(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】圧電ウエハ、圧電ウエハの製造方法、及び圧電振動片の製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 3/02 20060101AFI20240315BHJP
H03H 9/19 20060101ALI20240315BHJP
H03H 9/215 20060101ALN20240315BHJP
【FI】
H03H3/02 D
H03H9/19 J
H03H9/215
(21)【出願番号】P 2020038757
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】713005174
【氏名又は名称】エスアイアイ・クリスタルテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004244
【氏名又は名称】弁理士法人仲野・川井国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100096655
【氏名又は名称】川井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100091225
【氏名又は名称】仲野 均
(72)【発明者】
【氏名】市村 直也
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-011552(JP,A)
【文献】特開2018-056807(JP,A)
【文献】特開2019-165357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム部と、
前記フレーム部に並んで複数接続された
、振動腕部を有する圧電振動片と、
前
記圧電振動片
の各々に形成された、前記振動腕部を振動させる第1励振電極と第2励振電極と、
前
記圧電振動片
の各々に対応して前記フレーム部に形成された、前記第1励振電極と電気的に接続された第1電極パッドと、前記第2励振電極と電気的に接続された第2電極パッドと、
隣接する、前記圧電振動片を前記フレーム部に接続する接続部、の間に形成された残渣形成部と、
前記残渣形成部によって残渣として形成された傾斜面と、を備え、
隣接する2つの圧電振動片における一方の圧電振動片に対応して形成された前記第1電極パッドと、他方の圧電振動片に対応して形成された前記第2電極パッドとは、前記フレーム部の主面と、前記残渣として形成された傾斜面で分割されている、
ことを特徴とする圧電ウエハ。
【請求項2】
前記残渣形成部は、前記フレーム部に対して前記圧電振動片が形成されている方向に凸形状に形成され、
前記傾斜面は、前記フレーム部と前記凸形状の残渣形成部の両側面間に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電ウエハ。
【請求項3】
前記残渣形成部は、前記フレーム部に対して前記圧電振動片が形成されている方向と反対方向に凹んだ凹形状に形成され、
前記傾斜面は、前記凹形状の両側面と底面に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電ウエハ。
【請求項4】
請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の圧電ウエハの製造方法であって、
ウエハを準備するウエハ準備工程と、
前記準備したウエハから、前記圧電ウエハの外形形状を形成する外形形成工程と、
前記外形形成
工程で形成したウエハの表面に金属材料を成膜した後、前記金属材料に対するフォトリソグラフにより、前記第1励振電極と前記第1電極パッドの第1系統、及び、前記第2励振電極と前記第2電極パッドの第2系統の、2系統の電極を形成する電極形成工程と、
前記第1電極パッドと第2電極パッドから駆動電圧を印加して前
記圧電振動片
の各々の周波数調整を行う周波数調整工程と、を行い、
前記電極形成工程では、前記金属材料に対するフォトリソグラフにおいて、前記2系統の電極に対応した電極パターン形状の電極マスクをし、主面側からの露光を行うことで、前記第1系統と前記第2系統の電極の分割を行う、
ことを特徴とする圧電ウエハの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載した圧電ウエハの製造方法と、
前記
圧電ウエハの製造方法で製造した圧電ウエハから、前記フレーム部に並んで複数接続された
前記圧電振動片
の各々を切断する個片化工程と、
