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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】吐出ポンプ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20240315BHJP
   B05B 11/00 20230101ALI20240315BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B05B11/00 101L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020146295
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022041220
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】當麻 徹
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-100754(JP,A)
【文献】特開2016-221457(JP,A)
【文献】国際公開第2007/086156(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B05B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される容器本体の口部に装着され、前記口部の内側に上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステムを有するポンプ部材と、
前記ステムの上端部に装着され、内容物を前方に向けて吐出する吐出部材と、を備え、
前記ポンプ部材は、
内部に内容物を吸い上げ可能なシリンダと、
前記シリンダ内に上方付勢状態で下方移動可能に収容され、前記ステムの押下げ操作によって、前記シリンダ内の内容物を前記ステム内に供給するピストンと、を備え、
前記吐出部材は、
前記ステムを押下げ操作可能な押下ヘッドと、
前記ステム内に連通すると共に、前記ステムの押下げ操作によって、前記ステム内の内容物が内部に供給される貯留シリンダと、
前記貯留シリンダの前方に配置されると共に、前記ステムの押下げ操作によって、前記ステム内の内容物を、吐出口を通じて外部に吐出する吐出筒と、を備え、
前記押下ヘッドは、
前記ステムの上端部に装着される装着ヘッド部と、
前記装着ヘッド部の上方に配置され、前記装着ヘッド部に対して、前記貯留シリンダを間に挟んだ状態で上方から組み合わされる押下ヘッド部と、を備え、
前記貯留シリンダは、前後方向に延びるように形成され、
前記貯留シリンダ内には、前記貯留シリンダの中心軸線に沿って前後方向に移動可能に配設され、前記貯留シリンダ内への内容物の供給に伴って後方に向けて移動すると共に、前方に向けて付勢される貯留プランジャが設けられ
前記吐出筒は、前記貯留シリンダ内に連通し、
前記貯留プランジャは、前方への移動に伴って前記貯留シリンダ内の内容物を前記吐出筒側に押し出すことを特徴とする吐出ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の吐出ポンプにおいて、
前記吐出筒は、前記貯留シリンダ内を通じて前記ステム内に連通している、吐出ポンプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吐出ポンプにおいて、
前記吐出部材は、
前記ステムから前方に向けて延びるように配置され、内部が前記ステム内に連通した第1連絡筒と、
前記第1連絡筒の前方から上方に向けて延びるように配置され、内部が前記第1連絡筒内に連通した第2連絡筒と、を備え、
前記貯留シリンダは、前記第1連絡筒の上方に前記第1連絡筒と並べられて配置され、且つ前記第2連絡筒内及び前記第1連絡筒内を通じて前記ステム内に連通している、吐出ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に示されるように、内容物が収容される容器本体の口部に装着される吐出ポンプが知られている。
吐出ポンプは、シリンダを有し、容器本体の口部に装着される固定吸引部と、ステム及び吐出ヘッドを有し、コイルスプリングによって上方付勢状態で下方移動可能に固定吸引部に組み合わされる作動部材と、を備えている。
これにより、吐出ヘッドを介した作動部材の押下げ操作により、シリンダ内の内容物を、吐出ヘッドを介して吐出することができると共に、コイルスプリングによる作動部材の上方への復元移動に伴ってシリンダ内に内容物を吸い上げることが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-26324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の吐出ポンプでは、吐出ヘッドを押下げ操作したときにのみ内容物が吐出される。そのため、例えば手指の消毒用アルコール等の内容物(液体内容物)を両手で受け取りたいという要望に応えることができなかった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、押下げ操作の解除後も内容物を吐出することができる吐出ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る吐出ポンプは、内容物が収容される容器本体の口部に装着され、前記口部の内側に上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステムを有するポンプ部材と、前記ステムの上端部に装着され、内容物を前方に向けて吐出する吐出部材と、を備え、前記ポンプ部材は、内部に内容物を吸い上げ可能なシリンダと、前記シリンダ内に上方付勢状態で下方移動可能に収容され、前記ステムの押下げ操作によって、前記シリンダ内の内容物を前記ステム内に供給するピストンと、を備え、前記吐出部材は、前記ステムを押下げ操作可能な押下ヘッドと、前記ステム内に連通すると共に、前記ステムの押下げ操作によって、前記ステム内の内容物が内部に供給される貯留シリンダと、前記貯留シリンダの前方に配置されると共に、前記ステムの押下げ操作によって、前記ステム内の内容物を、吐出口を通じて外部に吐出する吐出筒と、を備え、前記押下ヘッドは、前記ステムの上端部に装着される装着ヘッド部と、前記装着ヘッド部の上方に配置され、前記装着ヘッド部に対して、前記貯留シリンダを間に挟んだ状態で上方から組み合わされる押下ヘッド部と、を備え、前記貯留シリンダは、前後方向に延びるように形成され、前記貯留シリンダ内には、前記貯留シリンダの中心軸線に沿って前後方向に移動可能に配設され、前記貯留シリンダ内への内容物の供給に伴って後方に向けて移動すると共に、前方に向けて付勢される貯留プランジャが設けられ、前記吐出筒は、前記貯留シリンダ内に連通し、前記貯留プランジャは、前方への移動に伴って前記貯留シリンダ内の内容物を前記吐出筒側に押し出すことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る吐出ポンプによれば、押下ヘッドの押下げ操作によって、吐出部材ごとステムを下方移動させることで、ピストンをシリンダ内で下方移動させることができる。