(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
B60L 5/00 20060101AFI20240315BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20240315BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B60L5/00 B
B60M7/00 X
B61B13/00 T
(21)【出願番号】P 2020108025
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(73)【特許権者】
【識別番号】508192142
【氏名又は名称】台湾大福高科技設備股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】市野 清秀
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-210371(JP,A)
【文献】特開平08-336208(JP,A)
【文献】特開2016-184690(JP,A)
【文献】特開2019-129657(JP,A)
【文献】特開2015-146158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
B60M 7/00
B61B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に設定された直線経路と曲線状に形成された曲線経路とを備えた走行経路に沿って配置された走行レールと、前記走行レールに案内されて前記走行経路に沿って走行する物品搬送車と、前記走行経路に沿って配設された給電線と、を備えた物品搬送設備であって、
前記物品搬送車は、搬送車本体と、第1走行部と、第2走行部と、前記給電線から非接触で駆動用電力を受電する受電部と、を備え、
前記給電線は、前記受電部に対して、上下方向視で前記走行経路の長手方向と直交する経路幅方向の両側に配置され、
前記第1走行部と前記第2走行部とは、前記物品搬送車の走行方向に並んで配置され、
前記第1走行部は、第1支持機構を介して前記搬送車本体に連結されると共に、前記走行レールにより案内され、
前記第2走行部は、第2支持機構を介して前記搬送車本体に連結されると共に、前記走行レールにより案内され、
前記第1支持機構は、前記上下方向に沿うと共に前記上下方向視で前記第1走行部と重複するように配置された第1軸心周りに回転可能に、前記第1走行部を支持し、
前記第2支持機構は、前記上下方向に沿うと共に前記上下方向視で前記第2走行部と重複するように配置された第2軸心周りに回転可能に、前記第2走行部を支持し、
前記受電部は、前記第1軸心を囲むように配置された第1受電部と、前記第2軸心を囲むように配置された第2受電部とを備
え、
前記走行方向において前記第2走行部から前記第1走行部へ向かう側を走行方向第1側、その反対側を走行方向第2側として、
前記第1支持機構は、前記第1受電部に対して前記走行方向第1側において前記第1走行部と前記搬送車本体とを連結する第1外側連結部と、前記走行方向第2側において前記第1走行部と前記搬送車本体とを連結する第1内側連結部とを備え、
前記第2支持機構は、前記第2受電部に対して前記走行方向第2側において前記第2走行部と前記搬送車本体とを連結する第2外側連結部と、前記走行方向第1側において前記第2走行部と前記搬送車本体とを連結する第2内側連結部とを備える、物品搬送設備。
【請求項2】
直線状に設定された直線経路と曲線状に形成された曲線経路とを備えた走行経路に沿って配置された走行レールと、前記走行レールに案内されて前記走行経路に沿って走行する物品搬送車と、前記走行経路に沿って配設された給電線と、を備えた物品搬送設備であって、
前記物品搬送車は、搬送車本体と、第1走行部と、第2走行部と、前記給電線から非接触で駆動用電力を受電する受電部と、を備え、
前記給電線は、前記受電部に対して、上下方向視で前記走行経路の長手方向と直交する経路幅方向の両側に配置され、
前記第1走行部と前記第2走行部とは、前記物品搬送車の走行方向に並んで配置され、
前記第1走行部は、第1支持機構を介して前記搬送車本体に連結されると共に、前記走行レールにより案内され、
前記第2走行部は、第2支持機構を介して前記搬送車本体に連結されると共に、前記走行レールにより案内され、
前記第1支持機構は、前記上下方向に沿うと共に前記上下方向視で前記第1走行部と重複するように配置された第1軸心周りに回転可能に、前記第1走行部を支持し、
前記第2支持機構は、前記上下方向に沿うと共に前記上下方向視で前記第2走行部と重複するように配置された第2軸心周りに回転可能に、前記第2走行部を支持し、
前記受電部は、前記第1軸心を囲むように配置された第1受電部と、前記第2軸心を囲むように配置された第2受電部とを備え、
前記走行方向において前記第2走行部から前記第1走行部へ向かう側を走行方向第1側、その反対側を走行方向第2側として、
前記第1支持機構は、
前記第1軸心周りに前記第1走行部を回転可能に支持する第1揺動軸と、
前記第1走行部に連結される第1上側連結部材と、
前記第1揺動軸を介して前記搬送車本体に連結される第1下側連結部材と、
前記第1受電部に対して走行方向第1側において前記第1上側連結部材と前記第1下側連結部材とを連結する第1外側連結部と、
前記走行方向第2側において前記第1上側連結部材と前記第1下側連結部材とを連結する第1内側連結部とを備え、
前記第2支持機構は、
前記第2軸心周りに前記第2走行部を回転可能に支持する第2揺動軸と、
前記第2走行部に連結される第2上側連結部材と、
前記第2揺動軸を介して前記搬送車本体に連結される第2下側連結部材と、
前記第2受電部に対して前記走行方向第2側において前記第2上側連結部材と前記第2下側連結部材とを連結する第2外側連結部と、
前記走行方向第1側において前記第2上側連結部材と前記第2下側連結部材とを連結する第2内側連結部とを備える、物品搬送設備。
【請求項3】
前記第1受電部は、前記第1走行部と一体的に前記第1軸心周りに回転するように構成され、前記第2受電部は、前記第2走行部と一体的に前記第2軸心周りに回転するように構成されている、請求項1
又は2に記載の物品搬送設備。
【請求項4】
前記第1受電部及び前記第2受電部の前記経路幅方向の寸法よりも、前記第1外側連結部、前記第1内側連結部、前記第2外側連結部、及び前記第2内側連結部の前記経路幅方向の寸法の方が短い、請求項
