(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】転動体構造及びころ軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/66 20060101AFI20240315BHJP
F16C 33/34 20060101ALI20240315BHJP
F16C 19/26 20060101ALI20240315BHJP
F16C 19/30 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
F16C33/66 Z
F16C33/34
F16C19/26
F16C19/30
(21)【出願番号】P 2020147594
(22)【出願日】2020-09-02
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000110859
【氏名又は名称】キヤノンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100148987
【氏名又は名称】前田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】上續 楽
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-194149(JP,A)
【文献】特開2018-189205(JP,A)
【文献】特開2013-160314(JP,A)
【文献】特開2017-150597(JP,A)
【文献】特開2019-011850(JP,A)
【文献】特開2010-209965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/24-19/30
F16C 33/34-33/36
F16C 33/58
F16C 33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1転動面を有する第1部材と、第2転動面を有する第2部材と、前記第1部材の第1転動面と前記第2部材の第2転動面との間で転動する複数の転動体とを備え、グリース潤滑される転動体構造であって、
前記第1部材の第1転動面と、前記第2部材の第2転動面と、前記転動体の外周転動面との少なくもいずれかの転動面に、その転動面領域から転動面外端縁側に向かう流路を設けるとともに、その流路に連通されて周方向に沿って配設されるグリース溜まりを設け、前記流路及びグリース溜まりは、グレーティング状凹凸の周期構造を備え、かつ、この流路が設けられた転動面の相手側の面が、流路に対応する部位と流路に対応しない部位とが形成される転動、または、流路に対応する部位の転動後に、流路に対応しない部位が形成される転動を有するものであ
り、前記流路及びグリース溜まりは転動体に形成されていること特徴とする転動体構造。
【請求項2】
前記流路は、グレーティング状凹凸の周期構造のみで構成されることを特徴とする請求項1に記載の転動体構造。
【請求項3】
前記流路は、凹溝と、この凹溝内に形成されるグレーティング状凹凸の周期構造とで構成されることを特徴とする請求項1に記載の転動体構造。
【請求項4】
前記流路のグレーティング状凹凸の周期構造にグリースの増ちょう剤が担持されていることを特徴とする請求項1~
請求項3のいずれか1項に記載の転動体構造。
【請求項5】
前記グレーティング状凹凸の周期構造は、凸部頂点が非平坦面となって連続的に高さが変化していることを特徴とする請求項1~
請求項4のいずれか1項に記載の転動体構造。
【請求項6】
前記グレーティング状凹凸の周期構造の凹凸が50nm以上10μm以下かつ周期ピッチが10μm以下であることを特徴とする請求項1~
請求項5のいずれか1項に記載の転動体構造。
【請求項7】
前記流路のグレーティング状凹凸の周期構造が、複数の配向方向で設けられていることを特徴とする請求項1~
請求項6のいずれか1項に記載の転動体構造。
【請求項8】
外周面に内側転動面を有する内輪と、内周面に外側転動面を有する外輪と、前記内輪の内側転動面と前記外輪との外側転動面との間に転動自在に配置される複数個のころとを備えたラジアルころ軸受であって、
前記請求項1~
請求項7のいずれか1項に記載の転動体構造における、前記第1部材を前記内輪とし、前記第2部材を前記外輪とし、前記転動体を前記ころとしたことを特徴とするラジアルころ軸受。
【請求項9】
一対の軌道盤と、この軌道盤の相対面する転動面間に配設される複数個のころとを備えたスラストころ軸受であって、
前記請求項1~
請求項7のいずれか1項に記載の転動体構造における、前記第1部材を一方の軌道盤とし、前記第2部材を
他方の軌道盤とし、前記転動体を前記ころとしたことを特徴とするスラストころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転動体構造及びころ軸受に関する
