(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ホスホリパーゼを用いた発酵乳製品及びその調製物
(51)【国際特許分類】
A23C 9/12 20060101AFI20240315BHJP
A23C 9/123 20060101ALI20240315BHJP
A23C 9/127 20060101ALI20240315BHJP
A23C 11/10 20210101ALI20240315BHJP
A23L 11/60 20210101ALI20240315BHJP
A23L 11/65 20210101ALI20240315BHJP
A23C 19/032 20060101ALI20240315BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20240315BHJP
【FI】
A23C9/12
A23C9/123
A23C9/127
A23C11/10
A23C19/032
A23L11/00 Z
(21)【出願番号】P 2020538818
(86)(22)【出願日】2019-01-15
(86)【国際出願番号】 EP2019050874
(87)【国際公開番号】W WO2019138121
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2022-01-06
(32)【優先日】2018-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503260310
【氏名又は名称】セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー ディ テッコ
(72)【発明者】
【氏名】ワン メイ ロウ
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン ロウステル
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-517418(JP,A)
【文献】特表2006-524495(JP,A)
【文献】特開2011-019423(JP,A)
【文献】特開昭57-189638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 1/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵乳製品の粘度を高めるためのホスホリパーゼAの使用であって、下記工程:
a)少なくとも1つの乳酸菌株を含むスターターカルチャーを、少なくとも1.5%(w/w)の脂肪含有量により特徴づけられる乳ベースに添加する工程、
b)標的pHに達するまでの期間、前記乳ベースを発酵させる工程、ここで当該標的pHが5.0以下である、及び
c)発酵期間の開始時に前記乳ベースに少なくとも1つのホスホリパーゼAを添加する工程、を含む使用。
【請求項2】
前記ホスホリパーゼAがホスホリパーゼA1(EC3.1.1.32)である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ホスホリパーゼAがホスホリパーゼA2(EC 3.1.1.4)である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記標的pHが4.6以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記乳ベースが、少なくとも2.0%(w/w)の脂肪含有量により特徴づけられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記乳酸菌が、Lactobacillus、Streptococcus、Lactococcus及びLeuconostoc属の細菌から成る群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記スターターカルチャーが、少なくとも1つのLactobacillus delbrueckii 亜種bulgaricus株及び少なくとも1つのStreptococcus thermophilus株を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
発酵期間の前、開始で又はその間、キモシン(EC 3.4.23.4)を乳ベースに添加することをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記発酵乳製品が、クワルク(quark)、クリームチーズ、フロマージュフレ、サワーミルク、発酵乳、ケフィア、ラッシー、アイラン、ドゥーグ、ヤクルト(登録商標)、ダヒ及び大豆ヨーグルトから成る群から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記乳ベースが、150バール以下で均質化される、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の使用から製造される発酵乳製品。
【請求項12】
前記発酵乳製品が、ホスホリパーゼを添加されていない発酵乳製品に比較して、粘度が高められていることを特徴とする、請求項11に記載の発酵乳製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、発酵乳製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳製品、例えば発酵乳製品は、当技術分野では知られている。テクスチャーは、発酵乳製品にとって非常に重要な品質パラメーターである。多くの消費者は、良好な口当たり及びジェルの固さを有する滑らかなコンシステンシーを所望している。
【0003】
タンパク質、典型的には、脱脂粉乳又はホエーベースのタンパク質の添加は、発酵乳製品のデクスチャーを改善するための標準の手順である。増粘剤、又は加工デンプン、コーンスターチ、ペクチン、ゼラチン又は寒天のような他のテキスチャライジング剤がしばしば使用される。しかしながら、タンパク質又はテキスチャライジング剤の添加は費用がかかるか可能性がある。従って、そのような剤の添加が低減されるか、又は排除され得る発酵乳製品の製造方法を提供することは有益である。これは、「クリーンラベル」の付いた、すなわち安定剤又はテキスチャライジング剤を添加していない発酵乳製品に対する市場の需要が高まっているために、望ましいことである。
【0004】
均質化は、発酵乳製品に良好なテキスチャーを与えるためのもう1つの一般的な手順である。それは、乳脂肪をより小さなサイズに分解するために、発酵の前に行われる。この工程で創造されたより小さな脂肪球は、容易に溶液に懸濁できるために、乳とは別の層として存在しない。均質化は、例えば、高圧で乳を細かなフィルター又は制限バブルに通すことにより達成され得、それにより、低められた粒子サイズを有するエマルジョンを形成できる。乳製品業界で通常適用される均質化圧力は、製品に依存して、約150~250バールである。しかしながら、均質化は、多大なエネルギー消費を必要とするので、費用がかかる。従って、均質化の必要性が低減され、それにより、製造業者の運用コストが低下する方法を提供することが有益である。
【0005】
