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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】コンロバーナ
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/06 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
F23D14/06 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020092319
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021188785
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】荒松 政男
(72)【発明者】
【氏名】近藤 駿介
(72)【発明者】
【氏名】杉山 真澄
(72)【発明者】
【氏名】英 真次
(72)【発明者】
【氏名】蒲 厚仁
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-156546(JP,A)
【文献】特開2017-211147(JP,A)
【文献】特開2018-179309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D14/06
F23N5/24
F24C3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと空気との混合ガスが形成される混合管と、前記混合管から混合ガスが供給されると共に、上面に円環形状の載置面が形成されたバーナボディと、円筒形状の筒状壁の下端面に複数の炎口溝が形成されて、前記バーナボディの載置面の上に載置されることで前記筒状壁の外周側面に開口した複数の炎口が形成されるバーナヘッドとを備え、前記複数の炎口から混合ガスを噴出させて燃焼させることによって、調理容器内の調理物を加熱調理するコンロバーナにおいて、
前記混合管は、前記バーナボディに接続されていない側の管端に開口部が形成されて、前記開口部から流入した燃料ガスと空気とが混合することによって混合ガスが形成されており、
前記混合管の前記開口部に対向する位置に設けられて、前記開口部から混合ガスの炎が噴出した場合には噴出した炎が衝突する衝突壁と、前記衝突壁に対して上方の位置から前記バーナボディの方向に延設されることによって、前記衝突壁に衝突した炎を前記バーナボディの方向に誘導する上方壁と、前記衝突壁に対して両側方の位置から前記バーナボディの方向に延設されることによって、前記衝突壁に衝突した炎を前記バーナボディの方向に誘導する側方壁とを有する火炎ガイドを備え
前記上方壁は、前記バーナボディ側の端部が、前記バーナボディの方向に延設された形状となっている
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンロバーナにおいて、
前記火炎ガイドは、下面が開放された形状となっている
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコンロバーナにおいて、
前記火炎ガイドの前記衝突壁は、前記混合管端部の前記開口部に対して平行に形成されている
ことを特徴とするコンロバーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと空気との混合ガスを燃焼させることによって、調理容器内の調理物を加熱調理するコンロバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスを燃焼させることによって調理容器内の調理物を加熱調理するコンロバーナは広く使用されている。コンロバーナは、燃料ガスと空気との混合ガスが供給されるバーナボディと、円環形状の下端面に複数本の炎口溝が放射状に形成されて、バーナボディの上に載置されるとバーナボディの載置面との間に複数の炎口を形成するバーナヘッドと、一端側がバーナボディに接続されると共に他端側に開口部が形成された混合管と、混合管の開口部に向けて燃料ガスを噴射する噴射ノズルとを備えている。そして、噴射ノズルから開口部に向かって燃料ガスを噴射すると、噴射された燃料ガスが周囲の空気を巻き込みながら混合管内に流入し、混合管の内部で空気と混合した後にバーナボディに供給される。こうしてバーナボディに供給された燃料ガスと空気との混合ガスは、バーナボディとバーナヘッドとの間に形成された複数の炎口から外部に噴出し、この混合ガスに点火すると、発生した炎が隣の炎口に火移りして行く。その結果、全ての炎口で混合ガスの燃焼が開始されて、調理物を加熱調理することが可能となる。
