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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】揺動機構および自動搬送ロボット
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/104 20060101AFI20240315BHJP
   B62D 65/18 20060101ALI20240315BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240315BHJP
【FI】
B62D55/104
B62D65/18 B
G05D1/43
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020063998
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160549
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】関原 弦
(72)【発明者】
【氏名】千葉 拓史
(72)【発明者】
【氏名】唐 力
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-115465(JP,A)
【文献】特開平07-251666(JP,A)
【文献】特開2019-059460(JP,A)
【文献】特開2019-059618(JP,A)
【文献】特開平03-121981(JP,A)
【文献】特開2001-260957(JP,A)
【文献】特開2009-046094(JP,A)
【文献】実開昭56-110058(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0178863(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 41/00-67/00
G05D 1/00- 1/87
B61B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車の下方に入り込み、前記台車を搬送する自動搬送ロボットに具備された揺動機構であって、前記揺動機構は、
揺動アーム支持軸と、
前記揺動アーム支持軸によって軸支され、両端が断面コの字形状を有する揺動アームと、
前記揺動アームの一端に配設された第1揺動転輪軸と、
前記揺動アームの前記一端の前記断面コの字形状の内側に挿設されて前記第1揺動転輪軸によって軸支され、前記第1揺動転輪軸を支軸として回転する第1転輪と、
前記揺動アームの他端に配設された第2揺動転輪軸と、
前記揺動アームの前記他端の前記断面コの字形状の内側に挿設されて前記第2揺動転輪軸によって軸支され、前記第2揺動転輪軸を支軸として回転する第2転輪と、
前記揺動アーム支持軸によって軸支され、前記揺動アーム支持軸を支軸として回転する第3転輪と、
前記揺動アーム支持軸によって軸支され、前記揺動アーム支持軸を支軸として回転する第4転輪と、を含み、
前記揺動アームは、前記第3転輪と前記第4転輪との間に配設され、
前記揺動アームは、前記揺動アーム支持軸を支軸として、前記揺動アームの前記一端と前記揺動アームの前記他端とが上下方向に揺動する揺動機構。
【請求項2】
前記揺動アームは、前記揺動アーム支持軸の近傍で直線状に設けられる請求項1に記載の揺動機構。
【請求項3】
前記第3転輪および前記第4転輪の各々の幅は、前記第1転輪および前記第2転輪の各々の幅よりも小さい請求項1または請求項2に記載の揺動機構。
【請求項4】
前記第3転輪および前記第4転輪の各々の外周面に、凹凸が設けられている請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の揺動機構。
【請求項5】
筐体と、
一対のクローラと、を含み、
前記一対のクローラの各々は、
第1プーリと、
第2プーリと、
前記第1プーリと前記第2プーリとの間に配設された揺動機構と、を含み、
前記揺動機構は、
揺動アーム支持軸と、
前記揺動アーム支持軸によって軸支され、両端が断面コの字形状を有する揺動アームと、
前記揺動アームの一端に配設された第1揺動転輪軸と、
前記揺動アームの前記一端の前記断面コの字形状の内側に挿設されて前記第1揺動転輪軸によって軸支され、前記第1揺動転輪軸を支軸として回転する第1転輪と、
前記揺動アームの他端に配設された第2揺動転輪軸と、
前記揺動アームの前記他端の前記断面コの字形状の内側に挿設されて前記第2揺動転輪軸によって軸支され、前記第2揺動転輪軸を支軸として回転する第2転輪と、を含み、
前記揺動アーム支持軸は、前記第1プーリおよび前記第2プーリの各々の中心軸よりも下方に位置し、
前記揺動アームは、前記揺動アーム支持軸を支軸として、前記揺動アームの前記一端と前記揺動アームの前記他端とが上下に揺動する自動搬送ロボット。
【請求項6】
前記揺動アームは、前記揺動アーム支持軸の近傍で直線状に設けられている請求項5に記載の自動搬送ロボット。
【請求項7】
前記揺動機構は、さらに、前記揺動アーム支持軸によって軸支され、前記揺動アーム支持軸を支軸として回転する第3転輪および第4転輪を含み、
前記第3転輪と前記第4転輪との間に前記揺動アームが配設されている請求項5または請求項6に記載の自動搬送ロボット。
【請求項8】
前記第3転輪および前記第4転輪の各々の幅は、前記第1転輪および前記第2転輪の各々の幅よりも小さい請求項7に記載の自動搬送ロボット。
【請求項9】
前記第3転輪および前記第4転輪の各々の外周面に、凹凸が設けられている請求項7または請求項8に記載の自動搬送ロボット。
【請求項10】
前記第3転輪および前記第4転輪の各々の側面に、フランジが配設されている請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の自動搬送ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場の資材が積載された台車を搬送する自動搬送ロボットの揺動機構に関する。また、揺動機構を有する自動搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)の技術開発が進み、さまざまな場面でAGVが利用され始めている。例えば、商品が保管された倉庫でAGVを利用すれば、多種多様な商品を自動で搬送することが可能となる。そのため、作業効率が向上し、コストを削減することができる。
【0003】
