(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】圧送管路構造体、圧送管路構造体の設計方法および圧送管路検査方法
(51)【国際特許分類】
E03F 7/00 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
E03F7/00
(21)【出願番号】P 2020112656
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-05-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和元年7月5日 第56回下水道研究発表会講演集 第800頁 令和元年8月7日 第56回下水道研究発表会
(73)【特許権者】
【識別番号】397028016
【氏名又は名称】株式会社日水コン
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 整
(72)【発明者】
【氏名】福永 健一
(72)【発明者】
【氏名】千葉 智晴
(72)【発明者】
【氏名】小野 智義
(72)【発明者】
【氏名】浦部 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】越智 孝敏
(72)【発明者】
【氏名】打越 聡
(72)【発明者】
【氏名】景山 早人
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-149929(JP,A)
【文献】実開平07-002584(JP,U)
【文献】特開2008-163622(JP,A)
【文献】特開2019-052521(JP,A)
【文献】特開2002-106051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水を圧送するための圧送管路の内部を検査可能な圧送管路構造体であって、
前記圧送管路に、
前記圧送管路の少なくとも1つの地点の側方から内部に開口する開口部を開閉可能な蓋と、
前記蓋を囲んで地上に向かって開口するマンホールと、
前記圧送管路の経路にあって、前記蓋に対して前記下水を送る方向の上流側に設けられる第1バルブと、
前記圧送管路の経路にあって、前記蓋に対して前記下水を送る方向の下流側に設けられる第2バルブと、
を備えることを特徴とする圧送管路構造体。
【請求項2】
前記圧送管路は曲角部を有しており、
前記曲角部の前記上流側および前記下流側の内の少なくとも一方の側に、前記蓋および前記マンホールを備えることを特徴とする請求項1に記載の圧送管路構造体。
【請求項3】
前記第1バルブと前記第2バルブとに挟まれた前記圧送管路の経路から分岐する第1分岐管に第3バルブを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の圧送管路構造体。
【請求項4】
前記圧送管路は、地下方向にV字状若しくは伏せ越し状に屈曲する下方屈曲部を有しており、
前記下方屈曲部に、前記圧送管路の外部に排水するための前記第3バルブを備えることを特徴とする請求項
3に記載の圧送管路構造体。
【請求項5】
前記下方屈曲部に、前記マンホールおよび前記蓋を備えることを特徴とする請求項4に記載の圧送管路構造体。
【請求項6】
前記マンホールと、前記蓋と、前記第1バルブと、前記第2バルブとを少なくとも含むユニットを、前記圧送管路の経路に2以上備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の圧送管路構造体。
【請求項7】
隣り合う2つの前記ユニットの内、前記上流側に位置する前記ユニットの前記第2バルブは、前記下流側に位置する前記ユニットの前記第1バルブを兼ねていることを特徴とする請求項6に記載の圧送管路構造体。
【請求項8】
前記第1バルブよりも前記上流側の前記圧送管路から分岐する第2分岐管と、
前記第2分岐管に設けられる第4バルブと、
前記第2バルブよりも前記下流側の前記圧送管路から分岐する第3分岐管と、
前記第3分岐管に設けられる第5バルブと、
前記第4バルブと前記第5バルブとの間を接続する配管と、
を備え、
前記第1バルブと前記第2バルブとに挟まれた前記圧送管路の区間を検査する際に下水を前記配管に迂回して流すことを可能とすることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の圧送管路構造体。
【請求項9】
前記圧送管路は、地上方向に突出するように曲がる上方曲角部を有しており、
前記上方曲角部の前記上流側および前記下流側の内の少なくとも一方の側に、
前記検査の一形態として、前記圧送管路内において点検用カメラを備えた点検機器を用いて点検するための前記蓋および前記マンホールを備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の圧送管路構造体。
【請求項10】
前記第1バルブおよび前記第2バルブの内の少なくとも一方のバルブの接続部位に遊合形フランジを接続していることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の圧送管路構造体。
【請求項11】
前記第1バルブおよび前記第2バルブの内の少なくとも一方のバルブを、所定の条件が揃った際に開状態となるインターロック機能を備えたバルブとすることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の圧送管路構造体。
【請求項12】
下水を圧送するための圧送管路を備えた圧送管路構造体の設計方法であって、
前記圧送管路の内部を検査可能であり、前記圧送管路に、前記圧送管路の少なくとも1つの地点の側方から内部に開口する開口部を開閉可能な蓋と、前記蓋を囲んで地上に向かって開口するマンホールと、前記圧送管路の経路にあって、前記蓋に対して前記下水を送る方向の上流側に設けられる第1バルブと、前記圧送管路の経路にあって、前記蓋に対して前記下水を送る方向の下流側に設けられる第2バルブと、を備え、
前記圧送管路の経路上に、前記蓋を開閉する際に出入りできる前記マンホールを少なくとも1つを配置して、前記経路を少なくとも2つの区間に分割して検査できるようにすることを特徴とする圧送管路構造体の設計方法。
【請求項13】
前記マンホールは、検査の一形態として、前記圧送管路内において点検用カメラを備えた点検機器を用いて点検を行うための点検用マンホールと、検査の一形態として、前記圧送管路内において調査用カメラを備えた調査機器を用いて調査可能な調査用マンホールと、を含み、
前記点検用マンホールを、前記経路の曲角部において下水の流れる方向の上流側および下流側の少なくとも一方の側、およ
びポンプの停止時に管内に気相部が生じる部分の内の少なくとも一箇所に配置することを特徴とする請求項12に記載の圧送管路構造体の設計方法。
【請求項14】
前記マンホールは、検査の一形態として、前記圧送管路内において点検用カメラを備えた点検機器を用いて点検を行うための点検用マンホールと、検査の一形態として、前記圧送管路内において調査用カメラを備えた調査機器を用いて調査可能な調査用マンホールと、を含み、
前記点検用マンホールとその内部に備える前記蓋とをパッケージ化した点検用マンホールパッケージと、
前記調査用マンホールとその内部に備える前記第1バルブおよび前記第2バルブの内の少なくとも一方のバルブとをパッケージ化した調査用マンホールパッケージと、
を前記圧送管路の経路上に配置することを特徴とする請求項12または13に記載の圧送管路構造体の設計方法。
【請求項15】
前記圧送管路構造体を少なくとも2つ並列して複数条運用可能に配置することを特徴とする請求項12から14のいずれか1項記載の圧送管路構造体の設計方法。
【請求項16】
1つの前記圧送管路構造体を配置し、
前記第1バルブよりも前記上流側の前記圧送管路から分岐する第2分岐管に設けられる第4バルブと、前記第2バルブよりも前記下流側の前記圧送管路から分岐する第3分岐管に設けられる第5バルブとの間に配管を接続し、
前記第1バルブと前記第2バルブとに挟まれた前記圧送管路の区間を検査する際に下水を前記配管に迂回して流すことを可能とすることを特徴とする請求項12から15のいずれか1項に記載の圧送管路構造体の設計方法。
【請求項17】
下水を圧送するための圧送管路の内部を検査する圧送管路検査方法であって、
前記圧送管路に、
前記圧送管路の少なくとも1つの地点の側方から内部に開口する開口部を開閉可能な蓋と、
前記蓋を囲んで地上に向かって開口するマンホールと、
前記圧送管路の経路にあって、前記蓋に対して前記下水を送る方向の上流側に設けられる第1バルブと、
前記圧送管路の経路にあって、前記蓋に対して前記下水を送る方向の下流側に設けられる第2バルブと、
を備える圧送管路構造体において、
前記第1バルブと前記第2バルブを閉じるバルブ閉鎖ステップと、
前記第1バルブと前記第2バルブとの間の区間内の所定箇所から下水を排水する第1排水ステップと、
前記蓋を開けて前記開口部から検査機器を入れて前記圧送管路の内部を検査する第1検査ステップと、
を行うことを特徴とする圧送管路検査方法。
【請求項18】
前記圧送管路は、前記第1バルブと前記第2バルブとの間の区間に曲角部を有しており、
前記曲角部の前記上流側および前記下流側の内の少なくとも一方の側に、検査の一形態として、前記圧送管路内において点検用カメラを備えた点検機器を用いて点検を行うための点検用マンホールとその内部に点検用の前記蓋とを備える圧送管路構造体において、