【0003】
このようなコンロバーナでは、調理中に煮零れが生じると、煮零れ汁がバーナヘッドおよびバーナボディに掛かって炎口を閉塞することがある。また、煮零れ汁がバーナボディの載置面を伝わって遠くの炎口まで広がると、多くの炎口が閉塞されることが起こり得る。こうしたことは、煮零れた煮汁の濃度が低いと特に起こり易くなる。このため、湯を沸かす場合にも、湯が吹き零れた場合には多くの炎口が閉塞されることが生じ得る。そして、コンロバーナで混合ガスを燃焼させている状態で多くの炎口が閉塞されると、コンロバーナの混合管内を炎が逆流して混合管の端部の開口部から炎が噴き出す現象(逆噴と呼ばれる)が発生することがある。逆噴が生じると、噴き出した炎でガスコンロの内側(例えば天板の裏側)が炙られる結果、ガスコンロの損傷を招く虞がある。
【0004】
そこで、コンロバーナの混合管端部の開口部の近くに温度センサを搭載しておき、温度が上昇したことを検知すると、逆噴によって開口部から炎が噴き出しているものと判断して、燃料ガスの供給を停止するようにした技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-028428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、逆噴に対処するために、温度センサを搭載し、温度センサの出力に基づいて逆噴の発生を検知して、逆噴を検知した場合には燃料ガスの供給を停止したのでは、炎口の炎が消えてしまう。このため、調理を継続しようとすると、掃除などを行って炎口の閉塞を解消した後に再点火する操作が必要となって煩わしいという問題があった。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、逆噴を解消させると共に、再点火操作をすることなく調理を継続することが可能なコンロバーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明のコンロバーナは次の構成を採用した。すなわち、
燃料ガスと空気との混合ガスが形成される混合管と、前記混合管から混合ガスが供給されると共に、上面に円環形状の載置面が形成されたバーナボディと、円筒形状の筒状壁の下端面に複数の炎口溝が形成されて、前記バーナボディの載置面の上に載置されることで前記筒状壁の外周側面に開口した複数の炎口が形成されるバーナヘッドとを備え、前記複数の炎口から混合ガスを噴出させて燃焼させることによって、調理容器内の調理物を加熱調理するコンロバーナにおいて、
前記混合管は、前記バーナボディに接続されていない側の管端に開口部が形成されて、前記開口部から流入した燃料ガスと空気とが混合することによって混合ガスが形成されており、
前記混合管の前記開口部に対向する位置に設けられて、前記開口部から混合ガスの炎が噴出した場合には噴出した炎が衝突する衝突壁と、前記衝突壁に対して上方の位置から前記バーナボディの方向に延設されることによって、前記衝突壁に衝突した炎を前記バーナボディの方向に誘導する上方壁と、前記衝突壁に対して両側方の位置から前記バーナボディの方向に延設されることによって、前記衝突壁に衝突した炎を前記バーナボディの方向に誘導する側方壁とを有する火炎ガイドを備え
前記上方壁は、前記バーナボディ側の端部が、前記バーナボディの方向に延設された形状となっている
ことを特徴とする。
【0009】