自動搬送車は、自動搬送車の接地面の凹凸を吸収することができるように、揺動機構を具備する(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の揺動機構は、支軸周りに揺動可能なシーソアームと、シーソアームの前項端に回転自在に配設された設置転輪を有する。シーソアームは屈曲し、支軸は屈曲部に設けられている。すなわち、支軸は、シーソアームの両端よりも上方の位置に配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-46094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建設現場で使用する自動搬送車は、台車を搬送するためには台車の下方に入り込む必要があり、自動搬送車の高さが制限される。しかしながら、揺動機構の支軸がシーソアームの両端よりも上方に位置すると、揺動機構が大きくなり、揺動機構を具備する自動搬送車が大型化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、建設現場で使用することができる、台車の下方に入り込み、台車を搬送する自動搬送ロボットの揺動機構を提供することを目的の一つとする。また、揺動機構を有する自動搬送ロボットを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る揺動機構は、台車の下方に入り込み、台車を搬送する自動搬送ロボットに具備された揺動機構であって、揺動機構は、揺動アーム支持軸と、揺動アーム支持軸によって軸支された揺動アームと、揺動アームの一端に配設された第1揺動転輪軸と、第1揺動転輪軸によって軸支され、第1揺動転輪軸を支軸として回転する第1転輪と、揺動アームの他端に配設された第2揺動転輪軸と、第2揺動転輪軸によって軸支され、第2揺動転輪軸を支軸として回転する第2転輪と、揺動アーム支持軸によって軸支され、揺動アーム支持軸を支軸として回転する第3転輪と、揺動アーム支持軸によって軸支され、揺動アーム支持軸を支軸として回転する第4転輪と、を含み、揺動アームは、第3転輪と第4転輪との間に配設され、揺動アームは、揺動アーム支持軸を支軸として、揺動アームの一端と揺動アームの他端とが上下方向に揺動する。
【0008】
第3転輪および第4転輪の各々の幅は、第1転輪および第2転輪の各々の幅よりも小さくてもよい。
【0009】
第3転輪および第4転輪の各々の外周面に、凹凸が設けられていてもよい。
【0010】
第3転輪および第4転輪の各々の側面に、フランジが配設されていてもよい。
【0011】
本発明の一実施形態に係る自動搬送ロボットは、筐体と、一対のクローラと、を含み、一対のクローラの各々は、第1プーリと、第2プーリと、第1プーリと第2プーリとの間に配設された揺動機構と、を含み、揺動機構は、揺動アーム支持軸と、揺動アーム支持軸によって軸支された揺動アームと、揺動アームの一端に配設された第1揺動転輪軸と、第1揺動転輪軸によって軸支され、第1揺動転輪軸を支軸として回転する第1転輪と、揺動アームの他端に配設された第2揺動転輪軸と、第2揺動転輪軸によって軸支され、第2揺動転輪軸を支軸として回転する第2転輪と、を含み、揺動アーム支持軸は、第1プーリおよび第2プーリの各々の中心軸よりも下方に位置し、揺動アームは、揺動アーム支持軸を支軸として、揺動アームの一端と揺動アームの他端とが上下に揺動する。
【0012】
揺動アームは、揺動アーム支持軸の近傍で直線状に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の揺動機構は、小型でありながら、凹凸を吸収するように揺動することができる。また、本発明の自動搬送ロボットは、小型化された揺動機構を有するため台車の下方に入り込むことができるとともに、揺動機構が走行面の凹凸を吸収することができるため自動搬送ロボットの走行が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る自動搬送ロボットの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る自動搬送ロボットの斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る自動搬送ロボットと連結する連結フックの斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る自動搬送ロボットと連結する連結フックの平面図および断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る自動搬送ロボットのクローラの側面図および前面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る自動搬送ロボットのクローラの側面図および前面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る自動搬送ロボットの揺動機構の側面図および断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る自動搬送ロボットと台車との連結、および自動搬送ロボットによる台車の搬送を示す模式図である。
図9】本発明の一実施形態に係る自動搬送システムを利用した建設現場の模式図である。
図10】本発明の一実施形態に係る自動搬送システムを利用するにあたり、自動搬送用フロア地図の生成について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、実施形態はあくまで一例にすぎず、当業者が、発明の主旨を保ちつつ適宜変更することによって容易に想到し得るものについても、当然に本発明の範囲に含有される。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状はあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0016】
本発明細書において、説明の便宜上、「上」、「上方」、または「上方部」もしくは「下」、「下方」、または「下方部」という語句を用いて説明するが、各構成の上下関係を説明しているに過ぎない。例えば、構造物(例えば、台車または自動搬送ロボットなど)の構成の位置関係を説明する場合、構造物の通常使用する態様を基準とし、構造物が設置される面側(例えば、床面側)を「下」、「下方」、または「下方部」とすることがある。
【0017】
本明細書において、各構成に付記される「第1」、「第2」、「第3」、または「第4」の文字は、各構成を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限り、それ以上の意味を有さない。
【0018】
本明細書および図面において、同一又は類似する複数の構成を総じて表記する際には同一の符号を用い、これら複数の構成のそれぞれを区別して表記する際には、大文字又は小文字のアルファベットを添えて表記する場合がある。また、一つの構成のうちの複数の部分を区別して表記する際には、ハイフンと自然数を用いる場合がある。
