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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】圧電振動片、及び圧電振動子
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20240315BHJP
   H03H 9/215 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
H03H9/19 K
H03H9/215
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020040272
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021141554
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】713005174
【氏名又は名称】エスアイアイ・クリスタルテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004244
【氏名又は名称】弁理士法人仲野・川井国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100096655
【弁理士】
【氏名又は名称】川井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100091225
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 均
(72)【発明者】
【氏名】市村 直也
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-204240(JP,A)
【文献】特開2007-158386(JP,A)
【文献】特開2014-107603(JP,A)
【文献】特開2019-165357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部から並んで延設された1対の振動腕部と、
前記1対の振動腕部の両主面に、長手方向に沿って形成された溝部と、
前記溝部の各々により、当該溝部の両側に形成される土手部と、
前記1対の振動腕部における、一方の振動腕部の両側面と前記土手部の主面、及び、他方の振動腕部の溝部の両側面と前記土手部の主面に形成された第1励振電極と、
前記1対の振動腕部における、前記一方の振動腕部の溝部の両側面と前記土手部の主面、及び、前記他方の振動腕部の両側面と前記土手部の主面に形成された第2励振電極と、
を備え、
前記第1励振電極と前記第2励振電極は、前記振動腕部における長手方向の境界線の一部が前記振動腕部の側面又は前記溝部の側面に形成され、残りが前記境界線の一部が形成された側面とつながる土手部の主面に形成されている、
ことを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
前記長手方向の境界線は、前記振動腕部の側面又は前記溝部の側面と前記土手部の主面との間でジグザグ状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片。
【請求項3】
前記長手方向の境界線は、前記振動腕部の側面又は前記溝部の側面における凹部と前記土手部の主面における凸部とが交互に形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧電振動片。
【請求項4】
前記土手部の主面における凸部は、前記振動腕部の側面又は前記溝部の側面と前記土手部の主面との境界線から、前記土手部の主面における凸部の先端までの距離の最大値hが前記土手部の幅の1/5以下に形成されている、
ことを特徴とする請求項2、又は請求項3に記載の圧電振動片。
【請求項5】
前記土手部の主面における凸部は、前記振動腕部の側面又は前記溝部の側面と前記土手部の主面との境界線から、前記土手部の主面における凸部の先端までの距離の最大値hが0.5μm以下に形成されている、
ことを特徴とする請求項2、又は請求項3に記載の圧電振動片。
【請求項6】
実装部を備えたパッケージと、
前記実装部に接合材を介して実装された、請求項1から請求項5のうちのいずれか1の請求項に記載の圧電振動片と、
を具備したことを特徴とする圧電振動子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片、及び圧電振動子に係り、詳細には振動腕部を励振させる励振電極の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話や携帯情報端末機器等の電子機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等に用いられるデバイスとして、水晶等を利用した圧電振動子が用いられる。