この問題に対処する試みが行われてきた。それらの多くは、より良好なテキスチャーをもたらすことができる乳酸菌の新規株を提供することに関する。例えば、国際公開第2007/095958A1(Chr. Hansen)は、発酵乳製品のテキスチャーを改善するために、細胞外多糖類を生成する特定のスターターカルチャーの使用を記載している。発酵乳製品の感覚特性、特に製品の口当たり及びマウスコーティングを改善することが当業界において常に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、部分的に、ホスホリパーゼが発酵乳製品の感覚的性質に陽性効果を有するという驚くべき発見に基づかれている。調製工程へのホスホリパーゼの使用により、発酵乳製品におけるタンパク質、テキスチャライジング剤又は安定剤の使用を削減又は排除さえすることが可能である。また、製造工程において必要とされる均質化コストを低減することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、発酵乳製品を調製するための工程へのホスホリパーゼの新規使用を提供する。ヨーグルトなどの発酵乳製品は、脂肪及びタンパク質含有量に関して標準化され、均質化され、そして熱処理された乳ベースから製造され得る。その後、スターターカルチャーにより接種され、そして発酵される。
【0008】
ホスホリパーゼは乳酸菌による発酵工程に積極的に参加し、最終発酵製品の粘度の上昇をもたらすことができることが観察されている。従って本発明は、ホスホリパーゼ含有乳ベースが発酵する発酵乳製品の製造方法を提供する。
【0009】
本出願は、スターターカルチャーを乳ベースに添加し、少なくとも1つのホスホリアーゼが乳ベースに添加されている、標的pHに達するまでの期間、乳ベースを発酵させることを含む工程を提供する。ホスホリパーゼは、発酵の前、開始で又はその間に添加され得る。好ましくは、ホスホリパーゼは、発酵の前又は開始で添加される。標的pHに達した後、発酵乳製品が入手できる。
【0010】
本出願は、下記工程:
a)少なくとも1つの乳酸菌株を含むスターターカルチャーを、乳ベースに添加する工程、
b)標的pHに達するまでの期間、前記乳ベースを発酵させる工程、及び
c)発酵期間の前、開始で、又はその間、前記乳ベースに少なくとも1つのホスホリパーゼを添加する工程を含む、発酵乳製品の製造方法を提供する。
【0011】
本出願に使用され得るホスホリパーゼは、以下を含む:ホスホリパーゼA1 (EC 3.1.1.32)及び ホスホリパーゼA2 (EC 3.1.1.4)、及びホスホリパーゼ B (EC 3.1.1.5)、ホスホリパーゼC (EC 3.1.4.3)及びホスホリパーゼD (EC 3.1.4.4)。
【0012】
本出願に含まれるのは、本明細書に記載される方法により得られる発酵乳製品である。別の側面によれば、本発明はホスホリパーゼを含む発酵乳製品を提供する。
【0013】
別の側面によれば、本発明は、スターターカルチャー、及び発酵乳製品を製造するのに有用な少なくとも1つのホスホリパーゼを含むキットを提供する。
【0014】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面と共に以下の説明を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、剪断速度の関数として剪断応力を示す、実施例1において調製された発酵乳製品のヒステリシス曲線を示す。
【0016】
【
図2】
図2は、実施例2において調製された発酵乳製品における応答変数(60 1/sでの粘度)に対する因子効果を示す。
【0017】
【
図3】
図3は、実施例2において調製された発酵乳製品における応答変数(300 1/sでの粘度)に対する因子効果を示す。
【0018】
【
図4】
図4は、剪断速度の関数として剪断応力を示す、実施例3において調製された発酵乳製品のヒステリシス曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、選択された微生物を用いての乳の発酵により生成される発酵乳製品に関する。発酵乳は、発酵に使用される特定のスター-ターカルチャーにより特徴づけられ得る。例えば、Streptococcus thermophilus 及び Lactobacillus delbrueckii 亜種bulgaricusの共生培養物がヨーグルトのスターターカルチャーとして使用され、そしてLactobacillus acidophilusがアシドフィルスミルクの製造に使用される。他の中温乳酸菌は、クォーク又はフロマージュフライを製造するために使用される。
【0020】
本出願に従って製品を調製するために、最初に、乳ベースが出発材料として提供される。「乳ベース」とは、スターターカルチャーの成長及び発酵のための培地として使用され得る、乳又は乳成分に基づく組成物を指すために、本出願において広く使用される。「乳」とは一般的に、牛、羊、ヤギ、水牛又はラクダなどの哺乳類の搾乳によって得られる乳分泌物を指す。乳ベースは、任意の生及び/又は加工された乳材料から、及び再構成された粉乳から得られる。乳ベースはまた、植物ベース、すなわち植物材料、例えば豆乳からも調製され得る。
【0021】
有用な乳ベースは以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:タンパク質、例えば全脂乳又は低脂肪乳、脱脂乳、バターミルク、再構成粉乳、練乳、粉乳を含む任意の乳又は乳様製品の溶液/懸濁液。
【0022】
本発明の方法及び製品において、乳牛からの乳又は乳成分から調製された乳ベースが好ましい。
【0023】
乳ベースはまた、消費者のニーズに応じて、ラクトースを低めることもできる。ラクトース低減乳は、ラクターゼ酵素によるラクトースへの加水分解、又はナノ濾過、電気透析、イオン交換クロマトグラフィー及び遠心分離を含む、当業界において知られている任意の方法に従って製造され得る。
【0024】
低温殺菌
乳ベースは好ましくは、当業界において知られている方法に従って、発酵の前に低温殺菌される。「低温殺菌」とは、本明細書において使用される場合、微生物などの存在を低減又は排除するための乳ベースの処理を意味する。好ましくは、低温殺菌は、特定の温度を特定の時間、維持することにより達成される。特定の温度は通常、加熱により達成される。当業者は、特定の微生物を死滅又は不活性化するための温度及び期間を選択することができる。急速冷却工程が続いても良い。
【0025】
均質化
「均質化」とは、非混和性成分から均等な液体組成物を得るために混合物を均質化する工程を指す。均質化工程は、乳脂肪をより小さなサイズの粒子に分解するため、乳からもはやそれを分離することはできない。これは、小さなオリフィスを通して乳を高圧で強制することにより達成される。均質化は通常、低温殺菌の後又はそれと同時に乳業において適用される。以下の説明で明らかになるように、本発明は、均質化の必要性が低められる工程を提供する。従って、いくつかの実施形態によれば、乳ベースは、通常必要とされる低圧で均質化され、そして他の実施形態によれば、乳ベースは均質化されない。
【0026】
発酵
乳ベースを発酵するために、スターターカルチャーが添加される。用語「スターター」又は「スターターカルチャー-」とは、本明細書において使用される場合、乳ベースの酸性化に関与する1つ又は2以上の食品グレードの微生物、特に乳酸菌の培養物を指す。スターターカルチャーは、新鮮であり、凍結されるか、又は凍結乾燥され得る。スターターカルチャー及び使用される量を決定することは、通常の開業医の熟練の範囲内である。
【0027】
「発酵」は一般的に、微生物の使用による炭水化物のアルコール又は酸への変換を意味する。本発明においては、本発明の方法における発酵は、ラクトースの乳酸への変換を指す。
【0028】
スターターカルチャー
本発明によれば、スターターカルチャーは、乳酸菌の少なくとも1つの株を含む。乳酸菌は発酵食品の製造のために広く使用されており、そしてそれらの使用は当業界において良く知られている。本出願の文脈においては、用語「乳酸菌」又は「LAB」とは、炭水化物発酵の主要な代謝最終生成物として乳酸を生成する食品グレードの細菌を指すために使用される。それらの細菌は、一般的な代謝及び生理学的特性により関連づけられ、そして通常、グラム陽性、低GC、耐酸性、非胞子形成、非呼吸性、桿菌又は球菌である。発酵段階の間、それらの細菌によるラクトースの消費が乳酸の形成を引き起こし、pHが低下し、そしてタンパク質の凝固物の形成を導く。