1から3
の何れか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項5】
前記第1受電部は、前記第1軸心を対称軸として配置され、前記第2受電部は、前記第2軸心を対称軸として配置されている、請求項1から4の何れか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項6】
前記受電部に対して前記経路幅方向の両側に配置された前記給電線の前記経路幅方向の間隔は、前記直線経路に比べて、前記曲線経路の方が広い、請求項1から5の何れか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項7】
前記受電部は、前記給電線と同じ高さに位置する第1部分と、前記第1部分から前記経路幅方向の両側に延出して前記給電線に対して上下両側に位置する一対の第2部分とを備え、
一対の前記第2部分のそれぞれが、前記上下方向視で前記給電線と重複している請求項1から6の何れか一項に記載の物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線経路と曲線経路とを備えた走行経路に沿って配置された走行レールに案内されて走行する物品搬送車と、走行経路に沿って配設された給電線とを備えた物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2011-116313号公報及び特開2016-210371号公報には、走行方向における前後に並んだ2つの走行部に本体部が吊り下げ支持されて構成された物品搬送車を備えた物品搬送設備が開示されている。これらの物品搬送設備では、物品搬送車が走行する走行レールに沿って給電線が配設されており、物品搬送車は、給電線から非接触で駆動用電力を受け取る受電部を備えている。物品搬送車は、受電部が受電した電力を用いて、走行モータ等を駆動して、走行する。
【0003】
特開2011-116313号公報の物品搬送車は、走行方向における前後に並んだ2つの走行部の間に受電部を備えている。つまり、1台の物品搬送車に1つの受電部が備えられている。また、特開2016-210371号公報の物品搬送車は、2つの走行部のそれぞれと本体部とを相対回転可能に連結するそれぞれの連結軸の前後に受電部を備えている。つまり、1つの走行部に2つの受電部が備えられ、1台の物品搬送車には、4つの受電部がそなえられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-116313号公報
【文献】特開2016-210371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、受電部が給電線から受電することのできる電力(受電能力)は、受電部の構成(大きさや回路素子の定数等)によって異なる。また、受電部に要求される受電能力は、物品搬送車による搬送対象の物品によっても異なる。例えば、より重量の大きい物品を搬送する物品搬送車では、より大きい受電能力が必要である。例えば、特開2011-116313号公報の物品搬送車において受電能力を向上させる場合には、2つの走行部の間にもう1つ受電部を配置することが考えられる。しかし、この場合には、物品搬送車の走行経路に沿った長さが長くなることで、走行レールがカーブしている曲線経路において、給電線と受電部との距離を確保できず、給電線と受電部とが干渉する可能性がある。
【0006】
特開2016-210371号公報の物品搬送車では、2つの走行部のそれぞれに受電部を備えているため、特開2011-116313号公報の物品搬送車よりも受電能力を高くすることができる。しかし、1台の走行部における走行方向の上流側の受電部の上流側の端部から、下流側の受電部の下流側の端部までの前後方向の長さは、単一の受電部を備える場合の受電部の前後方向の長さに比べて長くなる。このため、走行レールがカーブしている曲線経路において、給電線と受電部との距離を確保できず、給電線と受電部とが干渉する可能性がある。
【0007】
上記のように、カーブにおける給電線と受電部とが干渉することに考慮して、給電線と受電部との離間距離を広げておくことも考えられる。しかし、この場合には、給電線と受電部との距離が開きすぎ、送電効率が低下して十分な受電能力が確保できなくなる可能性がある。従って、給電線に対して受電部を適切に配置することが求められる。
【0008】
上記背景に鑑みて、走行経路がカーブ状の箇所における給電線と受電部との干渉を抑制すると共に、給電線と受電部との距離が離れすぎることによる受電能力の低下を抑制して受電部を配置する技術の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記に鑑みた物品搬送設備は、1つの態様として、直線状に設定された直線経路と曲線状に形成された曲線経路とを備えた走行経路に沿って配置された走行レールと、前記走行レールに案内されて前記走行経路に沿って走行する物品搬送車と、前記走行経路に沿って配設された給電線と、を備えた物品搬送設備であって、前記物品搬送車は、搬送車本体と、第1走行部と、第2走行部と、前記給電線から非接触で駆動用電力を受電する受電部と、を備え、前記給電線は、前記受電部に対して、上下方向視で前記走行経路の長手方向と直交する経路幅方向の両側に配置され、前記第1走行部と前記第2走行部とは、前記物品搬送車の走行方向に並んで配置され、前記第1走行部は、第1支持機構を介して前記搬送車本体に連結されると共に、前記走行レールにより案内され、前記第2走行部は、第2支持機構を介して前記搬送車本体に連結されると共に、前記走行レールにより案内され、前記第1支持機構は、前記上下方向に沿うと共に前記上下方向視で前記第1走行部と重複するように配置された第1軸心周りに回転可能に、前記第1走行部を支持し、前記第2支持機構は、前記上下方向に沿うと共に前記上下方向視で前記第2走行部と重複するように配置された第2軸心周りに回転可能に、前記第2走行部を支持し、前記受電部は、前記第1軸心を囲むように配置された第1受電部と、前記第2軸心を囲むように配置された第2受電部とを備え、前記走行方向において前記第2走行部から前記第1走行部へ向かう側を走行方向第1側、その反対側を走行方向第2側として、前記第1支持機構は、前記第1受電部に対して前記走行方向第1側において前記第1走行部と前記搬送車本体とを連結する第1外側連結部と、前記走行方向第2側において前記第1走行部と前記搬送車本体とを連結する第1内側連結部とを備え、前記第2支持機構は、前記第2受電部に対して前記走行方向第2側において前記第2走行部と前記搬送車本体とを連結する第2外側連結部と、前記走行方向第1側において前記第2走行部と前記搬送車本体とを連結する第2内側連結部とを備える。
