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特許7454979コアセルベートの形成に優れるカチオン変性ダイユータンガム
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  • 特許-コアセルベートの形成に優れるカチオン変性ダイユータンガム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】コアセルベートの形成に優れるカチオン変性ダイユータンガム
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/00 20060101AFI20240315BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240315BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20240315BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
C08B37/00 K
A61K8/73
A61Q5/02
A61Q5/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020054148
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021155479
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】501360821
【氏名又は名称】MP五協フード&ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】馬場 陽平
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/193674(WO,A1)
【文献】AIP CONFERENCE PROCEEDINGS,2018年,Vol.2030,pp.020218-1-020218-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
A61K
A61Q
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイユータンガムに含まれる水酸基の一部が、化学式(1)で表される第4級窒素含有基で置換されたカチオン変性ダイユータンガムであって、
前記第4級窒素含有基由来のカチオン電荷量が0.9~3.0meq/gである、カチオン変性ダイユータンガム。
【化1】
(式中R及びRは炭素数1~3のアルキル基であり、R及びRは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子であり、Rは炭素数1~24のアルキル基であり、Xは1価の陰イオンを示す)
【請求項2】
及びRが水素原子である、請求項1に記載のカチオン変性ダイユータンガム。
【請求項3】
が炭素数1~3のアルキル基である、請求項1又は2に記載のカチオン変性ダイユータンガム。
【請求項4】
、R及びRがメチル基である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカチオン変性ダイユータンガム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカチオン変性ダイユータンガムを含有する、コアセルベート形成剤。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカチオン変性ダイユータンガムを含有する、コンディショニング剤。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカチオン変性ダイユータンガムを含有する、化粧料組成物。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカチオン変性ダイユータンガムを含有する、毛髪用化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多糖類に関し、より具体的には、カチオン変性されたダイユータンガムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多糖類は、食品、化粧品、及び工業用品などの各種製品の品質を向上させるために使用されている。かかる多糖類としては、例えば、キサンタンガム、タマリンドガム、及びフェヌグリークガムなどの天然の多糖類が挙げられる。
【0003】
また、特許文献1~4では、多糖類の機能を向上させるために、水酸基の一部が第4級窒素含有基で置換されることによってカチオン変性された多糖類が提案されている。このようにカチオン変性された多糖類は、例えば、コアセルベートの形成のために、シャンプーなどの毛髪用化粧料組成物に含有されている。これによって、毛髪を洗浄する際のきしみが抑制されるなどのコンディショニング性が向上する。
【0004】
この他、シャンプーのような液状組成物は、シュードプラスチック性を有していることが好ましい。より具体的には、シャンプーなどの液状組成物は、通常、ボトルなどの容器に充填されており、使用時には、手押しのポンプなどにより押し出されて用いられる。このとき、シャンプーがシュードプラスチック性に優れていると、前記ポンプにより加えられるせん断力によってシャンプーの粘度が低下するため、前記容器から取り出し易いものとなる。また、手のひらなどに取り出されたシャンプーは、せん断力が加えられない限りは粘度が高く維持された状態となるため、手のひらなどから不用意にこぼれ落ちにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭47-20635号公報