この種の圧電振動子として、特許文献1に示すように、パッケージと蓋体で形成されるキャビティ内に圧電振動片を気密封止したものが知られている。
【0003】
図7は、特許文献1の従来に記載された圧電振動片600の構造についての、斜視図(a)とP-P断面からの斜視図(b)を表したものである。
図7(a)、(b)に示すように、圧電振動片600は、圧電材料により形成された所定長さの基部800と、基部800から並んで延びる一対の振動腕部700a、bを備えている。
両振動腕部700a、bには、その主面(表裏面)に振動腕の長手方向に延びる溝720a、bが形成されると共に、その主面と側面に駆動用の電圧が印加される2系統の電極910、920が形成されている。
電極910、920の形成は、溝720a、b内を含めた圧電振動片600の全体に対して電極材料を蒸着やスパッタリングによって成膜する。そして両振動腕部700a、bの主面に形成された成膜のうち、図7に示す白色部分をフォトリソグラフにより取り除くことで、電極910と電極920とを分割している。
このようにして形成した圧電振動片600は、電極910と電極920とに異なる系統の電圧を掛けることで、両振動腕部700a、bが互いに振動する。
【0004】
しかし、電極910と電極920とを振動腕部700a、bの主面において分割しているため、導電性の異物Sが付着するとショートしてしまうという課題がある。
この導電性の異物Sとしては、例えば、圧電振動片を収容したパッケージと蓋体を接着する際の銀ロウのスプラッシュ等がある。
また、両振動腕部700a、bの両サイドや両者間に形成されたアームにより、圧電振動片をパッケージ内に接着し固定する場合には、導電性接着剤が異物Sとなる場合がある。
特に圧電振動片が小型化する傾向にあるが、小型化するほど両電極910、920間の幅も狭くなるため、より小さな異物Sもショートの原因になっていた。
【0005】
一方、特許文献1には対象技術として、図7(c)の断面図に示すように、それぞれの電極910と電極920を主面上には形成せず、振動腕部700a、bの側面と、溝720a、bの内側面に、主面よりも低い位置まで形成する技術も記載されている。
しかし、主面に電極を形成しないことで、導電性の異物Sによるショートは回避できるが、電極面積が減少してしまい、電界効率が低下(CI値が上昇)してしまうという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-118254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、異物による短絡が生じにくく、振動に寄与する電極部分の面積をより大きく確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)請求項1に記載の発明では、基部と、前記基部から並んで延設された1対の振動腕部と、前記1対の振動腕部の両主面に、長手方向に沿って形成された溝部と、前記溝部の各々により、当該溝部の両側に形成される土手部と、前記1対の振動腕部における、一方の振動腕部の両側面と前記土手部の主面、及び、他方の振動腕部の溝部の両側面と前記土手部の主面に形成された第1励振電極と、前記1対の振動腕部における、前記一方の振動腕部の溝部の両側面と前記土手部の主面、及び、前記他方の振動腕部の両側面と前記土手部の主面に形成された第2励振電極と、を備え、前記第1励振電極と前記第2励振電極は、前記振動腕部における長手方向の境界線の一部が前記振動腕部の側面又は前記溝部の側面に形成され、残りが前記境界線の一部が形成された側面とつながる土手部の主面に形成されている、ことを特徴とする圧電振動片を提供する。
(2)請求項2に記載の発明では、前記長手方向の境界線は、前記振動腕部の側面又は前記溝部の側面と前記土手部の主面との間でジグザグ状に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片を提供する。
(3)請求項3に記載の発明では、前記長手方向の境界線は、前記振動腕部の側面又は前記溝部の側面における凹部と前記土手部の主面における凸部とが交互に形成されている、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧電振動片を提供する。
(4)請求項4に記載の発明では、前記土手部の主面における凸部は、前記振動腕部の側面又は前記溝部の側面と前記土手部の主面との境界線から、前記土手部の主面における凸部の先端までの距離の最大値hが前記土手部の幅の1/5以下に形成されている、ことを特徴とする請求項2、又は請求項3に記載の圧電振動片を提供する。
(5)請求項5に記載の発明では、前記土手部の主面における凸部は、前記振動腕部の側面又は前記溝部の側面と前記土手部の主面との境界線から、前記土手部の主面における凸部の先端までの距離の最大値hが0.5μm以下に形成されている、ことを特徴とする請求項2、又は請求項3に記載の圧電振動片を提供する。