また、上記に鑑みた物品搬送設備は、1つの態様として、直線状に設定された直線経路と曲線状に形成された曲線経路とを備えた走行経路に沿って配置された走行レールと、前記走行レールに案内されて前記走行経路に沿って走行する物品搬送車と、前記走行経路に沿って配設された給電線と、を備えた物品搬送設備であって、前記物品搬送車は、搬送車本体と、第1走行部と、第2走行部と、前記給電線から非接触で駆動用電力を受電する受電部と、を備え、前記給電線は、前記受電部に対して、上下方向視で前記走行経路の長手方向と直交する経路幅方向の両側に配置され、前記第1走行部と前記第2走行部とは、前記物品搬送車の走行方向に並んで配置され、前記第1走行部は、第1支持機構を介して前記搬送車本体に連結されると共に、前記走行レールにより案内され、前記第2走行部は、第2支持機構を介して前記搬送車本体に連結されると共に、前記走行レールにより案内され、前記第1支持機構は、前記上下方向に沿うと共に前記上下方向視で前記第1走行部と重複するように配置された第1軸心周りに回転可能に、前記第1走行部を支持し、前記第2支持機構は、前記上下方向に沿うと共に前記上下方向視で前記第2走行部と重複するように配置された第2軸心周りに回転可能に、前記第2走行部を支持し、前記受電部は、前記第1軸心を囲むように配置された第1受電部と、前記第2軸心を囲むように配置された第2受電部とを備え、前記走行方向において前記第2走行部から前記第1走行部へ向かう側を走行方向第1側、その反対側を走行方向第2側として、前記第1支持機構は、前記第1軸心周りに前記第1走行部を回転可能に支持する第1揺動軸と、前記第1走行部に連結される第1上側連結部材と、前記第1揺動軸を介して前記搬送車本体に連結される第1下側連結部材と、前記第1受電部に対して走行方向第1側において前記第1上側連結部材と前記第1下側連結部材とを連結する第1外側連結部と、前記走行方向第2側において前記第1上側連結部材と前記第1下側連結部材とを連結する第1内側連結部とを備え、前記第2支持機構は、前記第2軸心周りに前記第2走行部を回転可能に支持する第2揺動軸と、前記第2走行部に連結される第2上側連結部材と、前記第2揺動軸を介して前記搬送車本体に連結される第2下側連結部材と、前記第2受電部に対して前記走行方向第2側において前記第2上側連結部材と前記第2下側連結部材とを連結する第2外側連結部と、前記走行方向第1側において前記第2上側連結部材と前記第2下側連結部材とを連結する第2内側連結部とを備える。
【0010】
受電部は、給電線から非接触で駆動用電力を受電するため、経路幅方向において給電線との間に適切な距離を保つように配置される。この距離が近すぎると、物品搬送車が曲線経路を走行する際に給電線と受電部とが干渉する可能性が高くなり、この距離が遠すぎると受電の効率が低下する。本構成によれば、第1受電部が第1軸心を囲むように配置され、第2受電部が第2軸心を囲むように配置されている。このため、走行方向の一方側における受電部の端部と、他方側における受電部の端部との間の距離が長くなることを抑制することができる。つまり、第1軸心及び第2軸心から、これらの端部までの距離が長くなることが抑制されるので、曲線経路における給電線に対する当該端部の経路幅方向への相対移動量を少なく抑えることができる。その結果、給電線と受電部との距離が近づきすぎて給電線と受電部とが接触する可能性を低減させると共に、給電線と受電部との距離が離れすぎて受電効率が大きく低下する可能性を低減させることができる。つまり、本構成によれば、走行経路がカーブ状の箇所における給電線と受電部との干渉を抑制すると共に、給電線と受電部との距離が離れすぎることによる受電能力の低下を抑制して受電部を配置することができる。
【0011】
物品搬送設備のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図6】比較例の受電部の構成例を模式的に示す平面図
【
図8】曲線経路における受電部と給電線との関係の一例を示す平面図
【
図9】曲線経路における比較例の受電部と給電線との関係の一例を示す平面図
【
図12】他の形態の受電部及び揺動軸の一例を示す断面図
【
図13】他の形態の受電部及び揺動軸の他の例を示す断面図
【
図16】従来の受電部を備えた物品搬送車の要部の側面図
【
図17】従来の受電部を複数個備えた物品搬送車の要部の側面図
【
図18】比較例の受電部を備えた物品搬送車の要部の側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、物品搬送設備の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すように、物品搬送設備100には、走行経路1に沿って配置された走行レール2と、走行レール2に案内されて走行経路1に沿って走行する物品搬送車3とを備えている。物品搬送車3による搬送対象の物品は、例えば、半導体基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)や、ディスプレイの材料となるガラス基板等である。
【0014】
図1に示すように、走行経路1は、1つの環状の主経路1aと複数の物品処理部Pを経由する環状の副経路1bと、これら主経路1aと副経路1bとを接続する接続経路1cとを備えている。主経路1a及び複数の副経路1bは、いずれも同じ方向周り(
図1では矢印で示すように時計回り)に物品搬送車3が走行する経路である。走行経路1には、直線状に設定された直線経路1dと曲線状に設定された曲線経路1eとがある。走行経路1は、直線経路1dと曲線経路1eとを組み合わせて設定されている。
【0015】
以下、
図2及び
図3に示すように、物品搬送車3が走行する方向を走行方向L、平面視で走行方向Lに直交する方向を経路幅方向H、走行方向L及び経路幅方向Hに直交する方向を上下方向Zと称して説明する。物品搬送車3が走行経路1の直線経路1dを走行しているときは、走行経路1が延伸する経路長手方向と走行方向Lとが同じ方向となり、物品搬送車3の前後方向と走行方向Lとも同じ方向となる。また、物品搬送車3の平面視における車体横幅方向と経路幅方向Hとも同じ方向となる。以下の説明において、方向に基づいて物品搬送車3の構造を規定する場合は、物品搬送車3が走行経路1の直線経路1dを走行している際の姿勢を基準とする。
