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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】内装用表面材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/12 20060101AFI20240315BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20240315BHJP
   E04F 15/02 20060101ALI20240315BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20240315BHJP
   B60R 13/02 20060101ALN20240315BHJP
【FI】
B32B27/12
D06M15/263
E04F15/02 A
E04F13/08 A
B60R13/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020046881
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021146547
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】八木 雅史
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-163561(JP,A)
【文献】特開2010-269473(JP,A)
【文献】特開2019-089463(JP,A)
【文献】特開2000-127313(JP,A)
【文献】特開平03-227461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
D06N 1/00 - 7/00
D06M 13/00 - 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維シートに、粒子とバインダ樹脂を含むバインダが接着しており、前記粒子とバインダ樹脂を含むバインダ量が20g/m以上、かつ、{たて方向の20%モジュラス強度(N/3cm)/粒子とバインダ樹脂を含むバインダ量(g/m)}の値が2.0以下であり、たて方向の20%モジュラス強度が80N/3cm以下である、内装用表面材。
【請求項2】
バインダに含まれるバインダ樹脂の質量に対する、バインダに含まれる粒子の質量の百分率が25質量%より小さい、請求項1に記載の内装用表面材。
【請求項3】
(1)繊維シートにバインダ樹脂を含むバインダAを接着し、バインダA接着繊維シートを製造する工程、
(2)バインダA接着繊維シートに粒子とバインダ樹脂を含むバインダBを接着し、バインダA及びB接着繊維シートを製造する工程、
(3)バインダA及びB接着繊維シートにバインダ樹脂を含むバインダCを接着し、内装用表面材を製造する工程、
を含み、バインダA~Cの合計量が20g/m以上であり、かつ、{たて方向の20%モジュラス強度(N/3cm)/粒子とバインダ樹脂を含むバインダA~Cの合計量(g/m)}の値が2.0以下であり、たて方向の20%モジュラス強度が80N/3cm以下である、
内装用表面材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井材、ドアトリム、ダッシュアウター、ピラーガーニッシュなどの車両用内装材、パーテーション、壁紙などに使用出来る内装用表面材に関する。
【背景技術】
【0002】
内装用表面材を構成する材料として、従来から不織布が用いられている。また、触った時の擦れ等によって劣化するのを防ぐため、内装用表面材には耐摩耗性が求められている。
【0003】
このような要求を満たす、耐摩耗性に優れた内装用表面材として、本出願人は、「構成繊維同士がバインダにより接着して構成されているベースマットにおける、一方の主面A側における前記バインダの存在量がもう一方の主面B側よりも多く、かつ前記ベースマットにおける、前記一方の主面A上の全面に樹脂層を有することを特徴とする、表皮材。」(特許文献1)を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-043101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1にかかる表皮材は一方の主面上の全面に樹脂層を有することで、確かに耐摩耗性に優れる表皮材であったが、樹脂層によって表皮材の繊維間結合が強固になり、その結果表皮材のモジュラスが高くなり、成形時に大きな力をかける必要があることから、成形加工性が十分なものではなかった。
【0006】
本発明はこのような状況下においてなされたものであり、耐摩耗性に優れ、かつ、表面材の成形時に小さい力で成形でき、成形加工性に優れる内装用表面材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1にかかる発明は、「繊維シートに、粒子とバインダ樹脂を含むバインダが接着しており、前記粒子とバインダ樹脂を含むバインダ量が20g/m以上、かつ、{たて方向の20%モジュラス強度(N/3cm)/粒子とバインダ樹脂を含むバインダ量(g/m)}の値が2.0以下である、内装用表面材。」である。