前記第1検査ステップを、前記曲角部を含む管内に前記点検機器を入れて点検する第1点検ステップとすることを特徴とする請求項17に記載の圧送管路検査方法。
【請求項19】
前記第1検査ステップは、前記圧送管路内において、調査用カメラを備えた調査機器を用いて調査する調査ステップとすることを特徴とする請求項17に記載の圧送管路検査方法。
【請求項20】
前記圧送管路構造体に、
前記第1バルブよりも前記上流側の前記圧送管路から分岐する第2分岐管と、
前記第2分岐管に設けられる第4バルブと、
前記第2バルブよりも前記下流側の前記圧送管路から分岐する第3分岐管と、
前記第3分岐管に設けられる第5バルブと、
を備えており、
前記第1検査ステップに先立ち、
閉鎖状態にある前記第4バルブと前記第5バルブとの間に配管を接続する配管接続ステップと、
前記第4バルブと前記第5バルブとを開いて前記配管に下水を迂回させて流す下水迂回ステップと、
を行うことを特徴とする請求項17から19のいずれか1項に記載の圧送管路検査方法。
【請求項21】
前記圧送管路は、地上方向に突出するように曲がる上方曲角部を有しており、
前記上方曲角部の前記上流側および前記下流側の内の少なくとも一方の側に、
前記検査の一形態として、前記圧送管路内において点検用カメラを備えた点検機器を用いて点検を行うための点検用マンホールとその内部に点検用の前記蓋とを備える圧送管路構造体において、
前記上方曲角部を含む管内の下水を自然流下する第2排水ステップと、
点検用の前記蓋を開けて、前記第2排水ステップ後の前記上方曲角部を含む管内に前記点検機器を入れて点検する第2点検ステップと、
を、さらに行うことを特徴とする請求項17から20のいずれか1項に記載の圧送管路検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水の圧送管路構造体、圧送管路構造体の設計方法および圧送管路検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では、下水道の流下方式は自然流下が原則であるものの、技術的な理由、施工上の制約あるいは経済的な理由などにより、適宜、圧送方式が採用され、これにより早期の下水道整備に貢献してきた。しかし、下水の圧送管路は、長年の使用に伴い腐食の危険に晒されている。腐食の主な原因は、下水または汚泥に含まれる硫酸イオンである。硫酸イオンは、嫌気性環境下、硫酸還元菌によって硫化水素となる。硫化水素は、硫黄酸化細菌により酸化されて硫酸となり、圧送管を腐食させることが知られている。
【0003】
かかる腐食を防止するため、下水または汚泥に次亜塩素酸ナトリウムを添加し、次亜塩素酸ナトリウムを注入した地点および該地点から下流において下水または汚泥に含まれる硫化水素を酸化して除去し、かつ下水または汚泥中の硫酸還元菌の活性を抑制する下水処理方法が知られている(特許文献1を参照。)。
【0004】
また、圧送管路内の腐食個所を探るべく、液面検知センサを有する水中及び水上移動体を準備して、ポンプの稼働中に、当該移動体を下水の流れにのせて管路内を下流に向かって移動させ、移動中に液面検知センサが検出した位置に基づき、管路の内面腐食個所を推定する方法も知られている(特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-103276号公報
【文献】特開2019-052521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような腐食防止策および腐食箇所の推定方法は存在するものの、圧送管路については、施設内部の状況を容易に把握することができないなどの事由により、結果として事後保全による対応とせざるを得なかったのが実情である。このため、旧来のような管内部を把握できない構造を将来にわたって繰り返すのではなく、管内部を検査することによって維持管理しやすい圧送管路を構築していくのが望ましい。
【0007】
本発明は、上記要望に応えるべく、容易に維持管理を行うことを可能とする圧送管路構造体、その設計方法ならびに圧送管路検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る圧送管路構造体は、
下水を圧送するための圧送管路の内部を検査可能な圧送管路構造体であって、
前記圧送管路に、
前記圧送管路の少なくとも1つの地点の側方から内部に開口する開口部を開閉可能な蓋と、
前記蓋を囲んで地上に向かって開口するマンホールと、
前記圧送管路の経路にあって、前記蓋に対して前記下水を送る方向の上流側に設けられる第1バルブと、
前記圧送管路の経路にあって、前記蓋に対して前記下水を送る方向の下流側に設けられる第2バルブと、
を備える。
(2)別の実施形態に係る圧送管路構造体では、好ましくは、前記圧送管路は曲角部を有しており、前記曲角部の前記上流側および前記下流側の内の少なくとも一方の側に、前記蓋および前記マンホールを備えるようにしても良い。
(3)別の実施形態に係る圧送管路構造体は、好ましくは、前記第1バルブと前記第2バルブとに挟まれた前記圧送管路の経路から分岐する第1分岐管に第3バルブを備えるようにしても良い。
(4)別の実施形態に係る圧送管路構造体では、好ましくは、前記圧送管路は、地下方向にV字状若しくは伏せ越し状に屈曲する下方屈曲部を有しており、前記下方屈曲部に、前記圧送管路の外部に排水するための前記第3バルブを備えるようにしても良い。
(5)別の実施形態に係る圧送管路構造体は、好ましくは、前記下方屈曲部に、前記マンホールおよび前記蓋を備えるようにしても良い。
(6)別の実施形態に係る圧送管路構造体は、好ましくは、前記マンホールと、前記蓋と、前記第1バルブと、前記第2バルブとを少なくとも含むユニットを、前記圧送管路の経路に2以上備えるようにしても良い。
(7)別の実施形態に係る圧送管路構造体では、好ましくは、隣り合う2つの前記ユニットの内、前記上流側に位置する前記ユニットの前記第2バルブは、前記下流側に位置する前記ユニットの前記第1バルブを兼ねるようにしても良い。
(8)別の実施形態に係る圧送管路構造体は、好ましくは、
前記第1バルブよりも前記上流側の前記圧送管路から分岐する第2分岐管と、
前記第2分岐管に設けられる第4バルブと、
前記第2バルブよりも前記下流側の前記圧送管路から分岐する第3分岐管と、
前記第3分岐管に設けられる第5バルブと、
前記第4バルブと前記第5バルブとの間を接続する配管と、
を備え、
前記第1バルブと前記第2バルブとに挟まれた前記圧送管路の区間を検査する際に下水を前記配管に迂回して流すことを可能としても良い。
(9)別の実施形態に係る圧送管路構造体では、好ましくは、前記圧送管路に、地上方向に突出するように曲がる上方曲角部を有しており、前記上方曲角部の前記上流側および前記下流側の内の少なくとも一方の側に、前記検査の一形態として、前記圧送管路内において点検用カメラを備えた点検機器を用いて点検するための前記蓋および前記マンホールを備えるようにしても良い。
(10)別の実施形態に係る圧送管路構造体では、好ましくは、前記第1バルブおよび前記第2バルブの内の少なくとも一方のバルブの接続部位に遊合形フランジを接続するようにしても良い。
(11)別の実施形態に係る圧送管路構造体では、好ましくは、前記第1バルブおよび前記第2バルブの内の少なくとも一方のバルブを、所定の条件が揃った際に開状態となるインターロック機能を備えたバルブとするようにしても良い。
(12)一実施形態に係る圧送管路構造体の設計方法は、下水を圧送するための圧送管路を備えた圧送管路構造を設計する方法であって、
前記圧送管路の内部を検査可能であり、前記圧送管路に、前記圧送管路の少なくとも1つの地点の側方から内部に開口する開口部を開閉可能な蓋と、前記蓋を囲んで地上に向かって開口するマンホールと、前記圧送管路の経路にあって、前記蓋に対して前記下水を送る方向の上流側に設けられる第1バルブと、前記圧送管路の経路にあって、前記蓋に対して前記下水を送る方向の下流側に設けられる第2バルブと、を備え、
前記圧送管路の経路上に、前記蓋を開閉する際に出入りできる前記マンホールを少なくとも1つを配置して、前記経路を少なくとも2つの区間に分割して検査できるようにする。
(13)別の実施形態に係る圧送管路構造体の設計方法では、好ましくは、
前記マンホールは、検査の一形態として、前記圧送管路内において点検用カメラを備えた点検機器を用いて点検を行うための点検用マンホールと、検査の一形態として、前記圧送管路内において調査用カメラを備えた調査機器を用いて調査可能な調査用マンホールと、を含み、
前記点検用マンホールを、前記経路の曲角部において下水の流れる方向の上流側および下流側の少なくとも一方の側、および前記ポンプの停止時に管内に気相部が生じる部分の内の少なくとも一箇所に配置するようにしても良い。
(14)別の実施形態に係る圧送管路構造体の設計方法では、好ましくは、
前記マンホールは、検査の一形態として、前記圧送管路内において点検用カメラを備えた点検機器を用いて点検を行うための点検用マンホールと、検査の一形態として、前記圧送管路内において調査用カメラを備えた調査機器を用いて調査可能な調査用マンホールと、を含み、
前記点検用マンホールとその内部に備える前記蓋とをパッケージ化した点検用マンホールパッケージと、