【文献】特許第4716110号明細書
【文献】特開2007-63446号公報
【文献】特開2012-1676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の多糖類では、コアセルベートの形成及び前記液状組成物に含有された場合のシュードプラスチック性が不十分になることがある。
よって、前記液状組成物のこれらの機能を向上させ得る多糖類の提供は、求められ続けている。
【0007】
かかる事情の下、本発明者が鋭意検討したところ、ダイユータンガムと呼ばれる多糖類がカチオン変性されることによって得られるカチオン変性ダイユータンガムが、特定のカチオン電荷量に調節された場合、コアセルベートを形成し易くなり且つ前記液状組成物のシュードプラスチック性を向上させることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、コアセルベートの形成及びシュードプラスチック性の向上に優れた性質を有するカチオン変性ダイユータンガムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るカチオン変性ダイユータンガムは、
ダイユータンガムに含まれる水酸基の一部が、化学式(1)で表される第4級窒素含有基で置換されたカチオン変性ダイユータンガムであって、
前記第4級窒素含有基由来のカチオン電荷量が0.9~3.0meq/gである。
【化1】
(式中R及びRは炭素数1~3のアルキル基であり、R及びRは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子であり、Rは炭素数1~24のアルキル基であり、Xは1価の陰イオンを示す)
【0010】
斯かる構成によれば、カチオン電荷量が0.9~3.0meq/gであることによって、コアセルベートの形成及びシュードプラスチック性の向上に優れたものとなる。
【0011】
また、本発明に係るカチオン変性ダイユータンガムは、好ましくは、
及びRが水素原子である。
【0012】
斯かる構成によれば、R及びRが水素原子であることによって、コアセルベートの形成及びシュードプラスチック性の向上により優れたものとなる。
【0013】
また、本発明に係るカチオン変性ダイユータンガムは、好ましくは、
が炭素数1~3のアルキル基である。
【0014】
斯かる構成によれば、Rが炭素数1~3のアルキル基であることによって、コアセルベートの形成及びシュードプラスチック性の向上にさらに優れたものとなる。
【0015】
また、本発明に係るカチオン変性ダイユータンガムは、好ましくは、
、R及びRがメチル基である。
【0016】
斯かる構成によれば、R、R及びRがメチル基であることによって、コアセルベートの形成及びシュードプラスチック性の向上により一層優れたものとなる。
【0017】
また、本発明は、上記カチオン変性ダイユータンガムを含有するコアセルベート形成剤である。
【0018】
斯かる構成によれば、上記カチオン変性ダイユータンガムを含有することによって、コアセルベートを形成し易くなるものとなる。
【0019】
また、本発明は、上記カチオン変性ダイユータンガムを含有するコンディショニング剤である。
【0020】
斯かる構成によれば、上記カチオン変性ダイユータンガムを含有することによって、コアセルベートを形成し易くなり、コンディショニング性に優れたものとなる。
【0021】
また、本発明は、上記カチオン変性ダイユータンガムを含有する化粧料組成物である。
【0022】
斯かる構成によれば、上記カチオン変性ダイユータンガムを含有することによって、コアセルベートを形成し易くなり且つシュードプラスチック性に優れた化粧料組成物となる。
【0023】
また、本発明は、上記カチオン変性ダイユータンガムを含有する毛髪用化粧料組成物である。
【0024】
斯かる構成によれば、上記カチオン変性ダイユータンガムを含有することによって、コアセルベートを形成し易くなるため、例えば、毛髪のきしみを抑制するのに優れ、さらにシュードプラスチック性に優れるため、手のひらなどに取り出された場合に不用意にはこぼれ落ちにくくボトルなどの容器から取り出し易い毛髪用化粧料組成物となる。
【発明の効果】
【0025】
以上の通り、本発明によれば、コアセルベートの形成及びシュードプラスチック性の向上に優れた性質を有するカチオン変性ダイユータンガムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施例2のカチオン変性ダイユータンガム(実線)及び比較例3の未変性のダイユータンガム(破線)それぞれのIRスペクトルを比較するものである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、一実施形態に係るカチオン変性ダイユータンガムについて説明する。
【0028】
本実施形態のカチオン変性ダイユータンガムは、コアセルベートの形成及びシュードプラスチック性の向上のために、食品、化粧品、及び工業用品などの製品に含有され得る。本実施形態では、前記カチオン変性ダイユータンガムが、化粧料組成物、とりわけ、シャンプーなどの毛髪用化粧料組成物に含有された場合を例示して説明する。前記カチオン変性ダイユータンガムが毛髪用化粧料組成物に含有されることによって、該毛髪用化粧料組成物がコアセルベートを形成し易くなるため、毛髪のきしみを抑制するなどのコンディショニング性に優れたものとなる。言い換えれば、前記カチオン変性ダイユータンガムは、毛髪を良好な状態に維持するためのコアセルベート形成剤として機能する。また、前記カチオン変性ダイユータンガムが毛髪用化粧料組成物に含有されることによって、シュードプラスチック性に優れたものとなるため、前記毛髪用化粧料組成物がボトルなどの容器から取り出し易いものとなり且つ手のひらなどに取り出された場合に不用意にはこぼれ落ちにくくなる。