【背景技術】
【0002】
従来、グリース潤滑されるころ軸受において、転がりおよび滑り接触部の潤滑に供する内部グリース保持空間を増加し、軸受の長寿命化に適した円筒ころ軸受が提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の円筒ころ軸受は、
図14に示すように、外周面51に内輪軌道52を有する内輪53と、内周面54に外輪軌道55を有する外輪56と、内輪53の内輪軌道52と外輪56の外輪軌道55との間に転動自在に設けられる円筒ころ57と、円筒ころ57を保持する保持器58とを備えたものである。
【0004】
この場合、外輪56の内周面の軸方向両端部に周方向に沿って配設される一対の鍔部60,60が設けられ、この鍔部60,60間に外輪軌道5が設けられる。そして、この鍔部60,60間に、円筒ころ57が周方向に沿って所定ピッチで配設される。また、各円筒ころ57は、保持器58のポケットに嵌合されることによって、周方向に沿って所定ピッチで保持される。
【0005】
そして、鍔部60、60と外輪軌道55との間のコーナ部に全周にわたってグリースを保持するために溝(グリース溜まり)61、61が設けられている。
【0006】
このようにグリース溜まり61,61を設けることによって、軸受の高速連続回転下において、遠心力によるグリースの飛散流出を防止でき、軸受内部に充分量のグリースを保持できる。また、軸受の低速回転時には溝内に保持されたグリースが円筒ころ57の端部に付着して、その円筒ころ57の回転により、ころ端面を介して適量のグリースが軸受全体、特に保持器案内面に補給できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のものでは、転動領域(軌道面)端部への基油供給にとまっているので、接触領域幅の広い線接触では潤滑不良となる。また、グリース溜まりに基油分離を促進する機能を有さないので、グリース溜まり内からの軌道面への基油の供給不足となる。
【0009】
そこで、本発明は、グリースからの基油分離を促進して、転動面内にグリースの基油を供給することができて油膜切れを防止できる転動体構造及びころ軸受を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の転動体構造は、第1転動面を有する第1部材と第2転動面を有する第2部材と、前記第1部材の第1転動面と前記第2部材の第2転動面との間で転動する複数の転動体とを備え、グリース潤滑される転動体構造であって、前記第1部材の第1転動面と、前記第2部材の第2転動面と、前記転動体の外周転動面との少なくもいずれかの転動面に、その転動面領域から転動面外端縁側に向かう流路を設けるとともに、その流路に連通されて周方向に沿って配設されるグリース溜まりを設け、前記流路はグレーティング状凹凸の周期構造を備え、かつ、この流路が設けられた転動面の相手側の面が、流路に対応する部位と流路に対応しない部位とが形成される転動、または、流路に対応する部位の転動後に、流路に対応しない部位が形成される転動を有するものである。
【0011】
本発明の転動体構造によれば、転動面領域から転動面外端縁側に向かう流路は、グレーティング状凹凸の周期構造が設けられているので、流路の表面積が大きく、濡れ性と毛細管現象により基油移動性が促進される。これによって、転動体接触領域中央部から排除されたグリースの潤滑油(基油)を引き出し、転動体の軸方向中央部付近の油膜切れが予測される接触域にも基油を供給できる。すなわち、周期構造全面を基油で濡れた状態に保つことができる。特に、グリースの基油を保持した周期構造に、転動体の転がりにより周期構造の端から徐々に圧力がかかることになる。このため、周期構造内の基油は、転動体との接触部よりも転動方向前方の周期構造未加工面に押し出すことになり、この未加工面に基油が供給されることで、油膜切れを有効に防止できる。なお、周期構造が設けられた転動面とその相手側の面とはいわゆるヘルツ接触状となるので、例えば、第1部材の転動面に、流路が形成されている場合では、転動体との接触部よりも転動方向後方側にも周期構造内の基油が押し出され、この転動方向後方側の周期構造未加工面に基油が供給される。
【0012】
ところで、流路を設けたことにより、流路と流路が設けられていない転動面との間に段差が生じている。しかしながら、流路に対応する部位と流路に対応しない部位とが形成される転動、または、流路に対応する部位の転動後に、流路に対応しない部位が形成される転動(好ましくは、流路に対応しない部位が形成される転動後に、流路に対応する部位と流路に対応しない部位とが形成される転動)を有するものであるので、形成されている段差に、この転動体が引っかかることなく、滑らかに転動することができる。また、流路が設けられた転動面の相手側の面が、流路に対応する部位と流路に対応しない部位とが形成される転動である場合、常に、ころと相手側の転動面との間は油切れを生じることなく転動運動を行うことができる。また、流路に対応する部位の転動後に、流路に対応しない部位が形成される転動を有するものであっても、ころに付着した基油によって、油切れを生じることなく転動運動を行うことができる。
