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特許7455063ポリマー・フォーム・プロセスへの発泡剤の導入
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  • 特許-ポリマー・フォーム・プロセスへの発泡剤の導入 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ポリマー・フォーム・プロセスへの発泡剤の導入
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/36 20060101AFI20240315BHJP
   B29C 44/02 20060101ALI20240315BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20240315BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B29C44/36
B29C44/02
B29C44/00 D
B29C45/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020542715
(86)(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 US2018057010
(87)【国際公開番号】W WO2019083938
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-18
(31)【優先権主張番号】15/791,218
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520141542
【氏名又は名称】トレクセル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Trexel, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】セオドア・エイ・バーナム
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・エス・コッケル
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・エドワード・ディックス
(72)【発明者】
【氏名】リーバイ・エイ・キシュボー
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-505813(JP,A)
【文献】特表2001-508718(JP,A)
【文献】特開2005-225141(JP,A)
【文献】特表2006-503739(JP,A)
【文献】特表2005-532939(JP,A)
【文献】特表2014-507313(JP,A)
【文献】特表2012-516796(JP,A)
【文献】国際公開第2015/174255(WO,A1)
【文献】国際公開第02/014044(WO,A1)
【文献】国際公開第98/031521(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00-44/60;67/20
B29C 45/00-45/84
C08J 9/00- 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エクストルーダーを含む不連続ポリマー・フォーム処理システムに発泡剤を不連続に導入する方法であって、
発泡剤導入システムのフロー・リストリクターに発泡剤を供給するように構成されたソースを供すること、
前記フロー・リストリクターの上流側及び該フロー・リストリクターの下流側の発泡剤の圧力を測定すること、
前記不連続ポリマー・フォーム処理システムの前記エクストルーダーのポリマー材料への発泡剤の導入を制御するために、圧力レギュレーターを用いて前記フロー・リストリクターの上流側にて前記発泡剤の圧力を変更すること、
を含んで成り、
前記フロー・リストリクターの上流側の前記発泡剤の前記圧力が該フロー・リストリクターの下流側の前記発泡剤の前記圧力よりも高い場合、発泡剤が前記エクストルーダーの前記ポリマー材料に導入され、前記フロー・リストリクターの上流側の前記発泡剤の前記圧力が該フロー・リストリクターの下流側の発泡剤の圧力よりも低い場合、前記発泡剤がエクストルーダー内のポリマー材料に導入されず、
前記エクストルーダーへの前記発泡剤の流れは、遮断バルブによって制御されず、
前記発泡剤は、成形サイクルの可塑化期間の少なくとも一部の間で前記エクストルーダー内のポリマー材料に供給され、成形サイクル時間は15秒未満である、方法。
【請求項2】
前記エクストルーダーの下流方向にポリマー材料を移送することを、さらに含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エクストルーダーの出口を通じてポリマー材料をモールドへと射出することを、さらに含んで成る、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