(6)請求項6に記載の発明では、実装部を備えたパッケージと、前記実装部に接合材を介して実装された、請求項1から請求項5のうちのいずれか1の請求項に記載の圧電振動片と、を具備したことを特徴とする圧電振動子を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1励振電極と第2励振電極の、振動腕部における長手方向の境界線の一部が側面に形成され、残りが主面に形成されているので、異物による短絡が生じにくく、振動に寄与する電極部分の面積をより大きく確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】圧電振動片の構成と振動腕部の断面を表した図である。
図2】振動腕部における励振電極の状態を表した断面拡大図である。
図3】圧電振動片と圧電振動子の製造工程を表したフローチャートである。
図4】圧電振動片と圧電振動子の製造工程の一部における振動腕部の状態を表した断面図である。
図5】圧電振動片と圧電振動子の製造工程における残りの振動腕部の状態を表した断面図である。
図6】圧電振動子の構成を表した斜視図である。
図7】従来の圧電振動片の構造について表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の圧電振動片、及び圧電振動子における好適な実施形態について、図1から図6を参照して詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
本実施形態の圧電振動片6は、音叉形の圧電振動片であり、基部8から1対の振動腕部7が延設されると共に、基部8から振動腕部7の両外側に並列して延設された支持腕部9を備える。1対の振動腕部7の長手方向には、その主面(裏表面)に一定幅の溝部72が形成されている。この溝部72により、振動腕部7には、溝部72の外側と内側の土手部73が合計8箇所に形成されている。
【0012】
振動腕部7の外周面を構成する側面と主面及び溝部72内には、異なる2系統の第1励振電極91と第2励振電極92が形成されている。
本実施形態および各変形例によれば、振動腕部7に形成された、全8箇所の土手部73に形成される、第1励振電極91、第2励振電極92の長手方向の端部(境界線)16箇所をギザギザ形状に形成し、当該ギザギザによる境界線を土手部73のエッジ部E(側面と主面との交線)にかけて形成する。
すなわち、第1励振電極91と第2励振電極92のギザギザにより、土手部73の主面に形成される凸部91p、92pと、側面に形成される凹部91q、92qとが交互に配置される。
そして、土手部73の主面上に形成される凸部91p、92pにおける、エッジ部Eからの最大の高さhを、土手部73の幅Wの1/5以下、又は/及び、0.5μm以下とする。
このように、第1励振電極91、第2励振電極92における、電極パターンのギザギザ部を土手部73のエッジ部E(土手のショルダー部)にかけて形成することで、電解効率の低下を最小限に留めつつ、異物による短絡のリスクも低減することができる。
【0013】
(2)実施形態の詳細
図1は、実施形態に係る圧電振動片6の構成と断面を表した図である。
圧電振動片6は、水晶やタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された、いわゆる音叉形の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。本実施形態では、圧電材料として水晶を使用して形成した圧電振動片を例に説明する。
【0014】
図1(a)に示すように、圧電振動片6は、一対の振動腕部7a、7bと、基部8と、一対の支持腕部9a、9bを備えている。
本明細書において、振動腕部7a、7bの長さ方向(図1の左右方向)を長手方向、振動腕部7a、7bが対向する方向(図1(a)の上下方向)を短手方向、圧電振動片6の厚さの方向(図1(b)の上下方向)を厚さ方向という。
基部8は、一対の振動腕部7a、7bにおける長手方向の一方の端部同士を連結している。
基部8には、短手方向を向く両端面から外側に延びる連結部81a、81bが連結され、この連結部81a、81bには、長手方向に延びる支持腕部9a、9bが連結されている。一対の支持腕部9a、9bは、短手方向において、振動腕部7a、7bの両外側に配置されている。
【0015】
一対の振動腕部7a、7bは、互いに平行となるように配置されており、基部8側の端部を固定端とし、先端が自由端として振動する。
一対の振動腕部7a、7bは、その全長のほぼ中央部分の幅を基準幅とした場合、この基準幅よりも両側に広くなるように形成された拡幅部71a、71bを備えている。この拡幅部71a、71bは、振動腕部7a、7bの重量及び振動時の慣性モーメントを増大する機能を有している。これにより、振動腕部7a、7bは振動し易くなり、振動腕部7a、7bの長さを短くすることができ、小型化が図られている。