前記調査用マンホールとその内部に備える前記第1バルブおよび前記第2バルブの内の少なくとも一方のバルブとをパッケージ化した調査用マンホールパッケージと、
を前記圧送管路の経路上に配置するようにしても良い。
(15)別の実施形態に係る圧送管路構造体の設計方法は、好ましくは、前記圧送管路構造体を少なくとも2つ並列して複数条運用可能に配置するようにしても良い。
(16)別の実施形態に係る圧送管路構造体の設計方法は、好ましくは、
1つの前記圧送管路構造体を配置し、
前記第1バルブよりも前記上流側の前記圧送管路から分岐する第2分岐管に設けられる第4バルブと、前記第2バルブよりも前記下流側の前記圧送管路から分岐する第3分岐管に設けられる第5バルブとの間に配管を接続し、
前記第1バルブと前記第2バルブとに挟まれた前記圧送管路の区間を検査する際に下水を前記配管に迂回して流すようにしても良い。
(17)一実施形態に係る圧送管路検査方法は、下水を圧送するための圧送管路の内部を検査する方法であって、
前記圧送管路に、
前記圧送管路の少なくとも1つの地点の側方から内部に開口する開口部を開閉可能な蓋と、
前記蓋を囲んで地上に向かって開口するマンホールと、
前記圧送管路の経路にあって、前記蓋に対して前記下水を送る方向の上流側に設けられる第1バルブと、
前記圧送管路の経路にあって、前記蓋に対して前記下水を送る方向の下流側に設けられる第2バルブと、
を備える圧送管路構造体において、
前記第1バルブと前記第2バルブを閉じるバルブ閉鎖ステップと、
前記第1バルブと前記第2バルブとの間の区間内の所定箇所から下水を排水する第1排水ステップと、
前記蓋を開けて前記開口部から検査機器を入れて前記圧送管路の内部を検査する第1検査ステップと、
を行う。
(18)別の実施形態に係る圧送管路検査方法では、好ましくは、
前記圧送管路は、前記第1バルブと前記第2バルブとの間の区間に曲角部を有しており、
前記曲角部の前記上流側および前記下流側の内の少なくとも一方の側に、検査の一形態として、前記圧送管路内において点検用カメラを備えた点検機器を用いて点検を行うための点検用マンホールとその内部に点検用の前記蓋とを備える圧送管路構造体において、
前記第1検査ステップを、前記曲角部を含む管内に前記点検機器を入れて点検する第1点検ステップとするようにしても良い。
(19)別の実施形態に係る圧送管路検査方法では、好ましくは、前記第1検査ステップは、前記圧送管路内において、調査用カメラを備えた調査機器を用いて調査する調査ステップとするようにしても良い。
(20)別の実施形態に係る圧送管路検査方法では、好ましくは、
前記圧送管路構造体に、
前記第1バルブよりも前記上流側の前記圧送管路から分岐する第2分岐管と、
前記第2分岐管に設けられる第4バルブと、
前記第2バルブよりも前記下流側の前記圧送管路から分岐する第3分岐管と、
前記第3分岐管に設けられる第5バルブと、
を備えており、
前記第1検査ステップに先立ち、
閉鎖状態にある前記第4バルブと前記第5バルブとの間に配管を接続する配管接続ステップと、
前記第4バルブと前記第5バルブとを開いて前記配管に下水を迂回させて流す下水迂回ステップと、
を行うようにしても良い。
(21)別の実施形態に係る圧送管路検査方法では、好ましくは、
前記圧送管路は、地上方向に突出するように曲がる上方曲角部を有しており、前記上方曲角部の前記上流側および前記下流側の内の少なくとも一方の側に、
前記検査の一形態として、前記圧送管路内において点検用カメラを備えた点検機器を用いて点検を行うための点検用マンホールとその内部に点検用の前記蓋とを備える圧送管路構造体において、
前記上方曲角部を含む管内の下水を自然流下する第2排水ステップと、
点検用の前記蓋を開けて、前記第2排水ステップ後の前記上方曲角部を含む管内に前記点検機器を入れて点検する第2点検ステップと、
を、さらに行うようにしても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、容易に維持管理を行うことを可能とする圧送管路構造体、その設計方法ならびに圧送管路検査方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る圧送管路構造体の概略平面図(1A)および概略縦断面図(1B)を示す。
【
図2】
図2は、
図1の点検用マンホールを地上から見た平面図(2A)および地中側方から見た縦断面図(2B)を示す。
【
図3】
図3は、
図1の調査用マンホールを地上から見た平面図(3A)および地中側方から見た縦断面図(3B)を示す。
【
図4】
図4は、
図3の調査用マンホールと異なる調査用マンホールを地上から見た平面図(4A)および地中側方から見た縦断面図(4B)を示す。
【
図5】
図5は、
図1の圧送管路構造体の一部の構成を説明するための図(5A,5B)を示す。
【
図8】
図8は、調査用マンホールと、蓋と、第1バルブと、第2バルブとを少なくとも含むユニットを、圧送管路3の経路に2以上備える構成例(8A,8B)を示す。
【
図9】
図9は、
図1の圧送管路において略水平状態で曲がっている曲角部近傍の概略構成および模式図を示す。
【
図10】
図10は、圧送管路の経路にあって、地下方向に屈曲する下方屈曲部およびその近傍の縦断面図(10A)およびその変形例の縦断面図(10B)を示す。
【
図11】
図11は、圧送管路の経路にあって、地上方向に突出するように曲がる上方曲角部およびその近傍の縦断面図を示す。
【
図12】
図12は、1条運用において、検査対象区間の下水を排水すると共に同区間の上流側と下流側とを配管で接続して下水を迂回させる状況の概略構成図および模式図を示す。
【
図13】
図13は、マンホール内の圧送管路に遊合形フランジを備える例の縦断面図(13A,13B)を示す。
【
図14】
図14は、基本的な圧送管路検査方法のフローを模式図の変化と共に示す。
【
図15】
図15は、圧送管路構造体の曲角部を含む管路内の検査方法のフローを示す。
【
図16】
図16は、圧送管路構造体の上方曲角部を含む管路内の検査方法のフローを示す。
【
図17】
図17は、1条運用の圧送管路検査方法のフローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
1.圧送管路の条数
圧送管路の運用には、1本の圧送管路のみで運用する「1条運用」と、複数本の圧送管路を並列布設して運用する「複数条運用」とがある。複数条運用の代表例は、2本の圧送管路を並列布設して運用する「2条運用」である。なお、3本以上の圧送管路を並列布設する場合もあるが、その運用は、「2条運用」と同様に考えることができるため、本願では、「1条運用」と「2条運用」とに大別して説明する。
【0013】
施設の重要度または災害時のリスク低減の観点では、圧送管路を2条で運用するのが望ましい。ただし、2条運用は、一般的に、1条運用に比べて建設費の増大につながるため、1条運用を選択する場合もある。1条運用の場合には、維持管理をより徹底し、また、下水を一時的に迂回させるための配管を設置できるようにするのが好ましい。以下、特筆しない限り、1条運用と2条運用に共通する実施形態について説明し、1条運用または2条運用に特有の形態について言及する場合には、その旨を特筆したうえで説明する。
【0014】
2.圧送管路構造体およびその設計方法
本発明の一実施形態に係る圧送管路構造体およびその設計方法について説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る圧送管路構造体の概略平面図(1A)および概略縦断面図(1B)を示す。
図1では、1本の圧送管路しか示されていないが、2条運用の場合には2本の圧送管路、3条以上の運用の場合には3本以上の圧送管路が布設される。圧送管路構造体1を少なくとも2つ並列して複数条運用可能に配置する設計方法を採ることにより、圧送管路の維持管理が容易となると共に、災害リスクの低減を図ることができる。圧送管路を2条以上で運用する場合、1条毎に独立した構成ではなく、非常時の下水の排水等を目的とした連絡管を設けた構造にすることもできる。
【0016】
この実施形態に係る圧送管路構造体1は、ポンプ場2から吐出先まで下水を圧送する圧送管路3と、圧送管路3の経路上に配置される11個のマンホール10と、を備える。ポンプ場2は、下水を圧送するためのポンプを備える。マンホール10は、少なくとも1個、好ましくは2個以上であれば、11個に限定されない。作業員は、マンホール10の内部に入って圧送管路3を検査可能である。この実施形態に係る圧送管路構造体の設計方法では、圧送管路構造体1を少なくとも2つ並列して2条運用可能に配置することができる。この結果、災害時および維持管理の作業時に、下水の送水を止めざるを得ない状況を低減できる。また、圧送管路3を予定の区画に分割検査できるので、圧送管路3の全経路を検査可能である。
【0017】