を備えたことを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電ウエハ、圧電ウエハの製造方法、及び圧電振動片の製造方法に係り、詳細には、複数の圧電振動片が形成された圧電ウエハに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話や携帯情報端末機器等の電子機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等に用いられるデバイスとして、水晶等を利用した圧電振動片を内部に実装した圧電振動子が広く用いられている。
圧電振動片は、大面積の圧電ウエハに圧電振動片を複数形成した圧電ウエハから、小片の圧電振動片毎に折り取ることで使用している。圧電ウエハは、大面積のウエハを用い、圧電振動片の厚さまでラップ、ポリッシュ等により薄肉化した後、フォトリソグラフィ技術による転写、エッチング等により、ウエハ上のフレーム部に連結部で接続された圧電振動片のチップパターンを複数形成している。
【0003】
しかし、近年の圧電振動子の小型化に伴い、圧電振動片も小型、薄型化しているため、ウエハ上での周波数測定のために直接圧電振動片にコンタクトプロービングすることが困難であるため、圧電振動片に形成される1対の励振電極から電極パターンを引き回し、ウエハのフレーム部に電極パッドを配置している。
各圧電振動片は、対応する電極パッドにプローブ等を押し当てる等して周波数が測定される。その後、圧電振動片は、連結部において切断されて、個片化される。
【0004】
ところで、各圧電振動片に形成する1対の励振電極からフレーム部に形成する1対の電極パッドまで電極を引き回す際に、電極パッドと引回し電極についても分割する必要がある。
1の圧電振動片に対する1対の電極パッド同士の分割はフレーム部の主面で行うことが可能であるが、隣接する圧電振動片間の電極パッドについては、主面に加え側面に対しても分割する必要がある。
このため、主面の電極パッドを分割する露光に加え、側面のパッド電極を分割するためにフレームの側面に対して斜め方向から露光する必要があり、この斜め露光を実施することにより工程が増えてしまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、より少ない工程で圧電ウエハ、圧電振動片を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1に記載の発明では、フレーム部と、前記フレーム部に並んで複数接続された、振動腕部を有する圧電振動片と、前記圧電振動片の各々に形成された、前記振動腕部を振動させる第1励振電極と第2励振電極と、前記圧電振動片の各々に対応して前記フレーム部に形成された、前記第1励振電極と電気的に接続された第1電極パッドと、前記第2励振電極と電気的に接続された第2電極パッドと、隣接する、前記圧電振動片を前記フレーム部に接続する接続部、の間に形成された残渣形成部と、前記残渣形成部によって残渣として形成された傾斜面と、を備え、隣接する2つの圧電振動片における一方の圧電振動片に対応して形成された前記第1電極パッドと、他方の圧電振動片に対応して形成された前記第2電極パッドとは、前記フレーム部の主面と、前記残渣として形成された傾斜面で分割されている、ことを特徴とする圧電ウエハを提供する。
(2請求項2に記載の発明では、前記残渣形成部は、前記フレーム部に対して前記圧電振動片が形成されている方向に凸形状に形成され、前記傾斜面は、前記フレーム部と前記凸形状の残渣形成部の両側面間に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の圧電ウエハを提供する。
(3)請求項3に記載の発明では、前記残渣形成部は、前記フレーム部に対して前記圧電振動片が形成されている方向と反対方向に凹んだ凹形状に形成され、前記傾斜面は、前記凹形状の両側面と底面に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の圧電ウエハを提供する。
(4)請求項4に記載の発明では、請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の圧電ウエハの製造方法であって、ウエハを準備するウエハ準備工程と、前記準備したウエハから、前記圧電ウエハの外形形状を形成する外形形成工程と、前記外形形成工程で形成したウエハの表面に金属材料を成膜した後、前記金属材料に対するフォトリソグラフにより、前記第1励振電極と前記第1電極パッドの第1系統、及び、前記第2励振電極と前記第2電極パッドの第2系統の、2系統の電極を形成する電極形成工程と、前記第1電極パッドと第2電極パッドから駆動電圧を印加して前記圧電振動片の各々の周波数調整を行う周波数調整工程と、を行い、前記電極形成工程では、前記金属材料に対するフォトリソグラフにおいて、前記2系統の電極に対応した電極パターン形状の電極マスクをし、主面側からの露光を行うことで、前記第1系統と前記第2系統の電極の分割を行う、ことを特徴とする圧電ウエハの製造方法を提供する。