【0008】
本発明の請求項2にかかる発明は、「バインダに含まれるバインダ樹脂の質量に対する、バインダに含まれる粒子の質量の百分率が25質量%より小さい、請求項1に記載の内装用表面材。」である。
【0009】
本発明の請求項3にかかる発明は、「(1)繊維シートにバインダ樹脂を含むバインダAを接着し、バインダA接着繊維シートを製造する工程、(2)バインダA接着繊維シートに粒子とバインダ樹脂を含むバインダBを接着し、バインダA及びB接着繊維シートを製造する工程、(3)バインダA及びB接着繊維シートにバインダ樹脂を含むバインダCを接着し、内装用表面材を製造する工程、を含み、バインダA~Cの合計量が20g/m以上であり、かつ、{たて方向の20%モジュラス強度(N/3cm)/粒子とバインダ樹脂を含むバインダA~Cの合計量(g/m)}の値が2.0以下である、内装用表面材の製造方法。」である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1にかかる内装用表面材は、繊維シートに粒子とバインダ樹脂を含むバインダが接着しており、また、前記粒子とバインダ樹脂を含むバインダ量が20g/m以上と、繊維シートに多量のバインダが接着していることから耐摩耗性が優れる。また、{たて方向の20%モジュラス強度(N/3cm)/粒子とバインダ樹脂を含むバインダ量(g/m)}が2.0以下であることで、バインダ量が多いにも関わらずたて方向の20%モジュラス強度が低く、成形加工性が優れる内装用表面材が実現できる。これは、バインダに粒子を含むことで、粒子が繊維の交点及び繊維間に介在することで繊維間接着を弱め、その結果モジュラス強度が低下することで実現できる。
【0011】
本発明の請求項2にかかる内装用表面材は、バインダに含まれるバインダ樹脂の質量に対する、バインダに含まれる粒子の質量の百分率が25質量%より小さく、バインダ樹脂の質量に対して粒子の質量が少ないことから、粒子が繊維間接着を弱めすぎず、内装用表面材の耐摩耗性が優れる。
【0012】
本発明の請求項3にかかる内装用表面材の製造方法は、繊維シートにバインダ樹脂を含むバインダAを接着し、次にバインダ樹脂と粒子を含むバインダBを接着し、次にバインダ樹脂を含むバインダCを接着して内装用表面材を製造し、バインダA~Cの合計量が20g/m以上であることで耐摩耗性が優れ、また、{たて方向の20%モジュラス強度(N/3cm)/粒子とバインダ樹脂を含むバインダA~Cの合計量(g/m)}を満たし、成形加工性が優れる内装用表面材を製造できる製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の内装用表面材を構成する繊維シートは、織物や編物、あるいは不織布などのシート状の繊維構造体のことを指す。特に、本発明に使用する繊維シートが不織布であると、柔軟で型の形状に対して追従しやすいため好ましく、不織布の中でも、乾式不織布であると、ある程度の厚さを有し、成形加工性が優れることからより好ましい。
【0014】
本発明の内装用表面材を構成する繊維シートの構成繊維は、特に限定するものではないが、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維などであることが出来る。これらの中でも、耐熱性、耐光性、防汚性等に優れるポリエステル繊維、および/または難燃性に優れるレーヨン繊維を含んでいるのが好ましい。また、構成繊維は単繊維であっても、芯鞘型やサイドバイサイド型といった、2種類以上の樹脂を含む複合繊維であってもよい。さらに、構成繊維の断面は、円形であっても、楕円や四角形、Y字断面などの異形であってもよい。加えて、フィブリル化した繊維を含んでいてもよい。
【0015】
前記構成繊維は白色であっても、着色されていても良い。前記構成繊維が着色されている場合、繊維自体が顔料及び/又は染料を構成樹脂中に含有する原着繊維であっても良いし、顔料及び/又は染料で着色された繊維であっても良いが、摩擦によって繊維が色落ちしにくいため、原着繊維であるのが好ましい。
【0016】
前記構成繊維に捲縮繊維を含んでいると、内装用表面材の構造が緻密になることから好ましい。このような捲縮繊維としては、例えば機械により捲縮付与された機械捲縮繊維や、2種類の熱収縮率の異なる樹脂を含む潜在捲縮繊維に対して熱を作用させることにより捲縮を発生させた捲縮繊維などが挙げられる。
【0017】
前記構成繊維の繊維長は適宜調整するが、成形加工性に優れた内装用表面材であるように、構成繊維の繊維長は38~114mmであるのが好ましく、38~76mmであるのがより好ましく、38~52mmであるのが更に好ましい。この「繊維長」は、JIS L 1015(2010) 8.4.1c)直接法(C法)に則って測定した値をいう。
【0018】
前記構成繊維の繊度は、繊維が太すぎると、表面が平滑な内装用表面材であることが困難になる傾向がある。一方で、繊維が細過ぎると、繊維の強度が低いため内装用表面材の強度が低い傾向がある。そのため、繊維シートの構成繊維の繊度は0.9~56dtexであるのが好ましく、1.3~17dtexであるのがより好ましく、1.7~6.7dtexであるのが更に好ましい。
【0019】