【0013】
さらに、本発明では、流路に連通されて周方向に沿って配設されるグリース溜まりを設けたことによって、転動面から流出しようとする基油をグリース溜まりに回収できるとともに、グリース溜まりから転動面に基油を供給することができる。
【0014】
グリース溜まりに、グレーティング状凹凸の周期構造を設けることによって、表面積増加による濡れ性向上、毛細管現象の効果が加わり、グリースの基油分離と基油移動性が促進される。グリースから分離された基油は、グリース溜まり内に行きわたり、転動領域内からグリース溜まりに連通する流路を介して転動領域内に供給され、長期にわたって低摩擦を維持することができる。
【0015】
前記流路は、グレーティング状凹凸の周期構造のみで構成されていても、凹溝と、この凹溝内に形成されるグレーティング状凹凸の周期構造とで構成されていてもよい。凹溝と、凹溝内に形成されるグレーティング状凹凸の周期構造とで構成されたものでは、流路が設けられた転動面が、長期にわたる使用によって摩耗・摩滅しても、周期構造が失われず、耐用性に優れた転動体構造となる。
【0016】
前記流路及びグリース溜まりは第1部材に形成されていても、第2部材に形成されていても、転動体に形成されていてもよい。
【0017】
前記流路のグレーティング状凹凸の周期構造にグリースの増ちょう剤が担持されるのが好ましい。このように構成することにより、基油の保持性、移動性が良好となり、転動領域内への基油の供給能力が向上する。
【0018】
前記グレーティング状凹凸の周期構造は、凸部頂点が非平坦面となって連続的に高さが変化しているのが好ましい。このように構成することによって、開口部が広くなり、基油を効率的に取り込むことができる。
【0019】
前記グレーティング状凹凸の周期構造の凹凸が50nm以上10μm以下かつ周期ピッチが10μm以下であるのが好ましい。すなわち、この周期構造は、連続的に高さが変化するものであって、凹凸の高低差(凹部の底部から凸部の頂点までの高さ)が50nm以上10μm以下かつ周期ピッチが10μm以下である。このように構成することによって、基油の保持性、移動性を向上することが できる。周期構造の凹凸が50nm未満では十分な量の増ちょう剤を担持できず、凹凸および周期ピッチが10μmを超えると増ちょう剤や基油がほとんど流出してしまうおそれがある。
【0020】
前記流路のグレーティング状凹凸の周期構造が、複数の配向方向で設けられているのが好ましい。すなわち、配向方向が相違する複数の周期構造が設けられるのが好ましい。グレーティング状凹凸の周期構造が複数の配向方向で設けられていることで、流路と基油とのなじみ(濡れ)がよくなるとともに表面積が増加して、濡れ性向上、毛細管現象の効果が加わり流路の進展方向及び幅方向に潤滑剤を速やかに濡れ広げることができる。すなわち、ある方向に進展する周期構造において、先行して潤滑剤が濡れ広がり、さらに、その周期構造から別の方向に進展する周期構造にわたって潤滑剤が濡れ広がる。その結果基油の循環性が向上して転動面への基油の供給性が向上し、転動面の油膜切れを防止することができる。
【0021】
本発明の第1のころ軸受は、外周面に内側転動面を有する内輪と、内周面に外側転動面を有する外輪と、前記内輪の内側転動面と前記外輪との外側転動面との間に転動自在に配置される複数個のころとを備えたラジアルころ軸受であって、前記転動体構造における、前記第1部材を前記内輪とし、前記第2部材を前記外輪とし、前記転動体を前記ころとしたものである。
【0022】
本発明の第2のころ軸受は、一対の軌道盤と、この軌道盤の相対面する転動面間に配設される複数個のころとを備えたスラストころ軸受であって、前記転動体構造における、前記第1部材を一方の軌道盤とし、前記第2部材を他方の軌道盤とし、前記転動体を前記ころとしたものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、グリースからの基油分離が促進され、転動面内にグリースの基油を供給するとともに、転動面内から流出する基油を効率的に回収できる。これにより、転動面の油膜切れを有効に防止でき、グリース潤滑下において、長期にわたって低摩擦を維持できる転動体構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の転動体構造であるラジアルころ軸受の要部断面図である。
【
図2】
図1のころ軸受の第1部材である内輪と転動体であるころの簡略斜視図である。
【
図5】グレーティング状凹凸の周期構造を示し、(a)は拡大平面図であり、(b)は断面プロファイルである。
【
図6】周期構造の形成に用いるレーザ表面加工装置の簡略図である。