(5)請求項5に記載の発明では、請求項4に記載した圧電ウエハの製造方法と、前記圧電ウエハの製造方法で製造した圧電ウエハから、前記フレーム部に並んで複数接続された前記圧電振動片の各々を切断する個片化工程と、を備えたことを特徴とする圧電振動片の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、隣接する2つの圧電振動片における一方の圧電振動片に対応して形成された第1電極パッドと、他方の圧電振動片に対応して形成された第2電極パッドとは、フレーム部の主面と、残渣として形成された傾斜面で分割されるので、より少ない工程で圧電ウエハ、圧電振動片を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態における、圧電ウエハの構成を表した説明図である。
【
図2】第1実施形態における、圧電振動片の周辺を表した拡大図である。
【
図3】第1実施形態における、残渣形成部と残渣による傾斜面を表した拡大図である。
【
図4】第1実施形態における、圧電ウエハの製造工程を表したフローチャートである。
【
図5】第2実施形態における、圧電ウエハの圧電振動片の周辺を表した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の圧電ウエハ、圧電ウエハの製造方法、及び圧電振動片の製造方法における好適な実施形態について、
図1から
図6を参照して詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
本実施形態の圧電ウエハ1は、複数のフレーム部2を備え、各フレーム部2には、複数の圧電振動片3が連結部21で連結されている。圧電振動片3とフレーム部2には、互いに2系統に分割された電極として、圧電振動片3の第1励振電極91と第1電極パッド23、及び、第2励振電極92と第2電極パッド24が形成されている。
本実施形態では、フレーム部2に凸形状の残渣形成部4を設け、残渣形成部4の側面とフレーム部2の側面との間にエッチング残渣である傾斜面41、42を形成することで、フレーム部2における、隣接する圧電振動片3の電極パッド(第1電極パッド23、第2電極パッド24)間の分割を、主面露光だけで行うことができ、斜め露光工程を削減することができる。
凸形状の残渣形成部4の他に、凹形状の残渣形成部5としてもよい。この場合、凹形状の内部に傾斜面51~53が形成され、この傾斜面51~53への主面露光により電極パッド間が分割される。
【0011】
(2)実施形態の詳細
図1は、第1実施形態における圧電ウエハ1の構成の一部を表したものである。
図2は、圧電振動片3の周辺を表した拡大図である。
なお、本実施形態の各図では、隠れ線を点線で表し、破断部分を一点鎖線で表している。
図1に示すように、第1実施形態の圧電ウエハ1は、X方向に延びる複数のフレーム部2と、X方向の両端に形成されたY方向に延びる2つのフレーム部2を備えている。X方向に延びる複数のフレーム部2はそれぞれ等間隔にY方向に並設され、その両端側がY方向に伸びるフレーム部2に接続されている。
図1において圧電ウエハ1の形状を方形に表しているが、圧電ウエハ1の外縁側は加工前のウエハの形状に沿った形状である。
なお、圧電ウエハ1は、水晶やタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成され、本実施形態では水晶が使用されている。
以下、単にフレーム部2という場合にはX方向に延びるフレームを指すものとして説明する。
【0012】
図2に示すように、各フレーム部2には、Y方向を長手方向とする複数の圧電振動片3が、接続部として機能する連結部21で連結されている。
各フレーム部2には、各圧電振動片3用の第1電極パッド23と第2電極パッド24が並んで形成される。すなわち、各フレーム部2には、X方向に並んで第1電極パッド23と第2電極パッド24が交互に形成されている。
そして各フレーム部2には、隣接する2つの圧電振動片3の間に、フレーム部2の側面において電極を分割するための残渣形成部4が形成されている。この残渣形成部4は、一方の圧電振動片3の第2電極パッド24と、他方の圧電振動片3の第1電極パッド23との間に形成されている。
【0013】
圧電振動片3は、1対の振動腕部7a、7bと、基部8と、1対の支持腕部9a、9bを備えている。
基部8のフレーム部2と面した側には連結部21が連結され、連結部21と反対側の面には、1対の振動腕部7a、7bが並んだ状態で長手方向(Y方向)に延設されている。
基部8には、個片化した圧電振動片3を圧電振動子のパッケージ内にマウントするための支持腕部9a、9bが配設されている。1対の支持腕部9a、9bは、基部8の連結部21側の側面から圧電振動片3の幅方向(X方向)に延びた後に、フレーム部2から離れる方向に屈曲し、振動腕部7a、7bの両外側に並ぶように延設されている。