本発明の内装用表面材は、単一の繊維シートから構成されていてもよいし、複数の繊維シートから構成されていてもよい。複数の繊維シートから構成される内装用表面材は、同じ繊維組成の繊維シートから構成されていてもよいし、異なる繊維組成の繊維シートから構成されていてもよい。このうち、単一の繊維シートから構成される内装用表面材であると、成形加工の際に、層間剥離が起こらず成形加工性に優れる表面材が提供でき、好ましい。
【0020】
本発明の内装用表面材を構成する繊維シートの目付は、特に限定するものではないが、50~500g/mが好ましく、80~300g/mがより好ましく、100~200g/mが更に好ましい。なお、目付とは、主面における1mあたりの質量をいい、主面とは、最も広い面のことをいう。
【0021】
また、本発明の内装用表面材を構成する繊維シートの厚さは、適宜選択するが、0.5~5.0mmが好ましく、1.0~3.0mmがより好ましく、1.1~2.5mmが更に好ましい。なお、本発明における厚さは、100g/5cm荷重時の2つの主面間の長さの値をいい、無作為に選んだ10点における厚さの算術平均値を意味する。
【0022】
本発明の内装用表面材は、繊維シートに、粒子とバインダ樹脂を含むバインダが接着して構成されている。繊維シートにバインダが接着している態様としては、例えば、繊維シートの構成繊維の交点にバインダが存在して接着している態様や、繊維シートの構成繊維の交点以外の構成繊維間にバインダが存在して接着している態様などが挙げられる。
【0023】
前記粒子とバインダ樹脂を含むバインダに含む粒子は、有機樹脂から構成された有機粒子であっても、無機成分から構成された無機粒子であっても、有機樹脂と無機成分を両方含む粒子であってもよい。
【0024】
前記粒子が有機粒子である場合、粒子を構成する成分は特に限定するものではなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、あるいはポリエステル系樹脂を挙げることが出来る。
【0025】
前記粒子が無機粒子である場合、粒子を構成する成分は特に限定するものではなく、例えば、炭酸カルシウム、タルク、酸化ケイ素などが挙げられる。
【0026】
また、粒子として、有機粒子の表面の一部又は全部が無機成分で被覆されたものを採用すると、バインダとの相溶性が良い傾向があり、バインダに粒子が均一に分散してなる液を調製しやすくなる。その結果、該液を用いることで、粒子が均一に分布してなるバインダを備えることで、より耐摩耗性と成形加工性が両立できる内装用表面材を提供でき、好ましい。
【0027】
前記粒子の粒子径は、粒子径が小さければ小さいほど、より内装用表面材を構成する繊維シートの繊維間に粒子が凝集し介在する傾向がある一方、粒子径が小さすぎると、粒子が繊維の交点及び繊維間に介在しても繊維間接着が弱められないおそれがあることから、1~200μmが好ましく、5~150μmがより好ましく、10~120μmが更に好ましい。
【0028】
また、前記粒子は内部に空気を有する中空粒子であってもよいし、内部が詰まっている中実粒子であってもよい。
【0029】
前記粒子の密度は、密度が大きすぎても小さすぎてもバインダ内での分散性が悪化するおそれがあることから、0.01~3.0g/cmが好ましく、0.05~2.0g/cmがより好ましく、0.08~1.2g/cmが更に好ましい。
【0030】
前記粒子とバインダ樹脂を含むバインダに含むバインダ樹脂の種類は適宜選択するが、例えば、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、あるいはポリエステル系樹脂を挙げることが出来る。これらの中でも、成形時に適度に軟化し、型への追従性に優れ、皺や微細な凹凸を発生しにくいことから、アクリル系樹脂(特に、自己架橋型アクリル系樹脂)であるのが好ましい。アクリル系樹脂の中でも、ガラス転移温度が低く、柔らかいアクリル系樹脂であると、伸びやすく、成形加工性に優れているため好適である。一方で、アクリル系樹脂のガラス転移温度が低すぎると、バインダの接着力は向上するものの、バインダ樹脂の破断強度が劣るため、耐摩耗性が劣る。そのため、ガラス転移温度は、-60℃以上10℃以下が好ましく、-50℃以上5℃以下がより好ましく、-45℃以上5℃以下が更に好ましい。本発明における「ガラス転移温度」は、示差熱分析計(DTA)により測定されたDTA曲線におけるベースラインの接線と、ガラス転移による吸熱領域の急峻な下降位置の接線との交点にあたる温度をいう。
【0031】
また、バインダは上述した粒子及びバインダ樹脂以外にも、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗カビ剤、乳化剤、分散剤、界面活性剤などの添加物を含有していてもよい。
【0032】
本発明の内装用表面材に含まれる、粒子とバインダ樹脂を含むバインダ量は、内装用表面材が耐摩耗性に優れるように20g/m以上である。バインダ量が多ければ多いほど、より内装用表面材が耐摩耗性に優れる傾向があることから、バインダ量は21g/m以上がより好ましく、22g/m以上が更に好ましい。バインダ量の上限は、内装用表面材の成形加工性が劣るおそれがあることから、35g/m以下が好ましい。
【0033】