これにより、シリンダ内を加圧することができ、シリンダ内の内容物をステム内に供給することができる。これにより、ステム内の内容物を吐出筒内に供給することができ、吐出口を通じて該内容物を外部(前方)に向けて吐出することができる。さらに内容物の吐出と同時に、ステム内の内容物を貯留シリンダ内にも供給できるので、貯留シリンダ内を加圧することができる。そのため、内容物の吐出を行いながら、貯留プランジャを付勢力に抗して軸方向の一方側に向けて移動させることができ、貯留シリンダ内に内容物を溜める(充填する)ことができる。
【0008】
従って、押下ヘッドの押下げ操作を停止すると、ステム内を通じた貯留シリンダ内及び吐出筒内への内容物の供給が停止するが、貯留プランジャが軸方向の他方側に向けて復元移動しはじめるので、貯留シリンダ内に充填した内容物を、貯留シリンダ内から吐出筒を通じて吐出口側に向けて押し出すことができる。
従って、押下ヘッドの押下げを解除した後であっても、内容物を連続的に吐出することができる。そのため、時差式で内容物の連続吐出を行うことができる。これにより、例えば片手で押下ヘッドの押下げ操作を行い、その間に、もう一方の片手で内容物の受け取りを行った後、続けて、両手で内容物を受け取るといった使い方を行うことができる。従って、内容物を両手で受け取って使用することができるので、使い易い吐出ポンプとすることができる。特に、内容物を洗浄液や消毒液等として利用する場合に好適である。
【0009】
(2)前記吐出筒は、前記貯留シリンダ内を通じて前記ステム内に連通しても良い。
【0010】
この場合には、ステム内と吐出筒内とを直接的に連通する経路を、ステム内と貯留シリンダ内とを連通する経路とは別に設ける必要がないので、構成の簡易化を図ることができると共に、低コスト化を図り易い。
【0011】
(3)前記吐出部材は、前記ステムから前方に向けて延びるように配置され、内部が前記ステム内に連通した第1連絡筒と、前記第1連絡筒の前方から上方に向けて延びるように配置され、内部が前記第1連絡筒内に連通した第2連絡筒と、を備え、前記貯留シリンダは、前記第1連絡筒の上方に前記第1連絡筒と並べられて配置され、且つ前記第2連絡筒内及び前記第1連絡筒内を通じて前記ステム内に連通しても良い。
【0012】
この場合には、貯留シリンダを、ステムから前方に向けて延びる第1連絡筒の上方に並べて配置するので、例えば貯留シリンダをステムの直上に位置するように配置することが可能である。そのため、吐出ポンプ全体の全長を短くして小型化を図りつつ、重心バランスを安定化させ易い。そのため、押下ヘッドの押下げ操作を安定して行い易く、内容物をより安定して吐出させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る吐出ポンプによれば、押下げ操作の解除後も内容物を吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る吐出ポンプの第1実施形態を示す縦断面図であって、吐出部材が下降端位置に位置している状態の縦断面図である。
図2図1に示す状態から、吐出部材が上昇端位置に位置した状態の吐出ポンプの縦断面図である。
図3図2に示す吐出部材の周辺を拡大した縦断面図である。
図4図3に示す状態から、貯留プランジャが後方移動した縦断面図である。
図5】本発明に係る吐出ポンプの第2実施形態を示す縦断面図であって、吐出部材が下降端位置に位置している状態の縦断面図である。
図6図5に示す状態から、吐出部材が上昇端位置に位置した状態の吐出ポンプの縦断面図である。
図7図6に示す貯留プランジャが後方移動した場合の吐出部材の周辺を拡大した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る吐出ポンプの第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の吐出ポンプ1は、内容物が収容される有底筒状の容器本体の口部に装着されて使用される。内容物としては、特に限定されるものではないが、例えば洗浄液や消毒液等の液体内容物が挙げられる。
【0016】
吐出ポンプ1は、容器本体Aの口部A1に装着されるポンプ部材2と、後述するステム10を介してポンプ部材2に組み合わされた吐出部材3と、を備えている。
なお、吐出ポンプ1の各構成部品は、特に記載がなければ、合成樹脂を用いた成形品とされている。
【0017】
図1及び図2に示すように、ポンプ部材2は、ステム10、装着キャップ11、シリンダ12、ピストン13、ピストンガイド14及びコイルばね15を主に備えている。
これら各構成品は、それぞれの中心軸が共通軸上に位置した状態で配設されている。本実施形態では、この共通軸を軸線O1といい、軸線O1に沿って容器本体Aから吐出部材3に向かう方向を上方、その反対を下方という。また、軸線O1方向から見た平面視において、軸線O1に交差する方向を径方向といい、軸線O1回りに周回する方向を周方向という。さらに、径方向のうち互いに直交し合う一方向を前後方向L1といい、他方向を左右方向L2という。
【0018】
吐出部材3は、押下ヘッド20、貯留シリンダ21、貯留プランジャ22、吐出筒23を主に備えている。
本実施形態では、貯留シリンダ21の中心軸線を軸線O2とする。図示の例では軸線O2は、前後方向L1に沿って延びている。従って、本実施形態において前後方向L1は、貯留シリンダ21の中心軸線に沿う軸方向に相当する。また、本実施形態において後方は、貯留シリンダ21の中心軸線に沿う軸方向のうちの一方側に相当し、前方は貯留シリンダ21の中心軸線に沿う軸方向のうちの他方側に相当する。ただし、軸線O2に沿う軸方向は、前後方向L1と一致していなくても良い。
【0019】
以下、ポンプ部材2及び吐出部材3について、それぞれ詳細に説明する。
なお、本実施形態の吐出ポンプ1は、未使用段階では、図1に示すようにステム10及び吐出部材3の全体が下降端位置P1に位置し、且つ吐出部材3が後述する規制筒50に螺着して保持されることで、装着キャップ11に対する吐出部材3の上方移動が規制されている。一方、使用段階では、図2に示すように、ステム10及び吐出部材3の全体が上昇端位置P2に位置して、吐出操作のための待機状態を維持する。
【0020】