かかる本発明のコンロバーナにおいては、混合管の内部で燃料ガスと空気との混合ガスが形成されており、その混合ガスが、バーナボディの載置面とバーナヘッドの炎口溝に囲まれて形成された複数の炎口から噴出して燃焼することによって、調理容器内の調理物を加熱調理する。混合管は、バーナボディに接続されていない側の管端が開口部となっており、燃料ガスおよび空気は開口部から混合管内に流入するようになっている。しかし、加熱調理中に煮零れ汁などによって複数の炎口が閉塞すると、炎が逆流して混合管の開口部から炎が噴き出す現象(いわゆる、逆噴)が生じることがある。そこで、本発明のコンロバーナでは、混合管の開口部の側に火炎ガイドが搭載されている。この火炎ガイドには、開口部に対向する位置に、開口部から噴き出した炎が衝突する衝突壁が設けられており、更に、衝突壁に対して上方の位置からバーナボディの方向に延設された上方壁や、衝突壁に対して両側方の位置からバーナボディの方向に延設された側方壁も設けられている。そして、上方壁は、バーナボディ側の端部が、バーナボディの方向に延設された形状となっている。
【0010】
こうすれば、複数の炎口が煮零れ汁によって閉塞して逆噴が発生しても、開口部から噴き出した炎が衝突壁に衝突して方向転換することによって、上方壁および側方壁に導かれる。上方壁および側方壁はバーナボディの方向に延設されており、上方壁のバーナボディ側の端部は、バーナボディの方向に延設された形状となっている。このため、衝突壁に衝突して方向転換した炎は、上方壁および側方壁によってバーナボディの方向に導かれることになり、バーナボディが加熱される。その結果、載置面およびバーナヘッドの炎口溝が温度上昇して、炎口を閉塞している煮零れ汁の蒸発が促進されるので、炎口の閉塞が解消されて正常な燃焼に復帰することになり、自然に逆噴を解消することができる。また、混合管の開口部は火炎ガイドの衝突壁や上方壁や側方壁によって囲われた状態となっているので、逆噴の炎によってガスコンロの内部が損傷する虞も生じない。更に、逆噴が発生した場合でも、炎口への燃料ガスの供給を停止せずに(従って、調理を継続したままで)逆噴を解消することができる。このため、逆噴が発生した後も調理を継続する場合に、炎口溝を掃除するなどして逆噴の原因を解消した後、再点火して燃料ガスの供給を再開するといった煩わしい操作が不要となる。
【0011】
また、上述した本発明のコンロバーナにおいては、火炎ガイドは、下面が開放された形状としてもよい。
【0012】
こうすれば、混合管の開口部に向けて、火炎ガイドの下方から空気を供給することができる。このため、火炎ガイドを搭載しても、混合管に供給される空気量が減少することがないので、混合管で燃料ガスと空気とが適切な比率で混合した混合ガスを生成することが可能となる。
【0013】
また、上述した本発明のコンロバーナにおいては、火炎ガイドの衝突壁は、混合管端部の開口部に対して平行に形成しても良い。
【0014】
衝突壁の上方および両側方には上方壁および側方壁が形成されているので、混合管の開口部に流入する空気は、火炎ガイドの下方から主に供給されることになる。従って、混合管の開口部に対向する位置に設けられた衝突壁を、衝突壁の下方が開口部に接近するように傾けると、混合管の開口部に流入する空気の流れが阻害されて、混合管内に適切な流量の空気を供給することが困難になる。また逆に、衝突壁の下方が混合管の開口部から遠ざかるように衝突壁を傾けると、逆噴が発生して開口部から炎が噴き出した時に、衝突壁に衝突した炎が衝突壁によって下方に誘導されてしまう。その結果、火炎ガイドの外に炎が漏れ出してガスコンロに損傷を与える虞が生じる。これに対して、火炎ガイドの衝突壁を、混合管の開口部に対して平行に形成しておけば、混合管に供給される空気の流れが阻害されることがなく、また、逆噴が発生した場合には、衝突壁に衝突した炎が方向転換して上方壁や側方壁によってバーナボディ側に確実に誘導することができる。このため、火炎ガイドの外に炎が漏れ出してガスコンロが損傷する事態も防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施例のコンロバーナ10がガスコンロ1に搭載された状態を示す説明図である。
図2】温度センサ18の位置でコンロバーナ10を縦方向に切断することによって、コンロバーナ10の構造を示した断面図である。
図3】本実施例の火炎ガイド30の外観形状を示した説明図である。
図4】本実施例の火炎ガイド30によって逆噴が自然に解消される理由を示した説明図である。
図5】本実施例の火炎ガイド30では衝突壁31が混合管15の開口部15aに対して平行に形成されている理由を示した説明図である。
図6】第1の変形例の火炎ガイド30の外観形状を示した説明図である。