【0014】
1対の振動腕部7a、7bは、互いに平行となるように配置されており、基部8側の端部を固定端として、先端が自由端として振動する。
1対の振動腕部7a、7bは、その全長のほぼ中央部分の幅を基準幅とした場合、この基準幅よりも両側に広くなるように形成された拡幅部71a、71bを備えている。この拡幅部71a、71bは、振動腕部7a、7bの重量及び振動時の慣性モーメントを増大する機能を有している。これにより、振動腕部7a、7bは振動し易くなり、振動腕部7a、7bの長さを短くすることができ、小型化が図られている。
なお、各実施形態と変形例にかかる圧電振動片3は、振動腕部7a、7bに拡幅部71a、71bが形成されているが、拡幅部のない圧電振動片を使用してもよい。
【0015】
また、本実施形態の圧電ウエハ1では、図示しないが、振動腕部7a、7bの先端部(拡幅部71a、71b)に、振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜(粗調膜及び微調膜からなる)が形成されている。この重り金属膜を、例えばレーザ光を照射して適量だけ取り除くことで、周波数調整を行い、1対の振動腕部7a、7bの周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができるようになっている。この重り金属膜についても、拡幅部と同様に形成しないことも可能である。
【0016】
図2(b)は、
図2(a)に示すV1-V1線に沿った断面を矢印の方向に見た断面図である。
図2(a)、(b)に示すように、1対の振動腕部7a、7bには、長手方向に渡る一定幅の溝部72a、72bが形成されている。溝部72a、72bは、1対の振動腕部7a、7bの両主面(表裏面)上において、Z方向に凹むように形成されている。溝部72a、72bは、振動腕部7a、7bの基端(基部8の、連結部21と反対側の面)から、拡幅部71a、71bの手前までに形成されている。
溝部72a、72bが両主面に形成されることにより、1対の振動腕部7a、7bは、それぞれ断面がH型となっている。
なお、各実施形態と変形例にかかる圧電ウエハ1の圧電振動片3には、溝部72a、72bが形成されているが、溝部のない圧電振動片を使用するようにしてもよい。
【0017】
図2(a)、(b)に示すように、基部8の主面及び、1対の振動腕部7a、7bの外表面上(外周面)には、2系統の励振電極(第1励振電極91、第2励振電極92)が形成されている。この第1励振電極91と第2励振電極92は、電圧が印加されたときに1対の振動腕部7a、7bを互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、電気的に切り離された状態で振動腕部7a、7b上にパターニングされて形成されている。
具体的には、第1励振電極91が、主に一方の振動腕部7aの両側面上と、他方の振動腕部7bの両溝部72b内とに互いに電気的に接続された状態で形成されている。
また、第2励振電極92が、主に一方の振動腕部7aの両溝部72a内と、他方の振動腕部7bの両側面上とに互いに電気的に接続された状態で形成されている。
【0018】
圧電振動片3の支持腕部9a、9bにおける一方の主面側には、図示しないが、圧電振動片3をパッケージに実装する際のマウント部として、マウント電極が形成されている。
支持腕部9aのマウント電極は、基部8の第1励振電極91と接続され、更に第1電極パッド23に接続されている。
支持腕部9bのマウント電極は、基部8の第2励振電極92と接続され、更に第2電極パッド24に接続されている。
2系統の第1励振電極91と第2励振電極92は、圧電振動片3が個片化される前の製造段階では第1電極パッド23、第2電極パッド24を介して電圧が印加され、一方、個片化された後は1対のマウント電極を介して電圧が印加されるようになっている。
【0019】
なお、本実施形態における各種電極(第1励振電極91、第2励振電極92、マウント電極、引回し電極、及び、第1電極パッド23、第2電極パッド24)は、例えば、クロム(Cr)と金(Au)との積層膜であり、水晶と密着性の良いクロム膜を下地として成膜した後に、表面に金の薄膜を施したものである。但し、この場合に限られず、例えば、クロムとニクロム(NiCr)の積層膜の表面にさらに金の薄膜を積層して形成してもよく、クロム、ニッケル、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の単層膜で形成してもよい。
【0020】
これら各種電極の形成の詳細については後述するが、従来と同様にして行われる。すなわち、各電極を形成する前の圧電振動片3の、溝部72a、72b内を含めた全体に対して、蒸着やスパッタリングにより電極材料を成膜する。