【0016】
図2に示すように、物品搬送車3は、走行経路1に沿って天井から吊り下げ支持されて配置された一対の走行レール2に案内されて走行経路1に沿って走行する走行部9と、走行レール2の下方に位置して走行部9に吊り下げ支持された搬送車本体10と、走行経路1に沿って配設された給電線11から非接触で駆動用電力を受電する受電部4とを備えている。搬送車本体10には、搬送車本体10に昇降自在に備えられて物品を吊り下げ状態で支持する物品支持部(不図示)が備えられている。
【0017】
本実施形態では、
図3に示すように、走行部9として、第1走行部9fと第2走行部9rとが備えられ、受電部4として、第1受電部4fと第2受電部4rとが備えられている。また、第1走行部9f及び第2走行部9rと搬送車本体10とを連結する支持機構5として、第1支持機構5fと第2支持機構5rとが備えられている。本実施形態では、第1走行部9fと第2走行部9rとは同じ構成であり、以下、区別の必要のない場合は、適宜、走行部9として説明する。また、第1受電部4f及び第2受電部4rとも、同じ構成であり、以下、区別の必要のない場合は、適宜、受電部4として説明する。また、第1支持機構5fと第2支持機構5rとも同じ構成であり、以下、区別の必要のない場合は、適宜、支持機構5として説明する。
【0018】
第1走行部9fと第2走行部9rとは、物品搬送車3の走行方向Lに沿って並んで配置されている。第1走行部9fは、物品搬送車3の進行方向において前方側、第2走行部9rは、進行方向において後方側に配置されている。また、以下の説明では、走行方向Lにおいて第2走行部9rから第1走行部9fへ向かう側(進行方向側)を走行方向第1側L1、その反対側を走行方向第2側L2として説明する。
【0019】
第1走行部9f及び第2走行部9rには、
図2に示すように、電動式の駆動モータ14にて回転駆動される一対の走行輪15が備えられている。走行輪15は、走行レール2のそれぞれの上面にて形成される走行面を転動する。また、第1走行部9f及び第2走行部9rには、上下方向Zに沿う軸心周り(上下軸心周り)で自由回転する一対の案内輪16が、一対の走行レール2における内側面に接当する状態で備えられている。また、走行部9は、例えば
図4に示すような走行用の駆動モータ14やその駆動回路の一部としてのインバータ6等を備えて構成されており、物品搬送車3を走行レール2に沿って走行させる。搬送車本体10には、物品支持部を昇降させるアクチュエータ、物品を把持する把持部を駆動するアクチュエータ等、及び、それらの駆動回路等が備えられている。
【0020】
図3に示すように、第1走行部9f及び第2走行部9rは、それぞれ支持機構5を介して搬送車本体10に連結されている。支持機構5は、上下方向Zに沿う縦軸心(揺動軸心X(第1軸心X1、第2軸心X2))周りに走行部9を回転可能に支持する揺動軸7を備えている。具体的には、第1走行部9fは、第1支持機構5fを介して搬送車本体10に連結されると共に、走行レール2により案内され、第2走行部9rは、第2支持機構5rを介して搬送車本体10に連結されると共に、走行レール2により案内される。また、第1支持機構5fは、上下方向Zに沿うと共に上下方向Z視で第1走行部9fと重複するように配置された第1軸心X1周りに第1走行部9fを回転可能に支持する第1揺動軸7fを備えて、第1走行部9fを支持している。同様に、第2支持機構5rは、上下方向Zに沿うと共に上下方向Z視で第2走行部9rと重複するように配置された第2軸心X2周りに第2走行部9rを回転可能に支持する第2揺動軸7rを備えて、第2走行部9rを支持している。
【0021】
第1走行部9f及び第2走行部9rは、それぞれ案内輪16が走行レール2に接触して案内されることによって、走行経路1に沿った姿勢を維持しながら走行経路1に沿って走行する。具体的には、第1走行部9fや第2走行部9rは、走行経路1の直線経路1dを走行する場合は、走行方向Lが直線経路1dの経路長手方向に沿う姿勢で走行し、走行経路1の曲線経路1eを走行する場合は、走行方向Lが曲線経路1eの接線方向に沿う姿勢で走行する。
【0022】
上述したように、受電部4を介して物品搬送車3に駆動用電力を供給する給電線11は、走行経路1に沿って配設されている。本実施形態では、給電線11は、受電部4に対して経路幅方向Hの両側に配置されている。つまり、
図2に示すように、給電線11は、受電部4に対して、上下方向Z視で走行経路1の長手方向と直交する経路幅方向Hの両側に配置されている。
【0023】
受電部4は、第1軸心X1を囲むように配置された第1受電部4fと、第2軸心X2を囲むように配置された第2受電部4rとを備えている。本実施形態では、第1受電部4fは、第1走行部9fと一体的に第1軸心X1周りに回転するように構成されており、第2受電部4rは、第2走行部9rと一体的に第2軸心X2周りに回転するように構成されている。また、本実施形態では、
図3に示すように、第1受電部4fは、第1軸心X1を対称軸として配置され、第2受電部4rは、第2軸心X2を対称軸として配置されている。
【0024】
直線経路1dでは、給電線11と受電部4とが適正な離間距離を維持した状態で物品搬送車3が走行する。しかし、曲線経路1eでは、給電線11が湾曲した経路に沿って配置されているため、
図7を参照して後述するように、直線的に配置された受電部4との関係では、給電線11と受電部4との離間距離が走行方向Lの位置によって異なる。離間距離が適正な距離に対して長くなると、受電能力が低下し、離間距離が適正な距離に対して短くなると給電線11と受電部4とが干渉する可能性が生じる。少なくともこのような干渉を抑制するため、
図8に示すように、給電線11は、経路幅方向Hの両側に配置された給電線11の経路幅方向Hの間隔(給電線間隔)が、直線経路1dにおける給電線間隔“Hd”に比べて、曲線経路1eにおける給電線間隔“He”の方が広くなるように配設されている。当然ながら、曲線経路1eにおいても十分な離間距離が確保できる場合には、直線経路1dにおける給電線間隔“Hd”と、曲線経路1eにおける食う電線間隔“He”とが同じであってもよい。
【0025】