【0019】
本明細書において、「自動搬送車(AGV)」とは、指示に基づいて所定の場所まで自動走行することができる車両をいう。指示は、統括システムからの指示であってもよく、作業者からの指示であってもよい。なお、「自動搬送車」は、自動搬送ロボットを含む。
【0020】
本明細書において、「自動搬送ロボット」とは、台車と連結し、指示された所定の場所まで台車を搬送しながら自動走行することができるロボットをいう。なお、ロボットは車両を含む。
【0021】
本明細書において、「台車」とは、資材などを積載してキャスタを利用して移動することができるものをいう。
【0022】
本明細書において、「自動走行」とは、統括システムからの指示による走行だけでなく、自動搬送車が具備する制御装置による自律走行とを含む。自律走行には、自動搬送車が所定の経路に沿って目的地に向かう走行だけでなく、目標物を追従した走行も含まれる。
【0023】
本明細書において、「統括システム」とは、自動搬送車を制御するとともに、自動搬送車が走行する建造物を制御し、自動搬送車および建造物と通信接続して自動搬送車および建造物を管理するシステムをいう。「統括システム」は、制御部、受信部、送信部、または記憶部などを含み、例えば、コンピュータである。
【0024】
<第1実施形態>
[1.自動搬送ロボットの構成]
図1図3を参照して、本発明の一実施形態に係る自動搬送ロボットおよび自動搬送ロボットが有する揺動機構について説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る自動搬送ロボット10の斜視図である。自動搬送ロボット10は、例えば、建設現場で使用することができる。自動搬送ロボット10は、資材が積載された台車の下方に入り込み、台車と連結し、台車を搬送することができる。自動搬送ロボット10は、台車を持ち上げることなく、台車の車輪を利用して台車を移動させる。そのため、自動搬送ロボット10は、大きなパワーを必要としない。したがって、自動搬送ロボット10は、小型化が可能である。
【0026】
図1に示すように、自動搬送ロボット10は、筐体100および一対のクローラ200を含む。一対のクローラ200は、筐体100の両側面に配置されている。すなわち、筐体100は、一対のクローラ200の間に配置されている。また、自動搬送ロボット10は、筐体100の前後面および両側面の各々にセンサ110が配置されている。さらに、自動搬送ロボット10は、筐体100の上面に連結ピン120が突設されている。
【0027】
筐体100には、自動搬送ロボット10の移動および制御に必要な部品が収納されている。例えば、筐体100内には、バッテリー、走行モータ、無線モジュール、またはコントローラなどが含まれていてもよい。
【0028】
バッテリーは、自動搬送ロボット10の電源部であり、自動搬送ロボット10に電力を供給することができる。バッテリーは、自動搬送ロボット10を使用しないときに充電することができるように、充電式であることが好ましい。バッテリーとして、例えば、リチウムイオンバッテリーなどを用いることができる。バッテリーは、筐体100内に固定されていてもよく、取り外すことができるようにしてもよい。
【0029】
走行モータは、自動搬送ロボット10の駆動部であり、クローラ200に動力を伝達することができる。走行モータには、ギヤヘッド、ブレーキ、またはエンコーダなどが含まれていてもよい。
【0030】
無線モジュールは、統括システムからの指示を受信し、または統括システムへ信号を送信することができる。
【0031】
コントローラは、無線モジュールが受信した統括システムからの指示にしたがってプログラムを実行し、自動搬送ロボット10を制御することができる。また、コントローラは、台車の搬送完了などの信号を生成することができる。
【0032】
センサ110は、自動搬送ロボット10の周囲の構造物または障害物との位置を検出し、または計測することができる。センサ110として、例えば、レーザレンジファインダなどを用いることができる。レーザレンジファインダは、レーザ光を操作しながら出射し、出射光と反射光とに基づいて、自動搬送ロボット10と構造物または障害物との距離を計測し、構造物または障害物を検出することができる。距離の計測においては、TOF(Time of Flight)方式またはAM(Amplitude Modulation)方式を利用することができる。TOF方式は、測定領域に向けて出射したパルス状の出射光と、構造物からの反射光との検出時間差に基づいて距離を計測する。一方、AM方式は、測定領域に向けて出射した拡幅変調された出射光と、構造物からの反射光との位相差に基づいて距離を計測する。
【0033】
筐体100の前後面および両側面に配置された複数のセンサ110は、それぞれ、同じであってもよく、異なっていてもよい。筐体100の両側面のセンサ110は、クローラ200の上方に配置されるため、筐体100の前後面のセンサ110よりも大きさが制限される。そのため、自動搬送ロボット10の大きさまたは形状を考慮して、配置するセンサ110を決定してもよい。
【0034】
なお、筐体100内には、さらに、ジャイロセンサーやGPS(Global Positioning System)信号受信器を含むIMU(Inertial Measurement Unit)が含まれていてもよい。これらのセンサを利用して、自動搬送ロボット10を制御することもできる。また、自動搬送ロボット10は、自己の位置を計測するために、クローラ200にエンコーダを有してもよい。
【0035】
連結ピン120は、自動搬送ロボット10と台車とを連結することができる。例えば、台車の下面に凹部を設け、連結ピン120が凹部と嵌合することで、自動搬送ロボット10と台車とを連結することができる。また、自動搬送ロボット10と台車とを連結するだけでなく、連結解除することができるように、連結ピン120に昇降機構が設けられていることが好ましい。昇降機構によって、連結ピン120を押し上げ、または連結ピン120を押し下げることで、連結または連結解除を行うことができる。昇降機構は、機械式であってもよく、電動式であってもよく、または電磁式であってもよい。なお、昇降機構は、筐体100内に配置することができる。
【0036】
連結ピン120の形状は、例えば、円柱であるが、連結ピン120の形状はこれに限られない。連結ピン120の形状は、角柱、円錐、または角錐などであってもよい。
【0037】
連結ピン120は、筐体100の上面の中心(より具体的には、自動搬送ロボット10の旋回軸上)に設けられることが好ましいが、中心から離れた位置に連結ピン120を配置することもできる。さらに、連結ピン120の配置は、筐体100の上面に限られない。連結ピン120は、筐体100内に配置され、台車との連結の際に筐体100の上面から突出する構成であってもよい。
