(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】延伸装置用搬送チェーン装置の把持台車とその延伸装置
(51)【国際特許分類】
B29C 55/20 20060101AFI20240315BHJP
B65G 17/10 20060101ALI20240315BHJP
B65G 17/26 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B29C55/20
B65G17/10 A
B65G17/26 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020172318
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】10 2019 127 701.9
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510331593
【氏名又は名称】ブリュックナー・マシーネンバウ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100082049
【氏名又は名称】清水 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・バウアー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ロット
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ウンターライナー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエラ・シューマッハ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ミッテラー
(72)【発明者】
【氏名】アンチモス・ギアポウリス
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-098777(JP,A)
【文献】特表平04-505432(JP,A)
【文献】特表2011-518695(JP,A)
【文献】特開2019-107872(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1930069(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/00 - 55/30
61/00 - 61/10
B65G 17/10
B65G 17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内軌道(2)を構成する案内レール(7)と、案内レール(7)に沿って移動する搬送装置(3)を構成する搬送チェーン装置(11)と、搬送チェーン装置(11)により駆動されて案内レール(7)に沿って移動する把持具台車(13)とを備え、把持具台車(13)は、延伸すべき薄膜(MB)の側縁(17)を把持し、薄膜(MB)を緊張状態に維持して薄膜(MB)を搬送する把持具(15)を備える延伸装置用把持具台車において、
把持具台車(13)の案内レール側(13d)に回転可能に設けられて案内レール(7)の薄膜(MB)の反対側の走行面又は摺動面(7c)に接触する少なくとも1つの走行ローラ(19c, 19c', 19c")又は摺動体(19c, 19c', 19c")と、
把持具台車(13)に取り付けられる揺動軸(27)の周りに揺動可能に軸支される揺動レバー(25)と、
揺動レバー(25)の揺動軸(27)から離間して、揺動レバー(25)と共に移動可能に揺動レバー(25)の保持位置(28)に取り付けられる回転軸(29)と、
揺動レバー(25)の回転軸(29)周りに回転可能に取り付けられて、揺動軸(27)周りの揺動レバー(25)の揺動と共に移動する少なくとも1つの保全ローラ(19d, 19d', 19d")又は保全摺動体(19d, 19d', 19d")と、
揺動レバー(25)の自由端(25a)に隣接して把持具台車(13)の薄膜側(13c)に設けられるばね力保持部又は弾力保持部(23)と、
ばね力保持部又は弾力保持部(23)に設けられて揺動レバー(25)の自由端(25a)の当接部(30)に接触するばね装置(23a)とを備え、
ばね装置(23a)の弾性力が加えられる揺動レバー(25)は、てこ作用により、少なくとも1つの保全ローラ(19d, 19d', 19d")又は保全摺動体(19d, 19d', 19d")を案内レール(7)の薄膜側(13c)の走行面又は摺動面(7d)に対して押圧することを特徴とする延伸装置用把持具台車。
【請求項2】
少なくとも1つの保全ローラ(19d)又は保全摺動体(19d)に対し、ばね力保持部又は弾力保持装置(23)のばね長に平行に少なくとも間接的に設けられて、ばね振動を低減する減衰装置(33)を備える請求項1に記載の把持具台車。
【請求項3】
減衰装置(33)は、ばね力保持部又は弾力保持装置(23)の一部を構成する請求項2に記載の把持具台車。
【請求項4】
把持具台車(13)に対して、回転可能に取り付けられる揺動レバー(25)は、ばね装置(23a)のばね力により、保全ローラ(19d)又は保全摺動体(19d)を薄膜側の走行面(7d)に進退自在に押圧し、
少なくとも1つの保全ローラ(19d)又は保全摺動体(19d)は、揺動軸(27)から離間する保持位置(28)に保持される請求項1~3の何れか1項に記載の把持具台車。
【請求項5】
片持式の揺動レバー(25)は、ばね装置(23a)が揺動レバー(25)に接触する当接部(30)を備え、
a)揺動レバー(25)の保持位置(28)は、当接部(30)より揺動軸(27)近くに配置され、又は
b)揺動レバー(25)の保持位置(28)は、当接部(30)よりも揺動軸(27)から離間して配置される請求項4に記載の把持具台車。
【請求項6】
揺動レバー(25)は、保全ローラ(19d, 19d', 19d")又は保全摺動体(19d, 19d', 19d")が取り付けられる一方の腕と、揺動軸(27)の反対側に設けられてばね力保持部又は弾力保持部(23)に接触する当接部(30)が取り付けられる他方の腕とを有する両腕式揺動レバー(25)として形成される請求項4に記載の把持具台車。
【請求項7】
保全ローラ(19d, 19d', 19d")又は保全摺動体(19d, 19d', 19d")は、揺動レバー(25)に回転可能に軸支され又は少なくとも一定の角度範囲で揺動可能に保持される請求項5又は6に記載の把持具台車。
【請求項8】
揺動レバー(25)は、揺動軸(27)の軸方向に離間して取り付けられる2個のレバー部(25', 25")を備える二重レバー又はレバー対として形成され、少なくとも1つの保全ローラ(19d, 19d', 19d")又は保全摺動体(19d, 19d', 19d")は、上下に配置される2個のレバー部(25', 25")間に保持される請求項4~7の何れか1項に記載の把持具台車。
【請求項9】
2個のレバー部(25', 25")は、揺動軸(27)側で軸体(27')により互いに連結され、
2個のレバー部(25', 25")は、軸体(27')の反対側で連結片(25b)により互いに連結され、
ばね力保持部又は弾力保持部(23)に接触する揺動レバー(25)の当接部(30)は、連結片(25b)に形成される請求項8に記載の把持具台車。
【請求項10】
ばね力保持部又は弾力保持部(23)は、
a)把持具本体(13)に支持され又は
b)搬送チェーン装置(11)のチェーン(11')の異なる2個のチェーン分節(11
1, 11
2)を互いに連結する別のピン(11c)に支持される請求項1~9の何れか1項に記載の把持具台車。