図3に示すように、第1支持機構5fは、第1受電部4fに対して走行方向第1側L1において第1走行部9fと搬送車本体10とを連結する第1外側連結部51と、走行方向第2側L2において第1走行部9fと搬送車本体10とを連結する第1内側連結部52とを備えている。また、第2支持機構5rは、第2受電部4rに対して走行方向第2側L2において第2走行部9rと搬送車本体10とを連結する第2外側連結部54と、走行方向第1側L1において第2走行部9rと搬送車本体10とを連結する第2内側連結部53とを備えている。即ち、第1支持機構5f及び第2支持機構5rは、それぞれ、受電部4を挟んで走行方向Lの両側において走行部9と搬送車本体10とを連結する連結部を備えている。なお、当然ながら、走行部9と搬送車本体10とが、受電部4に対して走行方向Lの一方側において連結される形態を妨げるものではない。
【0026】
受電部4は、本実施形態では、HID(High Efficiency Inductive Power Distribution Technology)と称されるワイヤレス給電技術を用いて、物品搬送車3に駆動用電力を供給する。具体的には、誘導線である給電線11に高周波電流を流し、給電線11の周囲に磁界を発生させる。受電部4は、ピックアップコイル40(
図4参照)や磁性体コア45(例えば
図11参照)を備えて構成されており、ピックアップコイル40は磁界からの電磁誘導によって誘起される。誘起された電力は、全波整流回路43(
図4参照)によって整流される。平滑コンデンサ8は、全波整流回路43で生じる脈動を平滑化する。
【0027】
図2及び
図3等に示すように、受電部4は、給電線11と同じ高さに位置する第1部分41と、第1部分41から経路幅方向Hの両側に延出して給電線11に対して上下方向Zの両側に位置する一対の第2部分42とを備えている。第1部分41はピックアップコイル40が配置された部分に相当し、第2部分42は磁性体コア45におけるピックアップコイル40よりも上側及び下側に配置された部分に相当する。なお、磁性体コア45は、第2部分42を構成する部分の他、第1部分41におけるピックアップコイル40に囲まれた状態で配置された部分も有している。一対の第2部分42のそれぞれは、上下方向Z視で給電線11と重複している。即ち、受電部4は、第1部分41が経路幅方向Hにおいて給電線11と重複し、第2部分42が上下方向Zにおいて給電線11と重複する。従って、ピックアップコイル40は、給電線11の3方向において、給電線11からの磁界を受けて効率良く受電することができる。当然ながら、受電部4は、磁性体コア45を備えずピックアップコイル40のみを備えて構成されていてもよく、或いは、第1部分41、すなわちピックアップコイル40及び磁性体コア45におけるピックアップコイル40に囲まれた部分のみを備えて構成されていてもよい。
【0028】
図4では、この電力により走行部9の駆動モータ14が駆動される例を示している。駆動モータ14は交流モータであり、全波整流回路43を介して整流された直流電力を交流電力に変換するインバータ6を介して駆動される。インバータ6は、複数のスイッチング素子を備えて構成されており、不図示の制御回路(ドライブ回路も含む)から入力されるスイッチング制御信号に従ってスイッチングすることにより、直流と交流との間で電力を変換する。
【0029】
図18は、
図3に示す本実施形態の物品搬送車3に対する比較例の物品搬送車3Bを例示している。この比較例の物品搬送車3Bは、本実施形態の物品搬送車3と同様に、
図16を参照して後述する従来の物品搬送車3Dに対して、受電能力を高めたものである。本実施形態では、第1軸心X1を囲むように第1受電部4fが配置され、第2軸心X2を囲むように第2受電部4rが配置されている。つまり、本実施形態では、上下方向Zに沿った揺動軸を囲むように受電部4が配置されているが、比較例の物品搬送車3Bにおける比較例の受電部4Bは、それぞれ第1走行部9f及び第2走行部9rにおいて、2つの受電部が揺動軸を挟んで走行方向第1側L1及び走行方向第2側L2に分割配置されている。
【0030】
図16は、従来の受電部4Dを備えた物品搬送車3Dを例示している。この受電部4Dは、走行方向Lに沿って前後方向に並んだ2つの走行部9Dの間に配置されている。上述したように、物品搬送車の駆動用電力は、給電線11から受電部を介して物品搬送車に供給される。受電部が給電線11から受電することのできる電力(受電能力)は、受電部の構成(大きさや回路素子の定数等)によって異なる。また、受電部に要求される受電能力は、物品搬送車による搬送対象の物品によっても異なる。例えば、より重量の大きい物品を搬送する物品搬送車では、より大きい受電能力が必要である。
【0031】
図16に示す従来の受電部4Dの受電能力を高める場合、1つの態様として、
図17に示すように、走行方向Lに沿って前後方向に並んだ2つの走行部9Cの間に、2つの受電部4Cを配置することが考えられる。しかし、この場合には、
図16に示す物品搬送車3Dの走行方向Lにおける長さに比べて
図17に示す物品搬送車3Cの走行方向Lにおける長さが長くなる。このため、曲線経路1eにおいて、給電線11と受電部4Cとの距離を確保できず、給電線11と受電部4Cとが干渉する可能性がある。
【0032】
図18に示す比較例の物品搬送車3では、この点に鑑みて、受電部4Bが、上下方向Z視において走行部9Bと重複する位置に配置されている。受電部4Bは、上下方向Z視で2つの走行部9Bと重複する位置にそれぞれ配置されており、
図16に示す従来の物品搬送車3Dに比べて、受電能力を高くすることができている。
図3に示す本実施形態の物品搬送車3も同様に、受電部4は、2つの走行部9と重複する位置にそれぞれ配置されており、
図16に示す物品搬送車3に比べて、受電能力を高くすることができている。
【0033】
以下、本実施形態の受電部4と、比較例の受電部4Bとを比較しながら説明する。
図5は、
図3に示す本実施形態の受電部4の構成例を模式的に示す平面図であり、
図6は、
図18に示す比較例の受電部4Bの構成例を模式的に示す平面図である。受電部4の経路幅方向Hにおける寸法である受電部幅“Ha”と、比較例の受電部4Bの経路幅方向Hにおける寸法である受電部幅“Hb”とは同じ寸法である。また、本実施形態の受電部4の走行方向Lにおける寸法である受電部長は、“Da”であり、比較例の受電部4Bの走行方向Lにおける寸法である受電部長は、“Dc”である。受電部長は、ほぼピックアップコイル40の長さに対応する。比較例の受電部4Bは、1つの走行部9Bに対して2つ備えられており、1つの走行部9Bに備えられた比較例の受電部4Bの走行方向Lにおける長さの合計は、“2・Dc”である。