【0038】
連結ピン120は、複数配置することもできる。ここで、図2を参照し、自動搬送ロボット10の変形例として、複数の連結ピン120を有する自動搬送ロボット10Aについて説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る自動搬送ロボット10Aの斜視図である。自動搬送ロボット10Aを説明するにあたり、自動搬送ロボット10と同様の構成については、説明を省略する。
【0039】
図2に示すように、自動搬送ロボット10Aは、筐体100および一対のクローラ200を含む。一対のクローラ200は、筐体100の両側面に配置されている。すなわち、筐体100は、一対のクローラ200の間に配置されている。また、自動搬送ロボット10Aは、筐体100の前後面および両側面の各々にセンサ110が配置されている。さらに、自動搬送ロボット10は、筐体100の上面に昇降部130が設けられ、昇降部130に、第1連結ピン120-1、第2連結ピン120-2、および第3連結ピンが配置されている。第1連結ピン120-1、第2連結ピン120-2、および第3連結ピン120-3は、自動搬送ロボット10Aの進行方向に対して一直線上に並んで配置されている。3つの連結ピンの中央にある第2連結ピン120-2は、筐体100の上面の中心に設けられることが好ましい。昇降部130は、第1連結ピン120-1、第2連結ピン120-2、および第3連結ピン120-3を同時に昇降させることができる。例えば、昇降部130によって第1連結ピン120-1、第2連結ピン120-2、および第3連結ピン120-3を上昇させ、自動搬送ロボット10Aが搬送する台車の下面側に設置される連結フックと連結することができる。
【0040】
ここで、図3および図4を参照して、自動搬送ロボット10Aの連結ピン120と連結される連結フック400について説明する。連結フック400は、台車の下面側に設置される。
【0041】
図3は、本発明の一実施形態に係る自動搬送ロボット10Aと連結する連結フック400の斜視図である。具体的には、図3(A)は、連結フック400の第1面400-1側から見た斜視図であり、図3(B)は、連結フック400の第2面400-2側から見た斜視図である。また、図4は、本発明の一実施形態に係る自動搬送ロボット10Aと連結する連結フック400の平面図および断面図である。具体的には、図4(A)は、連結フック400の第1面400-1側の平面図であり、図4(B)は、図4(A)に示すA-A’線で切断した連結フック400の断面図であり、図4(C)は、図4(A)に示すB-B’線で切断した連結フック400の断面図である。
【0042】
図3に示すように、連結フック400は、基材410、溝部420、および凹部430を含む。連結フック400の第1面400-1側では、基材410に溝部420が設けられている。一方、連結フック400の第2面400-2側は、台車に設置される側であるため、第2面400-2側の基材410は、平坦面を有していることが好ましい。また、溝部420の底面には、溝部420の底面から窪んだ凹部430が設けられている。
【0043】
基材410の形状は、図4(A)に示すような正方形であるが、これに限られない。基材410の形状は、長方形であってもよい。
【0044】
図4(A)~図4(C)に示すように、溝部420の形状は、円状の第1溝部420-1および十字状の第2溝部420-2を含む。第1溝部420-1の中心と第2溝部420-2の中心とは一致し、第1溝部420-1と第2溝部420-2とは交差している。具体的には、第1溝部420-1と第2溝部420-2とは、4点で交差している。
【0045】
溝部420は、自動搬送ロボット20が移動(または回転)するときの連結ピン120の移動経路となり得る。そのため、溝部420の幅または深さは、特に限定されないが、連結ピン120の径または高さが考慮されることが好ましい。
【0046】
第2溝部420-2の端部は開口されている。基材410が図4(A)に示すような矩形である場合、第2溝部420-2の端部は、基材410の辺部に設けられていてもよい。言い換えると、第2溝部420-2への入口(または出口)が基材410の辺部に設けられているということもできる。
【0047】
また、第2溝部420-2の端部の幅は、第2溝部420-2の中心近傍の幅よりも大きくてもよい。言い換えると、第2溝部420-2の幅は、基材410の端面に向かって大きくなるように設けられていてもよい。第2溝部420-2の端部は、連結ピン120が最初に通過する部分である。第2溝部420-2の幅が凹部430に向かって小さくなることで、第2溝部420-2が連結ピン120のガイドとなるため、連結ピン120と凹部430との位置合わせが容易となる。
【0048】
凹部430は、第1溝部420-1および第2溝部420-2の中心点、ならびに第1溝部420-1と第2溝部420-2との交差点に設けられている。すなわち、連結フック400は、少なくとも5つの凹部430を有する。連結ピン120と連結フック400との連結において、第1溝部420-1および第2溝部420-2の中心点に位置する凹部430は、第2連結ピン120-2と嵌合する。また、第1溝部420-1と第2溝部420-2との交差点に位置する凹部430は、第1連結ピンまたは第3連結ピン120-3と嵌合する。
【0049】
凹部430の形状は、図4(A)に示すような円形であるが、これに限られない。凹部430は、連結ピン120と嵌合するため、凹部430の形状は、連結ピン120の形状に合わせることができる。凹部430の形状は、例えば、矩形などの多角形とすることもできる。なお、4つの凹部430の形状は、第1溝部420-1の中心を対称点とする点対称となるように設けられている。
【0050】
凹部430の径は、特に限定されないが、凹部430は、連結ピン120と嵌合するため、連結ピン120の径が考慮されることが好ましい。凹部430の径が、連結ピン120の径に比べて大きすぎると、自動搬送ロボット10Aによる台車の搬送が安定しない可能性がある。そのため、凹部430の径は、連結ピン120の径よりもわずかに大きいことが好ましい。
【0051】
凹部430の深さは、特に限定されないが、昇降部130の昇降距離の範囲内であることが好ましい。凹部430の深さが昇降部130の昇降距離の範囲内であると、連結ピン120と凹部430とが嵌合したときに、凹部430の底面が連結ピン120の上面によって押された状態となり、連結ピン120と凹部430との嵌合状態が安定する
【0052】
なお、基材410は、金型などによって溝部420および凹部430が一体的に形成されてもよく、複数の平板を重ねて溝部420および凹部430が形成されてもよい。
