す図である。
【
図8】EDTA回収チューブに由来する血漿をスパイクされた溶血物試料中のヘモグロビン(Hgb)レベルを、UCH-L1レベルと比較する、代表的な折れ線グラフを示す図である。
【
図9】UCH-L1組換え解析物をスパイクされたEDTA回収チューブを使用して得られた全血試料中の、UCH-L1レベルについての、代表的な棒グラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本開示は、試料を対象から得た後約8時間以内又は約8時間以下の時点において、ヒト対象から採取された血液試料を処理し、この中の、ユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)レベルを測定して検出する、改善された方法に関する。本明細書において開示された方法は、頭部への損傷を負ったか又は負った可能性があるヒト対象の診断及び査定の一助となるように、血液中のUCH-L1(一般に、TBIのバイオマーカーであると考えられる)を評価するために有用でありうる。加えて、研究は、血液試料が対象から得られた後最初の24時間にわたり、UCH-L1の血中レベルが不安定となり、この上昇の少なくとも一部は、試料が検査されるか又はアッセイが実施される(例えば、UCH-L1レベルを検出及び/又は測定するように)時点より前に起こるか又は生じる、解析前の処理条件又は因子に起因しうることを、報告している。例えば、溶血を引き起こすある特定の標準的な処理条件が、UCH-L1レベルに対して、ほとんど又は全く影響を及ぼさなかったことが報告されている。しかし、本開示は、驚くべきことに、ある特定の解析前の処理条件及び処理法が、UCH-L1の、全血中レベルの上昇(すなわち、誤った上昇)を引き起こすことにより、その結果として偽陽性をもたらしうることを見出した。このような偽陽性は、UCH-L1を、TBIなどの障害の検出、決定及び/又は評価の一助となるための診断的マーカーとして使用する精度を損ないうる。
【0034】
したがって、本開示は、UCH-L1が、血液試料(例えば、全血又は血漿)中などの試料中において得られ、測定される方式を改善する方法を提示する。具体的に、本開示は、検査又はアッセイを実施する前に対象から得られた血液試料(例えば、全血試料又は血漿試料)中のユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)レベルの増大(increase)すなわち上昇(rise)を回避又は防止する方法を提示する。より具体的には、本明細書において記載された方法は、試料が、対象から得られた時点からアッセイを実施する前までの間の、試料中のUCH-L1の誤った高レベルを回避又は防止する。このような方法は、アッセイを実施する前に試料を保存することから生じる、UCH-L1レベルの増大(increase)すなわち上昇(rise)を回避するように、試料が対象から得られた後約8時間以内に血液試料を処理するステップを伴う。このような方法は、試料中のUCH-L1を評価する(例えば、検出及び/又は測定する)ように、検査又はアッセイが実施されるまで、UCH-L1の、血液試料中レベルを安定化させるのに効果的である。
【0035】
本明細書の本節及び全開示において使用された節の小見出しは、構成上の目的だけのものであり、限定的であることを意図するものではない。
【0036】
1.定義
そうでないことが規定されない限りにおいて、本明細書において使用された、全ての技術用語及び科学用語は、当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。齟齬が生じる場合は、定義を含む本文献に従う。本開示の実施又は試験において、本明細書において記載された方法及び材料と同様又は同等な方法及び材料も使用されうるが、下記において、好ましい方法及び材料について記載される。本明細書において言及された、全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、参照によりそれらの全体において組み込まれる。本明細書において開示された材料、方法及び例は、例示的なものであるに過ぎず、限定を意図するものではない。
【0037】
本明細書において使用された「~を含む(comprise(s))」、「~を含む(include(s))」「~を有すること」、「~を有する」、「~でありうる」、「~を含有する」という用語は、さらなる行為又は構造の可能性を除外しない、オープンエンドな移行句、移行用語又は移行語である。単数形の「ある(a及びan)」及び「その(that)」は、文脈によりそうでないことが明らかに指示されない限りにおいて、複数の指示対象を含む。本開示はまた、明示されているのであれ、そうでないのであれ、本明細書において提示された実施形態又は要素「を含み」、これら「からなり」、これら「から本質的になる」、他の実施形態も想定する。
【0038】
本明細書において、数値範囲を列挙するために、それらの間に介在する、同じ精度を伴う各数が明示的に想定される。例えば、6~9の範囲について、6及び9に加えて、7及び8の数も想定され、6.0~7.0の範囲について、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9及び7.0の数が、明示的に想定される。
【0039】
本明細書において使用された「抗体(antibody)」及び「抗体(antibodies)」とは、モノクローナル抗体、多特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体(完全ヒト化抗体又は部分的ヒト化抗体)、鳥類(例えば、アヒル又はガチョウ)抗体、サメ抗体、クジラ抗体及び非霊長動物(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、マウスなど)抗体又は非ヒト霊長動物(例えば、サル、チンパンジーなど)抗体を含む哺乳動物抗体などであるがこれらに限定されない動物抗体、組換え抗体、キメラ抗体、単鎖Fv(「scFv」)、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、F(ab’)2断片、ジスルフィド連結型Fv(「sdFv」)及び抗イディオタイプ(「抗Id」)抗体、二重ドメイン抗体、二重可変ドメイン(DVD)又は三重可変ドメイン(TVD)抗体(二重可変ドメイン免疫グロブリン及びそれらを作り出すための方法について、各々の内容が参照により本明細書に組み込まれるWu,C.ら、Nature Biotechnology、25(11):1290~1297(2007)及びPCT国際出願第2001/058956号において記載されている)並びに上記のうちのいずれかの、機能的に活性なエピトープ結合性断片を指す。特に、抗体は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫活性断片、すなわち、解析物結合性部位を含有する分子を含む。免疫グロブリン分子は、任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスの分子でありうる。簡潔さのために、本明細書において、解析物に対する抗体は、「抗解析物抗体」又は、単に、「解析物抗体」(例えば、抗UCH-L1抗体又はUCH-L1抗体)と称されることが多い。
【0040】
本明細書において「アフィニティー成熟抗体」とは、標的抗原に対する抗体のアフィニティー(すなわち、KD、kd又はka)の変更を有さない親抗体と比較した改善を結果としてもたらす、1つ以上のCDR内の、1カ所以上の変更を伴う抗体を指すように使用される。例示的なアフィニティー成熟抗体は、標的抗原に対する、ナノモル単位なお又はピコモル単位のアフィニティーを有する。BioDisplay法を使用して調製されたコンビナトリアル抗体ライブラリーのスクリーニングを含め、アフィニティー成熟抗体を作製するための様々な手順が当技術分野において公知である。例えば、Marksら、BioTechnology、10:779~783(1992)は、VHとVLとのドメインシャッフリングによるアフィニティー成熟について記載している。CDR残基及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発については、Barbasら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、91:3809~3813(1994);Schierら、Gene、169:147~155(1995);Yeltonら、J.Immunol.、155:1994~2004(1995);Jacksonら、J.Immunol.、154(7):3310~3319(1995)及びHawkinsら、J.Mol.Biol.、226:889~896(1992)により記載されている。選択的突然変異誘発位置及び活性増強アミノ酸残基を伴う接触位置又は超変異位置における選択的突然変異については、米国特許第6,914,128B1号において記載されている。
【0041】
本明細書において使用された「抗体断片」とは、抗原結合性部位又は可変領域を含む、無傷抗体の部分を指す。部分は、無傷抗体のFc領域の重鎖定常ドメイン(すなわち、抗体アイソタイプに応じて、CH2、CH3又はCH4)を含まない。抗体断片の例は、Fab断片、Fab’断片、Fab’-SH断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、ダイアボディー、単鎖Fv(scFv)分子、1つだけの軽鎖可変ドメインを含有する単鎖ポリペプチド、軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有する単鎖ポリペプチド、1つだけの重鎖可変領域を含有する単鎖ポリペプチド及び重鎖可変領域の3つのCDRを含有する単鎖ポリペプチドを含むがこれらに限定されない。
【0042】
「曲線下面積」又は「AUC」とは、ROC曲線下面積を指す。ROC曲線下AUCとは、精度についての尺度である。AUCが1であることが、完全な検査を表すのに対し、AUCが0.5であることは、非有意な検査を表す。好ましいAUCは、少なくとも約0.700、少なくとも約0.750、少なくとも約0.800、少なくとも約0.850、少なくとも約0.900、少なくとも約0.910、少なくとも約0.920、少なくとも約0.930、少なくとも約0.940、少なくとも約0.950、少なくとも約0.960、少なくとも約0.970、少なくとも約0.980、少なくとも約0.990又は少なくとも約0.995でありうる。
【0043】
本明細書において、「ビーズ」と「粒子」とは、互換的に使用され、実質的に球形の固体支持体を指す。ビーズ又は粒子の一例は、マイクロ粒子である。本明細書において使用されうるマイクロ粒子は、当技術分野において公知である、任意の種類でありうる。例えば、ビーズ又は粒子は、磁気ビーズ又は磁気粒子でありうる。磁気ビーズ/粒子は、強磁性、フェリ磁性、常磁性、超常磁性又は磁性流体でありうる。例示的な強磁性材料は、Fe、Co、Ni、Gd、Dy、CrO2、MnAs、MnBi、EuO及びNiO/Feを含む。フェリ磁性材料の例は、NiFe2O4、CoFe2O4、Fe3O4(又はFeO.Fe2O3)を含む。ビーズは、磁性であり、1つ以上の非磁性層により取り囲まれた、固体コア部分を有しうる。代替的に、磁性部分は、非磁性コアの周囲の層でありうる。マイクロ粒子は、本明細書において記載された方法において働く、任意のサイズ、例えば、約0.75~約5nm又は約1~約5nm又は約1~約3nmでありうる。
【0044】
本明細書において、「結合性タンパク質」とは、例えば、ポリペプチド、抗原、化合物若しくは他の分子、又は任意の種類の基質などの結合パートナーに結合し、これと共に複合体を形成する、単量体又は多量体のタンパク質を指すように使用される。結合性タンパク質は、結合パートナーに特異的に結合する。結合性タンパク質は、抗体のほか、当技術分野において公知であり本明細書の下記において記載される、これらの抗原結合性断片及びこれらの他の多様な形態及び誘導体並びに抗原分子又は抗原分子上の特定の部位(エピトープ)に結合する、1つ以上の抗原結合性ドメインを含む他の分子を含む。したがって、結合性タンパク質は、四量体の免疫グロブリンである抗体、IgG分子、IgG1分子、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ヒト化抗体、アフィニティー成熟抗体及び抗原に結合する能力を保持する、任意のこのような抗体の断片を含むがこれらに限定されない。
【0045】
本明細書において、「二特異性抗体」とは、それらのうちの1つだけが機能的な二特異性抗体である複数の異なる免疫グロブリン分子種を結果としてもたらす形で、クァドローマ技術(Milsteinら、Nature、305(5934):537~540(1983)を参照されたい)、2つの異なるモノクローナル抗体の化学的コンジュゲーション(Staerzら、Nature、314(6012):628~631(1985)を参照されたい)、又はFc領域内の突然変異を導入するKIH(knob-into-hole)法若しくは同様の手法(Holligerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90(14):6444~6448(1993)を参照されたい)により作出された全長抗体を指すように使用される。二特異性抗体は、その2つの結合性アーム(HC/LCの1つの対)のうちの1つにおける、1つの抗原(又はエピトープ)に結合し、その第2のアーム(HC/LCの異なる対)における、異なる抗原(又はエピトープ)に結合する。この定義により、二特異性抗体は、2つの顕著に異なる抗原結合性アーム(特異性配列及びCDR配列の両方)を有し、それが結合する各抗原について一価である。
【0046】
本明細書において、「CDR」とは、抗体の可変配列内の「相補性決定領域」を指すように使用される。重鎖及び軽鎖の可変領域の各々において、3つずつのCDRが存在する。重鎖又は軽鎖のN末端から順に、これらの領域は、可変領域の各々について、「CDR1」、「CDR2」及び「CDR3」と表記されている。本明細書において使用された「CDRセット」という用語は、単一の可変領域において生じる、3つのCDRの群であって、抗原に結合するCDRの群を指す。したがって、抗原結合性部位は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の各々に由来するCDRセットを含む、6つのCDRを含みうる。単一のCDR(例えば、CDR1、CDR2又はCDR3)を含むポリペプチドは、「分子認識単位」と称されうる。抗原-抗体複合体についての結晶構造解析は、CDRのアミノ酸残基が、結合した抗原との広範な接触部を形成し、この場合、最も広範な抗原の接触部は、重鎖CDR3との接触部であることを裏付けている。したがって、分子認識単位は、主に、抗原結合性部位の特異性の一因となりうる。一般に、CDR残基は、抗原への結合に対する影響に、直接、かつ、極めて実質的に関与する。
【0047】
これらのCDRの正確な境界は、異なるシステムに従い、異なる形で規定されている。Kabat(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1987)及び(1991))により記載されているシステムは、抗体の任意の可変領域へと適用可能である、明確な残基番号付けシステムを提示するだけではなく、また、3つのCDRを規定する、正確な残基の境界も提示している。これらのCDRは、「Kabat CDR」と称されうる。Chothia及び共同研究者ら(Chothia及びLesk、J.Mol.Biol.、196:901~917(1987);並びにChothiaら、Nature、342:877~883(1989))は、Kabat CDR内の、ある特定の下位部分(sub-portion)が、アミノ酸配列のレベルにおいて大きな多様性を有するにもかかわらず、ほぼ同一なペプチド骨格のコンフォメーションを取ることを見出した。これらの下位部分は、「L」及び「H」が、それぞれ、軽鎖領域及び重鎖領域を名指す、「L1」、「L2」及び「L3」、又は「H1」、「H2」及び「H3」と名指された。これらの領域は、「Chothia CDR」と称される場合があり、これらは、Kabat CDRと重複する境界を有する。Kabat CDRと重複するCDRを規定する他の境界について、Padlan、FASEB J.、9:133~139(1995);及びMacCallum、J.Mol.Biol.、262(5):732~745(1996)により記載されている。さらに他のCDRの境界の定義は、本明細書のシステムの定義に厳密に従わない場合もあり、特定の残基若しくは残基群なお又は全CDRが、抗原への結合に、著明な影響を及ぼさないという予測又は実験による知見に照らして、短くなる場合もあり、長くなる場合もあるが、それでも、Kabat CDRと重複する。本明細書において使用された方法は、これらのシステムのうちのいずれに従い規定されたCDRも用いうるが、ある特定の実施形態は、Kabatより規定されたCDR又はChothiaにより規定されたCDRを使用する。
【0048】
「構成要素(component)」、「構成要素(components)」又は「少なくとも1つの構成要素」とは、一般に、本明細書において記載された方法及び当技術分野において公知である他の方法に従う、患者の尿試料、全血試料、血清試料又は血漿試料などの被験試料についてのアッセイのためのキット内に含まれうる捕捉抗体、検出試薬又は検出コンジュゲート、較正物質、対照、感度パネル、容器、緩衝液、希釈剤、塩、酵素、酵素に対する補因子、検出試薬、前処理試薬/溶液、基質(例えば、溶液としての)、停止溶液などを指す。一部の構成要素は、溶液でありうる、又はアッセイにおける使用のための復元のために、凍結乾燥させられうる。
【0049】
本明細書において使用された「~と相関した」とは、「~と比較した」を指す。
【0050】
本明細書において使用された「CTスキャン」とは、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンを指す。CTスキャンは、異なる角度から得られた、一連のX線画像を組み合わせ、コンピュータ処理を使用して、体内の骨、血管及び軟部組織についての断面画像又は切片を創出する。CTスキャンは、X線CT、ポジトロン放射断層撮影(PET)、単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)、コンピュータ軸方向断層撮影(CATスキャン)又はコンピュータ支援断層撮影を使用しうる。CTスキャンは、従来のCTスキャン又は渦巻き状/らせん状CTスキャンでありうる。従来のCTスキャンにおいて、スキャンは、切片ごとに得られ、各切片のスキャンの後、停止及び次の切片への移動、例えば、腹部の上方から、骨盤への移動がなされる。従来のCTスキャンは、動きによるアーチファクトを回避するために、患者が息を止めることを要求する。渦巻き状/らせん状CTスキャンは、連続スキャンであり、渦巻き状に得られ、スキャンされた画像が連続的であるので、工程がはるかに迅速である。
【0051】
本明細書において「アッセイにより決定された」とは、任意の適切なアッセイによる、基準レベルの決定を指すように使用される。一部の実施形態において、基準レベルの決定は、対象に由来する試料へと適用されるアッセイと同じ種類のアッセイにより(例えば、イムノアッセイ、臨床化学アッセイ、単一分子検出アッセイ、タンパク質免疫沈降、免疫電気泳動、化学分析、SDS-PAGE及びウェスタンブロット解析又はタンパク質免疫染色、電気泳動解析、タンパク質アッセイ、競合的結合アッセイ、機能的タンパク質アッセイ又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)若しくは液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)などの、クロマトグラフィー法若しくは分光法により)達成されうる。一部の実施形態において、基準レベルの決定は、対象に由来する試料へと適用されるアッセイと同じ種類のアッセイにより、同じアッセイ条件下において達成されうる。本明細書において言及される通り、本開示は、例示的な基準レベル(例えば、異なる時点における基準レベルを比較することにより計算された)を提示する。本明細書における本開示を他のアッセイに適合させて、本開示により提示された記載に基づき、これらの他のアッセイについてアッセイ特異的な基準レベル及び絶対量を得ることは、十分に当業者の技術の範囲内にある。例えば、頭部への損傷を負ったことが分かっているヒト対象から得られた試料(そして、より特定すると、(i)軽度TBI及び/又は(ii)中等度~重度のTBIを負ったことが分かっているヒト対象から得られた試料)及び頭部への損傷を負っていないことが分かっているヒト対象から得られた試料を含むトレーニング試料のセットは、アッセイ特異的な基準レベルを得るのに使用されうる。本明細書において、「アッセイにより決定され」、列挙されたレベルの「感度」及び/又は「特異度」を有する、基準レベルは、前記基準レベルが、本発明の方法において採用された場合に、列挙された感度及び/又は特異度についての方法をもたらすことが決定された、基準レベルを指すように使用されることが理解される。例えば、複数の異なる可能な基準レベルを使用する、アッセイデータについての統計学的解析の反復により、本発明の方法において与えられた基準レベルと関連する感度及び特異度を決定することは、十分に、当業者の技術の範囲内にある。
【0052】
実質的に、外傷性脳損傷を有するものとしての対象と、外傷性脳損傷を有さないものとしての対象とを識別する場合、又は軽度外傷性脳損傷を有するものとしての対象を、中等度、重度又は中等度~重度の外傷性脳損傷を有するものとしての対象と対比して識別する場合、当業者は、カットオフを上昇させることの、感度及び特異度に対する効果を秤にかける。カットオフを上昇又は下落させることは、十分に規定され、予測可能な影響を、感度及び特異度並びに他の標準的な統計学的尺度に対して及ぼす。カットオフを上昇させることは、特異度を改善するが、感度(疾患を伴う対象の、検査陽性となる比率)を悪化させることが、周知である。これに対し、カットオフを下落させることは、感度を改善するが、特異度(疾患を伴わない対象の、検査陰性となる比率)を悪化させる。外傷性脳損傷を検出する、又は中等度、重度若しくは中等度~重度の外傷性脳損傷と対比した、軽度外傷性脳損傷を決定するための分岐点は、当業者にたやすく明らかである。対象が、外傷性脳損傷又は中等度、重度又は中等度~重度の外傷性脳損傷と対比した、軽度外傷性脳損傷を有するのか、有さないのかの識別において、カットオフが上昇するほど、より多くの真陰性(すなわち、外傷性脳損傷を有さない、軽度外傷性脳損傷を有さない、中等度外傷性脳損傷を有さない、重度外傷性脳損傷を有さない、又は中等度~重度の外傷性脳損傷を有さない対象)が、外傷性脳損傷、軽度外傷性脳損傷、中等度外傷性脳損傷、重度外傷性脳損傷又は中等度~重度の外傷性脳損傷を有する対象から区別されるので、特異度が改善される。しかし、同時に、カットオフを上昇させることは、陽性として同定された症例の数の全体並びに真陽性の数を減少させるので、感度は低下するはずである。逆に、カットオフが下落するほど、より多くの真陽性(すなわち、外傷性脳損傷を有する、軽度外傷性脳損傷を有する、中等度外傷性脳損傷を有する、重度外傷性脳損傷を有する、又は中等度~重度の外傷性脳損傷を有する対象)が、外傷性脳損傷、軽度外傷性脳損傷、中等度外傷性脳損傷、重度外傷性脳損傷又は中等度~重度の外傷性脳損傷を有さない対象から区別されるので、感度が改善される。しかし、同時に、カットオフを下落させることは、陽性として同定された症例の数の全体並びに偽陽性の数を増大させるので、特異度は低下するはずである。
【0053】
一般に、高感度値は、当業者が、疾患又は状態(外傷性脳損傷、軽度外傷性脳損傷、中等度外傷性脳損傷、重度外傷性脳損傷又は中等度~重度の外傷性脳損傷など)を除外する一助となり、高特異度値は、当業者が、疾患又は状態を認める(rule in)一助となる。当業者が、疾患を除外するのか、これを認めるのかは、各種の誤差について、どのような帰結が患者のためになるのかに依存する。したがって、値がどのようにして選択されたのかについての基本情報の完全な開示がなされなければ、検査カットオフを導出するのに利用される正確なバランスを知ること、又は予測することができない。特異度に対する感度のバランス及び他の因子は、症例ごとに異なる。このために、医師又は医療従事者が選択しうるように、代替的なカットオフ(例えば、基準)値を提示することが、場合によって好ましい。
【0054】
本明細書において使用された、抗体の「誘導体」とは、純正抗体又は親抗体と比較した場合、そのアミノ酸配列に対する1つ以上の修飾を有する抗体を指す場合があり、修飾ドメイン構造を呈しうる。誘導体は、標的(抗原)に特異的に結合することが可能なアミノ酸配列を採用するだけでなく、天然抗体内で見出された、典型的なドメイン構成を採用することもさらに可能でありうる。抗体誘導体の典型的な例は、他のポリペプチドへとカップリングさせた抗体、再配列された抗体ドメイン又は抗体の断片である。誘導体はまた、少なくとも1つのさらなる化合物、例えば、タンパク質ドメインも含むことが可能であり、前記タンパク質ドメインは、共有結合又は非共有結合により連結されている。連結は、当技術分野で公知の方法に従う遺伝子融合に基づきうる。抗体を含む融合タンパク質内に存在するさらなるドメインは、可撓性リンカー(有利にはペプチドリンカーである)により連結されることが好ましい場合があり、この場合、前記ペプチドリンカーは、さらなるタンパク質ドメインのC末端及び抗体のN末端又はこの逆の間の距離にわたるのに十分な長さである、複数の親水性でありかつペプチド結合されたアミノ酸を含む。抗体は、生物学的活性に適するコンフォメーションを有する、又は、例えば、固体支持体、生物学的活性物質(例えば、サイトカイン又は成長ホルモン)、化学的薬剤、ペプチド、タンパク質若しくは薬物に選択的に結合する、エフェクター分子へと連結されうる。
【0055】
本明細書において「乱用薬物」とは、非医学的理由(例えば、気晴らし効果及び/又は気分を変える効果など)のために服用される、1つ以上の添加物質(薬物など)を指すように使用される。このような乱用薬物への、過剰な耽溺、これらの使用又はこれらへの依存は、「物質乱用」と称されることが多い。乱用薬物の例は、アルコール、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、カナビス、コカイン、幻覚剤(ケタミン、メスカリン(ペヨーテ)、PCP、シロシビン、DMT及び/又はLSDなど)、メタカロン、オピオイド、アンフェタミン(メタンフェタミンを含む)、同化ステロイド、吸入剤(すなわち、例えば、ニトレート、スプレー塗料、洗浄液、マーカー、糊などの、向精神特性を含有する揮発性物質を含有する物質)及びこれらの組合せを含む。
【0056】
本明細書において、「二重特異性抗体」とは、その2つの結合性アーム(HC/LCの対)の各々において、2つの異なる抗原(又はエピトープ)に結合しうる全長抗体(PCT公開第02/02773号を参照されたい)を指すように使用される。したがって、二重特異性結合タンパク質は、同一な特異性及び同一なCDR配列を伴う、2つの同一な抗原結合性アームを有し、それが結合する各抗原について二価である。
【0057】
本明細書において、「二重可変ドメイン」とは、二価結合性タンパク質(2つの抗原結合性部位)、四価結合性タンパク質(4つの抗原結合性部位)、又は多価結合性タンパク質でありうる結合性タンパク質上の、2つ以上の抗原結合性部位を指すように使用される。DVDは、単一特異性、すなわち、1つの抗原(又は1つの特異性エピトープ)に結合することが可能な場合もあり、多特異性、すなわち、2つ以上の抗原(すなわち、同じ標的抗原分子の2つ以上のエピトープ又は異なる標的抗原2つ以上のエピトープ)に結合することが可能な場合もある。好ましいDVD結合性タンパク質は、2つの重鎖DVDポリペプチド及び2つの軽鎖DVDポリペプチドを含み、「DVD免疫グロブリン」又は「DVD-Ig」と称される。したがって、このようなDVD-Ig結合性タンパク質は、四量体であり、IgG分子と類似するが、IgG分子より多くの抗原結合性部位をもたらす。したがって、四量体DVD-Ig分子の各半分は、IgG分子の半分と類似し、重鎖DVDポリペプチド及び軽鎖DVDポリペプチドを含むが、単一の抗原結合性ドメインをもたらすIgG分子の重鎖及び軽鎖の対と異なり、DVD-Igの重鎖及び軽鎖の対は、2つ以上の抗原結合性部位をもたらす。
【0058】
DVD-Ig結合性タンパク質の各抗原結合性部位は、ドナー(「親」)モノクローナル抗体に由来しうるので、抗原結合性部位1つ当たり、合計6つのCDRであって、抗原への結合に関与するCDRを伴う、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含みうる。したがって、2つの異なるエピトープ(すなわち、2つの異なる抗原分子の、2つの異なるエピトープ又は同じ抗原分子の、2つの異なるエピトープ)に結合するDVD-Ig結合性タンパク質は、第1の親モノクローナル抗体に由来する抗原結合性部位及び第2の親モノクローナル抗体の抗原結合性部位を含む。
【0059】
DVD-Ig結合性分子のデザイン、発現及び特徴付けについての記載は、PCT公開第2007/024715号、米国特許第7,612,181号及びWuら、Nature Biotech.、25:1290~1297(2007)においてなされている。このようなDVD-Ig分子の好ましい例は、構造式:VD1-(X1)n-VD2-C-(X2)n[式中、VD1は、第1の重鎖可変ドメインであり、VD2は、第2の重鎖可変ドメインであり、Cは、重鎖定常ドメインであり、X1は、それがCH1ではないことを条件として、リンカーであり、X2は、Fc領域であり、nは、0又は1であるが、好ましくは1である]を含む重鎖;及び構造式:VD1-(X1)n-VD2-C-(X2)n[式中、VD1は、第1の軽鎖可変ドメインであり、VD2は、第2の軽鎖可変ドメインであり、Cは、軽鎖定常ドメインであり、X1は、これがCH1ではないことを条件として、リンカーであり、X2は、Fc領域を含まず、nは、0又は1であるが、好ましくは1である]を含む軽鎖を含む。このようなDVD-Igは、2つのこのような重鎖及び2つのこのような軽鎖を含むことが可能であり、この場合、各鎖は、可変領域の間に介在する定常領域を伴わずに、タンデムにより連結された可変ドメインを含み、重鎖及び軽鎖は、会合して、タンデムの機能的抗原結合性部位を形成し、重鎖及び軽鎖の対は、重鎖及び軽鎖の別の対と会合して、4つの機能的な抗原結合性部位を伴う、四量体の結合性タンパク質を形成しうる。別の例において、DVD-Ig分子は、各々が可変ドメインの間に介在する定常領域を伴わずに、タンデムに連結された、3つの可変ドメイン(VD1、VD2、VD3)を含む重鎖及び軽鎖を含むことが可能であり、この場合、重鎖及び軽鎖の対は、会合して、3つの抗原結合性部位を形成することが可能であり、重鎖及び軽鎖の対は、重鎖及び軽鎖の別の対と会合して、6つの抗原結合性部位を伴う、四量体の結合性タンパク質を形成しうる。
【0060】
好ましい実施形態において、DVD-Ig結合性タンパク質は、その親モノクローナル抗体が結合する同じ標的分子に結合するだけでなく、また、その親モノクローナル抗体のうちの1つ以上の、1つ以上の所望の特性も保有する。好ましくは、このようなさらなる特性は、親モノクローナル抗体のうちの1つ以上の抗体パラメータである。その親モノクローナル抗体のうちの1つ以上に由来するDVD-Ig結合性タンパク質に寄与されうる抗体パラメータは、抗原特異性、抗原アフィニティー、効力、生物学的機能、エピトープの認識、タンパク質の安定性、タンパク質の可溶性、作製効率、免疫原性、薬物動態、バイオアベイラビリティー、組織との交差反応性、及びオーソログ抗原への結合を含むがこれらに限定されない。
【0061】
DVD-Ig結合性タンパク質は、UCH-L1の少なくとも1つのエピトープに結合する。DVD-Ig結合性タンパク質の非限定例は、UCH-L1の1つ以上のエピトープに結合するDVD-Ig結合性タンパク質、ヒトUCH-L1のエピトープ及び別の種(例えば、マウス)のUCH-L1のエピトープに結合するDVD-Ig結合性タンパク質及びヒトUCH-L1のエピトープ及び別の標的分子のエピトープに結合するDVD-Ig結合性タンパク質を含む。
【0062】
本明細書において使用された「ダイナミックレンジ」とは、アッセイのリードアウトが、解析される試料中の標的分子又は解析物の量と比例する範囲を指す。
【0063】
「エピトープ(epitope)」又は「エピトープ(epitopes)」又は「目的のエピトープ」とは、認識され、その特異的結合パートナー上の相補的な部位に結合しうる、任意の分子上の部位を指す。分子及び特異的結合パートナーは、特異的結合対の一部である。例えば、エピトープは、ポリペプチド、タンパク質、ハプテン、炭水化物抗原(糖脂質、糖タンパク質又はリポ多糖のようであるがこれらに限定されない)又は多糖の上にありうる。その特異的結合パートナーは、抗体でありうるがこれに限定されない。
【0064】
本明細書において使用された、「検出域の拡大」とは、記載されそして/又は特許請求されている改善された方法が、他のUCH-L1アッセイと比較して様々な臨床状況において又は様々な臨床状況の下で、実行されうるという事実を指す。例えば、本開示の方法は、対象の臨床状態(例えば、UCH-L1についてチェックする理由に加え、併発状態が存在するのかどうか)、対象の検査値(例えば、UCH-L1レベル以外の検査値であって、患者の全体的な健康状態を評価するためになされる標準的な検査室検査における値及び対象が、事故に遭ったか又は頭部損傷をもたらしうる外傷を含むがこれらに限定されないある種の外傷に曝露されたと推測される場合になされる、より特定された検査における値を含むがこれらに限定されない検査値)、軽度TBI、中等度TBI、重度TBI、中等度若しくは重度のTBI、又は中等度~重度のTBIを患う対象としての、対象の分類、対象による、低レベル又は高レベルのUCH-L1の呈示(例えば、顕示又は保有)、対象が、頭部への損傷を負った可能性がある、任意の事象のタイミング(例えば、検査に照らした)からなる群から選択される因子に関わらず、任意の対象に対して実行されうる。加えて、さらなる例として、本開示の方法は、希釈を要求する場合もあり、代替的に、本明細書において記載された、改善されたアッセイの利益(例えば、25,000pg/mL以下の尺度、5logのダイナミックレンジ、ダイナミックレンジにわたるアッセイの直線性、20マイクロリットル未満の試料容量中のUCH-L1尺度、検出域の拡大など)のうちの1又は複数を欠く場合もある、先行技術において公知の他の方法と異なる。
【0065】
本明細書において使用された「Fab(fragment antigen-binding)断片」又は「Fab断片」とは、抗原に結合し、1つの抗原結合性部位である、1つの完全な軽鎖及び1つの重鎖の一部を含有する抗体の断片を指す。Fabは、VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン及びCH1ドメインからなる一価断片である。Fabは、各重鎖及び各軽鎖の、1つの定常ドメイン及び1つの可変ドメインから構成される。可変ドメインは、単量体のアミノ末端において相補性決定領域のセットを含むパラトープ(抗原結合性部位)を含有する。したがって、Y字の各アームは、抗原上のエピトープに結合する。Fab断片は、例えば、免疫グロブリン単量体を2つのFab断片及びFc断片へと切断するのに使用されうる酵素であるパパインを使用して、当技術分野において記載されている通りに作出されうる、又は組換え手段により作製されうる。
【0066】
本明細書において使用された「F(ab’)2断片」とは、ヒンジ領域の一部を無傷のままとしながら、Fc領域の大半を除去する、全IgG抗体のペプシン消化により作出された抗体を指す。F(ab’)2断片は、ジスルフィド結合により、一体に連結された、2つの抗原結合性F(ab)部分を有するので、分子量を約110kDaとする、二価断片である。二価抗体断片(F(ab’)2断片)は、全IgG分子より小型であり、組織への良好な浸透を可能とするので、免疫組織化学における、良好な抗原認識を容易とする。F(ab’)2断片の使用はまた、生細胞上のFc受容体又はプロテインA/Gへの非特異的結合も回避する。F(ab’)2断片は、抗原に結合し、かつ、これを沈殿させうる。
【0067】