【
図7】流路を示し、(a)は断面形状が扁平矩形状である流路の断面図であり、(b)は断面形状が扁平台形状である流路の断面図であり、(c)は断面形状が扁平半楕円形状である流路の断面図である。
【
図8】グリース溜まりを示し、(a)は断面形状が扁平矩形状であるグリース溜まりの断面図であり、(b)は断面形状が扁平台形状であるグリース溜まりの断面図であり、(c)は断面形状が扁平半楕円形状であるグリース溜まりの断面図である。
【
図9】流路を示し、(a)は第1の変形例の簡略図であり、(b)は第2の変形例の簡略図である。
【
図11】複数の配向方向の周期構造を有する流路を示す簡略斜視図である。
【
図12】本発明の転動体構造であるスラストころ軸受の要部断面図である。
【
図14】従来のころ軸受(円筒ころ軸受)の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下本発明の実施の形態を
図1~
図11に基づいて説明する。
【0026】
図1に本発明の転動体構造であるころ軸受(ラジアルころ軸受)の要部拡大図を示し、この転動体構造(ころ軸受)は、円筒面からなる外周面1に第1転動面(内側転動面)2を有する第1部材3と、円筒面からなる内周面5に第2転動面(外側転動面)6を有する第2部材7と、第1部材3の内側転動面2と第2部材7の外側転動面6との間で転動する複数の転動体8とを備え、グリース潤滑されるものである。この場合、第1部材3が、ころ軸受の内輪10を構成し、第2部材7がころ軸受の外輪11を構成し、転動体8がころ軸受のころ12を構成する。グリースは、原料基油に増ちょう剤を分散させて半固体または固体化したものである。第1部材3、ころ12、及び第2部材7は、炭素鋼、銅、アルミニウム、白金、超硬合金等であっても、炭化ケイ素や窒化ケイ素等のシリコン系セラミックスであっても、エンジニアプラスチック等であってもよい。
【0027】
また、グリースには、カルシウム石けんグリースやリチウム石けん系グリース等の石けん系グリース、又は、ウレアグリースやベントナイトグリース等の非石けん系グリースがあり、第1・第2部材3、7の材質、使用する環境等に応じて種々のグリースを用いることができる。
【0028】
また、転動体8であるころ12は、内輪10と外輪11との間に介在される保持器13に保持される。すなわち、保持器13は周方向に沿って所定間隔でポケット13aが設けられ、各ポケット13aにころ12がその軸心回りに回転自在に嵌合されている。
【0029】
この場合、
図2~
図4に示すように、内輪10である第1部材3の内側転動面2に、その転動面領域から転動面外端縁側に向かう流路20を設けるとともに、その流路20に連通されて周方向に沿って配設されるグリース溜まり21を設けている。
【0030】
この場合、内輪10の軸方向両端部側に一対のグリース溜まり21、21を設け、この一対のグリース溜まり21、21間に、周方向に沿って所定ピッチで、流路20が設けられている。各流路20は、グリース溜まり21に対して所定角度で傾斜している。この傾斜角度θとしては、例えば流路20の幅をWとし、一対のグリース溜まり21、21間寸法をLとしたときに、cosθ>W/Lの式を満たす0°<θ<90°である。
【0031】
流路20は、
図7に示すように凹溝22と、この凹溝22に形成されるグレーティング状凹凸の周期構造25(
図5参照)とで構成される。凹溝22の形状としては、
図7(a(b)(c)等に示すように種々の形状のものを採用できる。
図7(a)では、断面形状が扁平矩形状である凹溝22を示し、
図7(b)は断面形状が扁平台形状である凹溝22を示し、
図7(c)は断面形状が扁平半楕円形状である凹溝22を示している。なお、
図3に示す凹溝22の断面形状は、断面形状が半円形状のものを採用している。
【0032】
グリース溜まり21、21も、
図8に示すような凹溝23と、この凹溝23に形成されるグレーティング状凹凸の周期構造25(
図5参照)とで構成される。凹溝23の形状としては、
図8(a)(b)(c)等に示すように種々の形状のものを採用できる。
図8(a)では、断面形状が扁平矩形状である凹溝23を示し、
図8(b)は断面形状が扁平台形状である凹溝23を示し、
図8(c)は断面形状が扁平半楕円形状である凹溝23を示している。
【0033】
この実施形態では、グリース溜まり21の溝深さをda、db、dcとし、流路20の溝深さをda1、db1、dc1としたとき、da、db、dc>da1、db1、dc1とし、グリース溜まり21の幅寸法をWa、Wb、Wcとし、流路20の幅寸法をWa1、Wb1、Wc1としたとき、Wa、Wb、Wc>Wa1、Wb1、Wc1としているが、これらに限るものではない。
【0034】
すなわち、各
図8(a)(b)(c)に示すグリース溜まり21の溝深さや幅寸法を形状毎に相違させても、各