【0053】
なお、自動搬送ロボット10および自動搬送ロボット10Aは、一対のクローラ200を同じ方向に回転させることで、前進し、または後退することができる。また、自動搬送ロボット10は、一対のクローラ200を異なる方向に回転させることで、その位置において回転(旋回)することができる。
【0054】
図5を参照して、さらに、クローラ200について説明する。
【0055】
図5(A)および図5(B)は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る自動搬送ロボット10のクローラ200の側面図および前面図(または後面図)である。図5(A)および図5(B)に示すように、クローラ200は、揺動機構210、固定金具220、第1プーリ230、第2プーリ240、およびクローラベルト250を含む。
【0056】
第1プーリ230と第2プーリ240とは、一定の間隔で離れ、第1プーリ230および第2プーリ240の各々の外周面にクローラベルト250が巻き掛けられている。第1プーリ230および第2プーリ240の各々の外周面には、一定の間隔で凹凸が設けられている。また、クローラベルト250の内周面にも一定の間隔で凹凸が設けられている。第1プーリ230および第2プーリ240とクローラベルト250との接触する領域において、第1プーリ230および第2プーリ240の各々の外周面の凹凸と、クローラベルト250の凹凸とは噛合している。そのため、第1プーリ230または第2プーリ240が回転すると、第1プーリ230または第2プーリ240からクローラベルト250へ駆動力が伝達され、クローラベルト250が回転する。
【0057】
第1プーリ230および第2プーリ240の一方は駆動プーリであり、第1プーリ230および第2プーリ240の他方は従属プーリであってもよい。駆動プーリは、筐体100内の走行モータと連結されている。走行モータからの回転が駆動プーリに伝達され、駆動プーリが回転することができる。走行モータから駆動プーリへの回転の伝達においては、ギヤヘッドを介してもよい。その場合、駆動プーリの大きさを考慮して、適切なギヤヘッドを決定することができる。一方、従属プーリは、筐体100に固定された中心軸を中心として回転することができる。従属プーリの中心軸は、筐体100内で延伸されている必要はない。ただし、筐体100の両側面を貫通した中心軸に、一対の従属プーリが嵌合されていてもよい。すなわち、筐体100の両側面に配置された従属プーリは、共通の中心軸に連結されていてもよい。
【0058】
自動搬送ロボット10は、従属プーリが前輪として、駆動プーリが後輪として配置されることが好ましい。すなわち、自動搬送ロボット10は、後輪駆動であることが好ましい。自動搬送ロボット10の走行において、走行面に凸部があると、始めに前輪が凸部に乗り上げる。クローラ200の大きさに比べて凸部が大きい場合、前輪が浮き上がり、前輪が駆動力を失う場合がある。このような場合においても、自動搬送ロボット10が後輪駆動であれば、後輪が押すことによって、凸部を乗り越えることが可能である。
【0059】
クローラベルト250として、スチールまたはステンレスなどの金属部材もしくはゴムなどの弾性部材を用いることができる。なお、自動搬送ロボット10は、クローラベルト250の伸縮によっても接地面の凹凸を吸収することができるようにするため、クローラベルト250は弾性部材であることが好ましい。なお、クローラベルト250がゴムである場合、ゴムが一体化されていてもよく、分割されていてもよい。
【0060】
揺動機構210は、固定金具220を用いて、筐体100に固定されている。揺動機構210の一端は、筐体100の側面に固定されているが、揺動機構210の他端も、固定金具220を用いて筐体100に固定されることにより、揺動機構210の固定が補強されるとともに、走行時における揺動機構210の動作が安定化する。
【0061】
固定金具220の一端は、筐体100の側面に固定され、固定金具220の他端は、揺動機構210を支持している。固定金具220の他端は、クローラベルト250の外側に突出していてもよい。
【0062】
揺動機構210の強度を必要としない場合には、固定金具220を設けなくてもよい。すなわち、揺動機構210は、揺動アーム支持軸のみで筐体100に支持されていてもよい。図6に、固定金具220が設けられていないクローラ200Aを示す。図6(A)および図6(B)は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る自動搬送ロボット10のクローラ200Aの側面図および前面図(または後面図)である。固定金具220を設けないことにより、自動搬送ロボット10の側面から外側への突出が小さくなる。そのため、自動搬送ロボット10を、さらに小型化することができる。なお、クローラ200Aでは、空いたスペースに補助転輪を設けてもよい。補助転輪を設けることで、クローラベルト250を安定化させることができる。
【0063】
揺動機構210は、第1プーリ230と第2プーリ240との間に設けられている。また、揺動機構210は、第1プーリ230の中心軸と第2プーリ240の中心軸とを結ぶ直線よりも下方側に位置するように配置されている。
【0064】
図7を参照して、さらに、揺動機構210について説明する。
【0065】
図7(A)および図7(B)は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る自動搬送ロボット10の揺動機構210の側面図および断面図である。具体的には、図7(B)は、図7(A)に示すA-A’線に沿って切断した揺動機構210の断面図である。図7(A)および図7(B)に示すように、揺動機構210は、揺動アーム支持軸211、揺動アーム212、第1揺動転輪軸213-1、第2揺動転輪軸213-2、第1転輪214-1、第2転輪214-2、第3転輪214-3、第4転輪214-4、第1軸受215-1、第2軸受215-2、第3軸受215-3、第4軸受215-4、およびフランジ216を含む。
【0066】
図7(B)に示すように、揺動アーム212は、中央部が、表面から内側に凹むように溝が形成されている。また、揺動アーム212の端部はコの字形状に延出されている。揺動アーム212は、揺動アーム212の中央部に揺動アーム支持軸211が挿通され、揺動アーム支持軸211を支軸として、揺動アーム212の両端が上下方向に揺動することができる。なお、揺動アーム212は、揺動アーム支持軸211で屈曲していない。すなわち、揺動アーム212は、揺動アーム支持軸211で直線状に設けられている。
【0067】