【0029】
本発明のために有用なスターターカルチャーは、特定タイプの発酵乳製品に依存して、単一株カルチャー又はカルチャーブレンドを含む、乳酸菌の任意の従来のスターターカルチャーの菌株組成を有することができる。プロバイオテックス細菌Bifidobacterium sppを含む他の有用な細菌もまた、スターターカルチャーに加えて発酵に含まれ得る。
【0030】
1つの実施形態によれば、スターターカルチャーは、好熱性発酵乳製品を生成するための好熱性細菌を含む。用語「好熱性発酵乳製品」とは、好熱性スターターカルチャーの好熱性発酵により調製された発酵乳製品を指し、そして例としては、セットヨーグルト、攪拌ヨーグルト及び飲用ヨーグルト、例えばヤクルトなどの発酵乳製品を含む。産業的には、最も有用な好熱性細菌(「好熱菌」)は、Streptococcus spp.及び Lactobacillus spp.を含む。本明細書における用語「好熱性発酵」とは、約35℃以上、例えば約35℃~約45℃の温度での発酵を指す。「好熱菌」は一般的に、35℃以上の温度で最良に生育する微生物である。
【0031】
別の実施形態によれば、スターターカルチャーは、中温性発酵乳製品を生成するための中温性細菌を含む。用語「中温性発酵乳製品」とは、中温性スターターカルチャーの中温性発酵により調製された発酵乳製品を指し、そして例としては、バターミルク、サワーミルク、カルチャーミルク、スメタナ、サワークリーム、ケフィア、及びフレッシュチーズ、例えばクォーク、トバログ、クリームチーズなどの発酵乳製品を含む。有用な中温性細菌(「中温菌」)は、Lactococcus spp.及びLeuconostoc spp.を含む。本明細書における用語「中温性発酵」とは、約22℃~約37℃の温度での発酵を指す。用語「中温菌」とは一般的に、適度な温度(15℃~35℃)で最良に生育する微生物を指す。
【0032】
発酵乳製品を製造するのに有用な乳酸菌は、以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:Lactobacillus spp.、Bifidobacterium spp.、Streptococcus spp.、Lactococcus spp.、例えば Lactobacillus delbrueckii 亜種 bulgaricus、Streptococcus thermophilus、Lactobacillus lactis、Bifidobacterium animalis、Lactococcus lactis、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus rhamnosus、Bifidobacterium breve 及び Leuconostoc spp.の属に属する細菌。スターターカルチャーにおける菌株の特定の選択は、製造される特定タイプの発酵乳製品に依存するであろう。
【0033】
好ましい実施形態によれば、スターターカルチャーは、少なくとも1つのLactobacillus delbrueckii 亜種bulgaricus株及び少なくとも1つのStreptococcus thermophilus株を含む。
【0034】
好ましい実施形態によれば、乳酸菌は、Lactobacillus、Streptococcus、Lactococcus及びLeuconostoc属の細菌から成る群から選択される。
【0035】
本発明の特定の実施形態によれば、発酵乳製品は、Streptococcus thermophilus 及びLactobacillus delbrueckii亜種bulgaricusから成る群から選択された1つ又は2以上の乳酸菌株を用いて得られた製品である。
【0036】
発酵の工程
スターターカルチャーを添加し、そして乳ベースを適切な条件にゆだねた後、発酵工程が開始し、そして一定時間、維持する。当業者は、温度、酵素、炭水化物の添加、微生物の量及び特性、及びそれが要する工程の時間などの適切な工程の条件をいかにして選択するかを知っている。この工程は3、4、5、6時間以上かかる場合がある。
【0037】
それらの条件は、特定のスターターカルチャー株に適している温度の設定を含む。例えば、スターターカルチャーが中温性乳酸菌を含む場合、温度は約30℃に設定され得、そしてカルチャーが好熱性乳酸菌株を含む場合、温度は約35℃~50℃、例えば約40℃~45℃の範囲で維持される。発酵温度の設定はまた、当業者により容易に決定される得る発酵に添加される酵素に依存する。本発明の特定の実施形態によれば、発酵温度は、35℃~45℃、好ましくは37℃~43℃、及びより好ましくは、40℃~43℃である。
【0038】
発酵は、当業界において知られている任意の方法を用いて終了され得る。一般的に、工程中の種々のパラメーターに依存して、発酵は、スターターカルチャーの成長のために乳ベースを不適切にすることにより停止され得る。例えば、標的pHに達する場合、発酵乳製品の急速な冷却により、停止をおこなうことができる。発酵中に酸性化が起こり、それがクラスター及びカゼインの鎖から成る三次元ネットワークの形成を導くことは知られている。用語「標的pH」とは、発酵工程が終了するpHを意味する。標的pHは、得られる発酵乳製品に依存し、そして当業者により容易に決定され得る。
【0039】
本発明の特定の実施形態によれば、発酵は、4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.4、4.3、4.2、4.1、4.0、3.9、3.8、又は3.7のpHに達するなどを含む、5.0のpHに達するまで行われる。好ましくは、発酵は、4.0~5.0の間、及びより好ましくは、4.0~4.6の間の標的pHに達するまで、行われる。好ましい実施形態によれば、発酵は、4.6未満の標的pHに達するまで、行われる。
【0040】
ホスホリパーゼ
乳はリン脂質を含む。リン脂質は、その非極性の親油性質により乳脂肪と関連している。リン脂質、例えばレシチン又はホスファチジルコリンは、外側(sn-1)及び中央(sn-1)の位置で2つの脂肪酸によりエステル化され、及び3番目の位置でリン酸によりエステル化されたグリセロールから成る。次に、リン酸が、アミノ-アルコールにエステル化され得る。リン酸質は、ホスホリパーゼによりリゾリン脂質を加水分解され、次に、リゾホスホリパーゼにより加水分解され得る。
【0041】
ホスホリパーゼは、一般的に生物において、及び特にリン脂質の代謝及び生合成において重要な役割を果たす基本的な酵素である。酵素は、リン脂質の加水分解に関与し、いくつかのタイプのホスホリパーゼ活性が区別され得る。ホスホリパーゼAはさらに、ホスホリパーゼA1 (EC 3.1.1.32) 又は A2 (EC 3.1.1.4.)として分類され、それらはリゾリン脂質を形成するために、1つの脂肪アシル基(それぞれ、sn-1及びsn-2位置)を加水分解する。ホスホリパーゼB(EC 3.1.1.5)は、リゾリン脂質における残る脂肪アシル基を加水分解する。他のホスホリパーゼは、ホスホリパーゼC (EC 3.1.4.3) 及びホスホリパーゼD (EC 3.1.4.4)である。本発明の方法に使用されるホスホリパーゼは、任意のホスホリパーゼ、又はホスホリパーゼの任意の組合せであり得る。
【0042】
好ましい実施形態によれば、本出願のために有用なホスホリパーゼは、ホスホリパーゼAである。より好ましくは、ホスホリパーゼは、ホスホリパーゼ A1 (EC 3.1.1.32) 及び/又はホスホリパーゼA2 (EC 3.1.1.4)である。他の実施形態によれば、ホスホリパーゼは、ホスホリパーゼB(EC 3.1.1.5) 又は C (EC 3.1.4.3)である。
【0043】
ホスホリパーゼA1は、標準酵素EC分類によれば、EC3.1.1.32として定義される。
公式名称:ホスホリパーゼA1。
触媒される反応:ホスファチジルコリン+水<=> 2-アシルグリセロホスホコリン+脂肪酸アニオン