図7】第2の変形例の火炎ガイド30の外観形状を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本実施例のコンロバーナ10がガスコンロ1に搭載された状態を示す説明図である。図示されるように、ガスコンロ1は、ガラス製あるいは金属製の天板2を備えており、天板2には後述するバーナ用開口2a(図2参照)が形成されている。そして、このバーナ用開口2aから上部を突出させた状態で、コンロバーナ10が搭載されている。また、天板2上には、バーナ用開口2aから突出したコンロバーナ10を囲むようにして五徳3が載置されており、五徳3上に鍋などの調理容器を置いて、コンロバーナ10で鍋底を加熱することが可能となっている。更に、バーナ用開口2aとコンロバーナ10との間の隙間はバーナリング4で塞がれている。
【0017】
コンロバーナ10は、バーナボディ14と、バーナボディ14の上に載置されたバーナヘッド11と、点火プラグ16などを備えている。また、バーナヘッド11の上部には、幅広の円環形状のバーナカバー17が取り付けられており、バーナカバー17の中央の貫通穴から上部を突出した状態で温度センサ18が取り付けられている。後述するようにバーナボディ14の内部には、燃料ガスと空気とが混合した混合ガスが供給されている。また、バーナヘッド11には、円筒形状の外周側面に、縦長形状の複数の主炎口12と、主炎口12よりも開口面積が小さな複数の補助炎口13とが開口している。尚、図1に示した例では、主炎口12と補助炎口13とが交互に形成されているが、必ずしも交互に形成されている必要はない。例えば、複数の主炎口12が連続して形成される度に補助炎口13が形成されるようにしても良い。そして、これらの主炎口12および補助炎口13からは、バーナボディ14内の混合ガスが噴出し、この混合ガスに点火プラグ16で点火することによって燃焼が開始されるようになっている。バーナカバー17は、加熱中に調理器具から煮こぼれた場合に、ガスコンロ1の内部に煮零れ汁が入り込むことを防止する機能を有している。また、温度センサ18は、上端面が調理容器の底面に当接して、調理容器の温度を計測することができる。
【0018】
図2は、温度センサ18の位置でコンロバーナ10を縦方向に切断することによって、コンロバーナ10の構造を示した断面図である。コンロバーナ10のバーナボディ14は、プレス成形された2枚の板金を向かい合わせて、気密な状態に組み付けることによって形成されている。そして、一方の板金が外周壁14aを構成し、他方の板金が内周壁14bを構成しており、外周壁14aと内周壁14bとの間にバーナボディ室14cが形成されている。更に、バーナボディ室14cの側面には混合管15が接続されている。
【0019】
混合管15は、外周壁14aを形成する板金の一部と、内周壁14bを形成する板金に一部とを向かい合わせにして気密な状態に組み付けることによって形成されており、バーナボディ室14cに接続されていない側の管端は開口部15aとなっている。また、バーナボディ14は、外周壁14aの上端部分が内側に向けて折り曲げられることによって、円環形状の載置面14dが形成されている。そして、この載置面14dの上に、バーナヘッド11が載置されている。
【0020】
バーナヘッド11は、アルミニウム合金や真鍮などの金属材料を用いて鍛造あるいはダイカストなどによって形成された略円環形状の部品であり、円環形状の内縁部分からは筒形状の支持筒11bが下方に向けて突設されている。また、円環形状の外縁部分からは、円筒形状の筒状壁11aが下方に向けて突設されている。そして、筒状壁11aの下端面には、後述する複数本の炎口溝が放射状に穿設されている。また、炎口溝は、深く穿設された炎口溝(以下、主炎口溝11c)と、浅く穿設された炎口溝(以下、補助炎口溝11d)とが混在した状態で形成されている。このような形状のバーナヘッド11は、バーナヘッド11の支持筒11bをバーナボディ14の内周壁14bに嵌合させた状態で、バーナボディ14の載置面14dにバーナヘッド11の筒状壁11aが載置される。すると、筒状壁11aの下端面に穿設された主炎口溝11cと載置面14dとで囲まれて筒状壁11aの外周側面に開口した部分が主炎口12となり、補助炎口溝11dと載置面14dとで囲まれて筒状壁11aの外周側面に開口した部分が補助炎口13となる。図2には、主炎口溝11cの部分、および補助炎口溝11dの部分での筒状壁11aの断面が拡大して示されている。