なお、本実施形態の圧電振動片6は、振動腕部7a、7bに拡幅部71a、71bが形成されているが、拡幅部のない圧電振動片を使用してもよい。
【0016】
また、本実施形態の圧電振動片6では、図示しないが、振動腕部7a、7bの先端部(拡幅部71a、71b)に、所定周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)するための重り金属膜(粗調膜及び微調膜からなる)が形成されている。この重り金属膜を、例えばレーザ光の照射やイオンミリング方によって適量だけ取り除くことで、周波数調整を行い、一対の振動腕部7a、7bの周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができるようになっている。この重り金属膜についても、拡幅部と同様に形成しないことも可能である。
【0017】
図1(b)は、図1(a)に示すV-V線に沿った断面を矢印の方向に見た振動腕部7a、7bの断面図である。
図1(b)に示すように、一対の振動腕部7a、7bには、一定幅の溝部72a、72bが形成されている。
溝部72a、72bは、一対の振動腕部7a、7bの両主面(表裏面)上において、厚さ方向に凹むとともに、基部8側から長手方向に沿って延在している。溝部72a、72bは、振動腕部7a、7bの基端(基部8の先端側の端部)から、拡幅部71a、71bの手前までに形成されている。
溝部72a、72bにより、一対の振動腕部7a、7bは、それぞれ図1(b)に示すように断面H型となっている。
【0018】
そして、振動腕部7a、7bの主面には、溝部72a、72bが形成されることで、振動腕部7a、7bの短手方向外側の側面と、溝部72a、72bの短手方向外側の側面との間に外側土手部73が形成されている。
また、振動腕部7a、7bの短手方向内側の側面(振動腕部7a、7bの互いに対応する側の面)と、溝部72a、72bの短手方向内側の側面との間に内側土手部73が形成されている。
【0019】
圧電振動片6の一方の主面側の面(図1(a)の反対側の面)には、点線で示すように、支持腕部9a、9bに2系統のマウント電極99a、99bが形成されている。このマウント電極99a、99bは、図6で後述するように、パッケージに形成された実装部14A、14Bに圧電振動片6をマウント(実装)する際に、電極パッド20A、20Bと導電性接着剤51で接続される。
両マウント電極99a、99bと電気的に接続した2系統の引回し電極(図示しない)が連結部81a、81bと基部8に形成されている。
そして、支持腕部9aに形成された第1系統のマウント電極99aが引回し電極を介して励振電極92(図1(b)参照)と接続され、支持腕部9bに形成された第2系統のマウント電極99bが引回し電極を介して第1励振電極91と接続されている。
第1励振電極91はマウント電極99aを介して、第1励振電極92はマウント電極99bを介して、それぞれ励振用の電圧が印加されるようになっている。
【0020】
第1励振電極91と第2励振電極92は、マウント電極99a、99bを介して電圧が印加されることで、一対の振動腕部7a、7bを互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、電気的に切り離された状態で振動腕部7a、7b上にパターニングされて形成されている。
具体的には、図1(b)に示すように、一方の励振電極91が、主に一方の振動腕部7aの溝部72a内と、他方の振動腕部7bの側面上とに互いに電気的に接続された状態で形成されている。
また、他方の励振電極92が、主に他方の振動腕部7bの溝部72b内と、一方の振動腕部7aの側面上とに互いに電気的に接続された状態で形成されている。
【0021】
図2は、振動腕部7aにおける第1励振電極91と第2励振電極の状態を表した断面拡大図である。
図2に示すように、第1励振電極91と第2励振電極の長手方向の端部は、土手部73の主面と側面が交差するエッジ部Eを中心としたギザギザ状態に形成されている。
このギザギザによる第1励振電極91、第2励振電極の境界線は、エッジ部Eから主面側に凸出した凸部91p、92pと、エッジ部Eから側面側に凹んだ凹部91q、92qにより形成されている。
【0022】
主面において、第1励振電極91と第2励振電極92の境界線が長手方向の直線にならず、凸部91p、92pや凹部91q、92qが形成されるのは、次の2つの理由による。
1つめの理由としては、レジスト膜に形成するフォトマスクによる。すなわち、電極形成の際にスプレー塗布したレジスト膜に電極分割用のマスクをパターニングするが、レジスト粒の影響によってフォトレジストの表面に凹凸が形成されているため、マスクパターンの直線性が悪くなる。このため、主面の露光と側面のオーバー露光によって、除去されたレジスト膜の境界線がギザギザになることが理由である。
2つめの理由としては、金属層のメタルエッチングによるオーバーエッチングによる。
【0023】