【請求項11】
搬送チェーン装置(11)の別のピン(11c)は、把持具台車(13)の固定領域にねじ連結により固定される請求項10に記載の把持具台車。
【請求項12】
把持具台車(13)は、把持具本体(13)の上部と下部から夫々突出しかつ案内レール装置(7)を包囲して形成される上部領域と下部領域とを備え、
把持具台車(13)は、少なくとも1つの上走行ローラ(19c, 19c')と下走行ローラ(19c, 19c")又は上摺動体(19c, 19c')と下摺動体(19c, 19c")とを備え、
少なくとも1つの上走行ローラ(19c, 19c')又は上摺動体(19c, 19c')は、案内レール装置(7)に対し薄膜の反対側の走行面又は摺動面(7c)の上部領域に接触して、把持具台車の上部領域又は上部に配置され、
少なくとも1つの下走行ローラ(19c, 19c")又は下摺動体(19c, 19c")は、案内レール装置(7)に対し薄膜の反対側の走行面又は摺動面(7c)の下部領域に接触して、把持具台車(13)の下部領域又は下部に配置され、
別に設けられる保全ローラ(19d, 19d', 19d")又は保全摺動体(19d, 19d', 19d")は、案内装置(20)により、
a)把持具台車(13)に直接保持され又は、
b)搬送チェーン装置(11)のチェーン(11')の2個のチェーン分節(11
1, 11
2)を互いに連結するピン(11c)又は別のピン(11c)により把持具台車(13)に間接的に保持され、
少なくとも1つの保全ローラ(19d, 19d', 19d")と別の保全ローラ(19d, 19d', 19d")は、上下に又は上下に離間して配置され、
上走行ローラ及び下走行ローラ(19c, 19c', 19c")は、何れも、薄膜の反対側の走行面若しくは摺動面(7c)に接触する請求項1に記載の把持具台車。
【請求項13】
把持具台車(13)は、把持具台車(13)の上部領域に配置されて、案内レール装置(7)のレール上面(7a)に接触する上支持ローラ(19a)又は上支持摺動体(19a)を備えかつ/又は
把持具台車(13)は、把持具台車(13)の下部領域に配置されて、案内レール装置(7)のレール底面(7b)に接触する保全ローラ(19b)又は保全摺動体(19b)を備える請求項12に記載の把持具台車。
【請求項14】
請求項1~13の何れか1項に記載の把持具台車(13)と、搬送チェーン装置(11)の少なくとも1つのチェーン(11')とを備える組合せ把持具台車において、
チェーン(11')は、ピン(11c)により隣接する各一端が連結される複数のチェーン分節(11
1, 11
2)を備え、
各チェーン分節(11
1, 11
2)は、互いに平行に間隔を空けて配置されかつ各2個の取付孔を備える2個のチェーン分節片(11a)と、2個の取付孔を貫通して嵌合されて2個のチェーン分節片(11a)を互いに連結するピン(11c)と、
連結される複数のチェーン分節(11
1, 11
2)の内側のチェーン分節片(11a)間に配置されかつピン(11c)が貫通する中心開口を有する間座(11b)、保護ローラ形の間座とを備えることを特徴とする組合せ把持具台車。
【請求項15】
内側のチェーン分節片(11a)の取付孔内のピン(11c)と間座(11b)との間に配置される筒体(11d)を有する請求項14に記載の組合せ把持具台車。
【請求項16】
請求項1~15の何れか1項に記載の複数の把持具台車(13)を備える延伸装置において、
互いに側方に離間して配置されかつ延伸すべき薄膜材料(MB)の引出方向(1)に沿って周回する2個の案内軌道(2)と、
周回する案内軌道(2)に設けられる案内レール装置(7)と、
延伸装置を通り進入領域(EZ)から各案内レール装置(7)に沿って退出領域(AZ)に周回して移動する延伸すべき薄膜材料(MB)を側方で把持する多数の把持具搬送装置(KT)を有する搬送装置(3)とを備え、
各把持具搬送装置(KT)は、把持具台車(13)を備え、
把持具台車(13)は、走行ローラ(19c, 19c', 19c")、摺動体(19c, 19c', 19c")、支持ローラ(19a)、支持摺動体(19a)、下保全ローラ(19b)、下保全摺動体(19b)、少なくとも1つの保全ローラ(19d, 19d', 19d")又は保全摺動体(19d, 19d', 19d")により支持されて、案内レール装置に沿って前進し、
案内レール装置(7)は、少なくとも1つのレール上面(7a)と、薄膜から離間して配置される走行面及び/又は摺動面(7c)と、薄膜側に配置される走行面及び/又は摺動面(7d)とを備え、
把持具台車(13)に軸支され及び/又は保持される走行ローラ(19c, 19c', 19c")及び/又は摺動体(19c, 19c', 19c")は、薄膜から離間して配置される走行面及び/又は摺動面(7c)上を転動又は摺動し、
少なくとも1つの保全ローラ(19d, 19d', 19d")又は保全摺動体(19d, 19d', 19d")は、薄膜側に配置される走行面及び/又は摺動面(7d)に接触し、
少なくとも1つの保全ローラ(19d, 19d', 19d")又は保全摺動体(19d, 19d', 19d")は、薄膜材料側に配置される案内レール装置(7)の走行面及び/又は摺動面(7d)に対して垂直又は横断方向に移動することを特徴とする延伸装置。
【請求項17】
案内装置(20)は、揺動レバー(25)を備え又は揺動レバー(25)により構成され、
揺動レバー(25)は、少なくとも一定のばね力により、把持具台車(13)及び/又はチェーンのピンに対し、揺動軸(27)周りに揺動して、案内レール装置(7)の薄膜側に配置される走行面及び/又は摺動面(7d)に対し接近又は離間し、少なくとも1つの保全ローラ(19d, 19d', 19d")又は保全摺動体(19d, 19d', 19d")は、揺動軸(27)から離間する保持位置(28)に保持される請求項16に記載の延伸装置。
【請求項18】
把持具台車(13)は、少なくとも2個の保全ローラ(19d, 19d', 19d")又は保全摺動体(19d, 19d', 19d")を備え、少なくとも一方の保全ローラ(19d, 19d' 19d")又は保全摺動体(19d, 19d', 19d")は、レール上面(7a)付近に配置され、少なくとも他方の保全ローラ(19d, 19d")又は保全摺動体(19d)は、下走行面又は下摺動面(7b)付近に配置される請求項16又は17に記載の延伸装置。
【請求項19】
レール上面(7a)付近に取り付けられる一方の一対の走行ローラ(19c, 19c')及び/又は摺動体(19c, 19c')は、案内レール装置(7)に沿って離間して把持具台車(13)に配置されかつ/又は、
レール底面(7b)付近に取り付けられる他方の一対の走行ローラ(19c, 19c")及び/又は摺動体(19c, 19c')は、案内レール装置(7)に沿って離間して把持具台車(13)に配置され、
一方及び/又は他方の走行ローラ(19c, 19c', 19c")対及び/又は摺動体(19c, 19c', 19c")対を構成する複数の走行ローラ(19c, 19c', 19c")及び/又は摺動体(19c, 19c', 19c")間の把持具台車(13)に設けられる保全ローラ(19d, 19d', 19d")又は保全摺動体(19d, 19d', 19d")は、案内レール装置(7)に対向して配置され、
少なくとも1つの保全ローラ(19d, 19d', 19d")又は保全摺動体(19d, 19d', 19d")は、案内装置(20)により、薄膜側の走行面及び/又は摺動面(7d)に向かって移動可能な押圧力が付加される請求項16~18の何れか1項に記載の延伸装置。
【請求項20】
案内レール装置(7)は、単軌道(7)により構成され、