【0029】
前記化粧料組成物は、水及び油性成分を含んでおり、これらに前記カチオン変性ダイユータンガムを溶解させた状態で含有している。
また、前記化粧料組成物は、乳化されていてもよく、すなわち、乳化組成物であってもよい。この場合、前記乳化組成物は、水中油(O/W)型であってもよく、油中水(W/O)型であってもよい。
【0030】
前記カチオン変性ダイユータンガムは、シャンプーなどの前記化粧料組成物に含有される上で、その水溶液が特定の粘性を有していることが好ましい。
具体的には、前記カチオン変性ダイユータンガムの濃度1.0質量%水溶液の粘度(温度25℃)が、せん断速度1s-1で20000~50000mPa・sであり、せん断速度10s-1で2000~5000mPa・sであり、せん断速度100s-1で200~700mPa・sであることが好ましい。
また、前記1.0質量%水溶液のチキソトロピーインデックス値(TI値)は、50以上であることが好ましく、60以上であることがより好ましく、70以上であることがより好ましい。これによって、前記化粧料組成物が優れたシュードプラスチック性を有するものとなり得る。
なお、本実施形態では、前記粘度は、実施例に記載の方法で測定された値を意味するものとする。また、前記TI値は、せん断速度1s-1での粘度値をせん断速度100s-1での粘度値で割った値を意味するものとする。
【0031】
また、前記カチオン変性ダイユータンガムの濃度0.5質量%水溶液の透過率(600nm)は、75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。これによって、前記化粧料組成物の着色が抑制され得る。
なお、前記透過率は、実施例に記載の方法で測定された値を意味するものとする。
【0032】
本実施形態に係るカチオン変性ダイユータンガムは、ダイユータンガムに含まれる水酸基の一部が、化学式(1)で表される第4級窒素含有基で置換されたカチオン変性ダイユータンガムであり、これによりカチオン電荷を有するものとなっている。
【化2】
【0033】
前記ダイユータンガムは、アルカリゲネス属が醗酵過程で菌体外に蓄積する多糖類である。前記ダイユータンガムの繰り返し構造は、グルコース、グルクロン酸、グルコース、ラムノースで構成される主鎖と、ラムノース2糖で構成される側鎖とを有している。すなわち、前記ダイユータンガムは、これら6糖の繰り返し構造を有する陰イオン性多糖類である。前記ダイユータンガムとしては、市販されているものが使用可能であり、市販品としては、例えば、KELCO-VIS DG(CP Kelco U.S., Inc.製)などが挙げられる。
【0034】
上記化学式(1)において、R及びRは炭素数1~3のアルキル基を示す。R及びRとしては、メチル基、エチル基、及びプロピル基が挙げられ、これらのなかでもメチル基が好ましい。また、R及びRは、同種の官能基であることが好ましい。なお、プロピル基は、n-プロピル基であっても、iso-プロピル基であってもよい。
【0035】
また、Rは炭素数1~24のアルキル基を示す。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基などが挙げられ、これらのなかでもメチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。また、Rは、R及びRと同種の官能基であることが好ましい。なお、これらのアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく環状であってもよい。
【0036】
また、R及びRは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を示す。アルキル基としてのR及びRとしては、メチル基、エチル基、及びプロピル基が挙げられる。R及びRとしては、メチル基又は水素原子が好ましく、水素原子がより好ましい。なお、プロピル基は、n-プロピル基であっても、iso-プロピル基であってもよい。
【0037】
また、Xは1価の陰イオンを示す。Xとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオン、硫酸メチルイオン、硫酸エチルイオンなどが挙げられ、これらのなかでもハロゲン化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。
【0038】
前記カチオン変性ダイユータンガムは、前記ダイユータンガムに、対応する構造を有するグリシジルトリアルキルアンモニウム塩、又は、3-ハロゲノ-2-ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩などを反応させることにより合成される。この場合、反応は適当な溶媒、好適には含水アルコール中において、アルカリ存在下で実施される。このような第4級窒素含有基の導入は、従来公知の方法に従って行うことができ、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0039】
前記カチオン変性ダイユータンガムのカチオン電荷量は、0.9~3.0meq/gであることが重要であり、1.1~2.5meq/gであることがより好ましく、1.1~2.2meq/gであることがさらに好ましい。前記カチオン電荷量が上記数値範囲であることによって、前記化粧料組成物がコンディショニング性及びシュードプラスチック性に優れたものとなる。
