IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NOK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-金属ガスケット 図1
  • 特許-金属ガスケット 図2
  • 特許-金属ガスケット 図3
  • 特許-金属ガスケット 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】金属ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/08 20060101AFI20240315BHJP
   F02F 11/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
F16J15/08 A
F16J15/08 D
F02F11/00 J
F02F11/00 L
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020087591
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021181807
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安齋 高紀
(72)【発明者】
【氏名】村岸 宏隆
(72)【発明者】
【氏名】今井 勝磨
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-121596(JP,A)
【文献】特許第6594874(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/08
F02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに固定される2部材間の隙間を封止する金属ガスケットにおいて、
密封対象流体の通り道となる開口部と、
前記開口部の周囲に沿うように形成される複数の環状ビードと、
を備え、
前記複数の環状ビードによって、前記開口部から離れるにつれて階段状に高さが高くなるように構成されると共に、前記複数の環状ビードは、前記開口部から離れるほどビード幅が広くなるように構成されると共に、
外周の端部には、前記2部材が固定された際に、外周端が前記2部材のうちの一方の部材に接するように、折り曲げ部が設けられていることを特徴とする金属ガスケット。
【請求項2】
前記複数の環状ビードにおいては、それぞれのビード高さは同一となるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の金属ガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに固定される2部材間の隙間を封止する金属ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高温環境下において、2部材間の隙間を封止するために、金属ガスケットが用いられている。図4を参照して、従来例に係る金属ガスケットについて説明する。図4は従来例に係る金属ガスケットを備える密封構造の模式的断面図である。図示の金属ガスケット500は、互いに固定される2部材(以下、それぞれ、第1部材200,第2部材300と称する)間の隙間を封止するために用いられる。第1部材200と第2部材300は、ボルト400によって固定される。第1部材200と第2部材300には、密封対象流体の通り道となる開口部210,310がそれぞれ設けられている。図中、矢印Gは密封対象流体が流れる方向を示している。
【0003】
例えば、第1部材200がシリンダヘッド、第2部材300がエキゾーストマニホールドやターボなどに備えられた部材の場合には、密封対象流体は高温の排気ガスである。この場合、第1部材200は冷却液によって200℃程度に抑えられるものの、第2部材300は、200℃を超える高温となる。このような高温環境下で使用される場合、金属ガスケット500の材料として耐熱鋼が用いられるものの、経時的に塑性変形の進行が進み易い。そこで、図示のように、それぞれビード510を有する金属ガスケット500を複数重ね合わせて用いることによって、重ね合わされた金属ガスケット500の温度を順次低下させることで、耐久性の向上を図っている。なお、スポット溶接などによって、隣り合う金属ガスケット500同士を固定させている。近年、より一層の熱効率化等に伴って、使用環境温度が増々高まっており、重ね合わせる金属ガスケット500の枚数を増やすことで対策している。
【0004】
しかしながら、重ね合わせる金属ガスケット500の枚数が増えるにつれて、コストが高くなるだけでなく、金属ガスケット500が配されるスペースの厚みが増し、かつ重量も増えてしまう。従って、未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-3959号公報
【文献】特開平11-63231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、シール性を高めつつ、高温環境下においても耐久性の向上を図ることのできる金属ガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0008】
すなわち、本発明の金属ガスケットは、
互いに固定される2部材間の隙間を封止する金属ガスケットにおいて、
密封対象流体の通り道となる開口部と、
前記開口部の周囲に沿うように形成される複数の環状ビードと、
を備え、
前記複数の環状ビードによって、前記開口部から離れるにつれて階段状に高さが高くなるように構成されると共に、前記複数の環状ビードは、前記開口部から離れるほどビード幅が広くなるように構成されると共に、