把持具台車(13)は、薄膜から離間して把持具台車(13)に取り付けられて、レール上面(7a)とレール底面(7b)とに夫々上方と下方から係合される構成を有する請求項16~19の何れか1項に記載の延伸装置。
【請求項21】
案内レール装置(7)は、一対のレールを有する2個の案内レール部(7', 7")を備え、
2個の案内レール部(7', 7")は、案内レール間隔(41)を挟んで上下に配置される少なくとも垂直構成部又は垂直舌片(42)を備え、
薄膜から離間して配置される走行面及び/又は摺動面(7c)に接触する走行ローラ(19c, 19c', 19c")又は摺動体(19c, 19c', 19c")は、上案内レール(7')に下方から接触しかつ下案内レール(7")に上方から接触する請求項16~20の何れか1項に記載の延伸装置。
【請求項22】
a)各把持具台車(13)は、搬送チェーン装置(11)のチェーン(11')の一部を構成し、移動する搬送チェーン装置(11)の駆動力は、把持具台車(13)を通じて伝達され又は、
b)搬送チェーン装置(11)は、連続するチェーン(11')を有し、把持具台車(13)は、チェーン(11')とは別部品として搬送チェーン装置(11)の各チェーン(11')に取り付けられ、搬送チェーン装置(11)の駆動力が伝達されない請求項16~21の何れか1項に記載の延伸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載する延伸装置用搬送チェーン装置の把持台車とその延伸装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
延伸装置は、特に樹脂薄膜の製造に使用される。横方向と長手方向とに同時に樹脂薄膜を延伸する同時延伸装置の他に、例えば、まず長手方向に延伸し、次に横方向(又はその逆)に延伸して、連続する二段階で樹脂薄膜を延伸して、樹脂薄膜を生成する逐次延伸装置も公知である。また、例えば、縦延伸装置又は横延伸装置形態での一段階延伸装置も公知である。
【0003】
延伸すべき薄膜材料、通常、樹脂薄膜を把持する把持装置(把持具)は、延伸すべき薄膜材料の両側に配置されて、複数の案内軌道を循環(周回)する。進入領域(例えば、延伸すべき樹脂薄膜の側縁を把持する領域)から、順々に延伸領域(対向する複数の把持具が、複数の案内レール部上で、搬送方向に対し、横方向に互いに離間して移動する領域)に移動する把持具は、退出領域に進み、例えば、薄膜材料の内部応力を緩和しかつ/又は後熱処理を受けた後、把持具は、復路を通り再び進入領域に移動する。
【0004】
逐次延伸装置又は横延伸装置は、薄膜材料の搬送面に対し直角な垂直面に対して対称に配置される通常2個の周回案内軌道を有し、各案内軌道は、複数の把持具又は把持具台車の移動を案内する部分軌道又は全軌道を周回する案内レールを備える。特に、周回するチェーン装置により把持具台車を駆動するとき、通常少なくとも退出領域に、場合により進入領域にも設けられるスプロケットを介して、周回するチェーンは、継続的に作動しかつ駆動される。
【0005】
特に、チェーン装置に装着される複数の把持具により延伸すべき薄膜形態の薄膜材料を把持し、チェーン装置を駆動して、薄膜材料を長手方向に移動しなければならない。延伸すべき薄膜材料の両側の周回する案内軌道上で移動可能に配置される周回チェーン(無端チェーン)に取り付けられる複数の把持具又は把持具台車は、通常、周回チェーンに固定される。また、リニアモータ駆動部により駆動されて、連続する複数の把持具台車を電機駆動力により継続的に動くチェーン装置のない同時延伸装置も公知である。
【0006】
実際の延伸領域では、暫次拡幅(発散)する軌道で一対の案内軌道が形成され、対向する一対の把持具間の横方向の距離が漸増するため、案内軌道に沿って把持具が進行するに従い、薄膜材料は横方向に徐々に延伸される。
【0007】
把持具台車は、複数の走行ローラ及び/又は摺動体を介して案内レールに対し移動可能に支持される。複数の走行ローラと複数の摺動体とを併用する混合把持具台車も使用できる。
【0008】
特に、周回する搬送チェーンを使用する延伸装置が、把持具台車を案内軌道に沿って継続的に移動するとき、案内レール装置の走行面又は摺動面に対し、走行ローラ又は摺動体を100%接触状態に保持できない問題がある。走行ローラ又は摺動体を搬送チェーンに強固に取り付ければ、走行ローラ又は摺動体を把持することも可能である。
【0009】
しかしながら、走行ローラ又は摺動体を搬送チェーンに強固に取付けると、走行ローラ又は摺動体に大きな駆動負荷が伝達されるので、耐用年数が短命化する難点がある。また、より大きい全体的故障も生じることもある。
【0010】
故障が発生する主原因は、下記にある:
a)部品、特に案内レール、複数の案内車、案内レール上を転動する走行ローラ又は摺動体に種々の製造公差が生じる可能性があること及び/又は、
b)湾曲する案内レールについて基本的に決定する案内レール装置の有効レール厚が変化すること。
【0011】
尤も、案内レールの複数の案内面に100%当接しない走行ローラ又は摺動体の影響は、下記にある:
a)案内レール装置の走行面又は摺動面に走行ローラ又は摺動体が継続的に接触しないため、走行ローラ又は摺動体が、一時的に又は短時間、案内レール装置から上昇し、その後再び走行面又は摺動面に接触する接触時に、耐久性のある衝撃荷重が発生しかつ/又は
b)特に、使用する走行ローラが、案内レール装置の走行面に接触せずに回転数が減少して、減速した走行ローラは、再度接触する走行面の案内レールに対して相対速度を有する。このため、案内レールにより走行ローラの外側輪が加速して、加速時間中に案内レールの対応する走行面と走行ローラの外側輪との間に摺動作用が生じる。転動形状も、摺動作用の影響を受ける。
【0012】
このため、従来の前記欠陥を少なくとも削減する解決手段を見出す試みが既に行われている。
【0013】
そこで、一体合金材料製の剛性案内レールではなく、互いに平行に配置される一対の案内レールの柔軟な外囲帯を有し、ある程度の弾性を生ずる案内レールを用いる案内レール装置が既に提案されている。弾性案内レール装置では、案内レール装置に割当てられる走行面上で転動する全走行ローラの対向走行面間距離は、柔軟な外囲帯により常に補償される。
【0014】
しかしながら、弾性案内レール装置は、レールの真直度が悪化して、チェーン装置に追加の振動励起が発生する難点がある。また、柔軟な外囲帯形状が変形して、所期の制御が不能となる不具合が生じて、駆動力の水準を保持できない瑕疵がある。
【0015】
このため、所定のばねを備える柔軟な複数のローラ軌道も提案されているが、このローラ軌道は、必要な設置空間が明らかに増大する欠点が生ずる。
【0016】
増大する設置空間は、適切な延伸装置では非常に使用が制限される一方、極力小さいレール厚の案内レール装置が好適である。複数の部品で構成される複雑な構造のレール断面も、価格上昇を招来する。
【0017】
各レール側に応じて異なる複数の部品で把持具台車の複数の走行ローラを軸支する構造が解決手段に代わる既存の提案である。
【0018】
特許文献1は、例えば、薄膜の反対側の把持具台車に直接取り付ける単一又は複数の走行ローラを、薄膜の反対側の案内レールで転動する構造を提案する。この構造では、案内レールの対向側に少なくとも1つの走行ローラを設けて、把持具台車上ではなく、チェーンレバーを介して、各把持具を連結するチェーン装置に走行ローラを軸支する構造が提案される。この提案構造では、走行レール厚又はローラ走行レール外囲帯厚に、走行ローラの距離を適合する自由度が生じる。
【0019】