【0040】
前記カチオン電荷量は、前記カチオン変性ダイユータンガム1gあたりに含まれる前記第4級窒素含有基由来の窒素分の当量数を意味するものとする。言い換えれば、前記カチオン電荷量は、下記数式(1)により算出される値を意味するものとする。また、数式(1)における第4級窒素含有基由来の窒素分は、ケルダール法(旧化粧品原料基準、一般試験方法、窒素定量法、第2法)により測定される値を意味するものとする。
なお、前記ダイユータンガムには、通常、タンパク質由来の窒素分が含まれるため、前記カチオン変性ダイユータンガムの窒素分の測定に際しては、該タンパク質由来の窒素分を除く必要がある。すなわち、ケルダール法により測定される前記カチオン変性ダイユータンガムにおける前記第4級窒素含有基由来の窒素分は、前記カチオン変性ダイユータンガムの窒素分の測定値から、カチオン変性前の前記ダイユータンガムの窒素分の測定値を差し引いた値が採用される。
これについて、下記表1に示される実施例1及び比較例3の測定例によって具体的に説明する。前記カチオン変性ダイユータンガム(実施例1)の窒素分の測定値が2.43%であり、カチオン変性前の前記ダイユータンガム(比較例3)の窒素分の測定値が0.88%であるため、これらの測定値を下記数式(1)に代入すると、実施例2のカチオン変性ダイユータンガムのカチオン電荷量は、1.107(meq/g)と算出されることとなる。
【数1】
【0041】
また、前記カチオン電荷量の相違の他、本実施形態の前記カチオン変性ダイユータンガムは、前記ダイユータンガムとは異なるIRスペクトルを示す(図1)。具体的には、前記カチオン変性ダイユータンガムのIRスペクトルでは、前記ダイユータンガムのIRスペクトルと比較して、一部のピークにおいてピーク強度(ピーク高さ)の低下が認められる。特に、1730cm-1付近の第1のピークP1に、著しいピーク強度の低下が認められる。一方、第1のピークP1と隣り合う1600cm-1付近の第2のピークP2には、大きなピーク強度の低下は認められない。
すなわち、前記カチオン変性ダイユータンガムは、IRスペクトルにおける第2のピークP2のピーク強度に対する第1のピークP1のピーク強度の比が、0.1~0.4であり、比較的小さくなっている。これに対して、前記ダイユータンガムは、IRスペクトルにおける第2のピークP2のピーク強度に対する第1のピークP1のピーク強度の比が、0.5~1.0である。
なお、IRスペクトルは、実施例に記載の方法で測定されるものとする。また、前記ピーク強度の比は、実施例に記載の方法で算出される値を意味するものとする。
【0042】
前記化粧料組成物の剤型は、特に限定されず、任意のものが採用可能である。具体的な剤型としては、化粧水、乳液、美容液、ジェル、クリーム、洗顔料、オイルインローション、サンスクリーン、シャンプー、トリートメント、ボディソープなどが挙げられる。
【0043】
前記化粧料組成物の全体質量に対する前記カチオン変性ダイユータンガムの含有量は、通常0.05~5質量%であり、0.1~3質量%であることがより好ましい。これによって、前記化粧料組成物は、使用時のぬるつき感やべたつき感が抑制され、使用感が良好なものとなる。
【0044】
前記化粧料組成物に含有され得る前記油性成分としては、毛髪、皮膚、爪などになじみ易い油性成分であることが好ましい。前記油性成分としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、炭化水素油、及びシリコーン油が挙げられる。
【0045】
前記脂肪酸としては、炭素数8~22の脂肪酸であることが好ましく、炭素数12~18の脂肪酸であることがより好ましく、炭素数16~18の脂肪酸であることがさらに好ましい。このような炭素数の前記脂肪酸としては、カプリル酸(炭素数8)、ウンデシレン酸(炭素数11)、カプリン酸(炭素数10)、ラウリン酸(炭素数12)、ミリスチン酸(炭素数14)、パルミチン酸(炭素数16)、ステアリン酸(炭素数18)、リノール酸(炭素数18)、リノレン酸(炭素数18)、イソステアリン酸(炭素数18)、オレイン酸(炭素数18)、エイコサペンタエン酸(炭素数20)、ベヘニン酸(炭素数22)、ドコサヘキサエン酸(炭素数22)などが挙げられる。
【0046】
前記脂肪酸エステルとしては、炭素数12~54の脂肪酸エステルであることが好ましく、炭素数14~50の脂肪酸エステルであることがより好ましく、炭素数16~46の脂肪酸エステルであることがさらに好ましい。このような炭素数の前記脂肪酸エステルとしては、オクタン酸セチル(炭素数24)、ラウリン酸エチル(炭素数14)、ラウリン酸ヘキシル(炭素数18)、ミリスチン酸イソプロピル(炭素数17)、ミリスチン酸オクチルドデシル(炭素数34)、ミリスチン酸ミリスチル(炭素数28)、ミリスチン酸-2-ヘキシルデシル(炭素数30)、トリミリスチン酸グリセリン(炭素数45)、パルミチン酸イソプロピル(炭素数19)、パルミチン酸2-エチルヘキシル(炭素数24)、パルミチン酸-2-ヘプチルウンデシル(炭素数36)、パルミチン酸-2-ヘキシルデシル(炭素数34)、ステアリン酸ブチル(炭素数22)、ステアリン酸イソセチル(炭素数34)、イソステアリン酸イソセチル(炭素数34)、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル(炭素数45)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(炭素数54)、オレイン酸デシル(炭素数28)、乳酸セチル(炭素数19)、乳酸ミリスチル(炭素数17)、2-エチルヘキサン酸セチル(炭素数24)、