(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】半導体発光装置、および、水殺菌装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/48 20100101AFI20240315BHJP
H01S 5/02208 20210101ALI20240315BHJP
【FI】
H01L33/48
H01S5/02208
(21)【出願番号】P 2020100398
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜來 省吾
(72)【発明者】
【氏名】山根 貴好
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 千寿
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-127255(JP,A)
【文献】特開2006-093372(JP,A)
【文献】特表2018-509290(JP,A)
【文献】特開2018-037581(JP,A)
【文献】特開2017-216389(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0162767(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01S 5/00 ー 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に搭載された半導体発光素子と、
前記基板上に搭載されたドーム状透明体とを有し、
前記ドーム状透明体は、前記半導体発光素子の周囲の空間を覆い、環状の基底部を有する凸型蓋部と、前記環状の基底部の外周縁よりも外側に張り出したつば部とを備え、
前記基板上には、前記半導体発光素子を囲むように金属からなる第1の接合パターンが形成され、
前記ドーム状透明体の前記基底部およびつば部には、前記第1の接合パターンに対応する形状の第2の接合パターンが設けられ、前記第1の接合パターンと前記第2の接合パターン間ははんだで接合され、前記凸型蓋部内の空間を封止しており、
前記第1の接合パターンおよび前記第2の接合パターンは、上面から見たときに、前記半導体発光素子を取り囲む矩形のリング状であり、その角部は、少なくとも内周側の縁が、前記凸型蓋部の環状の基底部の外周縁より外側に位置し、前記角部に挟まれた直線部は、少なくとも内周側の縁が、前記凸型蓋部の環状の基底部の外周縁よりも半導体発光素子側に位置することを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記基底部は、円環状であることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体発光装置であって、前記第2の接合パターンの幅は、前記第1の接合パターンの幅よりも狭いことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の半導体発光装置であって、前記第1の接合パターンの直線部の前記角部と角部の中間地点の内周側の縁には、前記半導体発光素子側に張り出す凸部が設けられていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体発光装置であって、前記第1の接合パターンの前記凸部の先端は、前記凸型蓋部の環状の基底部の内周縁よりも前記半導体発光素子側に張り出していることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項6】
請求項4に記載の半導体発光装置であって、前記第2の接合パターンは、前記第1の接合パターンの前記凸部に対応する凸部を備えていないことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の半導体発光装置であって、前記ドーム状透明体の前記つば部の外形は、矩形であり、前記第1の接合パターンおよび前記第2の接合パターンは、前記つば部の外形に沿って設けられていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の半導体発光装置であって、前記第1の接合パターンは、Ni、Cr、Au、Cu、Pt、Ti、Pd、および、Wのうちの、いずれかの金属により形成されているか、もしくは上記のうちの2以上の金属の層の積層体であることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項9】