チェーンに軸支される少なくとも1つの走行ローラにより、把持具台車に対して案内レールの横方向に常に押圧力を加えて可変位置で走行ローラを保持できる利点もある。1つのチェーン台車から次のチェーン台車に伝達する引張力により発生するチェーン張力は、対応する走行面に対し実質的に横方向(直角)に作用し、力偏向装置となるチェーンレバーを通じて導入されるチェーン張力は、走行ローラに付加される予張力に変換されて、走行ローラに作用する。換言すると、チェーンレバーを精確に引張方向に配置しないと、チェーンレバーの長手方向引張力は、長手方向と横方向との分力とに分力される。
【0020】
チェーンレバーを介して設定できかつ引張力が加えられる走行ローラは、角度180°偏向する複数のチェーンレバー装置に配置されるので、チェーン張力により、案内レールに沿う走行方向分力と、垂直な直角分力とに最終的に分力される。チェーン分節が、設定可能に変位する両チェーンレバー間で相応の角度を有する限り、走行ローラは、横方向分力により真直なローラレール部に接触する。
【0021】
特許文献1に開示される延伸装置は、現在の薄膜延伸装置としては非常に良好な結果を達成するが、延伸長の大きい薄膜延伸装置を高速で作動すると、走行ローラを搬送する両チェーン分節の角度に常に依存する横方向張力は、作用する駆動力と長手方向張力にも依存するため、チェーンレバーを連結する連結ピン(ボルト)の摩擦係数によって減少する。
【0022】
換言すると、設定可能な走行ローラの接触力は、チェーンの長手方向張力に依存するため、大きく変動することがある。
【0023】
チェーンの長手方向引張力が大きく、長延伸工程で高速処理を行う延伸装置では、走行ローラに対する非常に大きい接触力が生ずるが、逆に、長手方向のチェーン引張力が小さいと、接触力が不十分な場合がある。接触力は、継手連結部の摩擦係数に依存する。摩擦係数の増大化、作動高速化及び薄膜延伸装置の延伸長延長化に伴い、案内レールの対応する走行面に、走行ローラが非接触状態になることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【文献】独国特許公報第40 06 440C2号明細書
【文献】独国特許出願公開第37 41 582A1号
【文献】国際公開第2004/71748A1号
【文献】米国特許第5,970,589号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の課題は、従来技術から出発して、案内レール装置で長手方向に案内する走行ローラ及び/又は摺動体を高速で作動しても、延伸装置長さに依存せず、案内レールの走行面に対する接触を常に維持する改良チェーン型延伸装置の解決手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明では、延伸装置の搬送チェーン装置用把持具台車の課題を請求項1に記載する特徴により解決し、搬送チェーンを装備する延伸装置の課題を請求項17に記載する特徴により解決する。本発明の有利な構成を従属請求項に記載する。
【0027】
本発明の解決手段は、互いに連結される複数のチェーン分節により複数の把持具台車の各々を駆動し、延伸装置を通って案内される少なくとも1つの走行ローラ又は摺動体の案内レール装置への押圧力が、把持具台車及び/又はチェーン分節に作用する駆動力から分離され、駆動力に影響されず、チェーンの長手方向の駆動力には依存しない着想に基づく。別個のチェーン分節により複数の把持具台車の各々を互いに連結する(駆動するチェーン装置の引張力の流れによる引張応力の経路は、各把持具台車外に形成される)か又は、鎖状のチェーン装置を用いる(チェーンに取り付けられる個別部品の各把持具は、チェーンの長手方向引張力の流れによる引張応力の経路外となる)か否かに関係なく、本発明の着想は、有効である。
【0028】
本発明は、案内レール装置に対し薄膜材料とは通常反対側の把持具台車に強固に固定されて、少なくとも把持具台車の横方向に移動不能に保持され取り付けられる1つ又は複数の走行ローラ及び/又は摺動体を有する把持具台車を出発点とする。特に薄膜に対する引張力及び/又は延伸力を、走行ローラ及び/又は摺動体により最適に保持することができる。
【0029】
少なくとも1つ又は複数の補償ローラ及び/又は補償摺動体は、案内レール装置の反対の薄膜側に、案内レール装置の横断方向に把持具台車に対して移動調節可能に設けられ、案内レール装置の走行面又は摺動面に対し、補償ローラ及び/又は補償摺動体を遊び又は間隙なく接触させて接触を維持して、走行面又は摺動面に対し所望の押圧力を発生できる。補償ローラ又は補償摺動体の代わりに、本明細書では、保全(安定化)ローラ又は保全(安定化)摺動体と称することもある。
【0030】
薄膜側に少なくとも1つの保全ローラを配置し、薄膜材料から離れた(裏)側に1つの保全ローラを配置して、複数の保全ローラを採用することもできる。高さ方向に離間して両保全ローラを配置できる。案内レール装置の案内レールのレール上面付近に一方の保全ローラを配置し、レール上面に対向する案内レールのレール底面付近に他方の保全ローラを配置できる。薄膜の側にも薄膜の反対側にも走行ローラ又は摺動体を配置できる。各1つの走行ローラ又は走行ローラ対若しくは摺動体対を、ほぼ各保全ローラの高さ(±20%未満の差)で案内レールの反対側に配置できる。走行ローラに対応する保全ローラ又は保全摺動体と走行ローラとの間に、案内レールが配置される。
【0031】
本発明は、最終的に案内レール又は案内レール装置の裏側で転動する走行輪、即ち少なくとも1つの押圧される補償ローラ又は長手方向に滑動する摺動体、即ち補償摺動体を案内レール装置の走行面又は摺動面に対し、常に接触を維持する構造も提案する。
【0032】
本発明では、所望のばね力保持部又は弾力保持部(好適には、ばね装置形態)で押圧するレバー装置に、補償装置又は保全(安定化)装置となる少なくとも1つの保安ローラ若しくは補償ローラ又は保安摺動体若しくは補償摺動体を設ける構造が特に有利であることが判明した。
【0033】
速度状態、製品状態及び/又は汚染状態を含む動作状況に実質的に依存せず、ばね付勢(押圧)される保全ローラ又は保全摺動体により、保全ローラ及び/又は保全摺動体と案内ローラとを案内レールに対し確実に接触させることができるため、高速稼動する延伸装置及び長尺の延伸装置でも、従来の欠陥を克服できる。
【0034】
ばね付勢される保全ローラ又は保全摺動体により、案内装置上に把持具台車を完全に安定して取り付け、しかも走行(案内)レールの厚み公差、凹凸又は幾何学形状が変化する形態の欠陥を常に補償することができる。ばね付勢される保全ローラ又は保全摺動体の質量を最小化すると、案内装置、案内レール装置に対し主質量が均一に動作する迅速な動的反応に対応する装置をまず実現できる利点がある。
【0035】
案内装置により少なくとも1つのばね付勢される保全ローラ又は保全摺動体は、
a)把持具台車、特に把持具本体に直接保持され又は、
b)搬送チェーン装置の2個のチェーン分節を互いに連結する少なくとも1つのピン(ボルト)により、把持具台車に間接的に保持及び/又は連結される。
【0036】
例えば、把持具台車に案内装置を軸着して、保全ローラ又は保全摺動体を直接保持することができる。回転不能、特にねじ止め又は溶接されるピン(ボルト)により、案内装置は、把持具台車に軸着又は軸支される。
【0037】
例えば、チェーン装置の2個のチェーン分節を連結するピン(ボルト)を、把持具台車に対し部分的に回転(揺動)可能に軸着すると、案内装置は、ピン(ボルト)により把持具台車に間接的に保持される。例えば、把持具台車の固定装置の開口内にピン(ボルト)を装着し、ねじを使用せずに開口内にピンを回転可能に嵌合できる。ピンを嵌合するため、把持具台車に隣接して両チェーン分節を配置することが好ましい。特に、把持具台車は、チェーン分節に平行に配置される。把持具台車の固定領域に選択的にピン(ボルト)を配置し、ねじ止めしてもよい。搬送チェーン装置の2個のチェーン分節を互いに連結する1つのピン(ボルト)に案内装置を軸着して、間接的保持を構成でき、そのとき、別のピン(ボルト)により、隣接するチェーン分節を連結して把持具台車に連結し又は軸着しても、間接的に保持できる。2個のピン(ボルト)と複数のチェーン分節により、間接的に保持できよう。