図7(a)(b)(c)に示す流路20の溝深さや幅寸法を形状毎に相違させてもよい。また、da、db、dc=da1、db1、dc1としたり、Wa、Wb、Wc=Wa1、Wb1、Wc1としたりできる。逆にda、db、dc<da1、db1、dc1としたり、Wa、Wb、Wc<Wa1、Wb1、Wc1としたりできる。
【0035】
流路20及びグリース溜まり21に形成されるグレーティング状凹凸の周期構造25は、
図5(a)に示すように、微小の凹部26と微小の凸部27とが交互に所定ピッチで形成されてなるものである。
【0036】
図6に示すように、レーザ発生器31と光学系30とを備えたレーザ表面加工装置を使用して形成する。
図6に示すレーザ表面加工装置では、レーザ発生器31は、ミラー32により加工材料Wに向けて折り返され、メカニカルシャッタ33に導かれる。レーザ照射時はメカニカルシャッタ33を開放し、レーザ照射強度は1/2波長板34と偏光ビームスプリッタ36によって調整可能とし、1/2波長板35によって偏光方向を調整し、集光レンズ37によって、XYθステージ39上の加工材料W表面に集光照射することになる。
【0037】
周期構造形成は、加工閾値近傍の照射強度で直線偏光のレーザを照射し、その照射部分をオーバーラップさせながら走査して、自己組織的に形成している。すなわち、アブレーション閾値近傍のフルエンスで直線偏光のレーザをワーク(加工材料)Wに照射した場合、入射光と加工材料Wの表面に沿った散乱光またはプラズマ波の干渉により、レーザ波長と同程度の周期間隔で、エネルギー分布にわずかな粗密が生じる。一般的な加工方法ではレーザ照射面全体が加工されるが、加工閾値近傍のエネルギー密度でレーザ照射することで、高エネルギー部分を選択的に加工することができる。その結果、1光軸のレーザ照射でありながら、グレーティング状の周期構造が形成される。このとき、加工に用いるレーザのパルス幅が長くなるほど熱影響や加工蒸散物との相互作用によるレーザの散乱によって周期構造に乱れが生じることになる。
【0038】
このグレーティング状凹凸の周期構造25は、
図5(b)で示すように、連続的に高さが変化するものである。この凹凸の高低差(凹部26の底部から凸部27の頂点までの高さ)が50nm以上10μm以下かつ周期ピッチが10μm以下であるのが好ましい。
【0039】
流路20の周期構造25の配向方向として凹溝22の長手方向に沿う方向であっても、この長手方向に対して直交する方向であっても、さらには、所定角度(例えば、45度程度)に傾斜したものであってもよい。また、グリース溜まり21の周期構造25の周期構造25の配向方向として転動方向(
図3及び
図4の矢印A方向)と平行方向であっても、直交方向であっても、さらには、所定角度(例えば、45度程度)に傾斜したものであってもよい。ここで、平行方向とは、概ね平行となっていることをいい、製造上の誤差による若干の傾きを許容する範囲を含む。また、直交方向とは、概ね直交となっていることをいい、製造上の誤差による若干の傾きを許容する範囲を含む。
【0040】
ところで、転動体8であるころ12は、
図2に示すように、その軸心方向が、グリース溜まり21と直交する方向に配設され、また、流路20がグリース溜まり21に対して所定角度で傾斜している。このため、第1部材3に対して転動体8が矢印A方向に転動していけば、この実施形態ではさ、転動体8は、内側転動面2の流路20に対応する部位と、内側転動面2の流路20に対応しない部位とが、常時存在することになる。
【0041】
本発明の転動体構造では、転動面領域から転動面外端縁側に向かう流路20は、グレーティング状凹凸の周期構造25が設けられているので、流路20の表面積が大きく、濡れ性と毛細管現象により基油移動性が促進される。これによって、転動体接触領域中央部から排除されたグリースの潤滑油(基油)を引き出し、転動体8の軸方向中央部付近の油膜切れが予測される接触域にも基油を供給できる。すなわち、周期構造25全面を基油濡れた状態に保つことができる。特に、グリースの基油を保持した周期構造25に、転動体8の転がりにより周期構造の端から徐々に圧力がかかることになる。このため、周期構造20内の基油は、転動体8との接触部よりも転動方向前方の周期構造未加工面に押し出すことになり、この未加工面に基油が供給されることで、油膜切れを有効に防止できる。なお、周期構造25が設けられた転動面とその相手側の面とはいわゆるヘルツ接触状となるので、例えば、第1部材3の転動面2に、流路20が形成されている場合では、転動体8との接触部よりも転動方向後方側にも周期構造25内の基油を押し出され、この転動方向後方側の周期構造未加工面に基油が供給される。
【0042】