【0034】
ここで、1つの走行部(9又は9B)に配置される受電部(4又は4B)の走行方向第1側L1の端部と走行方向第2側L2の端部との間の、走行方向Lに沿った方向での長さを「総受電部長」と称する。本実施形態の受電部4では、受電部長と総受電部長とが一致し、共に“Da”である。比較例の受電部4Bでは、上述したように、受電部長は“Dc”であり、総受電部長は“2・Dc”である。ここで、“Da=2・Dc”である。
【0035】
受電部長は、1つの受電部(4又は4B)におけるピックアップコイル40の長さにほぼ対応し、総受電部長は、1つの走行部(9又は9B)に配置されるピックアップコイル40の合計の長さにほぼ対応する。従って、1つの走行部(9又は9B)において、本実施形態の受電部4のピックアップコイル40と、比較例の受電部4Bのピックアップコイル40とは、給電線11からほぼ同程度の鎖交磁束を受けることができる。
【0036】
このように、本実施形態の受電部4と比較例の受電部4Bとは、電気的な仕様がほぼ同等である。但し、比較例の受電部4Bは、揺動軸心Xを挟んで走行方向Lの両側に配置されており、ピックアップコイル40も揺動軸心Xを挟んで両側に配置されている。このため、1つの走行部9Bにおける受電部4Bの走行方向第1側L1の端部と、走行方向第2側L2の端部との間の、走行方向Lに沿った方向での長さ“Db”は、
図6に示すように“2・Dc”よりも長くなる。上述したように、“2・Dc=Da”であるから、“Db>Da”である。このため、曲線経路1eにおける給電線11に対するピックアップコイル40の経路幅方向Hへの相対移動量は、本実施形態の受電部4に比べて、比較例の受電部4Bの方が大きくなる。
【0037】
図7は、受電部4(又は受電部4B)と給電線11との位置関係を示している。
図8は、曲線経路1eにおける、本実施形態の受電部4と給電線11との関係の一例を示し、
図9は、曲線経路1eおける、比較例の受電部4Bと給電線11との関係を示している。ピックアップコイル40は、給電線11に近い位置に配置される方が受電可能な電力が大きくなる。一方、
図7に破線で示すように、給電線11がピックアップコイル40から遠ざかると、受電可能な電力は低下する。但し、ピックアップコイル40が給電線11に近づきすぎると、走行中の振動等によってピックアップコイル40と給電線11とが接触するなど、両者が干渉する可能性が高くなる。従って、受電部4(4B)は、給電線11の架設公差、受電部4(4B)の公差、物品搬送車3の走行位置のブレ幅等を考慮して、適切な位置に配置される必要がある。
【0038】
図8及び
図9における“G”は、給電線11とピックアップコイル40との間の離間距離を評価する4つの評価位置(走行方向第1側L1におけるカーブの内側“G1”、走行方向第1側L1におけるカーブの外側“G2”、走行方向第2側L2におけるカーブの内側“G3”、走行方向第2側L2におけるカーブの外側“G4”)を示している。
図9に示すように、比較例の受電部4Bのピックアップコイル40は、カーブの内側に当たる“G1”及び“G3”において、給電線11から大きく離間している。その離間距離は、
図8に示す本実施形態の受電部4のピックアップコイル40と給電線11との間の離間距離に比べて大きい。従って、カーブの内側に当たる“G1”及び“G3”では、比較例の受電部4Bに比べて、本実施形態の受電部4の方が多くの電力を受電することができる。
【0039】
また、
図9に示すように、比較例の受電部4Bのピックアップコイル40は、カーブの外側に当たる“G2”及び“G4”において、給電線11に大きく近づいている。その離間距離は、
図8に示す本実施形態の受電部4のピックアップコイル40と給電線11との間の離間距離に比べて短い。このため、比較例に比べて本実施形態では、ピックアップコイル40と給電線11とが、干渉する可能性が低くなる。上述したように、比較例の受電部4Bは、本実施形態の受電部4に比べて、1つの走行部(9又は9B)に備えられた受電部(4又は4B)の走行方向Lにおける端部の間の長さが長い(Db>Da:
図5、
図6参照)。このため、比較例の受電部4Bでは、平面視(上下方向Z視)での走行方向Lにおける端部と揺動軸心Xとの長さ(半径に相当する)が本実実施形態の受電部4に比べて長くなり、給電線11の曲率半径が同じであったとしても、給電線11に対する受電部4Bの経路幅方向Hへの相対移動量が大きくなる。
【0040】
これに対して、本実施形態の受電部4は、揺動軸心Xを挟んで配置されるのではなく、軸心を囲むように配置されているため、走行方向Lに沿った受電部4の総受電部長が抑制され、比較例の受電部4Bに比べて曲線経路1eにおける給電線11に対する経路幅方向Hへの相対移動量を小さく抑えることができる。
【0041】
また、上述したように、第1支持機構5fは、第1外側連結部51と、第1内側連結部52とを備えており、第2支持機構5rは、第2外側連結部54と、第2内側連結部53とを備えている。本実施形態では、
図5に示すように、第1受電部4f及び第2受電部4rの経路幅方向Hの寸法(受電部幅“Ha”)よりも、第1外側連結部51、第1内側連結部52、第2内側連結部53、第2外側連結部54の経路幅方向Hの寸法(連結部幅H5)の方が短い。
【0042】
図5に示すように、第1軸心X1から第1外側連結部51までの長さ“D5”、及び第1軸心X1から第1内側連結部52までの長さ“D5”は、第1軸心X1から第1受電部4fの走行方向Lにおける両端部までの長さ“Da/2”に比べて長い。このため、曲線経路1eにおける給電線11に対する経路幅方向Hへ相対移動量は、第1受電部4fの走行方向Lにおける両端部に比べて、第1外側連結部51及び第1内側連結部52の方が大きくなる。尚、ここでは、第1受電部4f及び第1支持機構5fが、第1軸心X1を対称軸として配置されている場合の長さを例示している。同様に、曲線経路1eにおける給電線11に対する経路幅方向Hへ相対移動量は、第2受電部4rの走行方向Lにおける両端部に比べて、第2外側連結部54及び第2内側連結部53の方が大きくなる。
【0043】