コメント:EC3.1.1.4よりもより広い特異性を有する。
【0044】
ホスホリパーゼA2は、標準酵素EC分類によればE.C3.1.1.4として定義される。
公式名称:ホスホリパーゼA2
別の名称:ホスファチジルコリン2-アシルヒドロラーゼ。レシチナーゼa;ホスファチダーゼ;又はホスファチドリパーゼ。
触媒される反応:ホスファチジルコリン+水<=> i-アシルグリセロホスホコリン+脂肪酸アニオン
コメント:ホスファチジルエタノールアミン、コリンプラズマローゲン及びホスファチドに対しても作用し、2位に結合される脂肪酸を除去する。
【0045】
ホスホリパーゼは、いかなる起源のものでも良く、例えば動物起源(例えば、哺乳類)、例えば膵臓(例えば、ウシ又はブタの膵臓)、又はヘビ毒又は蜂毒に由来することができる。あるいは、ホスホリパーゼは、微生物起源、例えば糸状菌、酵母又は細菌、例えばAspergillus属又は種、例えばA. niger;Dictyostelium、例えば D. discoideum; Mucor、例えば M. javanicus、 M. mucedo、 M. subtilissimus; Neurospora、例えば N. crassa; Rhizomucor、例えば R. pusillus; Rhizopus、例えば R. arrhizus、R. japonicus、 R. stolonifer; Sclerotinia、例えば S. libertiana; Trichophyton、例えば T. rubrum; Whetzelinia、例えば W. sclerotiorum; Bacillus、例えば B. megaterium、B. subtilis; Citrobacter、例えば C. freundii; Enterobacter、例えば E. aerogenes、E. cloacae Edwardsiella、E. tarda; Erwinia、例えば E. herbicola; Escherichia、例えば E. coli; Klebsiella、例えば K. pneumoniae; Proteus、例えば P. vulgaris; Providencia、例えば P. stuartii; Salmonella、例えば S. typhimurium; Serratia、例えば S. liquefasciens、 S. marcescens; Shigella、例えば S. flexneri; Streptomyces、例えば S. violeceoruber; Yersinia、例えば Y. enterocoliticaに由来することができる。ホスホリパーゼは、真菌、例えばクラスPyrenomycetes, 例えばFusarium属、例えばF. culmorum、F. heterosporum、 F. solani、 F. venenatum又はF. oxysporumの菌株由来であり得る。ホスホリパーゼはまた、Aspergillus属内の糸状菌株、例えばAspergillus awamori、 Aspergillus foetidus、Aspergillus japonicus、Aspergillus niger又はAspergillus oryzaeの菌株由来でもあり得る。好ましいホスホリパーゼは、Fusariumの菌株、特にF. venenatum又はF. oxysporum、例えば国際公開第98/26057号に記載され、特に国際公開第98/26057号の請求項36に記載される菌株DSM2672に由来する。さらなる実施形態によれば、ホスホリパーゼは、国際公開第00/32758号(Novozymes A/S、Denmark) に開示されるようなホスホリパーゼである。別の好ましいホスホリパーゼAは、StreptmycesからのホスホリパーゼA2、例えばS.violaceuruberからのPLA2である。
【0046】
ホスホリパーゼは市販されている。Aspergillus oryzaeにおいて発現されたThermomyces lanuginosus/Fusarium oxysporumからのホスホリパーゼA1は、商標Lecitase(登録商標)Ultra (Novozymes A/S, Denmark)として入手できる。別の好ましいホスホリパーゼA1は、商標YieldMAX(登録商標)又は YieldMAX(登録商標)PL (Chr. Hansen A/S, Denmark)として入手でき、それはAspergillus oryzae株の液中発酵から生成される。
【0047】
特に好ましいホスホリパーゼは、Fusarium sppからのホスホリパーゼA1である。
【0048】
ホスホリパーゼA2は、異なる商品名で見つけることができる。例えば、植物油の脱ガム用に開発された動物由来(ブタ膵臓)からのホスホリパーゼA2は、Lecitase(登録商標)10L (Novozymes A/S, Denmark)として入手できる。Maxapal(登録商標) A2 (DSM Food Specialties, The Netherlands)は、卵及び卵黄の乳化特性を改善するために開発されたAspergilllus nigerの選択された菌株の微生物発酵により製造される。CakeZyme(登録商標) 及びBakeZyme(登録商標)はまた、DSM Food Specialties (The Netherlands)により市販されている微生物ホスホリパーゼA2である。さらなる例として、微生物ホスホリパーゼA2A2 Rohalase(登録商標)MPL (AB Enzymes, Germany)及びLysoMax(登録商標) (Genencor, USA)が含まれる。
【0049】
好ましい実施形態によれば、ホスホリパーゼは、YieldMAX登録商標) 又は YieldMAX登録商標)PL (Chr. Hansen A/S, Denmark)である。他の食品グレードのホスホリパーゼは、当業者に良く知られており、そして例えばCasado, Victor, et al. "Phospholipases in food industry: a review." Lipases and Phospholipases: Methods and Protocols (2012): 495-523に見出され得る。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法に使用されるホスホリパーゼは、本明細書で言及される供給源のいずれかに由来するか、又は入手できる。用語「由来する」とは、この文脈において、ホスホリパーゼが、天然に存在する生物から単離された可能性があること、すなわち酵素のアミノ酸配列の同一性が天然酵素と同一であることを意味する。用語「由来する」とはまた、酵素が宿主生物において組換え的に生成された可能性があり、組換え生成された酵素は、天然酵素と同一の同一性を有するか、又は修飾されたアミノ酸配列を有し、例えば欠失され、挿入され、そして/又は置換される1又は2以上のアミノ酸を有し、すなわち天然アミノ酸配列の変異体及び/又はフラグメントである組換え的に生成された酵素であることを意味する。天然酵素の意味には、天然変異体が含まれる。さらに、用語「由来する」とは、例えばインビボでも又はインビトロでも、グリコシル化、リン酸化などにより修飾されている酵素も包含する。この文脈をおいて、用語「入手可能」とは、酵素が天然酵素と同一のアミノ酸配列を有することを意味する。この用語は、それが天然に存在する生物から単離された酵素、又は同じタイプの生物又は別の生物において組換え的に発現された酵素、又は例えばペプチド合成により合成的に生成された酵素を包含する。組換え的に生成された酵素に関して、用語「入手可能」及び「由来する」とは、酵素の同一性を指し、そしてそれが組換え的に生成された宿主生物の同一性を指すものではない。
【0051】