ところで、流路20を設けたことにより、流路20と流路20が設けられていない転動面2との間に段差が生じている。しかしながら、本発明の実施形態の転動体構造では、流路20が設けられた転動面2の相手側の面8aが、常に、流路20に対応する部位と流路20に対応しない部位とが形成される転動、つまり、第1部材3の転動面2に、流路20が形成されている場合では、第1部材3の転動面2に対して、相対的に転動体8が転動することになる。このため、形成されている段差に、この転動体8が引っかかることなく、滑らかに転動することができる。このため、流路20の幅寸法、流路20の配設ピッチ、流路20の傾斜角度θ等を、「流路が設けられた転動面の相手側の面が、流路に対応する部位と流路に対応しない部位とが形成される転動である」ように設定する必要がある。このように設定することによって、転動体8は滑らかに転動する。
【0043】
さらに、流路20に連通されて周方向に沿って配設されるグリース溜まり21を設けたことによって、転動面2から流出しようとする基油をグリース溜まり21に回収できるとともに、グリース溜まり21から転動面21に基油を供給することができる。
【0044】
前記流路20は、凹溝22と、この凹溝22内に形成されるグレーティング状凹凸の周期構造25とで構成されているので、流路20が設けられた転動面2が、長期にわたる使用によって摩耗・摩滅しても、周期構造が失われず、耐用性に優れた転動体構造となる。
【0045】
また、流路20は、グレーティング状凹凸の周期構造25のみで構成してもよい。このように、凹溝22を有さなくても、このような場合でも流路の表面積が大きく、濡れ性と毛細管現象により基油移動性が促進されるので、油膜切れを有効に防止できる等の凹溝22を有する場合と同様の作用効果を奏することができる。
【0046】
グリース溜まり21に、グレーティング状凹凸の周期構造25を設けるのが好ましい。このこのように構成することによって、表面積増加による濡れ性向上、毛細管現象の効果が加わり、グリースの基油分離と基油移動性が促進される。グリースから分離された基油は、グリース溜まり21内に行きわたり、転動領域内からグリース溜まり21に連通する流路20を介して転動領域内に供給され、長期にわたって低摩擦を維持することができる。
【0047】
流路20およびグリース溜まり21の周期構造25は、凸部27頂点が非平坦面となって連続的に高さが変化しているのが好ましい。このように構成することによって、開口部が広くなり、基油を効率的に取り込むことができる。
【0048】
流路20およびグリース溜まり21の周期構造25の凹凸が50nm以上10μm以下かつ周期ピッチが10μm以下であるのが好ましい。すなわち、この周期構造25は、連続的に高さが変化するものであって、凹凸の高低差(凹部の底部から凸部の頂点までの高さ)が50nm以上10μm以下かつ周期ピッチが10μm以下である。このように構成することによって、基油の保持性、移動性を向上することが できる。周期構造25の凹凸が50nm未満では十分な量の増ちょう剤を担持できず、凹凸および周期ピッチが10μmを超えると増ちょう剤や基油がほとんど流出してしまうおそれがある。
【0049】
しかしながら、流路20間隔を比較的大きくとれば、ころ12が、流路20に対応する部位と流路20に対応しない部位とを有する転動後に、流路20に対応しない部位が形成される転動を有する。このような場合であってもよい。
【0050】
ところで、流路20が設けられた転動面の相手側の面が、流路20に対応する部位と流路20に対応しない部位とが形成される転動である場合、常に、ころ12と相手側の転動面との間は油切れを生じることなく転動運動を行うことができる。これに対して、流路20に対応する部位の転動後に、流路20に対応しない部位が形成される転動を有するものであっても、ころ12に付着した基油によって、油切れを生じることなく転動運動を行うことができる。なお、流路20に対応しない部位が形成される転動が、長くなれば、油切れを生じるおそれがある。このため、油切れを生じさせないように、隣り合う流路20間の間隔を、流路20の幅寸法W、流路20の傾斜角度θ、ころ径、さらには使用するグリース等に応じて種々設定する必要がある。また、流路20に対応しない部位が形成される転動後には流路20に対応する部位と流路20に対応しない部位とが形成される転動を有するものとすることによって、形成されている段差に、この転動体8が引っかかることなく、滑らかに転動することができる。
【0051】
次に、
図9(a)(b)は流路20の変形例を示し、流路20の中間部位(グリース溜まり21,21間の中間部位)に屈曲部40を有するものである。すなわち、
図9(a)に示す流路20は、一方のグリース溜まり21(21A)から転動方向(矢印A方向)に傾斜する第1流路41Aと、他方のグリース溜まり21(21B)から転動方向(矢印A方向)に傾斜する第2流路41Bとからなる。
【0052】
また、
図9(b)に示す流路20は、一方のグリース溜まり21(21A)から転動方向(矢印A方向)と反対の矢印B方向に傾斜する第1流路41Cと、他方のグリース溜まり21(21B)から転動方向(矢印A方向)と反対の矢印B方向に傾斜する第2流路41Dとならなる。
【0053】