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール(炭素数22)、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン(炭素数30)、トリ-2-エチルヘキシル酸グリセリン(炭素数27)、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタエリスリトール(炭素数37)、セチル-2-エチルヘキサノエート(炭素数24)、アジピン酸ジイソブチル(炭素数14)、アジピン酸-2-ヘプチルウンデシル(炭素数42)、アジピン酸-2-ヘキシルデシル(炭素数38)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(炭素数25)、リンゴ酸ジイソステアリル(炭素数40)、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル(炭素数26)、セバシン酸ジイソプロピル(炭素数16)、コハク酸-2-エチルヘキシル(炭素数20)、クエン酸トリエチル(炭素数12)、などが挙げられる。
【0047】
前記脂肪酸及び/又は前記脂肪酸エステルを複数含有する前記油性成分として、天然の油性成分が使用可能である。前記天然の油性成分としては、オリーブ油、ホホバ油、ヒマシ油、ミンク油、トール油、ヤシ油、パーム油などが挙げられる。
【0048】
前記炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、α-オレフィンオリゴマー、ワセリンなどが挙げられる。
【0049】
前記シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、トリストリメチルシロキシメチルシラン、カプリリルメチコン、フェニルトリメチコン、テトラキストリメチルシロキシシラン、メチルフェニルポリシロキサン,メチルヘキシルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等の低粘度から高粘度の直鎖或いは分岐状のオルガノポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン等の環状オルガノポリシロキサン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、ピロリドン変性オルガノポリシロキサン、ピロリドンカルボン酸変性オルガノポリシロキサン、高重合度のガム状ジメチルポリシロキサン、ガム状アミノ変性オルガノポリシロキサン、ガム状のジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等のシリコーンゴム、及びシリコーンガムやゴムの環状オルガノポリシロキサン溶液、ステアロキシリコーンなどの高級アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、長鎖アルキル変性シリコーン、アミノ酸変性シリコーン、フッ素変性シリコーンなどが挙げられる。
【0050】
前記油性成分の含有量は、前記化粧料組成物の全体質量に対して、通常0.1~90質量%であり、5~40質量%であることが好ましい。また、前記水の含有量は、前記化粧料組成物の全体質量に対して、通常10~99質量%であり、50~95質量%であることが好ましい。
【0051】
前記化粧料組成物は、上記の他、界面活性剤、分散媒としての前記水又は油性成分に分散される固体粒子などを含有していてもよい。
【0052】
前記界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤が前記カチオン変性ダイユータンガムと相溶性を示すという観点から、前記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0053】
前記カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムなどが挙げられる。
【0054】
前記アニオン性界面活性剤としては、アルキル(炭素数8~24)硫酸塩、アルキル(炭素数8~24)エーテル硫酸塩、アルキル(炭素数8~24)ベンゼンスルホン酸塩、アルキル(炭素数8~24)リン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数8~24)エーテルリン酸塩、アルキル(炭素数8~24)スルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数8~24)エーテルスルホコハク酸塩、アシル(炭素数8~24)化アラニン塩、アシル(炭素数8~24)化N-メチル-β-アラニン塩、アシル(炭素数8~24)化グルタミン酸塩、アシル(炭素数8~24)化イセチオン酸塩、アシル(炭素数8~24)化サルコシン酸塩、アシル(炭素数8~24)化タウリン塩、アシル(炭素数8~24)化メチルタウリン塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、エーテルカルボン酸塩、ポリオキシアルキレン脂肪酸モノエタノールアミド硫酸塩、長鎖(炭素数8~24)カルボン酸塩などが挙げられる。
【0055】
前記ノニオン性界面活性剤としては、アルカノールアミド、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、ソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、テトラポリオキシアルキレンエチレンジアミン縮合物類、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油誘導体、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油誘導体、アルキルポリグリコシド、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0056】