従って、ホスホリパーゼは、任意の適切な技法の使用により、微生物から得られる。例えば、ホスホリパーゼ酵素調製物は、適切な微生物の発酵、及び当業界において知られている方法による、得られた発酵ブイヨン又は微生物からのホスホリパーゼの続く単離により得られる。ホスホリパーゼはまた、組換えDNA技法の使用によっても得られる。そのような方法は通常、問題のホスホリパーゼをコードするDNA配列を含む組換えDNAベクターにより形質転換された宿主細胞の培養を含み、前記DNA配列は、適切な発現シグナルと機能的に連結されており、それは、酵素の発現を可能にし、そして培養物から酵素を回収する条件下で培養培地においてホスホリパーゼを発現することができる。DNA配列はまた、宿主細胞のゲノム中に組み込まれ得る。DNA配列は、ゲノム、cDNA又は合成起源、又はそれらの任意の組合せのものであり得、そして当業界において知られている方法に従って単離又は合成され得る。そのようなホスホリパーゼは精製され得る。用語「精製された」とは、本明細書において使用される場合、それが由来する生物からの成分を含まないホスホリパーゼ酵素をカバーする。用語「精製された」とはまた、それが得られる天然の生物からの成分を含まないホスホリパーゼ酵素もカバーし、これはまた、「本質的に純粋な」ホスホリパーゼとも呼ばれ、そして天然に存在し、そして1又は2以上のアミノ酸残基の欠失、置換又は挿入により、遺伝子修飾されていないホスホリパーゼに関連している可能性がある。精製は、例えば濾過、沈殿又はクロマトグラフィーにより行われ得る。
【0052】
本出願において使用されるホスホリパーゼは、乾燥粉末又は顆粒、非ダスティング顆粒、液体、安定化液体又は保護された酵素の形などの任意の適切な形で存在できる。顆粒は、米国特許弟4,106,991号及び第4,661,452号に開示されるようにして生成され得、そして任意には、当業者において知られている方法によりコーティングされ得る。液体酵素調製物は例えば、確立された方法に従って、安定剤、例えば糖、糖アルコール又は別のポリオール、乳酸又は別の有機酸を添加することにより安定化され得る。保護された酵素は、欧州特許第38,216号に開示される方法に従って調製されえる。
【0053】
ホスホリパーゼの活性は、脂肪酸の中和の間の水酸化ナトリウム消費の速度として決定され得る。そのような活性は、レシターゼ(ホスホリパーゼ)標準に対するレシターゼ単位(LEU)で表され得る。手順は当業界において知られている。例えば、ホスホリパーゼA1活性は、基質としてレシチンを用いて、ホスホリパーゼ標準に対して測定され得る。ホスホリパーゼA1は、レシチンのリゾ-レシチン及び遊離脂肪酸への加水分解を触媒する。遊離された脂肪酸は、標準条件(pH=8.0;40°±0.5)下で0.1Nの水酸化ナトリウムにより滴定される。1 LEUは、標準条件(pH=8.0;40°±0.5)下で、1 LEU/gの公称活性に希釈されたレシターゼ標準と同じ水酸化ナトリウム消費速度(μ当量/分)をもたらす酵素の量として定義される。この方法は、滴定実験を行うための自動化システム又は標準的な実験装置のいずれかを用いて実施され得る。
【0054】
ホスホリパーゼの添加
ホスホリパーゼは、発酵の前、開始で又はその間に乳ベースに添加され得る。「発酵の開始で」という表現は、乳ベースへのスターターカルチャーの添加の直前、同時に又は直後を意味する。ここで、用語「短時間」とは、30分未満を意味する。「発酵の間」という表現は、発酵の開始後から終了前での発酵の間の任意の時点を意味する。
【0055】
本発明の1つの実施形態によれば、ホスホリパーゼは、発酵工程の前に乳ベースに添加される。本発明の別の実施形態によれば、ホスホリパーゼは、発酵工程の開始で乳ベースに添加される。本発明の別の実施形態によれば、ホスホリパーゼは、発酵の間、発酵された乳に添加される。発酵工程は、冷却処理により停止され得る。
【0056】
乳ベースに添加されるホスホリパーゼの量は、ホスホリパーゼ活性、及び脂肪含有量などの乳ベースの組成などの多くのパレメーターに依存する。そのような量は、日常的な実験により決定され得る。
【0057】
ホスホリパーゼの処理を行うための適切な条件は、酵素反応を最適化するための当業界において知られている方法を用いて、当業者により決定され得る。当業者は、発酵乳製品に所望される特性を考慮して、所望する結果を達成するのに、pH、温度及びホスホリパーゼの量などのパラメーターをいかにして調整するかを知っている。本発明の方法に使用されるホスホリパーゼの量は、特定の処理条件下で存在するリン脂質に対する特定のホスホリパーゼの活性に依存することができる。例えば、ホスホリパーゼAが実施例に示されるように使用される場合、添加されるホスホリパーゼの量は、脂肪1g当たり0.1~50LEU、例えば脂肪1g当たり0.5~25、又は1~10LEUであり得る。
【0058】
発酵乳製品
用語「発酵乳製品」とは、関連する公的規制に従って一般的に定義される用語であり、そして基準は当業界において良く知られている。「発酵乳製品」という表現は、食品又は飼料製品の調製が、乳酸菌による乳ベースの発酵を含む、食品又は飼料製品を意味する。本明細書において使用されるような「発酵乳製品」とは、好熱性発酵乳製品(例えば、ヨーグルト)、及び中温性発酵乳製品(例えば、サワークリーム及びバターミルク、並びに発酵ホエー、クォーク及びフロマージュフライ)などの製品を含むが、但しそれらだけには限定されない。チーズ製品とは対照的に、発酵乳製品は一般的に、発酵の終了時でより低い標的pHを有する。
【0059】
より具体的には、本明細書に開示される方法は、ヨーグルト及び特にセットヨーグルトのような好熱性発酵乳製品、及びクォークのような中温性発酵乳を得るために適用され得る。
【0060】
本発明の1つの実施形態によれば、発酵乳製品は、ヨーグルト製品である。用語「ヨーグルト」とは、その通常の意味があり、そして一般的には、関連する公式の規制に従って定義され、そして標準はこの分野において良く知られている。ヨーグルト製品は、「攪拌型の製品」、「セットタイプの製品」又は「ドリンクタイプの製品」から成る群から選択され得る。
【0061】
「攪拌型の製品」は、発酵後、機械的処理を持続する発酵乳製品である。機械的処理は、典型的には、ゲルの攪拌、ポンピング、濾過又は均質化により、又はそれを他の成分と共に混合することにより得られるが、限定的ではない。「セットタイプの製品」は、スターターカルチャーにより接種された乳をベースにした製品であり、そしてパッケージ化され、そしてパッケージ内で発酵される。用語「ドリンクタイプの製品」とは、「飲料ヨーグルト」、「希釈飲料ヨーグルト」などの飲料を含み、これは、Lactobacillus種及びStreptococcus thermophilusの組合せによる発酵により製造された乳製品であり得る。
【0062】
好ましい実施形態によれば、発酵乳製品は、クォーク、クリームチーズ、フロマージュフレイ、ギリシャヨーグルト、大豆ヨーグルト、スカイ、ラブネ、バターミルク、サワークリーム、サワーミルク、培養乳、ケフィア、ラッシー、アラン、トワログ、ドゥー、スメタナ、ヤクルト及びダヒから成る群から選択される。より好ましくは、発酵乳製品は、サワーミルク、培養乳、ケフィア、ラッシー、アイラン、ドゥー、ヤクルト、又はダヒである。
【0063】
タンパク質含有量
本明細書に開示される方法により製造された発酵乳製品は、0.5重量%~10重量%のレベルでタンパク質を含むことができる。発酵乳製品はまた、1重量%~4.0重量%のタンパク質レベルの低タンパク質製品でもあり得る。他方では、発酵乳製品は、3.5重量%以上のタンパク質レベルの高タンパク質製品であり得る。
【0064】
本発明の特定の実施形態によれば、乳ベースは、0.5%未満、0.7%未満、0.9%未満、1.0%未満、1.3%未満、1.5%未満、2.0%未満、2.5%未満、3.0%未満、3.5%未満、 4.0%未満、4.5%未満、5.0%未満、5.5%未満、6.0%未満、6.5%未満、7.0%未満、7.5%未満、8.0%未満、8.5%未満、9.0%未満、9.5%未満、 10.0%未満、10.5%未満、11.0%未満、11.5%未満、12.0%未満、12.5%未満、13.0%未満、13.5%未満、14.0%未満、14.5%未満、または15.0%未満のタンパク質含有量(w/w)により特徴づけられる。