この
図9に示す流路20においても、周期構造25のみでもって構成してもよく、凹溝22と、この凹溝22内に設けられる周期構造25とでもって構成してもよい。
【0054】
これらの場合も、流路20の幅寸法、流路20の配設ピッチ、流路20の傾斜角度θ等を、「流路20に対応する部位と流路に対応しない部位とが形成される転動、または、流路20に対応する部位の転動後に、流路20に対応しない部位が形成される転動を有するものである」ように設定する必要がある。
【0055】
このような流路20であっても、設けられる周期構造25の配向方向は任意に設定することができる。また、第1流路41A,41Cと第2流路41B,41Dとが同じ配向方向であっても、相違する配向方向であってもよい。
【0056】
図10は流路の別の変形例である。この場合の流路20は、一方のグリース溜まり21Aの流路20の連結部20aと、他方のグリース溜まり21Bの流路20の連結部20bとが相対面した状態で湾曲している。この
図10に示す流路20においても、周期構造25のみでもって構成してもよく、凹溝22と、この凹溝22内に設けられる周期構造25とでもって構成してもよい。また、周期構造25の配向方向を任意に設定できる。
【0057】
この場合も、「流路20に対応する部位と流路に対応しない部位とが形成される転動、または、流路20に対応する部位の転動後に、流路20に対応しない部位が形成される転動を有するものである」ように設定する必要がある。なお、
図10では、一方のグリース溜まり21Aの流路20の連結部20aと、他方のグリース溜まり21Bの流路20の連結部20bとが相対面するものであったが、相対面しないように湾曲した流路20であってもよい。
【0058】
このため、
図9(a)(b)及び
図10に示す流路20を有するものであっても、
図1及び
図2に示す流路20を有するものと同様の作用効果を奏することができる。
【0059】
次に
図11に示す流路20では、その周期構造25が複数の配向方向で設けられている。すなわち、凹溝22の底部において、その配向方向が凹溝22の長手方向である第1周期構造25aと、この第1周期構造25aの両側に配設される第2・第3周期構造25b、25cを備える。第2・第3周期構造25b、25cが、凹溝22の長手方向と直交する方向の幅方向に沿った配向方向とされる。また、このように周期構造が複数の配向方向で設けられるものであっても、凹溝22の断面形状は
図7等に示すような種々の形状のもので構成できる。
【0060】
このように、グレーティング状凹凸の周期構造25が複数の配向方向で設けられていることで、流路20と基油とのなじみ(濡れ)がよくなるとともに表面積が増加して、濡れ性向上、毛細管現象の効果が加わり流路の進展方向及び幅方向に潤滑剤を速やかに濡れ広げることができる。すなわち、ある方向に進展する周期構造25において、先行して潤滑剤が濡れ広がり、さらに、その周期構造25から別の方向に進展する周期構造25にわたって潤滑剤が濡れ広がる。その結果基油の循環性が向上して転動面への基油の供給性が向上し、転動面の油膜切れを防止することができる。
【0061】
また、配向方向として、
図11に示すものに限るものではなく、第1周期構造25aの配向方向が凹溝22の長手方向と直交する方向の幅方向に沿ったものであり、第2・第3周期構造25aの配向方向が凹溝22の長手方向に沿ったものでもよい。すなわち、各周期構造25a、25b、25cの配向方向は任意に設定できる。また、周期構造25として、第1・第2・第3周期構造25a、25b、25に限るものではなく、第4乃至それ以上の周期構造を有していてもよい。このような場合も、各配向方向は任意に設定され、少なくとも2つの周期構造25の配向方向が相違するものが好ましい。
【0062】
前記実施形態では、内輪10である第1部材3の内側転動面2に、流路20とグリース溜まり21を設けていたが、他の実施形態として、外輪11である第2部材7の外側転動面6に、流路20とグリース溜まり21を設けたり、ころ12としての転動体8の外周転動面8aに、流路20とグリース溜まり21を設けたりしてもよい。
【0063】
このような他の実施形態であっても、内輪10の内側転動面2に、流路20とグリース溜まり21を設けたものと同様の作用効果を奏する。
【0064】
ところで、
図12は、本発明の転動体構造であるスラストころ軸受を示す。このスラストころ軸受は、平板リング状の一対の軌道盤51,52と、この軌道盤51,52の相対面する転動面51a、52a間に周方向に沿って所定ピッチで配設される複数の転動体8としてのころ53と、このころ53を所定ピッチで保持する保持器54とを備える。すなわち、一方の軌道盤51は、その内面(他方の軌道盤52の対向面)が第1転動面2(51a)である第1部材3であり、他方の軌道盤52は、その内面(一方の軌道盤51の対向面)が第2転動面6(52a)である第2部材7であり、ころ53が転動体8である。