【0021】
バーナヘッド11の上部には、図示しない取付金具によって幅広の円環形状のバーナカバー17が取り付けられている。更に、バーナカバー17の中心位置に形成された貫通穴からは、円筒形状の温度センサ18の上部が突出している。温度センサ18は、バーナヘッド11の支持筒11bの中央を貫通する支持ポール19の上端に取り付けられており、五徳3に調理容器が置かれていない時の温度センサ18の上端は五徳3の上面よりも突出している。また、バーナボディ14の上部(載置面14dが形成されている部分)は、天板2に開口するバーナ用開口2aから突出した状態となっており、バーナボディ14とバーナ用開口2aとの隙間は円環状のバーナリング4で塞がれている。
【0022】
また、混合管15端部の開口部15aを臨む位置には、燃料ガスが供給されるガスパイプ20が設けられており、ガスパイプ20の先端には燃料ガスを噴射する噴射ノズル21が取り付けられている。そして、噴射ノズル21から混合管15の内部に向けて燃料ガスを噴射すると、噴射された燃料ガスがエゼクタ効果によって周囲の空気を巻き込みながら混合管15の内部に流入して、混合管15の内部で燃料ガスと空気とが混合することによって混合ガスが形成される。こうして形成された混合ガスはバーナボディ14の内部のバーナボディ室14cを経由した後、主炎口12および補助炎口13から噴出し、その混合ガスに点火することによって燃焼が開始される。
【0023】
更に、混合管15から見て開口部15aの外側の位置には、開口部15aから隙間を空けて開口部15aを取り囲むようにして火炎ガイド30が設けられている。火炎ガイド30は板金製の部材であり、混合管15の開口部15aに対向する位置には、開口部15aと平行に衝突壁31が設けられており、衝突壁31の上辺からはバーナボディ14の方向に向かって上方壁32が延設されている。更に、衝突壁31の両方の側辺からもバーナボディ14の方向に向かって側方壁33が延設されている
【0024】
図3は、図2中に矢印Pと表示した方向から火炎ガイド30を見ることによって火炎ガイド30の外観形状を示した説明図である。上述したように火炎ガイド30には、混合管15の開口部15aに対向する位置に衝突壁31が設けられており、衝突壁31は上端が水平に折り曲げられることによって上方壁32が形成されている。更に、折り曲げられた衝突壁31は、両端が下方に折り曲げられることによって側方壁33が形成されており、側方壁33と衝突壁31との間は隙間なく密着されている。また、衝突壁31には、下端から中央にかけての範囲にスリット状の挿通孔31aが形成されている。このため、ガスパイプ20を挿通孔31aに挿通させることが可能となり、その結果、ガスパイプ20の先端の噴射ノズル21を開口部15aに臨ませて、混合管15内に向けて燃料ガスを噴射することが可能となっている。
【0025】
このように、本実施例のコンロバーナ10には火炎ガイド30が取り付けられているが、これは、たとえコンロバーナ10で逆噴が発生して混合管15の開口部15aから炎が噴き出した場合でも、ガスコンロ1内部が損傷することを回避すると共に、特別な操作をしなくても逆噴が自然に解消されるようにするためである。こうしたことが可能となる理由は次のようなものである。
【0026】
図4は、逆噴の発生時に混合管15の開口部15aから噴き出した炎の動きを概念的に示した説明図である。図中の太い一点鎖線の矢印は、開口部15aから噴き出した炎の動きを表している。図示されるように、開口部15aに対向する位置には衝突壁31が存在するので、開口部15aから噴き出した炎は衝突壁31に衝突して向きを変えられる。
【0027】
ここで、図2および図3を用いて前述したように、火炎ガイド30の形状は、衝突壁31の上方には上方壁32が形成されており、衝突壁31の左右の方向には火炎ガイド30の側方壁33が形成されているが、火炎ガイド30の下面は開放されている。このため、逆噴が発生する前には、主に火炎ガイド30の下方から混合管15の開口部15aに向かって空気が流入している。図4中に太い破線で示した矢印は、火炎ガイド30の下方から開口部15aに向かう空気の流れを概念的に表している。
【0028】