請求項1に記載の半導体発光装置であって、前記はんだは、AuSnはんだであることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の半導体発光装置であって、前記ドーム状透明体の凸型蓋部は、深紫外線を透過する材質により構成されていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の半導体発光装置であって、前記半導体発光素子は、波長210nm以上310nm以下の帯域に含まれる紫外光を発することを特徴とする半導体発光装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の半導体発光装置であって、前記半導体発光素子が、面発光レーザーであることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項13】
水を供給する供給路に配置され、供給路を流れる水に深紫外光を照射する発光装置と、その駆動回路とを備えた水殺菌装置であって、前記発光装置として、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の半導体発光装置を用いたことを特徴とする水殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子の周囲の空間が気密に封止された半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気密が必要となる半導体発光装置においてその気密パッケージは、例えば特許文献1に開示されているように、キャビティタイプの基板に、平板の透光性の光学素子を貼り合わせた構造、もしくは、特許文献2のように平板の基板に、透光性のキャビティタイプの光学素子を貼り合わせた構造が使用される。例えば、ガラス等の光学素子とセラミック基板等の放熱基板を、AuSn等のはんだやロウ材によって接合し、密封する。
【0003】
また、上記のような気密パッケージでは、はんだを使用して透光性の光学素子を基板に接合する際に、はんだが接合パターンの外にはみ出すという問題が発生する。そこで、特許文献3では、はんだの濡れが悪い酸化膜などの膜を接合エリアの内周部と外周部に形成しておくことにより、接合パターンからはんだがはみ出すのを抑制する構造が提案されている。また、特許文献4では、基板に凹構造を形成しておき、はみ出した半田を凹部に収容し、凹部の外へのぬれ拡がりを抑制する構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-18873号公報
【文献】特許第5838357号公報
【文献】特開2015-073027号公報
【文献】特開2007-103909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気密パッケージにおいて、光学素子と放熱基板との接合の際に溶融したはんだが接合パターンからはみ出すという問題を、特許文献3および4のように酸化膜や溝を基板に予め形成しておくことにより抑制する構成は、コストアップに繋がる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、基板と蓋体の接合信頼性を高めて、新たに気密信頼性の高い半導体発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の半導体発光装置は、基板と、基板上に搭載された半導体発光素子と、基板の上に搭載されたドーム状透明体とを有する。ドーム状透明体は、半導体発光素子の周囲の空間を覆い、環状の基底部を有する凸型蓋部と、環状の基底部の外周縁よりも外側に張り出したつば部とを備えて構成される。基板上には、半導体発光素子を囲むように金属からなる第1の接合パターンが形成されている。ドーム状透明体の基底部およびつば部には、第1の接合パターンに対応する形状の第2の接合パターンが設けられている。第1の接合パターンと第2の接合パターン間ははんだで接合され、凸型蓋部内の空間を封止している。第1の接合パターンおよび第2の接合パターンは、上面から見たときに、半導体発光素子を取り囲む矩形のリング状であり、その角部は、少なくとも内周側の縁が、凸型蓋部の環状の基底部の外周縁より外側に位置し、角部に挟まれた直線部は、少なくとも内周側の縁が、凸型蓋部の環状の基底部の外周縁よりも半導体発光素子側に位置する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板とドーム状透明体との接合パターンが上面から見たときに矩形のリング状であり、その角部が、接合時にドーム状透明体を押し付ける際に荷重がかかる凸型蓋部の環状の基底部の外側に位置するため、接合部におけるボイドの発生を抑制して、接合信頼性が高く気密信頼性の高い半導体発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1の半導体発光装置の(a)上面図、(b)A-A’断面図。
【