(ポンプ部材)
ポンプ部材2について、詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、装着キャップ11は、天壁部30及び周壁部31を備えた有頂筒状に形成されている。
天壁部30には、該天壁部30を上下に貫通する挿通孔が形成されている。挿通孔内には、後述する突出筒44やステム10等が挿通されている。天壁部30の下面は、後述するシリンダ12のフランジ部40の上面に接触しており、容器本体Aの口部A1との間でフランジ部40を上下に挟み込んでいる。これにより、シリンダ12は上下方向に位置決めされている。
【0021】
周壁部31は、天壁部30の外周縁部から下方に向けて延設され、フランジ部40及び容器本体Aの口部A1を径方向の外側から囲んでいる。周壁部31の内周面には、容器本体Aの口部A1に螺着されるねじ部(例えば雌ねじ部)が形成されている。これにより、ポンプ部材2の全体は、装着キャップ11を介して容器本体Aの口部A1に着脱可能に装着されていると共に、容器本体Aの口部A1内に挿入された状態で装着キャップ11を介して容器本体Aの口部A1の内側に保持されている。
なお、装着キャップ11は、例えばアンダーカット嵌合等、螺着以外の方法によって口部A1に装着されても構わない。また、周壁部31の外周面には、例えばローレット加工等によって滑り止め加工が施されている。
【0022】
シリンダ12は、上下方向に段階的に外径が変化した多段の筒状に形成され、容器本体A内の内容物を内部に吸い上げることが可能とされている。
シリンダ12は、装着キャップ11の内側に配設され、パッキンを介して容器本体Aの口部A1の上端開口縁上に配置される環状のフランジ部40と、フランジ部40の内周縁部から下方に向けて延設された摺動筒41と、摺動筒41の下端から下方に向けて延設された縮径筒42と、縮径筒42の下端から下方に向けてさらに延設された吸込み筒43と、フランジ部40の内周縁部から上方に向けて延設された突出筒44を備えている。
【0023】
摺動筒41は、軸線O1を中心として上下方向に同一径で延びた直筒状に形成されている。摺動筒41のうち装着キャップ11の内側に位置する部分には、該摺動筒41を径方向に貫通する外気導入孔45が形成されている。内容物の吐出時、この外気導入孔45を通じて容器本体A内に外気を導入することが可能とされ、これによって容器本体A内の圧力が減圧することを防止することが可能とされている。
【0024】
縮径筒42は、摺動筒41よりも直径が小さい筒状に形成されている。なお、縮径筒42の外周面には、上下方向に延びた縦リブ42aが周方向に間隔をあけて複数形成されている。ただし、縦リブ42aは必須なものではなく、具備しなくても構わない。この縮径筒42の内側には、ピストンガイド14が取り付けられている。
【0025】
吸込み筒43は、縮径筒42よりも直径が小さい筒状に形成されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、吸込み筒43の直径は縮径筒42の直径と同等であっても構わない。吸込み筒43の内側には、容器本体A内の内容物を吸い上げる吸上チューブ46が嵌合されている。
なお、吸上チューブ46は、ポンプ部材2とは別体とされ、その下端開口が容器本体Aの図示しない底部に近接する位置まで延設されている。吸上チューブ46をポンプ部材2と別体とすることで、例えば容器本体Aの仕様(サイズや種類等)に応じて最適な吸上チューブ46をポンプ部材2に取り付けることが可能とされている。
【0026】
吸込み筒43のうち吸上チューブ46よりも上方に位置する部分の内周面には、径方向の内側に向けて突出した断面テーパー状の弁座47が形成されている。そして、吸込み筒43の内側には、ボール弁48が配設されている。ボール弁48は上方に向けて離反可能に弁座47に着座している。
ボール弁48は、容器本体A内から吸上チューブ46を通じてシリンダ12内に向けた内容物の移動を許容し、且つシリンダ12内から吸上チューブ46を通じて容器本体A内に向けた内容物の移動を規制する逆止弁として機能する。
【0027】
突出筒44は、例えば摺動筒41よりも直径が大きい筒状に形成されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、突出筒44の直径は摺動筒41の直径と同等であっても構わない。突出筒44の外周面には、径方向の外側に向けて突出した係合突起が形成されている。
【0028】
上述のように構成されたシリンダ12において、突出筒44には吐出部材3を下降端位置P1で保持する規制筒50が装着されている。規制筒50は、突出筒44に外嵌された外嵌筒51と、突出筒44の内側に嵌合された雌ねじ筒52と、外嵌筒51及び雌ねじ筒52を径方向に一体に連結する環状の連結環53と、を備えている。
【0029】
外嵌筒51は、突出筒44を径方向の外側から囲んでおり、例えば打栓等によって突出筒44に対して外嵌されている。図示の例では、外嵌筒51は、突出筒44側に形成された係合突起に対してアンダーカット嵌合されている。
雌ねじ筒52は、シリンダ12に対する回り止めがされた状態で、突出筒44の内側に嵌合している。そして雌ねじ筒52の内周面には雌ねじ部が形成されている。
【0030】
ピストン13は、上述のように構成されたシリンダ12内に上方付勢状態で下方移動可能に収容され、ステム10の押下げ操作によってシリンダ12内の内容物をステム10内に供給することが可能とされている。ピストン13は、摺動筒41の内周面に摺接する外筒60と、外筒60の内側に配設された内筒61と、外筒60と内筒61とを全周に亘って連結する環状の連結部62と、を備えている。
【0031】
内筒61は、ステム10の後述する下側ステム筒80の内側に嵌合している。これにより、ピストン13は、ステム10の上下動に連係して作動することが可能とされている。また、内筒61の上端部における内周面には、径方向の内側に向けて突出した円環状の第1シール部63が形成されている。
【0032】
上述のように構成されたピストン13は、ステム10及び吐出部材3が上昇端位置P2に位置したときに、外筒60を利用して摺動筒41に形成された外気導入孔45を閉塞することが可能とされている(図2参照)。
【0033】
ピストンガイド14は、上述したピストン13の上下動を案内する役割を担っており、シリンダ12内に配置されている。
ピストンガイド14は、吸込み筒43の上端開口縁に上方から接触した状態で摺動筒41及び縮径筒42の内側に配置された基端筒70と、基端筒70の上端部に連設されると共に、上方に向けて延びた中実のガイド軸71と、を備えている。
【0034】
基端筒70の下端部には、径方向の外側に向けて突出した環状の嵌合片72が形成されている。嵌合片72は、シリンダ12における縮径筒42の内側に嵌合している。これにより、ピストンガイド14の全体は、縮径筒42の内側に嵌合された状態でピストン13内に配置されている。