本発明の内装用表面材に含まれる粒子量は、12g/m以下が好ましい。これにより、粒子が繊維間接着を弱めすぎず、内装用表面材の耐摩耗性が優れる。内装用表面材の耐摩耗性がより優れるように、前記粒子量は、11g/m以下がより好ましく、10g/m以下が更に好ましい。一方で、内装用表面材に含まれる粒子量が少なすぎると、繊維の交点あるいは繊維間に粒子が介在せず、内装用表面材の成形加工性が向上しないおそれがあることから、1g/m以上が好ましい。
【0034】
本発明の内装用表面材を構成するバインダに含まれるバインダ樹脂の質量に対する、バインダに含まれる粒子の質量の百分率は、25質量%より小さいのが好ましい。これにより、粒子が繊維間接着を弱めすぎず、内装用表面材の耐摩耗性が優れる。内装用表面材の耐摩耗性がより優れるように、前記百分率は、23質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。また、前記百分率の下限は、繊維の交点あるいは繊維間に粒子が介在せず、内装用表面材の成形加工性が向上しないおそれがあることから、5質量%以上が現実的である。
なお、バインダに含まれるバインダ樹脂の質量に対する、バインダに含まれる粒子の質量の百分率は、以下の方法で算出した値の小数点以下を四捨五入して算出できる。
A=B/C×100
A:バインダに含まれるバインダ樹脂の質量に対する、バインダに含まれる粒子の質量の百分率(単位:質量%)
B:バインダに含まれる粒子の質量(単位:g/m
C:バインダに含まれるバインダ樹脂の質量(単位:g/m
【0035】
本発明の内装用表面材のたて方向の20%モジュラスは、高すぎると成形加工性が悪くなるおそれがあることから、80N/3cm以下が好ましく、60N/3cm以下がより好ましく、40N/3cm以下が更に好ましい。一方、たて方向の20%モジュラスが低すぎると、繊維同士が十分に結合しておらず、耐摩耗性が悪くなるおそれがあることから、20N/3cm以上が好ましい。なお、本発明における「たて方向」とは、内装用表面材の長手方向をいう。
【0036】
本発明のたて方向の20%モジュラス強度は、以下の方法で測定する。
(1)測定対象の内装用表面材から短冊状の試料(長辺:200mm、短辺(長辺と垂直をなす):30mm)を、合計3枚採取する。なお、測定対象の内装用表面材のたて方向と長辺方向が平行となるようにして、測定対象の内装用表面材から短冊状の試料を採取する。
(2)前記試料を引張り強さ試験機(オリエンテック製、テンシロンUCT-500(登録商標))のチャック間(距離:100mm)に固定し、引張り速度200mm/min.で引っ張り、チャック間距離が120mmとなった時(20%伸長時)の応力を測定する。採取した3枚の試料について各々該応力を測定して得られた測定値を算術平均し、小数第2位を四捨五入したものを測定対象におけるたて方向の20%モジュラス強度(単位:N/3cm)とする。
【0037】
本発明の内装用表面材は、{たて方向の20%モジュラス強度(N/3cm)/粒子とバインダ樹脂を含むバインダ量(g/m)}の値が2.0以下である。内装用表面材におけるバインダ量が多いにもかかわらずたて方向の20%モジュラス強度が低いことで、内装用表面材の成形加工性が優れる。この数値は、バインダに粒子を含むことで、粒子が繊維の交点及び繊維間に介在して繊維間接着を弱め、その結果モジュラス強度が低下することで実現できる。{たて方向の20%モジュラス強度(N/3cm)/粒子とバインダ樹脂を含むバインダ量(g/m)}の値が低ければ低いほど、より内装用表面材の成形加工性が優れることから、1.9以下がより好ましく、1.8以下が更に好ましい。一方で、たて方向の20%モジュラス強度(N/3cm)/粒子とバインダ樹脂を含むバインダ量(g/m)}の値が低すぎると、内装用表面材の構成繊維間の接着強度が低く、耐摩耗性が劣るおそれがあることから、1.0以上が現実的である。なお、たて方向の20%モジュラス強度を含む値で評価している理由は、たて方向のモジュラス強度が内装用表面材の中で最も高いモジュラス強度である場合が多く、このようなモジュラス強度の高いたて方向は成形加工するにあたって内装用表面材が伸びにくく成形加工が行いにくい傾向があることから、内装用表面材において最も成形加工性が悪い部分の成形加工性を評価することによって、内装用表面材の成形加工性を評価できるためである。
【0038】
本発明の内装用表面材の目付は、適宜選択するが、70~535g/mが好ましく、100~335g/mがより好ましく、120~235g/mが更に好ましい。また、本発明の内装用表面材の厚さは、適宜選択するが、0.5~5.0mmが好ましく、1.0~3.0mmがより好ましく、1.1~2.5mmが更に好ましい。
【0039】
本発明の内装用表面材は、更にフィルム、発泡体などの構成部材を備えていてもよい。これらの構成成分は内装用表面材における、バインダが接着している主面であっても、そうでない主面であってもよい。
【0040】
次に、本発明の内装用表面材の製造方法について説明する。
【0041】
まず、上述した繊維を用いて、織物、編物、不織布などの繊維シートを製造する。繊維シートが織物や編物である場合、上述の繊維を織るあるいは編むことで製造できる。繊維シートが不織布である場合、例えば、上述の繊維をカード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法による乾式不織布、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法による湿式不織布、直接紡糸法[メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法など)を用いて、繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集する方法]による直接紡糸不織布などが挙げられるが、成形加工性に優れるように、ある程度の嵩がある方が好ましいため、ある程度の嵩がある乾式不織布が好ましい。