圧送管路構造体1は、下水の最も上流側に配置されるポンプ場2から、最も下流側の吐出口に向かってマンホール10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h,10i,10j,10kを備える。なお、マンホールを総称する場合には、「マンホール10」という。マンホール10a,10d,10f,10g,10h,10kは、圧送管路3の内部を調査して、圧送管路3を維持管理するための調査用マンホールである。マンホール10b,10c,10i,10jは、圧送管路3の内部を点検して、圧送管路3を維持管理するための点検用マンホールである。いずれのマンホール10も、圧送管路3の所定の位置から地上Gに向かって開口する管である。マンホール10を使用しないときには、地上Gの開口部は閉鎖されている。この実施形態では、圧送管路構造体1は、点検用マンホールとその内部に備える構成要素とをパッケージ化した点検用マンホールパッケージM1と、調査用マンホールとその内部に備える構成要素とをパッケージ化した調査用マンホールパッケージM2,M3と、を備える。これらのパッケージM1,M2.M3については、後程、詳述する。また、本願では、特筆しない限り、上流側または上流方向は、下水の流れる方向の上流を、下流側または下流方向は、下水の流れる方向の下流を意味する。
【0018】
本願では、点検とは、圧送管路3内において押し込み式にて挿入される点検用カメラを備えた点検機器を用いて管路内部を検査することをいう。押し込み式とは、点検機器(例えば、「CSカメラ スネーくん」(登録商標))を地上から管路内に押し込みながら進行させる方式をいう。点検機器を、例えば、「CSカメラ スネーくん」とした場合には、当該機器は、圧送管路3の側方に設けられる開口部から上流方向および下流方向にそれぞれ0.1~30m程度の短い距離を検査するのに適している。なお、当該距離は、点検機器によって変動する。また、点検機器は、圧送管路3の経路で急にカーブしている曲角部のように大型の機器が入らないような部位、および/またはポンプ停止時に気相部の生じる部位を検査するのに適している。本願では、圧送管路3の「側方」とは、圧送管路2の側面および当該側面から当該管路の径方向に所定距離を隔てた位置を含むように広義に解釈される。
【0019】
本願では、調査とは、圧送管路3内において自走式若しくは牽引式にて挿入される調査用カメラを備えた調査機器を用いて管路内部を検査することをいう。自走式とは、調査機器自体に駆動手段が設けられていて、地上から押し込まなくても管路内を進行可能な方式をいう。牽引式とは、調査機器自体に駆動手段はないが、調査機器に接続される駆動手段によって牽引されることによって管路内を進行可能な方式をいう。調査機器を、例えば、株式会社カンツール製の「AS9100」とした場合には、圧送管路3の側方に設けられる開口部から上流方向および下流方向にそれぞれ0.1~100mという点検に比べて比較的長い距離を検査するのに適している。調査機器は、点検機器の適している箇所を除き、多くの管路内で使用可能である。なお、調査を行う距離は、調査機器によって変動する。また、本願では、「検査」は、点検および調査を含む上位概念である。
【0020】
なお、点検と調査とは、管内を検査するための機器の相違に加え、あるいは当該相違に代えて、次のような点で区別しても良い。点検は、管内の状況を定性的に検査することをいうのに対して、調査は、管内の状況を定量的に検査することをいう。定性的な検査としては、例えば、管内に腐食あるいは損傷が起きているか否か、腐食あるいは損傷の程度、あるいはクラックや継手のズレの有無、を把握することを挙げることができる。一方、定量的な検査としては、例えば、管内の腐食あるいは損傷等の起きている位置と数を把握することの他、カメラに備えるスケールによってクラックの長さおよび幅、さらには継手管のズレの長さを把握すること、を挙げることができる。
【0021】
圧送管路構造体1は、圧送管路3の経路上に、マンホール10を少なくとも1つを配置しており、当該経路を少なくとも2つの区間に分割して検査できるように設計されている。この実施形態では、当該経路上に、合計11個のマンホール10が配置されている。このため、圧送管路3を、区間S1から区間S12までの合計12区間に分割して検査できる。この実施形態に係る圧送管路構造体1は、圧送管路3を部分的に改築する際にも、上記のように配置されたマンホール10を利用して容易に改築可能に設計されている。具体的には、所定の間隔でバルブを含めたマンホール10を配置することによって、マンホール10間毎の検査結果に基づいた改築の必要性の程度を判断できる。また、マンホール10内に設置されるバルブにより、改築の際の下水の水替えが可能となる。ここで、所定の間隔は、任意に設定可能であるが、マンホール10間の管理内を調査容易な距離を考慮して、好ましくは30~200m、より好ましくは50~100mを例示できる。
【0022】
図2は、
図1の点検用マンホールを地上から見た平面図(2A)および地中側方から見た縦断面図(2B)を示す。なお、
図2において。縦断面図は、見やすさを考慮し、マンホールのみを断面図で示し、圧送管路およびマンホール内の設備は側面図で示す。これは、
図3以降の図においても同様である。
【0023】
マンホール10の一種である点検用マンホール10bは、有底で略円筒形状のマンホールである。ただし、点検用マンホール10bは、略円筒以外の形状でも良い。圧送管路3は、好ましくは、点検用マンホール10bの内底面若しくは内底面から上方に浮いた位置を貫通している。点検用マンホール10b内の圧送管路3には、継手管15bが直列に接続されている。継手管15bは、一方(好ましくは上方)に突出する管を備えている。当該管の開口部16bは、開閉可能な蓋17bを備えている。開口部16bは、この実施形態では、圧送管路3に接続されている継手管15bからその径方向に突出した部位に設けられ、継手管15bを経由して圧送管路3の側面から内部に連通する。しかし、開口部16bは、圧送管路3の側面若しくはそれと接続される継手管15の側面に形成されていても良い。これは、蓋によって開閉可能な後述する全ての開口部についても同様である。継手管15bは、この実施形態では、圧送管路3の方向に延出する直管から分岐するT字管と称しても良い。また、点検用マンホール10bは、圧送管路3の上部に設置され、継手管15bから突出する管を点検用マンホール10bの内部に突出させ、その他を点検用マンホール10bの外部に埋設しても良い。特に、圧送管路3の管径が大きい場合には、点検用マンホール10bに圧送管路3を貫通させると、点検用マンホール10b自体が大型になり、圧送管路構造体1をコンパクトに設計するのに不利な場合がある。このような場合には、開口部16bを開閉できるスペースを点検用マンホール10b内に確保するに留め、圧送管路3の大部分を点検用マンホール10b外に配置するようにする方が好ましい。この点は、他の点検用マンホールについても同様である。ここでは、点検用マンホール10bとその内部に配置される蓋17bとは、パッケージ化されており、点検用マンホールパッケージM1を構成する。点検用マンホールパッケージM1は、点検用マンホール10bと継手管15bとをパッケージ化したものと称しても良い。継手管15bを交換する場合には、点検用マンホールパッケージM1ごと交換することも可能である。点検用マンホール10bは、圧送管路3の上に固定されていて、作業員が点検用マンホール10bの内部に入って蓋17bを開閉できるようにしても良い。
【0024】
作業員は、蓋17bを開けて、開口部16bに外部のポンプを接続し、管内の下水を吸引しても良い。点検方法については、後で詳述する。点検用マンホール10b以外の点検用マンホール10c,10i,10jも、上記と同様の形態を有している。点検用マンホール10b,10c,10i,10jは、点検専用のマンホールである。
【0025】
図3は、
図1の調査用マンホールを地上から見た平面図(3A)および地中側方から見た縦断面図(3B)を示す。
【0026】
マンホール10の一種である調査用マンホール10fは、有底で略四角筒形状のマンホールである。ただし、調査用マンホール10fは、略四角筒以外の形状でも良い。調査用マンホール10fの内底面積は、好ましくは、前述の点検用マンホール10bの内底面積に比べて大きい。圧送管路3は、調査用マンホール10fの内底面若しくは内底面から上方に浮いた位置を貫通している。調査用マンホール10f内の圧送管路3には、継手管19fと、バルブ22fとが直列に接続されている。継手管19fは、その側方に開口部20fを備えている。開口部20fには、開閉可能な蓋21fが備えられている。バルブ22fは、継手管19fの上流側に接続されている。バルブ22fは、好ましくは、作業員が手動で開閉可能なバルブであるが、電磁バルブあるいはエアーバルブのように非手動にて開閉可能なバルブでも良い。これは、他のバルブについても同様である。開口部20fは、前述の開口部16bよりも大きく、自走式若しくは牽引式の調査用カメラを備えた調査機器を挿入可能である。また、調査用マンホール10fは、圧送管路3の上部に設置し、開口部20fおよびバルブ22fを調査用マンホール10fの内部に配置させ、その他を調査用マンホール10fの外部に埋設しても良い。特に、圧送管路3の管径が大きい場合には、調査用マンホール10fに圧送管路3を貫通させると、調査用マンホール10f自体が大型になり、圧送管路構造体1をコンパクトに設計するのに不利な場合がある。このような場合には、開口部20fおよびバルブ22fを操作できるスペースを調査用マンホール10f内に確保するに留め、圧送管路3の大部分を調査用マンホール10f外に配置するようにする方が好ましい。この点は、他の調査用マンホールについても同様である。ここでは、調査用マンホール10fと、その内部に配置される蓋21fおよびバルブ22fとは、パッケージ化されており、調査用マンホールパッケージM2を構成する。調査用マンホールパッケージM2は、調査用マンホール10fと継手管19fとバルブ22fとをパッケージ化したものと称しても良い。継手管19fまたはバルブ22fを交換する場合には、調査用マンホールパッケージM2ごと交換することも可能である。調査用マンホール10fは、圧送管路3の上に固定されていて、作業員が調査用マンホール10fの内部に入って蓋21fを開閉し、あるいはバルブ22fを開閉操作できるようにしても良い。