本明細書において使用された「フレームワーク」(FR)又は「フレームワーク配列」とは、CDRを除いた、可変領域の残りの配列を意味しうる。CDR配列の正確な定義は、異なるシステム(例えば、上記を参照されたい)により決定されうるため、フレームワーク配列の意味は、これに応じて異なる解釈を受ける。6つのCDR(軽鎖のCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3並びに重鎖のCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3)はまた、軽鎖上及び重鎖上のフレームワーク領域を、各鎖上の4つの部分領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)へも分割するが、ここで、CDR1は、FR1及びFR2の間に位置し、CDR2は、FR2及びFR3の間に位置し、CDR3は、FR3及びFR4の間に位置する。他の研究者により言及される通りに、特定の部分領域を、FR1、FR2、FR3又はFR4と指定しない場合、フレームワーク領域は、単一の、天然の免疫グロブリン鎖の可変領域内の、FRの組合せを表す。本明細書において使用されたFRは、4つの部分領域のうちの1つを表し、FRは、フレームワーク領域を構成する、4つの部分領域のうちの2つ以上を表す。
【0068】
当技術分野において公知の技法を使用して、非ヒト抗体をヒト化するのに、重鎖及び軽鎖の「アクセプター」フレームワーク配列(又は、単に、「アクセプター」配列)として使用されうる、ヒト重鎖及びヒト軽鎖のFR配列は、当技術分野において公知である。一実施形態において、ヒト重鎖及びヒト軽鎖のアクセプター配列は、V-base(hypertext transferprotocol://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/;電話番号: +49 - 531 - 6181 687)又は国際的なImMunoGeneTics(登録商標)(IMGT(登録商標))情報システム(hypertext transferprotocol://imgt.cines.fr/texts/IMGTrepertoire/LocusGenes/;電話番号: +33 (0)4 34 35 99 65)などの、一般に公開されているデータベースにおいて列挙されたフレームワーク配列から選択される。
【0069】
本明細書において使用された「機能的な抗原結合性部位」とは、標的抗原に結合することが可能な、結合性タンパク質(例えば、抗体)上の部位を意味しうる。抗原結合性部位の抗原結合アフィニティーは、抗原結合性部位が由来する親の結合性タンパク質(例えば、親抗体)ほど強くない場合があるが、抗原に結合する能力は、抗原に結合するタンパク質(例えば、抗体)を査定するための公知の様々な方法のうちのいずれか1つを使用して、測定可能でなければならない。さらに、多価タンパク質、例えば、本明細書の多価抗体の抗原結合性部位の各々の抗原結合アフィニティーは、定量的に同じである必要はない。
【0070】
本明細書において使用された「GCS(Glasgow Coma Scale)」又は「GCS」とは、全般的な社会的能力又は他者への依存に基づき、脳損傷の転帰を推定及び類別するための、15点のスケールを指す。検査は、運動応答、言語応答及び開眼応答を、これらの値:I.運動応答(6:指示に完全に従う;5:侵害刺激を位置特定する;4:侵害刺激から身を引く;3:異常屈曲、すなわち、除皮質姿勢;2:伸長応答、すなわち、除脳姿勢及び1:応答なし);II.言語応答(5:意識清明で見当識がある;4:混乱しているが、一貫した発話;3:不適切な単語及び単語からなる支離滅裂な文章;2:理解不可能な音声及び1:音声なし)及びIII.開眼(4:自発的開眼;3:発話に応じた開眼;2:疼痛に応じた開眼及び1:開眼なし)により測定する。最終的なスコアは、I+II+IIIの値を足し合わせることにより決定される。最終的なスコアは、生存についての4つの可能なレベルへと類別される場合があり、数が小さいほど、より重度損傷及び予後不良を指し示す:軽度(13~15);中等度身体障害(9~12)(30分間を超える意識の喪失;消失する場合もあり、消失しない場合もある、身体機能障害又は認知機能障害;リハビリから利益を得る);重度身体障害(3~8)(昏迷:意識不明状態:有意味な応答なし、自発的な活動なし);及び植物状態(3未満)(睡眠覚醒周期;目覚めるが、環境との相互作用なし;疼痛に対する、位置特定されない応答)。中等度脳損傷とは、20分間~6時間の意識喪失及び9~12のGCS(Glasgow Coma Scale)を結果としてもたらす脳損傷と規定される。重度脳損傷とは、6時間を超える意識喪失及び3~8のGCS(Glasgow Coma Scale)を結果としてもたらす脳損傷と規定される。
【0071】
本明細書において使用された「GOS(Glasgow Outcome Scale)」とは、機能的転帰についてのグローバルスケールであって、患者の状態を、5つの類型:死、植物状態、重度身体障害、中等度身体障害又は回復良好のうちの1つへと評価するグローバルスケールを指す。
【0072】
本明細書において互換的に使用された「GOSE(Extended Glasgow Outcome Scale)」又は「GOSE」は、重度身体障害、中等度身体障害及び回復良好の類型を、表1において示される、上下の類型へと細分することによる、8つの類型への、より詳細な類別を提示する。
【0073】
【0074】
本明細書において、「ヒト化抗体」は、非ヒト種(例えば、マウス)に由来する重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を含むが、VH配列及び/又はVL配列の少なくとも一部が、より「ヒト様」となる、すなわち、ヒト生殖細胞系列可変配列と、より類似するように変更された抗体について記載するのに使用される。「ヒト化抗体」とは、目的の抗原に免疫特異的に結合し、ヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有するフレームワーク(FR)領域及び非ヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有する相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はこの変異体、誘導体、類似体若しくは断片である。本明細書において使用された、CDRの文脈における「実質的に」という用語は、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有するCDRを指す。ヒト化抗体は、少なくとも1つであるが、典型的に2つの可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)2、FabC、Fv)であって、CDR領域の全て又は実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリン(すなわち、ドナー抗体)のCDR領域に対応し、フレームワーク領域の全て又は実質的に全てが、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のフレームワーク領域である可変ドメインの実質的に全てを含む。ある実施形態において、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的に、ヒト免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部も含む。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖のほか、重鎖の、少なくとも可変ドメインを含有する。抗体はまた、重鎖の、CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、CH3領域及びCH4領域も含みうる。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖だけを含有する。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト化重鎖だけを含有する。具体的な実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖及び/又はヒト化重鎖のヒト化可変ドメインだけを含有する。
【0075】
ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含む、免疫グロブリンの任意のクラス並びに、限定なしに述べると、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む、任意のアイソタイプから選択されうる。ヒト化抗体は、1つを超えるクラス又はアイソタイプに由来する配列を含むことが可能であり、特定の定常ドメインは、当技術分野において周知の技法を使用して、所望のエフェクター機能を最適化するように選択されうる。
【0076】
ヒト化抗体のフレームワーク領域及びCDRは、親配列に正確に対応する必要がなく、例えば、ドナー抗体CDR又はコンセンサスフレームワークは、この部位におけるCDR残基又はフレームワーク残基が、ドナー抗体又はコンセンサスフレームワークに対応しないように、少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、挿入及び/又は欠失により突然変異誘発されてもよい。しかし、好ましい実施形態において、このような突然変異は、広範にわたる突然変異ではない。通例、ヒト化抗体残基のうちの、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%であり、最も好ましくは、少なくとも95%は、親のFR配列及びCDR配列の残基に対応する。本明細書において使用された「コンセンサスフレームワーク」という用語は、コンセンサスの免疫グロブリン配列内のフレームワーク領域を指す。本明細書において使用された「コンセンサスの免疫グロブリン配列」という用語は、類縁の免疫グロブリン配列のファミリーにおいて、最も高頻度で発生するアミノ酸(又はヌクレオチド)から形成された配列(例えば、Winnaker、「From Genes to Clones」(Verlagsgesellschaft、Weinheim、1987)を参照されたい)を指す。したがって、「コンセンサスの免疫グロブリン配列」は、「コンセンサスフレームワーク領域」及び/又は「コンセンサスCDR」を含みうる。免疫グロブリンのファミリーにおいて、コンセンサス配列内の各位置は、ファミリー内のこの位置において、最も高頻度で発生するアミノ酸により占有されている。2つのアミノ酸が、同等に高頻度で発生する場合、いずれもが、コンセンサス配列内に含まれうる。
【0077】
本明細書の、2つ以上のポリペプチド配列又はポリヌクレオチド配列の文脈において使用された「同一な」又は「同一性」とは、配列が、指定された領域にわたり同じである、指定された百分率の残基を有することを意味しうる。百分率は、2つの配列を、最適にアライメントし、2つの配列を、指定された領域にわたり比較し、両方の配列内において、同一な残基が生じる位置の数を決定して、マッチした位置の数を求め、マッチした位置の数を、指定された領域内の位置の総数により除し、結果を、100により乗じて、配列同一性の百分率を求めることにより計算されうる。2つの配列の長さが異なる、又はアライメントが1つ以上の粘着末端をもたらし、指定された比較領域が、単一の配列だけを含む場合、単一の配列の残基は、計算の分母に組み入れられるが、分子に組み入れられない。
【0078】
本明細書において互換的に使用された「頭部への損傷」又は「頭部損傷」とは、頭皮、頭蓋骨又は脳への、任意の外傷を指す。このような損傷は、頭蓋骨上の軽症の瘤だけを含みうる、又は重篤な脳損傷でありうる。このような損傷は、脳への一次損傷及び/又は脳への二次損傷を含む。一次脳損傷は、初期傷害時に生じ、脳の物理的構造のずれの結果としてもたらされる。より具体的に、一次脳損傷は、外傷性事象時に生じる、実質(組織、血管)への物理的ダメージであり、周囲の脳組織のせん断及び圧迫を結果としてもたらす。二次脳損傷は、一次損傷に後続して生じ、一連の細胞過程を伴いうる。より具体的に、二次脳損傷は、一次脳損傷の後、ある期間(数時間~数日間)にわたり発展する変化を指す。二次脳損傷は、脳内の、細胞、化学物質、組織又は血管の変化の全体のカスケードであって、脳組織のさらなる破壊に寄与するカスケードを含む。
【0079】
頭部への損傷は、閉鎖性又は開放性(穿通性)でありうる。閉鎖性頭部損傷とは、頭皮、頭蓋骨又は脳への外傷であって、ぶつかる物体による頭蓋骨への貫通が見られない外傷を指す。開放性頭部損傷は、頭皮、頭蓋骨又は脳への外傷であって、ぶつかる物体による頭蓋骨への貫通が見られる外傷を指す。頭部への損傷は、人の物理的振盪、閉鎖性頭部外傷若しくは開放性頭部外傷をもたらす外部の機械的力若しくは他の力による鈍的打撃(例えば、自動車、航空機、列車などによる車両事故などの車両事故;野球のバットによる痛撃又は火器からの痛撃などの頭部への痛撃)、脳血管発作(例えば、脳卒中)、1回以上の転倒(例えば、スポーツ又は他の活動における)、爆発若しくは爆破(まとめて、「爆破損傷」)及び他の種類の鈍的外傷に引き起こされうる。代替的に、頭部への損傷は、化学物質、毒素又は化学物質と毒素との組合せの摂取及び/又はこれらへの曝露により引き起こされうる。このような化学物質及び/又は毒素の例は、火、カビ、アスベスト、害虫駆除剤、殺虫剤、有機溶剤、塗料、糊、ガス(一酸化炭素、硫化水素及びシアン化物など)、有機金属(メチル水銀、テトラエチル鉛及び有機スズなど)及び/又は1つ以上の乱用薬物を含む。代替的に、頭部への損傷は、自己免疫疾患、代謝性障害、脳腫瘍、1つ以上のウイルス、髄膜炎、水頭症、低酸素症又はこれらの組合せを対象が患うことの結果として引き起こされうる。場合によって、任意のこのような事象又は損傷が生じた、又は起こったのかどうかを確認することは不可能である。例えば、患者又は対象において、病歴が見られない場合があり、対象は、発話が不可能な場合があり、対象は、どのような事象に曝露されたのか気づいている場合があるなどである。本明細書においてこのような状況は、対象「は、頭部への損傷を負った可能性がある」と記載される。本明細書の、ある特定の実施形態において、閉鎖性頭部損傷は、脳卒中などの脳血管発作を含まず、明確にこれを除外する。
【0080】
本明細書において使用された「単離ポリヌクレオチド」とは、その単離ポリヌクレオチドが、その由来において、「単離ポリヌクレオチド」が天然において共に見出されるポリヌクレオチドの全部若しくは一部に付随していない;それが天然においては連結されてないポリヌクレオチドと作動可能に連結されている;又は天然においてより大きな配列の一部として存在してはいないようなポリヌクレオチド(例えば、ゲノム、cDNA若しくは合成由来又はこれらの一部の組合せによる)を意味しうる。
【0081】
本明細書において使用された「標識」及び「検出可能な標識」とは、抗体と解析物との反応を検出可能とするように、抗体又は解析物へと接合された部分を指し、このように標識された抗体又は解析物は、「検出可能に標識された」と称される。標識は、視覚手段又は計測手段により検出可能なシグナルをもたらしうる。多様な標識は、色原体、蛍光化合物、化学発光化合物、放射性化合物などのシグナル発生物質を含む。標識の代表例は、光をもたらす部分、例えば、アクリジニウム化合物及び蛍光をもたらす部分、例えば、フルオレセインを含む。他の標識も、本明細書において記載されている。この点で、部分自体は、検出可能でない場合もあるが、さらに別の部分と反応すると、検出可能となりうる。「検出可能に標識された」という用語の使用は、このような標識を包含することが意図される。
【0082】
本明細書において使用された、「検出限界(LOD)」とは、指定された信頼性水準において検出されうる、測定された対象物の最低濃度(すなわち、測定されることが意図される数量)を指す。信頼性水準は、典型的に、偽陰性の測定の可能性を5%として、95%である。本明細書において使用されたLoDという用語は、Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)のプロトコールEP17-A2(「Protocols for Determination of Limits of Detection and Limits of Quantification;Approved Guideline、2版」、EP17A2E、James F.Pierson-Perryら、Clinical and Laboratory Standards Institute、2012年6月1日)による定義に基づく。
【0083】
「線形」とは、列挙された、例示的な範囲にわたり、又は値を通して、約20%、約19%、約18%、約17%、約16%、約15%、約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%又は約8%以下の変動が見られることを意味する。
【0084】
当技術分野において公知である、任意の適切な、検出可能な標識が使用されうる。例えば、検出可能な標識は、放射性標識(3H、14C、32P、33P、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho及び153Smなど)、酵素標識(西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリペルオキシダーゼ、グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼなど)、化学発光標識(アクリジニウムエステル、チオエステル又はスルホンアミド;ルミノール、イソルミノール、フェナントリジニウムエステルなど)、蛍光標識(フルオレセイン(例えば、5-フルオレセイン、6-カルボキシフルオレセイン、3’6-カルボキシフルオレセイン、5(6)-カルボキシフルオレセイン、6-ヘキサクロロフルオレセイン、6-テトラクロロフルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセインなど)など)、ローダミン、フィコビリタンパク質、R-フィコエリトリン、量子ドット(例えば、硫化亜鉛によりキャッピングされたセレン化カドミウム)、測熱標識又はイムノポリメラーゼ連鎖反応標識でありうる。標識、標識手順及び標識の検出への導入は、Molecular Probes,Inc.、Eugene、Oregonにより公刊された、ハンドブックとカタログとの組合せである、Polak及びVan Noorden、「Introduction to Immunocytochemistry」、2版、Springer Verlag、N.Y.(1997)並びにHaugland、「Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals」(1996)において見出される。蛍光標識は、FPIA(例えば、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれた、米国特許第5,593,896号、同第5,573,904号、同第5,496,925号、同第5,359,093号及び同第5,352,803号を参照されたい)において使用されうる。アクリジニウム化合物は、同種化学発光アッセイにおける検出可能な標識(例えば、Adamczykら、Bioorg.Med.Chem.Lett.、16:1324~1328(2006);Adamczykら、Bioorg.Med.Chem.Lett.、4:2313~2317(2004);Adamczykら、Biorg.Med.Chem.Lett.、14:3917~3921(2004)及びAdamczykら、Org.Lett.、5:3779~3782(2003)を参照されたい)として使用されうる。
【0085】
一態様において、アクリジニウム化合物は、アクリジニウム-9-カルボキサミドである。アクリジニウム9-カルボキサミドを調製するための方法については、Mattingly、J.Biolumin.Chemilumin.、6:107~114(1991);Adamczykら、J.Org.Chem.、63:5636~5639(1998);Adamczykら、Tetrahedron、55:10899~10914(1999);Adamczykら、Org.Lett.、1:779~781(1999);Adamczykら、Bioconjugate Chem.、11:714~724(2000);Mattinglyら、「Luminescence Biotechnology:Instruments and Applications」、Dyke,K.V.編、CRC Press:Boca Raton、77~105(2002);Adamczykら、Org.Lett.、5:3779~3782(2003);並びに米国特許第5,468,646号、同第5,543,524号及び同第5,783,699号(それらの各々が、参照によりその全体において、これについてのその教示について、本明細書に組み込まれる)において記載されている。
【0086】
アクリジニウム化合物の別の例は、アクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルである。式IIのアクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルの例は、10-メチル-9-(フェノキシカルボニル)アクリジニウムフルオロスルホネート(Cayman Chemical、Ann Arbor、MIから市販されている)である。アクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルを調製するための方法については、McCapraら、Photochem.Photobiol.、4:1111~21(1965);Razaviら、Luminescence、15:245~249(2000);Razaviら、Luminescence、15:239~244(2000)及び米国特許第5,241,070号(それらの各々が、参照によりその全体において、これについてのその教示について、本明細書に組み込まれる)において記載されている。このようなアクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルは、シグナルの強度及び/又はシグナルの迅速性の点において、少なくとも1つのオキシダーゼによる、解析物の酸化において生成された過酸化水素についての、有効な化学発光指示薬である。アクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルの化学発光過程は、迅速に、すなわち、1秒間未満において完了されるが、アクリジニウム-9-カルボキサミドの化学発光は、2秒間を超えて遷延する。しかし、アクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルは、タンパク質の存在下において、その化学発光特性を失う。したがって、その使用は、シグナルの発生時及び検出時における、タンパク質の非存在を要求する。試料中のタンパク質を分離又は除去するための方法は、当業者に周知であり、限外濾過、抽出、沈殿、透析、クロマトグラフィー及び/又は消化(例えば、Wells、「High Throughput Bioanalytical Sample Preparation.Methods and Automation Strategies」、Elsevier (2003)を参照されたい)を含むがこれらに限定されない。被験試料から除去又は分離されるタンパク質の量は、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%又は約95%でありうる。アクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステル及びその使用に関する、さらなる詳細については、2007年4月9日において出願された、米国特許出願第11/697,835号において明示されている。アクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルは、脱気無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)又は含水コール酸ナトリウムなどの、任意の適切な溶媒中に溶解されうる。
【0087】
「連結配列」又は「連結ペプチド配列」とは、1つ以上の、目的のポリペプチド配列(例えば、全長配列、配列断片など)へと接続された、天然又は人工のポリペプチド配列を指す。「接続された」という用語は、連結配列の、目的のポリペプチド配列への接合を指す。このようなポリペプチド配列は、1つ以上のペプチド結合により接合されることが好ましい。連結配列は、約4~約50アミノ酸の長さを有しうる。好ましくは、連結配列の長さは、約6~約30アミノ酸である。天然の連結配列は、人工の連結配列を創出するように、アミノ酸の置換、付加又は欠失により修飾されうる。連結配列は、組換えFab内の使用を含む、多くの目的で使用されうる。例示的な連結配列は、以下を含むがこれらに限定されない:(i)HHHHHH(配列番号2)のアミノ酸配列を有する、6×Hisタグなどのヒスチジン(His)タグは、目的のポリペプチド及び抗体の単離及び精製を容易とする連結配列として有用である;(ii)Hisタグなどのエンテロキナーゼ切断部位は、目的のタンパク質及び抗体の単離及び精製において使用される。エンテロキナーゼ切断部位は、Hisタグと併せて、目的のタンパク質及び抗体の単離及び精製において使用されることが多い。当技術分野において、多様なエンテロキナーゼ切断部位が公知である。エンテロキナーゼ切断部位の例は、DDDDK(配列番号3)のアミノ酸配列及びその誘導体(例えば、ADDDDK(配列番号4)など)を含むがこれらに限定されない;(iii)その他の配列も、単鎖可変領域断片の軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を連結又は接続するのに使用されうる。他の連結配列の例は、Birdら、Science、242:423~426(1988);Hustonら、PNAS USA85:5879~5883(1988)及びMcCaffertyら、Nature、348:552~554(1990)において見出されうる。連結配列はまた、薬物の接合又は固体支持体への接合などの、さらなる機能のためにも修飾されうる。本開示の文脈において、モノクローナル抗体は、例えば、Hisタグ、エンテロキナーゼ切断部位又はこれらの両方などの連結配列を含有しうる。
【0088】
本明細書において使用された「モノクローナル抗体」とは、実質的に同種である抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、集団を構成する個別の抗体は、少量で存在しうる可能な天然の突然変異を除き、同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原に対して方向付けられている。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して方向付けられた、異なる抗体を含むことが典型的な、ポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して方向付けられている。本明細書におけるモノクローナル抗体は、とりわけ、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、又は特定の抗体クラス若しくは抗体サブクラスに属する抗体内の、対応する配列と同一又は相同である一方、鎖の残りの部分は、別の種に由来する、又は別の抗体クラス若しくは抗体サブクラスに属する抗体内の、対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体のほか、それらが、所望の生体活性を呈する限りにおいて、このような抗体の断片も含む。
【0089】
本明細書において互換的に使用された「磁気共鳴イメージング」又は「MRI」とは、健常及び疾患両方の体内における解剖学及び生理学的過程についての描像を形成するように、放射線医学において使用される医学的イメージング法である、磁気共鳴イメージングを指す。MRIは、強力な磁界内に置いた場合に、体内組織の原子核の、高周波数のラジオ波に対する応答を測定し、内部の臓器についての画像を作成する、医学的イメージングの形態である。核磁気共鳴(NMR)学に基づくMRIスキャナーは、強力な磁界、ラジオ波及び磁界勾配を使用して、体内についての画像を作成する。
【0090】
本明細書において、「多価結合性タンパク質」とは、2つ以上の抗原結合性部位(本明細書において、「抗原結合性ドメイン」ともまた称される)を含む結合性タンパク質を指すように使用される。多価結合性タンパク質は、3つ以上の抗原結合性部位を有するように操作されていることが好ましく、一般に、天然の抗体ではない。「多特異性結合性タンパク質」という用語は、2つ以上の、類縁又は非類縁の標的に結合しうる結合性タンパク質であって、同じ標的分子の、2つ以上の異なるエピトープへの結合が可能な結合性タンパク質を含む結合性タンパク質を指す。
【0091】
本明細書において互換的に使用された「陰性予測値」又は「NPV」とは、対象が、陰性の検査結果を有する場合に、陰性の転帰を有する確率を指す。
【0092】
本明細書において互換的に使用された、「解析前処理条件」とは、試料が対象から得られた時点と、試料に対してアッセイ又は検査が行われたか又は実施された時点との間の時間において、試料(全血試料など)へと適用されたか又はこれに対して行われた1つ以上の操作、温度、化学反応及び/又は環境条件を指す。一実施形態において、解析前処理条件は、試料が対象から得られた後、約8時間以内に試料を処理することでありうる。別の実施形態において、解析前処理条件は、試料が対象から得られた時点と、アッセイが実施される時点との間の時間において、室温で試料を保存することでありうる。別の実施形態において、解析前処理条件は、試料が対象から得られた時点と、アッセイが実施される時点との間の時間において、2~8℃で試料を保存することでありうる。別の実施形態において、解析前処理条件は、試料が対象から得られた時点と、アッセイ又は検査が実施される時点との間の時間において、試料を混合しないことでありうる。
【0093】
本明細書において使用された「基準レベル」とは、診断的有効性、予後診断的有効性又は治療的有効性を評価するのに使用され、多様な臨床パラメータ(例えば、疾患の存在、疾患の病期、疾患の重症度、疾患の進行、非進行又は改善など)と連関づけられた、又は関連づけられた、アッセイカットオフ値を指す。本開示は、例示的な基準レベルを提示する。しかし、基準レベルは、イムノアッセイの性質(例えば、利用された抗体、反応条件、試料の純度など)に応じて変動する場合があり、アッセイは、比較及び標準化されうることが周知である。さらに、本明細書における本開示を他のイムノアッセイに適合させて、本開示により提示された記載に基づき、これらの他のイムノアッセイについて、イムノアッセイ特異的な基準レベルを得ることは、十分に当業者の技術の範囲内にある。基準レベルの正確な値は、アッセイ間において変動しうるが、本明細書において記載された知見は、一般に、適用可能であり、他のアッセイへの外挿が可能であるものとする。
【0094】
「ポイントオブケアデバイス」とは、ポイントオブケア(すなわち、検査室の外部)又はこの近傍の、患者ケアの時間及び場所(病院、診療所、救急ケア施設又は他の医療ケア施設、患者の自宅、介護施設及び/又は長期ケア施設及び/又はホスピス施設など)において、医学的診断検査を提供するのに使用されるデバイスを指す。ポイントオブケアデバイスの例は、Abbott Laboratories(Abbott Park、IL)(例えば、i-STAT(登録商標)及びi-STAT(登録商標) Alinity、Universal Biosensors(Rowville、Australia))(US2006/0134713を参照されたい)、Axis-Shield PoC AS(Oslo、Norway)及びClinical Lab Products(Los Angeles、USA)により作製されたポイントオブケアデバイスを含む。
【0095】
本明細書において互換的に使用された「陽性予測値」又は「PPV」とは、対象が、陽性の検査結果を有する場合に、陽性の転帰を有する確率を指す。
【0096】
本明細書において記載されたイムノアッセイ及びキットの文脈における「品質管理試薬」は、較正物質、対照及び感度パネルを含むがこれらに限定されない。「較正物質」又は「標準物質」(例えば、複数などの、1つ以上の)は、抗体又は解析物などの、解析物の濃度を内挿するための、較正曲線(検量線)を確立するために使用されることが典型的である。代替的に、基準レベル又は対照レベルの近傍(例えば、「低」レベル、「中」レベル、又は「高」レベル)にある、単一の較正物質も使用されうる。「感度パネル」を含むように、複数の較正物質(すなわち、1つを超える較正物質又は変動量の較正物質)が使用されうる。
【0097】
「ROC(receiver operating characteristic)」曲線又は「ROC」曲線とは、その識別閾値が変動するのに応じて、二項分類子システムの作動を例示する、グラフによるプロットを指す。例えば、ROC曲線は、診断検査の、異なる可能なカットオフ点についての、偽陽性率に対する真陽性率のプロットでありうる。ROC曲線は、多様な閾値状況において、陽性中の真陽性の割合(TPR=真陽性率)を、陰性中の偽陽性の割合(FPR=偽陽性率)と対比してプロットすることにより創出される。TPRはまた、感度としても公知であり、FPRは、[1-特異度又は真陰性率]である。ROC曲線は、感度と特異度とのトレードオフ(任意の感度の上昇は、特異度の低下により伴われる);曲線が、ROC空間の左側境界に近接し、次いで、上側境界に近接するほど、検査は、より正確となること;曲線が、ROC空間の45度の対角線に近接するほど、検査は、より正確でなくなること;カットオフ点における接線の傾きが、検査のこの値についての尤度比(LR)を与えること及び曲線下面積が、検査の精度の尺度であることを裏付ける。
【0098】
「組換え抗体(recombinant antibody)」及び「組換え抗体(recombinant antibodies)」とは、組換え法により、1つ以上のモノクローナル抗体の全部又は一部をコードする核酸配列を、適切な発現ベクターへとクローニングし、その後、抗体を、適切な宿主細胞において発現させるステップを含む、1つ以上のステップにより調製された抗体を指す。用語は、組換えにより作製されたモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体(完全ヒト化抗体又は部分的ヒト化抗体)、抗体断片から形成された多特異性構造又は多価構造、二官能性抗体、ヘテロコンジュゲートAb、DVD-Ig(登録商標)及び本明細書の(i)において記載された他の抗体(二重可変ドメイン免疫グロブリン及びそれらを作り出すための方法について、Wu,C.ら、Nature Biotechnology、25:1290~1297(2007)において記載されている)を含むがこれらに限定されない。本明細書において使用された「二官能性抗体」という用語は、1つの抗原性部位に対する特異性を有する第1のアーム及び異なる抗原性部位に対する特異性を有する第2のアームを含む抗体を指す。すなわち、二官能性抗体は、二重特異性を有する。
【0099】
本明細書において使用された、対象(例えば、患者)についての「危険性の評価」、「危険性の分類」、「危険性の同定」又は「危険性の層別化」とは、対象に関する処置決定が、より情報を得た状態ベースにおいてなされうるように、疾患の発生又は疾患の進行を含む将来の事象の発生の危険性を予測するためのバイオマーカーを含む因子についての査定を指す。
【0100】
本明細書において使用された「試料」、「被験試料」、「検体」、「生物学的試料」、「対象に由来する試料」及び「患者試料」は、互換的に使用される場合があり、全血、組織、尿、血清、血漿、羊水、脳脊髄液、胎盤細胞又は胎盤組織、内皮細胞、白血球又は単球などの血液試料でありうる。一部の実施形態において、試料は、全血試料である。一部の実施形態において、試料は、血清試料である。さらに他の実施形態において、試料は、血漿清試料である。試料は、患者から得られた通りに直接使用されうる、又は濾過、蒸留、抽出、濃縮、遠心分離、干渉成分の不活化、試薬の添加など、本明細書において論じられている形において、又は当技術分野において公知である、別の形において、試料の特徴を変更するように前処置されうる。
【0101】