土手部73の幅をW、主面に形成した凸部91p、92pにおける、エッジ部Eから凸部91p、92pの先端までの高さ(最大値)をhとした場合、本実施形態では、凸部91p、92pの高さhは、幅Wの1/5以下に形成されている。
なお、凸部91p、92pの高さhは、0.5μm以下に形成するようにしてもよい。
このように、凸部91p、92pの高さhを、h≦1/5、又は/及び、h≦0.5μmとすることにより、第1励振電極91と第2励振電極92における長手方向に沿った端部の境界線の全てが主面上に形成されたり、境界線の全てが側面上に形成されることなく、主面の凸部91p、92pと側面の凹部91q、92qが交互に配置されたギザギザ形状にすることができる。
そして、第1励振電極91、第2励振電極92の境界線が、エッジ部Eから凸出した主面側の凸部91p、92pと、エッジ部Eから凹んだ側面側の凹部91q、92qによってギザギザ形状に形成されているので、電極面積が小さくなることによる電解効率の低下を最小限に留めることができる。
また、主面に形成される電極(凸部91p、92p)の高さhが低く形成されると共に、凹部91q、92qと連続する主面部分には電極が形成されていないので、異物による短絡のリスクを低減することができる。
このように本実施形態によれば、電解効率の低下を最小限に留めつつ、異物による短絡のリスクも低減することができる。
【0024】
次に、本実施形態における圧電振動片6の製造方法について説明する。
図3は、圧電振動片6の製造処理の各工程を表したフローチャートである。
図4図5は、圧電振動片6の各製造工程における振動腕部7aの状態を表した断面図である。
なお、図の表示領域の関係で、支持腕部9a、9bと振動腕部7bの状態については省略している。
【0025】
圧電振動片6の製造工程において、最初に前工程を行う(ステップ11)。
この前工程では、水晶を所定角度でスライスした一定厚さのウエハを準備し、振動腕部7に溝部72が形成された圧電振動片6の外形形状を形成する。
すなわち、所定の厚みに高精度に仕上げられた水晶のウエハから、複数の圧電振動片6の外形形状を形成し、更に、振動腕部7の主面上に溝部72を形成する。
具体的には、フォトリソグラフ技術によってウエハの両面に、圧電振動片6の外形形状に対応する形状のマスク(外形マスク)を形成する。その後、当該ウエハをウェットエッチング加工し、外形マスクでマスクされていない領域を選択的に除去することで、図1に示すように、圧電振動片6の平面的な外形形状が形成される。
次に、各圧電振動片6の各振動腕部7a、7bに対してエッチング加工を施し、各振動腕部7a、7bの両主面に溝部72を形成することで、合計8個の土手部73を形成する。
なお、複数の圧電振動片6は、連結部を介してウエハに連結された状態となっていて、電極を形成(ステップ12~ステップ20)した後に連結部を切断することで個片化される。
【0026】
前工程により外形形状と溝部72を形成した後、図4(a)に示すように、表面全体に電極スパッタを行う(ステップ12)。この工程では、圧電振動片6の全面に対して、電極となる金属層31を成膜する。金属層31の成膜は、電極スパッタによりクロム層を形成し、その後金層を形成することによる。なお、クロム層、金層の順に蒸着によって金属層31を形成するようにしてもよい。
【0027】
次に、レジスト塗布を行う(ステップ13)。
この工程では、図4(b)に示すように、形成した金属層31の表面全体にレジスト膜33をスプレー塗布する。このレジスト膜33は紫外光に感光感度を持つ樹脂をベースとした化合物である。レジスト膜33は流動性を有するため、スプレー塗布によって表と裏の両主面側から2回塗布する。
【0028】
次に、露光・現像を行う(ステップ14)。
この工程では、電極(励振電極とマウント電極)に対応したマスクパターンを使用して、両主面側に対して紫外光を照射することでレジスト膜33を露光し、その後、現像液で現像する。
この露光・現像により、図4(c)に示すように、振動腕部7の両主面にレジスト膜33から領域Q1部分が除去される。
露光・現像によってQ1部分を除去した後の、レジスト膜33の境界線は、図2で説明した第1励振電極91と第2励振電極92の境界線に対応したギザギザ状態となっている。
【0029】
次に、メタルエッチングを行い(ステップ15)、領域Q1部分の金属層31の除去を行う(図5(d))。
すなわち、最初に金層用のエッチング液(例えば、ヨウ素系薬液)に浸けることで、領域Q1の金層を除去し、その後クロム層用のエッチング液(例えば、セリウム系薬液)に浸けることで領域Q1のクロム層を除去することで、金属層31を除去する。
次に、残ったレジスト層33を剥離する(ステップ16)。
【0030】
以上のフォトリソ工程(ステップ13~ステップ16)により、図5(e)に示すように、振動腕部7a、7bの全面に形成されていた金属層31(クロム層、金層)が、両主面上の2箇所で分離されることで、長手方向の端部の境界線がギザギザの励振電極91と励振電極92が形成される。