基端筒70には、該基端筒70を径方向に貫通する貫通孔73が例えば周方向に間隔をあけて複数形成されている。これにより、貫通孔73を通じて、容器本体A内の内容物をシリンダ12内に導くことが可能とされている。
【0035】
ガイド軸71は、シリンダ12における突出筒44と同等の高さ位置まで上方に向けて延びており、ピストン13における内筒61の内側に配置されている。ガイド軸71の外径は、内筒61との間に内容物が通過する流路を画成するように、内筒61の内径よりも小さく形成されている。また、ガイド軸71は、ピストン13の上下動をガイドすることが可能とされている。
ガイド軸71の上端部は、中空逆円錐状に形成された第2シール部74とされている。第2シール部74は、ピストン13に形成された第1シール部63に対して上方から密に接触することが可能とされている。これにより、吐出部材3が上昇端位置P2に位置して、吐出ポンプ1自体が吐出可能な状態にあるときに、仮に容器本体A内の内圧が上昇したとしても、ステム10側に内容物が意図せずに供給され、吐出口23aから内容物が漏れることを防止するシール部として機能する。
【0036】
なお、吐出部材3が上昇端位置P2に位置した際、ピストン13に形成された第1シール部63に対してピストンガイド14に形成された第2シール部74が上方から密に接触することで(図2参照)、ステム10及び吐出部材3の上方移動を規制することができ、上昇端位置P2に位置決めすることが可能とされている。
【0037】
ガイド軸71の下端部には、下方に向けて延びる規制片75が形成されている。規制片75は、下端縁が吸込み筒43の開口部付近に達している。これにより、規制片75を利用してボール弁48の上方移動を規制することができ、吸込み筒43内からボール弁48が抜けることを防止している。
【0038】
コイルばね15は、例えば金属製とされ、上述のように構成されたピストンガイド14を径方向の外側から囲んだ状態で、シリンダ12内に配置されている。コイルばね15は、上端部がピストン13の連結部62に対して下方から接触し、下端部がピストンガイド14の嵌合片72に対して上方から接触している。これにより、コイルばね15は、上下方向に圧縮状態でシリンダ12内に配置され、シリンダ12及びステム10を上方に付勢しながら下方移動可能に支持している。
【0039】
ステム10は、ピストン13の上方に配置され、ピストン13を介して伝えられるコイルばね15からの弾性復元力(上方付勢力)によって、上方付勢状態で押込み下方移動可能に立設されている。これにより、ステム10はシリンダ12内に押込み可能とされている。
ステム10は、ピストン13の内筒61を径方向の外側から囲む下側ステム筒80と、下側ステム筒80よりも小径に形成された上側ステム筒81とを備えている。
【0040】
下側ステム筒80の内側には、ピストン13の内筒61が下方から入り込んで嵌合されている。これにより、ピストン13とステム10とは一体に組み合わされている。
上側ステム筒81は、ステム10及び吐出部材3が下降端位置P1に位置しているときに、規制筒50よりも上方に突出するように形成されている。上側ステム筒81の内周面には、径方向の内側に向けて突出した断面テーパー状の弁座83が形成されている。そして、上側ステム筒81の内側には、ボール弁84が配設されている。ボール弁84は上方に向けて離反可能に弁座83に着座している。
【0041】
ボール弁84は、ステム10内から吐出部材3側に向けた内容物の移動を許容し、且つ吐出部材3側からステム10内に向けた内容物の移動を規制する逆止弁として機能する。
なお、上側ステム筒81の上端部には、上方に向けて縮径する部分が形成されている。これにより、ボール弁84の上方移動を規制して、上側ステム筒81内からボール弁84が抜けることを防止している。
【0042】
(吐出部材)
次に、吐出部材3について詳細に説明する。
先に述べたように、吐出部材3は、押下ヘッド20、貯留シリンダ21、貯留プランジャ22、吐出筒23を主に備えている。
【0043】
図3に示すように、押下ヘッド20は、ステム10を押下げ操作する部材であり、ステム10の上端部に装着される装着ヘッド部90と、装着ヘッド部90の上方に配置され、装着ヘッド部90に対して組み合わされる押下ヘッド部91と、を備えている。
【0044】
装着ヘッド部90は、上側ステム筒81を径方向の外側から囲む雄ねじ筒92と、雄ねじ筒92を径方向の外側から囲む外郭筒93と、雄ねじ筒92の上端部と外郭筒93の上端部とを径方向に連結する環状の連結壁94と、を備えている。
【0045】
雄ねじ筒92は、下端部側が上側ステム筒81に外嵌されている。これにより、吐出部材3の全体は、ステム10の上端部に装着されている。雄ねじ筒92の外周面には、規制筒50の雌ねじに螺合する雄ねじ部が形成されている。これにより、雄ねじ筒92は、ステム10及び吐出部材3が下降端位置P1に位置しているときに、規制筒50の雌ねじ筒52に螺着される(図1参照)。そのため、ステム10及び吐出部材3は下降端位置P1で保持される。
【0046】
雄ねじ筒92は、上側ステム筒81よりも上方に突出するように形成されている。
なお、雄ねじ筒92のうち前方側に位置する部分は、他の部分よりも上方に向けて延びている。これに対応して、外郭筒93のうち前方側に位置する部分は、他の部分よりも上方に向けて延びている。そのため、連結壁94は、前方側に位置する前方連結壁94aが後方側に位置する後方連結壁94bよりも上方に位置するように、段差状に形成されている。なお、後方連結壁94bには、後方に向けてさらに延びるように後方支持壁95が一体に形成されている。
【0047】
押下ヘッド部91は、上述のように構成された装着ヘッド部90に対して、貯留シリンダ21を間に挟んだ状態で上方から組み合わされている。押下ヘッド部91は、軸線O1方向から見た平面視で例えば円形状に形成された押下プレート96を備えている。
【0048】
貯留シリンダ21は、ステム10内に連通すると共に、ステム10及び吐出部材3の押下げ操作によってステム10内の内容物が内部に供給される。
貯留シリンダ21は、軸線O2を中心として前後方向L1に延びるように形成され、後方連結壁94b及び後方支持壁95上に載置されている。貯留シリンダ21は、前端部に位置する前壁部100と、前壁部100から後方に向けて延びたシリンダ筒101とを有し、全体として後方に開口し、且つ前方が閉塞された有頂筒状に形成されている。
【0049】
なお、軸線O2方向から見た正面視で軸線O2に交差する方向をシリンダ径方向といい、軸線O2回り周回する方向をシリンダ周方向という。
【0050】