試料を得るのに、様々な細胞型、組織又は体液が用いられうる。このような細胞型、組織及び体液は、生検試料及び剖検試料などの組織切片、組織学的目的のために採取された凍結切片、血液(全血など)、血漿、血清、赤血球、血小板、間質液、脳脊髄液などを含みうる。細胞型及び組織はまた、リンパ液、脳脊髄液、により回収された体液も含みうる。組織又は細胞型は、細胞試料を、ヒト及び非ヒト動物から摘出することにより用意されうるが、また、あらかじめ単離された細胞(例えば、別の者により、別の時間において、かつ/又は別の目的のために単離された)を使用することによっても達せられうる。処置履歴又は転帰履歴を有する組織などのアーカイブ組織もまた、使用されうる。タンパク質又はヌクレオチドの単離及び/又は精製は、必要でない場合もある。
【0102】
本明細書において使用された、アッセイの「感度」とは、その転帰が陽性である対象のうち、陽性であると正しく同定された比率(例えば、対象が検査されつつある疾患又は医学的状態を伴う対象を、正しく同定する比率)を指す。例えば、これは、対象を、TBIを有さない対象から区別して、TBIを有すると正しく同定すること、対象を、軽度TBIを有する対象から区別して、中等度、重度又は中等度~重度のTBIを有すると、正しく同定すること、対象を、中等度、重度又は中等度~重度のTBIを有する対象から区別して、軽度TBIを有すると、正しく同定すること、対象を、TBIを有さない対象から区別して、中等度、重度又は中等度~重度のTBIを有すると、正しく同定すること、又は対象を、TBIを有さない対象から区別して、軽度TBIを有すると、正しく同定すること、対象を、イメージング又は頭部CTスキャン若しくはMRIから利益を得る可能性が高くない対象から区別して、イメージング又は頭部CTスキャン若しくはMRIから利益を得る可能性が高いと、正しく同定することなどを含みうる。
【0103】
本明細書において使用された、アッセイの「特異度」とは、その転帰が陰性である対象のうち、陰性であると正しく同定された比率(例えば、対象が検査されつつある疾患又は医学的状態を有さない対象を、正しく同定する比率)を指す。例えば、これは、対象を、TBIを有さない対象から区別して、TBIを有すると、正しく同定すること、対象を、軽度のTBIを有する対象から区別して、中等度、重度又は中等度~重度のTBIを有さないと、正しく同定すること、中等度、重度又は中等度~重度のTBIを有する対象から区別して、軽度のTBIを有さないと、正しく同定すること若しくは対象を、任意のTBIを有さないと、正しく同定すること又はTBIを有さない対象から区別して、軽度TBIを有すると、正しく同定することを含みうる。
【0104】
「較正組成物のシリーズ」とは、公知の濃度のUCH-L1を含む複数の組成物であって、組成物の各々が、シリーズ内の他の組成物とUCH-L1の濃度が異なる組成物を指す。
【0105】
本明細書において使用された「特異的結合」又は「~に特異的に結合すること」とは、抗体、タンパク質、又はペプチドの、第2の化学的分子種との相互作用を指す場合があり、この場合、相互作用は、化学的分子種上の特定の構造(例えば、抗原性決定基又はエピトープ)の存在に依存する;例えば、抗体は、タンパク質一般ではなく、特異的なタンパク質構造を認識し、これに結合する。抗体が、エピトープ「A」に対して特異的である場合、エピトープAを含有する分子(又は遊離のA、非標識A)の、標識「A」及び抗体を含有する反応物中の存在は、抗体に結合した標識Aの量を低減する。
【0106】
本明細書において互換的に使用された、「固相」又は「固体支持体」とは、(1)1つ以上の捕捉剤若しくは捕捉のための特異的結合パートナー又は(2)1つ以上の検出剤若しくは検出のための特異的結合パートナーを接合させ、かつ/又は誘引し、固定化させる、任意の材料を指す。固相は、捕捉剤を誘引し、固定化させる、その内因性の能力について選択されうる。代替的に、固相は、(1)捕捉剤若しくは捕捉のための特異的結合パートナー又は(2)検出剤若しくは検出のための特異的結合パートナーを誘引し、固定化させる能力を有する、連結剤を付加されている。例えば、連結剤は、捕捉剤(例えば、捕捉のための特異的結合パートナー)又は検出剤(例えば、検出のための特異的結合パートナー)自体若しくは(1)捕捉剤若しくは捕捉のための特異的結合パートナー又は(2)検出剤若しくは検出のための特異的結合パートナーへとコンジュゲートされた帯電物質に対して、逆向きに帯電した帯電物質を含みうる。一般に、連結剤は、固相上に固定化され(固相へと接合され)、結合反応を介して、(1)捕捉剤若しくは捕捉のための特異的結合パートナー又は(2)検出剤若しくは検出のための特異的結合パートナーを固定化させる能力を有する、任意の結合パートナー(好ましくは特異的結合パートナー)でありうる。連結剤は、アッセイの実施前に、又はアッセイの実施時に、捕捉剤の、固相材料への間接的結合を可能とする。例えば、固相は、例えば、試験管、マイクロ滴定ウェル、シート、ビーズ、微粒子、チップ及び当業者に公知の他の構成を含む、プラスチック、誘導体化プラスチック、磁性金属又は非磁性金属、ガラス又はシリコンでありうる。
【0107】
「特異的結合パートナー」とは、特異的結合対のメンバーである。特異的結合対は、化学物質又は物理的手段を介して、互いと特異的に結合する、2つの異なる分子を含む。したがって、一般的なイムノアッセイの、抗原と抗体との特異的結合対に加えて、他の特異的結合対は、ビオチン及びアビジン(又はストレプトアビジン)、炭水化物及びレクチン、相補的なヌクレオチド配列、エフェクター分子及び受容体分子、補因子及び酵素、酵素及び酵素阻害剤などを含みうる。さらに、特異的結合対は、元の特異的結合メンバーの類似体、例えば、解析物類似体であるメンバーを含みうる。免疫反応性の特異的結合メンバーは、抗原、抗原断片並びにモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体のほか、単離されたものであれ、組換えにより作製されたものであれ、これらの複合体及び断片を含む抗体を含む。
【0108】
本明細書において使用された、「安定性」とは、解析物、バイオマーカー(例えば、UCH-L1など)又は標的物質の(試料中などの)濃度の、時間経過にわたる変化を指す。安定性は、第1の検査値と、1つ以上の後続の検査値(例えば、第2の検査値、第3の検査値、第4の検査値、第5の検査値、第6の検査値、第7の検査値、第8の検査値、第9の検査値、第10の検査値など)との差違を計算することにより決定されうる。第1の検査値と、1つ以上の後続の検査値との差違が、10%(±10%)未満である場合、試料中の解析物、バイオマーカー又は標的物質は、安定であると考えられる。第1の検査値と、1つ以上の後続の検査値との差違が、10%(±10%)を超える場合、試料中の解析物、バイオマーカー又は標的物質は、安定であると考えられない。
【0109】
本明細書において使用された「統計学的に有意な」とは、2つ以上の変数の間の関係が、ランダムな偶然以外の何かにより引き起こされる可能性を指す。統計学的仮説検定は、データセットの結果が、統計学的に有意であるのかどうかを決定するのに使用される。統計学的仮説検定において、統計学的有意な結果は、検定統計量について観察されたp値が、研究について規定された有意性レベル未満である場合なら、いかなる場合にも達せられる。p値とは、少なくとも帰無仮説が真である場合に観察される結果と、少なくとも同程度に極端な結果を得る確率である。統計学的仮説解析の例は、ウィルコクソンの符合順位検定、t検定、カイ二乗検定又はフィッシャーの正確検定を含む。本明細書において使用された「著明な」とは、統計学的に有意であることが決定されていない変化(例えば、統計学的仮説検定にかけられていない可能性がある)を指す。
【0110】
本明細書において互換的に使用された、「対象」及び「患者」とは、哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット及びマウス、非ヒト霊長動物(例えば、カニクイザル又はアカゲザル、チンパンジーなどのサル)及びヒト)を含むがこれらに限定されない、任意の脊椎動物を指す。一部の実施形態において、対象は、ヒト又は非ヒトでありうる。一部の実施形態において、対象は、ヒトである。対象又は患者は、他の形態の処置を受けつつある場合がある。一部の実施形態において、対象が、ヒトである場合、対象は、脳血管発作(例えば、脳卒中)を患っているヒトを含まない。
【0111】
本明細書において、「~を処置する」、「~を処置すること」又は「処置」は各々、疾患及び/若しくは損傷又はこのような用語が適用される、このような疾患の、1つ以上の症状を阻止、緩和すること又はこれらの進行を阻害することについて記載するのに、互換的に使用される。対象の状態に依存して、用語はまた、疾患を予防することも指し、疾患の発生を予防すること又は疾患と関連する症状を予防することを含む。処置は、急性的に、又は慢性的に実施されうる。用語はまた、疾患への罹患の前における、疾患又はこのような疾患と関連する症状の重症度を軽減することも指す。罹患の前における、疾患の重症度のこのような予防又は低減は、医薬組成物の、投与時において疾患に罹患していない対象への投与を指す。「~を予防すること」はまた、疾患又はこのような疾患と関連する、1つ以上の症状の再発を予防することも指す。「処置」及び「治療的に」とは、「~を処置すること」が、上記において規定された通りである場合の、処置する行為を指す。本明細書において互換的に使用された「外傷性脳損傷」又は「TBI」とは、広範囲にわたる症状及び身体障害を伴う複合損傷を指す。TBIは、他の損傷と同様の、急性事象であることが最も多い。TBIは、「軽度」、「中等度」又は「重度」と分類されうる。TBIの原因は、多様であり、人力による物理的振盪、自動車事故、火器による損傷、脳血管発作(例えば、脳卒中)、転倒、爆発又は爆破及び他の種類の鈍的外傷を含む。TBIの他の原因は、1つ以上の化学物質又は毒素(火、カビ、アスベスト、害虫駆除剤及び殺虫剤、有機溶剤、塗料、糊、ガス(一酸化炭素、硫化水素及びシアン化物など)、有機金属(メチル水銀、テトラエチル鉛及び有機スズなど)、1つ以上の乱用薬物又はこれらの組合せ)の摂取及び/又はこれらへの曝露を含む。代替的に、TBIは、自己免疫疾患、代謝性障害、脳腫瘍、低酸素症、1つ以上のウイルス、髄膜炎、水頭症又はこれらの組合せを患うヒト対象において生じうる。若年成人及び老齢者は、TBIの危険性が最も高い年齢群である。本明細書の、ある特定の実施形態において、外傷性脳損傷又はTBIは、脳卒中などの脳血管発作を含まず、明確にこれを除外する。
【0112】
本明細書において使用された「軽度TBI」とは、意識喪失が短時間であり、通例数秒間若しくは数分間であり、かつ/又は意識混濁及び見当識の喪失が、1時間より短い脳損傷を指す。軽度TBIはまた、脳振盪、軽症の頭部外傷、軽症のTBI、軽症の脳損傷及び軽症の頭部損傷とも称される。MRI及びCTスキャンは、正常であることが多いが、軽度TBIを伴う個体は、頭痛、思考困難、記憶問題、注意欠陥、気分変動及び欲求不満などの認知問題を有しうる。
【0113】
軽度TBIは、最も高頻度のTBIであり、初期損傷時に、見逃されることが多い。典型的に、対象は、13~15(13~15又は14~15など)の間のGCS(Glasgow Coma Scale)数を有する。軽度TBIを伴う人々のうち、15パーセント(15%)は、3カ月間以上にわたり持続する症状を有する。軽度TBIは、頭部の強制的な運動又は精神状態の短い変化(意識混濁、見当識の喪失又は記憶喪失)を引き起こす衝撃又は30分間未満にわたる意識喪失の結果として規定される。軽度TBIの一般的な症状は、疲労感、頭痛、視覚障害、記憶喪失、注意/集中力の低下、睡眠障害、回転性めまい/平衡感覚の喪失、易刺激性(感情障害)、抑うつ感覚及び発作を含む。軽度TBIと関連する他の症状は、悪心、嗅覚喪失、光及び音への過敏性、気分の変化、迷子若しくは意識混濁及び/又は思考遅滞を含む。
【0114】
本明細書において使用された「中等度TBI」とは、意識喪失及び/又は意識混濁並びに見当識の喪失が、1~24時間の間であり、対象が、9~13(9~12又は9~13など)の間のGCS(Glasgow Coma Scale)数を有する脳損傷を指す。中等度TBIを伴う個体は、脳イメージング結果の異常を有する。本明細書において使用された「重度TBI」とは、意識喪失が、24時間を超え、損傷又は穿通性頭蓋骨損傷後の記憶喪失が、24時間より長く、対象が、3~8の間のGCS(Glasgow Coma Scale)数を有する脳損傷を指す。欠損は、高レベルの認知機能の機能障害~昏睡状態の範囲にわたる。生存者は、腕部又は脚部の機能の限定、発話又は言語の異常、思考能力の喪失又は感情問題を有しうる。重度損傷を伴う個体は、長期にわたる不応状態に置かれたままになりうる重度TBIを伴う多くの人々の場合、機能及び自立を最大化するために、長期にわたるリハビリが必要となることが多い。
【0115】
本明細書において使用された、「中等度~重度」のTBIとは、中等度~重度を含む、脳損傷のスペクトルを指し、したがって、中等度TBI単独、重度TBI単独及び組み合わされた中等度~重度のTBIを包含する。中等度~重度のTBIを患う対象は、3~13の間(3~12の間又は3~13の間など)のGCS(Glasgow Coma Scale)数を有しうる。例えば、臨床状況によって、対象は、初期に、中等度TBIを有すると診断されうるが、時間の経過(数分間、数時間又は数日間)を経て、重度TBIを有する対象へ進行しうる(例えば、脳出血が存在する状況におけるように)。このような対象は、「中等度~重度」として分類されうる患者の例となる。中等度~重度のTBIの一般的な症状は、注意に関する困難、集中力、散漫性、記憶、処理速度、混乱、固執、衝動性、言語処理及び/又は「実行機能」、発話された単語の無理解(受容失語症)、発話及び理解されることの困難(表現失語症)、発話の不明瞭、発話が極めて速い又は極めて遅い、読むときの問題、書くときの問題、接触、温度、運動の解釈、下肢の位置及び微細な識別、感覚的印象の、心理学的に有意味なデータへの統合又はパターン化に関する困難、部分的又は全体的な視覚の喪失、眼筋力の低下及び二重視覚(複視)、かすみ目、距離を判断するときの問題、非自発的な眼運動(眼振)、光不耐性(羞明)、聴覚問題、などの、聴力の低下又は喪失、耳が鳴ること(耳鳴り)、音に対する過敏性、嗅覚の喪失又は低下(無嗅覚)、味覚の喪失又は低下、てんかんと関連する痙攣であって、いくつかの種類であることが可能であり、意識、感覚的認知又は運動、腸及び膀胱の制御の破壊を伴いうる痙攣、睡眠障害、気力の喪失、食欲の変化、体内温度の調節、月経困難、依存性行動、感情能力、意欲の欠如、易刺激性、攻撃、抑うつ、脱抑制又は意識の否認/欠如を含む認知欠損を含む。
【0116】
本明細書において互換的に使用された「ユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1」又は「UCH-L1」とは、ヒトにおいて、UCH-L1遺伝子によりコードされ、作製されうる(例えば、他の種において、組換え手段により)、脱ユビキチン化酵素を指す。ユビキチンカルボキシル末端エステラーゼL1及びユビキチンチオールエステラーゼとしてもまた公知のUCH-L1は、その産物が、ユビキチンの、小型のC末端付加物を加水分解して、ユビキチン単量体を発生させる遺伝子ファミリーのメンバーである。
【0117】
「UCH-L1状態」とは、ある時点(UCH-L1の単一の測定値を伴う時点など)における、UCH-L1のレベル若しくは量、モニタリング(対象において、UCH-L1量の上昇又は低下を同定する反復検査を伴うモニタリングなど)と関連する、UCH-L1のレベル若しくは量、外傷性脳損傷(一次脳損傷であれ、かつ/又は二次脳損傷であれ)のための処置と関連する、UCH-L1のレベル若しくは量又はこれらの組合せを意味しうる。
【0118】
本明細書において、「変異体」は、アミノ酸の挿入、欠失又は保存的置換により、アミノ酸配列が異なるが、少なくとも1つの生物学的活性を保持するペプチド又はポリペプチドについて記載するのに使用される。「生物学的活性」の代表例は、特異的抗体による結合を受ける能力又は免疫反応を促進する能力を含む。本明細書において、変異体はまた、少なくとも1つの生物学的活性を保持するアミノ酸配列を伴う基準タンパク質と実質的に同一なアミノ酸配列を伴うタンパク質について記載するのにも使用される。当技術分野において、アミノ酸の保存的置換、すなわち、アミノ酸を、類似の特性(例えば、親水性、帯電の程度及び帯電領域の分布)を有する、異なるアミノ酸により置き換えることは、典型的に、小さな変化を伴うこととして当技術分野において認識されている。当技術分野において理解された通り、これらの小さな変化は、部分的に、アミノ酸の疎水性指数を検討することにより同定されうる(Kyteら、J.Mol.Biol.157:105~132(1982))。アミノ酸の疎水性指数は、その疎水性及び電荷の検討に基づく。当技術分野において、同様の疎水性指数を有するアミノ酸は、置換される場合があるが、なおも、タンパク質の機能を保持することが公知である。一態様において、±2の疎水性指数を有するアミノ酸は、置換される。アミノ酸の親水性もまた、生物学的機能を保持するタンパク質を結果としてもたらす置換を明らかにするのに使用されうる。ペプチドの文脈における、アミノ酸の親水性についての検討は、抗原性及び免疫原性とよく相関することが報告されている、有用な尺度である、このペプチドの局所平均親水性の最大値の計算を可能とする(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,554,101号)。同様の親水性値を有するアミノ酸による置換は、生物学的活性、例えば、当技術分野において理解された免疫原性を保持するペプチドを結果としてもたらしうる。置換は、互いから±2以内の親水性値を有するアミノ酸により実施されうる。アミノ酸の疎水性指数及び親水性値のいずれも、このアミノ酸の特定の側鎖の影響を受ける。生物学的機能と適合性であるアミノ酸置換は、疎水性、親水性、電荷、サイズ及び他の特性により明らかにされる通り、アミノ酸の相対的類似性に依存し、特に、これらのアミノ酸の側鎖に依存すると理解されることは、この観察と符合する。「変異体」はまた、抗原的に反応性の抗UCH-L1抗体の断片であって、アミノ酸配列内の、対応する抗UCH-L1抗体の断片と異なるが、なおも抗原的に反応性であり、UCH-L1との結合について、対応する抗UCH-L1抗体の断片と競合しうる断片を指すようにも使用されうる。「変異体」はまた、タンパク質分解、リン酸化又は他の翻訳後修飾によるような、異なる形でプロセシングされているが、その抗原反応性を保持する、ポリペプチド又はこの断片について記載するのにも使用されうる。
【0119】
本明細書において、「ベクター」とは、連結された別の核酸を運びうる核酸分子について記載するのに使用される。ベクターの1つの種類は、さらなるDNAセグメントがライゲーションされうる、環状二本鎖DNAループを指す、「プラスミド」である。ベクターの別の種類は、さらなるDNAセグメントが、ウイルスゲノムへとライゲーションされうる、ウイルスベクターである。ある特定のベクターは、これらが導入される宿主細胞内の自己複製が可能である(例えば、細菌の複製起点及び哺乳動物エピソームベクターを有する細菌ベクター)。他のベクター(例えば、哺乳動物の非エピソームベクター)は、宿主細胞へと導入されると、宿主細胞のゲノムへと組み込まれ、これにより、宿主ゲノムと共に複製されうる。さらに、ある特定のベクターは、作動的に連結される遺伝子の発現を方向付けることが可能である。本明細書において、このようなベクターは、「組換え発現ベクター」(又は、単に、「発現ベクター」)と称される。一般に、組換えDNA法において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態にあることが多い。プラスミドは、最も一般に、ベクターの形態で使用されるので、「プラスミド」と「ベクター」とは、互換的に使用されうる。しかし、ウイルスベクター(例えば、複製欠損性のレトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)などの、同等な機能を果たす、発現ベクターの他の形態も使用されうる。この点で、ベクターのRNA形(ウイルス性RNAベクターを含む)もまた、本開示の文脈において使用されうる。
【0120】
そうでないことが規定されない限りにおいて、本明細書において使用される技術用語及び科学用語は、当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有するものとする。例えば、本明細書において記載された、細胞培養法及び組織培養法、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学並びにタンパク質化学及び核酸化学及びハイブリダイゼーションとの関連において使用された用語法、並びにこれらについての技法は、周知の用語法及び技法であり、当技術分野において一般的に使用されている用語法及び技法である。用語の意味及び範囲は、明確であるものとするが、万一、なんらかの潜在的な曖昧さが生じた場合、本明細書において提示された定義が、任意の辞書又は外部の定義に対して優先される。さらに、文脈により、そうでないことが要求されない限りにおいて、単数形の用語は、複数形を含み、複数形の用語は、単数形を含むものとする。
【0121】
2.ユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)の、試料中レベルに影響を及ぼす解析前処理条件及びユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)レベルを測定する方法
本開示は、対象から得られた試料(例えば、血液試料(全血試料、血清試料又は血漿試料など))中のUCH-L1量を測定する方法の改善を対象とする。本明細書において記載された通り、ある特定の解析前の処理条件又は因子は、UCH-L1のレベル又は濃度に影響を及ぼし、場合によって、検査又はアッセイが、実施される(UCH-L1の、試料中量を検出及び/又は測定するように)まで、血液試料が、維持又は保存されつつある時間における、又はこの間の、UCH-L1のレベル又は濃度の上昇をもたらしうる。このようなUCH-L1のレベル又は濃度の上昇は、誤ったもの(すなわち、誤った上昇又は誤った高値)であり、疾患状態(TBIなど)の正確な反映でない場合があり、偽陽性結果をもたらしうる。したがって、本開示はまた、本明細書において記載された方法を実施することにより、検査又はアッセイを実施して、UCH-L1レベルを検出及び/又は測定する前に、対象から得られた血液試料中のUCH-L1レベルの、誤った増大(increase)すなわち上昇(rise)を回避又は防止する方法も対象とする。最後に、本開示はまた、検査又はアッセイを実施して、UCH-L1レベルUCH-L1の、血液試料中レベルを検出及び/又は測定する前の保存時に、このようなレベルの増大(increase)すなわち上昇(rise)を防止する又は回避するように、血液試料を安定化させる方法も対象とする。
【0122】
一実施形態において、UCH-L1レベル又は濃度に影響を及ぼすことが発見された解析前処理条件又は因子は、血液試料の処理時間、すなわち、血液試料が対象から得られた後(すなわち、検査するか又はアッセイを実施する前に)どのくらい迅速に処理されるのかである。一部の実施形態において、血液試料が対象から採取されたか又は得られた時点(しかし、検査するか又はアッセイを実施する前に)から約24時間以内に、対象から得られた血液試料(例えば、全血試料)を処理することが有利である。一部の実施形態において、血液試料が、対象から採取された時点から、約12時間以内、約10時間以内、約8時間以内、約6時間以内、約4時間以内、約2時間以内又は約1時間以内に、対象から得られた血液試料を処理することが有利である。他の実施形態において、試料が対象から得られた後の時間であって、試料が対象から得られた後、約1時間~約12時間、約1時間~約10時間、約1時間~約8時間、約1時間~約6時間、約1時間~約4時間又は約1時間~約2時間を含む時間のうちに、血液試料を処理することが有利である。一部の実施形態において、血液試料が、対象から採取された時点から、約12時間以下のうちに、対象から得られた血液試料を処理することが有利である。一部の実施形態において、血液試料が、対象から採取された時点から、約10時間以下のうちに、対象から得られた血液試料を処理することが有利である。一部の実施形態において、血液試料が、対象から採取された時点から、約8時間以下のうちに、対象から得られた血液試料を処理することが有利である。一部の実施形態において、血液試料が、対象から採取された時点から、約6時間以下のうちに、対象から得られた血液試料を処理することが有利である。一部の実施形態において、血液試料が、対象から採取された時点から、約4時間以下のうちに、対象から得られた血液試料を処理することが有利である。一部の実施形態において、血液試料が、対象から採取された時点から、約2時間以下のうちに、対象から得られた血液試料を処理することが有利である。一部の実施形態において、血液試料が、対象から採取された時点から、約1時間以下のうちに、対象から得られた血液試料を処理することが有利である。
【0123】
これらの実施形態に従い、処理時にわたって、試料が対象から得られた後~検査又はアッセイが実施された(例えば、UCH-L1を検出及び/又は測定する)時点の時間におけるか又はこの時間にわたり、血液試料の機械的攪拌(混合など)は、回避されるべきであることが見出された。言い換えれば、検査又はアッセイの実施まで、持続的混合は回避されるべきである。場合によって、処理時における血液試料の混合は、血液試料の溶血を引き起こし、UCH-L1を、試料へと放出し、得られるUCH-L1レベルの上昇を引き起こしうる。しかし、当業者は、血液試料を処理する場合に、若干の機械的攪拌又は混合が必要であることを認識するが、溶血をもたらす程度の混合は、一般に、回避されるべきである。例えば、血液試料を、回収チューブ(例えば、ヘパリンチューブ、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)チューブなど)内に存在しうる、任意の抗凝固剤と混合するのに必要な時間より長い時間にわたり、血液試料は混合されるべきではない。別の態様において、血液試料は、5秒間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、10秒間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、15秒間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、20秒間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、25秒間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、30秒間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、40秒間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、50秒間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、60秒間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、2分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、3分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、4分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、5分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、5分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、2分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、3分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、4分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、5分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、6分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、7分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、8分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、9分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、10分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、11分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、12分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、13分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、14分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、15分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、16分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、17分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、18分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、19分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、20分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、25分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。さらに別の態様において、血液試料は、30分間より長い時間にわたり混合されるべきではない。
【0124】
これらの実施形態に従う、別の態様において、血液試料は、処理時の多様な温度であって、例えば、約2℃~約8℃~ほぼ室温(例えば、約20℃~約25℃)の範囲の温度を含む温度において維持又は調整されうる。血液試料は、検査又はアッセイを実施して、UCH-L1レベルを評価する(例えば、検出及び/又は測定する)前の、任意の時間であって、試料が対象から得られた後、約24時間以下を含む時間にわたり、これらの温度範囲内に維持されうる。場合によって、血液試料を、約2℃~約8℃の範囲の温度において、試料が対象から得られた後約8時間以下であり、かつ、試料がUCH-L1濃度について評価されるまでにわたり、維持することが有利である。場合によって、血液試料を、ほぼ室温(例えば、約20℃~約25℃)において、試料が対象から得られた後、約8時間以下であり、かつ、試料がUCH-L1濃度について評価されるまでにわたり、維持することが有利である。一部の実施形態において、全血アッセイ(例えば、i-STAT(登録商標)及びi-STAT(登録商標)Alinity)は、本明細書において記載される通り、混合又は長時間にわたって室温に曝露することを含みうる様式で、試料を処理する必要があり、それによって、UCH-L1濃度の評価に対して影響を及ぼす場合がある。一部の実施形態において、血液試料は、約2℃~約8℃の温度において維持されうる。例えば、血液試料が、全試料である場合、試料は、約2℃~約8℃の温度において維持されうる。別の例として、血液試料が、血漿試料である場合、試料は、約2℃~約8℃の温度において維持されうる。さらに別の例において、血液試料が、血清試料である場合、試料は、約2℃~約8℃の温度において維持されうる。別の実施形態において、血液試料は、室温(例えば、約20℃~約25℃)において維持されうる。例えば、血液試料が、血漿試料である場合、試料は、室温において維持されうる。さらに別の例において、血液試料が、血清試料である場合、試料は、室温において維持されうる。
【0125】
全血試料の処理は、対象から血液試料を得るのに使用される任意のステップ又は方法のほか、多様な血液成分を、血清画分、血漿画分、及び赤血球(RBC)画分へと分離するのに使用される任意のステップ又は方法を含みうる。処理はまた、血液試料を、UCH-L1及びTBIの他のバイオマーカーなどの、多様な成分について検査、検出、測定又は評価することに関与する、任意のステップ又は方法も含みうる。UCH-L1のレベルを評価することが、全血試料を処理することの一部として含まれない(例えば、UCH-L1の評価が、血液試料が対象から得られる施設とは別個の検査室において実施される)場合、UCH-L1試料を検査、検出又は測定することは、全血試料が処理されてから短い時間の後すなわちその直後に生じうる。一部の実施形態において、本開示の方法は、不適切な保存条件及び/又は処理法に起因して生じる、UCH-L1レベルの上昇を回避するために、試料が、対象から得られた後、約8時間以内に、対象に由来する全血試料を処理するステップを含む。
【0126】
一部の実施形態において、処理するステップは、UCH-L1の血漿中レベル及び/又は血清中レベルを評価するために、血清及び/又は血漿を、試料中の血液細胞から分離することを含む。この工程は、一般に、血液分画と称され、血液試料を、例えば、遠心分離、クロマトグラフィー、エタノール分画、LOC(lab-on-a-chip)細胞分取(例えば、磁気細胞分取)、サイズ除外クロスフロー濾過、誘電泳動法、PFF(pinched-flow fractionation)、慣性マイクロ流体チップ、電気流体力を使用する分離及びこれらの組合せなどの、当技術分野で公知である、規定の技法にかけることによりなされうる。
【0127】
一部の実施形態において、血液の分画は、試料の、血漿成分、バフィーコート(白血球及び血小板)及び赤血球(erythrocytes(red blood cells))への分離をもたらす遠心分離によりなされうる。対象から得られた血液試料を回収及び保存するのに使用される回収チューブはまた、例えば、遠心分離の間、血漿を血液細胞から分離するのにも使用されうる。様々な回収チューブは、本明細書において記載された方法において使用されうる。例えば、回収チューブは、血液成分の分画を容易とするように、多様な成分を含有する場合もあり、又はこれらを含有するようにコーティングされる場合もある。一部の実施形態において、回収チューブは、不可欠の凝固成分であるカルシウムをキレート化させることにより凝固を防止するのに使用されうる、1つ以上の抗凝固剤(EDTAなど)又は抗凝固剤である、EDTAの塩(K2EDTA又はK3EDTAなど)を含有しうる。さらに、EDTA回収チューブにより採取された血液試料から単離された血漿もまた、UCH-L1及びTBIの他のバイオマーカーなどの、血漿中に見出される、様々なタンパク質を測定又は検出するのに使用される場合があり、遺伝子素材も、EDTA回収チューブのバフィーコートから、容易に保存されうる。使用されうる、他の抗凝固剤の例は、限定せずに述べると、ヘパリンリチウム又はヘパリンナトリウムなどのヘパリン、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、EGTAの塩、ヒルジン、ヘパリン、クエン酸、クエン酸の塩、シュウ酸、シュウ酸の塩(例えば、シュウ酸カリウム、シュウ酸ナトリウムなど)及びこれらの組合せを含む。
【0128】
一部の実施形態において、処理するステップは、UCH-L1の、血清中レベルを評価するために、試料中の血漿及び血液細胞から血清を分離することを含む。血清とは一般に、凝固が生じた後で残存する血液成分を指し;血清は、凝固因子もまた枯渇させた、無細胞の液体である。血清は、本明細書の前出において記載された方法を使用して、試料中の血漿及び血液細胞から分離されうる。具体的に、血清分離チューブ(SST)は、血液細胞から、血清を分離する(遠心分離時のように)のに使用されうる。具体的に、SSTは、シリコーンゲルなどのゲルを含有しうるチューブである。遠心分離されると、シリコーンゲルは、バフィーコートの上に、層を形成し、血清が、検査及び関連する目的のために、より効果的に除去されることを可能とする。SSTは、場合によって、金、上部に金を伴う赤又は赤とグレーとのマーブルである止栓を指す、「マーブルトップチューブ」、「ターゲットトップチューブ」又は「ゴールドトップチューブ」と呼ばれる。マーブルトップチューブはまた、一部の臨床状況において、「タイガートップ」とも称される。
