(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ポリイミドチューブの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 53/56 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
B29C53/56
(21)【出願番号】P 2020098608
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000161367
【氏名又は名称】株式会社アマダウエルドテック
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 健太
(72)【発明者】
【氏名】松浦 康行
(72)【発明者】
【氏名】亀井 公司
(72)【発明者】
【氏名】芝野 俊春
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-205274(JP,A)
【文献】特開昭58-132540(JP,A)
【文献】特開昭50-151274(JP,A)
【文献】特開2000-071326(JP,A)
【文献】特開昭61-249739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 53/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に延びる凹部が形成された芯棒に、ポリイミドフィルムを少なくとも二重に巻き付ける第1ステップと、
前記ポリイミドフィルムの前記凹部に対向する領域においてのみ溶着を行い、前記ポリイミドフィルムをチューブ状にしたポリイミドチューブを生成する第2ステップと、
前記ポリイミドチューブを前記芯棒から分離する第3ステップと、を含
み、
前記凹部は、前記長さ方向に延びる第1凹部と、前記第1凹部と対向するように前記長さ方向に延びる第2凹部とを含み、
前記第2ステップでは、前記ポリイミドフィルムの前記第1凹部に対向する第1領域と、前記ポリイミドフィルムの前記第2凹部に対向する第2領域とにおいて前記溶着を行うことを特徴とするポリイミドチューブの製造方法。
【請求項2】
前記溶着は、金属製のチップに電流を流して前記チップを加熱し、加熱した前記チップを前記ポリイミドフィルムに接触させることにより、前記ポリイミドフィルムを溶着させるパルスヒート溶着であることを特徴とする請求項
1に記載のポリイミドチューブの製造方法。
【請求項3】
前記第1ステップでは、前記ポリイミドフィルムの巻始め側の第1端部および巻終り側の第2端部が前記凹部と対向するように、前記ポリイミドフィルムを前記芯棒に巻き付けることを特徴とする請求項1
または2に記載のポリイミドチューブの製造方法。
【請求項4】
前記芯棒は、前記長さ方向に分割可能に構成されていることを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載のポリイミドチューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドチューブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のポリイミドチューブの製造方法としては、芯棒の表面にポリイミド前駆体溶液を均一な厚さで付着させ、加熱によりイミド転化反応を行わせてポリイミドチューブを生成し、生成したポリイミドチューブを芯棒から抜き取って分離する製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の製造方法は、芯棒として多孔質セラミックス製の円筒状の芯棒を用いている。そして、ポリイミドチューブを芯棒から分離するにあたり、ポリイミドチューブおよび芯棒と反応しない液体を、芯棒の開口端から注入して芯棒の外周表面に滲出させる。滲出させた液体によって芯棒とポリイミドチューブとの接着力を弱めた後、ポリイミドチューブを芯棒から抜き取って分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の製造方法は、ポリイミドチューブおよび芯棒と反応しない液体を芯棒の外周表面に滲出させたり、滲出させた液体により接着力を弱めたりするのに、ある程度の時間を要する。すなわち、上記特許文献1に記載の製造方法は、ポリイミドチューブを芯棒から分離するのに手間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、比較的容易にポリイミドチューブを芯棒から分離することが可能なポリイミドチューブの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るポリイミドチューブの製造方法は、
長さ方向に延びる凹部が形成された芯棒に、ポリイミドフィルムを少なくとも二重に巻き付ける第1ステップと、
前記ポリイミドフィルムの前記凹部に対向する領域においてのみ溶着を行い、前記ポリイミドフィルムをチューブ状にしたポリイミドチューブを生成する第2ステップと、
前記ポリイミドチューブを前記芯棒から分離する第3ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
この構成では、ポリイミドフィルムの溶着を、芯棒の凹部に対向する領域においてのみ行うので、ポリイミドチューブと芯棒との溶着を回避することができる。また、この構成では、芯棒とポリイミドチューブとの接着力を弱める液体等の離型剤も不要となる。したがって、この構成によれば、比較的容易にポリイミドチューブを芯棒から分離することが可能になる。
【0009】
上記ポリイミドチューブの製造方法において、
前記凹部は、前記長さ方向に延びる第1凹部と、前記第1凹部と対向するように前記長さ方向に延びる第2凹部とを含み、
前記第2ステップでは、前記ポリイミドフィルムの前記第1凹部に対向する第1領域と、前記ポリイミドフィルムの前記第2凹部に対向する第2領域とにおいて前記溶着を行うことが好ましい。
【0010】
この構成によれば、ポリイミドチューブは少なくとも第1領域および第2領域の2箇所で溶着が行われるので、ポリイミドチューブの強度を高めることができる。
【0011】
上記ポリイミドチューブの製造方法において、
前記溶着は、金属製のチップに電流を流して前記チップを加熱し、加熱した前記チップを前記ポリイミドフィルムに接触させることにより、前記ポリイミドフィルムを溶着させるパルスヒート溶着であってもよい。
【0012】
上記ポリイミドチューブの製造方法において、