【0038】
精確にかつ柔軟性をもって延伸装置の要件(特に、装置の速度と長さ)に、本発明に使用する案内装置の接触力を適合できる。
【0039】
本発明の解決手段は、チェーン駆動装置で移動する把持具により把持する薄膜材料を案内レール装置に沿って搬送するこの種の全延伸装置に適合する。別個のチェーン分節を介して、複数の把持具台車の各々を互いに連結する(駆動するチェーン装置の引張力経路は、各把持具台車外に形成される)か又は連続するチェーン装置を用いる(チェーンの長手方向引張力の経路外となる別個の部品としてチェーンに把持具が取付けられる)か否かに関係なく、本発明の解決手段を全案内装置に適用できる。
【0040】
例えば、単軌道(モノレール)式又は二軌道式(走行ローラ又は摺動体を取り付ける把持具台車は、上下に離間する2個の案内レール部に沿って移動する)を案内レールとして採用しても、本発明による解決手段を実現できる。
【0041】
本発明の実施の形態を添付図面について更に以下詳細に説明する。各図面は下記を示す。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図3】チェーン搬送装置と把持具台車とを備える延伸装置を装着した
図2に示す案内レール装置の部分斜視図
【
図4】
図2と
図3に示す案内レール装置に沿ってチェーン装置と共に進行する把持具台車の垂直断面図
【
図5】案内レール装置に支持される把持具台車の水平断面図
【
図6】本発明に使用する揺動可能な軸着式保全ローラの斜視図
【
図7】
図6の揺動式保全ローラを取付けた把持具台車の下部を示す斜視図
【
図8】
図2とは異なる二軌道式案内レール装置の斜視図
【
図9】
図3とは異なり、
図8の二軌道式案内レール装置を使用する本発明の実施の形態の斜視図
【
図10】チェーン装置に保全ローラを装着した斜視図
【
図12】チェーンピンと同心の回転中心を有する揺動レバーにより保全ローラをチェーン装置に装着した斜視図
【
図13】薄膜側に第1の保全ローラを配置し、薄膜から離間する側に第2の保全ローラを配置した断面図
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明を実施した横延伸装置の実施の形態を例示的に示す
図1について以下説明する。
【0044】
延伸装置ともいう従来の薄膜幅延伸装置又は横延伸装置(TDO、Transverse Direction Orienter)は、
図1の図平面に対し垂直な平面SEに対し通常対称に配置される一対の駆動装置を有する。薄膜樹脂(薄膜材料)MB形態の延伸処理すべき薄膜材料は、循環する案内軌道2間を周回する一対の駆動装置によりかつ駆動装置間を通り、機械方向MD(Machine Direction)に引出方向1に搬送される。逐次延伸装置の一部としても構成される複数の横延伸装置(横延伸枠体)中の1つよりも上流側に縦延伸段が、通常設けられる(横延伸段の下流にも縦延伸段を通常配置できる)。
【0045】
(図示の横方向延伸装置の上流側に縦延伸装置を配置するとき)単軸又は一軸延伸薄膜MB又は未伸張の薄膜MBは、進入領域Eから延伸装置に導入され、操作者側(OS、Operator Side)と駆動部側(DS、Drive Side)とで、薄膜MBの両側縁は、複数の把持具により把持される(延伸装置による薄膜MBの適切な処理法を説明するが、例えば、金属薄膜、網、織物薄膜等他の薄膜状材料又は薄膜材料を横方向に延伸し又は伸張できる点で、本発明は、樹脂薄膜に限定されない)。その後、薄膜MBは、後続の予熱領域PHで加熱され、延伸領域Rに供給されて、薄膜MBは、横方向TDに延伸される。延伸された薄膜MBは、続いて、複数の加熱処理領域HTを通過しながら、薄膜の内部応力が緩和される。延伸装置の後端に設けられる退出領域Aでは、薄膜は、適切な手段で把持具から除去されて、横延伸機、横延伸装置から退出する。
【0046】
多数の把持具搬送装置KTを備える各搬送装置3は、周回する両軌道2に沿って周回方向4に駆動される。
【0047】
図1は、循環(周回)式案内軌道2の各退出領域Aの出口転輪ARと、入口領域Eの進入転輪ERとを示す。退出領域Aの退出転輪ARにより駆動される循環式搬送装置3は、入口領域Eの入口転輪ERにより追加的に駆動される場合もある。
【0048】
本発明の下記解決手段は、基本的に機械式同時延伸装置に採用できる。
【0049】
公知の機械式同時延伸装置と同様に、把持具搬送装置(把持具台車)は、案内重量支持レールの上面、底面及び水平方向に離間する両対向垂直面に接触する水平軸及び垂直軸上で転動するローラにより支持される。また、同時拡張(延伸)領域で、隣合う把持具間又は搬送装置間の機械方向(MD)の異なる距離を、折畳式柵鋏(パンタグラフ)型のチェーン鋏材により、設定する制御式レールも提案されている。周知のように、同時延伸装置の延伸領域で、複数の搬送装置と把持具が、一層迅速に加速されるため、連続する複数の把持具間距離が、益々増大して、樹脂薄膜の長手方向延伸又は横方向延伸が同時に行われる。特許文献2、特許文献3又は特許文献4に開示される延伸技術を参照されたい。
【0050】
図2は、移動する把持具搬送装置KT(把持具台車13(
図3)ともいう)を案内する案内レール装置の通常案内レール7の斜視図を示す。薄膜とは反対側の案内レール7の裏面で、案内レール7は、
図2に原理的かつ抽象的にのみ示す支持装置9により通常保持される。
【0051】
図3は、案内軌道2を構成する案内レール7に沿って移動する搬送装置3を構成するチェーン装置11と、チェーン装置11により駆動されて案内レール7に沿って移動する把持具搬送装置KTを構成する把持具台車13とを示す斜視図である。
【0052】
図4は、
図3に示す案内レール7と把持具台車13の垂直断面図である。
【0053】
図3と
図4に示す案内レール7は、通常水平に配置されるレール上面7aと、レール上面7aに対し平行にかつ好適には水平に配置されるレール底面7bとを有する。
【0054】
好ましくは長方形断面の案内レール7は、通常垂直に配置される2個の走行面又は摺動面7c, 7dを有する。走行面又は摺動面7cは、薄膜の裏側で薄膜から離間して配置され、走行面及び/又は摺動面7dは、薄膜側に配置される。図示のように、薄膜側に配置される把持具台車13の把持具15(把持具台車13と一体に形成しても良い)は、例えば、把持具台15aと、把持具レバー15bの下方の把持領域15'bとの間で薄膜MB又は薄膜材料MBの薄膜側縁17を緊張状態に把持する。薄膜側縁17を緊張状態に保持する薄膜引張力及び/又は延伸力は、薄膜から離間する走行ローラ19c又は摺動体19c及び把持具台車13を介して、薄膜から離れた薄膜裏側の走行面及び/又は摺動面7cで特に支持される。
【0055】
走行ローラ19c又は摺動体19cは、少なくとも1つの上走行ローラ19c'又は上摺動体19c'と、少なくとも1つの下走行ローラ19c"又は下摺動体19c"とを備える。少なくとも1つの上走行ローラ19c'又は上摺動体19c'は、少なくとも1つの下走行ローラ19c"又は下摺動体19c"よりレール上面7a近くに配置され又はレール上面7aに配置できる。逆に少なくとも1つの下走行ローラ19c"又は下摺動体19c"は、少なくとも1つの上走行ローラ19c'又は上摺動体19c'よりレール底面7b付近に配置され又はレール底面7bに配置できる。各2個の上走行ローラ19c'と下走行ローラ19c"又は摺動体19c', 19c"を、長手方向にのみ間隔をあけ、把持具台車13の高さ方向には好適には互いに間隔をあけずに設けることが好ましい。