【0129】
本開示は、UCH-L1の、血液試料中量を測定する方法の改善であって、試料を処理するステップが、UCH-L1の、試料中量を測定する検査を実施することを含む改善を対象とする。一部の実施形態において、UCH-L1を検出、測定、定量、又は評価するための検査は、タンパク質をアッセイするための、任意の利用可能な方法であって、イムノアッセイ、化学分析、SDS PAGE及びウェスタンブロット解析、電気泳動解析、タンパク質アッセイ、競合的結合アッセイ、機能的タンパク質アッセイ、クロマトグラフィー、分光法などを含むがこれらに限定されない方法を含む。一部の実施形態において、本明細書において記載された種類などのイムノアッセイ(例えば、i-STAT(登録商標)及びi-STAT(登録商標)Alinity)は、UCH-L1の、全血試料中レベルを測定するために有利である。
【0130】
一部の実施形態において、本開示は、UCH-L1の、血液試料中量を測定する方法の改善であって、UCH-L1を測定するために、イムノアッセイベースの検査を実施することを含む改善を対象とする。イムノアッセイ検査は、試料を、同時に、又は任意の順序において逐次的に、UCH-L1上又はUCH-L1断片上のエピトープに結合して、捕捉抗体-UCH-L1抗原複合体を形成する、少なくとも1つの捕捉抗体、加えて、検出可能な標識を含み、捕捉抗体が結合していないUCH-L1上のエピトープに結合して、UCH-L1抗原-検出抗体複合体を形成する、少なくとも1つの検出抗体と接触させることにより、捕捉抗体-UCH-L1抗原-検出抗体複合体が形成されることを含みうる。一部の実施形態において、UCH-L1の、試料中量又は試料中濃度を測定することは、捕捉抗体-UCH-L1抗原-検出抗体複合体内の検出可能な標識により発生したシグナルに基づく。
【0131】
3.ヒト対象が、頭部への損傷を負ったのかどうかについての診断及び査定の一助となる方法
別の実施形態において、本明細書において記載された方法は、対象におけるUCH-L1のレベルを決定することにより、ヒト対象が、頭部への損傷を負ったか又は負った可能性があるのかどうかの診断及び査定の一助となるために使用されうる。本方法は、推測される頭部への損傷を伴うヒト対象における外傷性脳損傷の程度を決定するための、例えば、対象が、軽度外傷性脳損傷を有するのか、中等度~重度の外傷性脳損傷を有するのか、又は軽度外傷性脳損傷を有するのか、中等度~重度の外傷性脳損傷を有するのかを決定するための、一助となりうる。本明細書において使用された、「対象が、軽度外傷性脳損傷を有するのか、中等度~重度の外傷性脳損傷を有するのかを決定すること」とは、対象が、軽度外傷性脳損傷又は中等度~重度の外傷性脳損傷を有する可能性が、そうでない場合より高いことを決定するのに、他の情報(例えば、臨床評価データ)と共に、前述の方法が使用されうるという事実を指す。方法は、下記において記載される抗UCH-L1抗体又はこの抗体断片を使用して、対象における外傷性脳損傷を検出又は評価するのに使用されうる。方法は、(a)1つ以上の抗UCH-L1抗体又はこの抗体断片を使用して、対象から試料を得るステップ、(b)UCH-L1の試料中レベルを決定するステップ、及び(c)対象が、軽度外傷性脳損傷(TBI)を負ったのか、中等度~重度のTBIを負ったのかを、UCH-L1レベルに基づき決定するステップを含みうる。一部の実施形態において、(1)早期バイオマーカーの試料中レベルが、早期バイオマーカーの基準レベルより高い場合、対象は、中等度、重度若しくは中等度~重度の外傷性脳損傷を有すると決定される、又は(2)早期バイオマーカーの試料中レベルが、早期バイオマーカーの基準レベルより低い場合、対象は、軽度外傷性脳損傷を有すると決定される。試料は、血液試料でありうる。
【0132】
代替的に、方法は、(a)1つ以上の抗UCH-L1抗体又はこの抗体断片を使用して、対象から得られた試料中のUCH-L1レベルを決定するステップ、及び(b)対象が、軽度外傷性脳損傷(TBI)を負ったのか又は中等度~重度のTBIを負ったのかを、UCH-L1レベルに基づき決定するステップを含みうる。一部の実施形態において、(1)早期バイオマーカーの試料中レベルが早期バイオマーカーの基準レベルより高い場合、対象は、中等度、重度若しくは中等度~重度の外傷性脳損傷を有すると決定される、又は(2)早期バイオマーカーの試料中レベルが早期バイオマーカーの基準レベルより低い場合、対象は、軽度外傷性脳損傷を有すると決定される。試料は、血液試料でありうる。
【0133】
UCH-L1を測定及び評価することにより、方法は、他の市販のUCH-L1イムノアッセイと比較して、より多くの疾患が、より正確に診断され、その後、より成功裏に処置されることを可能とする。方法は、自動システム又は半自動システムにおける使用に適合させられうる。
【0134】
一般に、UCH-L1の基準レベルは、被験試料を、UCH-L1についてアッセイしたときに得られた結果を評価するためのベンチマークとして利用されうる。一般に、このような比較を行う場合に、UCH-L1の基準レベルは、解析物の存在、量又は濃度の、TBIの特定の病期若しくはエンドポイント又は特定の徴候との連関又は関連が成立させられうるような、十分な回数及び適切な条件下において、特定のアッセイを行うことにより得られる。典型的に、UCH-L1の基準レベルは、基準対象(又は対象の集団)についてのアッセイにより得られる。測定されるUCH-L1は、このUCH-L1断片、この分解産物及び/又は酵素によるこの切断産物を含みうる。ある特定の実施形態において、UCH-L1の基準レベルは、頭部損傷を負っていない、対照の対象と相関しうる。一般に、基準レベルを決定するのに使用された同じアッセイは、試料をアッセイ又は検査するのに使用される。
【0135】
この方法における基準レベルは、外傷性脳損傷を有する、又はこれを有することが推測される患者における、UCH-L1のレベルでありうる。一部の実施形態において、UCH-L1の、5pg/mL、10pg/mL、20pg/mL、30pg/mL、40pg/mL、50pg/mL、60pg/mL、70pg/mL、80pg/mL、90pg/mL、100pg/mL、500pg/mL、1000pg/mL、5000pg/mL、10000pg/mL又は50000pg/mL以上の血清中レベルは、対象を、外傷性脳損傷を有するものとして同定する。任意選択的に、場合によって、UCH-L1の、100000pg/mL、500000pg/mL、1000000pg/mL、150000pg/mL、200000pg/mL又は500000pg/mL以上の血清中レベルは、対象を、外傷性脳損傷を有するものとして同定する。標準化がなされなければ、基準レベルは、方法及びアッセイの間で変動しうることが公知である。したがって、本明細書において記載された方法は、任意の適切な基準レベルに適用されることが意図される。
【0136】
一部の実施形態において、本方法は、下記において記載される通り、中等度~重度の外傷性脳損傷を有すると予測されたヒト対象を、外傷性脳損傷処置により処置するステップをさらに含む。一部の実施形態において、本方法は、下記において記載される通り、軽度の外傷性脳損傷を有すると予測されたヒト対象をモニタリングするステップをさらに含む。
【0137】
4.対象が外傷性脳損傷を発症する危険性を決定する一助となるための方法
さらに別の実施形態において、本明細書において記載された方法は、また、下記において記載される抗UCH-L1抗体又はこれらの抗体断片を使用して、対象におけるUCH-L1のレベルを決定することにより、対象が、外傷性脳損傷(中等度外傷性脳損傷~重度外傷性脳損傷など)を有するか又は外傷性脳損傷を発症する危険性があるのかどうかを決定する一助としても使用されうる。したがって、特定の実施形態において、本開示はまた、本明細書において論じられ、当技術分野において公知である、外傷性脳損傷を有するか又はこれを発症する危険性がある対象が、治療又は処置の候補であるのかどうかを決定するための方法も提示する。本明細書において使用された、「対象が、外傷性脳損傷を有するか又はこれを発症する危険性があるのかどうかを決定すること」とは、対象が、外傷性脳損傷を有する可能性が、そうでない場合より高いことを決定するために、他の情報(例えば、臨床評価データ)と共に、前述の方法が使用されうるという事実を指す。一般に、対象は、少なくとも(i)頭部への損傷を受けた、又はこれを受けたことが推測される対象;(ii)1つ以上の化学物質及び/若しくは毒素を摂取した、及び/若しくはこれらへと曝露された対象;(iii)自己免疫疾患、代謝性障害、脳腫瘍、低酸素症、1つ以上のウイルス、髄膜炎、水頭症を患う、若しくはこれらの任意の組合せを患う対象又は(iv)(i)~(iii)の任意の組合せ又は(v)TBIを有する、又はTBIの危険性があると診断された対象(例えば、自己免疫疾患、代謝性障害、脳腫瘍、低酸素症、1つ以上のウイルス、髄膜炎、水頭症若しくはこれらの組合せを患う対象など)及び/又は本明細書において記載された、望ましくない(すなわち、臨床的に所望されない)濃度若しくは量のUCH-L1若しくはUCH-L1断片を顕示する対象である。
【0138】
具体的に、このような方法は、(a)本明細書において記載された方法、又は当技術分野において公知の方法を使用して、対象に由来する被験試料中のUCH-L1の濃度又は量を決定するステップ;及び(b)ステップ(a)において決定されたUCH-L1の濃度又は量を基準レベルと比較するステップであって、ステップ(a)において決定されたUCH-L1の濃度又は量が基準レベルに対して好ましい場合、対象が本明細書において論じられ、当技術分野において公知である、外傷性脳損傷を有さないか又はその危険性がないことが決定されるステップを含みうる。しかし、ステップ(a)において決定されたUCH-L1の濃度又は量が、基準レベルに対して好ましくない場合、対象は、本明細書において論じられ、当技術分野において公知である、外傷性脳損傷を有する、又はこの危険性があることが決定される。
【0139】
この方法における基準レベルは、外傷性脳損傷を有する、又はこれを有することが推測される患者における、UCH-L1のレベルでありうる。一部の実施形態において、UCH-L1の、5pg/mL、10pg/mL、20pg/mL、30pg/mL、40pg/mL、50pg/mL、60pg/mL、70pg/mL、80pg/mL、90pg/mL、100pg/mL、500pg/mL、1000pg/mL、5000pg/mL、10000pg/mL又は50000pg/mL以上の血清中レベルは、対象を、外傷性脳損傷を有するものとして同定する。任意選択的に、場合によって、UCH-L1の、100000pg/mL、500000pg/mL、1000000pg/mL、150000pg/mL、200000pg/mL又は500000pg/mL以上の血清中レベルは、対象を、外傷性脳損傷を有するものとして同定する。標準化がなされなければ、基準レベルは、方法及びアッセイの間で変動しうることが公知である。したがって、本明細書において記載された方法は、任意の適切な基準レベルに適用されることが意図される。
【0140】
一部の実施形態において、本方法は、下記において記載される通り、外傷性脳損傷を伴うヒト対象を、外傷性脳損傷処置により処置し、かつ/又はヒト対象をモニタリングするステップをさらに含む。
【0141】
5.頭部への損傷を負ったヒト対象に対して、CTスキャンを実施するのかどうかの決定の一助となる方法
本開示は、とりわけ、推測される、頭部への損傷を負ったか又は負った可能性があるヒト対象に対して、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンを実施するのかどうかについて決定する一助となる方法に関する。本明細書において使用された「ヒト対象に対して、CTスキャンを実施するのかどうかについての決定」とは、対象の頭部CTスキャンが陽性となる可能性が、そうでない場合より高いことを決定するために、他の情報(例えば、臨床評価データ)と共に、前述の方法が使用されうるという事実を指す。具体的に、このような方法は、(a)推測される、頭部への損傷後約24時間以内に、対象から得られた試料に対するアッセイを実施して、UCH-L1の、試料中レベルを測定又は検出するステップ及び(b)UCH-L1の試料中レベルが、UCH-L1の基準レベルより高い場合に、対象に対して、CTスキャンを実施し、UCH-L1の試料中レベルが、UCH-L1の基準レベルより低い場合に、対象に対して、CTスキャンを実施しないステップを含みうる。試料は、試料でありうる。
【0142】
本発明のこの態様において、このような対象から得られた血液試料が、本明細書において記載される通り、検査又はアッセイが推測される頭部への損傷後約24時間以内に実施されることを可能とするように、本明細書の前出において記載された方法を使用して、可能な限り迅速に(例えば、約8時間以下の時間内に)処理されることを、当業者は理解する。
【0143】
UCH-L1を測定及び評価することにより、本方法は、他の市販のUCH-L1イムノアッセイと比較して、対象に対して、より正確にCTを実施し、その後、より成功裏に対象を処置する必要を許容する。本方法は、自動システム又は半自動システムにおける使用に適合させられうる。
【0144】
一般に、UCH-L1の基準レベルは、被験試料を、UCH-L1についてアッセイしたときに得られた結果を評価するためのベンチマークとしても利用されうる。一般に、このような比較を行う場合に、UCH-L1の基準レベルは、解析物の存在、量又は濃度の、TBIの特定の病期若しくはエンドポイント又は特定の徴候との連関又は関連が成立させられうるような、十分な回数及び適切な条件下において、特定のアッセイを行うことにより得られる。典型的に、UCH-L1の基準レベルは、基準対象(又は対象の集団)についてのアッセイにより得られる。測定されるUCH-L1は、このUCH-L1断片、この分解産物及び/又は酵素によるこの切断産物を含みうる。ある特定の実施形態において、UCH-L1の基準レベルは、頭部損傷を負っていない対照の対象と相関しうる。
【0145】
この方法における基準レベルは、外傷性脳損傷を有する、又はこれを有することが推測される患者における、UCH-L1のレベルでありうる。一部の実施形態において、UCH-L1の、5pg/mL、10pg/mL、20pg/mL、30pg/mL、40pg/mL、50pg/mL、60pg/mL、70pg/mL、80pg/mL、90pg/mL、100pg/mL、500pg/mL、1000pg/mL、5000pg/mL、10000pg/mL又は50000pg/mL以上の血清中レベルは、対象を、外傷性脳損傷を有するものとして同定する。任意選択的に、場合によって、UCH-L1の、100000pg/mL、500000pg/mL、1000000pg/mL、150000pg/mL、200000pg/mL又は500000pg/mL以上の血清中レベルは、対象を、外傷性脳損傷を有するものとして同定する。標準化がなされなければ、基準レベルは、方法及びアッセイの間で変動しうることが公知である。したがって、本明細書において記載された方法は、任意の適切な基準レベルに適用されることが意図される。
【0146】
一部の実施形態において、本方法は、下記において記載される通り、外傷性脳損傷を伴うヒト対象を、外傷性脳損傷処置により処置し、かつ/又はヒト対象をモニタリングするステップをさらに含む。
【0147】
6.頭部への損傷を負った可能性があるヒト対象における、外傷性脳損傷の程度を決定する一助となる方法
本開示は、推測される頭部への損傷を伴うヒト対象における、外傷性脳損傷の程度を決定する一助となる方法、例えば、対象が、軽度外傷性脳損傷又は中等度~重度の外傷性脳損傷を有するのかどうかを決定する一助となる方法に、関する。本明細書において使用された、「推測される頭部への損傷を伴うヒト対象における、外傷性脳損傷の程度を決定すること」とは、対象が、軽度の外傷性脳損傷又は中等度~重度の外傷性脳損傷を有する可能性が、そうでない場合より高いことを決定するのに、他の情報(例えば、臨床評価データ)と共に、前述の方法が使用されうるという事実を指す。本方法は、対象から得られた、少なくとも2つの試料に対して、アッセイを実施するステップ及び少なくとも2つの試料中に、UCH-L1を検出するステップを含む。第1の試料は、損傷から24時間以内に、ヒト対象から採取され、第2の試料は、第1の試料が採取された、約3~約6時間後に、ヒト対象から採取される。UCH-L1は、頭部への損傷の発生後、約2~約24時間以内に現れる。UCH-L1の存在の開始は、推測される損傷の発生後、約0~約6時間以内に現れる。UCH-L1のレベルは、第1の試料及び第2の試料の各々について決定される。UCH-L1のレベルは、低下又は上昇することが決定される。外傷性脳損傷の程度は、UCH-L1のレベルが、第1の試料から第2の試料へ、低下するのか、上昇するのか、又は同じレベルを維持するのかに基づき、対象において決定される。UCH-L1は、推測される損傷後、約0~約6時間以内に上昇し、次いで、外傷性脳損傷を伴う対象において、低下又は上昇する。一部の実施形態において、UCH-L1の存在の開始は、頭部への損傷後、約0、約0.5時間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、又は約6時間以内に現れる。
【0148】
本発明のこの態様において、このような対象から得られた血液試料が、本明細書において記載される通り、検査又はアッセイが、推測される、頭部への損傷後約24時間以内に実施されることを可能とするように、本明細書の前出において記載された方法を使用して、可能な限り迅速に(例えば、約8時間以下の時間内に)処理されることを、当業者は理解する。
【0149】
一部の実施形態において、第1の試料が、推測される損傷から24時間以内である第1の時点において対象から採取され、第2の試料は、第1の時点の後である第2の時点において対象から採取され、UCH-L1のレベルが第1の試料から第2の試料へ低下する場合に、対象は、軽度又は軽度~重度の外傷性脳損傷を有することが決定される。一部の実施形態において、UCH-L1は、上昇したレベルから、少なくとも約5%低下する。例えば、UCH-L1レベルは、上昇したレベルから、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約200%、約300%、約400%、約500%、約600%、約700%、約800%、約900%、又は約1000%低下しうる。一部の実施形態において、UCH-L1は、上昇したレベルから、約0.1分の1以下、約0.2分の1以下、約0.3分の1以下、約0.4分の1以下、約0.5分の1以下、約0.55分の1以下、約0.6分の1以下、約0.7分の1以下、約0.73分の1以下、約0.8分の1以下、約0.9分の1以下、約1分の1以下、約1.5分の1以下、約2分の1以下、約3分の1以下、約4分の1以下、約5分の1以下、約6分の1以下、約7分の1以下、約8分の1以下、約9分の1以下、約10分の1以下、約11分の1以下、約12分の1以下、約13分の1以下、約14分の1以下、約15分の1以下、約16分の1以下、約17分の1以下、約18分の1以下、約19分の1以下又は約20分の1以下に低下する。一部の実施形態において、UCH-L1は、上昇したレベルから、約0.1分の1を超える、約0.2分の1を超える、約0.3分の1を超える、約0.4分の1を超える、約0.5分の1を超える、約0.55分の1を超える、約0.6分の1を超える、約0.7分の1を超える、約0.73分の1を超える、約0.8分の1を超える、約0.9分の1を超える、約1分の1を超える、約1.5分の1を超える、約2分の1を超える、約3分の1を超える、約4分の1を超える、約5分の1を超える、約6分の1を超える、約7分の1を超える、約8分の1を超える、約9分の1を超える、約10分の1を超える、約11分の1を超える、約12分の1を超える、約13分の1を超える、約14分の1を超える、約15分の1を超える、約16分の1を超える、約17分の1を超える、約18分の1を超える、約19分の1を超える又は約20分の1を超えるレベルに低下する。
【0150】
一部の実施形態において、第2の試料は、第1の試料が得られた約3時間~約6時間後、例えば、第1の試料が得られた後、約1時間~約10時間以内に得られる。一部の実施形態において、第2の時点の試料は、第1の試料が得られた後、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間又は約10時間以内に、得られる。
【0151】
一部の実施形態において、本方法は、下記において記載される通り、中等度~重度の外傷性脳損傷を有すると評価された対象を、外傷性脳損傷処置により処置するステップをさらに含む。一部の実施形態において、方法は、下記において記載される通り、軽度外傷性脳損傷を有すると評価されたヒト対象をモニタリングするステップをさらに含む。
【0152】
7.対象における外傷性脳損傷の進行をモニタリングする方法
さらに別の実施形態において、本明細書において記載された方法は、また、下記において記載される抗UCH-L1抗体又はこれらの抗体断片を使用して、対象におけるUCH-L1のレベルを決定することにより、対象における疾患及び/又は外傷性脳損傷などの損傷の進行をモニタリングする一助としても使用されうる。本明細書において使用された、「疾患及び/又は損傷の進行をモニタリングすること」とは、対象における疾患が、持続、進行又は悪化している可能性が、そうでない場合より高いのかどうかを決定するために、他の情報(例えば、臨床評価データ)と共に、前述の方法が使用されうるという事実を指す。最適な場合、方法は、(a)下記において記載される抗UCH-L1抗体又はこの抗体断片を使用して、対象に由来する被験試料中のUCH-L1の濃度又は量を決定するステップ、(b)下記において記載される抗UCH-L1抗体又はこの抗体断片を使用して、対象に由来する後続の被験試料中のUCH-L1の濃度又は量を決定するステップ及び(c)ステップ(b)において決定されたUCH-L1の濃度又は量を、ステップ(a)において決定されたUCH-L1の濃度又は量と比較するステップであって、ステップ(b)において決定された濃度又は量が、ステップ(a)において決定されたUCH-L1の濃度又は量と比較されたときに、不変であるか又は好ましくない場合、対象における疾患が、持続、進行又は悪化していることが決定されるステップを含む。比較により、ステップ(b)において決定されたUCH-L1の濃度又は量が、ステップ(a)において決定されたUCH-L1の濃度又は量と比較して好ましい場合、対象における疾患は、途絶、退縮又は改善していることが決定される。
【0153】
任意選択的に、本方法は、ステップ(b)において決定されたUCH-L1の濃度又は量を、例えば、基準レベルと比較するステップをさらに含む。さらに、任意選択的に、本方法は、比較が、ステップ(b)において決定されたUCH-L1の濃度又は量が、例えば、基準レベルに照らして望ましくなく変更されたことを示す場合、対象を、1つ以上の医薬組成物により、ある期間にわたり処置するステップを含む。
【0154】
なお、さらに本方法は、下記において記載される1つ以上の医薬組成物又は他の外傷性脳損傷処置による処置を受ける対象における処置をモニタリングするのに使用されうる。具体的に、このような方法は、対象に1つ以上の医薬組成物が投与される前に、対象に由来する第1の被験試料を用意するステップを伴う。次に、対象に由来する第1の被験試料中のUCH-L1の濃度又は量は、(例えば、本明細書において記載された方法又は当技術分野で公知の方法を使用して)決定される。UCH-L1の濃度又は量が決定された後、次いで、任意選択的に、UCH-L1の濃度又は量が基準レベルと比較される。第1の被験試料中において決定されたUCH-L1の濃度又は量が基準レベルより低濃度又は低量である場合、対象は、1つ以上の医薬組成物により処置されないか、又は、代替的に、対象は、1つ以上の医薬組成物により処置されうる。第1の被験試料中において決定されたUCH-L1の濃度又は量が、基準レベルより高濃度又は高量である場合、対象は、1つ以上の医薬組成物により処置されるか、又は、代替的に、対象は、1つ以上の医薬組成物により処置されない。対象が、1つ以上の医薬組成物により処置される時間は、当業者により決定されうる(例えば、時間は、約7日間~約2年間、好ましくは、約14日間~約1年間でありうる)。
【0155】
次いで、1つ以上の医薬組成物による処置コースにおいて、第2の被験試料及び後続の被験試料が、対象から得られる。被験試料の数及び前記被験試料が対象から得られた時点は、それほど重要ではない。例えば、第2の被験試料は、対象が1つ以上の医薬組成物を最初に投与された7日間後に得られてもよく、第3の被験試料は、対象が1つ以上の医薬組成物を最初に投与された2週間後に得られてもよく、第4の被験試料は、対象が1つ以上の医薬組成物を最初に投与された3週間後に得られてもよく、第5の被験試料は、対象が1つ以上の医薬組成物を最初に投与された4週間後に得られてもよい、などである。
【0156】
第2の被験試料又は後続の被験試料の各々が、対象から得られた後、第2の被験試料中又は後続の被験試料中の、UCH-L1の濃度又は量が、(例えば、本明細書において記載された方法又は当技術分野で公知の方法を使用して)決定される。次いで、第2の被験試料及び後続の被験試料の各々において決定された、UCH-L1の濃度又は量は、第1の被験試料中において決定された、UCH-L1の濃度又は量(例えば、元は、任意選択的に、基準レベルと比較された被験試料)と比較される。ステップ(c)において決定されたUCH-L1の濃度又は量が、ステップ(a)において決定されたUCH-L1の濃度又は量と比較して好ましい場合、対象における疾患は、停止、退縮又は改善していることが決定され、対象は、引き続き、ステップ(b)の、1つ以上の医薬組成物を投与されうる。しかし、ステップ(c)において決定された濃度又は量が、ステップ(a)において決定されたUCH-L1の濃度又は量と比較されたときに、不変である、又は好ましくない場合、対象における疾患が、持続、進行又は悪化していることが決定され、対象は、ステップ(b)において対象へと投与された、高濃度の1つ以上の医薬組成物により処置される場合もあり、対象は、ステップ(b)において、対象へと投与された1つ以上の医薬組成物と異なる1つ以上の医薬組成物により処置される場合もある。具体的に、対象は、前記対象のUCH-L1レベルを低下又は下落させるように、対象が既に施された1つ以上の医薬組成物と異なる1つ以上の医薬組成物により処置される場合もある。
【0157】
一般に、反復検査(例えば、疾患の進行及び/又は処置に対する応答のモニタリング)がなされうるアッセイのために、第2の被験試料又は後続の被験試料は、第1の被験試料が対象から得られた後の時点において得られる。具体的に、対象に由来する第2の被験試料は、第1の被験試料が対象から得られた、数分間、数時間、数日間、数週間又は数年間後に得られうる。例えば、第2の被験試料は、対象に由来する第1の被験試料が得られた、約1分、約5分、約10分、約15分、約30分、約45分、約60分、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18 時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約2週、約3週、約4週、約5週、約6週、約7週、約8週、約9週、約10週、約11週、約12週、約13週、約14週、約15週、約16週、約17週、約18週、約19週、約20週、約21週、約22週、約23週、約24週、約25週、約26週、約27週、約28週、約29週、約30週、約31週、約32週、約33週、約34週、約35週、約36週、約37週、約38週、約39週、約40週、約41週、約42週、約43週、約44週、約45週、約46週、約47週、約48週、約49週、約50週、約51週、約52週、約1.5年、約2年、約2.5年、約3.0年、約3.5年、約4.0年、約4.5年、約5.0年、約5.5.年、約6.0年、約6.5年、約7.0年、約7.5年、約8.0年、約8.5年、約9.0年、約9.5年、又は約10.0年間後の時点において、対象から得られうる。
【0158】
疾患の進行をモニタリングするのに使用される場合、上記のアッセイは、急性状態を患う対象における疾患の進行をモニタリングするのに使用されうる。救命救急状態としてもまた公知の急性状態とは、例えば、心血管系又は排泄系に関与する、急性かつ致死性の疾患又は他の極めて重篤な医学的状態を指す。典型的に、救命救急状態とは、病院ベースの状況(救急治療室、集中治療室、外傷センター又は他の救急ケア状況を含むがこれらに限定されない)における急性医学的介入又は医療補助員又は他の分野ベースの医療従事者による投与を要求する状態を指す。救命救急状態のために、反復モニタリングは、一般に、短い時間枠内において、すなわち、数分間、数時間又は数日間(例えば、約1分、約5分、約10分、約15分、約30分、約45分、約60分、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日又は約7日)のうちになされ、初期アッセイもまた、一般に、短い時間枠内において、例えば、疾患又は状態の発生から、約数分間、数時間又は数日間のうちになされる。
【0159】
アッセイはまた、慢性状態又は非急性状態を患う対象における疾患の進行をモニタリングするのにも使用されうる。非救命救急状態又は非急性状態とは、例えば、心血管系及び/又は排泄系に関与する、急性かつ致死性の疾患又は他の極めて重篤な医学的状態以外の状態を指す。典型的に、非急性状態は、持続期間が長期間又は慢性である状態を含む。非急性状態のために、反復モニタリングは、一般に、数時間、数日間、数週間又は数年間(例えば、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約2週、約3週、約4週、約5週、約6週、約7週、約8週、約9週、約10週、約11週、約12週、約13週、約14週、約15週、約16週、約17週、約18週、約19週、約20週、約21週、約22週、約23週、約24週、約25週、約26週、約27週、約28週、約29週、約30週、約31週、約32週、約33週、約34週、約35週、約36週、約37週、約38週、約39週、約40週、約41週、約42週、約43週、約44週、約45週、約46週、約47週、約48週、約49週、約50週、約51週、約52週、約1.5年、約2年、約2.5年、約3.0年、約3.5年、約4.0年、約4.5年、約5.0年、約5.5.年、約6.0年、約6.5年、約7.0年、約7.5年、約8.0年、約8.5年、約9.0年、約9.5年又は約10.0年)などの、長い時間枠によりなされ、初期アッセイもまた、一般に、長い時間枠内において、例えば、疾患又は状態の発生から、約数時間、数日間、数か月又は数年間のうちになされる。
【0160】
さらに、上記のアッセイは、対象から得られた全血、血清又は血漿などの、1つの供給源から得られた第1の被験試料を使用して実施されうる。任意選択的に、次いで、上記のアッセイは、当該対象から得られた、別の供給源から得られた第2の被験試料を使用して反復されてもよい。例えば、第1の被験試料が全血から得られる場合、第2の被験試料は血清又は血漿から得られうる。第1の被験試料及び第2の被験試料を使用するアッセイから得られた結果は、比較されうる。比較は、対象における疾患又は状態の状況を評価するのに使用されうる。
【0161】
疾患の進行及び/若しくは処置をモニタリングする、又は対象が外傷性脳損傷を発症する危険性を決定するために利用された基準レベルに照らして、UCH-L1又はUCH-L1断片の量又は濃度は、「不変」でありうるか、「好適」でありうる(又は「好適に変更されうる」)か又は「望ましくない」場合がある(又は「望ましくなく変更されうる」)。「上昇した(elevated)」又は「上昇した(increased)」とは、典型的若しくは正常なレベル若しくは範囲(例えば、基準レベル)以上である、又は別の基準レベル又は範囲(例えば、初期試料又はベースライン試料)以上である、被験試料中の量又は濃度を指す。「低下した」又は「低減された」という用語は、典型的若しくは正常なレベル若しくは範囲(例えば、基準レベル)以下である、又は別の基準レベル又は範囲(例えば、初期試料又はベースライン試料)以下である、被験試料中の量又は濃度を指す。「変更された」という用語は、典型的若しくは正常なレベル若しくは範囲(例えば、基準レベル)を超えて、又は別の基準レベル又は範囲(例えば、初期試料又はベースライン試料)を超えて変更された(上昇又は低下させられた)、試料中の量又は濃度を指す。
【0162】
UCH-L1の典型的又は正常なレベル又は範囲は、標準的な慣行に従い規定される。いわゆるレベルの変更又は変更は、実験における誤差又は試料のばらつきによって説明されえない、典型的若しくは正常なレベル若しくは範囲又は基準レベル若しくは基準範囲と比較した、任意の正味の変化が見られる場合に、生じたと考えられうる。したがって、特定の試料中において測定されたレベルは、いわゆる正常対象に由来する、同様の試料中において決定されたレベル又はレベルの範囲と比較される。この文脈において、「正常対象」とは、検出可能な疾患又は障害を伴わない個体であり、「正常」(場合によって、「対照」とも称される)な患者又は集団とは、例えば、それぞれ、検出可能な疾患又は障害を呈しない患者又は集団である。「見かけ上正常な対象」とは、UCH-L1が、評価されていない、又は評価されつつある対象である。解析物が、正常において、検出不能である(例えば、正常レベルはゼロである、又は正常集団の約25~約75百分位数の範囲内にある)が、被験試料中において検出される場合に、並びに解析物が、被験試料中、正常レベルより高レベルにおいて存在する場合に、解析物のレベルは、「上昇した」という。したがって、本開示は、とりわけ、外傷性脳損傷を有する、又はこれらを有する危険性がある対象についてスクリーニングする方法を提示する。
【0163】
8.他の因子を伴う診断法又は評価法
上記された、診断法、予後診断法及び/又は評価法は、診断、予後診断及び評価のための他の因子の使用をさらに含みうる。一部の実施形態において、外傷性脳損傷が、GCS(Glasgow Coma Scale)を使用して診断される場合もあり、外傷性脳損傷の転帰が、GOSE(Extended Glasgow Outcome Scale)を使用して予測される場合もある。他の検査、スケール又は指標もまた、単独で、又はGCS(Glasgow Coma Scale)と組み合わせて使用されうる。例は、RLAS(Ranchos Los Amigos Scale)である。RLAS(Ranchos Los Amigos Scale)は、意識、認知、行動及び環境との相互作用のレベルを測定する。RLAS(Ranchos Los Amigos Scale)は、レベルI:応答なし;レベルII:一般的な応答;レベルIII:局所的応答;レベルIV:混乱(興奮);レベルV:混乱(不適切);レベルVI:混乱(適切);レベルVII:自動的(適切)及びレベルVIII:意図的(適切)を含む。
【0164】
CTスキャン結果に基づく、他の分類システムは、当技術分野で公知である、任意の分類システムなどの、患者における転帰を予測するのに使用されうる。例は、患者を、脳の非造影CTスキャンについての所見に基づく、昇順重度の6つの類型(I~VI)に分類する、外傷性脳損傷のマーシャル分類である。重度の大きな類型は、予後診断不良であり、生存率も低い。マーシャル分類は、主に、2つの特色:1)正中線のシフト及び/又は基底槽の圧迫により決定される、腫脹の程度、並びに2)「高密度又は混合密度の病変」と称される、挫傷/出血の存在及びサイズに関する。別の例は、さらなる変数(例えば、くも膜下出血)及び認識されているマーシャルシステムの限界の一部に対処しようとする試みであって、複数種類の損傷を有する患者を分類しようとする取組みなどの試みを組み込む、ロッテルダムスコアである。ロッテルダム分類は、4つの独立にスコア化された要素を含む。マーシャルシステムと同様に、ロッテルダム分類は、1)基底槽の圧迫の程度及び2)正中線シフトの程度を含む。しかし、ロッテルダム分類は、挫傷を含まず、大きな病変を、3)硬膜外血腫に限定し、4)脳室内出血及び/又はくも膜下出血を追加する。これらの各々にスコアが与えられ、総計に1を加えて、これらのスコアが集計される。スコアが大きいほど、予後診断不良であり、生存率も低い。