このように下方から開口部15aに向かう空気の流れが形成された状態で逆噴が発生すると、開口部15aから噴き出した炎は衝突壁31に衝突するが、衝突した炎は下方には向かわずに、主に上方や左右方向に向かうことになる。そして、衝突壁31の上方には、バーナボディ14の方向に向かって上方壁32が延設されており、衝突壁31の両側方にも、バーナボディ14の方向に向かって側方壁33が延設されている。このため、衝突壁31に衝突して上方に向きを変えた炎は、上方壁32によってバーナボディ14の方向に誘導される。また、衝突壁31に衝突して左右方向に向きを変えた炎は、衝突壁31の両側方に設けられた側方壁33によってバーナボディ14の方向に誘導される。その結果、開口部15aから噴き出した炎が、混合管15に沿ってバーナボディ14の方向に進んで行くことになる。図4には、衝突壁31に衝突した炎が、混合管15に沿ってバーナボディ14の方向に進む様子が、一点鎖線の矢印によって示されている。
【0029】
このように本実施例のコンロバーナ10では、逆噴が発生すると、開口部15aから噴き出した炎が、火炎ガイド30によってバーナボディ14の方向に誘導される。このため、混合管15やバーナボディ14が炎によって加熱され、バーナボディ14の載置面14dが加熱され、載置面14dからの伝熱によって炎口溝11c,11dも加熱される。その結果、主炎口12や補助炎口13では、閉塞していた煮零れ汁などの蒸発が促進されて炎口が開放され、正常な燃焼に戻るため、逆噴を解消することができる。
【0030】
もちろん、逆噴による炎をバーナボディ14の方向に誘導しても、主炎口12や補助炎口13を閉塞していた煮零れ汁などが直ちに蒸発するわけではない。このため、逆噴が発生しても暫くの間は、煮零れ汁などで主炎口12や補助炎口13が閉塞された状態となっており、逆噴が継続されることになる。しかし、図2および図3に示したように、混合管15の開口部15aの正面や、上方、および左右を覆うようにして火炎ガイド30が設けられているため、開口部15aから炎が噴き出しても、ガスコンロ1の内部(例えば、天板2の裏面側など)が炎で炙られることがなく、ガスコンロ1が損傷することはない。その一方で、開口部15aから噴き出した炎が、火炎ガイド30でバーナボディ14の方向に誘導される結果、主炎口12や補助炎口13を閉塞していた煮零れ汁などの蒸発が促進される。このため、暫くすれば、主炎口12や補助炎口13の閉塞が解消されるので、逆噴も解消することができる。
【0031】
このように、本実施例のコンロバーナ10では、たとえ逆噴が生じた場合でも、特別な措置を取ることなく逆噴を解消させることができ、ガスコンロ1内部が損傷を受けることもない。また、逆噴が発生しても、調理を継続したままで逆噴を解消することができるので、逆噴の発生時に燃料ガスの供給および燃焼を一旦停止して、炎口溝を掃除するなどして逆噴を解消した後、調理を継続するために再点火して燃料ガスの供給を再開するといった煩わしい操作も不要となる。
【0032】
尚、逆噴が発生するのは、全ての炎口が閉塞される必要はなく、一定程度の割合の炎口が閉塞したときに生じてしまう。この一定程度の割合は、大まかには8割程度と考えられている。逆に言えば、逆噴が発生している状態から、全炎口の中で2割程度(安全に見ても3割程度)の炎口が閉塞されていない状態に戻してやれば、逆噴を解消させることが可能となる。
【0033】
また、本実施例では、火炎ガイド30の衝突壁31が、混合管15の開口部15aに対して平行に形成されている。この理由は次のようなものである。図5は、火炎ガイド30の衝突壁31を、混合管15の開口部15aに対して斜めに形成した場合についての説明図である。図5(a)には、開口部15aに対して下方が接近するように衝突壁31を設けた場合が示されている。前述したように、開口部15aから混合管15に流入する空気は主に下方から供給されるから、図5(a)に示すように衝突壁31の下方を開口部15aに接近させると、開口部15aに向かう空気の流れが阻害されてしまう。このため、逆噴が発生していない場合に、混合管15に空気が流入しにくくなるため、混合管15での混合ガスの生成に支障を来たす虞が生じる。
【0034】