【0042】
前記繊維シートが不織布である場合、取り扱い性に優れるように、不織布製造時に水流又はニードルにより構成繊維を絡合するのが好ましい。特に、厚さを損なわず、結果として成形加工性を損なわないように、ニードルによって構成繊維を絡合するのが好ましい。好適であるニードル絡合条件は特に限定するものではないが、針密度300~1000本/cmで絡合するのが好ましく、300~600本/cmで絡合するのがより好ましい。
【0043】
次いで、繊維シートにバインダ樹脂を含むバインダAを接着し、バインダA接着繊維シートを製造する。繊維シートにバインダAを接着する方法は、特に限定するものではないが、例えば、バインダ液を、含浸、泡立て含浸、コーティング、又はスプレーなどの方法によって繊維シートに付与した後、乾燥させることにより、繊維シートにバインダAを接着することができる。このとき、バインダAで繊維シートの繊維間交点をある程度固定し、繊維シートの取り扱い性をよくするため、バインダAに粒子を含んでいないのが好ましい。なお、このとき使用するバインダ樹脂は、前述のバインダ樹脂を使用することができる。また、バインダ液を繊維シートに付与した後、乾燥させる方法としては適宜調整するが、例えば、ドライヤーで加熱することで分散媒/溶媒を除去することができる。ドライヤーの種類は特に限定するものではないが、乾燥による収縮を抑制するために、キャンドライヤーやテンターピン付きのドライヤーが好ましい。
【0044】
繊維シートに、バインダAを接着するときの接着量は、特に限定するものではないが、固形分質量で、1.0~25g/mが好ましく、1.5~20g/mがより好ましく、2.0~15g/mが更に好ましい。
【0045】
次いで、バインダA接着繊維シートに、粒子とバインダ樹脂を含むバインダBを接着し、バインダA及びB接着繊維シートを製造する。バインダA接着繊維シートにバインダBを接着する方法は、特に限定するものではないが、バインダAを接着する方法と同様の方法を採用することができる。なお、この時使用する粒子は、前述の粒子を使用することができ、また、この時使用するバインダ樹脂は、前述のバインダ樹脂を使用することができる。
【0046】
バインダA接着繊維シートに、バインダBを接着するときの接着量は、特に限定するものではないが、固形分質量で、2.0~30g/mが好ましく、4.0~25g/mがより好ましく、6.0~21g/mが更に好ましい。
【0047】
最後に、バインダA及びB接着繊維シートに、バインダ樹脂を含むバインダCを接着し、内装用表面材を製造する。バインダA及びB接着繊維シートにバインダCを接着する方法は、特に限定するものではないが、バインダAを接着する方法と同様の方法を採用することができる。このとき、バインダCはバインダA及びB接着繊維シートを被覆する役割があり、バインダCに粒子を含んでいるとバインダCが内装用表面材から剥離するおそれがあり、内装用表面材の耐摩耗性が劣るおそれがあることから、バインダCに粒子を含んでいないのが好ましい。なお、この時使用するバインダ樹脂は、前述のバインダ樹脂を使用することができる。
【0048】
バインダA及びB接着繊維シートに、バインダCを接着するときの接着量は、特に限定するものではないが、固形分質量で、2.0~30g/mが好ましく、4.0~25g/mがより好ましく、6.0~21g/mが更に好ましい。
【0049】
内装用表面材製造時に繊維シートに接着するバインダA~Cの合計量は、耐摩耗性に優れるように20g/m以上である。バインダA~Cの合計量が多ければ多いほど、より内装用表面材が耐摩耗性に優れる傾向があることから、バインダA~Cの合計量は21g/m以上がより好ましく、22g/m以上が更に好ましい。バインダA~Cの合計量の上限は、内装用表面材の成形加工性が劣るおそれがあることから、35g/m以下が好ましい。
【0050】
また、本発明の製造方法により製造した内装用表面材は、{たて方向の20%モジュラス強度(N/3cm)/粒子とバインダ樹脂を含むバインダA~Cの合計量(g/m)}の値が2.0以下である。内装用表面材製造時における粒子とバインダ樹脂を含むバインダA~Cの合計量は、バインダA~Cのみを接着する場合には、内装用表面材における粒子とバインダ樹脂を含むバインダ量と同一であることから、前述の{たて方向の20%モジュラス強度(N/3cm)/粒子とバインダ樹脂を含むバインダ量(g/m)}と同義である。
【0051】
なお、バインダA~Cと異なるバインダを用いて、内装用表面材に装飾を施すため、プリントを施してもよい。なお、プリントの配置は、特に限定するものではないが、従来から公知の方法により実施することが出来る。例えば、所望模様に対応する開口を有するシリンダを用意し、このシリンダを通してプリント液をプリントし、乾燥してプリントを配置することができる。このプリントは、内装用表面材の表面に施してもよいし、バインダA接着繊維シートのバインダAを有する表面に施し、バインダBにより被覆してもよいし、バインダA及びB接着繊維シートのバインダBを有する表面に施し、バインダCにより被覆してもよい。