【0065】
この場合、
図13に示すように、一方の軌道盤51の転動面51aには、転動面領域から転動面外端縁側に向かう流路20を設けるとともに、その流路20に連通されて周方向に沿って配設されるグリース溜まり21,21を設けている。すなわち、グリース溜まり21は、外径側に配設される円環状の外径側グリース溜まり21と内径側に配設される円環状の内径側グリース溜まり21とを備え、外径側グリース溜まり21と内径側グリース溜まり21とを周方向に沿って所定ピッチで配設される複数の流路20で連通されている。また、流路20は、径方向に対して所定角度θ1で傾斜している。この所定角度θ1としては、例えば流路20の幅をWとし、内径側グリース溜まり21と外径側グリース溜まり21との間寸法をLとしたときに、cosθ1>W/Lの式を満たす0°<θ<90°である。
【0066】
そして、各流路20はグレーティング状凹凸の周期構造25を備え、かつ、この流路20が設けられた転動面51aの相手側も面52aが、流路20に対応する部位と流路に対応しない部位とが形成される転動、または、流路20に対応する部位の転動後に、流路20に対応しない部位が形成される転動を有するものである。また、グリース溜まり21、21にも周期構造25が形成されている。
【0067】
従って、このようなスラストころ軸受であっても、ラジアルころ軸受と同様、「グリースからの基油分離が促進され、転動面内にグリースの基油を供給するとともに、転動面内から流出する基油を効率的に回収できる。これにより、転動面の油膜切れを有効に防止でき、グリース潤滑下において、長期にわたって低摩擦を維持できる」という作用効果を奏することができる。
【0068】
ところで、このスラストころ軸受の流路20は、
図7(a)(b)(c)等に示すような断面形状の凹溝22と、この凹溝22に形成される周期構造25で形成され、グリース溜まり21、21も、
図8(a)(b)(c)等に示すような断面形状の凹溝23と、この凹溝23に形成される周期構造25で形成される。
【0069】
また、スラストころ軸受の周期構造25としても、
図6に示すようなレーザ表面加工装置を用いて形成され、凹凸が50nm以上10μm以下かつ周期ピッチが10μm以下であるようにするのが好ましい。この流路20の周期構造25の配向方向としても、凹溝22の長手方向に沿う方向であっても、この長手方向に対して直交する方向であっても、さらには、所定角度(例えば、45度程度)に傾斜したものであってもよい。また、グリース溜まり21の周期構造25の周期構造25の配向方向として、円周方向に沿うものであっても、径方向に沿うものであっても、径方向に対して、所定角度(例えば、45度程度)に傾斜したものであってもよい。
【0070】
スラストころ軸受の流路20として、グレーティング状凹凸の周期構造25のみで構成してもよい。スラストころ軸受の流路20としては、
図9(a)(b)に示すように屈曲部を有するものであっても、
図10に示すような湾曲したものでああってもよい。さらには、
図11に示すように周期構造25が複数の配向方向で設けられているものであってもよい。
【0071】
前記スラストころ軸受では、一方の軌道盤51の転動面51aにのみ、流路20とグリース溜まり21を設けていたが、他の実施形態として、他方の軌道盤52の転動面52a、流路20とグリース溜まり21を設けたり、転動体ところ53に流路20とグリース溜まり21を設けたりしてもよい。
【0072】
本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、図示のものは、ころ12の軸方向両端部は、一対のグリース溜まり21,21に達しているが、一対のグリース溜まり21,21に達しないものであってよく、グリース溜まり21として、いずれか一方のみであってもよい。また、流路20の凹溝22及びグリース溜まりの凹溝23の断面形状として、前記図例のものに限るものではなく、V形状や半多角形状等の他の種々の形状のものも採用できる。なお、流路20の凹溝22では
図3に示すような半円形のものを記載していたが、グリース溜まり21の凹溝23であっても、半円形のものでもよい。
【0073】
周期構造形成時に使用するレーザとしては、フェムト秒レーザ、ピコ秒レーザ、及びナノ秒レーザといったパルスレーザを使用することができる。また、ころ軸受として、円筒ころ軸受、針状ころ軸受、円すいころ軸受,自動調心ころ軸受等であってもよい。転動体構造としては、ころ軸受に限るものではなく、他の機構、例えば内輪と外輪と転動体とを備えた等速自在継手にも用いることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 外周面
2 内側転動面
3 第1部材
5 内周面
6 外側転動面
7 第2部材
8 転動体
10 内輪
11 外輪
12 ころ
20 流路
21 グリース溜まり
22 凹溝
25、25a、25b、25c 周期構造