【0065】
脂肪含有量
本出願の発明者は、発酵乳製品のテキスチャーに対するホスホリパーゼの陽性の影響を発見した。乳ベースの脂肪レベルが高いほど影響が大きくなることが観察されており、脂肪レベルの高い発酵製品への使用に特に適している。
【0066】
本発明の特定の実施形態によれば、乳ベースは、少なくとも0.5%、例えば少なくとも0.6%、少なくとも0.7%、少なくとも0.8%、少なくとも0.9%、少なくとも1.0%、少なくとも1.1%、少なくとも1.3%、少なくとも1.5%、少なくとも2.0%、少なくとも2.5%、 少なくとも3.0%、少なくとも3.5%、少なくとも4.0%、少なくとも4.5%、少なくとも5.0%、少なくとも5.5%、少なくとも6.0%、少なくとも6.5%、7.0%以上、7.5%以上、8.0%以上、8.5%以上、9.0%以上、9.5%以上、10.0%以上、10.5%以上、11.0%以上、11.5%以上、 少なくとも12.0%、少なくとも12.5%、少なくとも13.0%、少なくとも13.5%、少なくとも14.0%、少なくとも14.5%、または少なくとも15.0%の脂肪含有量(w/w)により特徴づけられる。いくつかの実施形態によれば、脂肪含有量は、少なくとも16.0%、少なくとも17.0%、少なくとも18.0%、少なくとも19.0%、少なくとも20.0%、少なくとも21.0%、少なくとも22.0%、少なくとも23.0%、少なくとも24.0%、少なくとも25.0%、 少なくとも26.0%、少なくとも27.0%、少なくとも28.0%、少なくとも29.0%、少なくとも30.0%、少なくとも35.0%、少なくとも40.0%、少なくとも45.0%、少なくとも50.0%又はそれ以上である。乳ベース中の脂肪含有量の調整は、例えば乳ベースにクリームを添加することにより、当業者に知られている。
【0067】
好ましい実施形態によれば、乳ベースは、0.5%~10.0%(w/w)、好ましくは1.0%~9.0%、好ましくは3.0%~7.0%、好ましくは4.0%~6.0%、及びより好ましくは4.5%~5.5%の脂肪含量により特徴づけられる。脂肪含有量が高いほど、テクスチャーに対するホスホリパーゼの効果が高いことがわかっている。
【0068】
均質化
本発明の教示に従って、そのような製品に通常必要とされる均質化レベルが低減又は排除されている発酵乳製品を提供することが可能であり、それにより、製造業者の運用コストを低減する。従って、1つの実施形態によれば、そのような製品を調製するために使用される乳ベースは均質化されない。しかしながら、いくつの実施形態によれば、発酵乳製品のタイプに依存して、乳ベースは依然として均質化され得る。均質化レベルは好ましくは、250バール未満、及び240バール未満、220バール未満、200バール未満、190バール未満、180バール未満、170バール未満、160バール未満、150バール未満、140バール未満、130バール未満、 120バール未満、110バール未満、100バール未満、90バール未満、80バール未満、70バール未満、60バール未満、50バール未満である。本出願の文脈において、均質化が複数の段階で実行される場合、均質化レベルは、すべての段階で適用される全圧力を指す。例えば、均質化が2つの段階で実行される場合、乳ベースの均質化レベルは180バールである。
【0069】
キモシン
本出願の発明者はまた、キモシン(EC3.4.23.4)のさらなる添加が発酵乳製品のテキスチャーを有利に改善できることも発見した。キモシンは広範なクラスのペプチダーゼに属するアスパラギン酸プロテアーゼであり、そしてチーズ製造において凝乳酵素として一般的に使用される。
【0070】
ウシキモシン、特に子牛キモシンは、胃の酵素抽出物(レンネット;天然に生成されたキモシンを含む)及び組換え生成されたキモシン(典型的には、細菌、酵母又は真菌の宿主細胞において発現される)の両者として市販されている(例えば、国際公開第95/29999号を参照のこと)。他の非ウシキモシン、例えばCamelus Dromedariusキモシン又はその変異体は、国際公開第2002036752号、 国際公開第2013174840号及び国際公開第2015/128417号に記載されている。好ましいキモシンは、市販のキモシン、例えばCHY-MAX(商標登録)、 CHY-MAX(商標登録) M 及び CHY-MAX(商標登録)Plus (Chr. Hansen A/S Denmark)を含む。
【0071】
好ましい実施形態によれば、前記方法はさらに、発酵期間の前、開始で又はその間、乳ベースのキモシンの添加工程を含む。乳ベースに添加されるキモシンの量は、多くのパラメーター、例えばキモシンの活性、カゼイン含有量などのタンパク質含有量などの乳ベースの組成などに依存する。適切な条件は、酵素反応を最適化するための当業者に知られている方法に従って、当業者により選択され得る。キモシン活性を決定するためのアッセイは、当業界において知られている。それは、標準化された方法に従って測定され得、そしてグラム当たりの国際乳凝固単位(IMCU/g)で表され得る。
【0072】
1つの好ましい実施形態によれば、発酵乳製品を製造するための方法は、少なくとも1つの乳酸菌株を含むスターターカルチャーを、乳ベースに添加し、標的pHに達するまでの期間、乳ベースを発酵させることを含み、ここでホスホリパーゼ及びキモシンは、発酵期間の開始で、同時に又は次々に乳ベースに添加される。
【0073】
1つの好ましい実施形態によれば、好熱性発酵乳製品を製造するための方法は、少なくとも1つの乳酸菌株を有するスターターカルチャーを乳ベースに添加し、標的pHに達するまでの時間、乳ベースを発酵させることを含み、ここでホスホリパーゼ及びキモシンは、発酵期間の前、乳ベースに別々に添加される。
【0074】
さらに別の好ましい実施形態によれば、ヨーグルト製品を製造するための方法は、少なくとも1つの乳酸菌株を有するスターターカルチャーを乳ベースに添加し、標的pHに達するまでの時間、乳ベースを発酵させることを含み、ここでホスホリパーゼ及びキモシンは、発酵期間中に同時に乳ベースに添加される。
【0075】
貯蔵
発酵乳製品は好ましくは、少なくとも2日間、例えば少なくとも3日間、少なくとも4日間、より好ましくは、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、及び少なくとも14日間貯蔵される。生鮮乳製品ビジネスにおいては、製品は典型的には、約3~5日以内に、及び一般的には、製造後7日以内に消費者に届く。
【0076】
本明細書に使用される場合、用語「貯蔵」又は「貯蔵される」とは、消費者に消費のための発送されるまで、適切な条件下で製品を保持することを指す。そのような条件は、業界では知られており、そして熟練した実施者により決定され得る。
【0077】
キット
別の側面によれば、本発明は、スターターカルチャー及び1又は2以上のホスホリパーゼを含むキットを提供する。スターターカルチャーは、本出願に言及されるように、発酵乳製品の製造のために1又は2以上の乳酸菌を含む。キットに含まれる乳酸菌は例えば、細菌Lactobacillus spp. 及びLactococcus spp.を含むことができる。それらは、バルクスターター増殖のための凍結又は凍結乾燥培養物の形、又は発酵乳製品のための発酵容器又はバットへの直接的接種を目的とする、いわゆる「直接バットセット」(DVD)培養物の形で存在し得る。キットに含まれるホスホリパーゼは、ホスホリパーゼA、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼB又はホスホリパーゼC、又はそれらの組合せであり得る。
【0078】
発酵乳製品のテキスチャー