【0056】
図示の実施の形態では、各把持具台車13の重量又は荷重は、案内レール方向に離間して配置される単一又は複数の上支持ローラ19a及び/又は上支持摺動体19aを介して案内レール7により基本的に支持される。単一又は複数の上支持ローラ19aを、荷重輪、支持輪、荷重ローラ又は支持ローラともいう。支持摺動体を荷重摺動体とも言える。
【0057】
上支持ローラ19aに対向する少なくとも1つの下保全ローラ19b又は下保全摺動体19bを案内レール7のレール底面7bに接触させて、把持具台車13又は搬送装置KTの不測の又は有害な上昇移動に対し、案内レール7に対する下保全ローラ19b又は下保全摺動体19bの形状接触による安全性を確保し又は少なくとも1つの下保全ローラ19b又は下保全摺動体19bと、レール底面7bとの間に極力小さい一定間隙21を確保することができる。
図4は、把持具台車13の外壁を構成する保持板と軸受部により部分的に覆われる走行ローラ19c, 19c', 19c"及び/又は支持ローラ19a及び/又は下保全ローラ19bの一部のみを示す。
【0058】
複数の上走行ローラ及び/又は下走行ローラ19c, 19c', 19c"及び/又は摺動体19c, 19c', 19c"は、薄膜裏側の案内レール7の走行面又は摺動面7cに通常接触し、薄膜MBの引張力又は延伸力に対抗して走行面7c上を転動又は摺動する。
【0059】
案内レール7の薄膜側の走行面又は摺動面7dに対し、案内レール7の上側縁と下側縁とに割り当てられて好適に接触する少なくとも1つの保全ローラ19d又は保全摺動体19dを、下記に詳細に説明する。
【0060】
図3に示す案内レール7に対し平行に配置される搬送チェーン装置11の対応する筒体11dにより、各把持具台車13は、順次連接される。
【0061】
本発明の実施に使用するチェーン11'は、把持具台車13を移動する搬送チェーン装置11の一部を構成する。
【0062】
図3に示すチェーン11'は、間隔を空けて互いに平行に配置される1対の内側チェーン分節11
1と、1対の内側チェーン分節11
1を挟持する1対の外側チェーン分節11
2とを備え、1対の内側チェーン分節11
1を構成する2個のチェーン分節11aの両端付近に2個の開口が形成され、1対の外側チェーン分節11
2の両端付近にも同様に同軸上に2個の開口が形成される。1対の内側チェーン分節11
1の2個のチェーン分節11a間に間座11bが配置され、間座11bの中心軸に沿って形成される貫通孔に対し、筒体11dが嵌合されると共に、同軸上に2個のチェーン分節11aの一方の開口内にも筒体11dが配置される。同様に、間座11bと共に1対の外側チェーン分節11
2の2個のチェーン分節11aの他方の開口を、間座11bを介して同軸上に配置し、1対の外側チェーン分節11
2の2個のチェーン分節11aの他方の開口、1対の内側チェーン分節11
1の2個のチェーン分節11aの一方の開口及び間座11bの貫通孔にピン11cを貫通させて、内側チェーン分節11
1と外側チェーン分節11
2とは、ピン11c周りに回転可能に軸着(連結、連接)される。同様の方法で、1対の内側チェーン分節11
1の2個のチェーン分節11aの他方の開口と、1対の外側チェーン分節11
2の2個のチェーン分節11aの一方の開口とは、間座11bを介してピン(ボルト)11cにより軸着される。
【0063】
内側チェーン分節111のチェーン分節11aの開口内に筒体11dが配置され、筒体11dは、好適にはチェーン分節11aの上面と同一平面に達し、チェーン分節11aの上面と同一平面から突出するピン11cと間座11bとの間に設けられる。
【0064】
図5は、本発明の実施に使用する保全ローラ19dと案内レール7に沿って移動する把持具台車13の水平断面を示す平面図、
図6は、保全ローラ19dを示す斜視図、
図7は、保全ローラ19dを組み込んだ把持具台車13の斜視図である。
【0065】
【0066】
把持具台車13に装備される走行ローラ19cは、剛性を有し、ばね付勢による移動調節されないが、走行ローラ19c又は場合により摺動体19cは、薄膜の裏側の案内レール7の走行面又は摺動面7cに接触して、薄膜の横方向引張力又は延伸力による主荷重を、薄膜の裏側で受け止め支持する。
【0067】
上支持ローラ19a又は上支持摺動体19aの反対側の案内レール7の底面7bに設けられる下保全ローラ19b又は下保全摺動体19bは、前記のように、重量に抗して搬送チェーンの上昇移動の誤動作を阻止する安全な形状結合機能を達成する。下保全ローラ19b又は下保全摺動体19bとレール底面7bとの間に間隙21が設けられ、間隙21以上に昇移動する下保全ローラ19b又は下保全摺動体19bは、レール底面7bに接触して、搬送チェーンの過度の上昇移動が阻止される。レール底面7b上への往復変位調節移動を可能にしつつ、下保全ローラ19b又は下保全摺動体19bをレール底面7bに常時接触する好適な状態を実現するには、弾力保持部の弾力作用により、レール底面7bに対して、下保全ローラ19b又は下保全摺動体19bに事前弾力を付与しなければならない。
【0068】
把持具台車13全体の上昇に抗する事前弾力付加の代替法として、側方の走行面又は摺動面7cに作用する走行ローラ19cに対し、走行ローラ19cの回転軸を走行方向に傾斜する予め傾斜走行を行って、下向押圧力を発生することができる。
【0069】
少なくとも1つ、好ましくは一対の保全ローラ(高さ方向に離間する)19d, 19d', 19d"を把持具台車13毎に薄膜側の案内面7dの上面と下面とに進退自在に接触させて、ばね力保持部又は弾力保持部23の弾力により、揺動レバー25の一端に少なくとも単一の弾力を予め加えて、走行面又は摺動面7dに対し、保全ローラ19d, 19d', 19d"を接触させ保持することにより、本発明の実施の形態に使用する把持具台車13の移動安定化を実現することができる。保全ローラ19d, 19d', 19d"を支持する把持具本体又は把持具台車13に対し、保全ローラ19d, 19d', 19d"の位置を変更して、取り付けることができる。また、横方向力のみならず、把持具の走行方向又は逆走行方向に弾力方向の一部を変更して、弾力保全ローラ19, 19d', 19d"を案内装置20に作用させることもできる。
【0070】
案内レール7は、ローラ幅より十分に大きい走行面高さを通常有し、好適に設けられる少なくとも両保全ローラ19d, 19d', 19d"の中、第1の保全ローラ19d, 19d'は、レール上面7a付近の把持具台車13に取り付けられ、第2の保全ローラ19d, 19d"は、下レール(走行)面7b付近の把持具台車13に取り付けられ、保持される。
【0071】
図4に示す実施の形態の保全ローラ19bを移動可能に垂下し、支持し及び軸支して、走行レール面、即ち走行レール底面7bとの間に形成される間隙21を保全ローラ19bにより橋渡し、移動する場合もある。また、保全ローラ19bの位置を固定して連結し又は垂下して、外力を回避し又は受け止めることができる。
【0072】
図示の実施の形態では、揺動レバー25は、把持具台車13に対し揺動軸27の周りに一定角度範囲で揺動可能に軸支され、保全ローラ19dは、揺動レバー25に回転可能に取り付けられる。保全ローラ19dの回転軸29は、揺動軸27、案内レール7及び薄膜側の案内レール面7dに対し平行に配置される。回転軸29は、走行面7c上で転動する剛性のある走行ローラ19c, 19c', 19c"に対しても平行に配置される。
【0073】
実施の形態では、揺動レバー25は、押圧力が作用する保全ローラ19d(又は保全摺動体19d)の経路を案内する案内装置20を構成する。
【0074】