前壁部100には、前壁部100を前後方向L1に貫通する連通孔103が形成されている。連通孔103は、円形状に形成されていると共に軸線O2と同軸に配設されている。なお、連通孔103は、前方連結壁94aよりも上方に配置されている。
【0051】
シリンダ筒101は、前壁部100から後方に向けて延びる前筒部105と、前筒部105よりも外径及び内径が大きく、前筒部105よりも後方に位置する後筒部106と、前筒部105及び後筒部106を前後方向L1に連結する段部107とを有している。
段部107は、前方から後方に向かうに従い拡径している。前筒部105及び段部107は、後方連結壁94b及び後方支持壁95上に載置されている。なお、後筒部106は、後方支持壁95よりも後方に向けて延びるように形成されている。
【0052】
さらに貯留シリンダ21には、供給筒108及び供給孔109が形成されている。
供給筒108は、前筒部105における前端部の下側部分から下方に向けて突出するように形成され、装着ヘッド部90における雄ねじ筒92の内側に嵌合されている。これにより、供給筒108の内側は、ステム10内に連通している。
供給孔109は、前筒部105のうち供給筒108の内側に位置する部分を上下方向に貫通するように形成されている。これにより、貯留シリンダ21内には、供給孔109を通じてステム10内から内容物が供給される。
【0053】
なお、貯留シリンダ21は、供給筒108を雄ねじ筒92の内側に嵌合させた状態で、後方連結壁94b及び後方支持壁95上に載置されることで、装着ヘッド部90に対して安定に支持された状態で組み合わされている。
【0054】
貯留シリンダ21の後端部には、支持部材110が軸線O2と同軸に配設されている。支持部材110は、後端部に位置する支持壁部111と、支持壁部111から前方に向けて延びる固定筒部112とを有し、全体として前方に開口すると共に後方が閉塞された有底筒状に形成されている。
【0055】
固定筒部112は、貯留シリンダ21の後端部内に、後方への移動、及び軸線O2回りの回転移動が規制された状態で嵌合されている。支持壁部111は環状に形成されており、支持壁部111の内側を通じて、外部と、貯留シリンダ21内において貯留プランジャ22より後方に位置する部分とが連通可能とされている。
【0056】
固定筒部112には、シリンダ径方向の外側に向けて突出した係止突起113が形成されている。係止突起113は、例えばシリンダ周方向に間隔をあけて複数設けられ、後筒部106に形成された係止凹部104内に前方から係止されている。これにより、固定筒部112は、貯留シリンダ21からの後方への抜けが規制されている。
【0057】
吐出筒23は、貯留シリンダ21の前方に配置されると共に、ステム10の押下げ操作によってステム10内の内容物を、吐出口23aを通じて前方に吐出する。
具体的に吐出筒23は、貯留シリンダ21の前壁部100から前方に向けて延びるように一体に形成されている。吐出筒23は、装着ヘッド部90の前方連結壁94aよりも上方に配置されると主に、軸線O2と同軸に配置されている。
吐出筒23の内側は、連通孔103を通じて貯留シリンダ21内に連通している。これにより、吐出筒23は、貯留シリンダ21内を通じてステム10内に連通している。
【0058】
図3及び図4に示すように、貯留プランジャ22は、貯留シリンダ21内に軸線O2に沿う前後方向L1に移動可能に配置されている。貯留プランジャ22は、貯留シリンダ21内への内容物の供給に伴って後方に向けて移動する。貯留プランジャ22は、連通孔103を通じたステム10内と吐出筒23との連通を遮断し、且つ後方に移動したときに、連通孔103を通じてステム10内と吐出筒23とを連通させる。
【0059】
貯留プランジャ22は、貯留シリンダ21内を前後方向L1に摺動する摺動部材120と、摺動部材120内に嵌合された受け部材130と、を有している。摺動部材120及び受け部材130は、前後方向L1に延びる筒状に形成され、軸線O2と同軸に配設されている。
【0060】
摺動部材120は、例えば受け部材130及び貯留シリンダ21よりも軟質の材料により形成され、前後方向L1に延びるプランジャ筒121と、プランジャ筒121の前端開口を閉塞する閉塞壁122と、を有している。プランジャ筒121の外周面には、全周に亘って前側リップ部123及び後側リップ部124が突設されている。
【0061】
前側リップ部123は、シリンダ筒101における前筒部105の内周面上を前後方向L1に密に摺動する。これにより、前側リップ部123と前筒部105の内周面との間には、シール性が確保されている。
具体的に前側リップ部123は、プランジャ筒121の外周面から前方に向けて突出した円筒状に形成されている。前側リップ部123の内周面と、プランジャ筒121の前端部の外周面との間には、隙間が設けられている。さらに、プランジャ筒121のうち前側リップ部123より前方に位置する前端部は、該前端部より後方に位置する部分よりも縮径している。プランジャ筒121の前端部の外周面と、貯留シリンダ21の内周面との間には、隙間が設けられている。
【0062】
そして、上記隙間に、前側リップ部123の内側、及び貯留シリンダ21に形成された供給孔109が開口している。従って、上記隙間は、ステム10内を通過した内容物が貯留され、且つ内容物の供給によって貯留プランジャ22が後方に向けて移動することで拡張する貯留空間125として機能する。
【0063】
後側リップ部124は、シリンダ筒101における後筒部106の内周面上を前後方向L1に密に摺動する。これにより、後側リップ部124と後筒部106の内周面との間に、シール性が確保されている。後側リップ部124は、プランジャ筒121の後端外周縁から前方に向けて突出した円筒状に形成されている。後側リップ部124の内周面と、プランジャ筒121の後端部の外周面との間には、隙間が設けられている。
【0064】
閉塞壁122は、貯留シリンダ21の前壁部100の後面のうち連通孔103の開口周縁部に位置する部分に押し付けられている。なお、閉塞壁122の前面には前方に突出する突出部122aが形成されている。
突出部122aは、軸線O2と同軸に配設された円錐台状に形成され、後方から前方に向かうに従って外径が小さくなっている。これにより、突出部122aの外周面が連通孔103の後端部内に当接することで、連通孔103を適切に閉塞することが可能とされている。
【0065】
受け部材130は、受け筒131と、受け座部132とを有している。
受け筒131は、後方に開口すると共に前方が閉塞された有頂筒状に形成されており、プランジャ筒121の内側に配置されている。受け筒131の後側部分は、プランジャ筒121の後端開口部よりも後方に突出すると共に、シリンダ筒101の後筒部106内に進出している。受け筒131の外径は、後筒部106の内径よりも小さくなっている。これにより、受け筒131の後側部分の外周面と後筒部106の内周面との間には、環状の隙間が設けられている。そして、上記隙間に付勢部材135の前側部分が差し込まれている。