【0165】
ポイントオブケアデバイス以外の、一部の測定器(例えば、Abbott Laboratories製の測定器であるARCHITECT(登録商標)及び他のコア検査測定器など)は、UCH-L1の、25,000pg/mLを超える(higher又はgreater)試料中レベルを測定することが可能でありうる。本明細書において記載された方法の使用は、本明細書において記載された利益(例えば、25,000pg/mL以下の尺度、5logのダイナミックレンジ、ダイナミックレンジにわたるアッセイの直線性、20マイクロリットル未満の試料容量中のUCH-L1尺度、検出域の拡大など)のうちの1又は複数を、これらのデバイス上においてもたらしうる。
【0166】
他の検出法は、ナノ小孔デバイス又はナノウェルデバイスの使用又はこれらの上における使用を含む。ナノポアデバイスの例については、参照によりその全体において本明細書に組み込まれた、国際特許公開第2016/161402号において記載されている。ナノウェルデバイスの例については、参照によりその全体において本明細書に組み込まれた、国際特許公開第2016/161400号において記載されている。
【0167】
9.UCH-L1の、他のバイオマーカーとの組合せ
本明細書において記載された抗体は、疾患に特異的な、1つ以上のバイオマーカー又はイムノアッセイと組み合わせた、UCH-L1のレベル及び濃度を検出及び測定する、様々な方法において使用されうる。本開示は、UCH-L1の、疾患に特異的な、1つ以上のバイオマーカー又はイムノアッセイとの組合せが、健常対照と、疾患を伴う個体との、UCH-L1を単独で測定することと比較して、より良好な識別をもたらすことを想定する。例えば、UCH-L1及びさらなる外傷性脳損傷バイオマーカーのパネルを測定することは、健常対照と、疾患を伴う個体との、UCH-L1単独のパネルと比較して、より良好な識別をもたらしうる。UCH-L1の、少なくとも1つ以上のバイオマーカーとの組合せは、健常対照と、軽度又は中等度~重度の外傷性脳損傷を有する個体との、より良好な識別をもたらしうる。
【0168】
1つ以上のバイオマーカーの例は、グリア原線維性酸性タンパク質(GFAP)、S100カルシウム結合性タンパク質B(S100b)、脳脂質結合性タンパク質(BLBP)、アルドラーゼC(ALDOC)、星状細胞リンタンパク質15(PEA15)、グルタミンシンターゼ(GS)及びクリスタリンB鎖(CRYAB)である。
【0169】
10.外傷性脳損傷を患う対象の処置及びモニタリング
上記された方法において、軽度外傷性脳損傷又は中等度~重度の外傷性脳損傷などの外傷性脳損傷を有すると同定又は評価された対象は、処置又はモニタリングされうる。一部の実施形態において、方法は、外傷性脳損傷を有すると評価されたヒト対象を、当技術分野において公知である任意の処置などの、外傷性脳損傷処置により処置するステップをさらに含む。例えば、外傷性脳損傷の処置は、頭部への損傷の重症度に応じて、様々な形態を取りうる。例えば、軽度TBIを患う対象の場合、処置は、休息、スポーツなどの身体活動を控えること、日向に出るときの光線の回避又はサングラスの着用、頭痛又は偏頭痛を緩和するための投薬、抗悪心薬などのうちの1つ以上を含みうる。重度TBIを患う患者のための処置は、1つ以上の適切な薬物(例えば、利尿剤、抗痙攣薬、個体を鎮静させ、薬物誘導性昏睡へと導く薬物など)又は他の医薬若しくは生物医薬(TBIの処置のために公知の医薬又は将来開発される医薬)、1つ以上の手術手順(例えば、血腫の除去、頭蓋骨骨折の修復、減圧開頭術など)及び1つ以上の治療(例えば、1つ以上のリハビリ、認知行動学的治療、アンガーマネージメント、心理カウンセリングなど)を含みうる。一部の実施形態において、方法は、外傷性脳損傷(例えば、軽度又は中等度~重度の外傷性脳損傷)を有すると評価されたヒト対象をモニタリングするステップをさらに含む。一部の実施形態において、軽度外傷性脳損傷又は重度外傷性脳損傷などの外傷性脳損傷を有すると同定された対象は、CTスキャン又はMRIによりモニタリングされうる。
【0170】
11.UCH-L1を測定する方法
上記された方法において、UCH-L1レベルは、イムノアッセイ、タンパク質免疫沈降、免疫電気泳動、化学解析、SDS-PAGE及びウェスタンブロット解析、タンパク質免疫染色などの抗体依存的方法などの電気泳動解析、タンパク質アッセイ、競合的結合アッセイ、機能的タンパク質アッセイ、又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)若しくは液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)などのクロマトグラフィー法若しくは分光法などの、任意の手段により測定されうる。また、当業者に公知の臨床化学フォーマットのアッセイも利用されうる。例えば、臨床化学フォーマットは、1つの抗体を伴うアッセイ又は抗体を伴わないアッセイを含みうる。臨床化学フォーマットのために使用されうる解析器の例については、米国特許公開第2016/0320422号及び同第2015/0112630号において記載されている。
【0171】
一部の実施形態において、UCH-L1のレベルを測定するステップは、試料を、第1の特異的結合メンバー及び第2の特異的結合メンバーと接触させるステップを含む。一部の実施形態において、第1の特異的結合メンバーは、捕捉抗体であり、第2の特異的結合メンバーは、検出抗体である。一部の実施形態において、UCH-L1のレベルを測定するステップは、試料を、同時に、又は任意の順序において逐次的に、(1)UCH-L1上又はUCH-L1断片上のエピトープに結合して捕捉抗体-UCH-L1抗原複合体(例えば、UCH-L1捕捉抗体-UCH-L1抗原複合体)を形成する捕捉抗体(例えば、UCH-L1捕捉抗体)、及び(2)検出可能な標識を含み、捕捉抗体が結合していないUCH-L1上のエピトープに結合して、UCH-L1抗原-検出抗体複合体(例えば、UCH-L1抗原-UCH-L1検出抗体複合体)を形成する検出抗体(例えば、UCH-L1検出抗体)と接触させることにより、捕捉抗体-UCH-L1抗原-検出抗体複合体(例えば、UCH-L1捕捉抗体-UCH-L1抗原-UCH-L1検出抗体複合体)が形成されること、並びにUCH-L1の、試料中量又は試料中濃度を、捕捉抗体-UCH-L1抗原-検出抗体複合体内の検出可能な標識により発生したシグナルに基づき測定することを含む。
【0172】
一部の実施形態において、第1の特異的結合メンバーは、固体支持体上に固定化される。一部の実施形態において、第2の特異的結合メンバーは、固体支持体上に固定化される。一部の実施形態において、第1の特異的結合メンバーは、下記で記載されるUCH-L1抗体である。
【0173】
一部の実施形態において、試料は、希釈される、又は希釈されない。試料は、約1~約25マイクロリットル、約1~約24マイクロリットル、約1~約23マイクロリットル、約1~約22マイクロリットル、約1~約21マイクロリットル、約1~約20マイクロリットル、約1~約18マイクロリットル、約1~約17マイクロリットル、約1~約16マイクロリットル、約15マイクロリットル又は約1マイクロリットル、約2マイクロリットル、約3マイクロリットル、約4マイクロリットル、約5マイクロリットル、約6マイクロリットル、約7マイクロリットル、約8マイクロリットル、約9マイクロリットル、約10マイクロリットル、約11マイクロリットル、約12マイクロリットル、約13マイクロリットル、約14マイクロリットル、約15マイクロリットル、約16マイクロリットル、約17マイクロリットル、約18マイクロリットル、約19マイクロリットル、約20マイクロリットル、約21マイクロリットル、約22マイクロリットル、約23マイクロリットル、約24マイクロリットル又は約25マイクロリットルでありうる。一部の実施形態において、試料は、約1~約150マイクロリットル若しくはこれ未満又は約1~約25マイクロリットル若しくはこれ未満である。
【0174】
ポイントオブケアデバイス以外の、一部の測定器(例えば、Abbott Laboratories製の測定器であるARCHITECT(登録商標)及び他のコア検査測定器など)は、UCH-L1の、25,000pg/mL以上の試料中レベルを測定することが可能でありうる。
【0175】
他の検出法は、ナノポアデバイス又はナノウェルデバイスの使用を含む、又はこれらにおける使用に適合させられうる。ナノポアデバイスの例については、参照によりその全体において本明細書に組み込まれた、国際特許公開第2016/161402号において記載されている。ナノウェルデバイスの例については、参照によりその全体において本明細書に組み込まれた、国際特許公開第2016/161400号において記載されている。
【0176】
12.ユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)抗体
本明細書において記載された方法は、「UCH-L1抗体」と称される、ユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(「UCH-L1」)(又はこの断片)に特異的に結合する単離抗体を使用しうる。UCH-L1抗体は、UCH-L1状態を外傷性脳損傷の尺度として評価するか、UCH-L1の試料中の存在を検出するか、UCH-L1の試料中量を定量するか、若しくはUCH-L1の試料中の存在を検出し、かつ、UCH-L1の試料中量を定量するために、使用されうる。
【0177】
a)ユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)
「ユビキチンC末端ヒドロラーゼ」としてもまた公知のユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)(「UCH-L1」)は、脱ユビキチン化酵素である。UCH-L1は、遺伝子ファミリーのメンバーであり、その産物は、ユビキチンの小型のC末端付加物を加水分解して、ユビキチン単量体を発生させる。UCH-L1の発現は、ニューロン及びびまん性神経内分泌系の細胞並びにそれらの腫瘍に、高度に特異的である。UCH-L1は、全てのニューロン内に、豊富に存在し(全脳タンパク質のうちの、1~2%を占める)、とりわけ、ニューロン及び精巣/卵巣において発現される。UCH-L1の触媒三残基は、そのヒドロラーゼ活性の一因となる、90位におけるシステイン、176位におけるアスパラギン酸及び161位におけるヒスチジンを含有する。
【0178】
ヒトUCH-L1は、以下のアミノ酸配列:
【0179】
【化1】
を有しうる。ヒトUCH-L1は、配列番号1の断片又は変異体でありうる。UCH-L1の断片は、5~225アミノ酸の間、10~225アミノ酸の間、50~225アミノ酸の間、60~225アミノ酸の間、65~225アミノ酸の間、100~225アミノ酸の間、150~225アミノ酸の間、100~175アミノ酸の間又は175~225アミノ酸の間の長さでありうる。断片は、配列番号1に由来する、連続番号のアミノ酸を含みうる。
【0180】
b)UCH-L1認識抗体
抗体は、UCH-L1、この断片、UCH-L1のエピトープ又はこの変異体に結合する抗体である。抗体は、抗UCH-L1抗体の断片又はこの変異体若しくは誘導体でありうる。抗体は、ポリクローナル又はモノクローナル抗体でありうる。抗体は、キメラ抗体、単鎖抗体、アフィニティー成熟抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体又はFab断片などの抗体断片又はこれらの混合物でありうる。抗体の断片又は誘導体は、F(ab’)2断片、Fv断片又はscFv断片を含みうる。抗体の誘導体は、ペプチド模倣体により作製されうる。さらに、単鎖抗体を作製するために記載されている技法は、単鎖抗体を作製するように適合させられうる。
【0181】
抗UCH-L1抗体は、キメラ抗UCH-L1又はヒト化抗UCH-L1抗体でありうる。一実施形態において、ヒト化抗体及びキメラ抗体のいずれも、一価である。一実施形態において、ヒト化抗体及びキメラ抗体のいずれも、Fc領域へと連結された、単一のFab領域を含む。
【0182】
ヒト抗体は、ファージディスプレイ技術又はヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニックマウスにより導出されうる。ヒト抗体は、ヒトのインビボにおける免疫応答の結果として作出及び単離されうる。例えば、Funaroら、BMC Biotechnology、2008(8):85を参照されたい。したがって、抗体は、ヒトの産物であることが可能であり、動物レパートリーではない場合がある。抗体は、ヒト由来であるため、自己抗原に対する反応性の危険性は、最小化されうる。代替的に、標準的な酵母ディスプレイライブラリー及び酵母ディスプレイ技術は、ヒト抗UCH-L1抗体を選択及び単離するのに使用されうる。例えば、ナイーブヒト単鎖可変断片(scFv)のライブラリーは、ヒト抗UCH-L1抗体を選択するのに使用されうる。トランスジェニック動物は、ヒト抗体を発現させるのに使用されうる。
【0183】
ヒト化抗体は、所望の抗原に結合する非ヒト種抗体に由来する抗体分子であって、非ヒト種に由来する、1つ以上の相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン分子に由来するフレームワーク領域を有する抗体分子でありうる。
【0184】
抗体は、それが、当技術分野において公知の抗体と異なる生物学的機能を保有するという点で、公知の抗体と識別可能である。
【0185】
(1)エピトープ
抗体は、UCH-L1(配列番号1)、その断片又はその変異体に、免疫特異的に結合しうる。抗体は、エピトープ領域内の、少なくとも3アミノ酸、少なくとも4アミノ酸、少なくとも5アミノ酸、少なくとも6アミノ酸、少なくとも7アミノ酸、少なくとも8アミノ酸、少なくとも9アミノ酸又は少なくとも10アミノ酸を免疫特異的に認識することが可能であり、これらに結合しうる。抗体は、エピトープ領域のうちの、少なくとも3連続アミノ酸、少なくとも4連続アミノ酸、少なくとも5連続アミノ酸、少なくとも6連続アミノ酸、少なくとも7連続アミノ酸、少なくとも8連続アミノ酸、少なくとも9連続アミノ酸又は少なくとも10連続アミノ酸を有するエピトープを免疫特異的に認識することが可能であり、これらに結合しうる。
【0186】
c)抗体の調製/作製
抗体は、当業者に周知の技法を含む、様々な技法のうちのいずれかにより調製されうる。一般に、抗体は、従来の技法を介して、又は組換え体であってもよい抗体の作製を可能とするための、適切な細菌細胞宿主若しくは哺乳動物細胞宿主への抗体の遺伝子、重鎖及び/若しくは軽鎖のトランスフェクションを介して、モノクローナル抗体の作出を含む細胞培養法により、作製されうる。「トランスフェクション」という用語の多様な形態は、外因性DNAの、原核宿主細胞又は真核宿主細胞への導入のために一般に使用されている、多種多様な技法、例えば、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどを包含することが意図される。抗体を、原核宿主細胞又は真核宿主細胞において発現させることが可能であるが、そのような真核細胞(そして、特に、哺乳動物の細胞)は、原核細胞より、アセンブルし、適正にフォールディングされ、免疫学的に活性である抗体を分泌する可能性が高いため、抗体の、真核細胞内の発現が好ましく、哺乳動物宿主細胞内の発現が最も好ましい。
【0187】
組換え抗体を発現させるための、例示的な哺乳動物宿主細胞は、例えば、Kaufman及びSharp、J.Mol.Biol.、159:601~621(1982)において記載されているようにDHFR選択用マーカーと共に使用されるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub及びChasin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77:4216~4220(1980)において記載されているdhfr-CHO細胞を含む)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞を含む。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが、哺乳動物宿主細胞へと導入される場合、抗体は、宿主細胞内の抗体の発現又はより好ましくは宿主細胞が増殖される培養培地への抗体の分泌を可能とするのに十分な時間にわたり、宿主細胞を培養することにより作製される。抗体は、標準的なタンパク質精製法を使用して、培養培地から回収されうる。
【0188】
宿主細胞はまた、Fab断片又はscFv分子などの、機能的抗体断片を作製するのにも使用されうる。上記の手順に対する変動は、実施されうることが理解される。例えば、宿主細胞に、抗体の軽鎖及び/又は重鎖の機能的断片をコードするDNAをトランスフェクトすることが所望されうる。組換えDNA技術はまた、目的の抗原への結合に必要でない軽鎖及び重鎖の一方又は両方をコードするDNAの一部又は全部を除去するのにも使用されうる。また、このような切断型DNA分子から発現させた分子も、抗体に包含される。加えて、1つの重鎖及び1つの軽鎖が、抗体(すなわち、ヒトUCH-L1に結合する抗体)であり、他の重鎖及び軽鎖が、ヒトUCH-L1以外の抗原に特異的である、二官能性抗体も、抗体を、標準的な化学的架橋法を介して、第2の抗体へと架橋することにより作製されうる。
【0189】
抗体又はこの抗原結合性部分を組換え発現させるための好ましい系において、抗体重鎖及び抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターが、リン酸カルシウム媒介型トランスフェクションにより、dhfr-CHO細胞へと導入される。組換え発現ベクター内において、高レベルの遺伝子の転写を駆動するように、抗体重鎖遺伝子及び抗体軽鎖遺伝子の各々が、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントへと作動的に連結される。組換え発現ベクターはまた、メトトレキサートによる選択/増幅を使用するベクターをトランスフェクトされたCHO細胞の選択を可能とするDHFR遺伝子も保有する。抗体の重鎖及び軽鎖の発現を可能とするように、選択された形質転換体の宿主細胞が培養され、無傷抗体が培養培地から回収される。組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞にトランスフェクトし、形質転換体について選択し、宿主細胞を培養し、抗体を培養培地から回収するのに、標準的な分子生物学法が使用される。なお、さらに、組換え抗体を合成する方法は、組換え抗体が合成されるまで、宿主細胞を、適切な培養培地中において培養することによる。方法は、組換え抗体を、培養培地から単離するステップをさらに含みうる。
【0190】
モノクローナル抗体を調製する方法は、所望の特異性を有する抗体を作製することが可能な不死細胞株の調製を伴う。このような細胞株は、免疫化された動物から得られた脾臓細胞から作製されうる。動物は、UCH-L1又はこの断片及び/若しくは変異体により免疫化されうる。動物を免疫化するのに使用されるペプチドは、ヒトFc、例えば、ヒト抗体のFc(fragment crystallizable)領域又はテール領域をコードするアミノ酸を含みうる。次いで、脾臓細胞が、例えば、骨髄腫細胞融合パートナーとの融合により免疫化される。様々な融合法が利用されうる。例えば、脾臓細胞及び骨髄腫細胞が、非イオン性界面活性剤と、数分間にわたり組み合わされ、次いで、低密度において、ハイブリッド細胞の増殖を支援するが、骨髄腫細胞の増殖を支援しない選択培地上に播種される。このような一技法は、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン(HAT)選択を使用する。別の技法は、電気融合を含む。十分な時間、通例、約1~2週間の後、ハイブリッド体のコロニーが観察される。単一のコロニーが選択され、それらの培養物上清は、ポリペプチドに対する結合活性について試験される。高度な反応性及び特異性を有するハイブリドーマが使用されうる。
【0191】
モノクローナル抗体は、増殖するハイブリドーマコロニーの上清から単離されうる。加えて、収率を増強するように、ハイブリドーマ細胞株の、マウスなどの適切な脊椎動物宿主の、腹腔への注射などの多様な技法が利用されうる。次いで、モノクローナル抗体は、腹水又は血液から採取されうる。夾雑物は、クロマトグラフィー、ゲル濾過、沈殿及び抽出などの従来の技法により、抗体から除去されうる。アフィニティークロマトグラフィーは、抗体を精製する工程において使用されうる方法の例である。
【0192】
タンパク質分解酵素であるパパインは、IgG分子を優先的にいくつかの断片に切断して、これらのうちの2つの(F(ab)断片)の各々が、無傷の抗原結合部位を含む、共有結合的ヘテロ二量体を含む断片をもたらす。酵素であるペプシンは、IgG分子を切断して、両方の抗原結合性部位を含む、F(ab’)2断片を含む、いくつかの断片をもたらすことが可能である。
【0193】
Fv断片は、IgMの、優先的なタンパク質分解性切断により作製されうるが、まれな場合に、IgG免疫グロブリン分子又はIgA免疫グロブリン分子の優先的なタンパク質分解性切断によっても作製されうる。Fv断片は、組換え法を使用して導出されうる。Fv断片は、天然抗体分子の抗原認識能及び抗原結合能の大半を保持する抗原結合部位を含む、非共有結合的VH::VLヘテロ二量体を含む。
【0194】
抗体、抗体断片又は誘導体は、それぞれ、CDRに対する支持をもたらし、CDRの、互いに対する空間的関係を規定する、重鎖及び軽鎖のフレームワーク(「FR」)のセットの間に挿入された、重鎖及び軽鎖の相補性決定領域(「CDR」)のセットを含みうる。CDRのセットは、重鎖V領域又は軽鎖V領域からなる、3つの超可変領域を含有しうる。
【0195】
必須の特異性を有する抗体を作製又は単離する、他の適する方法であって、当技術分野において公知の方法を使用して、例えば、Cambridge Antibody Technologies(Cambridgeshire、UK)、MorphoSys(Martinsreid/Planegg、Del.)、Biovation(Aberdeen、Scotland、UK)、BioInvent(Lund、Sweden)などの、多様な市販品の販売元から市販されている、ペプチドライブラリー又はタンパク質ライブラリー(例えば、バクテリオファージライブラリー、リボソームライブラリー、オリゴヌクレオチドライブラリー、RNAライブラリー、cDNAライブラリー、酵母ライブラリーなどのディスプレイライブラリーであるがこれらに限定されない)から組換え抗体を選択する方法を含むがこれらに限定されない方法が使用されうる。米国特許第4,704,692号;同第5,723,323号;同第5,763,192号;同第5,814,476号;同第5,817,483号;同第5,824,514号;同第5,976,862号を参照されたい。代替的な方法は、ヒト抗体のレパートリーを作製することが可能な、トランスジェニック動物の免疫化(例えば、SCIDマウス、Nguyenら(1997)、Microbiol.Immunol.、41:901~907;Sandhuら(1996)、Crit.Rev.Biotechnol.、16:95~118;Erenら(1998)、Immunol.、93:154~161)であって、当技術分野において公知であり、かつ/又は本明細書において記載された、トランスジェニック動物の免疫化に依拠する。このような技法は、リボソームディスプレイ(Hanesら(1997)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:4937~4942;Hanesら(1998)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:14130~14135);単一細胞による抗体作製技術(例えば、選択リンパ球抗体法(「SLAM」)(米国特許第5,627,052号、Wenら(1987)J.Immunol.、17:887~892;Babcookら(1996)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:7843~7848);ゲル微小液滴及びフローサイトメトリー(Powellら(1990)、Biotechnol.、8:333-337;One Cell Systems(Cambridge、Mass.);Grayら(1995)、J.Imm.Meth.、182:155~163;Kennyら(1995)、Bio/Technol.、13:787~790);B細胞の選択(Steenbakkersら(1994)、Molec.Biol.Reports、19:125~134(1994))を含むがこれらに限定されない。
【0196】
アフィニティー成熟抗体は、当技術分野において公知である、多数の手順のうちのいずれか1つにより作製されうる。例えば、Marksら、BioTechnology、10:779~783(1992)は、VHとVLとのドメインシャッフリングによるアフィニティー成熟について記載している。CDR残基及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発については、Barbasら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、91:3809~3813(1994);Schierら、Gene、169:147~155(1995);Yeltonら、J.Immunol.、155:1994~2004(1995);Jacksonら、J.Immunol.、154(7):3310~3319(1995);Hawkinsら、J.Mol.Biol.、226:889~896(1992)により記載されている。選択的突然変異誘発位置及び活性増強アミノ酸残基を伴う接触位置又は超変異位置における選択的突然変異については、米国特許第6,914,128B1号において記載されている。
【0197】
抗体の変異体はまた、抗体をコードするポリヌクレオチドを、トランスジェニック動物又はこのような抗体をそれらのミルク中に産生するヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジなどの哺乳動物をもたらすのに適する宿主へと送達することを使用しても調製されうる。これらの方法は、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,827,690号;同第5,849,992号;同第4,873,316号;同第5,849,992号;同第5,994,616号;同第5,565,362号及び同第5,304,489号において記載されている。
【0198】
抗体の変異体はまた、このような抗体、指定された部分又は変異体を、植物の部分又はこれらから培養された細胞において産生する、トランスジェニック植物及び培養植物細胞(例えば、タバコ、トウモロコシ、及びウキクサであるがこれらに限定されない)をもたらすように、ポリヌクレオチドを送達することによっても調製されうる。例えば、Cramerら(1999)、Curr.Top.Microbiol.Immunol.、240:95~118及びこの文献において引用された参考文献は、例えば、誘導性プロモーターを使用する、大量の組換えタンパク質を発現するトランスジェニックのタバコ葉の産生について記載している。トランスジェニックトウモロコシは、他の組換え系において産生された、又は天然の供給源から精製された哺乳動物タンパク質と同等の生物学的活性を伴う哺乳動物タンパク質を、市販品生産のレベルにおいて発現させるのに使用されている。例えば、Hoodら、Adv.Exp.Med.Biol.(1999)、464:127~147及びこの文献において引用された参考文献を参照されたい。抗体の変異体はまた、単鎖抗体(scFv)などの抗体断片を含むトランスジェニック植物の種子であって、タバコの種子及びバレイショの塊茎を含む種子からも大量に作製されている。例えば、Conradら(1998)、Plant Mol.Biol.、38:101~109及びこの文献において引用された参考文献を参照されたい。したがって、抗体はまた、公知の方法に従いトランスジェニック植物を使用しても作製されうる。
【0199】
抗体の誘導体は、例えば、外因性配列を付加して、免疫原性を修飾する、又は結合、アフィニティー、オン速度、オフ速度、アビディティー、特異性、半減期若しくは他の任意の適切な特徴を低減、増強若しくは修飾することにより作製されうる。一般に、可変領域及び定常領域の非ヒト配列を、ヒトアミノ酸又は他のアミノ酸により置換しながら、非ヒトCDR配列又はヒトCDR配列のうちの一部又は全部は維持される。
【0200】
小型の抗体断片は、2つの抗原結合性部位を有するダイアボディーであって、断片が、同じポリペプチド鎖において、軽鎖可変ドメイン(VL)へと接続された重鎖可変ドメイン(VH)(VH-VL)を含む、ダイアボディーでありうる。例えば、EP404,097;WO93/1161及びHollingerら(1993)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444~6448を参照されたい。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能とするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは、別の鎖の相補性ドメインと対合し、2つの抗原結合性部位を創出するように強いられる。また、参照によりその全体において本明細書に組み込まれ、かつ、1つ以上のアミノ酸が、親抗体の超可変領域内へと挿入され、標的抗原に対する結合アフィニティーが、この抗原に対する親抗体の結合アフィニティーの少なくとも約2倍強い抗体変異体についても開示する、Chenらによる、米国特許第6,632,926号も参照されたい。
【0201】
抗体は、直鎖状抗体でありうる。当技術分野において、直鎖状抗体を作るための手順が公知であり、Zapataら(1995)、Protein Eng.、8(10):1057~1062において記載されている。略述すると、これらの抗体は、抗原結合領域の対を形成する、タンデムのFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)の対を含む。直鎖状抗体は、二重特異性又は単一特異性でありうる。
【0202】
抗体は、プロテインA精製、硫酸アンモニウム沈殿又はエタノール沈殿、酸抽出、アニオン交換クロマトグラフィー又はカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーを含むがこれらに限定されない、公知の方法により、組換え細胞培養物から回収及び精製されうる。高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)もまた、精製のために使用されうる。
【0203】
抗体を検出可能に標識することは、有用でありうる。抗体を、これらの薬剤へとコンジュゲートさせるための方法は、当技術分野において公知である。例示だけを目的として述べると、抗体は、放射性原子、発色団、フルオロフォアなどの検出可能部分により標識されうる。このような標識抗体は、インビボにおける、又は単離された被験試料中の診断法のために使用されうる。このような標識抗体は、サイトカイン、リガンド、別の抗体へと連結されうる。抗腫瘍効果を達成するための、抗体へのカップリングに適する薬剤は、インターロイキン2(IL-2)及び腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカイン;光力学療法における使用のための光増感剤であって、アルミニウム(III)フタロシアニンテトラスルホン酸、ヘマトポルフィリン及びフタロシアニンを含む光増感剤;ヨウ素131(131I)、イットリウム90(90Y)、ビスマス212(212Bi)、ビスマス213(213Bi)、テクネシウム99m(99mTc)、レニウム186(186Re)及びレニウム188(188Re)などの放射性核種;ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、メトトレキサート、ダウノマイシン、ネオカルチノスタチン及びカルボプラチンなどの抗生剤;ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素A、ブドウ球菌エンテロトキシンA、アブリンA毒素、リシンA(脱グリコシル化リシンA及び天然リシンA)、TGF-アルファ毒素、タイワンコブラに由来する細胞毒素(ナジャ・ナジャ・アトラ)及びゲロニン(植物毒素)などの、細菌毒素、植物毒素及び他の毒素;レストリクトシン(アスペルギルス・レストリクツスにより産生されたリボソーム不活化タンパク質)、サポリン(サポナリア・オフィキナリスに由来するリボソーム不活化タンパク質)及びRNアーゼなどの、植物、細菌及び真菌に由来する、リボソーム不活化タンパク質;チロシンキナーゼ阻害剤;ly207702(二フッ素化プリンヌクレオシド);抗嚢胞剤を含有するリポソーム(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、毒素をコードするプラスミド、メトトレキサートなど)並びに他の抗体又はF(ab)などの抗体断片を含む。
【0204】
ハイブリドーマ技術、選択リンパ球抗体法(SLAM)、トランスジェニック動物及び組換え抗体ライブラリーの使用を介する抗体の作製については、下記において、より詳細に記載される。
(1)ハイブリドーマ技術を使用する、抗UCH-L1モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、当技術分野において公知の、多種多様な技法であって、ハイブリドーマ、組換え及びファージディスプレイ技術又はこれらの組合せの使用を含む技法を使用して調製されうる。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野において公知であり、例えば、Harlowら、「Antibodies:A Laboratory Manual」、2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、1988);Hammerlingら、「Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas」(Elsevier、N.Y.、1981)において教示されているハイブリドーマ法を含むハイブリドーマ法を使用して作製されうる。また、本明細書において使用された「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術を介して作製された抗体に限定されないことも留意される。「モノクローナル抗体」という用語は、任意の真核生物クローン、原核生物クローン又はファージクローンを含む単一クローンに由来する抗体を指し、それが作製された方法を指すものではない。
【0205】
本方法により作製されるモノクローナル抗体並びに抗体を作出する方法は、本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養するステップを含みうるが、この場合、ハイブリドーマは、UCH-L1により免疫化された動物、例えば、ラット又はマウスから単離された脾臓細胞を、骨髄腫細胞と融合させ、次いで、融合体から生じるハイブリドーマを、本発明のポリペプチドに結合することが可能な抗体を分泌するハイブリドーマクローンについてスクリーニングすることにより作出されることが好ましい。略述すると、ラットは、UCH-L1抗原により免疫化されうる。好ましい実施形態において、UCH-L1抗原は、免疫応答を刺激するように、アジュバントと共に投与される。このようなアジュバントは、フロイント完全アジュバント又はフロイント不完全アジュバント、RIBI(ムラミルジペプチド)又はISCOM(免疫刺激性複合体)を含む。このようなアジュバントは、ポリペプチドを、局所的な沈着物内に封入することにより、急速な分散から保護しうる、又はこのようなアジュバントは、マクロファージ及び免疫系の他の構成要素に対して走化性である因子を分泌するように、宿主を刺激する物質を含有しうる。ポリペプチドが投与される場合、免疫化スケジュールは、何週間かにわたる、2回以上のポリペプチドの投与を伴うことが好ましいが、ポリペプチドの単回投与もまた、使用されうる。
【0206】