また、図5(b)には、開口部15aに対して下方が遠ざかるように衝突壁31を設けた場合が示されている。図5(b)に示したように衝突壁31の下方が開口部15aから遠ざかるような角度で衝突壁31を設けると、開口部15aに空気が供給され易くなる。このため、逆噴が発生していない場合に、混合管15での混合ガスの生成に支障を来たす虞は生じない。その一方で、衝突壁31が開口部15aに対して、下方が遠ざかるように傾いているため、逆噴が発生すると、開口部15aから噴き出した炎が、傾いた衝突壁31によって下方に導かれることとなる。その結果、炎が衝突壁31を乗り越えて火炎ガイド30の外側に漏れ出して、ガスコンロ1内部に損傷を与える虞が生じる。
【0035】
これに対して本実施例では、火炎ガイド30の衝突壁31が、混合管15の開口部15aに対して平行に形成されているので、下方から開口部15aに向かう空気の流れを衝突壁31が阻害することが無い。このため、逆噴が発生していない場合は、混合管15で燃料ガスと空気とが適切な比率で混合した混合ガスを形成することができる。その一方で、逆噴が発生した場合でも、衝突壁31に衝突した炎が衝突壁31に案内されて火炎ガイド30の外部に漏れてしまう虞も生じない。尚、上述した効果を得るためには、衝突壁31は開口部15aに対して完全に平行である必要はなく、開口部15aに対して±5度の範囲内であれば、平行から傾いていても同様な効果が得られることが、実験的に確かめられている。
【0036】
上述した本実施例の火炎ガイド30では、左右の側方壁33が平行に形成されているものとして説明した。しかし、左右の側方壁33の間隔がバーナボディ14の方向に向かって狭くなるようにしても良い。図6に例示した第1の変形例の火炎ガイド30では、図中に斜線を付して示したように、上方壁32および側方壁33がバーナボディ14に向けて延長されると共に、延長した部分では左右の側方壁33の間隔がバーナボディ14の方向に向かって狭くなるように形成されている。こうすれば、衝突壁31に衝突した炎が、上方壁32および側方壁33によってバーナボディ14の方向に向きを変えた後、延長された部分の左右の側方壁33によって炎が中央に寄せられるようになる。このため、炎が効率よくバーナボディ14を加熱するようになり、バーナボディ14の載置面14dや、バーナヘッド11の主炎口溝11cおよび補助炎口溝11dを迅速に加熱することができるので、逆噴を速やかに解消することができる。
【0037】
また、上述した本実施例の火炎ガイド30では、上方壁32は平面形状に形成されているものとして説明した。しかし、火炎ガイド30の上方壁32は、上向きの凸形状に形成しても良い。図7には、上方壁32が上向きの凸形状に形成された第3の変形例の火炎ガイド30が例示されている。図7(a)に示した例では、上方壁32が上向きの凸の曲面形状に形成されており、図7(b)に示した例では、上方壁32が上向きの凸の山型形状に形成されている。これらの第3の変形例の火炎ガイド30でも、開口部15aから噴出して衝突壁31に衝突した炎は、上方壁32によってバーナボディ14の方向に向きを変える際、あるいは上方壁32によってバーナボディ14に向かって進行する際に、凸形状になった上方壁32によって炎が中央に寄せられる。このため、第3の変形例でも、上述した第2の変形例と同様に、炎が効率よくバーナボディ14を加熱するようになるので、逆噴を速やかに解消することが可能となる。
【0038】
以上、本実施例および各種の変形例のコンロバーナ10について説明したが、本発明は上記の実施例および各種の変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…ガスコンロ、 2…天板、 2a…バーナ用開口、 3…五徳、
4…バーナリング、 10…コンロバーナ、 11…バーナヘッド、
11a…筒状壁、 11b…支持筒、 11c…主炎口溝、
11d…補助炎口溝、 12…主炎口、 13…補助炎口、
14…バーナボディ、 14a…外周壁、 14b…内周壁、
14c…バーナボディ室、 14d…載置面、 15…混合管、
15a…開口部、 16…点火プラグ、 17…バーナカバー、
18…温度センサ、 19…支持ポール、 20…ガスパイプ、
21…噴射ノズル、 30…火炎ガイド、 31…衝突壁、
31a…挿通孔、 32…上方壁、 33…側方壁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7