図2】実施形態1の半導体発光装置のドーム状透明体4の(a)上面図、および、(b)断面図。
【
図3】実施形態1の半導体発光装置のB-B’断面図。
【
図4】実施形態1の半導体発光装置の基板1の(a)上面図、および、(b)断面図。
【
図5】実施形態1の半導体発光装置のドーム状透明体4の接合パターン5が設けられた状態の(a)上面図、および、(b)断面図。
【
図6】(a)実施形態1の半導体発光装置の製造時の接合工程における溶融はんだ7の流れを示す説明図、(b)比較例の半導体発光装置の製造時の接合工程における溶融はんだ7の流れを示す説明図。
【
図7】実施形態1の半導体発光装置の接合工程においてはんだ7が接合パターンの濡れ広がった状態の(a)C-C’断面図、(b)D-D’断面図。
【
図8】実施形態1の半導体発光装置の接合パターン5,6の層構造の一例を示す断面図。
【
図9】(a)および(b)実施形態1の半導体発光装置の製造工程において、ドーム状透明体4側の接合パターン5にはんだ7(溶融前)を搭載した状態を示す下面図。
【
図10】実施形態2の半導体発光装置の(a)上面図、(b)E-E’断面図。
【
図11】実施形態2の半導体発光装置の基板1の(a)上面図、(b)断面図。
【
図12】実施形態2の半導体発光装置の(a)上面図、(b)F-F’断面図。
【
図13】実施形態2の半導体発光装置の製造時の接合工程における溶融はんだ7の流れを示す説明図。
【
図14】実施形態2の半導体発光装置においてはんだ7が接合パターンの濡れ広がった状態の断面図。
【
図15】実施形態2の変形例1の半導体発光装置の(a)上面図、(b)断面図。
【
図16】実施形態2の変形例2の半導体発光装置の(a)上面図、(b)断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態の半導体発光装置について以下に説明する。
【0011】
<<実施形態1>>
実施形態1の半導体発光装置の構成について
図1から
図7を用いて説明する。
【0012】
実施形態1の半導体発光装置の上面図と断面図を
図1(a)、(b)に示す。
【0013】
実施形態1の半導体発光装置は、基板1と、基板1上の電極2に搭載された半導体発光素子3と、基板1に搭載されたドーム状透明体4とを備えて構成される。
【0014】
ドーム状透明体4は、その上面図と断面図を
図2(a)、(b)に示したように、半導体発光素子3の周囲の空間を覆い、環状の基底部4cを有する凸型蓋部4aと、環状の基底部4cの外周縁よりも外側に張り出したつば部4bとを備えている。本実施形態では、基底部4cは、所定幅の円環状となっている。なお、基底部4cは、
図2(a)(b)に示す通り、ドーム状透明体4において、凸型蓋部4aの厚みで底面を構成している、凸型蓋部4aの根元部分を示す。
【0015】
本実施形態では、基板1およびつば部4bは、上面から見た外形がいずれも矩形であり、角部の向きが一致するように基板1上にドーム状透明体4が搭載されている。つば部4bの大きさは、本実施形態では基板1よりもわずかに小さい。
【0016】
図3に拡大断面図を示したように、ドーム状透明体4の環状の基底部4cおよびつば部4bと、それらに接する基板1にはそれぞれ、対応する形状の接合パターン5,6が設けられている。接合パターン5,6は、つば部4bおよび基板1の矩形の外形に沿って設けられている。
【0017】
接合パターン6が設けられた基板1の上面図と断面図を
図4(a),(b)に示す。また、接合パターン5が設けられたドーム状透明体4の上面図と断面図を
図5(a),(b)に示す。
図4(a)および
図5(a)、ならびに、
図1(a),(b)からわかるように、接合パターン5,6の形状は、上面から見たときに、半導体発光素子3を取り囲むように所定幅で形成され、矩形のリング状である。
【0018】
ドーム状透明体4に設けられた接合パターン5は、ドーム状透明体4の外形を構成する各辺に沿うように形成された4つの直線部52と、隣接する直線部52の間をつなぐ角部51とから構成される。
【0019】
基板1に設けられた接合パターン6は、基板1の外形を構成する各辺に沿うように形成された4つの直線部62と、隣接する直線部62の間をつなぐ角部61とから構成される。
【0020】
接合パターン5,6間は、はんだ7によって接合され、接合層7aが形成されている(
図3参照)。これにより、凸型蓋部4内の空間8を封止している。接合層7aは、接合パターンに沿って濡れ広がっており、端部全体としてフィレット形状をしている。なお、末端部は表面張力が働きわずかに盛り上がった形状をする場合がある。また、接合パターン5の側面にはんだ7が接触していても良い。
【0021】
透明体4側の接合パターン5の幅は、基板1側の接合パターン6の幅よりも狭いことが望ましい。
【0022】