上述したように、受電部幅“Ha”よりも連結部幅H5の方が短いことにより、給電線11に対する経路幅方向Hへの相対移動量が大きくなっても、第1外側連結部51、第1内側連結部52、第2外側連結部54、及び第2内側連結部53が給電線11と干渉する可能性が低減される。また、本実施形態のように、受電部4が、給電線11と同じ高さに位置する第1部分41と、給電線11に対して上下両側に位置する一対の第2部分42とを備える場合、受電部4が給電線11に対して相対移動しても第2部分42は、給電線11とは干渉しない。従って、第1部分41における経路幅方向Hの寸法(第1部分41における受電部幅“H41”)よりも連結部幅H5の方が短いと好適である。尚、給電線11と支持機構5における連結部(51~54)との間の離間距離が十分に確保できる場合には、連結部幅H5が、受電部幅“Ha”(特に第1部分41における受電部幅“H41”)以上となってもよい。
【0044】
ところで、
図3には、揺動軸7が受電部4の下方に配置され、受電部4の下方において搬送車本体10と連結される形態を例示した。しかし、揺動軸7は、
図10~
図13に示すように、ピックアップコイル40を貫通して配置されていてもよい。
図10は、ピックアップコイル40を貫通して揺動軸7が配置される受電部4の斜視図を示している。また、
図11は、
図10において揺動軸7が通っていない箇所における経路幅方向Hでの断面図(XI-XI断面)を示し、
図12及び
図13は、揺動軸7が通っている箇所における経路幅方向Hでの断面図(XII-XII断面、及びXIII-XIII断面)を示している。
【0045】
図11に示すように、揺動軸7が上下方向Zに貫通していない箇所では、磁性体コア45がピックアップコイル40の中に配置されている。磁性体コア45は、ピックアップコイル40の上下方向Zにおける上方及び下方において経路幅方向Hに張り出している。磁性体コア45の内、ピックアップコイル40の中に位置する部分、及びピックアップコイル40は、受電部4の第1部分41に相当する。また、磁性体コア45の内、ピックアップコイル40の上下方向Zにおける上方及び下方において経路幅方向Hに張り出している部分は、受電部4の第2部分42に相当する。
【0046】
図12及び
図13に示すように、揺動軸7は、受電部4の上方及び下方においてボールベアリング、滑り軸受け等の軸受け71によって回転可能に支持されている。
図12は、揺動軸7が非磁性体材料によって構成されている形態を示している。非磁性体材料は、例えば、アルミニウム、樹脂、オーステナイト系ステンレス鋼(例えばSUS304)等である。
図13は、揺動軸7が磁性体材料によって構成されると共に、ピックアップコイル40と揺動軸7との間、及び磁性体コア45と揺動軸7との間に非磁性体のシャフトカバー75を備えた形態を例示している。揺動軸7を構成する磁性体材料は、例えば、鉄、フェライト系ステンレス鋼等である。また、シャフトカバー75は、例えば、アルミニウム、樹脂、オーステナイト系ステンレス鋼等により構成されている。
【0047】
〔その他の実施形態〕
以下、その他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0048】
(1)上記においては、第1受電部4fが、第1走行部9fと一体的に第1軸心X1周りに回転するように構成され、第2受電部4rが、第2走行部9rと一体的に第2軸心X2周りに回転するように構成されている形態を例示した。しかし、これには限定されず、第1受電部4f及び第2受電部4rが、搬送車本体10に対して固定されていても良い。例えば、第1受電部4f及び第2受電部4rが、搬送車本体10に固定された揺動軸7に対して一体的に固定されていても良い。或いは、第1受電部4fが第1走行部9f及び搬送車本体10と独立して揺動し、第2受電部4rが第2走行部9r及び搬送車本体10と独立して揺動する形態であってもよい。
【0049】
(2)上記においては、第1受電部4fが第1軸心X1を対称軸として配置され、第2受電部4rが第2軸心X2を対称軸として配置されている形態を例示した。しかし、第1受電部4fは、第1軸心X1に対して非対称に配置されていてもよく、また、第2受電部4rも、第2軸心X2に対して非対称に配置されていてもよい。
【0050】
(3)上記においては、受電部4に対して経路幅方向Hの両側に一対の給電線11が配置され、
図2や
図14に示すように、当該一対の給電線11に対応して磁性体コア45及びピックアップコイル40が配置されて受電部4が構成される形態を例示した。しかし、給電線11は、経路幅方向Hの両側に2対配置されてもよい。2対の給電線11は、上下方向Zに並んで配置されると良い。このような場合、
図15に示すように、当該2対の給電線11に対応して、磁性体コア45及び2組のピックアップコイル40が配置されてもよい。
【0051】
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明した物品搬送設備の概要について簡単に説明する。
【0052】
物品搬送設備は、1つの態様として、直線状に設定された直線経路と曲線状に形成された曲線経路とを備えた走行経路に沿って配置された走行レールと、前記走行レールに案内されて前記走行経路に沿って走行する物品搬送車と、前記走行経路に沿って配設された給電線と、を備えた物品搬送設備であって、前記物品搬送車は、搬送車本体と、第1走行部と、第2走行部と、前記給電線から非接触で駆動用電力を受電する受電部と、を備え、前記給電線は、前記受電部に対して、上下方向視で前記走行経路の長手方向と直交する経路幅方向の両側に配置され、前記第1走行部と前記第2走行部とは、前記物品搬送車の走行方向に並んで配置され、前記第1走行部は、第1支持機構を介して前記搬送車本体に連結されると共に、前記走行レールにより案内され、前記第2走行部は、第2支持機構を介して前記搬送車本体に連結されると共に、前記走行レールにより案内され、前記第1支持機構は、前記上下方向に沿うと共に前記上下方向視で前記第1走行部と重複するように配置された第1軸心周りに回転可能に、前記第1走行部を支持し、前記第2支持機構は、前記上下方向に沿うと共に前記上下方向視で前記第2走行部と重複するように配置された第2軸心周りに回転可能に、前記第2走行部を支持し、前記受電部は、前記第1軸心を囲むように配置された第1受電部と、前記第2軸心を囲むように配置された第2受電部とを備えている。
【0053】