前記両性界面活性剤としては、アルキル(炭素数8~24)アミドプロピルベタイン、アルキル(炭素数8~24)カルボキシベタイン、アルキル(炭素数8~24)スルホベタイン、アルキル(炭素数8~24)ヒドロキシスルホベタイン、アルキル(炭素数8~24)アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン、アルキル(炭素数8~24)ヒドロキシホスホベタイン、アルキル(炭素数8~24)アミノカルボン酸塩、アルキル(炭素数8~24)アンホNa、アルキル(炭素数8~24)アミンオキシド、第3級窒素及び第4級窒素を含むアルキル(炭素数8~24)リン酸エステルなどが挙げられる。
【0057】
前記界面活性剤の含有量は、前記化粧料組成物の全体質量に対して、通常0.01~50質量%であり、0.1~30質量%であることが好ましい。
【0058】
前記固体粒子は、有機系固体粒子であってもよく、無機系固体粒子であってもよい。
【0059】
前記有機系固体粒子としては、例えば、固形パラフィン、セレシンなどの固形脂、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリアクリル酸・アクリル酸エステル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ビニル樹脂、テトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、セルロース、シルク、ナイロン、ポリメチルシルセスキオキサンなどのポリマー粒子が挙げられる。
【0060】
前記無機系固体粒子としては、例えば、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、シリカ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ゼオライト、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、及びチッ化ホウ素などの粒子が挙げられる。
また、前記無機系固形成分が紫外線散乱剤である場合、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタンなどが挙げられる。
また、前記無機系固形成分が顔料である場合、酸化鉄、チタン酸鉄などの無機赤色系顔料、γ-酸化鉄などの無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土などの無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラックなどの無機黒色系顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレットなどの無機紫色系顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルトなどの無機緑色系顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、雲母チタンや顔料被覆雲母チタン、酸化チタンなどの白色顔料、合成金雲母などのパール顔料などが挙げられる。
【0061】
前記固体粒子の含有量は、前記化粧料組成物の全体質量に対して、通常0.1~50質量%であり、0.5~30質量%であることが好ましい。
【0062】
さらに、前記化粧料組成物は、その他の添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、グリセリンや1,3-ブチレングリコールなどの保湿剤などとして機能する多価アルコール、キサンタンガムなどの増粘剤、トコフェロールやBHTなどの酸化防止剤、ベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体やメトキシ桂皮酸誘導体などの紫外線吸収剤、エデト酸塩などのキレート剤、アルギニンやグルタミン酸などのアミノ酸類、pH調整剤、殺菌剤、防腐剤、ビタミン類、抗炎症剤、色素、香料、起泡増進剤などが挙げられる。
【0063】
以上のように、例示として一実施形態を示したが、本発明に係るカチオン変性ダイユータンガムは、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係るカチオン変性ダイユータンガムは、上記した作用効果により限定されるものでもない。本発明に係るカチオン変性ダイユータンガムの利用方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0064】
例えば、上記実施形態では、シャンプーなどの化粧品について示したが、これに限定されず、食品や工業用品であってもよい。
【実施例
【0065】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0066】
[実施例1]