【0066】
受け座部132は、受け筒131における後側部分の外周面から突出したフランジ状に形成されている。受け座部132の前面は、プランジャ筒121の後端開口縁に当接、若しくは近接している。
【0067】
付勢部材135は、貯留プランジャ22を前方に向けて付勢している。付勢部材135は、受け筒131の後側部分を囲みつつ、受け座部132と支持部材110における支持壁部111との間に、前後方向L1に圧縮された状態で配置されている。これにより、付勢部材135は、前端縁が受け座部132の後面に当接し、且つ後端縁が支持壁部111の前面に当接している。
なお、付勢部材135は、軸線O2と同軸に配設された金属製或いは樹脂製のコイルばねとされている。ただし、この場合に限定されるものではなく、その他の弾性を有する部材を用いても構わない。
【0068】
上述のように構成された貯留プランジャ22が、図4に示すように付勢部材135に抗して後方に移動することで、閉塞壁122が貯留シリンダ21の前壁部100から後方に離れ、連通孔103が開放される。これにより、貯留シリンダ21内に内容物を貯留しつつ、連通孔103を通じて吐出筒23側に内容物を供給することが可能とされている。
【0069】
さらに本実施形態の吐出部材3は、吐出筒23に装着されるノズル部材140を備えている。
ノズル部材140は、吐出筒23をノズル径方向の外側から囲うと共に吐出筒23に装着された第1ノズル筒141と、第1ノズル筒141の前端部に連結された第2ノズル筒142と、を備えている。
【0070】
図3に示すように、第1ノズル筒141は、前後方向L1に延びる筒状に形成され、軸線O2と同軸に配置されている。そのため、吐出筒23は、全長に亘って第1ノズル筒141の内側に嵌合されている。
なお、第1ノズル筒141には、外郭筒93を前方から覆う前側プレート143が上下方向に延びるように一体に形成されている。従って、第1ノズル筒141は、前側プレート143を前後方向L1に貫くように形成されている。なお、前側プレート143は、押下ヘッド部91の押下プレート96に対して一体的に組み合わされている。
【0071】
第1ノズル筒141のうち前側プレート143よりも後方に位置する部分は、装着ヘッド部90における前方連結壁94aに対して載置された状態で、前方連結壁94aに一体に組み合わされている。第1ノズル筒141のうち前側プレート143よりも前方に位置する部分は、吐出筒23よりも前方に向けて延びるように形成されている。
【0072】
第2ノズル筒142は、第1ノズル筒141の先端部から前方斜め下方に向けて延びるように形成されている。そのため、第2ノズル筒142は、前方斜め下向きに開口している。
第2ノズル筒142の先端には、内容物を霧状に吐出するノズル孔145aが形成されたノズルキャップ145が装着されている。ノズルキャップ145の内側には、第2ノズル筒142の内周面との間で内容物の流動を可能とするスピン流路が形成されたノズル軸146が第2ノズル筒142の内側に入り込んだ状態で取り付けられている。
【0073】
上述のように構成されたノズル部材140が吐出筒23に装着されているので、吐出口23aを通じて吐出筒23から前方に吐出した内容物を、ノズル孔145aを通じて前方斜め下向きに霧状に吐出させることが可能とされている。
【0074】
さらに本実施形態の吐出部材3は、貯留シリンダ21の全体、及び装着ヘッド部90を、少なくとも左右方向L2の両側及び上下方向から覆うカバー体150を備えている。
なお、押下プレート96は、カバー体150に形成された貫通孔151を通じてカバー体150の上方に露出している。
【0075】
(吐出ポンプの作用)
次に、上述のように構成された吐出ポンプ1を利用して、内容物を吐出する場合について説明する。
はじめに、吐出ポンプ1を備えた容器本体Aの製品出荷時や陳列時等の使用開始前の状態においては、図1に示すように、押下ヘッド20の雄ねじ筒92が規制筒50の雌ねじ筒52に螺着されており、吐出部材3の全体が押し下げられた状態、すなわち下降端位置P1で保持されている。これにより、吐出部材3が不意に操作されて内容物が吐出されることが防止される。
【0076】
吐出ポンプ1を使用する場合には、吐出部材3及びステム10を図1に示す下降端位置P1から図2に示す上昇端位置P2に移行させる。
具体的には、下降端位置P1に位置する吐出部材3を、規制筒50に対して軸線O1回りに回転させ、押下ヘッド20の雄ねじ筒92と規制筒50の雌ねじ筒52との螺着を解除する。これにより、コイルばね15の上方付勢力(弾性復元力)によって、ピストン13、ステム10及び吐出部材3を一体に上方移動させることができる。これにより、吐出部材3及びステム10を図2に示す上昇端位置P2に移行させることができる。
【0077】
この過程において、シリンダ12内を減圧させることができるので、ボール弁48を弁座47から上方に離反させることができ、容器本体A内の内容物を、吸上チューブ46を通じてシリンダ12内に吸い上げることができる。また、シリンダ12内でのピストン13の上方移動によって、ピストン13の第1シール部63がガイド軸71の第2シール部74に下方から接触するので、シリンダ12内とステム10内との連通を遮断することができる。これにより、シリンダ12内に吸い上げた内容物を、シリンダ12内に収容することができる。
【0078】
以上のことから、図2に示すように、ステム10及び吐出部材3を上昇端位置P2に移動させて、吐出部材3を吐出操作可能な待機状態に移行させることができる。
その後、内容物を吐出する場合には、押下ヘッド20を押下げ操作して、吐出部材3ごとステム10を下方移動させる。これにより、ステム10と共にピストン13をシリンダ12内で下方移動させることができるので、シリンダ12内を加圧することができる。これにより、ボール弁48を弁座47に押し付けることができ、シリンダ12内と容器本体A内との連通を遮断することができる。
【0079】
また、シリンダ12内でピストン13が下方移動することで、ガイド軸71の第2シール部74がピストン13の第1シール部63に対して相対的に上方移動して離反するので、シリンダ12内とステム10内とを連通させることができる。これにより、シリンダ12内の内容物をステム10内に供給することができる。
さらに、シリンダ12内の内圧上昇によって、上側ステム筒81内のボール弁84を弁座83から上方に離反させることができるので、ステム10内の内容物を吐出部材3側に供給することができる。これにより、供給孔109を通じて貯留シリンダ21の貯留空間125に内容物を供給することができ、貯留空間125を加圧することができる。そのため、図4に示すように、貯留空間125の加圧に伴って、貯留プランジャ22を付勢部材135の付勢力に抗して最前進位置から後方に向けて移動させることができる。