成形サイクルの射出期間の間、発泡剤は、前記エクストルーダーの前記ポリマー材料に導入されない、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ソースへと戻る通路を通るように、前記エクストルーダーへの発泡剤の流れを分岐させることを、さらに含んで成る、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記フロー・リストリクターの近傍で発泡剤の温度を測定することを、さらに含んで成る、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記フロー・リストリクターは、穴を有して成る、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記フロー・リストリクターの上流側及び前記フロー・リストリクターの下流側の発泡剤圧力の入力に応じて、前記フロー・リストリクターを通過する発泡剤フローのレート及び/又は量を計算することを、さらに含んで成る、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
発泡剤温度の入力に応じて、前記フロー・リストリクターを通過する発泡剤フローのレート及び/又は量を計算することを、さらに含んで成る、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ポリマー・フォーム処理システムであって、
発泡剤ソースと、
前記発泡剤ソースに接続された発泡剤導入システムと、
スクリューを含むエクストルーダーと、
前記エクストルーダーの出口に接続されたモールドと、
を有して成り、
前記発泡剤導入システムが、
フロー・リストリクターと、
前記フロー・リストリクターの上流側の圧力調整デバイスと、
前記フロー・リストリクターの上流側の圧力測定デバイスと、
前記フロー・リストリクターの下流側の圧力測定デバイスと、を含み、
スクリューは、ポリマー材料を下流方向に移送するためにバレル内で回転するように構成及び配置され、
前記バレルが、それに形成された発泡剤ポートを有し、
前記発泡剤導入システムは、前記フロー・リストリクターの上流側の前記発泡剤の前記圧力が該フロー・リストリクターの下流側の前記発泡剤の前記圧力よりも高い場合、前記エクストルーダーの前記ポリマー材料に発泡剤を導入し、前記フロー・リストリクターの上流側の前記発泡剤の前記圧力が該フロー・リストリクターの下流側の前記発泡剤よりも低い場合、前記エクストルーダー内の前記ポリマー材料に発泡剤を導入しないように構成され、
発泡剤導入システムは、エクストルーダーへの発泡剤の流れが遮断バルブによって制御されないように構成され、
発泡剤導入システムは、成形サイクルの可塑化期間の少なくとも一部の間にエクストルーダー内のポリマー材料へと発泡剤が導入され、成形サイクル時間は15秒未満である、システム。
【請求項11】
ポリマー材料をモールドへと射出するエクストルーダーの出口を備えた、請求項10に記載されたシステム。
【請求項12】
成形サイクルの射出期間の間、発泡剤は、前記エクストルーダーの前記ポリマー材料に導入されない、請求項11に記載されたシステム。
【請求項13】
前記エクストルーダーから前記ソースへの発泡剤の流れが分岐されるように構築及び配置された通路を、さらに有して成る、請求項10~12のいずれか1項に記載されたシステム。
【請求項14】
前記フロー・リストリクターの近傍で発泡剤の温度を測定するように構築及び配置された温度測定デバイスを、さらに有して成る、請求項10~13のいずれか1項に記載されたシステム。
【請求項15】
前記フロー・リストリクターは、穴を有して成る、請求項10~14のいずれか1項に記載されたシステム。
【請求項16】
前記上流側圧力調整デバイスを調節するように構成されたコントローラを、さらに有して成る、請求項10~15のいずれか1項に記載されたシステム。
【請求項17】
前記コントローラは、前記フロー・リストリクターの前記上流側圧力測定デバイスと、該フロー・リストリクターの前記下流側圧力測定デバイスからの入力に応じて、上流側圧力調整デバイスを調節するように構成されている、請求項16に記載されたシステム。
【請求項18】
前記コントローラは、温度測定デバイスからの入力に応じて、前記上流側圧力調整デバイスを調節するように構成されている、請求項16または17に記載されたシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ポリマー・フォーム処理(polymer foam processing)に関し、より詳細には、ポリマー・フォーム・プロセス(polymeric foam process)において発泡剤を導入(introducing)するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー・フォームは、ポリマー・マトリックス中に複数のボイド(セルとも呼ばれる)を含む。ポリマー材料は、さまざまな技術を使用して処理される。多くの技術は、バレル内の処理スクリューの回転によってポリマー材料を可塑化(plasticates)するエクストルーダー(または押出機もしくは押出器、extruder)を採用する。射出成形やブロー成形など、一部の処理技術は不連続である。つまり、オペレーション中、スクリューは成形サイクル全体を通じて連続的にポリマー材料を可塑化しない。例えば、発泡剤と混合されたポリマー材料のチャージ(charge)がスクリューの下流側にて堆積された後、スクリューは回転を停止し、それ故に、ポリマー材料の可塑化が停止する。また、例えば、ポリマー材料をモールド(mold)に射出するため、スクリューが下流方向に移動する際、スクリューが射出サイクル中に回転しない場合がある。