このため、振動腕部7aについて表している図5(e)では、振動腕部7aの溝部72a側には第1励振電極91が形成され、振動腕部7aの両側面側には第2励振電極92が形成された状態が表示されている。
一方、図示していないが、振動腕部7bには、溝部72b側には第2励振電極92が形成され、振動腕部7bの両側面側には第1励振電極91が形成される(図1(b)、図2参照)。
なお、支持腕部9の金属層31は、振動腕部7a、7bの側面側に形成された系統の励振電極と接続されている。
【0031】
次に、各圧電振動片6の振動腕部7a、7bに対する重り金属膜を形成する(ステップ17)。
この重り金属膜形成工程では、各振動腕部7a、7bの拡幅部71a、71bの表面に周波数調整用の重り金属膜を形成する。
この重り金属膜は、例えば蒸着等により形成することができる。
なお、重り金属膜は、電極形成工程(ステップ12~ステップ16)において各電極と同時に形成するようにしてもよい。
【0032】
次に、各圧電振動片6に対する周波数調整を行う(ステップ18)。
周波数調整工程では、各圧電振動片6に接続した第1電極パッド23と第2電極パッド24間に所定の駆動電圧を印加して、圧電振動片6の各振動腕部7a、7bを振動させることにより圧電振動片6の周波数を調整する。
具体的には、フレーム部2上に形成した各第1電極パッド23と第2電極パッド24に駆動電圧を印加するための測定器のプローブ等を押し当てる。この状態で、各第1励振電極91、第2励振電極92に駆動電圧を印加して各振動腕部7a、7bを振動させる。そして、各圧電振動片6の振動周波数と目標周波数との差に応じて、拡幅部71a、71b上に形成した重り金属膜を部分的に除去する。これにより、各振動腕部7a、7bの質量が変化することで、各振動腕部7a、7bの振動周波数(圧電振動片6の周波数)が変化する。よって、圧電振動片6の周波数の目標周波数に近付けることができる。
【0033】
以上の各工程により、連結部を介してウエハに複数連結された圧電振動片6が形成される。
次に、複数連結された圧電振動片6を個片化する(ステップ19)。
具体的には、各圧電振動片6を折り曲げるようにして、各連結部で切断する。
以上により、1枚のウエハから、複数の圧電振動片6を一度に製造することができる。
【0034】
次に、上述の方法により製造した各圧電振動片6を、圧電振動子容器2内に実装した圧電振動子1について説明する。
この圧電振動子1は、図1(a)で説明したサイドアーム型の圧電振動片を例に説明するが、センターアーム型の圧電振動片6や、支持腕部9を有しない圧電振動片6についても、マウント部の構造とマウント箇所が異なることを除き同様である。
【0035】
図6は、上述した実施形態又は変形例に係るサイドアーム型の圧電振動片6を備えた圧電振動子1の分解斜視図である。
図6に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、内部に気密封止されたキャビティCを有するパッケージ2と、キャビティC内に収容された圧電振動片6と、を備えたセラミックパッケージタイプの表面実装型振動子である。
パッケージ2は、概略直方体状に形成されている。パッケージ2は、パッケージ本体3と、パッケージ本体3に対して接合されるとともに、パッケージ本体3との間にキャビティCを形成する封口板4と、を備えている。
パッケージ本体3は、互いに重ね合わされた状態で接合された第1ベース基板10および第2ベース基板11と、第2ベース基板11上に接合されたシールリング12と、を備えている。
【0036】
第1ベース基板10および第2ベース基板11の四隅には、平面視1/4円弧状の切欠部15が、両ベース基板10、11の厚み方向の全体に亘って形成されている。これら第1ベース基板10および第2ベース基板11は、例えばウエハ状のセラミック基板を2枚重ねて接合した後、両セラミック基板を貫通する複数のスルーホールを行列状に形成し、その後、各スルーホールを基準としながら両セラミック基板を格子状に切断することで作製される。その際、スルーホールが4分割されることで、切欠部15となる。
【0037】
なお、第1ベース基板10および第2ベース基板11はセラミックス製としたが、その具体的なセラミック材料としては、例えばアルミナ製のHTCC(High Temperature Co-Fired Ceramic)や、ガラスセラミック製のLTCC(Low Temperature Co-Fired Ceramic)等が挙げられる。
【0038】
第1ベース基板10の上面は、キャビティCの底面に相当する。
第2ベース基板11は、第1ベース基板10に重ねられており、第1ベース基板10に対して焼結などにより結合されている。すなわち、第2ベース基板11は、第1ベース基板10と一体化されている。
なお、後述するように第1ベース基板10と第2ベース基板11の間には、両ベース基板10、11に挟まれた状態で接続電極(図示せず)が形成されている。