【0027】
作業員は、蓋21fを開けて、開口部20fに外部のポンプを接続し、管内の下水を吸引しても良い。調査方法については、後で詳述する。調査用マンホール10f以外の調査用マンホール10a,10d,10g,10hも、上記と同様の形態を有している。調査用マンホール10a,10d,10f,10g,10hは、調査のみならず、点検も行うことのできるマンホールである。
【0028】
図4は、
図3の調査用マンホールと異なる調査用マンホールを地上から見た平面図(4A)および地中側方から見た縦断面図(4B)を示す。
【0029】
マンホール10の一種である調査用マンホール10eは、有底で略四角筒形状のマンホールである。ただし、調査用マンホール10eは、略四角筒以外の形状でも良い。調査用マンホール10eの内底面積は、好ましくは、前述の調査用マンホール10fの内底面積に比べて大きい。圧送管路3は、調査用マンホール10eの内底面若しくは内底面から上方に浮いた位置を貫通している。調査用マンホール10e内の圧送管路3には、継手管19eと、バルブ22eと、継手管23eとが直列に接続されている。継手管19eは、その側方に開口部20eを備えている。開口部20eには、開閉可能な蓋21eが備えられている。バルブ22eは、継手管20eの上流側に接続されている。バルブ22eは、好ましくは、作業員が手動で開閉可能なバルブであるが、電磁バルブあるいはエアーバルブのように非手動にて開閉可能なバルブでも良い。継手管23eは、側方に分岐する分岐管24eを備える。分岐管24eには、開閉可能なバルブ25eが接続されている。継手管23eは、T字管と称しても良い。バルブ25eは、バルブ22eより上流側の管内の下水をバルブ25eから先に送る際に開けることができる。開口部20eは、前述の開口部16bよりも大きく、自走式若しくは牽引式の調査用カメラを備えた調査機器を挿入可能である。また、調査用マンホール10eは、圧送管路3の上部に設置し、開口部20e、バルブ22eおよび分岐管24eを調査用マンホール10eの内部に配置させ、その他を調査用マンホール10eの外部に埋設しても良い。ここでは、調査用マンホール10eと、その内部に配置される蓋21e、バルブ22eおよびバルブ25eとは、パッケージ化されており、調査用マンホールパッケージM3を構成する。調査用マンホールパッケージM3は、調査用マンホール10eと継手管19eとバルブ22eと継手管23eとをパッケージ化したものと称しても良い。継手管19e、バルブ22eまたは継手管23eを交換する場合には、調査用マンホールパッケージM3ごと交換することも可能である。調査用マンホール10eは、圧送管路3の上に固定されていて、作業員が調査用マンホール10eの内部に入って蓋21eを開閉し、あるいはバルブ22e,25eを開閉操作できるようにしても良い。
【0030】
作業員は、蓋21eを開けて、開口部20eに外部のポンプを接続し、管内の下水を吸引しても良い。調査方法については、後で詳述する。調査用マンホール10kも、上記と同様の形態を有している。調査用マンホール10e,10kは、調査のみならず、点検も行うことのできるマンホールである。
【0031】
図5は、
図1の圧送管路構造体の一部の構成を説明するための図(5A,5B)を示す。
図6は、
図5(5A)に示す構成の変形例1を示す。
図7は、
図5(5A)に示す構成の変形例2を示す。
図5、
図6および
図7は、圧送管路構造体1の一部の概略構成に加え、それをより簡略化した模式図(パターン図ともいう)も示す。模式図において、黒塗部分は閉鎖状態を、白塗部分は開放状態を、それぞれ示す。以後の図においても、必要に応じて模式図を示す。また、調査用マンホールは、前述の通り、調査のみならず点検も行うことのできるマンホールであるが、以後、
図5およびそれ以降の図を参照して、調査を行うためのマンホールとして説明する。
【0032】
図5(5A)は、
図1の圧送管路3における調査用マンホール10f,10g,10hを敷設している部分を示す。より詳細な構成は次の通りである。圧送管路構造体1は、圧送管路3に、蓋21fと、蓋21fを囲んで地上に向かって開口する調査用マンホール10fと、圧送管路3の経路にあって、蓋21fに対して下水を送る方向の上流側に設けられる第1バルブとして機能するバルブ22fと、同じく圧送管路3の経路にあって、蓋21fに対して下水を送る方向の下流側に設けられる第2バルブとして機能するバルブ22gと、を備える。蓋21fは、圧送管路3の少なくとも1つの地点の側方から内部に開口する開口部20fを開閉可能である。また、圧送管路構造体1は、圧送管路3に、蓋21gと、蓋21gを囲んで地上に向かって開口する調査用マンホール10gと、圧送管路3の経路にあって、蓋21gに対して下水を送る方向の上流側に設けられる第1バルブ(上述のバルブ22gに相当)と、同じく圧送管路3の経路にあって、蓋21gに対して下水を送る方向の下流側に設けられる第2バルブとして機能するバルブ22hと、を備える。また、圧送管路構造体1は、バルブ22hの下流側の圧送管路3に、蓋21hと、蓋21hを囲んで地上に向かって開口する調査用マンホール10hと、を備える。
【0033】
バルブ22gは、バルブ22fとバルブ22gとに挟まれた区間Iの検査を実施する際に区間Iの管内の下流側を閉鎖する第2バルブであると共に、バルブ22gとバルブ22hとに挟まれた区間IIの検査を実施する際に区間IIの管内の上流側を閉鎖する第1バルブでもある。調査用マンホール10fは、その内部に蓋21fとバルブ22fを含むが、バルブ22gを含まない。調査用マンホール10gは、その内部に蓋21gとバルブ22gを含むが、バルブ22hを含まない。調査用マンホール10hは、その内部に蓋21hとバルブ22hを含む。
【0034】
区間Iの管内を検査する場合、ポンプの停止後、
図5(5A)に示すように、蓋21fの上流側に位置するバルブ22fと、蓋21fの下流側に位置するバルブ22gとが閉鎖される。その後、蓋21fが開けられ、バキューム車等からのホースを用いて区間Iの管内の下水が外部へと排水される(矢印Dを参照)。区間IIの管内を検査する場合も、同様に、ポンプの停止後、蓋21gの上流側に位置するバルブ22gと、蓋21gの下流側に位置するバルブ22hとが閉鎖される。その後、蓋21gが開けられ、区間IIの管内の下水が外部へと排水される。なお、本願では、「排水」は、バキューム等の手段によって強制的に下水を所定の管内から除去する他、自然流下によって下水を所定の管内から除去することも含むように広義に解釈される。また、圧送管路3には、地上に通じる1以上の空気弁(不図示)が備えられている。空気弁は、区間Iおよび区間IIに、それぞれ少なくとも1つ備えられている。これは、以後の検査対象の区間についても同様である。ただし、空気弁は、1つの区間に必ずしも1つ備える必要はなく、空気弁を備えていない区間があっても良い。空気弁は、検査対象の区間からの排水時、容易に排水を可能とする。
【0035】
蓋21fとバルブ22gとに挟まれた管内の距離L1は、蓋21fを開けて調査機器を管内に挿入して検査を図ることのできる最長距離Eと同一か短い方が望ましい。同様に、蓋21gとバルブ22hとに挟まれた管内の距離L2は、蓋21gを開けて調査機器を管内に挿入して検査を図ることのできる最長距離Eと同一か短い方が望ましい。検査不能な場所が生じるのを防止できるからである。
【0036】
図5(5B)は、
図1の圧送管路3の経路における調査用マンホール10d,10e,10fを敷設している部分を示す。より詳細な構成は次の通りである。圧送管路構造体1は、圧送管路3に、蓋21dと、蓋21dを囲んで地上に向かって開口する調査用マンホール10dと、圧送管路3の経路にあって、蓋21dに対して下水を送る方向の上流側に設けられる第1バルブとして機能するバルブ22dと、同じく圧送管路3の経路にあって、蓋21dに対して下水を送る方向の下流側に設けられる第2バルブとして機能するバルブ22eと、バルブ22dとバルブ22eとに挟まれた圧送管路3の経路から分岐する第1分岐管として機能する分岐管24eと、分岐管24eの先端に配置される第3バルブとして機能するバルブ25eと、を備える。蓋21dは、圧送管路3の少なくとも1つの地点の側方から内部に開口する開口部を開閉可能である。また、圧送管路構造体1は、圧送管路3に、蓋21eと、蓋21eを囲んで地上に向かって開口する調査用マンホール10eと、圧送管路3の経路にあって、蓋21eに対して下水を送る方向の上流側に設けられる第1バルブ(上述のバルブ22eに相当)と、同じく圧送管路3の経路にあって、蓋21eに対して下水を送る方向の下流側に設けられる第2バルブとして機能するバルブ22fと、を備える。バルブ22fの下流には、蓋21fが備えられている。
【0037】
バルブ22eは、バルブ22dとバルブ22eとに挟まれた区間Iの検査を実施する際に区間Iの管内の下流側を閉鎖する第2バルブであると共に、バルブ22eとバルブ22fとに挟まれた区間IIの検査を実施する際に区間IIの管内の上流側を閉鎖する第1バルブでもある。調査用マンホール10dは、その内部に蓋21dとバルブ22dを含むが、バルブ22eを含まない。調査用マンホール10eは、その内部に蓋21eとバルブ22eとバルブ25eとを含むが、バルブ22fを含まない。調査用マンホール10fについては、