受電部は、給電線から非接触で駆動用電力を受電するため、経路幅方向において給電線との間に適切な距離を保つように配置される。この距離が近すぎると、物品搬送車が曲線経路を走行する際に給電線と受電部とが干渉する可能性が高くなり、この距離が遠すぎると受電の効率が低下する。本構成によれば、第1受電部が第1軸心を囲むように配置され、第2受電部が第2軸心を囲むように配置されている。このため、走行方向の一方側における受電部の端部と、他方側における受電部の端部との間の距離が長くなることを抑制することができる。つまり、第1軸心及び第2軸心から、これらの端部までの距離が長くなることが抑制されるので、曲線経路における給電線に対する当該端部の経路幅方向への相対移動量を少なく抑えることができる。その結果、給電線と受電部との距離が近づきすぎて給電線と受電部とが接触する可能性を低減させると共に、給電線と受電部との距離が離れすぎて受電効率が大きく低下する可能性を低減させることができる。つまり、本構成によれば、走行経路がカーブ状の箇所における給電線と受電部との干渉を抑制すると共に、給電線と受電部との距離が離れすぎることによる受電能力の低下を抑制して受電部を配置することができる。
【0054】
ここで、前記第1受電部は、前記第1走行部と一体的に前記第1軸心周りに回転するように構成され、前記第2受電部は、前記第2走行部と一体的に前記第2軸心周りに回転するように構成されていると好適である。
【0055】
第1走行部及び第2走行部は、物品搬送車を案内する走行レールによって規定される走行経路の形状に応じてそれぞれ第1軸心又は第2軸心を中心として揺動する。本構成のように構成されていると、第1受電部及び第2受電部の曲線経路における挙動も第1走行部及び第2走行部と同様となる。給電線は、走行レールに沿って配設されているから、本構成によれば、給電線に対する受電部のクリアランスを考慮して、適切に受電部を配置することが容易となる。
【0056】
また、前記走行方向において前記第2走行部から前記第1走行部へ向かう側を走行方向第1側、その反対側を走行方向第2側として、前記第1支持機構は、前記第1受電部に対して前記走行方向第1側において前記第1走行部と前記搬送車本体とを連結する第1外側連結部と、前記走行方向第2側において前記第1走行部と前記搬送車本体とを連結する第1内側連結部とを備え、前記第2支持機構は、前記第2受電部に対して前記走行方向第2側において前記第2走行部と前記搬送車本体とを連結する第2外側連結部と、前記走行方向第1側において前記第2走行部と前記搬送車本体とを連結する第2内側連結部とを備えると好適である。
【0057】
この構成によれば、第1受電部を挟んで走行方向の両側において第1走行部と搬送車本体とを適切に連結することができる。また、第2受電部を挟んで走行方向の両側において第2走行部と搬送車本体とを適切に連結することができる。
【0058】
ここで、前記第1受電部及び前記第2受電部の前記経路幅方向の寸法よりも、前記第1外側連結部、前記第1内側連結部、前記第2外側連結部、及び前記第2内側連結部の前記経路幅方向の寸法の方が短いと好適である。
【0059】
第1軸心から第1外側連結部までの長さ、及び第1軸心から第1内側連結部までの長さは、第1軸心から第1受電部の走行方向における両端部までの長さに比べて長い。このため、曲線経路における給電線に対する経路幅方向への相対移動量は、第1受電部の走行方向における両端部に比べて、第1外側連結部及び第1内側連結部の方が大きくなる。同様に、曲線経路における給電線に対する経路幅方向への相対移動量は、第2受電部の走行方向における両端部に比べて、第2外側連結部及び第2内側連結部の方が大きくなる。本構成によれば、第1受電部及び第2受電部の経路幅方向の寸法よりも、第1外側連結部、第1内側連結部、第2外側連結部、及び第2内側連結部の経路幅方向の寸法の方が短い。従って、第1外側連結部、第1内側連結部、第2外側連結部、及び第2内側連結部が給電線と干渉する可能性を低減させることができる。
【0060】
また、前記第1受電部は、前記第1軸心を対称軸として配置され、前記第2受電部は、前記第2軸心を対称軸として配置されていると好適である。
【0061】
この構成によれば、走行方向の一方側における第1受電部の端部から第1軸心までの走行経路に沿った長さと、走行方向の他方側における第1受電部の端部から第1軸心までの走行経路に沿った長さとが同一となる。同様に、走行方向の一方側における第2受電部の端部から第2軸心までの走行経路に沿った長さと、走行方向の他方側における第2受電部の端部から第2軸心までの走行経路に沿った長さとも同一となる。従って、曲線経路における給電線に対する経路幅方向への相対移動量が、走行方向の一方側における受電部の端部と、走行方向の他方側における受電部の端部とで同一となる。このため、本構成によれば、給電線に対して受電部を更に適切に配置し易い。
【0062】
また、前記受電部に対して前記経路幅方向の両側に配置された前記給電線の前記経路幅方向の間隔は、前記直線経路に比べて、前記曲線経路の方が広いと好適である。
【0063】
この構成によれば、直線経路では、受電部が給電線から効率良く受電することができる位置に給電線を配設することができる。また、曲線経路では、受電部が給電線に対して経路幅方向に相対移動することを考慮し、給電線と受電部とが干渉しないように給電線を配設することができる。
【0064】
また、前記受電部は、前記給電線の間に位置し、且つ前記給電線と同じ高さに位置する第1部分と、前記第1部分から前記経路幅方向の両側に延出して前記給電線に対して上下両側に位置する一対の第2部分とを備え、一対の前記第2部分のそれぞれが、前記上下方向視で前記給電線と重複していると好適である。
【0065】
この構成によれば、受電部は、第1部分が経路幅方向において給電線と重複し、第2部分が上下方向において給電線と重複する。従って、受電部は、給電線の3方向から効率良く受電することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 :走行経路
1d :直線経路
1e :曲線経路
2 :走行レール
3 :物品搬送車
4 :受電部
4f :第1受電部
4r :第2受電部
5 :支持機構
5f :第1支持機構
5r :第2支持機構
9 :走行部
9f :第1走行部
9r :第2走行部
10 :搬送車本体
11 :給電線
41 :第1部分
42 :第2部分
51 :第1外側連結部
52 :第1内側連結部
53 :第2内側連結部
54 :第2外側連結部
100 :物品搬送設備
H :経路幅方向
L :走行方向
L1 :走行方向第1側
L2 :走行方向第2側
X1 :第1軸心
X2 :第2軸心
Z :上下方向