ここで、矩形のリング状の接合パターン5,6の角部51,61は、少なくとも外周側の縁51a、61aが、凸型蓋部4aの環状の基底部4cの外周縁41より外側に位置する(
図1(a)参照)ように構成されている。なお、接合パターン5,6の角部51,61の内周側の縁51b、61bも、凸型蓋部4aの環状の基底部4cの外周縁41より外側に位置することが望ましい。
【0023】
これにより、ドーム状透明体4に設けられた接合パターン5は、直線部52が基底部4cに部分的に重なるように設けられ、角部51の少なくとも一部が基底部4cの外側に位置するように設けられている。つまり、角部51には基底部4cとは重ならない領域が設けられている。
【0024】
一方、矩形のリング状の接合パターン5,6の直線部52,62は、少なくとも内周側の縁52b、62bが、凸型蓋部4aの環状の基底部4cの外周縁41よりも半導体発光素子3側に位置するように構成されている(
図1(a)参照)。また、矩形のリング状の接合パターン5,6の直線部52,62の外周側の縁52a、62aは、基底部4cの外周縁41よりも外側に位置することが望ましい。
【0025】
これにより、基板1に設けられた接合パターン6は、直線部62が基底部4cに部分的に重なるように設けられ、角部61の少なくとも一部が基底部4cの外側に位置するように設けられている。つまり、角部61には基底部4cとは重ならない領域が設けられている。
【0026】
このように、本実施形態の半導体発光装置は、矩形のリング状の接合パターン5,6を用い、その角部51、61が、ドーム状透明体4の接合時に凸型蓋部4aに加える荷重が最もかかる環状の基底部4cの外周縁41より外側に位置するように構成している。一方、接合パターン5,6の直線部52,62は、少なくとも一部が、荷重が最もかかる基底部4cの下に位置するように構成している。よって、接合工程において、接合パターン5,6の角部51,61に加わる荷重は、直線部52,62に加わる荷重よりも小さい。
【0027】
これにより、製造工程において、ドーム状透明体4を基板1に押し付ける方向の荷重をかけながら基板1を加熱すると、接合パターン5,6の間に配置されたはんだ7は、最も荷重がかかっている直線部52,62に挟まれた領域(より具体的には、基底部4cが厚み方向に重なっている領域)から溶融し始め、この溶融開始の時点では、角部51、61に挟まれた領域(基底部4cが厚み方向に重なっていない領域)のはんだ7の溶融が起きておらず、この後に溶融される。これにより、はんだ7の溶融方向を直線部52,62の中央から角部51,61へ方向付けることができる。つまり、接合の進行方向を直線部52,62の中央から角部51,61へ方向付けることができる。
【0028】
本実施形態の半導体発光装置は、接続パターン5,6の直線部52,62から角部51,61へ向かってはんだ7が溶融するとともに接合が進行していくため、溶融時にボイドが発生した場合でも、ボイドを角部51,61へ向かって押し出すように接合が進行されるため、ボイドを巻き込みにくく、冷却後にボイドが残存しにくい。
【0029】
このように、本実施形態の装置では、はんだ7により安定した接合層7aを形成することができるとともに、ドーム状透明体4の内部の空間8と外部の空間とをつなぐボイドの発生を抑制することができる。これにより、気密性の高い半導体発光装置を提供することができる。
【0030】
なお、接合パターン5,6は、例えば、Ni、Cr、Au、Cu、Pt、Ti、Pd、および、Wのうちの、いずれかの金属により形成することが可能であるし、上記金属のうちの2以上の金属の層の積層体により形成することができる。
【0031】
はんだ7は、例えば、AuSnはんだを用いることができる。製造工程の供給時のはんだの形態としては、シート状であってもよいし、ドット状であってもよい。
【0032】
半導体発光素子3は、発光ダイオード(LED)、レーザー発光ダイオード(面発光レーザーを含む)を用いることができる。半導体発光素子3は、紫外光、可視光、または赤外光を発光する、半導体発光装置の用途に応じた適宜の発光波長のものを選択することができる。ドーム状透明体4は、半導体発光素子3からの発光を透過する材質から構成される。
【0033】
例えば、半導体発光素子3として、波長210nm以上310nm以下の帯域に含まれる紫外光を発するものを用いることができる。
【0034】
この場合、ドーム状透明体4は、少なくとも凸型蓋部4aが深紫外線を透過する材質(例えば石英、ホウケイ酸ガラス、サファイアガラス)により構成されているものを用いることができる。
【0035】
半導体発光素子3は、化合物半導体で構成され、少なくともp型半導体層と発光層とn型半導体層を備える。また、波長200nm~405nmの紫外光を出射する発光ダイオードとしては、窒化アルミ系、窒化ガリウム系、窒化アルミニウムガリウム系の半導体発光素子を用いることができる。