水49.44gに水酸化ナトリウム1.55gを溶解し、イソプロパノール74.88gを均一に溶解した。次いで、ダイユータンガム(KELCO-VIS DG、CP Kelco U.S., Inc.製)30gを分散させながら加えた。グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(以下、GTAと呼ぶ場合がある。SY-GTA80、阪本薬品工業株式会社製)22.7gを加え、50~55℃で4時間反応させた。反応終了後、50質量%硫酸1.52gで中和した。反応物をろ過し、60%イソプロパノール131.52gで洗浄し、ろ過した。次いで、反応物を75%イソプロパノール101.76gで洗浄し、ろ過した。さらに、90%メタノール72gで洗浄することによって、余分なGTAを除去し、乾燥後、目的のカチオン変性ダイユータンガムを得た。得られたカチオン変性ダイユータンガムのカチオン電荷量は1.107meq/gであった。結果を表1に示した。
【0067】
[実施例2~4並びに比較例1~2]
カチオン変性に使用するGTA量を表1に示す値とした以外は、実施例1と同様にして、カチオン電荷量の異なるカチオン変性ダイユータンガムを製造した。
【0068】
[比較例3]
実施例1で用いたダイユータンガムを比較例3とし、その窒素分を測定した。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示したように、GTA量が増えるにしたがって、カチオン変性ダイユータンガムの窒素分及びカチオン電荷量が上昇した。すなわち、GTA量を変化させることによって、カチオン変性ダイユータンガムのカチオン電荷量を変化させることが可能であることがわかった。
【0071】
[カチオン変性ダイユータンガムのFT-IR測定]
フーリエ変換赤外分光光度計(FT/IR-4600、日本分光株式会社製、ATR法)を用い、実施例2及び比較例3(未変性のダイユータンガム)のIRスペクトルを測定した。これらを比較するスペクトルデータを図1に示した。
【0072】
図1に示したように、実施例2のカチオン変性ダイユータンガムは、比較例3の未変性のダイユータンガムに比べ、第1のピークP1としての1730cm-1付近のピーク強度が著しく低下した。また、1250cm-1付近のピーク及び1400cm-1付近のピークも同様にピーク強度の低下が認められた。一方で、第2のピークP2としての1600cm-1付近のピークの強度には大きな変化が認められなかった。
【0073】
また、IRスペクトルにおける第2のピークP2のピーク強度に対する第1のピークP1のピーク強度の比を算出した。
ピーク強度の比の測定は、IRスペクトルにおいて、第1のピークの高波数側端(1770cm-1付近)と、第2のピークの低波数側端(1500cm-1付近)とを通る直線をベースラインとし、該ベースラインから各ピークのピークトップまでの距離を比較した。
実施例2の当該ピーク強度の比は、0.26であった。これに対して、比較例3の当該ピーク強度の比は、0.73であった。
【0074】
[評価A:界面活性剤との相溶性の評価]
実施例1~4及び比較例1~2のカチオン変性ダイユータンガム、並びに、比較例3のダイユータンガムを用いて、多糖類濃度0.5質量%水溶液を調製し、これら多糖類のアニオン性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤との相溶性を評価した。
具体的には、200mLガラスビーカーに脱イオン水98.0gを入れ、汎用攪拌機(BL1200、新東科学株式会社製)にて撹拌しながら各多糖類2.0gを加えた。室温で1時間撹拌し、2.0質量%水溶液を得た。100mLガラスビーカーに2.0質量%水溶液12.5gと脱イオン水37.5gとを入れ、汎用攪拌機にて室温で10分間撹拌して均一に混合し、0.5質量%水溶液を得た。15mLコニカルチューブに各0.5質量%水溶液5gを入れ、さらにアニオン性界面活性剤(25%ラウレス硫酸ナトリウム水溶液、エマール20C、花王株式会社製)又はカチオン性界面活性剤(50%ベンザルコニウムクロリド水溶液、サニゾールB-50、花王株式会社製)0.1gを加えて上下に振とうし、混合した。得られた各水溶液の様子を観察し、下記判断基準にて界面活性剤との相溶性を評価した。この結果を表2に示した。
【0075】
(界面活性剤との相溶性の評価基準)
○:液に白濁、凝集、目視で分かる程度の明瞭な粘度低下のいずれも見られない。
×:液に白濁、凝集、目視で分かる程度の明瞭な粘度低下のいずれか一つ以上が見られる。
【0076】
【表2】
【0077】
表2に示したように、実施例1~4を含有する水溶液(A-1~A-4)及び比較例2を含有する水溶液(A-6)はカチオン性界面活性剤との相溶性が認められたが、アニオン性界面活性剤との相溶性は認められなかった。このことから、実施例1~4及び比較例2は、カチオン基が多く導入されたことによって、全体の電荷がアニオン性からカチオン性に変化したことが示唆された。
これに対して、比較例1及び3を含有する水溶液(A-5、A-7)は、カチオン性界面活性剤との相溶性が認められなかったが、アニオン性界面活性剤との相溶性は認められた。これらは全体の電荷としてはアニオン性の高分子であると推測される。
【0078】
[評価B:コアセルベート形成の評価及びこれに起因する毛髪の指通りについての評価]
実施例1~4及び比較例2のカチオン変性ダイユータンガム、並びに、比較例3のダイユータンガム及びカチオン化グアーガム(ラボールガムCG-M、DSP五協フード&ケミカル株式会社製)を用いて、表3に示すシャンプーを調製し、希釈した場合のコアセルベート形成の有無を評価した。
具体的には、100mLガラストールビーカーに表3に示す成分(1)を入れ、汎用撹拌機(BL1200、新東科学株式会社製)で撹拌しながら成分(2)を加えた。83℃の水浴にビーカーを浸漬させ、液温が80℃に到達後、10分間撹拌した。次いで成分(3)を加え、5分間撹拌した。さらに成分(4)、成分(5)を加え、5分間撹拌した。その後、計50gとなるよう成分(1)で質量補正し、シャンプーを調製した。得られたシャンプーを脱イオン水で7倍希釈して得られた各希釈液の様子を観察し、下記判断基準にてコアセルベート生成の有無を評価した。この結果を表3に示した。