【0039】
第2ベース基板11には、貫通部11aが形成されている。貫通部11aは、四隅が丸みを帯びた平面視長方形状に形成されている。貫通部11aの内側面は、キャビティCの側壁の一部を構成している。貫通部11aの短手方向で対向する両側の内側面には、内方に突出する実装部14A、14Bが設けられている。実装部14A、14Bは、貫通部11aの長手方向略中央に形成されている。実装部14A、14Bは、貫通部11aの長手方向の長さの1/3以上の長さに形成されている。
【0040】
シールリング12は、第1ベース基板10および第2ベース基板11の外形よりも一回り小さい導電性の枠状部材であり、第2ベース基板11の上面に接合されている。具体的には、シールリング12は、銀ロウ等のロウ材や半田材等による焼付けによって第2ベース基板11上に接合、あるいは、第2ベース基板11上に形成(例えば、電解メッキや無電解メッキの他、蒸着やスパッタ等により)された金属接合層に対する溶着等によって接合されている。
【0041】
シールリング12の材料としては、例えばニッケル基合金等が挙げられ、具体的にはコバール、エリンバー、インバー、42-アロイ等から選択すれば良い。特に、シールリング12の材料としては、セラミック製とされている第1ベース基板10および第2ベース基板11に対して熱膨張係数が近いものを選択することが好ましい。例えば、第1ベース基板10および第2ベース基板11として、熱膨張係数6.8×10-6/℃のアルミナを用いる場合には、シールリング12としては、熱膨張係数5.2×10-6/℃のコバールや、熱膨張係数4.5~6.5×10-6/℃の42-アロイを用いることが好ましい。
【0042】
封口板4は、シールリング12上に重ねられた導電性基板であり、シールリング12に対する接合によってパッケージ本体3に対して気密に接合されている。そして、封口板4、シールリング12、第2ベース基板11の貫通部11a、および第1ベース基板10の上面により画成された空間が、気密に封止されたキャビティCとして機能する。
【0043】
封口板4の溶接方法としては、例えばローラ電極を接触させることによるシーム溶接や、レーザ溶接、超音波溶接等が挙げられる。また、封口板4とシールリング12との溶接をより確実なものとするため、互いになじみの良いニッケルや金等の接合層を、少なくとも封口板4の下面と、シールリング12の上面とにそれぞれ形成することが好ましい。
【0044】
第2ベース基板11の実装部14A、14Bの上面には、圧電振動片6との接続電極である一対の電極パッド20A、20Bが形成されている。また、第1ベース基板10の下面には、一対の外部電極21A、21Bがパッケージ2の長手方向に間隔をあけて形成されている。電極パッド20A、20Bおよび外部電極21A、21Bは、例えば蒸着やスパッタ等で形成された単一金属による単層膜、または異なる金属が積層された積層膜である。
電極パッド20A、20Bと外部電極21A、21Bとは、第2ベース基板11の実装部14A、14Bに形成された第2貫通電極22A、22B、第1ベース基板10と第2ベース基板11の間に形成された接続電極(図示せず)、及び、第1ベース基板10に形成された第1貫通電極(図示せず)を介して互いにそれぞれ導通している。
【0045】
圧電振動片6は、一対の支持腕部9a、9bにより実装部14A、14B上に実装された状態で、気密封止されたパッケージ2のキャビティC内に収容されている。
すなわち、図6に示すように、圧電振動片6は、支持腕部9a、9bに設けられた各マウント電極99a、99b(図1(a)参照)が、実装部14A、14B上の電極パッド20A、20B(上面にメタライズ層が形成されている場合は該メタライズ層)にそれぞれ接合材51a、51b、52a、52bを介して電気的および機械的に接合されている。
このように、本実施形態の圧電振動片6は、支持腕部9a、9bのそれぞれが、その長さ方向(長手方向)の2箇所で実装部14A、14B上に接合保持(2点支持)される。
【0046】
接合材51a、51b、52a、52bは、導電性を有し、かつ接合初期の段階において流動性を持ち、接合後期の段階において固化して接合強度を発現する性質を有するものが使用され、例えば、銀ペースト等の導電性接着剤や、金属バンプ等の使用が好適である。
接合材51a、51b、52a、52bが導電性接着剤により構成されている場合、塗布装置の移動ヘッドに支持されたディスペンサノズルにより塗布される。
本実施形態では、各接合材のサイズは圧電振動子1のサイズによるが、例えば、1.2mm×1.0mmサイズの圧電振動子1の場合、半径0.1mm程度に塗布される。
【0047】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、外部電極21A、21Bに所定の電圧を印加する。外部電極21A、21Bに所定の電圧が印加されると、2系統の励振電極91、92に電流が流れ、2系統の励振電極91、92間に発生する電界による逆圧電効果によって、一対の振動腕部7a、7bは、例えば互いに接近、離間する方向(短手方向)に所定の共振周波数で振動する。一対の振動腕部7a、7bの振動は、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源などとして用いられる。