揺動アーム212の端部の一方において、コの字形状の内側に第1転輪214-1が挿設され、コの字形状の両側を横架するように、第1揺動転輪軸213-1が第1転輪214-1に挿通されている。言い換えると、第1転輪214-1は、第1揺動転輪軸213-1によって軸支されている。そのため、コの字形状の内側において、第1転輪214-1は、第1揺動転輪軸213-1を支軸として回転することができる。揺動アーム212の端部の他方も同様である。揺動アーム212の端部の他方において、コの字形状の内側に第2転輪214-2が挿設され、コの字形状の両側を横架するように、第2揺動転輪軸213-2が第2転輪214-2に挿通されている。言い換えると、第2転輪214-2は、第2揺動転輪軸213-2によって軸支されている。そのため、コの字形状の内側において、第2転輪214-2は、第2揺動転輪軸213-2を支軸として回転することができる。なお、揺動アーム212は、揺動アーム支持軸211で屈曲していないため、揺動アーム軸211と、第1揺動転輪軸213-1および第2揺動転輪軸213-2とは、同一直線状に配置される。
【0068】
第1揺動転輪軸213-1および第2揺動転輪軸213-2の端面は、揺動アーム212の側面と一致していてもよく、揺動アーム212の側面から突出していてもよい。
【0069】
第1転輪214-1の両側面には、第1軸受215-1が配設されている。また、第2転輪214-2の両側面には、第2軸受215-2が配設されている。第1転輪214-1に第1軸受215-1が配設されることで、第1転輪214-1の回転が滑らかになる。同様に、第2転輪214-2に第2軸受215-2が配設されることで、第2転輪214-2の回転が滑らかになる。
【0070】
第1転輪214-1および第2転輪214-2の各々の外周面には、一定の間隔で凹凸が設けられている。揺動機構210の下方部において、第1転輪214-1および第2転輪214-2の各々の外周面の凹凸は、クローラベルト250の内周面の凹凸と噛合する。したがって、クローラベルト250の回転に合わせて、第1転輪214-1および第2転輪214-2は回転することができる。
【0071】
揺動アーム212の中央部の溝の一方には、第3転輪214-3が挿設され、揺動アーム212の中央部の溝の他方には、第4転輪214-4が挿設されている。言い換えると、第3転輪214-3と第4転輪214-4との間に揺動アーム212が配設されているということもできる。揺動アーム212に挿通された揺動アーム支持軸211は、第3転輪214-3および第4転輪214-4にも挿通されている。言い換えると、第3転輪214-3および第4転輪214-4は、揺動アーム支持軸211によって軸支されている。そのため、第3転輪214-3および第4転輪214-4は、揺動アーム支持軸211を支軸として回転することができる。
【0072】
揺動アーム支持軸211の両端面は、第3転輪214-3の側面および第4転輪214-4の側面から突出している。揺動アーム支持軸211の端面の一方は、筐体100に固定されるとともに支持され、揺動アーム支持軸211の端面の他方は、固定金具220によって支持されている。
【0073】
自動搬送ロボット10において、揺動アーム支持軸211は、第1プーリ230および第2プーリ240の各々の中心軸よりも下方に位置することが好ましい。揺動機構210の揺動アーム支持軸211が、第1プーリ230および第2プーリ240の各々の中心軸よりも下方に位置することで、揺動機構210が走行面の凹凸の影響に対して敏感に反応して動作することができるため、自動搬送ロボット10の走行を安定化させることができる。
【0074】
第3転輪214-3の両側面には、第3軸受215-3が配設されている。また、第4転輪214-4の両側面には、第4軸受215-4が配設されている。第3転輪214-3に第3軸受215-3が配設されることで、第3転輪214-3の回転が滑らかになる。同様に、第4転輪214-4に第4軸受215-4が配設されることで、第4転輪214-4の回転が滑らかになる。
【0075】
また、第3転輪214-3および第4転輪214-4の一方の側面には、フランジ216を配設することができる。フランジ216は、揺動アーム212の側面より外側に突出していてもよい。フランジ216は、クローラベルト250に引っかかるように配設されていてもよい。すなわち、フランジ216を、フランジ216とクローラベルト250の側面とが重畳する大きさとすることで、フランジ216がストッパとなり、第3転輪214-3および第4転輪214-4が揺動アーム支持軸211から抜けないようにすることができる。
【0076】
第3転輪214-3および第4転輪214-4の各々の外周面には、一定の間隔で凹凸が設けられている。揺動機構210の下方部において、第3転輪214-3および第4転輪214-4の各々の外周面の凹凸は、クローラベルト250の内周面の凹凸と噛合する。したがって、クローラベルト250の回転に合わせて、第3転輪214-3および第4転輪214-4は回転することができる。
【0077】
第1転輪214-1および第2転輪214-2は、揺動アーム212の動作に合わせて、上下に揺動する。そのため、第1転輪214-1および第2転輪214-2は、揺動転輪ということができる。一方、第3転輪214-3および第4転輪214-4は、揺動アーム212の動作に合わせて揺動しない。そのため、第3転輪214-3および第4転輪214-4は、固定転輪ということができる。
【0078】
揺動転輪の外周面の幅W1が大きくなると、クローラ200の幅も大きくなるため、自動搬送ロボット10の走行が安定する。一方、固定転輪は、クローラベルト250を押さえる機能を有するが、揺動アーム支持軸211によって位置が固定されているため、固定転輪の外周面の幅W2は大きくなくてもよい。そのため、固定転輪の外周面の幅W2は、揺動転輪の外周面の幅W1よりも小さくてもよい。
【0079】
本実施形態に係る揺動機構210は、揺動アーム212が屈曲していないため、揺動機構210を小型化が可能である。そのため、揺動機構210を有する自動搬送ロボット10も小型化することができる。
【0080】
[2.自動搬送ロボットの使用形態]
図8を参照して、自動搬送ロボット10の使用形態について説明する。
【0081】
図8(A)~図8(B)は、本発明の一実施形態に係る自動搬送ロボット10と台車30との連結、および自動搬送ロボット10による台車30の搬送を示す模式図である。図8(A)~図8(C)に示すように、台車30は、キャスタ300および凹部310を含む。
【0082】
図8(A)は、自動搬送ロボット10が台車30の下方に入り込む構成を示す。図8(A)に示すように、自動搬送ロボット10は、台車30の長辺側から台車30の下方に入り込む。台車30の長辺側は、台車30の短辺側よりも2つの隣接するキャスタ300の間隔が大きいため、台車30の短辺側よりも台車30の下方の間隙が大きい。そのため、自動搬送ロボット10は、台車30の短辺側からよりも台車30の長辺側からの方が台車30の下方に入りやすい。