本発明はまた、発酵乳製品のテキスチャーを改善するためへのホスホリパーゼの新規使用も提供する。テキスチャーは、製品の「剪断応力(粘度)」又は「ゲル硬度」の測定を含む、当業界において良く知られている方法を用いて、レオロジー特性に関して特徴づけられ得る。剪断応力及びゲル硬度についてのSI単位は、パスカル(Pa)である。ゲル硬度及び粘度の両方が改善され得ることが本発明者により観察された。
【0079】
特定の実施形態によれば、この使用は、貯蔵の7日後、60 1/sの剪断速度で13℃で測定されたヨーグルトなどの発酵乳製品の粘度の上昇を可能にする。
【0080】
用語「剪断応力」は、粘度を決定する。粘度(単位は、Pasである)は、「剪断応力」(Pa)/剪断速度(1/s)として定義される。剪断応力値は、異なる点で報告され得る。感覚実験は、レオロジー測定と感覚との間の最良の相関関係が、粘度が60 1/sの剪断速度(口における最初の印象と良好に相関する)及び300 1/sの剪断速度(嚥下困難と関連する凝集性)で測定される場合、見出される。
【0081】
発酵乳製品の「ゲル硬度」は、振動数の関数としてのゲルの複素弾性率(G*)を測定する、いわゆる周波数スイープにより測定され得る。1.52HzでのG*の値は、製品の「ゲル硬度」として使用され得る。製品の粘度は、製品の剪断応力を剪断速度の関数として測定する、いわゆる一定速度測定により測定される。
【0082】
本発明の教示に従って製造された発酵乳製品は、同じ方法で製造されたが、しかしホスホリパーゼを用いないで、剪断速度60 1/s又は300 1/sで測定された対照製品と比較して、粘度又はゲル硬度の上昇を達成し得る。
【0083】
1つの実施形態によれば、60 1/s(Pa)での剪断応力として測定される場合、ホスホリパーゼの使用は、ホスホリパーゼが使用されていない製品により生成された粘度よりも、少なくとも約5%高い、少なくとも約10%高い、少なくとも約15%高い、少なくとも約20%高い、少なくとも約25%高い、少なくとも約30%高い、少なくとも約35%高い、 少なくとも約40%高い、少なくとも約50%高い、発酵乳製品における粘度を生成する。
【0084】
別の実施形態によれば、300 1/s(Pa)での剪断応力として測定される場合、ホスホリパーゼの使用は、ホスホリパーゼが使用されていない製品により生成された粘度よりも、少なくとも約5%高い、少なくとも約10%高い、少なくとも約15%高い、少なくとも約20%高い、少なくとも約25%高い、少なくとも約30%高い、少なくとも約35%高い、 少なくとも約40%高い、発酵乳製品における粘度を生成する。
【0085】
別の実施形態によれば、ホスホリパーゼの使用は、ホスホリパーゼが使用されていない製品により生成されたゲル硬度よりも、少なくとも約5%高い、少なくとも約10%高い、少なくとも約15%高い、少なくとも約20%高い、少なくとも約25%高い、少なくとも約30%高い、発酵乳製品におけるゲル硬度(1.52HzでのG*)を生成する。
【0086】
本発明を説明する文脈において(特に以下の特許請求の範囲において)用語「a」及び「an」及び「the」及び同様の指示対象の使用は、特別にことわらない限り、又は文脈によって明らかに矛盾する場合、単数及び複数の両方をカバーすると解釈されるべきである。「含んで成る」、「有する」、「含む」及び「含む」という用語は、特に断りのない限り、制限のない用語(すなわち、「含むがこれに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。 本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書で別段の指示がない限り、範囲内に含まれる各個別の値を個別に参照する簡略法として役立つことを意図し、各個別の値は、本明細書で個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されているすべての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。特に断らない限り、ここで提供されるすべての正確な値は、対応する概算値を表します(たとえば、特定の係数又は測定に関して提供されるすべての正確な例示的な値は、対応する概算測定値を提供すると見なすことができ、必要に応じて「約」で変更されます)。本明細書で提供されるありとあらゆる例又は例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく明らかにすることを意図しており、別段の請求がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中の言語は、本発明の実施に必須である請求されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0087】
本明細書で説明及び主張される本発明は、本明細書で開示される特定の態様によって範囲が限定されるべきではない。これらの態様は、本発明のいくつかの態様の例示として意図されるからである。同等の側面は、本発明の範囲内にあることが意図されている。 実際、本明細書に示され、記載されたものに加えて、本発明の様々な改変が、前述の説明及び以下の実施例から当業者に明らかになるであろう。そのような修正もまた、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。 矛盾する場合は、定義を含む本開示が優先される。
【0088】
実施例1
1.5%又は5.4%の脂肪を含むヨーグルト製品を調製した。7日目及び30日のレオロジー特性に対するホスホリパーゼの効果を評価した。
【0089】
乳ベースの調製:
脱脂粉乳及び全粉乳(Fonterra Co-operative Group Limited, New Zealand)を用いて、以下の実施例の乳ベースを調製した。
【0090】
【0091】
成分を、45℃~50℃でSilverson Mixerで水と混合した。水和時間は20分であった。乳ベースを、GEA Lab Homogenizerにより2段階(第1段階150バール、及び第2段階50バール;合計200バール)で均質化し、そして85℃で30分間、低温殺菌し、そして冷却した。
【0092】
スターターカルチャー:
スターターカルチャーを、Streptococcus thermophilus 及び Lactobacillus delbrueckii 亜種 Bulgaricusから構成した。
【0093】
ホスホリパーゼ:
ホスホリパーゼA1(Chr. Hansen A/S, DenmarkからのYieldMAX(登録商標)PL、5%脂肪に対して0.021650%の投与量)を、発酵の開始で添加した。脂肪及びタンパク質含有量を、MilkScan分析を用いて決定した。
【0094】
発酵:
発酵を、43℃で4時間50分間、実施し、そして4.55±0.05の最終pHに達した。発酵製品を、後処理されたプレート熱交換器を介して23℃~25℃に冷却し、そしてクーラーの出口で、1バールの圧力での背圧弁で平滑化した。
サンプルを、冷たい室温(5℃~7℃)で貯蔵した。
【0095】
【0096】
7日目及び30日目に貯蔵されたサンプルを、粘度及びゲル硬度について試験した。
【0097】
剪断応力及びゲル硬度の測定:
サンプルのレオロジー特性を、レオメーター(Anton Paar Modular Compact Rheometer MCR 302, Anton Paar(登録商標)GmbH, Austria)上で評価した。測定中、レオメーターは、13℃の一定温度に設定された。プログラムStirred_oscillation+Up_DownFlowを使用した。
【0098】
60 1/s及び300 1/sでの剪断応力を、これは口におけるテキスチャー(口当たり、第1印象)及び凝集性(発酵乳製品を飲み込む場合)に相関するので、分析のために選択した。
【0099】