図5(5A)を参照して説明したので説明を省略する。
【0038】
図5(5B)に示す経路は、
図5(5A)に示す経路と異なり、蓋21fからの排水ではなく、分岐管24eから先に接続されたバルブ25eから排水する(矢印Dを参照)。このように、バルブ25eを備えた調査用マンホール10eを有する経路では、バルブ25eを用いた排水が可能である。
【0039】
区間Iの管内を検査する場合、ポンプの停止後、
図5(5B)に示すように、蓋21dの上流側に位置するバルブ22dと、蓋21dの下流側に位置するバルブ22eとが閉鎖される。その後、バルブ25eが開けられ、バキューム車等からのホースをバルブ25eに接続して区間Iの管内の下水が外部へと排水される。区間IIの管内を検査する場合も、同様に、ポンプの停止後、蓋21eの上流側に位置するバルブ22eと、蓋21eの下流側に位置するバルブ22fとが閉鎖される。その後、蓋21eが開けられ、区間IIの管内の下水が外部へと排水される。
【0040】
蓋21dとバルブ22eとに挟まれた管内の距離L3は、前述した最長距離Eと同一か短い方が望ましい。同様に、蓋21eとバルブ22fとに挟まれた管内の距離L4は、前述した最長距離Eと同一か短い方が望ましい。検査不能な場所が生じるのを防止できるからである。
【0041】
図6に示す構成は、
図5(5A)に示す構成中の調査用マンホール10fと調査用マンホール10gとの間に、分岐管24gと、分岐管24gの先に接続される第3バルブとして機能するバルブ25gと、を配置している点で、
図5(5A)に示す構成と異なる。このように、バルブ22fとバルブ22gとに挟まれた区間Iに、調査用マンホール10f,10gと独立してバルブ25gを接続することにより、蓋21fから排水する必要はなく、バルブ25gを用いた排水が可能となる(矢印Dを参照)。なお、区間IIの排水は、
図5(5A)の場合と同様であるため省略する。
【0042】
図7に示す構成は、
図5(5A)に示す構成中の調査用マンホール10gの内部に配置される蓋21gとバルブ22gとを下水の流れる方向からみて逆に配置している。この結果、区間Iの管内を排水する際に閉鎖する第1バルブとして機能するバルブ22fと第2バルブとして機能するバルブ22gとの間に、2つの蓋21f,21gが存在する。区間Iに蓋21f,21gを配置すると、蓋21fおよび蓋21gを開けて両側から調査機器を入れて調査可能である。さらに、変形例として、第1バルブと第2バルブとの間に3以上の蓋を配置することもできる。
【0043】
また、
図7に示す構成は、
図5(5A)に示す構成中の調査用マンホール10hの内部に配置される蓋21hとバルブ22hとを下水の流れる方向からみて逆に配置している。この結果、区間IIの管内を排水する際に閉鎖する第1バルブとして機能するバルブ22gと第2バルブとして機能するバルブ22hとの間に、蓋21hが存在する。
【0044】
蓋21fと蓋21gとに挟まれた管内の距離L5は、前述の最長距離Eの2倍と同一か短い方が望ましい。同様に、蓋21hとバルブ22gとに挟まれた管内の距離L6は、前述の最長距離Eと同一か短い方が望ましい。検査不能な場所が生じるのを防止できるからである。
【0045】
図8は、管内の検査対象の区間の上流側および下流側を閉鎖して当該区間内の下水を排水した上で検査を実施するために必要な構成要素を2組以上備える場合の例(8A,8B)を示す。
【0046】
ここでは、調査用マンホールと、蓋と、第1バルブと、第2バルブとを少なくとも含むユニットを、圧送管路3の経路に2以上備える構成例が示されている。
図8(8A)の構成では、隣り合う2つのユニットI,IIの内、下水の上流側に位置するユニットIの第2バルブとして機能するバルブ22gは、下流側に位置するユニットIIの第1バルブを兼ねている。
【0047】
一方、
図8(8B)の構成は、隣り合う2つのユニットI,II間で、第1バルブと第2バルブとの間で共用せず、それぞれ独立したバルブを備えている。具体的には、ユニットIは、蓋21fと、第1バルブとして機能するバルブ22fと、第2バルブとして機能するバルブ26とを備えている。ユニットIIは、蓋21gと、第1バルブとして機能するバルブ22gと、第2バルブとして機能するバルブ27と、を備えている。ユニットI,IIのいずれの構成でも、圧送管路3を分割して検査可能である。ただし、
図8(8A)の構成のように、隣り合うユニットI,IIとの間で第1バルブと第2バルブとを兼用する1つのバルブ22gを配置した方が、コスト面で優位であると共に、バルブの操作性が高まるので検査労力を軽減できる。
【0048】
図9は、
図1の圧送管路において略水平状態で曲がっている曲角部近傍の概略構成および模式図を示す。
【0049】
曲角部28を挟んで上流側および下流側には、それぞれ、点検用マンホール10iおよび点検用マンホール10jが配置されている。この実施形態では、曲角部28を2つ備える例で説明しているが、曲角部28を1つのみ備える場合には、1つの曲角部28を挟んで上流側および下流側に点検用マンホール10iおよび点検用マンホール10jを配置することができる。また、この実施形態では、好ましくは、点検用マンホール10iの上流側に、調査用マンホール10hが配置されている。加えて、点検用マンホール10jの下流側には、調査用マンホール10kが配置されている。調査用マンホール10kの構成は、調査用マンホール10eと同様の構成である(
図4を参照)。
【0050】
圧送管路3は、
図9に示すように急激に曲がる曲角部28を備える場合も少なくない。その場合、点検用マンホール10iの内部に配置される蓋17iおよび/または点検用マンホール10jの内部に配置される蓋17jを開けて、点検機器を管内に挿入して曲角部28まで点検できるようにするのが好ましい。加えて、曲角部28を有する経路は、水平状態の場合もある。水平状態の管路では、ポンプを停止したときに管内の下水が溜まったままとなることが多い。そのような場合には、点検対象の管路内から下水を排水できるようにするのが好ましい。この実施形態では、第1バルブとして機能するバルブ22hおよび第2バルブとして機能するバルブ22kを閉鎖して、バルブ22hとバルブ22kとに挟まれた管路内の下水を、調査用マンホール10k内部に配置される第3バルブとして機能するバルブ25kから排水可能としている(矢印Dを参照)。これにより、水平状態で下水の溜まりやすい曲角部28が存在する場合でも、点検用マンホール10iおよび/または点検用マンホール10jから管内に点検機器を入れて点検できる。点検用マンホール10i,10jは、調査機器が入らないような曲角部28を点検するのに有用である。なお、曲角部28を含む管路は、正確に水平状態である必要はなく、下水が管内に溜まるように、緩やかに上方傾斜しており、若しくは緩やかに下方傾斜していても良い。さらには、曲角部28は、その管内の下水が自然流下しにくく、バルブ25kのような第3バルブを用いて外部に強制排水する必要のある箇所(水平箇所のみならず、下方傾斜の箇所も含む)にあっても良い。
【0051】
このように、点検用マンホール10i,10jは、経路の曲角部28において下水の流れる方向の上流側および下流側の両側に配置されている。このような設計方法によれば、曲角部28の管路内に調査機器を入れることが困難な場合でも点検を行うことができる。なお、点検用マンホール10iまたは点検用マンホール10jのいずれか一方を、曲角部28の近傍に配置しても良い。
【0052】
図9に示す構成では、曲角部28の上流側および下流側に、それぞれ蓋17iを内部に配置する点検用マンホール10iおよび蓋17jを内部に配置する点検用マンホール10jを、備えている。しかし、点検用マンホール10i,10jの内のいずれか一方のマンホールを曲角部28の上流側若しくは下流側に備えるだけでも良い。また、点検用マンホール10i,10jに代えて、調査用マンホールを備えても良い。さらに、調査用マンホール10kに代えて、調査用マンホール10hと同形のマンホールを配置して、蓋21hに相当する箇所から排水を行っても良い。
【0053】
図10は、圧送管路の経路にあって、地下方向に屈曲する下方屈曲部およびその近傍の縦断面図(10A)およびその変形例の縦断面図(10B)を示す。
【0054】
図10(10A)に示す圧送管路3の一部には、地下方向に突出するように曲がる下方屈曲部29が存在する。下方屈曲部29は、圧送管路3において、地下方向にV字状若しくは伏せ越し状に屈曲する部分である。下方屈曲部29には、管内の下水を圧送管路3の外部に排水するための第3バルブとして機能するバルブ25eと、調査用マンホール10eと、蓋21eと、バルブ22eとが備えられている。この実施形態では、調査用マンホール10eの内部に、蓋21e、バルブ22eおよびバルブ25eが配置されている。下方屈曲部29が地下方向にV字状に屈曲する部分の場合には、バルブ25eは地下方向に突出した管に配置可能である。一方、下方屈曲部29が地下方向に伏せ越し状に屈曲する部位の場合には、バルブ25eは略水平の管に配置可能である。下方屈曲部29に、外部排水用のバルブ25eを配置すると、ポンプ停止時に下水を下方屈曲部29に自然流下させて、外部へと排水しやすい(矢印Dおよび矢印Fを参照)。
【0055】