外周の端部には、前記2部材が固定された際に、外周端が前記2部材のうちの一方の部材に接するように、折り曲げ部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、複数の環状ビードは、開口部から離れるほどビード付近の温度が低下する。従って、開口部から離れた位置にある環状ビードの経時的な塑性変形を抑制することができるので、金属ガスケットの耐久性を高めることができる。また、複数の環状ビードが設けられることで、2部材と環状ビードの接触部の総面積を広くすることができ、シール性を高めることができる。また、各環状ビードと2部材との接触部分に作用する密封対象流体の流体圧力は、開口部から離れるほど低下する。これにより、開口部から離れた位置にある環状ビードによるシール性を高めることができ、金属ガスケットとしてのシール性を高めることができる。更に、複数の環状ビードは、開口部から離れるほどビード幅が広くなるように構成されているので、より温度が低下している位置においてシール機能を発揮させることができる。更に、金属ガスケットの外周端が2部材のうちの一方の部材に支持されて、各環状ビードにおける2部材に対する面圧を高めることが可能となる。
【0010】
前記複数の環状ビードにおいては、それぞれのビード高さは同一となるように設定されているとよい。
【0011】
これにより、各環状ビードにおける2部材に対する面圧を均一化させることができる。従って、安定的にシール性を発揮させることができる。
【0014】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、シール性を高めつつ、高温環境下においても耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本発明の実施例に係る金属ガスケットの平面図である。
図2図2は本発明の実施例に係る金属ガスケットの模式的断面図である。
図3図3は本発明の実施例に係る金属ガスケットを備える密封構造の模式的断面図である。
図4図4は従来例に係る金属ガスケットを備える密封構造の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0018】
(実施例)
図1図3を参照して、本発明の実施例に係る金属ガスケットについて説明する。図1は本発明の実施例に係る金属ガスケットの平面図である。図2は本発明の実施例に係る金
属ガスケットの模式的断面図である。なお、図2図1中のAA断面図であり、切断端面のみを簡略的に示し、奥行き線は省略している。図3は本発明の実施例に係る金属ガスケットを備える密封構造の模式的断面図である。図3においては、密封構造の一部について、ボルトを除き切断端面のみを簡略的に示している。また、図3中の金属ガスケットの断面図は、図1中のAA断面図に相当する。本発明の金属ガスケットは、各種装置において、互いに固定される2部材間の隙間を封止するために適用可能である。例えば、自動車のエンジンのシリンダヘッドとエキゾーストマニホールドやターボなどに備えられた部材との間の隙間を封止する用途に好適に用いられる。
【0019】
<金属ガスケット>
特に、図1及び図2を参照して、本発明の実施例に係る金属ガスケット100について説明する。本実施例に係る金属ガスケット100は、密封対象流体の通り道となる開口部110と、ボルト400(図3参照)の軸部が挿通される複数の挿通孔120と、開口部110の周囲に沿うように形成される複数の環状ビードとを備えている。以下、複数の環状ビードについて、適宜、開口部110に近い側から順に、それぞれ第1環状ビード131,第2環状ビード132,第3環状ビード133と称する。
【0020】
金属ガスケット100においては、これら複数の環状ビードによって、開口部110から離れるにつれて階段状に高さが高くなるように構成される。また、複数の環状ビードは、開口部110から離れるほどビード幅が広くなるように構成されている。すなわち、第1環状ビード131のビード幅をW1,第2環状ビード132のビード幅をW2,第3環状ビード133のビード幅をW3とすると、W1<W2<W3を満たす。また、複数の環状ビードにおいては、それぞれのビード高さは同一となるように設定されている。すなわち、第1環状ビード131のビード高さをH1,第2環状ビード132のビード高さH2,第3環状ビード133のビード高さをH3とすると、H1=H2=H3を満たす。更に、金属ガスケット100における外周の端部には、折り曲げ部140が設けられている。
【0021】
<密封構造>
特に、図3を参照して、本実施例に係る金属ガスケット100を備える密封構造について説明する。本実施例に係る金属ガスケット100は、互いに固定される2部材(以下、それぞれ、第1部材200,第2部材300と称する)間の隙間を封止するために用いられる。第1部材200と第2部材300は、ボルト400によって固定される。また、第1部材200と第2部材300には、密封対象流体の通り道となる開口部210,310がそれぞれ設けられている。なお、これらの開口部210,310の平面形状は、金属ガスケット100における開口部110の平面形状と略同一である。例えば、第1部材200がシリンダヘッド、第2部材300がエキゾーストマニホールドやターボなどに備えられた部材の場合には、密封対象流体は高温の排気ガスである。そして、排気ガスは、図3中、矢印G方向に流れる。この場合、第1部材200は冷却液によって200℃程度に抑えられるものの、第2部材300は、200℃を超える高温となる。
【0022】
第1部材200と第2部材300との間に配される金属ガスケット100は、第1部材200と第2部材300によって圧縮されることで変形する。これにより、第1環状ビード131,第2環状ビード132,第3環状ビード133は、それぞれ開口部110に近い側の端部131a,132a,133aが第1部材200の端面に接触した状態となる。また、第1環状ビード131,第2環状ビード132,第3環状ビード133は、それぞれ開口部110から遠い側の端部131b,132b,133bが第2部材300の端面に接触した状態となる。更に、折り曲げ部140においては、開口部110に近い側の端部が第2部材300により押圧されて、外周端140aが第1部材200の端面に接した状態となる。