前記第1ステップでは、前記ポリイミドフィルムの巻始め側の第1端部および巻終り側の第2端部が前記凹部と対向するように、前記ポリイミドフィルムを前記芯棒に巻き付けてもよい。
【0013】
上記ポリイミドチューブの製造方法において、
前記芯棒は、前記長さ方向に分割可能に構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、比較的容易にポリイミドチューブを芯棒から分離することが可能なポリイミドチューブの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るポリイミドチューブの製造方法のフローチャートである。
【
図2】本発明のポリイミドチューブの製造方法で用いられる芯棒の一例であって、(A)は正面図、(B)は右側面図である。
【
図3】本発明のポリイミドチューブの製造方法の第2ステップを説明するための図である。
【
図4】本発明のポリイミドチューブの製造方法で用いられる芯棒の変形例であって、(A)は分割した状態の正面図、(B)は右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るポリイミドチューブの製造方法の実施形態について説明する。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態に係るポリイミドチューブの製造方法のフローチャートを示す。同図に示すように、本実施形態に係るポリイミドチューブの製造方法は、芯棒10にポリイミドフィルム20を巻き付ける第1ステップ(S1)と、溶着によりポリイミドチューブ20’を生成する第2ステップ(S2)と、ポリイミドチューブ20’を芯棒10から分離する第3ステップ(S3)と、を含む。
【0018】
第1ステップでは、
図2に示す芯棒10を用いる。芯棒10は、金属製(例えば、ステンレス製)で円柱形状に構成されている。芯棒10は、両端面が面取りされていてもよい。芯棒10には、長さ方向に延びる第1凹部11と、第1凹部11と対向するように長さ方向に延びる第2凹部12とが、外周表面に形成されている。
【0019】
第1凹部11および第2凹部12は、芯棒10の長さ方向全体にわたって一定の幅および深さで形成されている。例えば、芯棒10の直径が8[mm]の場合、第1凹部11および第2凹部12の幅を2[mm]にすることができ、第1凹部11および第2凹部12の深さを1[mm]にすることができる。なお、これらの値は単なる一例であって、適宜変更可能である。
【0020】
ポリイミドフィルム20は、芯棒10に巻き付けるために可とう性を有し、かつフィルム同士を熱で溶着させるためにヒートシール性が付与されている。ポリイミドフィルム20の厚みは、例えば、75[μm]である。第1ステップでは、このポリイミドフィルム20を芯棒10に少なくとも二重に巻き付ける。
【0021】
第2ステップでは、ポリイミドフィルム20に対して溶着を行うことで、ポリイミドフィルム20をチューブ状にしたポリイミドチューブ20’を生成する。具体的には、
図3に示すように、ポリイミドフィルム20の第1凹部11に対向する第1領域R1と、ポリイミドフィルム20の第2凹部12に対向する第2領域R2とにおいてのみ溶着を行う。
【0022】
ポリイミドフィルム20は、第1ステップにおいて、ポリイミドフィルム20の巻始め側の第1端部21および巻終り側の第2端部22が第1凹部11と対向するように、芯棒10に巻き付けられている。このため、第1領域R1において第1端部21と第2端部22とが溶着される。
【0023】
本実施形態では、第1領域R1および第2領域R2の2箇所で溶着が行われるので、1箇所(第1領域R1または第2領域R2)で溶着が行われる場合と比較して、ポリイミドチューブ20’の強度を高めることができる。
【0024】
溶着は、金属製のチップに電流を流してチップを加熱し、加熱したチップを第1領域R1および第2領域R2においてポリイミドフィルム20に接触させることにより、ポリイミドフィルム20を溶着させるパルスヒート溶着が好ましい。
【0025】
パルスヒート溶着は、ポリイミドフィルム20の溶着部分が、例えば、第1凹部11および第2凹部12に沿った実線状または破線状になるように行われる。パルスヒート溶着で用いられる金属製のチップの幅は、第1凹部11および第2凹部12の幅よりも小さい。これにより、ポリイミドフィルム20の溶着部分は、第1領域R1および第2領域R2に収まる。
【0026】
第3ステップでは、ポリイミドチューブ20’を芯棒10から抜き取って分離する。本実施形態では、ポリイミドフィルム20の溶着を第1領域R1および第2領域R2においてのみ行っているので、ポリイミドチューブ20’と芯棒10との溶着を回避することができる。その結果、容易に、ポリイミドチューブ20’を芯棒10から抜き取ることができる。
【0027】
さらに、本実施形態では、芯棒10とポリイミドチューブ20’との接着力を弱める液体等の離型剤が不要となるので、ポリイミドチューブ20’を芯棒10から分離するのに要する時間を短縮することができる。
【0028】
以上、本発明に係るポリイミドチューブの製造方法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0029】
本発明に係るポリイミドチューブの製造方法において用いられる芯棒は、長さ方向に分割可能に構成されていてもよい。例えば、
図4に示すように、芯棒10aと芯棒10bとに2分割できる芯棒10を用いることができる。なお、分割数は、3以上でもよい。
【0030】
また、本発明に係るポリイミドチューブの製造方法において用いられる芯棒は、長さ方向に延びる少なくとも1つ凹部が形成されていればよい。ポリイミドチューブの強度および溶着時間の観点からは、上記実施形態のように、凹部が第1凹部11および第2凹部12で構成されることが好ましい。
【0031】
凹部の形状は、ポリイミドフィルムの溶着部分が凹部に対向する領域に収まるのであれば、適宜変更することができる。
【0032】
芯棒は、強度を維持することができるのであれば、金属以外の材料で構成してもよい。また、芯棒は、外周表面に長さ方向に延びる凹部を形成することができるのであれば、円筒形状であってもよい。
【0033】
本発明の第2ステップでは、ポリイミドフィルムの凹部に対向する領域においてのみ溶着を行うことができるのであれば、パルスヒート溶着以外の溶着(例えば、レーザ溶着)を行ってもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 芯棒
11 第1凹部
12 第2凹部
20 ポリイミドフィルム
21 第1端部
22 第2端部
20’ ポリイミドチューブ