下方屈曲部29が存在する部分の上方には、地上若しくは地中に設置される構造物が存在していて、調査用マンホール10eを配置できない場合もある。そのような場合には、
図10(10B)に示すように、下方屈曲部29に、バルブ25eのみを配置して、バルブ25eから外部へと排水するようにしても良い(矢印Dを参照)。バルブ25eは、人手による操作で開閉可能なバルブではなく、電磁バルブあるいはエアーバルブの方が好ましい。なお、
図10(10B)の構成に加え、下方屈曲部29を挟んで両側若しくは片側に、点検用マンホールを配置しても良い。
【0056】
図11は、圧送管路の経路にあって、地上方向に突出するように曲がる上方曲角部およびその近傍の縦断面図を示す。なお、
図11は、マンホールを水平部分に布設した例を示すが、マンホールを傾斜なりに布設しても良い。
【0057】
図11に示す圧送管路3の一部には、地上方向に突出するように曲がる上方曲角部30が存在する。上方曲角部30は、圧送管路3が地上に向かって垂直に上昇した部位に存在する場合のみならず、地上に向かって斜め上方に上昇した部位に存在していても良い。上方曲角部30の上流側および下流側の圧送管路3は、下水が上方曲角部30から自然流下可能であれば良い。上方曲角部30の上流側および下流側には、それぞれ蓋17bを内部に配置する点検用マンホール10bおよび蓋17cを内部に配置する点検用マンホール10cが、備えられている。しかし、点検用マンホール10b,10cの内のいずれか一方のマンホールを上方曲角部30の上流側若しくは下流側に備えるだけでも良い。この実施形態では、上方曲角部30を1つ備える例で説明しているが、上方曲角部30を2以上備える場合には、2以上の上方曲角部30を挟んで上流側および下流側に点検用マンホール10iおよび点検用マンホール10jを配置することもできる。ポンプを停止すると、上方曲角部30およびその近傍の管内に存在する下水は、上方曲角部30から下方へと流下しやすい(矢印Fを参照)。この結果、上方曲角部30およびその近傍の管内に気相部が生じやすい。この実施形態に係る圧送管路設計方法によれば、上記のような場所に、排水用のバルブを備えずに、点検用マンホール10b,10cの少なくともいずれか一方のマンホールを備えるだけで、蓋17bおよび/または蓋17cを開けて管内に点検機器を挿入して点検を行うことができる。
【0058】
なお、点検用マンホール10b,10cに代えて、調査用マンホールを配置してもよい。その場合、調査用マンホールを利用して点検機器または調査機器を圧送管路内に入れて、点検または調査を行うこともできる。また、調査用マンホール10eのように、第3バルブとして機能するバルブ25eを備えていると、上方曲角部30およびその近傍から下水を強制的に排水した後に点検または調査を行うこともできる。
【0059】
図12は、1条運用において、検査対象区間の下水を排水すると共に同区間の上流側と下流側とを配管で接続して下水を迂回させる状況の概略構成図および模式図を示す。
【0060】
1条運用の圧送管路構造体1は、第1バルブとして機能するバルブ22lよりも上流側の圧送管路3から分岐する第2分岐管(分岐管24l)と、分岐管24lの先に設けられる第4バルブとして機能するバルブ25lと、第2バルブとして機能するバルブ22mよりも下流側の圧送管路3から分岐する第3分岐管(分岐管24n)と、分岐管24nの先に設けられる第5バルブとして機能するバルブ25nと、バルブ25lとバルブ25nとの間を接続する配管31と、を備える。
【0061】
1条運用の圧送管路構造体1は、その経路上に、下水の上流側から順に、調査用マンホール10l、調査用マンホール10m、調査用マンホール10nという3つのマンホール10を直列に備える。調査用マンホール10lは、その内部に、下流側から上流側に向かって順に、蓋21l、バルブ22l、継手管23lを配置している。継手管23lは、継手管23lから分岐する分岐管24lを備える。調査用マンホール10mは、その内部に、下流側から上流側に向かって順に、蓋21m、バルブ22m、継手管23mを配置している。継手管23mは、継手管23mから分岐する分岐管24mを備える。調査用マンホール10nは、その内部に、下流側から上流側に向かって順に、蓋21n、バルブ22n、継手管23nを配置している。継手管23nは、継手管23nから分岐する分岐管24nを備える。なお、分岐管24mは、配管31の上流側をバルブ25mに付け替えて、蓋21mを開けて検査を行う場合には、第1分岐管として機能する。
【0062】
バルブ22lとバルブ22mとの間の区間を検査する場合には、バルブ22l,22mを閉鎖し、バルブ25mを開状態として、同区間内の下水をバルブ25mから外に排水する必要がある(矢印Dを参照)。一方、2条運用と異なり、検査中も下水を流し続ける必要がある。このため、バルブ25lとバルブ25nとの間に配管(仮設配管と称することもできる)31を接続して、バルブ22lより上流の下水を、配管31を経由してバルブ25n、バルブ22nの順に流して、下水を迂回させる必要がある(矢印Fを参照)。
【0063】
1条運用の圧送管路構造体1に、調査用マンホール10l、調査用マンホール10m、調査用マンホール10n、さらに同形の調査用マンホールを下流側に接続している場合には、例えば、配管31を下流側の調査用マンホールへと付け替えながら、下流方向に順番に検査を行うことができる。調査用マンホール10lより上流側に、これと同形の調査用マンホールを接続している場合にも、上流方向若しくは下流方向に配管31を付け替えながら順番に検査を行うことができる。
【0064】
また、
図12に示す構成において、バルブ22lとバルブ22mとの間の区間のみを検査する場合には、調査用マンホール10mに代えて、蓋21mとバルブ22mのみを備える調査用マンホールを配置しても良い。
【0065】
以上のように、この実施形態に係る圧送管路構造体の設計方法は、1つの圧送管路構造体1を配置した1条運用において、第4バルブとして機能するバルブ25lと、第5バルブとして機能するバルブ25nとの間に配管31を接続し、第1バルブとして機能するバルブ22lと第2バルブとして機能するバルブ22mとに挟まれた圧送管路3の区間を検査する際に、下水を配管31に迂回して流すことを可能とする。
【0066】
図13は、マンホール内の圧送管路に遊合形フランジを備える例の縦断面図(13A,13B)を示す。
【0067】
本願では、遊合形フランジは、管路の途中に接続され、接続部位を開放すると管路の長さ方向に隙間を形成できるフランジをいう。
図13(13A)に示す調査用マンホール10fには、継手管19fとバルブ22fとの間に、遊合形フランジの一例であるルーズフランジ35が接続されている。ルーズフランジ35は、継手管19fとルーズフランジ35との間との接続、またはバルブ22fとルーズフランジ35との間の接続を解除可能である。これによって、継手管19fあるいはバルブ22fを容易に交換可能である。
【0068】
また、
図13(13B)に示すように、調査用マンホール10fには、遊合形フランジの別の例であるフレキシブルチューブ36を用いることも可能である。これによって、継手管19e、バルブ22eまたは継手管23eを容易に交換可能である。遊合形フランジは、例えば、第1バルブ(例えばバルブ22d,22f)および第2バルブ(例えばバルブ22g,22e)の内の少なくとも一方のバルブの接続部位に接続することによって、上記少なくとも一方のバルブの交換が容易となる。また、遊合形フランジは、第3バルブ(例えばバルブ25e,25g,25k,25m)、第4バルブ(例えばバルブ25l)および/または第5バルブ(例えばバルブ25n)と接続しても良い。
【0069】
ルーズフランジ35は、
図13(13B)に示す調査用マンホール10e内の構成要素間に備えられても良い。また、フレキシブルチューブ36は、
図13(13A)に示す調査用マンホール10f内の構成要素間に備えられても良い。さらには、ルーズフランジ35およびフレキシブルチューブ36に代表される遊合形フランジを、上述の各種バルブおよび各種継手管に接続しても良い。
【0070】
第1バルブ(例えばバルブ22d,22f)および第2バルブ(例えばバルブ22g,22e)の内の少なくとも1つのバルブは、所定の条件が揃った際に開状態となるインターロック機能を備えたバルブとしても良い。所定の条件とは、例えば、第1バルブと第2バルブの間にある第3バルブおよび蓋が閉鎖された状態をいう。さらに、第3バルブ(例えばバルブ25e,25g,25k,25m)、第4バルブ(例えばバルブ25l)および/または第5バルブ(例えばバルブ25n)の内の少なくとも1つのバルブを、インターロック機能を備えたバルブとしても良い。その場合、例えば、バルブまたは蓋が閉塞または誤って閉鎖した際に、圧送管路3内の過度の内圧上昇を防ぐために、インターロック機能を備えたバルブを開状態として、内圧を下げることも可能である。
【0071】
さらに、圧送管路3の経路に用いられる全てのバルブは、その形式を問わないが、バタフライ弁とするのが好ましく、さらには横軸側のバタフライ弁とするのがさらに好ましい。下水を送る過酷な経路で使用する際にも、開閉不良を軽減できるからである。
【0072】
3.圧送管路検査方法
本発明の一実施形態に係る圧送管路検査方法について説明する。
【0073】
図14は、基本的な圧送管路検査方法のフローを模式図の変化と共に示す。なお、
図14以降において、見やすさを考慮し、模式図内の全構成要素に符号を付さずに、フローの進行に伴い変化のある構成要素に対して優先的に符号を付す。