【0080】
貯留プランジャ22が後方に移動することで、閉塞壁122が貯留シリンダ21の前壁部100から後方に離間するので連通孔103を開放することができる。従って、連通孔103を通じて吐出筒23内に内容物を供給することができ、吐出口23aを通じて前方に吐出することができる。しかも吐出筒23にノズル部材140が装着されているので、前方に吐出された内容物を、ノズル孔145aを通じて前方斜め下向きに霧状に吐出することができる。
【0081】
さらに、貯留プランジャ22を後方に移動させることができるので、内容物の吐出を行いながら、内容物を貯留空間125に溜める(充填する)ことができる。
従って、押下ヘッド20の押下げ操作を停止すると、ステム10内を通じた貯留プランジャ22内及び吐出筒23内への内容物の供給が停止するが、貯留プランジャ22が付勢部材135の付勢力によって最前進位置に向けて前方移動しはじめる。これにより、貯留空間125に溜まった内容物を、連通孔103を通じて吐出筒23内に向けて押し出すことができるので、ノズル孔145aを通じて内容物を霧状に吐出することができる。
【0082】
従って、押下ヘッド20の押下げ操作を解除した後であっても、内容物を連続吐出することができる。これにより、時差式に内容物の連続吐出を行うことができる。従って、例えば片手で押下ヘッド20の押下げ操作を行い、その間に、もう一方の片手で内容物の受け取りを行った後、続けて、両手で内容物を受け取るといった使い方を行うことができる。従って、内容物を両手で受け取って使用することができる、使い易い吐出ポンプ1とすることができる。特に、内容物を洗浄液や消毒液等として利用する場合に好適である。
【0083】
さらに本実施形態では、内容物を吐出する際、押下ヘッド20の押下げ操作によってシリンダ12内からステム10内、及び貯留シリンダ21の貯留空間125内を通じて、吐出筒23側及びノズル部材140側に供給する内容物の供給量の方が、開口面積の小さいノズル孔145aから外部に吐出される内容物の吐出量よりも大きくなるように設定されている。
従って、本実施形態の吐出ポンプ1によれば、内容物の供給量と吐出量との差分を利用して、貯留シリンダ21の貯留空間125内に効率良く内容物を貯留することが可能とされ、これによって時間差を大きくあけながら内容物の連続吐出を行うことが可能とされている。
【0084】
なお、上述した内容物の連続吐出を行う過程において、コイルばね15の弾性復元力によりピストン13、ステム10及び吐出部材3を上方移動させることができ、これらを元の状態(上昇端位置P2)に復帰させることができる。これにより、シリンダ12内を減圧させることができるので、先に述べた場合と同様に、容器本体A内からシリンダ12内に内容物を吸い上げて収容することができ、次回の吐出に備えることができる。
【0085】
以上説明したように、本実施形態の吐出ポンプ1によれば、押下ヘッド20を押下げ操作した時だけでなく、押下げ操作を解除した後であっても、内容物を連続的に吐出することができるので、内容物を両手で受けとるといった多様な使い方を行うことができ、非常に使い易い。
【0086】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る吐出ポンプの第2実施形態について図面を参照して説明する。第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0087】
図5及び図6に示すように、本実施形態の吐出ポンプ200における吐出部材201は、ステム10から前方に向けて延びるように配置され、内部がステム10内に連通した第1連絡筒202と、第1連絡筒202の前方から上方に向けて延びるように配意され、内部が第1連絡筒202内に連通した第2連絡筒203と、を備えている。
【0088】
詳細に説明する。
本実施形態の押下ヘッド20を構成する装着ヘッド部90は、雄ねじ筒92、外郭筒93及び連結壁94を有する二重の有頂筒状に形成され、連結壁94の上面は平坦面とされている。なお、装着ヘッド部90は、第1実施形態における後方支持壁95を具備していない。
第1連絡筒202は、雄ねじ筒92から前方に向けて延びるように形成されている。図示の例では、第1連絡筒202は、軸線O2と平行に前後方向L1に延びるように形成され、外郭筒93よりも前方に突出するように形成されている。
【0089】
なお、押下ヘッド部91は、押下プレート96から下方に向けて延びると共に、貯留シリンダ21を挟んで左右方向L2に向かい合うように配置された一対の対向壁204を有している。これら一対の対向壁204は、それぞれの下端部が装着ヘッド部90の連結壁94に対して連結されている。
【0090】
本実施形態の貯留シリンダ21は、第1連絡筒202の上方に該第1連絡筒202と平行に配置され、軸線O2を前後方向L1に跨ぐように配置されている。
具体的に貯留シリンダ21は、前後方向L1の中間部が軸線O2上に位置するように配置されている。これにより、本実施形態の貯留シリンダ21は、第1実施形態に比べて前方側にシフトした配置とされている。また、貯留シリンダ21に形成された供給孔109は、第1連絡筒202よりも前方に配置されている。
【0091】
さらに本実施形態の貯留シリンダ21は、第1連絡筒202に外嵌された外嵌筒205と、外嵌筒205と貯留プランジャ22とを互いに連結する第2連絡筒203と、を備えている。従って、貯留シリンダ21は、第1連絡筒202に対する外嵌筒205の装着によって、姿勢が安定した状態で装着ヘッド部90に一体的に組み合わされている。
【0092】
第2連絡筒203は、上下方向に延びる筒状に形成され、外嵌筒205の前端部に一体的に形成されていると共に第1連絡筒202の前方に配置されている。第2連絡筒203の上端部は、貯留シリンダ21における前筒部105に対して下方から連設されている。第2連絡筒203の内側は、供給孔109を通じて貯留シリンダ21内に連通している。
また、第2連絡筒203には、第1連絡筒202内と第2連絡筒203内とを連通する連通孔206が形成されている。これにより、貯留シリンダ21内は、第1連絡筒202内及び第2連絡筒203内を通じてステム10内に連通している。
【0093】
なお、第2連絡筒203は、射出成形時の成形型等の関係上、第1連絡筒202よりも下方に向けて延びるように形成されていると共に下方に開口している。図示の例では、第2連絡筒203の下端部には、第2連絡筒203の下端開口部を閉塞する閉塞キャップ207が装着されている。
【0094】
上述のように構成された第1連絡筒202内には、ステム10内から貯留シリンダ21内に向けた内容物の移動を許容し、且つ貯留シリンダ21内からステム10内への内容物の逆流を抑制するボール弁(逆止弁)210が設けられている。