【0052】
本発明の内装用表面材は、車両用内装材などの表面材として使用できる。成形加工方法としては、特に限定するものではないが、例えば内装用表面材を型にはめ、樹脂やガラスシートと共に圧力や熱をかける成形方法や、内装用表面材を型にはめ、内装用表面材と型の間に樹脂を流し込み成形する、インジェクション成形などの方法をとることができる。
【実施例
【0053】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
(繊維シートの調製)
原着ポリエステル繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:38mm、色:ベージュ)を100mass%用いて、カード機により開繊し繊維ウエブを形成した後、片面から針密度400本/cmでニードルパンチ処理を行った。その後、温度165℃、ロール間隔0.6mmの熱カレンダーロール間へ供給し、ニードルパンチ処理を行った繊維ウエブを熱圧着することで、繊維シート(ニードルパンチ不織布)を製造した(目付:180g/m、厚さ:1.8mm)。
【0055】
(バインダ液Aの調製)
次の割合で配合した、バインダ液Aを調製した。
(1)アクリルバインダ樹脂(ガラス転移温度:-40℃、固形分濃度:50質量%)・・・2.3質量部
(2)界面活性剤(固形分濃度:20質量%)・・・0.2質量部
(3)増粘剤(固形分濃度:100質量%)・・・0.2質量部
(4)25%アンモニア水・・・0.1質量部
(5)水・・・97.2質量部
【0056】
(バインダ液Bの調製)
次の割合で配合した、バインダ液Bを調製した。
(1)アクリルバインダ樹脂(ガラス転移温度:-40℃、固形分濃度:50質量%)・・・10質量部
(2)増粘剤(固形分濃度:1.5質量%)・・・30質量部
(3)消泡剤(固形分濃度:40質量%)・・・0.4質量部
(4)粒子(ウレタン樹脂で構成、中実形状、粒子径:10μm、密度:1.15g/cm)・・・2.0質量部
(5)25%アンモニア水・・・1.0質量部
(6)水・・・56.6質量部
【0057】
(バインダ液Cの調製)
次の割合で配合した、バインダ液Cを調製した。
(1)アクリルバインダ樹脂(ガラス転移温度:-40℃、固形分濃度:50質量%)・・・20質量部
(2)増粘剤(固形分濃度:1.5質量%)・・・28質量部
(3)増粘剤(固形分濃度:28質量%)・・・1.0質量部
(4)消泡剤(固形分濃度:40質量%)・・・0.4質量部
(5)25%アンモニア水・・・1.0質量部
(6)水・・・49.6質量部
【0058】
(バインダ液Dの調製)
次の割合で配合した、バインダ液Dを調製した。
(1)アクリルバインダ樹脂(ガラス転移温度:-40℃、固形分濃度:50質量%)・・・10質量部
(2)増粘剤(固形分濃度:1.5質量%)・・・30質量部
(3)消泡剤(固形分濃度:40質量%)・・・0.4質量部
(4)粒子(ウレタン樹脂で構成、中実形状、粒子径:10μm、密度:1.15g/cm)・・・5.0質量部
(5)25%アンモニア水・・・1.0質量部
(6)水・・・53.6質量部
【0059】
(バインダ液Eの調製)
次の割合で配合した、バインダ液Eを調製した。
(1)アクリルバインダ樹脂(ガラス転移温度:-40℃、固形分濃度:50質量%)・・・10質量部
(2)増粘剤(固形分濃度:1.5質量%)・・・30質量部
(3)消泡剤(固形分濃度:40質量%)・・・0.4質量部
(4)粒子(ポリアクリロニトリル樹脂で構成、表面をタルクで被覆、中空形状、粒子径:10~30μm、密度:0.23g/cm)・・・0.25質量部
(5)25%アンモニア水・・・1.0質量部
(6)水・・・58.35質量部
【0060】
(バインダ液Fの調製)
次の割合で配合した、バインダ液Fを調製した。
(1)アクリルバインダ樹脂(ガラス転移温度:-40℃、固形分濃度:50質量%)・・・10質量部
(2)増粘剤(固形分濃度:1.5質量%)・・・30質量部
(3)消泡剤(固形分濃度:40質量%)・・・0.4質量部
(4)粒子(ポリアクリロニトリル樹脂で構成、表面をタルクで被覆、中空形状、粒子径:10~30μm、密度:0.23g/cm)・・・1.0質量部
(5)25%アンモニア水・・・1.0質量部
(6)水・・・57.6質量部
【0061】
(バインダ液Gの調製)
次の割合で配合した、バインダ液Gを調製した。
(1)アクリルバインダ樹脂(ガラス転移温度:-40℃、固形分濃度:50質量%)・・・10質量部
(2)増粘剤(固形分濃度:1.5質量%)・・・30質量部
(3)消泡剤(固形分濃度:40質量%)・・・0.4質量部
(4)粒子(ポリアクリロニトリル樹脂で構成、表面をタルクで被覆、中空形状、粒子径:10~30μm、密度:0.23g/cm)・・・1.4質量部
(5)25%アンモニア水・・・1.0質量部
(6)水・・・57.2質量部
【0062】
(バインダ液Hの調製)
次の割合で配合した、バインダ液Hを調製した。
(1)アクリルバインダ樹脂(ガラス転移温度:-40℃、固形分濃度:50質量%)・・・10質量部
(2)増粘剤(固形分濃度:1.5質量%)・・・30質量部