【0074】
この実施形態に係る圧送管路検査方法は、下水を圧送するための圧送管路3の内部を検査する方法である。圧送管路構造体1は、
図5(5A)でも示したように、圧送管路3に、蓋21fと、蓋21fを囲んで地上に向かって開口するマンホール10fと、蓋21fに対して上流側に設けられる第1バルブとして機能するバルブ22fと、蓋21fに対して下流側に設けられる第2バルブとして機能するバルブ22gと、を備える。
図14では、圧送管路3の経路上、蓋21fとバルブ22fとを内部に備える調査用マンホール10fと、蓋21gとバルブ22gとを内部に備える調査用マンホール10gとを直列に配置した部分を例示する。矢印Fは、下水の流れる方向である。これは、
図15以降の図でも同様である。
【0075】
バルブ22fとバルブ22gとの間の区間を検査する場合、バルブ22fとバルブ22gが閉鎖される(ST100: 閉鎖ステップ)。次に、バルブ22fとバルブ22gとの間の区間内の所定箇所(ここでは、蓋21f)から下水が排水される(ST110: 第1排水ステップ)。次に、蓋21fを開けた開口部から検査機器を入れて圧送管路3の内部の検査が行われる(ST120: 第1検査ステップ)。ここで、第1検査ステップは、圧送管路3内に牽引式若しくは自走式にて走行する調査用カメラを備えた調査機器を入れて調査する調査ステップである。検査機器は、好ましくは、自走式の調査用カメラを備えた調査機器40である。
【0076】
調査用マンホール10fは、バルブ22fを備えていない点検用マンホールでも良い。また、調査用マンホール10gは、バルブ22gを備えていない点検用マンホールでも良い。その場合、第1検査ステップは、押し込み式の点検用カメラを備えた点検機器を用いた点検ステップとなる。
【0077】
図15は、圧送管路構造体の曲角部を含む管路内の検査方法のフローを示す。ここでは、検査方法の一形態である点検方法を例に説明する。
【0078】
図9でも示したように、圧送管路3は、第1バルブとして機能するバルブ22hと、第2バルブとして機能するバルブ22kの間の区間に曲角部28を有している。曲角部28の上流側には、点検用マンホール10iとその内部に点検用の蓋17iとが配置されている。曲角部28の下流側には、点検用マンホール10jとその内部に点検用の蓋17jとが配置されている。点検用マンホール10iよりさらに上流側には、調査用マンホール10hが配置されている。調査用マンホール10hの内部には、上流から下流の方向に、バルブ22h、蓋21hが直列に配置されている。点検用マンホール10jよりさらに下流側には、調査用マンホール10kが配置されている。調査用マンホール10kの内部には、上流から下流の方向に、圧送管路から分岐して備えられる第3バルブとして機能するバルブ25k、バルブ22k、蓋21kが直列に配置されている。
【0079】
バルブ22hとバルブ22kとの間の区間(曲角部28を含む)を点検する場合、バルブ22hとバルブ22kが閉鎖される(ST200: 閉鎖ステップ)。次に、バルブ22hとバルブ22kとの間の区間内の所定箇所(ここでは、バルブ25k)から下水が排水される(ST210: 第1排水ステップ)。次に、蓋17iを開けた開口部および/または蓋17jを開けた開口部から、押し込み式の点検用カメラを備えた点検機器41を入れて圧送管路3の内部の点検が行われる(ST220: 第1点検ステップ)。
【0080】
調査用マンホール10kに代えて、調査用マンホール10hと同形のマンホールを配置しても良い。その場合、好ましくは、点検用マンホール10jとバルブ22kとの間にバルブ25kが備えられる。
【0081】
図16は、圧送管路構造体の上方曲角部を含む管路内の検査方法のフローを示す。ここでは、検査方法の一形態である点検方法を例に説明する。
【0082】
圧送管路3は、地上方向に突出するように曲がる上方曲角部30を有している。上方曲角部30の上流側には、点検用マンホール10bとその内部に点検用の蓋17bとが配置されている。上方曲角部30の下流側には、点検用マンホール10cとその内部に点検用の蓋17cとが配置されている。点検の際に、ポンプを停止すると、上方曲角部30を含む管内に存在する下水は、下方(矢印Fの方向)に自然流下する(ST300: 第2排水ステップ)。下水の自然流下によって管内に気相部が生じると、点検が容易になる。気相部が生じた後、点検用の蓋17bおよび/または点検用の蓋17cを開けて、上方曲角部30を含む管内に、点検機器41を入れて点検が行われる(ST310: 第2点検ステップ)。
【0083】
図17は、1条運用の圧送管路検査方法のフローを示す。ここでは、検査方法の一形態である調査方法を例に説明する。
【0084】
図12に示したように、圧送管路構造体1には、第1バルブ(バルブ22l)よりも上流側の圧送管路3から分岐する分岐管25lの先に設けられる第4バルブ(バルブ25l)と、第2バルブ(バルブ22m)よりも下流側の圧送管路3から分岐する分岐管24nの先に設けられる第5バルブ(バルブ25n)が備えられている。
【0085】
バルブ22lとバルブ22mとに挟まれた区間の調査に先立ち、バルブ25lとバルブ25nとの間に配管31が接続される(ST400: 配管接続ステップ)。次に、バルブ22lおよびバルブ22mが閉鎖される(ST410: 閉鎖ステップ)。次に、バルブ25lとバルブ25nとが開かれ、矢印Fで示すように、配管31に下水が迂回する(ST420: 下水迂回ステップ)。次に、バルブ22lとバルブ22mとの間の区間内の所定箇所(ここでは、バルブ25m)から、矢印Dで示すように、下水が排水される(ST430: 第1排水ステップ)。次に、蓋21lを開けた開口部から検査機器を入れて圧送管路3の内部の検査が行われる(ST440: 第1検査ステップ)。ここで、第1検査ステップは、圧送管路3内に牽引式若しくは自走式にて走行する調査用カメラを備えた調査機器を入れて調査する調査ステップである。検査機器は、好ましくは、自走式の調査用カメラを備えた調査機器40である。
【0086】
なお、配管接続ステップ(ST400)および下水迂回ステップ(ST420)は、第1検査ステップ(ST440)よりも前に行われる限り、上述の順番と異なる順番にて行われても良い。例えば、配管接続ステップ(ST400)は、閉鎖ステップ(ST410)の直後、あるいは第1排水ステップ(ST430)の直後でも良い。下水迂回ステップ(ST420)は、配管接続ステップ(ST400)の後であれば、第1排水ステップ(ST430)の直後でも良い。
【0087】
配管31は、調査用マンホール10mを挟んで両側にある調査用マンホール10l,10n内の第4バルブと第5バルブとを接続している。しかし、1つの調査用マンホールを挟む場合に限定されず、2以上の調査用マンホールを挟んで配管31が接続されていても良い。また、
図17では、調査用マンホール10l,10m,10nを直列に配置した例で下水を迂回させているが、調査用マンホール10l,10m,10nの少なくともいずれか1つを、点検用マンホールに代えても良い。その場合、バルブは、点検用マンホール外に配置される。
【0088】
第1排水ステップの後または第2排水ステップの後に、管路内の洗浄ステップを行い、洗浄ステップの後に管内の検査を行うようにするのが好ましい。また、第1排水ステップまたは第2排水ステップにおいて、洗浄ステップが同時に行われても良い。その場合には、第1排水ステップを「第1排水・洗浄ステップ」と、第2排水ステップを「第2排水・洗浄ステップ」と称しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、例えば、下水を圧送する分野にて利用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1・・・圧送管路構造体、3・・・圧送管路、16b,20f,20e・・・開口部、17b,17c,17i,17j,21d,21e,21f,21g,21h,21k,21l,21m,21n・・・蓋、10・・・マンホール、10b,10c,10i,10j・・・点検用マンホール、10a,10d,10e,10f,10g,10h,10k・・・調査用マンホール、22d・・・バルブ(第1バルブ)、22e・・・バルブ(第1バルブ、第2バルブ)、22f・・・バルブ(第1バルブ、第2バルブ),22g・・・バルブ(第1バルブ、第2バルブ),22h・・・バルブ(第2バルブ)、22l・・・バルブ(第1バルブ)、22m・・・バルブ(第1バルブ、第2バルブ)、22n・・・バルブ(第2バルブ)、24e,24g・・・分岐管(第1分岐管)、24l・・・分岐管(第2分岐管)、24m・・・分岐管(第1分岐管)、24n・・・分岐管(第3分岐管)、25e,25g,25k・・・バルブ(第3バルブ)、25l・・・バルブ(第4バルブ)、25m・・・バルブ(第3バルブ)、25n・・・バルブ(第5バルブ)、26・・・バルブ(第2バルブ)、27・・・バルブ(第2バルブ)、28・・・曲角部、29・・・下方屈曲部、30・・・上方曲角部、31・・・配管、35・・・ルーズフランジ(遊合形フランジの一例)、36・・・フレキシブルホース(遊合形フランジの一例)、40・・・調査機器(検査機器の一形態)、41・・・点検機器(検査機器の一形態)、M1・・・点検用マンホールパッケージ、M2,M3・・・調査用マンホールパッケージ、UNIT I,UNIT II・・・ユニット。