【0036】
半導体発光素子3は、基板1に形成された電極2上に、適宜な接合材料にて実装される。本実施形態においては、AuSn接合材にて実装されている。
【0037】
半導体発光素子3は、電極2上に、図示しないサブマウント基板を介して実装することもできる。また、一つの基板に搭載される素子の数は1つでなくてもよい。基板1は、本実施形態のように平板状に限らず、半導体発光素子3搭載位置に凹部を備えた形状とすることもできる。
【0038】
基板1は、気密を保つことのできる基材である窒化アルミニウム(AlN)を用いることができる。基材には、窒化アルミニウム(AlN)以外に、窒化珪素(Si3N4)、炭化珪素(SiC)、酸化アルミ(Al2O3)などの窒化物、炭化物、または、酸化物からなるセラミックを用いることができる。高温焼成セラミック基板であっても低温焼成セラミック基板であってもよい。セラミックス基材のセラミックス基材の基板1を用いることにより、半導体発光素子3で発生した熱を効率よく放熱することができるとともに、耐紫外線性を有するので半導体発光素子3が紫外光を発しても長期に光出力を維持できる。
【0039】
基板1に形成された電極2上には、半導体発光素子3が実装される。電極2は、半導体発光素子と電気的に接続され、図示されていない、基板1の裏面に形成された裏面電極、基板1を貫通して形成された貫通電極と連続して形成されており、半導体発光素子3に外部より電気的供給を行う。電極2上には、半導体発光素子3以外にも、用途に応じて、他のツェナーダイオード、フォトダイオードなどの電子部品等を搭載することができる。
【0040】
中空部8には、半導体発光素子3とドーム状透明体4との間の屈折率段差を軽減する材料が配置されていても良い。
【0041】
ドーム状透明体4の底面(つば部4bおよび基底部4cの基板1側の面)は、表面に微細な凹凸を形成すること、すなわち、粗すことができる。透明体4の底面を粗すことにより、わずかにレンズの外側が反りあがる形状となり、接合時に接合を内側から外側方向に進行させることができ、より接合安定性の高い半導体発光装置を提供することができる。反り量が大きすぎることによる接合不良が生じることのないよう、反り量(ドーム状透明体4の底面における内側と外側との高さの差)が基板側の接合パターン6の厚みより小さくなるよう粗し量を設定することが好ましい。
【0042】
<製造方法>
本実施形態の半導体発光装置の製造方法の一例について説明する。
【0043】
例えばAlN製の基板1を用意し、上述した矩形のリング状の接合パターン6と電極2を形成しておく。接合パターン6の層構造は、例えば、
図8に示すように、基板1側から順にNiCr層、Au層、Ni層およびAu層を順に積層した構造とする。接合パターン6の最上層は、接合時に溶融して、溶融したはんだ7と混合してはんだ7の組成を変化することによりはんだ7より融点の高い共晶接合層を形成させることのできる材料であることが好ましい。例えば、はんだ7のAuSnを用いる場合に、接合パターン6の最上層はAu層とすることが好ましい。
【0044】
一方、石英ガラス製のドーム状透明体4を用意し、基底部4cおよびつば部4bに、上述した矩形のリング状の接合パターン5を形成しておく。接合パターン5の層構造は、例えば、
図8に示すように、ドーム状透明体4側から順に、Ti層、Pd層、Cu層、Ni層およびAu層を積層した構造とする。接合パターン5の最上層は、接合時に溶融して、溶融したはんだ7と混合してはんだ7の組成を変化することによりはんだ7より融点の高い共晶接合層を形成させることのできる材料であることが好ましい。例えば、はんだ7のAuSnを用いる場合に、接合パターン5の最上層はAu層とすることが好ましい。
【0045】
ドーム状透明体4の接合パターン5の表面に、接合に用いるはんだ7を固着する。接合用はんだ7は、例えばAuSnである。その形状は、
図9(a)に示すように、矩形のリング状の接合パターン5の形状と同形状で、幅が接合パターン5よりも狭いシート状のものであってもよいし、
図9(b)のように、ドット状はんだであってもよい。
【0046】
シート状のはんだ7は、部分的にレーザー溶着によって接合パターン5に仮固着する。ドット状はんだ7は、溶融したはんだ7をドット状に飛ばして接合パターン5に溶着する。ドット状はんだ7の径は、接合パターン5の幅よりも小さい。接合パターン5上に溶着するドット状はんだ7の数は、20~36個が好ましく、より好ましくは28個である。
【0047】
AuSnはんだ7のAuとSnの組成比は、シート状およびドット状のいずれも、Au濃度が73wt%~83wt%のものであることが好ましく、Au濃度が78wt%のものがより好ましい。
【0048】
つぎに、基板1の電極2に、波長210nm以上310nm以下の紫外光を発するAlGaN系材料からなる半導体発光素子3を実装する。
【0049】