案内レール7の転動面又は摺動面7dに対し揺動軸27と回転軸29を平行に配置すると、保全ローラ19dの円筒状走行面は、転動面又は摺動面7dに対し有効に接触する。保全ローラ19dの走行面が円錐状に形成されるとき、揺動軸27と回転軸29は、保全ローラ19dの円錐状走行面の中心軸に平行に配置される。
【0075】
図示の実施の形態では、片持式の揺動レバー25は、揺動軸27に軸着され、中央保持位置28に軸着される保全ローラ19dは、回転自在に保持する回転軸29を超えてレバー端部25aが突出し、圧縮ばね装置又は通常弾力保持部23としてのばね装置23aは、レバー端部25aの当接部30に接触し、ばね装置23aは、把持具側の停止片15cに支持される。
図5に示すばね装置23aのばね23'は、ばね保持部又はばね収容部から部分的に突出するので、全体の図示を省略する。好適には予め選択又は設定される弾性力を加えると、揺動レバー25は、てこ作用により、薄膜側の走行面7dに対して保全ローラ19dをばね力により押圧する。
【0076】
図6と
図7に示す実施の形態では、片持式揺動レバー25は、上レバー部25'と、上レバー部25'に対し平行な下レバー部25"とを備える二重レバー25として形成され、上レバー部25'と下レバー部25"は、略均等な間隔で互いに略平行に配置され、上方から見て、揺動軸27に対して平行な合同形に形成される。レバー自由端25aでは、両レバー部25', 25"は、ばね力保持部又は弾力保持部23が接触する連結片25bを介して互いに連結される。両レバー部25', 25"は、連結片25bに対向する共通の揺動軸27又は共通の揺動軸27を形成する軸体27'に接続される。揺動軸27の軸方向で互いに離間して配置される両レバー部25', 25"間に回転軸29が固定され保持されて、保全ローラ19dは、回転軸29に軸支される。
【0077】
揺動レバー25は、揺動軸27に軸着され、ばね23aは、片持式揺動レバー25の連結片25bを押圧し、保全ローラ19dは、案内レール7の走行面7dに接触する3点接触レバー連結構造のため、三角形式接触点が形成され、案内レール7の走行面7d上で安定な力学平衡が得られる。また、薄膜の反対側の走行ローラ19c, 19c', 19c"と薄膜側の保全ローラ19dも、平面図上三角形状に配置されるため、最適な力学的安定性が得られる。
【0078】
前記構造では、各軸受部の摩擦値は、押圧力の安定化に殆ど影響を及ぼさない作用が得られる。
【0079】
しかし、揺動レバー25の回転中心が中央に配置されて両腕レバーが形成され、保全ローラ19dが回転軸29に回転可能に軸支され、レバー自由端25aに隣接してばね力保持部23が設けられるので、揺動レバー25に作用する他の複数のレバー装置も使用できる点に留意すべきである。
【0080】
上下2個の保全ローラ19d, 19d', 19d"は、走行面7dの上面と下面に接触して配置され、ばね装置23aは、走行面又は摺動面7dに対し保全ローラ19d, 19d', 19d"を好適に押圧するので、保全ローラ19dは、案内レール7方向に互いに離間してかつ前後に連続して配置され、例えば一方の保全ローラ19dをやや上側に配置し、他方の保全ローラ19dをやや下側に配置して、上下2個の好適にばね付勢される保全ローラ19dを案内レール7に対し押圧可能に保持するため、裏側で固く軸支される両走行ローラ19cの略中央で走行レール7に保全ローラ19d, 19d', 19d"を接触させる
図5の実施の形態とは異なり、反対側に設けられる剛性のある走行ローラ19c, 19c', 19c"にほぼ対向して保全ローラ19d, 19d', 19d"の各々を案内レール7に接触させてもよい。
【0081】
また、保全ローラ19dの他の軸受部を設けてもよい。例えば、案内レール7に対し少なくとも1移動成分として横断方向、特に垂直方向に、一定距離、案内レール7に対し接近又は離間して移動する保全ローラ19d用の案内装置20を揺動レバー25の代わりに設けて、案内レール7方向に押圧するばね力保持部23又はばね力保持部となるばね装置を作用させて、保全ローラ19dを移動できる。
【0082】
押圧力、特にばね力を付与する保全ローラ19dを変位調節する線形案内装置20に代えて、傾斜可能な軸上で案内レール7方向に保全ローラ19dを移動し、少なくともある距離だけ(押圧力を加えて)案内レール7に対し分離かつ接近させて移動する装置を使用してもよい。
【0083】
ばね装置以外に、ばね長に平行に組み込み又は少なくともばね長に平行に減衰作用のある減衰装置33を追加して、保全ローラの振動を適度に減衰することが好適である。
図5に示す実施の形態では、例えば、ばね力保持部又は弾力保持部23形態のばね装置23aと共に減衰装置33を実現できる。減衰装置33は、ばね力保持部又は弾力保持装置23の一部を構成する。
【0084】
搬送チェーン装置11又はチェーン分節11aは、各把持具台車13に強固に連結されるため、弾力保持部23を回避して搬送チェーン装置11を移動できないため、把持具台車13の停止片15cのみではなく、チェーン11又はチェーン分節11aを介して間接的に把持具15に、ばね接続部、ばね力保持部又は弾力保持部23を連結し支持することができる。
【0085】
ばね装置23a形態でのばね力保持部又は弾力保持部23に代えて、適切な他型式の全ばねを基本的に好適に使用できる。例えば、揺動レバー25用ばね材として、板ばねを採用できる。揺動レバー25自体を弾性部材として構成してもよい。この点では、ばね材に特に制限はない。
【0086】
単一又は別の保全ローラ19dに代えて、例えば、揺動レバー25に強固に固定され、対応する薄膜側の走行面又は摺動面7dに平行に取り付けられる保全摺動体19dも採用できる。また、回転軸29又は傾斜軸を用いて、完全に平坦な摺動体を揺動レバー25に取り付けて、案内レール7の走行面又は摺動面7dに接触可能にかつ回転軸29又は傾斜軸周りに平坦な摺動体を適切な角度で回転可能に配置できよう。
【0087】
把持具又は把持具台車(把持具本体ともいう)13は、把持具台車13の移動方向、即ち案内レール7の長手方向LRと、案内レール7の長手方向LRに対し垂直方向又は横方向QR(薄膜側の走行面7d又は薄膜裏側の走行面7cに対し垂直方向)とを有する。長手方向LRは、前側(案内レール7に沿う把持具台車13の移動方向)13aと、前側13aとは逆の後側13bとの間を通過する(伸びる)のに対し、横方向QRは、長手方向LRの垂直方向で、把持側13c(把持具15が薄膜縁を適切に把持しかつ張設する薄膜側)と、延伸すべき薄膜材料MBに対向する案内レール側13dとの間に通過する(伸びる)(
図5)。必須ではないが、把持具台車13の上面13e及び/又は底面13fの各々又は両方に両又は複数の保全ローラ19dを配置することが好適である。
【0088】
図8は、
図2とは異なる2個の案内レール部7', 7"間に垂直に離間する好適な案内レール間隔41を形成し又は配置する二軌道式案内レール装置を示す。2案内レール部7', 7"は、共通又は別個の支持装置9を介して保持される。2個の案内レール部7', 7"は、案内レール間隔41を挟んで上下に配置される少なくとも垂直構成部又は垂直舌片42を備える。
【0089】
例えば、二軌道式案内レール7に沿って移動する搬送チェーン装置11を
図9について説明する。
【0090】
図9に示す二軌道式案内レール7の構造と動作は、基本的には、
図3に示す実施の形態と同様である。
図3の実施の形態では、上支持ローラ19aは、単一案内レール7のレール上面7aに上方から係合され、薄膜裏側の複数の上後走行ローラ19cは、薄膜裏側の単一案内レール7の走行面7cに上方から係合され、保全ローラ19bは、レール底面7bに下方から係合され、薄膜裏側の複数の下後走行ローラ19cは、単一案内レール7の走行面7cに下方から係合される。これに対し、