そして、各種電極部分を残し、電極以外の部分をフォトリソグラフ工程で取り除くことで、2系統の電極ラインが形成される。
【0021】
図3は、残渣形成部4の詳細を表した拡大図で、(a)は平面を、(b)は側面を、(c)は斜視の状態をそれぞれ表したものである。
この残渣形成部4は、
図2で説明したように、フレーム部2における、隣接する2つの圧電振動片3の間に、凸形状に形成されている。
そして、
図3に示すように、残渣形成部4の両側には、エッチング残渣による傾斜面41、42が形成されている。傾斜面41、42は、両主面から厚さ方向の中央に向けた2つの傾斜面41、41、傾斜面42、42により構成されている。
【0022】
ところで、圧電振動片3は、後述するように、ウェットエッチング法によりその外形が形成される。このウェットエッチングの際に、主面(XY面)と直交するXZ面と、主面と直交するYZ面との間にかけて傾斜したエッチング残渣が形成される。
本実施形態の場合には、フレーム部2からY方向に突出する残渣形成部4を形成することで、残渣形成部4の両外側側面(YZ面)と、フレーム部2の側面(XZ面)とにかけて傾斜した、傾斜面41、41によるエッチング残渣と、傾斜面42、42によるエッチング残渣が形成される。
【0023】
フレーム部2の全体に対して成膜された電極材料については、1の圧電振動片3に対する第1電極パッド23と第2電極パッド24の間、及び、隣接する圧電振動片3間の第2電極パッド24と第1電極パッド23との間を分割することになる。
この電極間の分割は、
図1に示す圧電ウエハ1の外形形成をした後、その全体に電極材料を成膜した後、フォトリソグラフ工程における露光により、電極の分割位置(領域)の電気材料が除去される。この露光の際に、残渣形成部4の傾斜面41、42は、主面側から見た場合に露光によって投影されるので、傾斜面41、42の電極材料が除去対象となる。従って、フレーム部2におけるフレーム側面26は、残渣形成部4の両側に形成された傾斜面41、42を両主面側からの露光によって分割されることになる。
すなわち、
図3に示すように、フレーム部2に形成される第1電極パッド23と第2電極パッド24とは、両電極間が主面で分割されると共に、そのフレーム側面26では、残渣形成部4の傾斜面41、42で分割される。
【0024】
なお
図3に示すように、第1電極パッド23、第2電極パッド24と繋がるフレーム側面26の箇所には第1電極パッド23、第2電極パッド24と同一方向の斜線で表示し、残渣形成部4の凸部端面45と両凸部側面46は網掛けにより表示するように、フレーム側面26、凸部端面45、両凸部側面46には、電極材が残された状態が表示されている。
しかし露光後には、フレーム部2と残渣形成部4の主面を露光する際に、主面だけでなく、主面と直交する面(フレーム側面26、凸部端面45、凸部側面46)における、両主面側の一定領域についてもオーバー露光によって除去される。
このため、傾斜面41、42の開始点(
図3(b)において、傾斜面41、42を形成する三角形状における、主面側の頂点)が、主面よりも下側(他の主面側)に位置している場合でも、オーバー露光により確実に分割することができる。
このように、フレーム部2の第1電極パッド23と第2電極パッド24を分割するために、斜め方向からの露光が不要になり、工数を減らすことができる。
なお、網掛けで表示した残渣形成部4の凸部端面45と両凸部側面26の部分には、後述する電極形成工程で形成された金属材料の残りであり、2系統の電極とは分離されている。
【0025】
次に、以上の通り構成された圧電ウエハ1の製造方法について説明する。
図4は、第1実施形態における圧電ウエハの製造工程を表したフローチャートである。
最初に、ウエハ準備工程において、圧電ウエハ1を形成するウエハを準備する(ステップ12)。
このウエハ準備工程では、水晶を所定角度でスライスした一定厚さのウエハを準備する。
【0026】
次に準備したウエハに対して、圧電ウエハ1の外形を形成する、外形形成工程を行う(ステップ14)。
この外形形成工程では、準備したウエハの一部を除去することで圧電ウエハ1の外形を形成する。
具体的には、フォトリソグラフィ技術によってウエハの両面に、圧電ウエハ1の外形形状(傾斜面41、42を除く)に対応する形状のマスク(外形マスク)を形成する。
その後、当該ウエハをウェットエッチング加工し、外形マスクでマスクされていない領域を選択的に除去することで、
図1に示すように、フレーム部2に複数の圧電振動片3が連結部21で接続されると共に各残渣形成部4が配置された圧電ウエハ1の平面的な外形形状が形成される。この際、外形マスクでマスクされていない範囲であるが、フレーム部2から突出形成された残渣形成部4の両側には残渣としての傾斜面41、42も形成される。