つぎに、基板1の半導体発光素子3を覆うように、ドーム状透明体4を基板1上に搭載し、接合パターン5と接合パターン6が重なるように位置合わせする。
【0050】
つぎに、ドーム状透明体4の頂点に荷重を掛けて、基板1に押し付けながら、はんだ7を加熱し、溶融させる。
【0051】
具体的には、まず、封入ガスを調整可能な接合装置内に半導体発光素子が実装された基板1とドーム状透明体4をセットする。ドーム状透明体4の開口が上を向くようにセットし、そのドーム状透明体4の上方に基板を半導体発光素子が実装された側が下を向くようにセットする。次に、基板1をはんだ7が溶融する温度よりやや低い温度に加熱し、真空状態にして水分を除去する。その後、接合装置内を窒素ガスで大気圧にて置換しつつ、ドーム状透明体4の頂部を接合装置の可動部により押し上げて、ドーム状透明体4を基板1に下から押圧して空間8を密閉する。続いて、基板1をはんだ7の溶融温度まで加熱し、所定時間保持した後、冷却することにより接合部を形成して、空間8を気密封止する。
【0052】
これにより、上述したように、まず、接合パターン5の直線部52,62のはんだ7が溶融し、角部51,61に向かって流れ、次に、角部51,61のはんだ7が溶融する。その後、冷却することにより、はんだ7により接合パターン5と6を接合することができる。
【0053】
はんだ7は溶融し、接合層を形成する。
【0054】
以上により紫外光を発する半導体発光装置を製造することができる。
【0055】
製造された半導体発光装置は、接合パターン5の角部を、荷重のかかる基底部4cの外側に配置しているため、はんだ7の空間8内へのはみ出しを抑制できる。また、ボイドの発生を防ぐことができる。
【0056】
また、表面に曲面をもつドーム状透明体4(石英ガラス)で半導体発光素子3を覆って気密空間を形成しているため、全反射を生じにくく、光取り出し効率が上昇する。
【0057】
<比較例1>
図6(b)に比較例1として、基底部4cとつば部4bの全体に接合パターン5,6を形成した場合のはんだ7の溶融の進み方を示す。
【0058】
比較例における接合パターン5,6は、外形が矩形のリング状であり、外周側の縁51a、61aは略矩形で、内周側の縁51b、61bは、円形である。比較例における接合パターン5,6は、実施形態1と同様、外周側の縁51a、61aが、凸型蓋部4aの円環状の基底部4cの外周縁41より外側に位置するように構成されている。しかし、比較例における接合パターン5,6は、実施形態1とことなり、内周側の縁51b、61bは、全周に亘って、凸型蓋部4aの円環状の基底部4cの外周縁41より内側に位置している。
【0059】
この比較例1の構成では、X線透過観察を行った結果、接合パターン5、6上の接合層7aに気泡が発生していた。この比較例1半導体発光装置の気泡の発生は、実施形態1の半導体発光装置の気泡の発生と比較して多かった。実施形態1の半導体発光装置のサンプルについてのX線透過観察では、明らかな接合層7aの気泡の発生は認められなかった。これは、比較例1の半導体発光装置においては、荷重がかかる基底部4cの複数の位置から溶融が開始し、その結果、多方向から接合が進んできた接合箇所がぶつかり、ぶつかった位置がボイドの発生を起こしたことが要因と考えられる。また、ボイドの発生する位置はランダムであった。このため、ドーム状透明体4の内部の空間8と外部の空間とをつなぐボイドが発生するおそれがある。
【0060】
<<実施形態2>>
実施形態2の半導体発光装置について、
図10~
図14を用いて説明する。
図10(a)、(b)は、実施形態2の半導体発光装置bの上面図と断面図である。
図11(a)、(b)は、実施形態2の半導体発光装置の基板1の上面図と断面図である。
【0061】
実施形態2の半導体発光装置は、
図10、
図11および
図12のように、実施形態1の装置と同様の構成であるが、基板1の接合パターン6の直線部62の内周側の縁62bには、半導体発光素子3側に張り出す凸部63が設けられている点が実施形態1とは異なっている。凸部63の縁の形状は、本実施形態のおいては、略円弧状である。凸部63が設けられている位置は、角部61と角部61の中間地点である。凸部63は4か所設けられている。
【0062】
接合パターン6の凸部63の先端は、
図10(a)、(b)、
図12のように、ドーム状透明体4の環状の基底部4cの内周縁42よりも半導体発光素子3側に張り出していることが望ましい。
【0063】
ドーム状透明体4の接合パターン5の形状は、実施形態1と同じである(
図5参照)。すなわち、ドーム状透明体4側の接合パターン5は、基板1側の接合パターン5の凸部63に対応する凸部形状を備えていない。
【0064】