【0079】
(コアセルベート形成の有無の評価基準)
○(コアセルベート形成している):液に白濁、凝集が見られる。
×(コアセルベート形成していない):液に白濁、凝集が見られない。
【0080】
さらに、得られたシャンプー1gを40℃の水道水で濡らした毛髪に塗布し、泡立てた後に40℃の水道水で泡を洗い流した。このときの毛髪の指通りの良さ、すなわち、コンディショニング性について、下記判断基準にて評価した。この結果を表3に示した。
【0081】
(指通りの良さの評価基準)
○:きしみが抑えられており、指通りが良い。
×:きしみを強く感じ、指通りが悪い。
【0082】
【表3】
【0083】
表3に示したように、実施例1~4を含有するシャンプー(B-1~B-4)では、コアセルベートの形成が認められた。これに対して、カチオン変性処理がなされて全体の電荷がカチオン性と推測される比較例2を含有するシャンプー(B-5)はコアセルベートの形成が認められなかった。また、未変性のダイユータンガムである比較例3を含有するシャンプー(B-6)も比較例2を含有するシャンプーと同様にコアセルベートの形成が認められなかった。
この結果から、コアセルベートを生成させるためには、単に全体の電荷がカチオン性になっているだけでなく、カチオン電荷量が0.9meq/g以上である必要があると推測された。
【0084】
なお、7倍希釈時にコアセルベートを形成するということはコンディショニング性を示すことを意味する。例えば、“カチオン性高分子と界面活性剤のコアセルベートに関する研究-シャンプー使用感へのコアセルベートの影響-(日本化粧品技術者会誌、2004年38巻3 号、211~219頁)”には、「7倍希釈のコアセルベートの生成量が少ないほど、すすぎ時の『指通りの悪さ』や『きしみ』を感じる傾向がある」と記載されている。この記載から、実施例1~4を含有するシャンプー(B-1~B-4)は、コンディショニング性に優れることが認められる。
また、実施例1~4を含有するシャンプー(B-1~B-4)は、実際に毛髪をすすいだ際にコンディショニング性を示すことが知られているカチオン化グアーガムを含有するシャンプー(B-7)と同様に、きしみが抑制され指通りが良好であった。
従って、実施例1~4を含有するシャンプー(B-1~B-4)は、コンディショニング性を十分に発揮したと言える。
【0085】
[評価C:粘度及びシュードプラスチック性の評価]
カチオン変性多糖類として、実施例1~4のカチオン変性ダイユータンガム、上記カチオン変性グアーガム、カチオン変性キサンタンガム(ラボールガムCX、DSP五協フード&ケミカル株式会社製)、カチオン変性ローカストビーンガム(常法にて作製、窒素分2.14%、カチオン電荷量1.007meq/g)を用い、多糖類濃度1.0質量%水溶液を調製し、また、カチオン変性タマリンドガム(常法にて作製、窒素分1.85%、カチオン電荷量1.293meq/g)の濃度2.0質量%水溶液を調製し、それぞれの粘度を測定した。
具体的には、200mLガラスビーカーに脱イオン水98.0gを入れ、汎用攪拌機(BL1200、新東科学株式会社製)にて撹拌しながら各多糖類2.0gを加えた。室温で1時間撹拌し、2.0質量%水溶液を得た。15mLコニカルチューブに2.0質量%水溶液5.0gと脱イオン水5.0gを入れ、激しく上下に振とうして均一に混合し、1.0質量%水溶液を得た。
得られた各水溶液をレオメータ(DHR-2、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)に供し、フローカーブ測定(温度:25℃、せん断速度:0.01~1000s-1)にて各せん断速度における粘度を測定した。せん断速度1s-1、10s-1、100s-1のときの粘度測定結果を表4に示した。さらに、上記した計算方法にてTI値を算出した。この結果を表4に示した。
【0086】
【表4】
【0087】
表4に示したように、実施例1~4を含有する水溶液(C-1~C-4)は、他のカチオン変性多糖類を含有する水溶液(C-5~C-8)よりも粘度、TI値(シュードプラスチック性)が顕著に高かった。この結果から、実施例1~4のカチオン変性ダイユータンガムは、他の多糖類とは明らかに異なる特有の粘性を有しており、また、シュードプラスチック性に優れることが分かった。
【0088】
[評価D:透明性の評価]
実施例1~4、比較例1~2のカチオン変性ダイユータンガムおよび比較例3のダイユータンガムを用いて多糖類濃度0.5質量%水溶液の透明性を評価した。200mLガラスビーカーに脱イオン水98.0gを入れ、汎用攪拌機(BL1200、新東科学(株)製)にて撹拌しながらカチオン変性ダイユータンガムまたはダイユータンガム2.0gを加えた。室温で1時間撹拌し、2.0質量%水溶液を得た。100mLガラスビーカーに2.0質量%水溶液12.5gと脱イオン水37.5gを入れ、汎用攪拌機にて室温で10分間撹拌して均一に混合し、0.5質量%水溶液を得た。
各0.5質量%水溶液を1cm長のディスポーザブルセルに入れ、分光光度計(U-2910、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて600nmの透過率を測定した。この透過率の結果を表5に示した。
【0089】
【表5】
【0090】
表5に示したように、実施例1~4を含有する水溶液(D-1~D-4)は、透過率が80%を超えており、比較例1~2を含有する水溶液(D-5~D-6)や比較例3を含有する水溶液(D-7)に比べて、透明性に非常に優れることが認められた。
【符号の説明】
【0091】
P1:第1のピーク、P2:第2のピーク
図1