次に、各圧電振動片3の各振動腕部7a、7bに対してエッチング加工を施し、各振動腕部7a、7bの両主面に溝部72を形成する。
【0027】
次に、外形形成したウエハの表面に、2系統の電極を形成する電極形成工程を行う(ステップ16)
(a)この電極形成工程では、最初に外形形成したウエハの表面全体(主面及び側面)に、電極となる金属材料を蒸着や金属スパッタリングにより成膜する。金属材料については、クロム等の金属を下地層とし、金等の金属を上地層とした積層膜を各層毎にスパッタリング等により形成する。
(b)そして、フォトリソグラフ工程(レジスト膜塗布、電極マスクによる露光・現像、メタルエッチング、レジスト膜剥離の各工程)により、2系統の電極(第1電極パッド23と第1励振電極91、第2電極パッド24と第2励振電極92、及び、引き回し電極等)の分割と回路パターンを形成する。
すなわち、形成した金属膜の表面全体にレジスト膜を塗布した後、面全体との領域に対し、電極パターン形状に対応した電極マスクを使用して主面側から照射し、その後現像を行う。これにより、主面等における、電極マスクに対応した領域では2系統の電極部分のレジスト膜が残り、電極マスクがない領域と傾斜面41、42のレジスト膜が除去される。以上の露光・現像は両主面に対して行う。
次にエッチング液に浸けて露光箇所の金属層を除去した後、分割された2系統の電極の表面に塗布されているレジスト膜を除去する。
【0028】
以上の各工程によって、
図2に示すように、振動腕部7a、7bの側面の第1励振電極91と第2励振電極92が分割される。
また、
図3に示すように、第1電極パッド23と第2電極パッド24が、フレーム部2の主面で分割される。
更に、隣接する圧電振動片3間の第2電極パッド24と第1電極パッド23とは、主面上で分割されると共に、傾斜面41、42で分割される。
このフレーム側面26における第2電極パッド24と第1電極パッド23とは、傾斜面41、42に対する通常露光に加えて、更に、フレーム側面26における主面との境界部分に対するオーバー露光により、確実に分割される。すなわち、外形形成工程において、形成される傾斜面41、42の開始点が主面よりも下側(他の主面側)になっていたとしても、通常露光による分割領域とオーバー露光による分割領域が繋がるため、フレーム側面26における第2電極パッド24と第1電極パッド23とを確実に分割することができる。
このように本実施形態によれば、残渣形成部4により形成される傾斜面41、42によって、斜め露光の工程をなくすことができる。
【0029】
次に、各圧電振動片3の振動腕部7a、7bに対する重り金属膜形成工程を行う(ステップ18)。
この重り金属膜形成工程では、各振動腕部7a、7bの拡幅部71a、71bの表面に周波数調整用の重り金属膜を形成する。
この重り金属膜は、例えば蒸着等により形成することができる。
なお、重り金属膜は、電極形成工程(ステップ16)において各電極と同時に形成するようにしてもよい。
【0030】
次に、各圧電振動片3に対する周波数調整工程を行う(ステップ20)。
周波数調整工程では、各圧電振動片3に接続した第1電極パッド23と第2電極パッド24間に所定の駆動電圧を印加して、圧電振動片3の各振動腕部7a、7bを振動させることにより圧電振動片3の周波数を調整する。
具体的には、フレーム部2上に形成した各第1電極パッド23と第2電極パッド24に駆動電圧を印加するための測定器のプローブ等を押し当てる。この状態で、各第1励振電極91、第2励振電極92に駆動電圧を印加して各振動腕部7a、7bを振動させる。そして、各圧電振動片3の振動周波数と目標周波数との差に応じて、拡幅部71a、71b上に形成した重り金属膜を部分的に除去する。これにより、各振動腕部7a、7bの質量が変化することで、各振動腕部7a、7bの振動周波数(圧電振動片3の周波数)が変化する。よって、圧電振動片3の周波数の目標周波数に近付けることができる。
【0031】
以上の各工程により、
図1に示す本実施形態の圧電ウエハ1が形成される。
この形成された圧電ウエハ1に対して、次の個片化工程(ステップ22)が行われる。
この個片化工程では、フレーム部2に連結部21で接続された各圧電振動片3切断し個片化する。
具体的には、各圧電振動片3をフレーム部2に対して折り曲げるようにして、各連結部21で切断する。このとき、連結部21の幅はフレーム部2側よりも圧電振動片3の基部8側の方が狭く形成されているので、連結部21は基部8側で切断される。
以上により、1枚のウエハから、複数の圧電振動片3を一度に製造することができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の圧電ウエハ1によれば、フレーム部2に並列配置された複数の圧電振動片3の間にフレーム部2から突出する残渣形成部4を形成している。そして、圧電ウエハ1の外形形成の際に、フレーム部2と残渣形成部4の両側面に傾斜面41、42も形成されるので、フレーム側面26の電極を、傾斜面41、42を利用して簡易に分割することができる。