金属から構成される接合パターン6が幅広の凸部63を備えることにより、ドーム状透明体4を接合する製造工程において、基板1を加熱すると凸部63の温度が周辺より高くなる。そして、凸部63が隣接する直線部62の接合パターン5,6の一部は、ドーム状透明体4の基底部4cと重なっているため、接合時に基底部4cによって押圧され、最初にはんだ7が溶融する。よって、溶融開始位置が凸部63に隣接する直線部62の接合パターン5,6に固定され、
図12に示すように、直線部62から角部61に向かう溶融はんだの流れを実施形態1よりも明確に生じさせることができ、安定した接合層を形成することができる。また、溶融したはんだの流れがぶつかり合う箇所も少なく、ボイドの発生を抑制することができる。よって、ドーム状透明体4の内部の空間8から外部の空間までつながるボイドの発生を抑制することができる。
【0065】
また、実施形態2の半導体発光装置は、実施形態1の半導体発光装置と比較して、はんだボールの発生を抑制することができる。
【0066】
ここで、実施形態1の半導体発光装置においては、接合層7a形成のために十分なはんだ7の供給が必要であるが、はんだ7の量が多すぎる場合には、
図7に示すように、余剰のはんだ7が、接合パターン5,6からはみ出し、基板1表面に濡れないために、ボール状に固まるはんだボール71を形成する可能性がある。はんだボール71は、空間8に突出して視認可能となり外観不良となる可能性、基板1上の電極2に到達して発光素子の不灯など信頼性の低下を引き起こす可能性、がある。特に、はんだボール71の空間8への突出は、
図7(a)に示すC-C´断面においては、D-D´断面よりも生じやすい。
【0067】
これに対し、実施形態2の半導体発光装置においては、はんだ7の量が多い場合でも、
図14に示すように、凸部63にはんだを濡れ広がらせ、表面張力で保持することができるため、接合パターン6からはんだ7がはみ出してはんだボールを形成するのを抑制することができる。つまり、はんだ7の設計自由度を高め、信頼性の高い接合層7aを形成することができる。
【0068】
よって、はんだボールが電極2に接してショートを発生するのを抑制することができるため、不良発生の抑制できる。
【0069】
実施形態2の装置の他の構成および作用・効果は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0070】
<実施形態2の変形例1>
実施形態2の変形例1の半導体発光装置の上面図と断面図を
図15(a)、(b)に示す。実施形態2の
図10(a),(b)に示した構成では、凸部63の先端が、ドーム状透明体4の基底部4cの内側の縁42よりも半導体発光素子3側に張り出しているが、変形例1の
図15(a),(b)の装置のように、凸部63の先端が、基底部4cの内側の縁42よりも外側に位置していてもよい。
【0071】
<実施形態2の変形例2>
実施形態2の変形例2の半導体発光装置の上面図と断面図を
図16(a)、(b)に示す。実施形態2の
図10(a),(b)に示した構成では、基板1側の接合パターン6には、凸部63が設けられているが、ドーム状透明体4の接合パターン5には凸部は設けられていない構成であった。変形例2の
図16(a),(b)のように、ドーム状透明体4の接合パターン5にも凸部64を設けてもよい。凸部64は、凸部63と対向する位置に設けられている。
【0072】
なお、実施形態1および2、ならびに、変形例1,2において、ドーム状透明体4の凸型蓋部4aの形状は、内部の空間8が基板1に対して凸状であればよい。よって、凸型蓋部4aは、空間8が半球状であってもよいし、半楕円体形状であってもよい。
【0073】
また、凸型蓋部4aの外形は、半球状や半楕円体形状に限られず、どのような形状であってもよい。例えば、凸型蓋部4aの外形は、直方体状であっても良い。
【0074】
さらに、凸型蓋部4aの基底部4cは、円形に限られず、楕円形であってもよい。
【0075】
<実施形態3>
実施形態3として、実施形態1,2および変形例1,2の半導体発光装置を用いた水殺菌装置について説明する。
【0076】
水殺菌装置は、水を供給する供給路に半導体発光装置とその駆動回路が配置されている。半導体発光装置は、供給路を流れる水に深紫外光を照射し、殺菌する。
【0077】
また、実施形態1,2および変形例1,2の半導体発光装置は、半導体発光素子3として深紫外LEDを封止するLEDパッケージとして用いることができる。また、半導体発光素子として面発光レーザーを封止するレーザーパッケージとして用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
1…基板、2…電極、3…半導体発光素子、4…ドーム状透明体、4a…凸型蓋部、4b…つば部、4c…基底部、5、6…接合パターン、7…はんだ、8…空間、41…基底部の外周縁、42…基底部の内周縁、51、61…接合パターンの角部、52、62…接合パターンの直線部、63、64…凸部