(3)消泡剤(固形分濃度:40質量%)・・・0.4質量部
(4)粒子(ポリアクリロニトリル樹脂で構成、表面をタルクで被覆、中空形状、粒子径:10~30μm、密度:0.23g/cm)・・・4.0質量部
(5)25%アンモニア水・・・1.0質量部
(6)水・・・54.6質量部
【0063】
(バインダ液Iの調製)
次の割合で配合した、バインダ液Iを調製した。
(1)アクリルバインダ樹脂(ガラス転移温度:-40℃、固形分濃度:50質量%)・・・10質量部
(2)増粘剤(固形分濃度:1.5質量%)・・・30質量部
(3)増粘剤(固形分濃度:28質量%)・・・5.0質量部
(4)消泡剤(固形分濃度:40質量%)・・・0.4質量部
(5)粒子(ポリアクリロニトリル樹脂で構成、表面をタルクで被覆、中空形状、粒子径:10~30μm、密度:0.23g/cm)・・・5.0質量部
(6)25%アンモニア水・・・2.5質量部
(7)水・・・47.1質量部
【0064】
(バインダ液Jの調製)
次の割合で配合した、バインダ液Jを調製した。
(1)アクリルバインダ樹脂(ガラス転移温度:-40℃、固形分濃度:50質量%)・・・5質量部
(2)増粘剤(固形分濃度:1.5質量%)・・・30質量部
(3)消泡剤(固形分濃度:40質量%)・・・0.4質量部
(4)粒子(ポリアクリロニトリル樹脂で構成、表面を炭酸カルシウムで被覆、中空形状、粒子径:60~70μm、密度:0.12g/cm)・・・1.0質量部
(5)25%アンモニア水・・・1.0質量部
(6)水・・・62.6質量部
【0065】
(バインダ液Kの調製)
次の割合で配合した、バインダ液Kを調製した。
(1)アクリルバインダ樹脂(ガラス転移温度:-40℃、固形分濃度:50質量%)・・・10質量部
(2)増粘剤(固形分濃度:1.5質量%)・・・30質量部
(3)増粘剤(固形分濃度:28質量%)・・・0.33質量部
(4)消泡剤(固形分濃度:40質量%)・・・0.4質量部
(5)粒子(ポリアクリロニトリル樹脂で構成、表面を炭酸カルシウムで被覆、中空形状、粒子径:60~70μm、密度:0.12g/cm)・・・2.0質量部
(6)25%アンモニア水・・・1.2質量部
(7)水・・・56.07質量部
【0066】
(バインダ液Lの調製)
次の割合で配合した、バインダ液Lを調製した。
(1)アクリルバインダ樹脂(ガラス転移温度:-40℃、固形分濃度:50質量%)・・・10質量部
(2)増粘剤(固形分濃度:1.5質量%)・・・30質量部
(3)消泡剤(固形分濃度:40質量%)・・・0.4質量部
(4)粒子(ポリアクリロニトリル樹脂で構成、表面を炭酸カルシウムで被覆、中空形状、粒子径:90~120μm、密度:0.08g/cm)・・・4.0質量部
(5)25%アンモニア水・・・1.0質量部
(6)水・・・54.6質量部
【0067】
(実施例1)
繊維シートに泡立てた前記バインダ液Aを、一方の主面上に全面塗布し、浸透させた。その後、温度160℃のキャンドライヤーで乾燥し、バインダ液Aを付与したバインダ接着繊維シート(目付:182g/m、厚さ:1.7mm)を調製した。
次に、バインダ液Aを付与したバインダ接着繊維シートにバインダ液Bを、バインダ液Aを塗布した主面と同じ主面から全面塗布し、浸透させた。その後、温度140℃のドライヤーで乾燥し、バインダ液A、Bを付与したバインダ接着繊維シート(目付:198g/m、厚さ:1.7mm)を調製した。
最後に、バインダ液A、Bを付与したバインダ繊維シートにバインダ液Cを、バインダ液A、Bを塗布した主面と同じ主面から全面塗布し、浸透させた。その後、温度140℃のドライヤーで乾燥し、内装用表面材を調製した。
【0068】
(実施例2)
バインダ液Bの代わりに、バインダ液Dを用いてバインダ液A、Dを付与したバインダ接着繊維シート(目付:201g/m、厚さ:1.7mm)を調製したことを除いては、実施例1と同様にして、内装用表面材を調製した。
【0069】
(実施例3)
バインダ液Bの代わりに、バインダ液Eを用いてバインダ液A、Eを付与したバインダ接着繊維シート(目付:192g/m、厚さ:1.7mm)を調製したことを除いては、実施例1と同様にして、内装用表面材を調製した。
【0070】
(実施例4)
バインダ液Bの代わりに、バインダ液Fを用いてバインダ液A、Fを付与したバインダ接着繊維シート(目付:192g/m、厚さ:1.7mm)を調製したことを除いては、実施例1と同様にして、内装用表面材を調製した。
【0071】
(実施例5)
バインダ液Bの代わりに、バインダ液Gを用いてバインダ液A、Gを付与したバインダ接着繊維シート(目付:194g/m、厚さ:1.7mm)を調製したことを除いては、実施例1と同様にして、内装用表面材を調製した。
【0072】
(実施例6)
バインダ液Bの代わりに、バインダ液Hを用いてバインダ液A、Hを付与したバインダ接着繊維シート(目付:194g/m、厚さ:1.7mm)を調製したことを除いては、実施例1と同様にして、内装用表面材を調製した。
【0073】
(実施例7)
実施例6とバインダ液Hの塗布量が異なる、バインダ接着繊維シート(目付:199g/m、厚さ:1.7mm)を調製したことを除いては、実施例6と同様にして、内装用表面材を調製した。
【0074】
(実施例8)
バインダ液Bの代わりに、バインダ液Iを用いてバインダ液A、Iを付与したバインダ接着繊維シート(目付:203g/m、厚さ:1.7mm)を調製したことを除いては、実施例1と同様にして、内装用表面材を調製した。