【0083】
自動搬送ロボット10は、センサ110を用いて、台車30の長辺側の2つのキャスタ300の位置を検出し、2つのキャスタ300の中心位置に向かって台車30の下方に入り込む。台車30の下方に入り込んだ自動搬送ロボット10は、台車30のもう一方の長辺側の2つのキャスタ300の位置を検出する。センサ110によって4つのキャスタ300の位置が検出されるため、4つのキャスタ300の位置を頂点とした矩形の対角線が交差する位置、すなわち、台車30の中心位置を決定することができる。そのため、台車30の中心位置に凹部310を配設しておくことで、凹部310の位置を特定しやすくなり、自動搬送ロボット10と台車30との連結が容易となる。
【0084】
台車30の下方に入り込んだ自動搬送ロボット10は、連結ピン120を押し上げて、台車30の凹部と嵌合し、台車30と連結する。自動搬送ロボット10の連結ピン120は、台車30のキャスタ300を床面から浮かせる必要はない。自動搬送において、自動搬送ロボット10に搬送された台車30は、キャスタ300を利用して移動することができる。
【0085】
図8(B)は、自動搬送ロボット10と台車30とが連結された状態を示す。図8(B)に示すように、自動搬送ロボット10の連結ピン120と台車30の凹部310とが嵌合し、自動搬送ロボット10と台車30とが連結されている。自動搬送ロボット10と台車30との連結が固定されるように、複数の連結ピン120と複数の凹部310とが嵌合していてもよい。また、別途、自動搬送ロボット10と台車30との連結の固定のためのストッパを設けてもよい。自動搬送ロボット10と台車30との連結が固定されることで、台車30の回転が固定され、台車30は、自動搬送ロボット10の移動方向に合わせて移動することできる。したがって、図4(B)に示すように、自動搬送ロボット10は、台車30の長辺側を先頭にして台車30を搬送することができる。
【0086】
図8(C)は、自動搬送ロボット10が90度回転し、自動搬送ロボット10と台車30とが連結された状態を示す。図8(C)に示すように、自動搬送ロボット10の連結ピン120と台車30の凹部310とが嵌合し、自動搬送ロボット10と台車30とが連結されている。但し、図8(B)と異なり、台車30の下方に入り込んだ自動搬送ロボット10は、台車30の下方で90度回転(旋回)している。したがって、図8(C)に示すように、自動搬送ロボット10は、台車の短辺側を先頭にして台車30を搬送することができる。
【0087】
本実施形態に係る自動搬送ロボット10は、揺動機構210を有する。揺動機構210を有する自動搬送ロボット10は小型化が可能であるため、自動搬送ロボット10は、台車30の下方に入り込み、台車30を搬送することができる。
【0088】
<第2実施形態>
図9および図10を参照して、本発明の一実施形態に係る自動搬送システムについて説明する。本発明の一実施形態に係る自動搬送システムは、自動搬送ロボット10および台車30を含む。
【0089】
図9は、本発明の一実施形態に係る自動搬送システムを利用した建設現場の模式図である。図9に示す建設現場の建造物50は、複数のフロアを有している。建造物50の隣には、フロア間、すなわち、建造物50の高さ方向への資材53の搬送を可能にする工事用エレベータ60が設置されている。工事用エレベータ60は、建造物50の高さ方向に沿って延伸する脚柱61に昇降機62が取り付けられている。昇降機62は、脚柱61に沿って昇降し、建造物50の各フロアで停止することができるように設定されている。なお、自動搬送システムには、統括システムが含まれていてもよく、自動搬送ロボット10および工事用エレベータ60は、統括システムによって制御することができる。
【0090】
作業フロア(資材の荷取り場または荷置き場)では、フロアの壁面の開口部を塞ぐようにシャッター51が設置されている。シャッター51は、工事用エレベータ60側に設置される。工事用エレベータ60を利用する場合には、シャッター51が開閉される。すまた、シャッター51の前には、フロアの床面と昇降機62の床面との段差を小さくするためのスロープ52が設置されている。なお、シャッター51の開閉も統括システムによって制御することができる。
【0091】
自動搬送システムでは、自動搬送ロボット10と資材53が積載された台車30とが連結され、自動搬送ロボット10が、台車30を搬送しながら、荷取り場から荷置き場まで自動走行する。建設現場においては、資材53などがフロアの床面上に置いてあることも多く、自動搬送ロボット10の搬送経路が限定される。自動搬送ロボット10の自動走行を可能とするためには、自動搬送ロボット10の走行可能な搬送経路を特定しておく必要がある。したがって、自動搬送システムの利用を開始する前に、フロアの状況を示した地図(自動搬送用フロア地図)を生成しておく必要がある。
【0092】
図10は、本発明の一実施形態に係る自動搬送システムを利用するにあたり、自動搬送用フロア地図の生成について説明する図である。具体的には、図10(A)は、建設現場のフロアの状況を示す模式図であり、図10(B)は、生成された自動搬送用フロア地図の模式図である。
【0093】
図10(A)に示すように、建設現場における建造物50のフロアの床面上には、第1資材53-1および第2資材53-2が置かれている。自動搬送ロボット10が自動走行する上で、第1資材53-1および第2資材53-2は障害物となり得る。また、建造物50のフロアには、建造物50を支えるための柱が設置されている。柱もまた、自動搬送ロボット10の自動走行における障害物となり得る。自動搬送ロボット10の自動走行の障害物となり得る、第1資材53-1、第2資材53-2、または柱などを全て障害物55としてマーキングした自動搬送用フロア地図を生成する。
【0094】
自動搬送用フロア地図を生成するため、自動搬送ロボット10が自動走行するフロア(例えば、荷取り場または荷置き場など)内において、作業者は、自動搬送ロボット10を手動で操作し、または自動で、走行させる。自動搬送ロボット10には、センサ110が搭載されており、自動搬送ロボット10は、センサ110を用いて、第1資材53-1、第2資材53-2、または柱などを検出することができる。自動搬送ロボット10は、検出された情報を基にして、図10(B)に示すような、第1資材53-1、第2資材53-2、または柱などが障害物55としてマーキングされた自動搬送用フロア地図を生成することができる。なお、自動搬送用フロア地図の生成における処理は、自動搬送ロボット10でなくてもよい。自動搬送ロボット10と通信接続し、自動搬送ロボット10から情報を受信した統括システムで処理を行い、自動搬送用フロア地図を生成してもよい。