【0003】
ポリマー・フォーム材料は、バレル内のポリマー材料に物理的な発泡剤を射出することによって加工することができる。多くの従来の発泡剤デリバリー・システムは、発泡剤をバレル内のポリマー材料に連続的に射出する。不連続な可塑化プロセスにおいて、そのような連続発泡剤デリバリー・システムは、ポリマー材料に射出される発泡剤のパーセント制御を阻害し得、ポリマー溶融物中の発泡剤の不均一な分布をもたらし得る。特に、発泡剤ポートの近くのポリマー材料は、スクリューがポリマー材料の可塑化を停止すると、発泡剤射出ポートの近くでの滞留時間が増加するため、発泡剤の量がより多くなることを包含し得る。発泡剤の不均一な分布は、ポリマー材料内の粘度変動をもたらし得、エクストルーダーにおける出力の不整合やその他の問題を引き起こすことになり得る。このような影響により、プロセスの制御が低下し得る。
【0004】
ある不連続プロセスを含む幾つかのポリマー・プロセスにおいて、このような従来の発泡剤デリバリー・システムが適切な場合がある。しかしながら、発泡剤のデリバリーを比較的精密に制御する必要がある不連続プロセスなどの他のプロセスでは、従来のシステムはプロセスの有効性を低下させ得る。例えば、発泡剤が精密に制御されていない場合、マイクロセルラー・ポリマー・フォーム(または微小セル・ポリマー・フォーム、microcellular polymeric foams)を製造するための特定のプロセスが悪影響を受け得る。
【0005】
他の従来の発泡剤デリバリー・システムは、成形サイクルの一部の間(例えば、モールドへの射出中)に発泡剤の流れを遮断するために閉じるバルブを使用することによって、エクストルーダーに発泡剤を不連続に導入することがある。バルブは、エクストルーダーの発泡剤ポートの近傍(proximate)に配置されてもよい。しかしながら、特にサイクルタイムが短いモールディング・プロセスで使用する場合、頻繁にバルブを開閉することは、デリバリー・システムの寿命を制限してしまうことがある。
【0006】
したがって、射出成形などの不連続ポリマー処理技術で使用可能な新しい発泡剤導入システムが必要である。
【発明の概要】
【0007】
ポリマー・フォーム・プロセスにおいて発泡剤を導入する方法及びシステムを説明する。
【0008】
一態様では、エクストルーダーを含む不連続ポリマー・フォーム処理システムに発泡剤を不連続に導入する方法が供される。前記方法は、発泡剤導入システムのフロー・リストリクター(または流れ制限部材、flow restrictor)に発泡剤を供給するように構成されたソースを供することを含んで成る。前記方法は、さらに、前記フロー・リストリクターの上流側及び前記フロー・リストリクターの下流側の発泡剤の圧力を測定することを含んで成る。前記方法は、さらに、前記不連続ポリマー・フォーム処理システムの前記エクストルーダーのポリマー材料への発泡剤の導入を制御するため、圧力レギュレーターを使用して前記フロー・リストリクターの上流側にて前記発泡剤の圧力を変更することを含んで成る。前記フロー・リストリクターの上流側の前記発泡剤の前記圧力が前記フロー・リストリクターの下流側の前記発泡剤の前記圧力よりも高い場合、発泡剤が前記エクストルーダーの前記ポリマー材料に導入され、前記フロー・リストリクターの上流側の前記発泡剤の前記圧力が前記フロー・リストリクターの下流側の発泡剤の圧力よりも低い場合、前記発泡剤がエクストルーダー内のポリマー材料に導入されない。
【0009】
一態様では、ポリマー・フォーム処理システムが供される。前記システムは、発泡剤ソースと、当該発泡剤ソースに接続された発泡剤導入システムと、を有して成る。前記発泡剤導入システムは、フロー・リストリクター、当該フロー・リストリクターの上流側の圧力調整デバイス、前記フロー・リストリクターの上流側の圧力測定デバイス及び、前記フロー・リストリクターの下流側の圧力測定デバイスを含む。前記システムは、さらに、ポリマー材料を下流方向に移送するためにバレル内で回転するように構成及び配置されたスクリューを含むエクストルーダーを有して成る。前記バレルは、それに形成された発泡剤ポートを有する。前記システムは、さらに、前記エクストルーダーの出口に接続されたモールドを有して成る。前記発泡剤導入システムは、前記フロー・リストリクターの上流側の前記発泡剤の前記圧力が前記フロー・リストリクターの下流側の前記発泡剤の前記圧力よりも高い場合、前記エクストルーダーの前記ポリマー材料に発泡剤を導入し、前記フロー・リストリクターの上流側の前記発泡剤の前記圧力が前記フロー・リストリクターの下流側の前記発泡剤よりも低い場合、前記エクストルーダー内の前記ポリマー材料に発泡剤を導入しないように構成されている。
【0010】