UCH-L1抗原による動物の免疫化の後、抗体及び/又は抗体産生細胞が、動物から得られうる。抗UCH-L1抗体含有血清は、動物から採血する、又は動物を屠殺することにより、動物から得られる。血清は、動物から得られたままに使用されてもよく、免疫グロブリン画分が血清から得られてもよく、又は抗UCH-L1抗体が血清から精製されてもよい。このようにして得られた血清又は免疫グロブリンは、ポリクローナルであるので、一連の異種特性を有する。
【0207】
免疫応答が検出されたら、例えば、ラット血清中において、抗原であるUCH-L1に特異的な抗体が検出されたら、ラット脾臓が摘出され、脾臓細胞が単離される。次いで、脾臓細胞が、周知の技法により、任意の適切な骨髄腫細胞、例えば、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、Va.、US)から市販されている細胞株である、SP20に由来する細胞へと融合させられる。ハイブリドーマが選択され、限界希釈によりクローニングされる。次いで、ハイブリドーマクローンが、当技術分野において公知の方法により、UCH-L1に結合することが可能な抗体を分泌する細胞についてアッセイされる。ラットを、陽性のハイブリドーマクローンにより免疫化することにより、一般に、高レベルの抗体を含有する腹水が作出されうる。
【0208】
別の実施形態において、抗体を産生する免疫化ハイブリドーマが、免疫化された動物から調製されうる。免疫化の後、動物は、屠殺され、当技術分野において周知の通り、脾臓B細胞は、免疫化された骨髄腫細胞へと融合される。例えば、Harlow及びLane、前出を参照されたい。好ましい実施形態において、骨髄腫細胞は、免疫グロブリンポリペプチドを分泌しない(非分泌性細胞株)。融合及び抗生剤による選択の後、ハイブリドーマは、UCH-L1若しくはこの部分又はUCH-L1を発現する細胞を使用してスクリーニングされる。好ましい実施形態において、初期スクリーニングは、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)又はラジオイムノアッセイ(RIA)、好ましくはELISAを使用して実施される。ELISAスクリーニングの例は、PCT公開第00/37504号において提示されている。
【0209】
抗UCH-L1抗体を産生するハイブリドーマは、ロバストなハイブリドーマの増殖、高度な抗体の産生、及び所望の抗体特徴を含む、所望の特徴について選択され、クローニングされ、さらにスクリーニングされる。ハイブリドーマは、インビボの同系動物、免疫系を欠く動物、例えば、ヌードマウスにおいて、又はインビトロの細胞培養物中において培養され、拡大されうる。ハイブリドーマを選択し、クローニングし、拡大する方法は、当業者に周知である。
【0210】
好ましい実施形態において、ハイブリドーマは、ラットハイブリドーマである。別の実施形態において、ハイブリドーマは、マウス、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ又はウマなどの、ヒト以外でラット以外の種において作製される。さらに別の好ましい実施形態において、ハイブリドーマは、ヒト非分泌性骨髄腫が、抗UCH-L1抗体を発現するヒト細胞と融合させられた、ヒトハイブリドーマである。
【0211】
特異的エピトープを認識する抗体断片は、公知の技法により作出されうる。例えば、本発明のFab断片及びF(ab’)2断片は、パパイン(2つの同一なFab断片をもたらす)又はペプシン(F(ab’)2断片をもたらす)などの酵素を使用する、免疫グロブリン分子のタンパク質分解性切断により作製されうる。IgG分子のF(ab’)2断片は、大型の(「親」)IgG分子の、2つの抗原結合性部位であって、親IgG分子の、両方の軽鎖(軽鎖可変領域及び定常領域を含有する)、重鎖のCH1ドメイン及びジスルフィド形成ヒンジ領域を含む、抗原結合性部位を保持する。したがって、F(ab’)2断片は、親IgG分子と同様に、抗原分子を架橋することが可能である。
【0212】
(2)SLAMを使用する、抗UCH-L1モノクローナル抗体
本発明の別の態様において、組換え抗体は、米国特許第5,627,052号;PCT公開第92/02551号及びBabcookら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:7843~7848(1996)において記載されている通り、当技術分野において、選択リンパ球抗体法(SLAM)と称される手順を使用して、単一の単離リンパ球から作出される。この方法において、ビオチンなどのリンカーを使用して、抗原であるUCH-L1、UCH-L1のサブユニット又はこの断片が、ヒツジ赤血球へとカップリングされ、UCH-L1に対する特異性を伴う抗体を分泌する単一細胞を同定するのに使用される、抗原特異的溶血プラークアッセイを使用して、目的の抗体を分泌する、単一の細胞、例えば、免疫化された動物のうちのいずれか1つに由来するリンパ球がスクリーニングされる。目的の抗体分泌細胞を同定した後、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のcDNAが、逆転写酵素PCR(RT-PCR)により、細胞からレスキューされ、次いで、これらの可変領域を、COS細胞又はCHO細胞などの、哺乳動物宿主細胞内の、適切な免疫グロブリン定常領域(例えば、ヒト定常領域)の文脈において発現させる。次いで、インビボにおいて選択されたリンパ球に由来する、増幅された免疫グロブリン配列をトランスフェクトされた宿主細胞は、例えば、UCH-L1に対する抗体を発現する細胞を単離するように、トランスフェクト細胞をパニングすることにより、インビトロにおいて、さらなる解析及び選択を経る場合がある。増幅された免疫グロブリン配列は、インビトロアフィニティー成熟法によるように、インビトロにおいて、さらに操作されうる。例えば、PCT公開第97/29131号及びPCT公開第00/56772号を参照されたい。
【0213】
(3)トランスジェニック動物を使用する、抗UCH-L1モノクローナル抗体
本発明の別の実施形態において、抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の一部又は全部を含む非ヒト動物を、UCH-L1抗原により免疫化することにより作製される。ある実施形態において、非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の大型断片を含み、マウス抗体の作製が欠損する操作マウス株である、XENOMOUSE(登録商標)トランスジェニックマウスである。例えば、Greenら、Nature Genetics、7:13~21(1994)並びに米国特許第5,916,771号;同第5,939,598号;同第5,985,615号;同第5,998,209号;同第6,075,181号;同第6,091,001号;同第6,114,598号及び同第6,130,364号を参照されたい。また、PCT公開第91/10741号;PCT公開第94/02602号;PCT公開第96/34096号;PCT公開第96/33735号;PCT公開第98/16654号;PCT公開第98/24893号;PCT公開第98/50433号;PCT公開第99/45031号;PCT公開第99/53049号;PCT公開第00/09560号及びPCT公開第00/37504号も参照されたい。XENOMOUSE(登録商標)トランスジェニックマウスは、完全ヒト抗体の成人様ヒトレパートリーを産生し、抗原特異的ヒトモノクローナル抗体を発生させる。XENOMOUSE(登録商標)トランスジェニックマウスは、ヒト重鎖遺伝子座及びx軽鎖遺伝子座の、メガ塩基サイズの、生殖細胞系列構成のYAC断片を導入することにより、ヒト抗体レパートリーのうちの約80%を含有する。その開示が参照により組み込まれた、Mendezら、Nature Genetics、15:146~156(1997);Green及びJakobovits、J.Exp.Med.、188:483~495(1998)を参照されたい。
【0214】
(4)組換え抗体ライブラリーを使用する、抗UCH-L1モノクローナル抗体
インビトロ法もまた、本発明の抗体を作るのに使用できる場合があり、この場合、所望のUCH-L1結合特異性を有する抗体を同定するのに、抗体ライブラリーがスクリーニングされる。組換え抗体ライブラリーの、このようなスクリーニングのための方法は、当技術分野において周知であり、例えば、それらの各々の内容が、参照により本明細書に組み込まれた、米国特許第5,223,409号(Ladnerら);PCT公開第92/18619号(Kangら);PCT公開第91/17271号(Dowerら);PCT公開第92/20791号(Winterら);PCT公開第92/15679号(Marklandら);PCT公開第93/01288号(Breitlingら);PCT公開第92/01047号(McCaffertyら);PCT公開第92/09690号(Garrardら);Fuchsら、Bio/Technology、9:1369~1372(1991);Hayら、Hum.Antibod.Hybrodomas、3:81~85(1992);Huseら、Science、246:1275~1281(1989);McCaffertyら、Nature、348:552~554(1990);Griffithsら、EMBOJ.、12:725~734(1993);Hawkinsら、J.Mol.Biol.、226:889~896(1992);Clacksonら、Nature、352:624~628(1991);Gramら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:3576~3580(1992);Garrardら、Bio/Technology、9:1373~1377(1991);Hoogenboomら、Nucl.Acids Res.、19:4133~4137(1991);Barbasら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:7978~7982(1991);米国特許出願公開第2003/0186374号及びPCT公開第97/29131号、において記載されている方法を含む。
【0215】
組換え抗体ライブラリーは、UCH-L1又はUCH-L1の部分により免疫化された対象に由来しうる。代替的に、組換え抗体ライブラリーは、ヒトUCH-L1により免疫化されていないヒト対象に由来する、ヒト抗体ライブラリーのように、ナイーブ対象、すなわち、UCH-L1により免疫化されていない対象に由来しうる。本発明の抗体は、ヒトUCH-L1を含むペプチドを伴う組換え抗体ライブラリーをスクリーニングして、これにより、UCH-L1を認識する抗体を選択することにより選択される。このようなスクリーニング及び選択を行うための方法は、前出の段落内の参考文献において記載されている方法のように、当技術分野において周知である。UCH-L1に対して、特定の結合アフィニティーを有する、本発明の抗体であって、ヒトUCH-L1から、特定のKoff速度定数により解離する抗体などの抗体を選択するために、所望のKoff速度定数を有する抗体を選択するように、当技術分野において公知の表面プラズモン共鳴法が使用されうる。hUCH-L1に対する、特定の中和活性を有する本発明の抗体であって、特定のIC50を伴う抗体などの抗体を選択するために、UCH-L1活性の阻害を評価するための、当技術分野において公知の標準的方法が使用されうる。
【0216】
一態様において、本発明は、ヒトUCH-L1に結合する、単離抗体又はこの抗原結合性部分に関する。好ましくは、抗体は、中和抗体である。多様な実施形態において、抗体は、組換え抗体又はモノクローナル抗体である。
【0217】
例えば、抗体はまた、当技術分野において公知である、多様なファージディスプレイ法を使用しても作出されうる。ファージディスプレイ法において、機能的な抗体ドメインは、それらをコードするポリヌクレオチド配列を保有するファージ粒子の表面に提示される。このようなファージは、レパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒト又はマウスの)から発現させた抗原結合性ドメインを提示するのに用いられうる。目的の抗原に結合する抗原結合性ドメインを発現するファージは、抗原により、例えば、標識抗原又は固体表面若しくはビーズに結合された、若しくはこれらへと捕捉された抗原を使用して選択又は同定されうる。これらの方法において使用されたファージは典型的に、ファージから発現させたfd結合性ドメイン及びM13結合性ドメインを、組換えにより、ファージ遺伝子IIIタンパク質又はファージ遺伝子VIIIタンパク質へと融合させた、Fab抗体ドメイン、Fv抗体ドメイン又はジスルフィド安定化Fv抗体ドメインと共に含む、繊維状ファージである。抗体を作るのに使用されうるファージディスプレイ法の例は、Brinkmannら、J.Immunol.Methods、182:41~50(1995);Amesら、J.Immunol.Methods、184:177~186(1995);Kettleboroughら、Eur.J.Immunol.、24:952~958(1994);Persicら、Gene、187:9~18(1997);Burtonら、Advances in Immunology、57:191~280(1994);PCT公開第92/01047号;PCT公開第90/02809号;PCT公開第91/10737号;PCT公開第92/01047号;PCT公開第92/18619号;PCT公開第93/11236号;PCT公開第95/15982号;PCT公開第95/20401号及び米国特許第5,698,426号;同第5,223,409号;同第5,403,484号;同第5,580,717号;同第5,427,908号;同第5,750,753号;同第5,821,047号;同第5,571,698号;同第5,427,908号;同第5,516,637号;同第5,780,225号;同第5,658,727号;同第5,733,743号及び同第5,969,108号において開示されているファージディスプレイ法を含む。
【0218】
上記の参考文献において記載された通り、ファージ選択の後、ファージに由来する抗体のコード領域は、単離され、ヒト抗体を含む全抗体又は他の任意の所望の抗原結合性断片を作出するのに使用され、例えば、下記において詳細に記載される通り、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母及び細菌を含む、任意の所望の宿主内において発現させうる。PCT公開第92/22324号;Mullinaxら、BioTechniques、12(6):864~869(1992);Sawaiら、Am.J.Reprod.Immunol.、34:26~34(1995)及びBetterら、Science、240:1041~1043(1988)において開示されている方法などの、当技術分野において公知の方法を使用して、例えば、Fab断片、Fab’断片及びF(ab’)2断片を組換えにより作製する技法もまた利用されうる。単鎖Fv抗体を作製するのに使用されうる技法の例は、米国特許第4,946,778号及び同第5,258,498号;Hustonら、Methods in Enzymology、203:46~88(1991);Shuら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:7995~7999(1993)及びSkerraら、Science、240:1038~1041(1988)において記載されている技法を含む。
【0219】
ファージディスプレイによる組換え抗体ライブラリーのスクリーニングに対する代替法である、大型のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングするための、当技術分野において公知である、他の方法も、本発明の抗体の同定へと適用されうる。代替的発現系の1つの種類は、組換え抗体ライブラリーをRNA-タンパク質融合体として発現させた発現系であって、PCT公開第98/31700号(Szostak及びRoberts)並びにRoberts及びSzostak、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:12297~12302(1997)において記載されている発現系である。3’末端において、ペプチジルアクセプター抗生剤であるピューロマイシンを保有する、合成mRNAのインビトロ翻訳により、この系の、mRNAと、mRNAがコードする、ペプチド又はタンパク質との間において、共有結合的融合が創出される。したがって、特異的mRNAは、抗体又はこの部分の、二重特異性抗原への結合などの、コードされたペプチド又はタンパク質、例えば、抗体又はこの部分の特性に基づき、mRNAの複合体混合物(例えば、コンビナトリアルライブラリー)から濃縮されうる。このようなライブラリーのスクリーニングから回収された、抗体又はこの部分をコードする核酸配列は、上記された(例えば、哺乳動物の宿主細胞内の)組換え手段により発現され、さらに、突然変異が、当初選択された配列へと導入された、mRNA-ペプチド融合体のスクリーニングのさらなるラウンドにより、又は上記された、インビトロにおける、組換え抗体のアフィニティー成熟のための他の方法により、さらなるアフィニティー成熟にかけられうる。この方法論の好ましい例は、PROfusionディスプレイ技術である。
【0220】
別の手法において、抗体はまた、当技術分野において公知の酵母ディスプレイ法を使用しても作出されうる。酵母ディスプレイ法において、抗体ドメインを、酵母細胞壁へとテザリングし、それらを、酵母の表面上に提示するのに、遺伝子法が使用される。特に、このような酵母は、レパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒト又はマウスの)から発現させた抗原結合性ドメインを提示するのに用いられうる。抗体を作るのに使用されうる、酵母ディスプレイ法の例は、参照により本明細書に組み込まれた、米国特許第6,699,658号(Wittrupら)において開示された酵母ディスプレイ法を含む。
【0221】
d)組換えUCH-L1抗体の作製
抗体は、当技術分野において公知である、多数の技法のうちのいずれかにより作製されうる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターが標準的技法により宿主細胞へとトランスフェクトされた、宿主細胞からの発現である。「トランスフェクション」という用語の多様な形態は、外因性DNAの、原核宿主細胞又は真核宿主細胞への導入のために一般に使用されている、多種多様な技法、例えば、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどを包含することが意図される。本発明の抗体を、原核宿主細胞又は真核宿主細胞において発現させることが可能であるが、そのような真核細胞(そして、特に、哺乳動物の細胞)は、原核細胞より、アセンブルし、適正にフォールディングさせられ、免疫学的に活性である抗体を分泌する可能性が高いため、抗体の、真核細胞内の発現が好ましく、哺乳動物宿主細胞内の発現が最も好ましい。
【0222】
本発明の組換え抗体を発現させるための、例示的な哺乳動物宿主細胞は、例えば、Kaufman及びSharp、J.Mol.Biol.、159:601~621(1982)において記載されているようにDHFR選択用マーカーと共に使用されるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub及びChasin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77:4216~4220(1980))において記載されている、dhfr-CHO細胞を含む)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞を含む。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが、哺乳動物宿主細胞へと導入される場合、抗体は、宿主細胞内の抗体の発現又は、より好ましくは、宿主細胞が増殖される培養培地への抗体の分泌を可能とするのに十分な時間にわたり、宿主細胞を培養することにより作製される。抗体は、標準的なタンパク質精製法を使用して、培養培地から回収されうる。
【0223】
宿主細胞はまた、Fab断片又はscFv分子などの機能的抗体断片を作製するのにも使用されうる。上記の手順に対する変動は、実施されうることが理解される。例えば、宿主細胞に、本発明の抗体の軽鎖及び/又は重鎖の機能的断片をコードするDNAをトランスフェクトすることが所望されうる。組換えDNA技術はまた、目的の抗原への結合に必要でない軽鎖及び重鎖の一方又は両方をコードするDNAの一部又は全部を除去するのにも使用されうる。また、このような切断型DNA分子から発現させた分子も、本発明の抗体に包含される。加えて、1つの重鎖及び1つの軽鎖が、本発明の抗体(すなわち、ヒトUCH-L1に結合する抗体)であり、他の重鎖及び軽鎖が、ヒトUCH-L1以外の抗原に特異的である、二官能性抗体も、本発明の抗体を、標準的な化学的架橋法を介して、第2の抗体へと架橋することにより作製されうる。二官能性抗体はまた、二官能性抗体をコードするように操作された核酸を発現させることによっても作製されうる。
【0224】
本発明の抗体又はこの抗原結合性部分を組換え発現させるための好ましい系において、抗体重鎖及び抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターが、リン酸カルシウム媒介型トランスフェクションにより、dhfr-CHO細胞へと導入される。組換え発現ベクター内において、高レベルの遺伝子の転写を駆動するように、抗体重鎖遺伝子及び抗体軽鎖遺伝子の各々が、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントへと作動的に連結される。組換え発現ベクターはまた、メトトレキサートによる選択/増幅を使用するベクターをトランスフェクトされたCHO細胞の選択を可能とするDHFR遺伝子も保有する。抗体の重鎖及び軽鎖の発現を可能とし、無傷抗体が培養培地から回収されるように、選択された形質転換体の宿主細胞が培養される。組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞にトランスフェクトし、形質転換体について選択し、宿主細胞を培養し、抗体を培養培地から回収するのに、標準的な分子生物学法が使用される。なお、さらに、本発明は、本発明の組換え抗体が合成されるまで、本発明の宿主細胞を、適切な培養培地中において培養することにより、本発明の組換え抗体を合成する方法を提供する。方法は、組換え抗体を、培養培地から単離するステップをさらに含みうる。
【0225】
(1)ヒト化抗体
ヒト化抗体は、目的の抗原に免疫特異的に結合し、ヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有するフレームワーク(FR)領域及び非ヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有する相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はこの変異体、誘導体、類似体若しくは部分でありうる。ヒト化抗体は、所望の抗原に結合する非ヒト種抗体であって、非ヒト種に由来する、1つ以上の相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン分子に由来するフレームワーク領域を有する非ヒト種抗体に由来しうる。
【0226】
本明細書において使用された、CDRの文脈における「実質的に」という用語は、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列と、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有するCDRを指す。ヒト化抗体は、少なくとも1つであるが、典型的に2つの可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)2、FabC、Fv)であって、CDR領域の全て又は実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリン(すなわち、ドナー抗体)のCDR領域に対応し、フレームワーク領域の全て又は実質的に全てが、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のフレームワーク領域である可変ドメインの実質的に全てを含む。一態様に従い、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的に、ヒト免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部も含む。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖、及び重鎖の少なくとも可変ドメインの両方を含有する。抗体はまた、重鎖の、CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、CH3領域及びCH4領域も含みうる。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖だけを含有する。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト化重鎖だけを含有する。具体的な実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖及び/又は重鎖のヒト化可変ドメインだけを含有する。
【0227】
ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含む、免疫グロブリンの任意のクラス、並びに、限定なしに述べると、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む、任意のアイソタイプから選択されうる。ヒト化抗体は、1つを超えるクラス又はアイソタイプに由来する配列を含むことが可能であり、特定の定常ドメインは、当技術分野において周知の技法を使用して、所望のエフェクター機能を最適化するように選択されうる。
【0228】
ヒト化抗体のフレームワーク領域及びCDRは、親配列に正確に対応する必要がない、例えば、ドナー抗体CDR又はコンセンサスフレームワークは、この部位におけるCDR残基又はフレームワーク残基が、ドナー抗体又はコンセンサスフレームワークに対応しないように、少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、挿入及び/又は欠失により突然変異誘発されうる。しかし、一実施形態において、このような突然変異は、広範にわたる突然変異ではない。通例、ヒト化抗体残基のうちの、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%は、親のFR配列及びCDR配列の残基に対応する。本明細書において使用された「コンセンサスフレームワーク」という用語は、コンセンサスの免疫グロブリン配列内のフレームワーク領域を指す。本明細書において使用された「コンセンサスの免疫グロブリン配列」という用語は、類縁の免疫グロブリン配列のファミリーにおいて、最も高頻度で発生するアミノ酸(又はヌクレオチド)から形成された配列(例えば、Winnaker、「From Genes to Clones」(Verlagsgesellschaft、Weinheim、Germany、1987)を参照されたい)を指す。免疫グロブリンのファミリーにおいて、コンセンサス配列内の各位置は、ファミリー内のこの位置において、最も高頻度で発生するアミノ酸により占有されている。2つのアミノ酸が、同等に高頻度で発生する場合、いずれもが、コンセンサス配列内に含まれうる。
【0229】
ヒト化抗体は、ヒトレシピエントにおける、これらの部分の治療適用の持続時間及び有効性を制限する、抗ヒト齧歯動物抗体に対する、望ましくない免疫応答を最小化するようにデザインされうる。ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から、それへと導入された、1つ以上のアミノ酸残基を有しうる。これらの非ヒト残基は、典型的に、可変ドメインから採取される、「インポート」残基と称されることが多い。ヒト化は、超可変領域配列を、ヒト抗体の対応する配列で置換することにより実施されうる。したがって、このような「ヒト化」抗体は、実質的に無傷に満たないヒト可変ドメインが、非ヒト種に由来する、対応する配列により置換されたキメラ抗体である。例えば、その内容が、参照により本明細書に組み込まれた、米国特許第4,816,567号を参照されたい。ヒト化抗体は、一部の超可変領域残基と、おそらく、一部のFR残基とが、齧歯動物抗体内の相似部位に由来する残基により置換されたヒト抗体でありうる。本開示の抗体のヒト化又は操作は、米国特許第5,723,323号;同第5,976,862号;同第5,824,514号;同第5,817,483号;同第5,814,476号;同第5,763,192号;同第5,723,323号;同第5,766,886号;同第5,714,352号;同第6,204,023号;同第6,180,370号;同第5,693,762号;同第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,225,539号及び同第4,816,567号において記載されている方法のようであるがこれらに限定されない、任意の公知の方法を使用して実施されうる。
【0230】
ヒト化抗体は、UCH-L1に対する高アフィニティー及び他の好適な生物学的特性を保持しうる。ヒト化抗体は、親配列及びヒト化配列についての三次元モデルを使用して、親配列及び多様な概念的ヒト化産物を解析する工程により調製されうる。三次元免疫グロブリンモデルは、一般に利用可能である。選択された候補免疫グロブリン配列の、可能な三次元コンフォメーション構造を例示及び提示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示の検討は、残基の、候補免疫グロブリン配列の機能における鍵となる役割についての解析、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基についての解析を可能とする。このようにして、UCH-L1に対するアフィニティーの上昇などの、所望の抗体特徴が達成されるように、FR残基が、レシピエント及びインポート配列から選択され、組み合わされうる。一般に、超可変領域残基は、直接、かつ、最も実質的に、抗原結合への影響に関与しうる。
【0231】
ヒト化に対する代替法として、ヒト抗体(本明細書において、「完全ヒト抗体」ともまた言及された)が作出されうる。例えば、PROfusion及び/又は酵母関連技術を介して、ヒト抗体を、ライブラリーから単離することが可能である。また、トランスジェニック動物(例えば、免疫化すると、内因性の免疫グロブリン産生の非存在下において、ヒト抗体の完全レパートリーを作製することが可能なマウス)を作製することも可能である。例えば、キメラマウス及び生殖細胞系列突然変異体マウスにおける、抗体重鎖接合領域(JH)遺伝子のホモ接合性の欠失は、内因性抗体産生の完全な阻害を結果としてもたらす。ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子アレイの、このような生殖細胞系列突然変異体マウスへの移入は、抗原投与時における、ヒト抗体の産生を結果としてもたらす。ヒト化抗体又は完全ヒト抗体は、それらの各々の内容が、参照により本明細書に組み込まれた、米国特許第5,770,429号;同第5,833,985号;同第5,837,243号;同第5,922,845号;同第6,017,517号;同第6,096,311号;同第6,111,166号;同第6,270,765号;同第6,303,755号;同第6,365,116号;同第6,410,690号;同第6,682,928号及び同第6,984,720号において記載されている方法に従い調製されうる。
【0232】
e)抗UCH-L1抗体
抗UCH-L1抗体は、上記された技法を使用して、並びに、当技術分野において公知である、規定の技法を使用して作出されうる。一部の実施形態において、抗UCH-L1抗体は、United State Biological(型番:031320)、Cell Signaling Technology(型番:3524)、Sigma-Aldrich(型番:HPA005993)、Santa Cruz Biotechnology,Inc.(型番:sc-58593又はsc-58594)、R&D Systems(型番:MAB6007)、Novus Biologicals(型番:NB600-1160)、Biorbyt(型番:orb33715)、Enzo Life Sciences,Inc.(型番:ADI-905-520-1)、Bio-Rad(型番:VMA00004)、BioVision(型番:6130-50)、Abcam(型番:ab75275又はab104938)、Invitrogen Antibodies(型番:480012)、ThermoFisher Scientific(型番:MA1-46079、MA5-17235、MA1-90008 、又はMA1-83428)、EMD Millipore(型番:MABN48)、又はSino Biological Inc.(型番:50690-R011)から市販されているUCH-L1抗体などの非コンジュゲートUCH-L1抗体でありうる。抗UCH-L1抗体は、BioVision(型番:6960-25)又はAviva Systems Biology(型番:OAAF01904-FITC)から市販されている、コンジュゲートUCH-L1抗体などのフルオロフォアへとコンジュゲートされうる。
【0233】
13.方法の変化形
試料中に存在するUCH-L1の存在又は量を決定する、開示された方法は、上記された通りでありうる。方法はまた、解析物を解析するための他の方法を念頭に置いて、適合させられる場合もある。周知の変化形の例は、酵素による検出(酵素イムノアッセイ(EIA)又は酵素免疫測定アッセイ(ELISA))を含む、サンドイッチイムノアッセイ(例えば、モノクローナル-ポリクローナルサンドイッチイムノアッセイ)、競合阻害イムノアッセイ(例えば、フォワード競合阻害イムノアッセイ及びリバース競合阻害イムノアッセイ)、酵素多重化イムノアッセイ法(EMIT)、競合結合アッセイなどのイムノアッセイ、生物発光エネルギー移動(BRET)、ワンステップ抗体検出アッセイ、同種アッセイ、異種アッセイ、キャプチャーオンザフライアッセイなどを含むがこれらに限定されない。
【0234】
a)イムノアッセイ
目的の解析物及び/又はペプチド若しくはこれらの断片(例えば、UCH-L1及び/又はペプチド若しくはこれらの断片、すなわち、UCH-L1断片)は、UCH-L1抗体を、イムノアッセイにおいて使用して解析されうる。解析物(例えば、UCH-L1)の存在又は量は、抗体を使用し、解析物(例えば、UCH-L1)への特異的結合を検出して決定されうる。例えば、抗体又はこの抗体断片は、解析物(例えば、UCH-L1)に特異的に結合しうる。所望の場合、抗体のうちの1つ以上は、1つ以上の、市販のモノクローナル/ポリクローナル抗体と組み合わせて使用されうる。このような抗体は、R&D Systems,Inc.(Minneapolis、MN)及びEnzo Life Sciences International,Inc.(Plymouth Meeting、PA)などの企業から市販されている。
【0235】