本実施形態の圧電振動片6では、上述したように、
第1励振電極91と第2励振電極92の長手方向の境界線(端部)が、土手部73の主面と側面が交差する線(エッジ部E)に対して、側面側と主面側にギザギザとした凹凸形状に形成されているので、導電性異物の付着による短絡をより少なくしつつ、振動に寄与する電極面積を大きくすることができ、圧電効果を良くすることができる。
【0048】
以上説明した圧電振動子1は、電波時計、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として、また、ジャイロセンサなどの計測機器等として使用される。
【0049】
本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、本実施形態では振動腕部7a、7bに形成される8箇所の土手部73における、全16所のエッジ部Eに対して、第1励振電極91と第2励振電極92の境界線を、側面側の凹部91q、92qと主面側の凸部91p、92pによるギザギザ形状に形成する場合について説明した。
これに対して、1つの土手部73に対して、外側又は内側(溝部72a、72b側)のうちの一方側のエッジ部Eに対して、第1励振電極91と第2励振電極92の境界線をギザギザ形状に形成するようにしてもよい。この場合、他方のエッジ部Eには、従来と同様に第1励振電極91と第2励振電極92の全境界線が主面上、又は側面上に位置するように形成してもよい。
この場合においても、各土手部73のエッジ部Eの一方側において、境界線が側面側の凹部91q、92qと主面側の凸部91p、92pによるギザギザ形状に形成されているので、主面の両側の長手方向の全体にわたって境界線が形成される場合に比べて異物による短絡の可能性を低くすることができる。また、両側面の長手方向全体に境界線が形成される場合にくらべて、電極面積を大きくすることができる。
【0050】
また、8箇所存在する土手部73のうち、上方からの落下する異物による短絡が発生しやすい、上側の土手部73の4箇所を対象としたエッジ部Eに、側面側の凹部91q、92qと主面側の凸部91p、92pによるギザギザ形状の境界線を形成するようにしてもよい。
この場合も、4箇所の土手部73における両エッジ部Eを対象としてもよく、何れか一方側だけでもよい。
なお、この場合の上面側は、圧電振動片6を実装した場合に封口板4と対向する側の土手部73が該当する。
【0051】
さらに、16箇所存在するエッジ部Eのうち、少なくとも1箇所のエッジ部Eを対象にして、側面側の凹部91q、92qと主面側の凸部91p、92pによるギザギザ形状の境界線を形成することでも可能である。
この場合においても、従来に比べると、短絡を少なくし、電極面積を大きくすることができる
【0052】
上記実施形態においては、圧電振動片6を用いた圧電振動子1として、セラミックパッケージタイプの表面実装型振動子について説明したが、圧電振動片6を、ガラス材によって形成されるベース基板およびリッド基板が陽極接合によって接合されるガラスパッケージタイプの圧電振動子1に適用することも可能である。
また、説明した実施形態の電極パッド20は、実装部14のほぼ全面に形成されているが、接合材51、52の少なくとも一方に対応する領域に形成されていればよい。
【0053】
また、説明した実施形態及び変形例では、基部8から振動腕部7a、7bの両外側に実装用の支持腕部9a、9bが形成されたいわゆるサイドアーム型の圧電振動片3を配設した圧電ウエハ1について説明したが、各種他の形式の圧電振動片を配置することも可能である。
例えば、支持腕部が存在せず、実装用の2系統のマウント電極が基部8に形成された、いわゆる片持ち型の圧電振動片を配設した圧電ウエハ1とすることも可能である。
また、基部8から両振動腕部7a、7bの間に支持部が1本形成され、この支持部に実装用の2系統のマウント電極が形成された、いわゆるセンターアーム型の圧電振動片を配設した圧電ウエハ1とすることも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 圧電振動子
2 パッケージ
3 パッケージ本体
4 封口板
6 圧電振動片
7 振動腕部
71 拡幅部
72 溝部
73 土手部
E エッジ部E
8 基部
9 支持腕部
91 第1励振電極
92 第2励振電極
91a、92a 凸部
91q、92q 凹部
10 第1ベース基板
11 第2ベース基板
14 実装部
20 電極パッド
21 外部電極
22 第2貫通電極
51、52 接合材
99 マウント電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7