添付の図面と併せて検討すると、他の態様及び特徴は、本発明の以下の詳細な説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る発泡剤導入システムを含むポリマー・フォーム処理システムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ポリマー・フォーム・プロセスにおいて発泡剤を導入する方法及びシステムを説明する。当該方法は、不連続なポリマー・プロセス(射出成形やブロー成形など)において発泡剤を不連続に導入するために使用してよく、短い成形サイクル時間のプロセスで使用される場合に特に有利となり得る。発泡剤の導入は、システム内の発泡剤の圧力を制御する圧力レギュレーター(または圧力調整機、pressure regulator)の操作によって制御してもよい。このレギュレーターは、以下でさらに説明するように、発泡剤をエクストルーダーに導入するため、発泡剤の圧力を所望の範囲内に設定してもよく、適切なタイミングで、発泡剤がエクストルーダーに流れ込むことを防ぐため、発泡剤の圧力を下げてもよい。この発泡剤導入システムは、圧力レギュレーターの下流側にフロー・リストリクターを含む。このシステム及び方法は、フロー・リストリクターの通過に際する圧力降下を測定することにより、ポリマー材料への発泡剤の流れを測定する。以下でさらに説明するように、発泡剤の流れ及び/又は量(例えば、質量)は、圧力降下、フローレート(flow rate)、フロー要素ディメンジョン(flow element dimensions)、及びこのシステムで測定される潜在的な他の変数(例えば、発泡剤の温度)の間の所定の関係から計算(又は、計測、calculated)されてもよい。幾つかの実施形態では、発泡剤がエクストルーダーに導入されていないとき、この方法は、発泡剤ソースへと戻る通路を通るようにエクストルーダーへの発泡剤の流れを分岐することを包含する。
【0013】
図1を参照すると、発泡剤導入システム10は、発泡剤をポリマー・処理システム12に運ぶために使用される。この実施形態では、システム12は、エクストルーダー14及びモールド16を含む不連続ポリマー処理システムである。図示されるように、ホッパー18は、ポリマー材料(例えば、ペレットの形態のポリマー材料)をエクストルーダーに供する。エクストルーダーは、ポリマー材料を可塑化するためのバレル22の内部で回転するように設計されたスクリュー20を含む。スクリューの回転により下流方向24に移送される流体ポリマー流を形成するため、熱(例えば、エクストルーダー・バレル上のヒーターにより提供される)及び剪断力(例えば、回転スクリューにより提供される)は、ポリマー材料を溶融するように作用する。
【0014】
図示される実施形態では、発泡剤導入システム10は、エクストルーダーのバレルの1つ又は複数のポート28に接続された物理発泡剤ソース26(physical blowing agent source)を含む。以下でさらに説明するように、システム10は、ソースからエクストルーダーの流体ポリマー流への物理的発泡剤の導入を制御する。発泡剤が流体ポリマー流に導入された場合、エクストルーダー・バレルの下流側に移送される混合物が形成される。幾つかの実施形態では、この混合物は、モールドへの射出より前にポリマー材料に溶解される物理的発泡剤を含む単相溶液(single-phase solution)である。図示する実施形態では、バルブ29は、エクストルーダーの出口とモールドの入口との間に配置される。混合物(例えば、単相溶液)は、エクストルーダー内のスクリューの下流側に堆積され、スクリューをバレル内の上流方向に後退させ得る。適切な条件に達したとき(例えば、所定の期間後、所定のスクリュー位置で、所定量(例えば、質量)の発泡剤が導入された後など)、以下でさらに説明するように、発泡剤導入システムは、エクストルーダーへの発泡剤の導入を停止するように動作可能である。典型的には、発泡剤の導入が停止したとき(例えば、少し後)、成形サイクルの可塑化期間を終了するため、スクリューは後退及び回転を停止する。成形サイクルの射出期間中、バルブ29が開くと、モールドのキャビティへと混合物を射出するため、スクリューは、バレル内の下流側に押し込まれる。混合物は、多数のセルが核となる射出中に圧力降下を受け、そして、ポリマー・フォーム品がモールド内で形成される。発泡剤導入システムがエクストルーダーのポリマー材料に発泡剤を導入するように動作する別の可塑化期間を開始するため、スクリューが再度回転し始めるものであってもよい。複数のフォーム品を製造するため、この方法は、典型的には繰り返される。
【0015】
ポリマー・フォーム・プロセッシング・システムは、図に示されていない幾つかの従来の構成要素を含み得ることを理解されたい。
【0016】