【0075】
(実施例9)
バインダ液Bの代わりに、バインダ液Jを用いてバインダ液A、Jを付与したバインダ接着繊維シート(目付:188g/m、厚さ:1.7mm)を調製したことを除いては、実施例1と同様にして、内装用表面材を調製した。
【0076】
(実施例10)
バインダ液Bの代わりに、バインダ液Kを用いてバインダ液A、Kを付与したバインダ接着繊維シート(目付:192g/m、厚さ:1.7mm)を調製したことを除いては、実施例1と同様にして、内装用表面材を調製した。
【0077】
(実施例11)
バインダ液Bの代わりに、バインダ液Lを用いてバインダ液A、Lを付与したバインダ接着繊維シート(目付:194g/m、厚さ:1.7mm)を調製したことを除いては、実施例1と同様にして、内装用表面材を調製した。
【0078】
(比較例1)
繊維シートに泡立てた前記バインダ液Aを、一方の主面上に全面塗布し、浸透させた。その後、温度160℃のキャンドライヤーで乾燥し、バインダ液Aを付与したバインダ接着繊維シート(目付:182g/m、厚さ:1.7mm)を調製した。
最後に、バインダ液Aを付与したバインダ繊維シートに前記バインダ液Cを、バインダ液Aを塗布した主面と同じ主面から全面塗布し、浸透させた。その後、温度140℃のドライヤーで乾燥し、内装用表面材を調製した。
【0079】
(比較例2)
バインダ液Aを付与したバインダ繊維シートに塗布するバインダ液Cの塗布量が異なることを除いては、比較例1と同様にして内装用表面材を調製した。
【0080】
(比較例3)
バインダ液A、Fを付与したバインダ接着繊維シートに、バインダ液Cを塗布しなかったことを除いては、実施例4と同様にして内装用表面材を調製した。
【0081】
(比較例4)
バインダ液A、Gを付与したバインダ接着繊維シートに、バインダ液Cを塗布しなかったことを除いては、実施例5と同様にして内装用表面材を調製した。
【0082】
(比較例5)
バインダ液A、Hを付与したバインダ接着繊維シートに、バインダ液Cを塗布しなかったことを除いては、実施例7と同様にして内装用表面材を調製した。
【0083】
(比較例6)
バインダ液A、Kを付与したバインダ接着繊維シートに、バインダ液Cを塗布しなかったことを除いては、実施例10と同様にして内装用表面材を調製した。
【0084】
実施例、及び比較例でのバインダの付与量、バインダに含まれる粒子の構成樹脂について、表1、及び表2に示す(粒子組成樹脂のポリアクリロニトリルはPANと略称する)。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
また、以下の測定方法により、内装用表面材を評価した。
【0088】
(たて方向の20%モジュラス強度の測定)
前述の方法で、たて方向の20%モジュラス強度を測定した。
【0089】
(耐摩耗性測定)
JIS L 1085(1998)6.8.2に記載のテーバ形法に準じ、摩耗輪CS-10を装着し、片輪500g荷重で100回転することで内装用表面材のバインダを有する主面上を摩耗させ、摩耗させた内装用表面材の主面上を観察し、複数本の短繊維が糸状につながった糸引きの程度を評価した。評価基準を以下に示す。
[耐摩耗性の評価基準]
5:糸引きが全く認められないもの
4:1cm以下の糸引きが部分的に認められるもの
3:1cm以下の糸引きが全体的に認められる、もしくは、1cm以上の糸引きが部分的に認められるもの
2:1cm以上の糸引きが全体的に認められる、もしくは、糸引きが摩耗輪で摩耗させた跡において部分的に途切れているが円状につながっているように見えるもの
1:糸引きが摩耗輪で摩耗させた跡において円状につながっているもの
【0090】
実施例及び比較例の内装用表面材の物性及び評価結果を、表3及び4に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
バインダに粒子を含み、かつ、{たて方向の20%モジュラス強度(N/3cm)/粒子とバインダ樹脂を含むバインダ量(g/m)}の値が2.0以下である構成を有する実施例1、2、4~7、9~11と、前記構成を有しない比較例1を比較したところ、内装用表面材が含むバインダ量が比較例1よりも実施例1、2、4~7、9~11の方が多いにもかかわらず、たて方向の20%モジュラス強度が低く、小さい力で内装用表面材を伸ばすことができることから、成形加工性が優れることがわかった。さらに、バインダに粒子を含み、かつ、{たて方向の20%モジュラス強度(N/3cm)/粒子とバインダ樹脂を含むバインダ量(g/m)}の値が2.0以下である構成を有する実施例3、8と、前記構成を有しない比較例2を比較したところ、内装用表面材が含むバインダ量が比較例2よりも実施例3、8の方が多いにもかかわらず、たて方向の20%モジュラス強度が低く、成形加工性が優れることがわかった。
【0094】
さらに、実施例と比較例3~6の比較から、バインダ量が20g/m以上であると、内装用表面材の耐摩耗性が優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の内装用表面材は、例えば、天井材、ドアトリム、ダッシュアウター、ピラーガーニッシュなどの車両用内装材、パーテーション、壁紙などの用途に、好適に使用することができる。