本実施形態では、第1連絡筒202の前端部側の内側に弁座筒211が配置されている。弁座筒211の内面は、後方から前方に向かうにしたがって漸次拡径した断面テーパー状に形成されている。ボール弁210は、弁座筒211と第2連絡筒203との間に配置され、前方に向けて離反可能に弁座筒211の内面に着座している。
【0095】
上述のように、第1連絡筒202内にボール弁210が配設されているので、本実施形態のステム10内には、第1実施形態におけるボール弁84が設けられていない。
【0096】
(吐出ポンプの作用)
上述のように構成された本実施形態の吐出ポンプ200であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
【0097】
すなわち、図5に示す下降端位置P1から、ステム10及び吐出部材201を図6に示す上昇端位置P2に移動させた後、押下ヘッド20を押下げ操作して吐出部材201ごとステム10を下方移動させることで、ステム10内の内容物を第1連絡筒202内及び第2連絡筒203内を通じて貯留シリンダ21の貯留空間125内に供給することができる。これにより、ノズル孔145aを通じて前方斜め下向きに内容物を霧状に吐出しながら、図7に示すように貯留プランジャ22を後方に移動させて、内容物を貯留空間125に溜めることができる。従って、押下ヘッド20の押下げ操作を解除した後に、時差式に内容物の連続吐出を行うことができる。
【0098】
従って、本実施形態の吐出ポンプ200であっても、押下ヘッド20を押下げ操作した時だけでなく、押下げ操作を解除した後に、内容物を連続的に吐出することができるので、内容物を両手で受けとるといった多様な使い方を行うことができ、非常に使い易い。
また、本実施形態の吐出ポンプ200であっても、内容物を吐出する際、押下ヘッド20の押下げ操作によってシリンダ12内からステム10内、第1連絡筒202内及び第2連絡筒203内、及び貯留シリンダ21の貯留空間125内を通じて、吐出筒23側及びノズル部材140側に供給する内容物の供給量の方が、開口面積の小さいノズル孔145aから外部に吐出される内容物の吐出量よりも大きくなるように設定されている。従って、内容物の供給量と吐出量との差分を利用して、貯留シリンダ21の貯留空間125内に効率良く内容物を貯留することが可能とされ、これによって時間差を大きくあけながら内容物の連続吐出を行うことが可能とされている。
【0099】
それに加えて、貯留シリンダ21を第1連絡筒202の上方に平行に配置しているので、貯留シリンダ21をステム10の直上に位置するように配置することが可能である。そのため、吐出ポンプ200全体の全長を短くして小型化を図りつつ、重心バランスを安定化させ易い。そのため、押下ヘッド20の押下げ操作を安定して行い易く、内容物をより安定して吐出させることができる。
【0100】
さらに、第1連絡筒202内にボール弁210が設けられているので、第1連絡筒202及び第2連絡筒203の分、ステム10から貯留シリンダ21までの内容物の経路長が長くなったとしても、ボール弁210を利用して貯留シリンダ21内からステム10内への内容物の逆流を抑制できる。従って、安定して貯留シリンダ21に内容物を貯留することができると共に、内容物の連続吐出を安定して行うことができる。
【0101】
なお、上記第2実施形態では、ボール弁210を第1連絡筒202内に設けたが、この場合に限定されるものではなく、第2連絡筒203内に設けても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏功することができる。なお、第1実施形態のようにステム10内にボール弁84を設けた場合には、第1連絡筒202内及び第2連絡筒203内からボール弁210を省略することも可能である。
【0102】
なお、ステム10を下降端位置P1まで押下げ操作したときに、ステム10内の上部弁体が開放されるように構成された既存のポンプ部材が知られている。本実施形態の吐出部材201によれば、第1連絡筒202内及び第2連絡筒203内のいずれかにボール弁210を具備することができるので、上述のような既存のポンプ部材の構造を大きく変更することなく、該既存のポンプ部材にも好適に適用することが可能となる。
【0103】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0104】
例えば上記各実施形態では、吐出筒が、貯留シリンダ内を通じてステムに連通するように構成したが、この場合に限定されるものではなく、例えばステムと貯留シリンダとの連通経路とは別に、ステムと吐出筒とを直接的に連通する連通経路を設けるように構成しても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏功することができる。
ただし、第1実施形態及び第2実施形態のように構成することで、ステムと吐出筒とを直接的に連通する連通経路を省略することができるので、構成の簡易化を図ることができると共に低コスト化を図り易い。
【0105】
また、上記各実施形態において、押下ヘッドの連続した複数回の押下げ操作によって貯留シリンダ内が徐々に加圧されるように、貯留プランジャを段階的に後方に向けて移動するように構成しても構わない。この場合には、押下ヘッドの複数回の押下げ操作を行った後に、加圧した内容物を勢いよく連続吐出させることが可能となる。内容物の種類や用途に応じて、このような使い方を行うことができる。
【0106】
さらに上記実施形態では、吐出筒にノズル部材を装着した構成としたが、ノズル部材は必須なものではなく具備しなくても構わない。この場合には、吐出筒を利用して、例えば線状の内容物を前方に向けて吐出することができる。さらに、吐出筒の先端部を例えば前方斜め下向きに曲げることで、前方斜め下向きに線状の内容物を吐出することができる。
このように、内容物の種類や用途に応じて、ノズル部材を利用して構わない。
さらには、ノズル部材に代えて、内容物を泡状に吐出する切換部材を吐出筒に装着しても構わない。
【0107】
さらに上記各実施形態では、逆止弁としてボール弁(48、84、210)を例に挙げて説明したが、ボール弁に限定されるものではなく、例えば3点弁等の多点弁やその他の公知の弁機構を逆止弁として採用しても構わない。
【符号の説明】
【0108】
A…容器本体
A1…容器本体の口部
1、200…吐出ポンプ
2…ポンプ部材
3、201…吐出部材
10…ステム
12…シリンダ
13…ピストン
20…押下ヘッド
21…貯留シリンダ
22…貯留プランジャ
23…吐出筒
23a…吐出口
202…第1連絡筒
203…第2連絡筒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7