【0095】
また、自動搬送用フロア地図は、リアルタイムでディスプレイに表示できるようにしてもよい。作業者は、実際の自動搬送ロボット10の走行と、ディスプレイに表示された自動搬送用フロア地図とを比較して確認することができるため、自動搬送用フロア地図の精度が向上する。
【0096】
自動搬送ロボット10は、ジャイロセンサーを含んでいてもよい。自動搬送ロボット10がジャイロセンサーを搭載することで、フロアの床面上の段差を検出することができる。この場合、自動搬送用フロア地図には、障害物55だけでなく、段差も示すことが可能となる。
【0097】
自動搬送用フロア地図の生成においては、自動搬送ロボット10と異なるロボットを使用することもできる。例えば、自動搬送ロボット10よりも小さいロボットを使用すれば、自動搬送ロボット10が走行することができない場所に入り込むことができるため、より詳細な自動搬送用フロア地図を生成することができる。
【0098】
再び、図9に戻り、自動搬送システムについて説明する。
【0099】
自動搬送用フロア地図の情報、ならびに自動搬送ロボット10および台車30の位置の情報など、自動搬送で必要な情報は統括システムによって制御され、管理される。例えば、台車30の初期位置(スタート位置)および搬送位置(ゴール位置)、または自動搬送システムの実行開始時間などは、統括システムを通じて制御し、管理することができる。
【0100】
統括システムによって自動搬送が実行されると、自動搬送ロボット10は、自動走行を開始し、荷取り場フロアの初期位置の資材53が積載された台車30の下方に入り込み、台車30と連結する。自動搬送ロボット10は、自動搬送用フロア地図を基にして障害物55を避け、台車30を搬送しながら自動走行する。自動搬送ロボット10は、荷取り場フロアのシャッター51の前、より具体的にはスロープ52の前で停止する。
【0101】
統括システムは、自動搬送ロボット10がシャッター51の前で停止している信号を受信すると、工事用エレベータ60の昇降機62を自動搬送ロボット10のいる荷取り場フロアまで移動させ、昇降機62の扉(図示しない)を開ける。また、統括システムが、昇降機62が荷取り場フロアで停止した信号を受信すると、荷取り場フロアのシャッター51を開く。自動搬送ロボット10は、昇降機62の扉およびシャッター51が開いた信号を受信すると、スロープ52を昇り、工事用エレベータ60の昇降機62に乗り込む。統括システムは、自動搬送ロボット10が昇降機62の中で停止している信号を受信すると、昇降機62の扉およびシャッター51を閉じ、昇降機62を荷置き場フロアに移動させる。また、統括システムが、昇降機62が荷置き場フロアで停止し昇降機62の扉が開く信号を受信すると、荷取り場フロアのシャッター51を開く。
【0102】
自動搬送ロボット10は、シャッター51が開いた信号を受信すると、自動走行を開始し、スロープ52を通って、昇降機62から荷置き場フロアに降りる。統括システムは、自動搬送ロボット10がスロープ52を降りた信号を受信すると、昇降機62の扉およびシャッター51を閉める。自動搬送ロボット10は、自動生成用フロア地図を基にして、障害物55を避けながら、自動走行し、搬送位置で停止する。
【0103】
統括システムは、自動搬送ロボット10が搬送位置で停止している信号を受信すると、自動搬送ロボット10と台車30との連結を解除する指示を送信する。台車30との連結が解除された自動搬送ロボット10は、シャッター51の前まで進み、上述した走行経路を逆に走行して、荷取り場フロアまで戻る。自動搬送ロボット10は、別の資材53が積載された台車30と連結し、台車30を搬送しながら自動走行する。
【0104】
自動搬送システムは、1つの自動搬送ロボット10に限られない。自動搬送システムは、複数の自動搬送ロボット10を含むこともできる。すなわち、自動搬送システムでは、複数の台車30および複数の自動搬送ロボット10を同時に利用して自動搬送することができる。また、統括システムは、複数の自動搬送ロボット10が同時または連続的に、荷取り場フロアと荷置き場フロアを行き来できるように制御することができる。
【0105】
また、上記では、自動搬送ロボット10を含む自動搬送システムを説明したが、自動搬送システムは、自動搬送ロボット10に限られず、あらゆる自動搬送車に適用することができる。
【0106】
本実施形態に係る自動搬送システムは、自動搬送ロボット10が、資材53が積載された台車30と連結し、台車30を荷取り場から荷置き場に自動で搬送することができる。例えば、夜間に自動搬送システムによる自動搬送を実行しておけば、作業者は、翌日の朝から自動搬送システムによって搬送された資材53を用いて作業を開始することができる。作業者は、翌日の朝に資材53の搬送作業から開始する必要があるが、自動搬送システムを利用すれば、資材53の搬送作業を省略することができる。そのため、自動搬送システムを利用することで、作業者の負担が軽減し、建設現場における作業効率が大幅に向上する。
【0107】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除、または設計変更を行ったもの、もしくは工程の追加、省略、または条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0108】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0109】
10、10A:自動搬送ロボット、 30:台車、 50:建造物、 51:シャッター、 52:スロープ、 53:資材、 53-1:第1資材、 53-2:第2資材、 55:障害物、 60:工事用エレベータ、 61:脚柱、 62:昇降機、 100:筐体、 110:センサ、 120:連結ピン、 120-1:第1連結ピン、 120-2:第2連結ピン、 120-3:第3連結ピン、 昇降部130、 200:クローラ、 210:揺動機構、 211:揺動アーム支持軸、 212:揺動アーム、 213-1:第1揺動転輪軸、 213-2:第2揺動転輪軸、 214-1:第1転輪、 214-2:第2転輪、 214-3:第3転輪、 214-4:第4転輪、 215-1:第1軸受、 215-2:第2軸受、 215-3:第3軸受、 215-4:第4軸受、 216:フランジ、 220:固定金具、 230:第1プーリ、 240:第2プーリ、 250:クローラベルト、 300:キャスタ、 310:凹部、 連結フック400、 第1面:400-1、 第2面:400-2、 基材:410、 溝部420、 第1溝部:420-1、 第2溝部:420-2、 凹部430
図1
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図10