図9の実施の形態では、保全ローラ19aは、レール上面7aに上方から係合されず、二軌道式案内レール7間に形成される案内レール間隔41を通り下方からレール底面7bに係合され、薄膜裏側で転動する下支持ローラ19bは、単一案内レール7に下方から係合されず、案内レール間隔41を通り下案内レール7"のレール上面7aに上方から係合される点で
図3の実施の形態とは質本的に相違する。
【0091】
図9に示す二軌道式案内レール7の動作は、基本的には、
図3の実施の形態に類似するが、下案内レール7"に荷重レール面又はレール上面7aを形成し、レール底面7bに代えて、上案内レール7'により把持具本体又は把持具台車13の上昇を阻止する機能を行う点で作用が交換される。保全ローラ19aと対向レール面7bとの間に
図4の間隙21を設けることができる。
図9の変形実施の形態でも、複数のローラ19a, 19b, 19c及び/又は19dの若干数又は複数を複数の摺動体としても形成できる。
【0092】
図9の変形実施の形態では、少なくとも両保全ローラ19d又は保全摺動体19dを対応する走行面若しくは摺動面7d又は上案内レール7'に接触させ、場合により、下案内レール7"に当接させ、これらを相互に動作させることもできる。
【0093】
押圧力が加えられる保全ローラ19d, 19d', 19d"又は保全摺動体19dに対する案内装置20を備える把持具台車13の前記構造を補足して、前記関連構成部品を把持具台車13に固定し又は固定せずに、前記関連構成部品、特に保全ローラ19d, 19d', 19d"又は保全摺動体19d形態の複数の構成部品を備える案内装置20を把持具台車13に直接固定せずに、間接的に固定することができる。間接的固定構造では、搬送チェーン装置11のピン11c(搬送チェーン装置11のチェーン11'の2個のチェーン分節11
1, 11
2を互いに連結する)を介して、保全ローラ19d, 19d', 19d"又は少なくとも1つの保安摺動体19dを間接的に把持具台車13に保持できる。把持具台車13の固定領域に固定的に連結されるピン11cは、好適にねじ連結される。ピン11cは、把持具台車13の対応する開口にのみ装着されて軸支されるが、ねじ連結しなくてもよい。把持具台車13構造の一部分としてピン11cを構成してもよい。把持具台車13は、ピン11cにより搬送チェーン装置11に連結される。ピン11cによる取付構造を、
図10と
図11に示す。
【0094】
案内装置20を構成する揺動レバー又は揺動レバー装置25の回転軸又は揺動軸27としてピン11cを利用できる。先の実施の形態で説明した弾力保持部23の停止片15cを隣接する第2のピン11cに設ければ、同一の把持具又は同一の把持具台車13に間接的に設けることになる。チェーン11'への支持構造は、前記の通りである。
【0095】
保全ローラ19d, 19d', 19d"又は少なくとも1つの保安摺動体19dを、把持具台車13の走行方向中央に配置せずに、複数の把持具台車13間に配置することができる。この場合、単一の把持ピン11cを揺動軸27に用い、停止片15cとして隣接する把持具側のピン11cが用いられる。
【0096】
図12は、コ字状断面を有する二重揺動形の揺動レバー25を示す。二重揺動レバー25は、図示しない揺動軸27により、チェーン11'と把持具台車13とに対し回転可能に軸支される。ピン11cは、二重揺動レバー25の揺動軸27nの中心孔を貫通する。
【0097】
図12の変形実施の形態では、把持具台車13にチェーン11'を固定して連結する構造を特に好都合に実現できる。
【0098】
案内レール装置7方向に離間して取り付けられる一対の走行ローラ19c, 19c'及び/又は一対の摺動体19cは、レール底面7bよりレール上面7a付近の位置で把持具台車13に取り付けることが好適である。逆に、案内レール装置7方向に離間して取り付けられる一対の走行ローラ19c, 19c"及び/又は一対の摺動体19cは、レール底面7b付近の位置で、把持具台車13に取り付けられる。保全ローラ19d, 19d', 19d"又は保全摺動体19dは、一対及び/又は他対の走行ローラ19c, 19c', 19c"及び/又は摺動体19cの間かつこれらの反対側の案内レール装置7の薄膜側で、把持具台車13に設けられる。少なくとも1つの保全ローラ19d, 19d', 19d"又は少なくとも1つの保全摺動体19dには、案内装置20を介して、薄膜側の走行面及び/又は摺動面7dに対し調節可能な押圧力が付加される。
【0099】
図13と
図14に示すように、少なくとも1つの保全ローラ19d, 19d', 19d"を薄膜側に配置し、少なくとも1つの保全ローラ19d, 19d', 19d"を薄膜材料の裏側に配置してもよい。少なくとも2個の保全ローラ19d, 19d', 19d"を異なる高さで互いに離間して配置できる。他方の保全ローラ19d, 19d"よりも、案内レール装置7の案内レール7のレール上面7a近くに一方の保全ローラ19d, 19d'を配置し、案内レール7のレール上面7aに対向して配置されるレール底面7bの近くに他方の保全ローラ19d, 19d"を配置できる。
図13に示す実施の形態では、一方の保全ローラ19d, 19d'は、案内レール7のレール上面7a付近の領域で案内レール7の薄膜側に配置される。逆に、他方の保全ローラ19d, 19d"は、案内レール7のレール底面7b付近で、案内レール7の薄膜の裏側に配置される。これらを逆に配置してもよい。薄膜材料MBの高さ付近に配置される保全ローラ19d, 19d', 19d"を案内レール7の薄膜側に配置することが好ましい。
【0100】
複数の走行ローラ19c, 19c', 19c"又は複数の摺動体19cは、案内レール7の薄膜側と薄膜の反対側にも配置される。各走行ローラ19c, 19c', 19c"又は走行ローラ19c, 19c', 19c"対又は摺動体19c対は、案内レール7の反対側の各保全ローラ19d, 19d', 19d"に対し、ほぼ同一の高さ(±20%未満の高低差)で配置される。把持具台車13の長手方向LRにこれらを離間して取り付けることができる。走行ローラ19c, 19c', 19c"と、対応する保全ローラ19d, 19d', 19d"又は保全摺動体19dとの間に案内レール7が設けられる。
図13の実施の形態では、走行ローラ19c, 19c'又は走行ローラ19c, 19c'対若しくは摺動体19c対は、案内レール7のレール上面7aに隣接しかつ案内レール7の薄膜の反対側に配置される。逆に、走行ローラ19c, 19c"又は走行ローラ19c, 19c"対若しくは摺動体19c対は、案内レール7のレール底面7b付近の案内レール7の薄膜側に配置される。これらを逆に配置しても良い。薄膜材料MBの高さ付近に配置される走行ローラ19c, 19c'又は走行ローラ19c, 19c'対若しくは摺動体19c対を案内レール7に対し薄膜の反対側に配置することが好ましい。
【0101】
基本的に、案内レール7の薄膜側又は薄膜の反対側に全保全ローラ19d, 19d', 19d"を配置でき、逆に、案内レール7の裏側に全走行ローラ19c, 19c', 19c"又は全摺動体19cを配置することもできる。案内レール7に対し薄膜の反対側又は案内レール7の薄膜側にこれらを配置できよう。
【0102】
把持具台車13は、把持具本体13の上部と下部とから突出して、案内レール装置7を包囲して形成される上部領域と下部領域とを備える。上案内ローラ19c, 19c'を上部領域に配置し、下案内ローラ19c, 19c"を下部領域に配置することが好適である。保全ローラ19d, 19d', 19d"の一方を上部領域に配置し、他方を下方領域に配置することが好適である。
【0103】
本発明は、前記実施の形態に限定されない。本発明の前記及び/又は図示の全特徴を互いに任意に組み合わせることができる。