すなわち、隣接する2つの圧電振動片3のうち、一方の圧電振動片3の第1励振電極91と繋がる第1電極パッド23と、他方の圧電振動片3の第2励振電極92と繋がる第2電極パッド24とを、斜め露光の工程を設けることなく、主面と残渣形成部4の傾斜面41、42に対する、主面側からだけの露光(通常露光とオーバー露光)によって確実に分割することができる。
【0033】
次に、第2実施形態について説明する。
図5は、第2実施形態における圧電ウエハ1の圧電振動片3の周辺を表した拡大図である。
図5(a)は第1実施形態における
図2(a)に対応する。また、
図5(b)、(c)は残渣形成部5周辺を更に拡大した平面図と側面図で、
図3(a)、(b)に対応する。
説明した第1実施形態では、フレーム側面26の電極を分割するため、傾斜面41、42が形成される残渣形成部4をフレーム部2から圧電振動片3方向に突出する形状に形成した。
これに対して第2実施形態の圧電ウエハ1では、
図5(a)に示すように、フレーム部2に凹んだ形状の残渣形成部5を形成するものである。
【0034】
残渣形成部5の凹み内には、
図5(b)、(c)に示すように、その凹部側面56に形成される傾斜面51、52と、底面に形成される傾斜面53の3面が残渣として形成される。
傾斜面51~53は、
図5(b)に示すように、フレーム部2の両主面から厚さ方向の中央に向けた両側に形成されている。
第2実施形態の圧電ウエハ1においても第1実施形態と同様に、フレーム部2におけるフレーム側面26の電極を、傾斜面51~53で容易に分割することができる。
すなわち、隣接する2つの圧電振動片3のうち、一方の圧電振動片3の第1励振電極91と繋がる第1電極パッド23と、他方の圧電振動片3の第2励振電極92と繋がる第2電極パッド24とを、斜め露光の工程を設けることなく、主面と残渣形成部5の傾斜面51~53に対する露光(通常露光とオーバー露光)によって確実に分割することができる。
【0035】
図6は、圧電ウエハ1の変形例を表した説明図である。
説明した第1、第2実施形態では、全ての圧電振動片3に対応する第1電極パッド23と第2電極パッド24を分割する場合について説明した。
これに対して圧電ウエハ1の変形例では、
図6に示すように、複数の第1電極パッド23同士を電気的に接続した状態とするものである。ここで、接続する第1電極パッド23の数は、2つ以上であればよい。周波数調整の工程上、圧電振動片3が連結されているX方向の各フレーム部2単位で第1電極パッド23を接続し、又は、全ての第1電極パッド23を接続することが好ましい。
このように、複数の第1電極パッド23を電気的に接続することで、周波数調整の際に測定器のプローブの一方を、いずれか1の第1電極パッド23に固定した状態のまま、他方のプローブを第2電極パッド24毎に移動しながら周波数の測定と調整を行うことができる。
【0036】
なお、
図6では複数の第1電極パッド23を電気的に接続する場合について説明したが、複数の第2電極パッド24を電気的に接続するようにしてもよい。
また本変形例については、第1実施形態だけでなく、第2実施形態にも同様に適用することができる。
【0037】
また、説明した実施形態及び変形例では、基部8から振動腕部7a、7bの両外側に実装用の支持腕部9a、9bが形成されたいわゆるサイドアーム型の圧電振動片3を配設した圧電ウエハ1について説明したが、各種他の形式の圧電振動片を配置することも可能である。
例えば、支持腕部が存在せず、実装用の2系統のマウント電極が基部8に形成された、いわゆる片持ち型の圧電振動片を配設した圧電ウエハ1とすることも可能である。
また、基部8から両振動腕部7a、7bの間に支持部が1本形成され、この支持部に実装用の2系統のマウント電極が形成された、いわゆるセンターアーム型の圧電振動片を配設した圧電ウエハ1とすることも可能である。
更に、音叉型の圧電振動片以外に、例えば、逆メサ型ATカットの水晶振動片等の各種他の係止の圧電振動片を肉厚板部に連結脚で接続する圧電ウエハに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 圧電ウエハ
2 フレーム部
21 連結部(接続部)
23 第1電極パッド
24 第2電極パッド
26 フレーム側面
3 圧電振動片
4、5 残渣形成部
41、42、51、52、53 傾斜面
45 凸部端面
46 凸部側面
56 凹部側面
7a、7b 振動腕部
71a、71b 拡幅部
72a、72b 溝部
8 基部
9a、9b 支持腕部
91 第1励振電極
92 第2励振電極