体内試料中に存在する、解析物(例えば、UCH-L1)の存在又は量は、サンドイッチイムノアッセイ(例えば、放射性同位元素の検出(ラジオイムノアッセイ(RIA))及び酵素による検出(酵素イムノアッセイ(EIA)又は酵素免疫測定アッセイ(ELISA)(例えば、Quantikine ELISA Assay、R&D Systems、Minneapolis、MN)を含む、モノクローナル-モノクローナルサンドイッチイムノアッセイ、モノクローナル-ポリクローナルサンドイッチイムノアッセイ)などのイムノアッセイを使用して、たやすく決定されうる。使用されうるポイントオブケアデバイスの例は、i-STAT(登録商標)(Abbott、Laboratories、Abbott Park、IL)である。使用されうる、他の方法は、化学発光マイクロ粒子イムノアッセイ、特に、例として述べると、ARCHITECT(登録商標)自動式解析器(Abbott Laboratories、Abbott Park、IL)を利用する化学発光マイクロ粒子イムノアッセイを含む。他の方法は、例えば、質量分析及び解析物(例えば、UCH-L1)に対する抗解析物(例えば、抗UCH-L1)抗体(モノクローナル、ポリクローナル、キメラ、ヒト化、ヒトなど)又はこれらの抗体断片を使用する、免疫組織化学(例えば、組織生検に由来する切片を伴う)を含む。他の検出法は、例えば、それらの各々が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれた、米国特許第6,143,576号;同第6,113,855号;同第6,019,944号;同第5,985,579号;同第5,947,124号;同第5,939,272号;同第5,922,615号;同第5,885,527号;同第5,851,776号;同第5,824,799号;同第5,679,526号;同第5,525,524号及び同第5,480,792号において記載されている検出法を含む。抗体の、解析物(例えば、UCH-L1)への特異的免疫的結合は、抗体へと接合された、蛍光タグ又は発光タグ、金属及び放射性核種などの直接的標識を介して、又はアルカリホスファターゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼなどの間接的標識を介して検出されうる。
【0236】
固定化された抗体又はこの断片の使用は、イムノアッセイへと組み込まれうる。抗体は、磁性粒子又はクロマトグラフィーマトリックス粒子、アッセイプレート(マイクロ滴定プレートなど)の表面、固体基質材料の小片などの、様々な支持体へと固定化されうる。アッセイストリップは、固体支持体上のアレイ内の抗体又は複数の抗体をコーティングすることにより調製されうる。次いで、このストリップは、被験試料へと浸漬させられ、有色スポットなどの、測定可能なシグナルを発生させるように、洗浄及び検出ステップを介して、速やかに処理されうる。
【0237】
同種フォーマットが使用されうる。例えば、被験試料が、対象から得られた後に、混合物が調製されうる。混合物は、解析物(例えば、UCH-L1)について評価される被験試料、第1の特異的結合パートナー及び第2の特異的結合パートナーを含有する。混合物を形成するのに、被験試料、第1の特異的結合パートナー及び第2の特異的結合パートナーが添加される順序は、それほど重要ではない。被験試料は、第1の特異的結合パートナー及び第2の特異的結合パートナーと同時に接触される。一部の実施形態において、第1の特異的結合パートナーと、被験試料中に含有された、任意のUCH-L1とは、第1の特異的結合パートナー-解析物(例えば、UCH-L1)抗原複合体を形成することが可能であり、第2の特異的結合パートナーは、第1の特異的結合パートナー-目的の解析物(例えば、UCH-L1)-第2の特異的結合パートナー複合体を形成しうる。一部の実施形態において、第2の特異的結合パートナーと、被験試料中に含有された、任意のUCH-L1とは、第2の特異的結合パートナー-解析物(例えば、UCH-L1)抗原複合体を形成することが可能であり、第1の特異的結合パートナーは、第1の特異的結合パートナー-目的の解析物(例えば、UCH-L1)-第2の特異的結合パートナー複合体を形成しうる。第1の特異的結合パートナーは、抗解析物抗体(例えば、配列番号1の、少なくとも3連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するエピトープに結合する抗UCH-L1抗体)でありうる。第2の特異的結合パートナーは、抗解析物抗体(例えば、配列番号1の、少なくとも3連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するエピトープに結合する抗UCH-L1抗体)でありうる。さらに、第2の特異的結合パートナーは、上記された、検出可能な標識により標識されるか、又はこれを含有する。
【0238】
異種フォーマットが使用されうる。例えば、被験試料が、対象から得られた後に、第1の混合物が調製されうる。混合物は、解析物(例えば、UCH-L1)について評価される被験試料及び第1の特異的結合パートナーを含有し、この場合、第1の特異的結合パートナーと、被験試料中に含有された、任意のUCH-L1とは、第1の特異的結合パートナー-解析物(例えば、UCH-L1)抗原複合体を形成する。第1の特異的結合パートナーは、抗解析物抗体(例えば、配列番号1の、少なくとも3連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するエピトープに結合する抗UCH-L1抗体)でありうる。混合物を形成するのに、被験試料及び第1の特異的結合パートナーが添加される順序は、それほど重要ではない。
【0239】
第1の特異的結合パートナーは、固相上に固定化されうる。イムノアッセイにおいて使用される固相(第1の特異的結合パートナー、及び、任意選択的に、第2の特異的結合パートナー)は、磁性粒子、ビーズ、試験管、マイクロ滴定プレート、キュベット、膜、足場形成分子、薄膜、濾紙、ディスク及びチップのようであるがこれらに限定されない、当技術分野において公知である、任意の固相でありうる。固相がビーズである実施形態において、ビーズは、磁気ビーズ又は磁性粒子でありうる。磁気ビーズ/磁性粒子は、強磁性、フェリ磁性、常磁性、超常磁性又は磁性流体でありうる。例示的な強磁性材料は、Fe、Co、Ni、Gd、Dy、CrO2、MnAs、MnBi、EuO及びNiO/Feを含む。フェリ磁性材料の例は、NiFe2O4、CoFe2O4、Fe3O4(又はFeO.Fe2O3)を含む。ビーズは、磁性であり、1つ以上の非磁性層により取り囲まれた固体コア部分を有しうる。代替的に、磁性部分は、非磁性コアの周囲の層でありうる。第1の特異的結合メンバーが固定化される固体支持体は、乾燥形態又は液体で保管されうる。磁気ビーズは、第1の特異的結合メンバーが固定化される磁気ビーズを伴う試料と接触させる前に、又はこの後で、磁界下に置かれうる。
【0240】
第1の特異的結合パートナー-解析物(例えば、UCH-L1)抗原複合体を含有する混合物が形成された後に、当技術分野において公知である、任意の技法を使用して、任意の結合していない解析物(例えば、UCH-L1)が、複合体から除去される。例えば、結合していない解析物(例えば、UCH-L1)は、洗浄することにより除去されうる。しかし、被験試料中に存在する、全ての解析物(例えば、UCH-L1)に、第1の特異的結合パートナーが結合するように、第1の特異的結合パートナーは、被験試料中に存在する、任意の解析物(例えば、UCH-L1)に対する過剰量において存在することが所望される。
【0241】
任意の結合していない解析物(例えば、UCH-L1)が除去された後に、第2の特異的結合パートナーが、混合物へと添加されて、第1の特異的結合パートナー-目的の解析物(例えば、UCH-L1)-第2の特異的結合パートナー複合体を形成する。第2の特異的結合パートナーは、抗解析物抗体(例えば、配列番号1の、少なくとも3連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するエピトープに結合する抗UCH-L1抗体)でありうる。さらに、第2の特異的結合パートナーは、上記された、検出可能な標識により標識されるか、又は検出可能な標識を含有する。
【0242】
固定化された抗体又はこの断片の使用は、イムノアッセイへと組み込まれうる。抗体は、磁性粒子又はクロマトグラフィーマトリックス粒子(磁気ビーズなど)、ラテックス粒子又は表面修飾ラテックス粒子、ポリマー又はポリマー薄膜、プラスチック又はプラスチック薄膜、平面状基質、アッセイプレート(マイクロ滴定プレートなど)の表面、固体基質材料の小片などの様々な支持体へと固定化されうる。アッセイストリップは、固体支持体上のアレイ内の抗体又は複数の抗体をコーティングすることにより調製されうる。次いで、このストリップは、被験試料へと浸漬させられ、有色スポットなどの、測定可能なシグナルを発生させるように、洗浄及び検出ステップを介して、速やかに処理されうる。
【0243】
(1)サンドイッチイムノアッセイ
サンドイッチイムノアッセイは、抗体(すなわち、少なくとも1つの捕捉抗体)と、検出抗体(すなわち、少なくとも1つの検出抗体)とからなる、2つの層の間の抗原の量を測定する。捕捉抗体及び検出抗体は、抗原、例えば、UCH-L1などの、目的の解析物上の、異なるエピトープに結合する。捕捉抗体の、エピトープへの結合は、検出抗体の、エピトープへの結合に干渉しないことが所望される。モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体のいずれも、サンドイッチイムノアッセイにおける、捕捉抗体及び検出抗体として使用されうる。
【0244】
一般に、少なくとも2つの抗体が、被験試料中の解析物(例えば、UCH-L1)を分離及び定量するのに利用される。より具体的に、少なくとも2つの抗体は、解析物(例えば、UCH-L1)の、ある特定のエピトープに結合し、「サンドイッチ」と称される免疫複合体を形成する。1つ以上の抗体が、被験試料中の解析物(例えば、UCH-L1)を捕捉する(これらの抗体は、しばしば、「捕捉」抗体(antibody)又は「捕捉」抗体(antibodies)と称する)のに使用される場合があり、1つ以上の抗体が、検出可能な(すなわち、定量可能な)標識を、サンドイッチに結合させるのに使用される(これらの抗体は、しばしば、「検出」抗体(antibody)又は「検出」抗体(antibodies)と称する)。サンドイッチアッセイにおいて、抗体の、そのエピトープへの結合は、アッセイ中の他の任意の抗体の、そのそれぞれのエピトープへの結合により減弱されない。抗体は、解析物(例えば、UCH-L1)を含有することが推測される被験試料と接触された、1つ以上の第1の抗体が、第2の抗体又は後続の抗体により認識されるエピトープの全部又は一部に結合せず、これにより、1つ以上の第2の検出抗体が、解析物(例えば、UCH-L1)に結合する能力に干渉しないように選択される。
【0245】
抗体は、前記イムノアッセイ中の、第1の抗体として使用されうる。抗体は、解析物(例えば、UCH-L1)上のエピトープに免疫特異的に結合する。本開示の抗体に加えて、前記イムノアッセイは、第1の抗体により認識されない、又は第1の抗体が結合しないエピトープに免疫特異的に結合する、第2の抗体を含みうる。
【0246】
解析物(例えば、UCH-L1)を含有することが推測される被験試料は、少なくとも1つの、第1の捕捉抗体(又は抗体)及び少なくとも1つの、第2の検出抗体と同時に、又は逐次的に接触されうる。サンドイッチアッセイフォーマットにおいて、被験試料を含有することが推測される解析物(例えば、UCH-L1)はまず、第1の抗体-解析物(例えば、UCH-L1)抗原複合体の形成を可能とする条件下で、特定のエピトープに特異的に結合する、少なくとも1つの、第1の捕捉抗体と接触される。1つを超える捕捉抗体が使用される場合、第1の複数の捕捉抗体-UCH-L1抗原複合体が形成される。サンドイッチアッセイにおいて、抗体、好ましくは、少なくとも1つの捕捉抗体は、被験試料に予測される解析物(例えば、UCH-L1)の最大量に対するモル過剰量において使用される。例えば、マイクロ粒子コーティング緩衝液1ml当たり約5μg/ml~約1mg/mlの抗体が使用されうる。
【0247】
i.抗UCH-L1捕捉抗体
任意選択的に、被験試料を、少なくとも1つの、第1の捕捉抗体と接触させる前に、少なくとも1つの、第1の捕捉抗体は、第1の抗体-解析物(例えば、UCH-L1)複合体の、被験試料からの分離を容易とする固体支持体に結合されうる。当技術分野において公知である、任意の固体支持体であって、ウェル、チューブ又はビーズ(マイクロ粒子など)の形態のポリマー材料から作られた固体支持体を含むがこれらに限定されない固体支持体が使用されうる。抗体(antibody(又はantibodies))は、そのような結合が、解析物(例えば、UCH-L1)に結合する抗体の能力に干渉しないという条件において、吸着により、化学的カップリング剤を使用する共有結合により、又は当技術分野において公知である他の手段により、固体支持体に結合されうる。さらに、必要な場合、固体支持体は、抗体上の多様な官能基との反応性を可能とするように、誘導体化されうる。このような誘導体化は、無水マレイン酸、N-ヒドロキシスクシンイミド及び1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドのようであるがこれらに限定されない、ある特定のカップリング剤の使用を必要とする。
【0248】
その後、解析物(例えば、UCH-L1)を含有することが推測される被験試料は、第1の捕捉抗体(又は複数の抗体)-解析物(例えば、UCH-L1)複合体の形成を可能とするためにインキュベートされる。インキュベーションは、約4.5~約10.0のpH、約2℃~約45℃の温度において、少なくとも約1分間~約18時間、約2~6分間、約7~12分間、約5~15分間又は約3~4分間の時間にわたり実行されうる。
【0249】
ii.検出抗体
次いで、第1の/複数の捕捉抗体-解析物(例えば、UCH-L1)複合体の形成後、複合体は、少なくとも1つの、第2の検出抗体(第1の/複数の抗体-解析物(例えば、UCH-L1)抗原-第2の抗体複合体の形成を可能とする条件下において)と接触される。一部の実施形態において、被験試料は、捕捉抗体と同時に、検出抗体と接触される。第1の抗体-解析物(例えば、UCH-L1)複合体が、1つを超える検出抗体と接触される場合、第1の/複数の捕捉抗体-解析物(例えば、UCH-L1)-複数の抗体検出複合体が形成される。少なくとも第2の(及び後続の)抗体が、第1の抗体-解析物(例えば、UCH-L1)複合体と接触される場合、第1の抗体と同様に、上記された条件と同様の条件下におけるインキュベーション時間が、第1の/複数の抗体-解析物(例えば、UCH-L1)-第2の/複数の抗体複合体の形成に要求される。好ましくは、少なくとも1つの、第2の抗体は、検出可能な標識を含有する。検出可能な標識は、第1の/複数の抗体-解析物(例えば、UCH-L1)-第2の/複数の抗体複合体の形成の前に、これと同時に、又はこの後に、少なくとも1つの、第2の抗体に結合されうる。当技術分野において公知である、任意の検出可能な標識が使用されうる。
【0250】
化学発光アッセイは、Adamczykら、Anal.Chim.Acta、579(1):61~67(2006)において記載されている方法に従い実施されうる。任意の適切なアッセイフォーマットが使用されうるが、マイクロプレート用化学発光測定器(Mithras LB-940、Berthold Technologies U.S.A.,LLC、Oak Ridge、TN)は、小容量の複数の試料についてのアッセイを、迅速に可能とする。化学発光測定器は、96ウェル黒色ポリスチレン製マイクロプレート(Costar、型番:3792)を使用する、複数の試薬注入器を装備されうる。各試料が、個別のウェルへと添加されうるのに続き、利用されたアッセイの種類により決定される通り、他の試薬の同時的/逐次的な添加がなされうる。酸性化によるように、アクリジニウムアリールエステルを利用する、中性溶液中又は塩基性溶液中の擬塩基の形成は回避されることが所望される。次いで、化学発光応答が、ウェルごとに記録される。この点で、化学発光応答を記録するための時間は、部分的に、利用された試薬の添加と、特定のアクリジニウムの添加との間の遅延に依存する。
【0251】
化学発光アッセイのための混合物を形成するのに、被験試料及び特異的結合パートナーが添加される順序は、それほど重要ではない。第1の特異的結合パートナーが、アクリジニウム化合物により、検出可能に標識される場合、検出可能に標識された第1の特異的結合パートナー-UCH-L1抗原複合体が形成される。代替的に、第2の特異的結合パートナーが使用され、第2の特異的結合パートナーが、アクリジニウム化合物により、検出可能に標識される場合、検出可能に標識された第1の特異的結合パートナー-解析物(例えば、UCH-L1)-第2の特異的結合パートナー複合体が形成される。標識されたものであれ、標識されていないものであれ、結合していない任意の特異的結合パートナーは、洗浄などの、当技術分野において公知である、任意の技法を使用して、混合物から除去されうる。
【0252】
過酸化水素は、混合物中、インサイチューにおいて発生されうる、又は上記されたアクリジニウム化合物の添加の前に、これと同時に、又はこの後に、混合物へと施されうる、若しくは供給されうる。過酸化水素は、当業者に明らかであるような、多数の方式により、インサイチューにおいて発生されうる。
【0253】
代替的に、過酸化水素の供給源は、混合物へと、単純に添加されうる。例えば、過酸化水素の供給源は、過酸化水素を含有することが公知である、1つ以上の緩衝液又は他の溶液でありうる。この点で、過酸化水素の溶液が、単純に添加されうる。
【0254】
少なくとも1つの塩基性溶液を、試料へと、同時的に、又はその後において添加したら、検出可能なシグナル、すなわち、UCH-L1の存在を示す化学発光シグナルが発生する。塩基性溶液は、少なくとも1つの塩基を含有し、10以上、好ましくは、12以上のpHを有する。塩基性溶液の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、ナトリウム炭酸、炭酸水素ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム及び重炭酸カルシウムを含むがこれらに限定されない。試料へと添加される塩基性溶液の量は、塩基性溶液の濃度に依存する。使用された塩基性溶液の濃度に基づき、当業者は、試料へと添加される塩基性溶液の量を容易に決定しうる。化学発光標識以外の他の標識も利用されうる。例えば、酵素標識(アルカリホスファターゼを含むがこれに限定されない)が利用されうる。
【0255】
発生した化学発光シグナル又は他のシグナルは、当業者に公知の規定の技法を使用して検出されうる。発生したシグナルの強度に基づき、目的の解析物(例えば、UCH-L1)の、試料中の量が定量されうる。具体的に、目的の解析物(例えば、UCH-L1)の、試料中の量は、発生したシグナルの強度に比例する。存在する解析物(例えば、UCH-L1)の量は、発生した光の量を、解析物(例えば、UCH-L1)についての検量線と比較することにより、又は参照標準物質との比較により定量されうる。検量線は、解析物(例えば、UCH-L1)の公知の濃度の系列希釈液又は溶液を使用して、質量分析、重量測定法及び当技術分野において公知の他の技法により作成されうる。
【0256】
(2)フォワード競合阻害アッセイ
フォワード競合フォーマットにおいて、公知の濃度の、標識された目的の解析物(例えば、蛍光標識、切断可能なリンカーと接合されたタグなどを有する解析物(例えば、UCH-L1))のアリコートが、被験試料中の目的の解析物(例えば、UCH-L1)と、目的の解析物抗体(例えば、UCH-L1抗体)への結合について競合するように使用される。
【0257】
フォワード競合アッセイにおいて、固定化された特異的結合パートナー(抗体など)は、被験試料及び標識された目的の解析物、目的の解析物の断片又は目的の解析物の変異体と、逐次的に、又は同時に接触されうる。目的の解析物ペプチド、目的の解析物の断片又は目的の解析物の変異体は、切断可能なリンカーと接合されたタグから構成された、検出可能な標識を含む、任意の検出可能な標識により標識されうる。このアッセイにおいて、抗体は、固体支持体へと固定化されうる。代替的に、抗体は、マイクロ粒子又は平面状基質などの固体支持体上に固定化された、抗分子種抗体などの抗体へとカップリングされうる。
【0258】
標識された目的の解析物、被験試料及び抗体は、サンドイッチアッセイフォーマットとの関連において、上記で記載された条件と同様の条件下においてインキュベートされる。次いで、抗体-目的の解析物複合体の、2つの異なる分子種が作出されうる。具体的に述べると、作出された抗体-目的の解析物複合体のうちの1つが、検出可能な標識(例えば、蛍光標識など)を含有するのに対し、他の抗体-目的の解析物複合体は、検出可能な標識を含有しない。抗体-目的の解析物複合体は、検出可能な標識の定量の前に、残りの被験試料から分離されうるが、そうされなくともよい。次いで、抗体-目的の解析物複合体が、残りの被験試料から分離されるのかどうかに関わらず、抗体-目的の解析物複合体内において検出可能な標識の量が定量される。次いで、目的の解析物(膜に会合した目的の解析物、可溶性の目的の解析物、可溶性の目的の解析物の断片、目的の解析物(膜に会合した目的の解析物又は可溶性の目的の解析物)の変異体又はこれらの任意の組合せなど)の、被験試料中濃度が、例えば、上記で記載された通りに決定されうる。
【0259】
(3)リバース競合阻害アッセイ
リバース競合アッセイにおいて、固定化された目的の解析物(例えば、UCH-L1)は、被験試料及び少なくとも1つの標識された抗体と、逐次的に、又は同時に接触されうる。
【0260】
目的の解析物は、上記においてサンドイッチアッセイフォーマットとの関連において論じられた固体支持体などの固体支持体に結合される。
【0261】
固定化された目的の解析物、被験試料及び少なくとも1つの標識された抗体は、サンドイッチアッセイフォーマットとの関連において、上記された条件と同様の条件下においてインキュベートされる。次いで、目的の解析物-抗体複合体の2つの異なる分子種が作出されうる。具体的に述べると、作出された目的の解析物-抗体複合体のうちの1つが、固定化され、検出可能な標識(例えば、蛍光標識など)を含有するのに対し、他の目的の解析物-抗体複合体は、固定化されず、検出可能な標識を含有しない。固定化されなかった目的の解析物-抗体複合体及び残りの被験試料は、洗浄などの、当技術分野において公知の技法を介して、固定化された目的の解析物-抗体複合体の存在から除去される。次いで、固定化されなかった目的の解析物-抗体複合体が除去されたら、タグの切断後に、固定化された、目的の解析物-抗体複合体内の、検出可能な標識の量が定量される。次いで、目的の解析物の、被験試料中濃度が、上記で記載された通り、検出可能な標識の数量を比較することにより決定されうる。
【0262】
(4)ワンステップイムノアッセイ又は「キャプチャーオンザフライ」アッセイ
キャプチャーオンザフライアッセイにおいて、固体基質は、固定化剤によりあらかじめコーティングされている。捕捉剤、解析物(例えば、UCH-L1)及び検出剤が、固体基質へと併せて添加されるのに続き、検出の前に、洗浄ステップがなされる。捕捉剤は、解析物(例えば、UCH-L1)に結合することが可能であり、固定化剤のためのリガンドを含む。捕捉剤及び検出剤は、本明細書において記載された、又は当技術分野で公知である、捕捉又は検出が可能な、抗体又は他の任意の部分でありうる。リガンドは、ペプチドタグを含むことが可能であり、固定化剤は、抗ペプチドタグ抗体を含みうる。代替的に、リガンド及び固定化剤は、キャプチャーオンザフライアッセイのために利用されるように、併せて結合することが可能な薬剤の任意の対(例えば、特異的結合対及び当技術分野で公知であるような他の対)でありうる。1つを超える解析物が測定されうる。一部の実施形態において、固体基質は、抗原によりコーティングされる場合があり、解析される解析物は、抗体である。
【0263】
ワンステップイムノアッセイ又は「キャプチャーオンザフライ」における、ある特定の、他の実施形態において、固定化剤(ビオチン、ストレプトアビジンなど)によりあらかじめコーティングされた固体支持体(マイクロ粒子など)並びに少なくとも第1の特異的結合メンバー及び第2の特異的結合メンバー(それぞれ、捕捉試薬及び検出試薬として機能する)が使用される。第1の特異的結合メンバーは、固定化剤のためのリガンド(例えば、固体支持体上の固定化剤が、ストレプトアビジンである場合、第1の特異的結合メンバー上のリガンドは、ビオチンでありうる)を含み、また、目的の解析物(例えば、UCH-L1)にも結合する。第2の特異的結合メンバーは、検出可能な標識を含み、目的の解析物(例えば、UCH-L1)に結合する。固体支持体並びに第1の特異的結合メンバー及び第2の特異的結合メンバーは、被験試料へと(逐次的に、又は同時に)添加されうる。第1の特異的結合メンバー上のリガンドは、固体支持体上の固定化剤に結合して、固体支持体/第1の特異的結合メンバー複合体を形成する。試料中に存在する、任意の目的の解析物は、固体支持体/第1の特異的結合メンバー複合体に結合して、固体支持体/第1の特異的結合メンバー/解析物複合体を形成する。第2の特異的結合メンバーは、固体支持体/第1の特異的結合メンバー/解析物複合体に結合し、検出可能な標識が検出される。検出の前に、任意選択の洗浄ステップが利用されうる。ワンステップアッセイにおける、ある特定の実施形態において、1つを超える解析物が測定されうる。ある特定の、他の実施形態において、2つを超える特異的結合メンバーが利用されうる。ある特定の、他の実施形態において、複数の検出可能な標識が添加されうる。ある特定の、他の実施形態において、複数の、目的の解析物が検出されうる、又はこれらの量、レベル若しくは濃度が、測定、決定若しくは評価されうる。
【0264】
キャプチャーオンザフライアッセイの使用は、本明細書において記載され、当技術分野において公知である、様々なフォーマットにおいてなされうる。例えば、フォーマットは、上記されたようなサンドイッチアッセイでありうるが、代替的に、競合アッセイであることも可能であり、単一特異性の結合メンバーを利用しうる、又は公知であるような、他の変化形も使用しうる。
【0265】
14.キット
本明細書において、被験血液試料を、対象から得、被験試料を、UCH-L1又はUCH-L1断片のレベルについてアッセイ又は評価するために使用されうるキットが提示される。本開示のキットは、血液試料を採取するための構成要素のパッケージを含みうる。限定せずに述べると、キットは、例えば、成人患者、若年患者、新生児患者及び外傷性脳損傷を患った可能性がある患者から、血液試料を得るために使用されうる。キットの構成要素は、意図された穿刺領域内の、対象の皮膚を除菌するための手段を含みうる。典型的かつ従来型の除菌手段は、一般にガーゼと称される織布片である。ガーゼは、好ましくは、その中に除菌剤を吸蔵させており、任意選択的に、把持部分へも取り付けられうる。好ましい除菌剤は、アルコールであるが、抗菌剤などの、他の除菌剤も使用されうる。適切な抗菌剤の例は、ビスグアニドであり、これらのうち、クロルヘキシジンが、公知の最良のメンバーである。クロルヘキシジンは、好ましくは、水溶液中又はアルコール溶液中の、可溶性塩として提供されうる。
【0266】
血流を開始するための皮膚穿刺手段は、従来型のランセットの場合もあり、注射針を含む、様々な従来型のデバイスのうちのいずれかの場合もある。注射針は、単一端型の場合もあり、両端型の場合もあり、任意のゲージ、好ましくは21又は23ゲージでありうる。注射針は、安全性スリーブを含む場合もあり、注射針ハブへと取り付けられる場合もあり、従来型のチューブホルダーと共に使用される場合もある。注射針はまた、バレル及びプランジャーを含む、従来型のシリンジアセンブリーの一部でもありうる。当技術分野で公知の通り、穿刺手段はまた、ウィングなどの把持手段を有する穿刺(penetrating)注射針が、ハブ及びチュービングを介して、真空チューブの隔膜を穿刺(puncture)するための送達注射針へと接続された、従来型の血液回収セットの一部でもありうる。
【0267】
キットの保持手段は、例えば、シリンジバレルなどの、試料を受容するための、任意の種類の容器でありうる。好ましい保持手段は、開放端及び閉止端を有する、従来型のチューブ又はバイアルである。このようなチューブは、100μl~10mLの内部容量を有しうる。小型のチューブは、一般に、重力流により、極めて少量の血液を回収するために、ランセットと共に使用される。このようなチューブの代表的なものは、Becton,Dickinson and Company製の、Microtainer(商標)ブランドのチューブである。キットのチューブはまた、開放端が、穿刺可能な隔膜又は止栓により覆われた真空チューブであって、Becton,Dickinson and Co製の、Vacutainer(商標)ブランドのチューブなどの真空チューブでもありうる。真空チューブは、一般に、複数かつ大量の血液試料を回収するために、従来型のチューブホルダー及び血液回収セットと共に使用され、様々な従来型の血液解析用添加剤であって、抗凝固剤、凝固薬剤及び血清分離ゲルなどの血液解析用添加剤のうちのいずれかを含有しうる。例示的な抗凝固剤は、ヘパリンリチウム及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む場合があり、シリカ粒子を含みうる。保持手段はまた、試料が、イムノアッセイなどの解析のための試薬を含有する、ガラス又はプラスチック製のストリップ上へと直接流れ込まされる、検査用ストリップでもありうる。
【0268】
血液試料を採取するために、対象の皮膚が穿刺される場合、穿刺創傷は、通例、止血し、治癒時の創傷を保護するために覆われる。したがって、本発明のキットは、創傷を覆うさらなるガーゼ及び創傷の上を覆うガーゼを固定する接着剤などの手段を含みうる。現行の医療慣行に従い、キットは、静脈切開医と試料との接触を回避するための、使い捨て型の手袋を含みうる。血流を促進するために、キットはまた、止血帯も含みうる。
【0269】
キットの全ての成分は、好ましくは、キットの内容物が、保存のために、滅菌及び封止されうるように、密封可能なカバーを伴う、区画されたプラスチック製の筐体などのパッケージングにより供給されうる。
【0270】
キットは、被験試料を、UCH-L1についてアッセイするための、少なくとも1つの構成要素、被験試料を、UCH-L1についてアッセイするための指示書を含みうる。例えば、キットは、被験試料を、UCH-L1について、イムノアッセイ、例えば、化学発光マイクロ粒子イムノアッセイによりアッセイするための指示書を含みうる。キット内に含まれる指示書は、パッケージング材料に貼付されうる、又はパッケージの添付文書として含まれうる。指示書は、典型的に、文書又は印刷物でありうるが、このようなものに限定されない。このような指示書を保存し、これらを末端使用者へと通信することが可能な、任意のメディアが、本開示により想定される。このようなメディアは、電子保存メディア(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学メディア(例えば、CD ROM)などを含むがこれらに限定されない。本明細書において使用された「指示書」は、指示書を提供するインターネットサイトのアドレスを含みうる。少なくとも1つの構成要素は、UCH-L1に特異的に結合する、1つ以上の単離抗体又はこれらの抗体断片を含む、少なくとも1つの組成物を含みうる。抗体は、UCH-L1捕捉抗体及び/又はUCH-L1検出抗体でありうる。
【0271】
代替的に、又は、加えて、キットは、較正物質若しくは対照、例えば、精製され、任意選択的に、凍結乾燥させられたUCH-L1及び/又はアッセイを行うための、少なくとも1つの容器(例えば、抗UCH-L1モノクローナル抗体により、あらかじめコーティングされうる、チューブ、マイクロ滴定プレート又はストリップ)及び/又はそれらのうちの一方が濃縮溶液、検出可能な標識(例えば、酵素標識)のための基質溶液若しくは停止溶液として提供されうる、アッセイ緩衝液若しくは洗浄緩衝液などの緩衝液を含みうる。好ましくは、キットは、アッセイを実施するのに必要な、全ての構成要素、すなわち、試薬、標準物質、緩衝液、希釈剤などを含む。指示書はまた、検量線を作成するための指示書も含みうる。
【0272】
キットは、UCH-L1を定量するための参照標準物質をさらに含みうる。参照標準物質は、UCH-L1濃度を内挿及び/又は外挿するための検量線を確立するのに利用されうる。参照標準物質は、高度のUCH-L1濃度レベル、例えば、約100000pg/mL、約125000pg/mL、約150000pg/mL、約175000pg/mL、約200000pg/mL、約225000pg/mL、約250000pg/mL、約275000pg/mL若しくは約300000pg/mL;中程度のUCH-L1濃度レベル、例えば、約25000pg/mL、約40000pg/mL、約45000pg/mL、約50000pg/mL、約55000pg/mL、約60000pg/mL、約75000pg/mL若しくは約100000pg/mL及び/又は低度のUCH-L1濃度レベル、例えば、約1pg/mL、約5pg/mL、約10pg/mL、約12.5pg/mL、約15pg/mL、約20pg/mL、約25pg/mL、約30pg/mL、約35pg/mL、約40pg/mL、約45pg/mL、約50pg/mL、約55pg/mL、約60pg/mL、約65pg/mL、約70pg/mL、約75pg/mL、約80pg/mL、約85pg/mL、約90pg/mL、約95pg/mL若しくは約100pg/mLを含みうる。
【0273】
キット内に提供される、任意の抗体であって、UCH-L1に特異的な組換え抗体などの抗体は、フルオロフォア、放射性部分、酵素、ビオチン/アビジン標識、発色団、化学発光標識などの、検出可能な標識を組み込むことが可能である、又はキットは、抗体を標識付けするための試薬若しくは抗体(例えば、検出抗体)を検出するための試薬及び/又は解析物(例えば、UCH-L1)を標識付けするための試薬若しくは解析物(例えば、UCH-L1)を検出するための試薬を含みうる。抗体、較正物質及び/又は対照は、個別の容器内に用意されうる、又は適切なアッセイフォーマット、例えば、マイクロ滴定プレートへとあらかじめ分注されうる。
【0274】
任意選択的に、キットは、品質管理のための構成要素(例えば、感度パネル、較正物質及び陽性対照)を含む。品質管理試薬の調製は、当技術分野において周知であり、様々な免疫診断用生成物のための添付シート上に記載されている。感度パネルメンバーは、任意選択的に、アッセイ性能の特徴を確立するのに使用され、さらに、任意選択的に、イムノアッセイキット試薬の完全性及びアッセイの標準化についての、有用な指標である。
【0275】
キットはまた、任意選択的に、診断的アッセイを行うのに要求される、又は品質管理査定を容易とする、他の試薬であって、緩衝液、塩、酵素、酵素補因子、基質、検出試薬などの試薬も含みうる。被験試料の単離及び/又は処理のための緩衝液及び溶液(例えば、前処理試薬)などの、他の構成要素もまた、キットに含まれうる。加えて、キットは、1つ以上の他の対照も含みうる。キットの構成要素のうちの1つ以上は、凍結乾燥させられる場合があり、この場合、キットは、凍結乾燥させられた構成要素の復元に適する試薬をさらに含みうる。
【0276】
キットの多様な構成要素は、必要に応じて、任意選択的に、適切な容器、例えば、マイクロ滴定プレートにより提供される。キットは、試料を保持又は保存するための容器(例えば、尿試料、全血試料、血漿試料又は血清試料のための容器又はカートリッジ)をさらに含みうる。適切な場合、キットはまた、任意選択的に、反応槽、混合槽及び試薬又は被験試料の調製を容易とする他の構成要素も含有しうる。キットはまた、シリンジ、ピペット、鉗子、計量スプーンなどの、被験試料を得る一助となるための、1つ以上の器具も含みうる。
【0277】
検出可能な標識が、少なくとも1つのアクリジニウム化合物である場合、キットは、少なくとも1つのアクリジニウム-9-カルボキサミド、少なくとも1つのアクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステル、又はこれらの任意の組合せを含みうる。検出可能な標識が、少なくとも1つのアクリジニウム化合物である場合、キットはまた、緩衝液、溶液及び/又は少なくとも1つの塩基性溶液などの、過酸化水素の供給源も含みうる。所望の場合、キットは、磁性粒子、ビーズ、試験管、マイクロ滴定プレート、キュベット、膜、足場形成分子、薄膜、濾紙、ディスク又はチップなどの固相を含有しうる。
【0278】
所望の場合、キットは、単独で、又は被験試料を、外傷性脳損傷又は障害のバイオマーカーなどのバイオマーカーでありうる、別の解析物についてアッセイするための指示書とさらに組み合わせて、1つ以上の構成要素をさらに含みうる。
【0279】