ゲル硬度(1.52での複素弾性率G*)を、レオメーター(Anton Paar Modular Compact Rheometer MCR 302, Anton Paar(登録商標)GmbH, Austria)上で評価した。
【0100】
結果を以下に示し、そしてヒステリシス曲線を
図1に示す。
【0101】
【0102】
【0103】
表3及び4に示されるように、ホスホリパーゼにより処理されたサンプル(サンプル2及び4)は、対照サンプル(サンプル1及び3)と比較して、60 1/s(口当たり、第1印象)及び300 1/s(凝集性)での粘度の改善性を示された。高い脂肪含有量のサンプル(サンプル4)において、効果が強かった。
【0104】
実施例2
1.実験セットアップ
16の試行で次の5つの因子を調べるために、階乗分数計画を選択した。目的は、より大きな計画でテキスチャーに対するホスホリパーゼの効果を確認し、そして有意性、均質化圧力レベルとの相互作用及びキモシン酵素との相互作用、及びスターターカルチャーとの相互作用を調べることである。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
第5因子を、3次の相互作用に対して研究した(5=1234)。従って、全ての1次相互作用は、2次相互作用が非常に小さいか又はヌルである高い可能性を有することを考慮して、良好な精度で推定され得る。
【0109】
2.手順
5.0%の脂肪を含むヨーグルト製品を、種々のパラメーターにより調製した。
乳ベースの調製:
脱脂粉乳及びクリームパウダー(Fonterra Co-operative Group Limited, New Zealand)を用いて、以下の乳ベースを調製した。
【0110】
【0111】
【0112】
脱脂粉乳、クリームパウダー及び水を、8℃~10℃で少なくとも2時間、Silverson Mixerにより混合した。乳ベースを、GEA Lab Homogenizerにより均質化した。 セットアップに依存して、150バール(第1段階120バール及び第2段階30バール)又は300バール(第1段階240バール及び第2段階60バール)での均質化を行った。次に、均質化された乳ベースを、85℃で30分間、低温殺菌し、そして冷却した。
【0113】
調製及び発酵:
セットアップに依存して、ホスホリパーゼ及び/又はキモシンを、スターターカルチャーと共に、発酵の開示で添加した。
【0114】
スターターカルチャー:
実施例1からのスターターカルチャー(スターターカルチャー1、レベル-1)を使用した。発酵速度が異なる第2のスターターカルチャー(スターターカルチャー2、レベル+1)が比較のために含まれた。両方のスターターカルチャーは、Streptococcus thermophilus 及び Lactobacillus delbrueckii 亜種bulgaricusから構成された。
【0115】
ホスホリパーゼ及びキモシン:
ホスホリパーゼA1(Chr. Hansen A/S, DenmarkからのYieldMAX(登録商標)PL、5%脂肪に対して0.021650%の投与量)、ウシキモシン(Chr. Hansen A/S, DenmarkからのCHY-MAX(登録商標)Plus;平均活性200 IMCU/ml、2%カゼインに対して0.00026%の投与量)、脂肪及びタンパク質含有量を、MilkoScan分析を用いて決定した。
【0116】
【0117】
発酵を、4.55±0.05のpHに達するまで、43℃で実施した。発酵時間を記録した。発酵製品を、後処理されたプレート熱交換器を介して23℃~25℃に冷却し、そしてクーラーの出口で1バールの圧力で背圧弁により平滑化した。
【0118】
サンプルを、低温の室温(5℃~7℃)で貯蔵した。
7日目での貯蔵されたサンプルを、実施例1におけるように粘度及びゲル硬度について試験した。結果は下記に与えられる。
【0119】
【0120】
レオロジー応答を、主効果及び1次相互作用を含む多重線形モデルを使用した段階的回帰分析を用いて分析した:
応答=cste + a.F1 + b.F2 + c.F3 + d.F4 + e.F5 + f.F1.F2 + g F1.F3…
5%を超える誤り(p値>0.05)のリスクを有する全ての効果を排除した。
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
上記から明らかなように、両方の粘度ポイントで測定されたテキスチャーに対するホスホリパーゼの効果は、高レベルの有意性(p値=0.012及び0.019)で確認され、口当たり及び凝集性の両方に対してその陽性の効果を示した。ホスホリパーゼの効果は、低い均質化レベルで、より高かった(有意な負の相互作用、p値=0.036)。最大粘度上昇は、150バールの均質化レベルで+146mPasである。培養物との相互作用は、観察され;ホスホリパーゼは発酵速度に関係なく同じように作用するようである。ホスホリパーゼとキモシンとの間に負の相互作用は存在せず、それらの組み合された効果が純粋に相加的であり、そして最大の増加が+457mPaに達することができることを示す。これは、キモシンの添加がテキスチャーをさらに改善できることを確認する。
【0125】
類似する強力な効果及び同じ結論が、ゲル硬度応答について引き出すことができる。
【0126】
実施例3
2.03%の脂肪及び4.05%のタンパク質を含む大豆ヨーグルトを調製した。7日目でのレオロジー特性に対するホスホリパーゼの効果を評価した。
【0127】
【0128】
【0129】
調製及び発酵:
セットアップに依存して、ホスホリパーゼを、発酵期間の前、開始で又はその間、添加する。
【0130】
実施例3に使用される方法は、次の通りであった。表12に示される組成物を、Silverson Mixerにより混合した。混合温度/水和化時間は、45℃~50℃/20分であった。均質化を、65~70℃の予熱のGEA Lab Homogenizerを用いて実施し、そして圧力は、第1段階で150バール及び第2段階で50バールであり、合計で200バールであった。この工程は、Scandinox Waterbathを用いて、85℃/30分の低温殺菌条件、及び10℃未満の冷却温度で実施された。発酵は、Scandinox Waterbathを用いて、43℃の温度及び4.55±0.05の最終pHで実施された。
【0131】
大豆ヨーグルトの後処理は次の通りであった:パイロット処理ユニット(PTU)を、1.0バールの背圧及び23℃~25℃の冷却温度で使用した。
【0132】
実施例3から得られたサンプルのレオロジー研究は、次の通りであった。レオロジー研究を、Anton Paar Modular Compact Rheometer MCR 302を用いて実施した。測定温度は13℃であり、そして使用されるプログラムは、Stirred oscillation+Up_DownFlowであった。
【0133】
【0134】
【表18】
―Vis pt 1:0.271 s-1での粘度 (mpa.s) (初期状態, ヨーグルトをスプーンで切るときの抵抗)
―Vis pt 5:60 s-1 での粘度(口の中の質感とよく相関する)
―Vis pt 21:300 s-1 での粘度(凝集性 (飲み込むのが難しい) / 口の厚さ)
―ヒステリシス領域:剪断抵抗に相関する
―振動G*@1.52Hz:ゲル硬度に相関する
【0135】
大豆ヨーグルトについて、上から証明されたように、ホスホリパーゼ(YieldMAX(登録商標)PL)の添加は、大豆ヨーグルトのテキスチャーに対して陽性の効果を示し、S2のVis pt5は、S1と比較して、13.9%高かった。
【0136】
大豆ヨーグルトの感覚的評価は、S2が、S1と比較して、テキスチャーが厚く、よりクリーミーであり、そして味の渋さが少なかったことを示した。従って、ホスホリパーゼ(YieldMAX(登録商標)PL)の添加が、大豆ヨーグルトのテキスチャー及び味覚を改善する。