【0023】
<本実施例に係る金属ガスケットの優れた点>
本実施例に係る金属ガスケット100によれば、複数の環状ビードは、開口部110から離れるほどビード付近の温度が低下する。つまり、第1環状ビード131,第2環状ビード132,第3環状ビード133の順に温度は低下する。従って、開口部110から離れた位置にある環状ビードの経時的な塑性変形を抑制することができるので、金属ガスケット100の耐久性を高めることができる。また、複数の環状ビードが設けられることで、2部材(第1部材200と第2部材300)と環状ビード(第1環状ビード131,第2環状ビード132,第3環状ビード133)の接触部の総面積を広くすることができ、シール性を高めることができる。
【0024】
また、各環状ビードと2部材との接触部分に作用する密封対象流体の流体圧力は、開口部110から離れるほど低下する。すなわち、第1環状ビード131の端部131aと第1部材200との接触部分、第2環状ビード132の端部132aと第1部材200との接触部分、第3環状ビード133の端部133aと第1部材200との接触部分の順に、作用する流体圧力が低下する。同様に、第1環状ビード131の端部131bと第2部材300との接触部分、第2環状ビード132の端部132bと第2部材300との接触部分、第3環状ビード133の端部133bと第2部材300との接触部分の順に、作用する流体圧力が低下する。これにより、開口部110から離れた位置にある環状ビードによるシール性を高めることができ、金属ガスケット100としてのシール性を高めることができる。更に、複数の環状ビードは、開口部110から離れるほどビード幅が広くなるように構成されている(上記、W1<W2<W3)。これにより、より温度が低下している位置においてシール機能を発揮させることができる。また、開口部110から離れている環状ビードにおいても無理なく変形し、環状ビードの両側の端部を第1部材200と第2部材300の双方に、より確実に接触させることができる。
【0025】
また、本実施例においては、複数の環状ビードにおいては、それぞれのビード高さは同一となるように設定されている(上記、H1=H2=H3)。これにより、各環状ビードにおける第1部材200及び第2部材300に対する面圧を均一化させることができる。つまり、第1環状ビード131,第2環状ビード132,第3環状ビード133の各端部131a,132a,133aによる第1部材200に対する面圧、及び各端部131b,132b,133bによる第2部材300に対する面圧を均一化させることができる。従って、安定的にシール性を発揮させることができる。
【0026】
更に、本実施例に係る金属ガスケット100の外周の端部には、第1部材200と第2部材300が固定された際に、外周端が第1部材200に接するように、折り曲げ部140が設けられている。これにより、金属ガスケット100の外周端が第1部材200に支持されて、各環状ビードにおける第1部材200と第2部材300に対する面圧を高めることが可能となる。なお、配置スペースなどが狭い場合等においては、この折り曲げ部140は必ずしも設けなくてもよい。
【0027】
以上のように、本実施例に係る金属ガスケット100によれば、シール性を高めつつ、高温環境下においても耐久性の向上を図ることができる。また、本実施例に係る金属ガスケット100を採用する場合には、開口部110から離れた環状ビードによりシール性が発揮されるため、従来例に係る金属ガスケットの場合に比べて、耐熱性が低い材料を使用することもできる。例えば、耐熱鋼の代わりに、SUS材を用いたり、耐熱用のコーティング材を減らしたりすることもできる。これにより、コストを削減することができる。ただし、本実施例においても、金属ガスケット100の材料として耐熱鋼を採用してもよい。更に、本実施例においては、従来技術の場合に比べて、金属ガスケット100の枚数を削減できるため、コストを削減できると共に、軽量化と薄型化を図ることができる。
【0028】
なお、本実施例においては、環状ビードが3つ設けられる場合を示したが、本発明における環状ビードの数は、複数設けられれば、その数は限定されることはない。また、本実施例においては、図2に示す金属ガスケット100の下面側が第1部材200側に向き、上面側が第2部材300側に向くように金属ガスケット100を配置させる場合を示した。しかしながら、図2に示す金属ガスケット100の下面側が第2部材300側に向き、上面側が第1部材200側に向くように金属ガスケット100を配置させても構わない。また、本実施例においては、金属ガスケット100を1枚のみ用いる場合について示したが、本発明においては、必ずしも、金属ガスケットを複数設ける構成を排除するものではない。例えば、金属ガスケット100を2枚用いて、図2中の金属ガスケット100の下面同士が向き合うようにこれらを重ねた状態で、第1部材200と第2部材300との間に配するようにして用いることもできる。勿論、金属ガスケット100を3枚以上重ねて用いてもよい。本実施例に係る金属ガスケット100を採用することで、従来技術と同等の耐久性を得るために、従来技術に比べて金属ガスケットの必要枚数を削減することができる。
【符号の説明】
【0029】
100 金属ガスケット
110 開口部
120 挿通孔
131 第1環状ビード
131a,131b 端部
132 第2環状ビード
132a,132b 端部
133 第3環状ビード
133a,133b 端部
140 折り曲げ部
140a 外周端
200 第1部材
210 開口部
300 第2部材
310 開口部
400 ボルト
図1
図2
図3
図4