本明細書において記載されたイムノアッセイにより、UCH-L1の、被験試料中濃度を評価又は決定するためのキット(又はこの構成要素)並びに方法は、例えば、米国特許第5,063,081号、米国特許出願公開第2003/0170881号、同第2004/0018577号、同第2005/0054078号及び同第2006/0160164号において記載されており、例えば、Abbott Laboratories(Abbott Park、IL)により、Abbott Point of Care(i-STAT(登録商標)又はi-STAT Alinity、Abbott Laboratories)として市販されている、様々な自動式システム及び半自動式システム(固相がマイクロ粒子を含むシステムを含む)のほか、米国特許第5,089,424号及び同第5,006,309号において記載されており、例えば、Abbott Laboratories(Abbott Park、IL)により、ARCHITECT(登録商標)又はAbbott Alinityデバイスのシリーズとして市販されているシステムにおける使用に適合させられうる。
【0280】
自動式システム又は半自動式システムの、非自動式システム(例えば、ELISA)と比較した、一部の差違は、第1の特異的結合パートナー(例えば、解析物抗体又は捕捉抗体)が、接合された基質(サンドイッチの形成及び解析物の反応性に影響を及ぼしうる)並びに捕捉ステップ、検出ステップ及び/又は任意選択の洗浄ステップの長さ及びタイミングを含む。ELISAなどの非自動式フォーマットが、試料及び捕捉試薬(例えば、約2時間)を伴う、比較的長いインキュベーション時間を要求しうるのに対し、自動式フォーマット又は半自動式フォーマット(例えば、ARCHITECT(登録商標)及び任意の後継のプラットフォーム、Abbott Laboratories)は、比較的短いインキュベーション時間(例えば、ARCHITECT(登録商標)の場合、約18分間)を有しうる。同様に、ELISAなどの非自動式フォーマットが、コンジュゲート試薬などの検出抗体を、比較的長いインキュベーション時間(例えば、約2時間)にわたりインキュベートするのに対し、自動式フォーマット又は半自動式フォーマット(例えば、ARCHITECT(登録商標)及び任意の後継のプラットフォーム)は、比較的短いインキュベーション時間(例えば、ARCHITECT(登録商標)及び任意の後継のプラットフォームの場合、約4分間)を有しうる。
【0281】
Abbott Laboratoriesから市販されている、他のプラットフォームは、AxSYM(登録商標)、IMx(登録商標)(例えば、参照によりその全体において本明細書に組み込まれた、米国特許第5,294,404号を参照されたい)、PRISM(登録商標)、EIA(ビーズ)及びQuantum(商標)II並びに他のプラットフォームを含むがこれらに限定されない。加えて、アッセイ、キット及びキットの構成要素は、例えば、電気化学アッセイシステム又は他の携帯型アッセイシステム若しくはポイントオブケアアッセイシステム上の、他のフォーマットにおいて利用されうる。前述の通り、本開示は、例えば、サンドイッチイムノアッセイを実施する、市販の、Abbott Point of Care(i-STAT(登録商標)、Abbott Laboratories)電気化学イムノアッセイシステムに適用可能である。イムノセンサー並びにこれらの製造法及び単回使用のための検査デバイスにおける動作については、例えば、参照によりこれに関するそれらの教示について本明細書に組み込まれた、米国特許第5,063,081号、米国特許出願公開第2003/0170881号、同第2004/0018577号、同第2005/0054078号及び同第2006/0160164号において記載されている。
【0282】
特に、アッセイの、i-STAT(登録商標)システムへの適合に関して、以下の構成が好ましい。微細加工シリコンチップが、金製の電流測定用作業電極及び銀塩化銀基準電極の対と共に作製される。作業電極のうちの1つにおいて、捕捉抗体を固定化されたポリスチレンビーズ(直径を0.2μmとする)が、電極上の、パターン化されたポリビニルアルコールのポリマーコーティングへと接着させられる。このチップが、イムノアッセイに適する流体フォーマットと共に、i-STAT(登録商標)カートリッジへとアセンブルされる。シリコンチップの部分に、それらのうちのいずれも、検出可能に標識されうる、1つ以上のUCH-L1抗体(UCH-L1に結合しうる、1つ以上のモノクローナル/ポリクローナル抗体又はこれらの断片、これらの変異体又はこれらの変異体の断片)又は1つ以上の抗UCH-L1DVD-Ig(又はUCH-L1に結合しうる、これらの断片、これらの変異体又はこれらの変異体の断片)などの、UCH-L1に対する特異的結合パートナーが存在する。カートリッジの流体パウチ内に、p-アミノフェノールホスフェートを含む水性試薬が存在する。
【0283】
作動時に、TBIを患うことが推測される対象に由来する試料が、検査カートリッジの保持チャンバーへと添加され、カートリッジが、i-STAT(登録商標)リーダーへと挿入される。カートリッジ内のポンプエレメントが、試料を、チップを含有する導管へと押し出す。試料は、センサーと接触され、酵素コンジュゲートを、試料へと溶存させる。試料は、センサーにわたり振動させられて、約2~12分間にわたる、サンドイッチの形成を促進する。アッセイの最後から二番目のステップにおいて、試料は、廃液チャンバーへと押し出され、アルカリホスファターゼ酵素に対する基質を含有する洗浄液が、過剰量の酵素コンジュゲート及び試料を、センサーチップから洗い落とすのに使用される。アッセイの最後のステップにおいて、アルカリホスファターゼ標識は、p-アミノフェノールホスフェートと反応して、リン酸基を切断し、作業電極において、遊離p-アミノフェノールを、電気化学的に酸化させる。測定された電流に基づき、リーダーは、組み込まれたアルゴリズム及び工場において決定された較正曲線により、UCH-L1の、試料中量を計算することが可能となる。
【0284】
本明細書において記載された方法及びキットは、必然的に、イムノアッセイを実行するための、他の試薬及び方法を包含する。例えば、当技術分野において公知であり、かつ/又は、コンジュゲート希釈剤及び/若しくは較正物質希釈剤として、例えば、洗浄用に、たやすく調製若しくは最適化され利用されうる、多様な緩衝液が包含される。例示的なコンジュゲート希釈剤は、ある特定のキット(Abbott Laboratories、Abbott Park、IL)において利用され、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、塩、タンパク質ブロッキング剤、抗微生物剤及び界面活性剤を含有する、ARCHITECT(登録商標)コンジュゲート希釈剤である。例示的な較正物質希釈剤は、MES、他の塩、タンパク質ブロッキング剤及び抗微生物剤を含有する緩衝液を含む、ある特定のキット(Abbott Laboratories、Abbott Park、IL)において利用された、ARCHITECT(登録商標)ヒト較正物質希釈剤である。加えて、2008年12月31日に出願された、米国特許出願第61/142,048号において記載されている通り、シグナル発生の改善は、例えば、シグナル増幅剤としてのシグナル抗体へと連結された核酸配列を使用する、i-STAT(登録商標)カートリッジフォーマットにおいて得られうる。
【0285】
本明細書の、ある特定の実施形態は、外傷性脳損傷などの疾患を評価するのに利用されると有利であるが、アッセイ及びキットはまた、適宜、任意選択的に、他の疾患、障害及び状態におけるUCH-L1を評価するのにも利用されうる。
【0286】
アッセイ法はまた、外傷性脳損傷などの疾患を改善する化合物を同定するのにも使用されうる。例えば、UCH-L1を発現する細胞は、候補化合物と接触されうる。本明細書において記載されたアッセイ法を使用して、化合物と接触された細胞内の、UCH-L1の発現レベルは、対照細胞内の発現レベルと比較されうる。
【実施例】
【0287】
15.実施例
当業者に、本明細書において記載された、本開示の方法の、他の適切な改変及び適合は、たやすく適用可能かつ認識可能であり、本開示の範囲又は本明細書において開示された態様及び実施形態から逸脱しない限りにおいて、適切な同等物を使用してなされうることが容易に明らかとなる。さて、本開示について詳細に記載してきたが、これは、本開示の実施形態の、一部の態様を例示することだけを意図するものであり、本開示の範囲に対して限定的であると考えられるべきではない、以下の例を参照することにより、より明確に理解される。本明細書において言及された、全ての雑誌の参考文献、米国特許及び刊行物の開示は、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれている。
【0288】
本発明は、以下の非限定例により例示された、複数の態様を有する。
【0289】
[実施例1]
i-STAT(登録商標)UCH-L1アッセイ
開発中のi-STAT UCH-L1アッセイを、本明細書において記載された例において使用した。しかし、本明細書において記載された本開示を使用して、同じ抗体又は異なる抗体を使用する、任意のUCH-L1アッセイを改善しうることが理解される。捕捉モノクローナル抗体としての抗体A及び検出モノクローナル抗体としての抗体B及び抗体Cなどのモノクローナル抗体対を使用した。抗体Aは、Abbott Laboratories(Abbott Park、IL)社内において開発された、例示的な抗UCH-L1抗体である。Banyan Biomarkers(Alachua、Florida)により開発された、抗体B及び抗体Cは、UCH-L1の異なるエピトープを認識し、試料中の抗原の検出を増強する。Abbott Laboratories(Abbott Park、IL)社内において開発された、又は文献において記載された、他の抗体もまた、捕捉抗体又は検出抗体として、多様な組合せにおいて、併せて使用された場合に、同様のシグナルの増強を示す、又はこれを示すことが期待されている。UCH-L1アッセイデザインを、鍵となる性能属性に対して査定した。カートリッジ構成は、抗体構成:抗体A(捕捉抗体)/抗体B+C(検出抗体);試薬条件:0.8%の固体、125μg/mLのFabアルカリホスファターゼクラスターコンジュゲート及び試料注入口の印字:UCH-L1標準物質であった。アッセイ時間は、10~15分間(試料捕捉時間を7~12分間とする)であった。
【0290】
[実施例2]
UCH-L1の、全血中の安定性
UCH-L1の、血液試料中の安定性は、頭部への損傷を受けていない、又はUCH-L1に関する疾患若しくは障害を有すると診断されていない対象(「正常」対象)が、UCH-L1の、測定可能な全血試料中レベルを有するという観察により査定した。i-STAT(登録商標)プラットフォームを使用して、細胞を、血漿部分から、あらかじめ分離せずに、全血中のUCH-L1を測定した。結果を、
図1A~1Bに示す。
【0291】
正常対象に由来する全血中の内因性UCH-L1抗原の安定性を理解するように、初期実験をデザインした。血液は、承認された、治験審査委員会による研究プロトコールに従い、5例の正常ドナーから、EDTA回収チューブへと採取し;各参加者は、説明同意文書を提出した。血液は、室温において、24時間にわたり持続的に混合し、回収/混合の後、1時間、4時間、8時間及び24時間の時点において検査した。各時点において、少量の血液を、Eppendorf(商標)LoBindチューブへと移し、各時点において、対応する血漿を検査するように、遠心分離した。
【0292】
図1A~1B(それぞれ、UCH-L1レベル及びベースラインに対するパーセントとしてのUCH-L1レベル)において裏付けられた通り、全血試料の各々について、各時点及び24時間後におけるUCH-L1濃度は上昇した。加えて、加えて、24時間中(例えば、検査時間中の全時間中を意味する)、持続的に混合された、全血試料の各々について、UCH-L1濃度の有意な上昇が見られた。各ドナーについて、実験を開始した時点(例えば、全血を得た、第1の検査時点であるベースライン)からの差違を、
図1Bに示す。
【0293】
[実施例3]
UCH-L1の、血漿中の安定性
UCH-L1の、血漿試料中の安定性は、正常対象において査定した(
図2A~2B)。上記の実施例1において論じた、これらの時点の各々において分離された、対応する血漿のUCH-L1濃度(
図1A~1B)は、同様の結果を示した。血液は、承認された、治験審査委員会による研究プロトコールに従い、5例の正常ドナーから、EDTA回収チューブへと採取し;各参加者は、説明同意文書を提出した。血液は、室温において、24時間にわたり持続的に混合し、回収/混合の後、1時間、4時間、8時間及び24時間の時点において検査した。各時点において、少量の血液を、Eppendorf(商標)LoBindチューブへと移し、各時点において、対応する血漿を検査するように、遠心分離した。
図2Aに示す通り、血漿を、全血から分離しなかった場合、試料を、混合デバイスから取り出し、UCH-L1評価のために処理するまでの24時間にわたり、血漿値は、2~5倍に上昇した。これらの実験において使用した持続的混合は、溶血が、UCH-L1の測定値に影響を及ぼす、重要な因子でありうることを指し示す。
【0294】
図2A~2B(それぞれ、UCH-L1レベル及びベースラインに対するパーセントとしてのUCH-L1レベル)において裏付けられた通り、血漿試料の各々について、時間中に全血として保存された場合、各時点及び24時間後におけるUCH-L1の濃度は上昇した。加えて、24時間中、持続的に混合された、全血試料の各々について、UCH-L1濃度の有意な上昇が見られた。各ドナーについて、実験を開始した時点(ベースライン)からの差違を、
図2Bに示す。
【0295】
[実施例4]
抗凝固剤の、UCH-L1安定性に対する影響
正常対象に由来する全血試料中の、UCH-L1の安定性に対する、抗凝固剤の影響について探索するために、実験を行った。血液を、4例のドナーから、ヘパリンLi/EDTA/血清チューブに回収した。EDTA/ヘパリンリチウム(Li)全血試料を、2mLのチューブへと、迅速にアリコート分割し、これらの試料を、UCH-L1レベルについて処理及び検査する前に、室温及び2~8℃において、2時間、6時間、24時間及び48時間にわたり、定常状態に保った。各時点において、全血試料(
図3A~3B)及び対応する血漿試料(表2)を、UCH-L1濃度について評価した。検査の前に、全血試料を、倒立により(約10回(所要時間:60秒間未満))混合した。
【0296】
室温のヘパリンLiチューブ内において処理された全血試料に由来するUCH-L1の、2~8℃と比較した安定性を、
図3Aに示す。室温において、定常状態に保存した場合、UCH-L1の、全血試料中濃度は、試料を得た後、少なくとも初期の24時間にわたり、安定(<10%の変化)であった。しかし、同じドナーに由来する全血試料によるUCH-L1濃度は、2~8℃において、最初の約6時間までに限り安定であり;24時間後及び48時間後の、試料4例中3例において、少なくとも約10%の差違(UCH-L1レベルの上昇)が見られた(
図3A)。下記の表2を参照されたい。
【0297】
室温のEDTAチューブ内において処理された全血試料に由来するUCH-L1の、2~8℃と比較した安定性を、
図3Bに示す。室温において、定常状態に保存した場合、UCH-L1の、全血試料中濃度は、試料を得た後、少なくとも初期の6時間にわたり、安定(<15%の変化)であった。しかし、24時間後及び48時間後において検査された同じドナーに由来する全血試料によるUCH-L1濃度は、2~8℃における保存が、UCH-L1の安定性を、室温における保存と比較して改善することを示した。2~8℃において保存された試料の濃度に、約20%未満の差違が見られたのに対し、室温において保存された全血は、初期濃度を、最大約200%超える、UCH-L1濃度の上昇を示した(
図3B)。下記の表2を参照されたい。
【0298】
【0299】
室温のEDTA/ヘパリンLiチューブ内において処理された、対応する血漿試料に由来するUCH-L1の、2~8℃と比較した安定性を、下記の表3に示す。各時点において、被験全血試料の各々について、対応する血漿試料を単離し、速やかに検査して、血漿試料中のばらつきを査定した。血漿試料中において観察された、UCH-L1の濃度値及び差違は、全血中の結果と、極めて類似した(
図3A~3B)ことから、24時間後及び48時間における、UCH-L1濃度の上昇に寄与する因子は、試料処理の解析前フェーズ(すなわち、血液試料を得た後及び/又は保存時)に関与する可能性が高く、試薬によって変動しなかったことが指し示される。
【0300】
【0301】
表2及び3における結果は、いずれの試料型(全血及び血漿)においても、ある程度のドナー間のばらつきが見られるので、ヘパリンLi/EDTAチューブが、同様の影響を示すことを示す。しかし、表2及び3における結果は、温度に関わらず(すなわち、室温又は2~8℃において)、保存時に、試料を定常状態に保つこと(すなわち、実施例2において示した持続的混合を行わないこと)により、混合の量を低減する場合における、UCH-L1の、試料中レベルの安定性の改善を裏付ける。このような試料(例えば、持続的に混合されない試料)を、2~8℃の温度において保存する場合、UCH-L1の、試料中レベルの安定性の、さらなる改善が示される(このような試料は、対象から得られた後、24~48時間以下において安定である)。
【0302】
[実施例5]
UCH-L1の、血漿中及び血清中の安定性
正常ドナーから全血試料を得た直後に単離した血漿試料中及び血清試料中の、UCH-L1の安定性を、全血試料を混合にかけ、かつ/又は室温若しくは2~8℃において保存した後で単離した場合の安定性と対比して評価するために、実験を行った。新鮮な血清及び血漿を、実験の開始の前に(時点0において)分離した。次いで、試料をアリコート分割し、室温又は2~8℃において保存した。各時点において(採血の0時間、2時間、8時間、24時間及び48時間後に)、血漿のアリコートを混合し、UCH-L1レベルについて検査した。
【0303】
図4A(室温)及び4B(2~8℃)に示す通り、UCH-L1は、血液試料を得、EDTAチューブを使用して、血漿を分離した後、初期のわずか数時間にわたり安定であり、室温における、UCH-L1の、血漿中の安定性に、2~8℃と比較した有意差は見られなかった。
図5A(室温)及び5B(2~8℃)において、ヘパリンLiチューブの使用は、EDTAチューブと比較して、著明に異なる結果をもたらさなかった。加えて、
図6A(室温)及び6B(2~8℃)に示す通り、血清を単離するための、血清チューブの使用及びUCH-L1レベルについての検査は、血漿試料と比較して、著明に異なる結果をもたらさなかった。
【0304】
これらの結果は、UCH-L1濃度が、24及び48時間後に上昇した、全血試料についての上記の結果と対照的であることから、全血試料は、同じ処理条件に対して、血漿試料及び血清試料と異なる形で反応することが指し示される。具体的に、これらの結果は、全血試料(例えば、これらの試料との混合は、回避すべきであり、これらの試料は、2~8℃で保存すべきである)に関して、試料操作が重要であることを示す。
【0305】
[実施例6]
UCH-L1の、血清中の安定性に対する、凝血塊形成の影響
血清とは、凝血塊及び凝固因子が形成された後で単離された、全血の液体部分(すなわち、凝固因子を伴わない血漿)である。一般に、試料を遠心分離して、血清を分離しうる前に、室温の全血試料中において、凝血塊が形成するには、約30~60分間を要する。凝固過程において、細胞は、溶解することが可能であり、これは、血清中の、細胞成分の放出を結果としてもたらしうる。血清が、凝血塊へと曝露される場合に、凝血塊が、血清の成分に対して及ぼしうる影響を査定するために、4例の正常ドナーに由来する、チューブ2本の血液を、標準的な血清チューブ内に回収した。血清を、1本のチューブから単離し、各ドナーについて、第2のチューブへと移した。第2のチューブを、室温において、8時間にわたり、定常状態に保ち、凝血塊を伴う、第2のチューブからの血清を、8時間後に分離し、検査した。
【0306】
図7に示す通り、UCH-L1濃度は、血清を、凝血塊から分離しなかった場合より、高濃度であった。UCH-L1濃度は、各試料について、少なくとも30%高濃度であったことから、UCH-L1の、凝血塊から血清への、放出の可能性が指し示される。
【0307】
別の実験において、新鮮な血清及び血漿を、回収から1時間以内に、全血から単離し、別個のEppendorf(商標)LoBindチューブへとアリコート分割し、各アリコートを、RT又は2~8℃において保存した。全血試料から単離された、未混合の血漿及び血清の安定性を査定するように、血漿及び血清のアリコートを、2時間、8時間、24時間及び48時間後において検査した。下記の表4は、血漿試料の濃度を、4例のドナーの各々について、時間経過にわたり示す。UCH-L1の、試料中レベルは、2~8℃において、8時間以下にわたり、RTにおいて、2時間以下にわたり比較的安定であった。しかし、全血の安定性結果と異なり、UCH-L1の濃度は、全ての試料型について、いずれの温度においても、時間と共に低下したことから、UCH-L1の、全血試料中レベルの上昇は、血液の細胞成分の存在に起因したことが示唆される。まとめると、これらの結果は、全血試料(例えば、これらの試料との混合は、回避すべきであり、これらの試料は、2~8℃で保存すべきである)に関して、試料操作が極めて重要であることを示す。これに対し、血漿及び血清を、細胞/凝血塊から分離すれば、これらの試料は、8時間以下の良好な安定性を示す。
【0308】
【0309】
[実施例7]
UCH-L1の安定性に対する、溶血の寄与
干渉研究の査定は、溶血物を、UCH-L1低パネルへとスパイクした場合に、溶血物中に存在する成分が、UCH-L1リーディングの上昇の原因である可能性を指し示した(データは示さない)。また、このUCH-L1「干渉」シグナルを、イムノアッセイにおいて使用された、抗UCH-L1捕捉抗体の添加により、特異的に低減しうることも示されたが、非特異的マウスIgGは、対照として添加したところ、差違を示さなかった。
【0310】
溶血物の干渉の可能性について検査するために、4例の正常ドナー対象に由来する、チューブの底部からの濃厚赤血球(RBC)を使用して、4つの溶血物を調製した。底部からの細胞の除去は、これらの溶血物中のバフィーコートの量を最小化しようとする試みであった。濃厚RBCを、生理食塩液により、反復洗浄し、凍結により溶解させて、溶血物溶液を作出した。この溶血物溶液の小部分を、熱処理されたEDTA血漿(約10pg/mLのUCH-L1を含有する)へと添加し、シグナルの変化を査定するように検査した。
【0311】
各溶血物を、3つのヘモグロビン濃度(0.75、0.50及び0.25g/dL)をターゲティングするEDTA血漿プールへとスパイクし、UCH-L1アッセイを使用して、試料を検査した。これらの試料の各々についてのヘモグロビンレベルを、血液解析器上において測定した。スパイキング時及び測定時において、当技術分野で公知の通り、試料を、20~30分間にわたり混合した。
図8は、UCH-L1の濃度差を、ヘモグロビン濃度の関数として示す。加えて、
図9は、3例の正常ドナーに由来する全血試料であって、組換えUCH-L1をスパイクされた全血試料が、時間経過にわたり、UCH-L1の、同じ上昇を呈示しなかったことを示す。これらのデータは、上記で記載した、UCH-L1の、全血中レベルの上昇が、ベースラインのUCH-L1濃度が比較的低濃度である対象において明らかであることを指し示す。
【0312】
前出の詳細な記載及び付属の実施例は、例示的なものであるに過ぎず、併載の特許請求の範囲及びそれらの均等物だけによって規定される、本発明の範囲に対する限定として理解されないものとすることが理解される。
【0313】
開示された実施形態に対する、多様な変化及び改変が、当業者に明らかである。この精神及び範囲から逸脱しない限りにおいて、限定せずに述べると、化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、組成物、製剤又は本発明の使用法に関する変化及び改変を含む、このような変化及び改変がなされうる。
【0314】
完全を期するため、本発明の多様な態様は、以下の番号付けされた条項に明示される。
【0315】
条項1.対象から得られた全血試料中のユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)の量を測定する方法の改善であって、試料の保存から生じるUCH-L1レベルの上昇を回避するように、試料が対象から得られた後、約8時間以内に、試料を処理するステップを含む改善。
【0316】
条項2.試料が対象から得られた後、(a)約0時間~約6時間;(b)約0時間~約4時間;(c)約0時間~約2時間;及び(d)約0時間~約1時間からなる群から選択される時間以内に、試料が処理される、条項1に記載の改善。
【0317】
条項3.試料が対象から得られた後、(a)約1時間~約8時間;(b)約1時間~約6時間;(c)約1時間~約4時間;及び(d)約1時間~約2時間からなる群から選択される時間以内に、試料が処理される、条項1に記載の改善。
【0318】
条項4.試料を処理するステップが、試料中の血液細胞から、血漿を分離することと;その後、UCH-L1の量を測定する、血漿を使用する検査を実施することとを含む、条項1~3のいずれか一項に記載の改善。
【0319】
条項5.試料が、ヘパリン及びEDTAからなる群から選択される抗凝固剤を含む容器を使用して、対象から得られる、条項1~4のいずれか一項に記載の改善。
【0320】
条項6.試料を処理するステップが、試料中の任意の凝血塊から、血清を分離することと;その後、UCH-L1の量を測定する、血清を使用する検査を実施することとを含む、条項1~4のいずれか一項に記載の改善。
【0321】
条項7.試料が、血清回収チューブを使用して回収される、条項6に記載の改善。
【0322】
条項8.試料を処理するステップが、UCH-L1の、試料中量を測定する検査を実施することを含む、条項1~3のいずれか一項に記載の改善。
【0323】
条項9.検査が、UCH-L1の量が評価されうる、任意の方法を含む、条項4~8のいずれか一項に記載の改善。
【0324】
条項10.検査が、イムノアッセイ、化学分析、SDS PAGE及びウェスタンブロット解析、電気泳動解析、タンパク質アッセイ、競合的結合アッセイ、機能的タンパク質アッセイ、クロマトグラフィー、並びに分光法からなる群から選択される、条項9に記載の改善。
【0325】
条項11.検査が、臨床化学フォーマットにおいて利用される、条項4~10のいずれか一項に記載の改善。
【0326】
条項12.検査が、試料を、同時に、又は任意の順序において逐次的に、(1)UCH-L1上又はUCH-L1断片上のエピトープに結合して、捕捉抗体-UCH-L1抗原複合体を形成する、少なくとも1つの捕捉抗体、及び(2)検出可能な標識を含み、捕捉抗体が結合していないUCH-L1上のエピトープに結合して、UCH-L1抗原-検出抗体複合体を形成する、少なくとも1つの検出抗体と接触させることにより、捕捉抗体-UCH-L1抗原-検出抗体複合体が形成されること、並びにUCH-L1の、試料中量又は試料中濃度を、捕捉抗体-UCH-L1抗原-検出抗体複合体内の検出可能な標識により発生したシグナルに基づき測定することを含むイムノアッセイである、条項10又は11に記載の改善。
【0327】
条項13.試料が対象から得られた時点~検査が実施される時点の、ある時間にわたり、試料が、室温において維持される、条項4~12のいずれか一項に記載の改善。
【0328】
条項14.試料が対象から得られた時点~検査が実施される時点の、ある時間にわたり、試料が、約2℃~約8℃の温度において維持される、条項4~12のいずれか一項に記載の改善。
【0329】
条項15.試料が対象から得られた後~検査が実施される時点の時間において、試料が混合されない、条項8~12のいずれか一項に記載の改善。
【0330】
条項16.対象に由来する、試料中のUCH-L1の量が、外傷性脳損傷の尺度として評価され、対象が、頭部への損傷を負った可能性がある、条項1~15のいずれか一項に記載の改善。
【0331】
条項17.全血試料が、対象から得られた時点から、試料に対して、アッセイを実施する前までの間の、ユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)レベルの増大(increase)すなわち上昇(rise)を回避又は防止する方法であって、アッセイを実施する前に、試料の保存から生じるUCH-L1レベルの増大(increase)すなわち上昇(rise)を回避するように、試料が対象から得られた後、約8時間以内に、試料を処理するステップを含む方法。
【0332】
条項18.試料が対象から得られた時点から、アッセイを実施する前までの間の、試料中のUCH-L1の、誤った高レベルを回避又は防止する、条項17に記載の方法。
【0333】
条項19.試料が対象から得られた後、(a)約0時間~約6時間;(b)約0時間~約4時間;(c)約0時間~約2時間;及び(d)約0時間~約1時間からなる群から選択される時間以内に、試料が処理される、条項17に記載の方法。
【0334】
条項20.試料が対象から得られた後、(a)約1時間~約8時間;(b)約1時間~約6時間;(c)約1時間~約4時間;及び(d)約1時間~約2時間からなる群から選択される時間以内に、試料が処理される、条項17に記載の方法。
【0335】
条項21.その後、UCH-L1の、試料中量を測定するアッセイを実施するステップをさらに含む、条項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【0336】
条項22.試料を処理するステップが、試料中の血液細胞から、血漿を分離することと;その後、UCH-L1の、試料中量を測定する、血漿を使用するアッセイを実施することとを含む、条項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【0337】
条項23.試料が、ヘパリン及びEDTAからなる群から選択される抗凝固剤を含む容器を使用して、対象から得られる、条項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【0338】
条項24.試料を処理するステップが、試料中の任意の凝血塊から、血清を分離することと;その後、UCH-L1の、試料中量を測定する、血清を使用するアッセイを実施することとを含む、条項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【0339】
条項25.試料が、血清回収チューブを使用して回収される、条項24に記載の方法。
【0340】
条項26.アッセイが、UCH-L1の量が評価されうる、任意の方法を含む、条項17~25のいずれか一項に記載の方法。
【0341】
条項27.アッセイが、イムノアッセイ、化学分析、SDS PAGE及びウェスタンブロット解析、電気泳動解析、タンパク質アッセイ、競合的結合アッセイ、機能的タンパク質アッセイ、クロマトグラフィー、並びに分光法からなる群から選択される、条項26に記載の方法。
【0342】
条項28.アッセイが、臨床化学フォーマットにおいて利用される、条項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【0343】
条項29.アッセイが、
a)試料を、同時に、又は任意の順序において逐次的に、
(1)UCH-L1上又はUCH-L1断片上のエピトープに結合して、捕捉抗体-UCH-L1抗原複合体を形成する、少なくとも1つの捕捉抗体、及び
(2)検出可能な標識を含み、捕捉抗体が結合していないUCH-L1上のエピトープに結合して、UCH-L1抗原-検出抗体複合体を形成する、少なくとも1つの検出抗体
と接触させることにより、捕捉抗体-UCH-L1抗原-検出抗体複合体が形成されること、並びに
b)UCH-L1の、試料中量又は試料中濃度を、捕捉抗体-UCH-L1抗原-検出抗体複合体内の検出可能な標識により発生したシグナルに基づき測定すること
を含むイムノアッセイである、条項27に記載の方法。
【0344】
条項30.試料が対象から得られた時点と、アッセイが実施される時点との間の、ある時間にわたり、試料が、室温において維持される、条項21~29のいずれか一項に記載の方法。
【0345】
条項31.試料が対象から得られた時点と、アッセイが実施される時点との間の、ある時間にわたり、試料が、約2℃~約8℃の温度において維持される、条項21~29のいずれか一項に記載の方法。
【0346】
条項32.試料が対象から得られた時点と、検査が実施される時点との間の時間において、試料が混合されない、条項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【0347】
条項33.対象に由来する、試料中のUCH-L1の量が、外傷性脳損傷の尺度として評価され、対象が、頭部への損傷を負った可能性がある、条項17~32のいずれか一項に記載の方法。
【0348】
条項34.対象から得られた全血試料中のユビキチンカルボキシ末端ヒドロラーゼL1(UCH-L1)の量を測定する方法の改善であって、解析前の処理条件を制御することにより、UCH-L1測定値の誤差を低減することを含む改善。
【0349】
条項35.解析前の処理条件を制御することが、試料が対象から得られた後、約8時間以内に、試料を処理することを含む、条項34に記載の改善。
【0350】
条項36.試料が対象から得られた後、(a)約0時間~約6時間;(b)約0時間~約4時間;(c)約0時間~約2時間;及び(d)約0時間~約1時間からなる群から選択される時間以内に、試料が処理される、条項35に記載の改善。
【0351】
条項37.試料が対象から得られた後、(a)約1時間~約8時間;(b)約1時間~約6時間;(c)約1時間~約4時間;及び(d)約1時間~約2時間からなる群から選択される時間以内に、試料が処理される、条項35に記載の改善。
【0352】
条項38.試料を処理するステップが、試料中の血液細胞から、血漿を分離することと;その後、UCH-L1の量を測定する、血漿を使用する検査を実施することとを含む、条項35~37のいずれか一項に記載の改善。
【0353】
条項39.試料が、ヘパリン及びEDTAからなる群から選択される抗凝固剤を含む容器を使用して、対象から得られる、条項34~38のいずれか一項に記載の改善。
【0354】
条項40.試料を処理するステップが、試料中の任意の凝血塊から、血清を分離することと;その後、UCH-L1の量を測定する、血清を使用する検査を実施することとを含む、条項35~39のいずれか一項に記載の改善。
【0355】
条項41.試料が、血清回収チューブを使用して回収される、条項40に記載の改善。
【0356】
条項42.試料を処理するステップが、UCH-L1の、試料中量を測定する検査を実施することを含む、条項35~40のいずれか一項に記載の改善。
【0357】
条項43.検査が、UCH-L1の量が評価されうる、任意の方法を含む、条項38~41のいずれか一項に記載の改善。
【0358】
条項44.検査が、イムノアッセイ、化学分析、SDS PAGE及びウェスタンブロット解析、電気泳動解析、タンパク質アッセイ、競合的結合アッセイ、機能的タンパク質アッセイ、クロマトグラフィー、並びに分光法からなる群から選択される、条項43に記載の改善。
【0359】
条項45.検査が、臨床化学フォーマットにおいて利用される、条項38~44のいずれか一項に記載の改善。
【0360】
条項46.検査が、試料を、同時に、又は任意の順序において逐次的に、(1)UCH-L1上又はUCH-L1断片上のエピトープに結合して、捕捉抗体-UCH-L1抗原複合体を形成する、少なくとも1つの捕捉抗体、及び(2)検出可能な標識を含み、捕捉抗体が結合していないUCH-L1上のエピトープに結合して、UCH-L1抗原-検出抗体複合体を形成する、少なくとも1つの検出抗体と接触させることにより、捕捉抗体-UCH-L1抗原-検出抗体複合体が形成されること、並びにUCH-L1の、試料中量又は試料中濃度を、捕捉抗体-UCH-L1抗原-検出抗体複合体内の検出可能な標識により発生したシグナルに基づき測定することを含むイムノアッセイである、条項44又は45に記載の改善。
【0361】
条項47.試料が対象から得られた時点~検査が実施される時点の、ある時間にわたり、試料が、室温において維持される、条項38~46のいずれか一項に記載の改善。
【0362】
条項48.試料が対象から得られた時点~検査が実施される時点の、ある時間にわたり、試料が、約2℃~約8℃の温度において維持される、条項38~46のいずれか一項に記載の改善。
【0363】
条項49.試料が対象から得られた後~検査が実施される時点の時間において、試料が混合されない、条項42~46のいずれか一項に記載の改善。
【0364】
条項50.対象に由来する、試料中のUCH-L1の量が、外傷性脳損傷の尺度として評価され、対象が、頭部への損傷を負った可能性がある、条項34~49のいずれか一項に記載の改善。
【配列表】