発泡剤導入システムは、ソース26に接続可能な上流端部32及びポート28に接続可能な下流端部34を含む。導入システムの様々なコンポーネントを接続し、ソースから発泡剤ポートへの経路を供するため、導管36は、上流端部から下流端部まで延在する。上記のように、発泡剤導入システムは、ソースから発泡剤ポートに流れるときに発泡剤が通過するフロー・リストリクター37を含む。フロー・リストリクターの上流において、この発泡剤導入システムは、圧力レギュレーター38及び上流側圧力測定デバイス40を含む。フロー・リストリクターの下流において、この発泡剤導入システムは、下流側圧力測定デバイス42を含む。発泡剤導入システムのコントローラ44は、測定デバイス及びレギュレーターに動作可能に接続されてもよく、その結果、コントローラは測定デバイスから入力を受信してもよく、レギュレーターを制御するための出力を供することができる。図示されるように、システムは、発泡剤がエクストルーダーに導入されていない場合、発泡剤がソースへと逆流することを可能にするフロー・リストリクターの上流入口を有する戻り経路46を含む。
【0017】
幾つかの実施形態で示されるように、発泡剤導入システムは、オプション的に1つ又は複数の温度測定デバイス48を含めてもよい。例えば、温度測定デバイスは、以下の場所(フロー・リストリクター又はその近傍、フロー・リストリクターの上流側、フロー・リストリクターの下流側)の1つ又は複数に配置されてもよい。温度測定デバイスは、コントローラが、温度測定デバイスからの入力に応じることになるように、コントローラと動作可能に接続されてもよい。
【0018】
場合によっては、発泡剤導入システムは、温度制御デバイス(図示せず)を含んでもよい。そのような温度制御デバイスは、発泡剤を所望の温度に加熱又は冷却すべく用いられてもよい。温度制御デバイスは、以下の場所(フロー・リストリクター又はその近傍、フロー・リストリクターの上流側、フロー・リストリクターの下流側)の1つ又は複数に配置されてもよい。温度制御デバイスは、多くの実施形態では使用されない。
【0019】
発泡剤の導入量(例えば、質量)を測定するため(例えば、成形サイクル及び/又は可塑化期間中の)、及び/又は、そうでなければ、発泡剤の導入を制御するため、発泡剤導入システムは、フロー・リストリクターを通過する際の発泡剤の圧力差、フロー・リストリクターの寸法、発泡剤のフローレート(又は、流量若しくは流速、flow rate)、及び、場合によっては、発泡剤の温度の間の関係を利用できる。そのような関係は、キャリブレーション手法を使用して特定のフロー・リストリクターのために事前に決定してもよい。ある適切なキャリブレーション手法は、幾つかの異なる圧力及び温度条件でフロー・リストリクターを通るフローレートを測定することを包含する。フロー・リストリクターの寸法及び他の測定された変数でのフローレートの依存性は、例えば、当業者に知られている回帰分析(regression analysis)を使用して決定することができる。測定された変数は、フロー・リストリクター通過の圧力差、上流圧力、下流圧力、及び一又は複数の場所での発泡剤の温度を含み得る。幾つかの実施形態では、上記関係は、導入された発泡剤(例えば、成形サイクル中及び/又は可塑化期間中)の量を決定するためのコントローラ、及び/又は、測定デバイスからの入力(例えば、フロー・リストリクター通過の圧力差、温度)及び手動入力(例えば、フロー・リストリクターの寸法)に応じて、所望の発泡剤の流量及び/又はレートを提供するためにフロー・リストリクターの上流側の圧力を調整する手法に利用されてもよい。
【0020】
実施例のプロセスの間、ソースは、発泡剤を導入システムに供する。発泡剤が導管を通って流れるとき、上流圧力は、デバイス40によって測定され、下流圧力は、デバイス42によって測定され、そして、フロー・リストリクターでの発泡剤の温度はデバイス48によって(任意に)測定される。圧力及び温度測定デバイスは、入力信号をコントローラに送信する。コントローラは、このような入力信号を他の入力信号(例えば、スクリューの位置と操作、サイクルの時間等に関連する)とともに処理し、圧力レギュレーターの操作を制御するため、適切な出力信号を送信する。例えば、スクリューが可塑化プロセスの開始時に回転し始めるとき、フロー・リストリクターの上流側の発泡剤の圧力をフロー・リストリクターの下流側の圧力よりも高く設定するため、コントローラは出力信号を圧力レギュレーターに送信する(一般的にはエクストルーダー内のポリマー材料の圧力よりも高い)。圧力レギュレーターは、フロー・リストリクターの下流側の発泡剤圧力(及び/又はエクストルーダー内のポリマー材料の圧力)である300psiより高く(例えば、300~2000psi、300~2500psi)、500psiより高く(例えば、500~2000psi、500~2500psi)、1000psiより高く(例えば、1000~2000psi、1000~2500psi)設定してもよい。可塑化プロセスの終了時及び射出プロセスの開始時に、フロー・リストリクターの上流側の発泡剤の圧力を、フロー・リストリクターの下流側の発泡剤の圧力(及び/又はエクストルーダー内のポリマー材料の圧力)よりも低く設定するため、コントローラは、出力信号を圧力レギュレーターに送信してもよい。圧力レギュレーターは、圧力を減じてもよく、これにより、フロー・リストリクターの下流側の発泡剤圧力(及び/又はエクストルーダー内のポリマー材料の圧力)を200psi未満(例:200~500psi)、300psi未満(例:300~500psi)、500psi未満(例:500~700psi)に設定する。エクストルーダーへの発泡剤の流れが妨げられる場合、幾つかの実施形態では、流れは戻り経路を通るように分岐され、発泡剤ソースへと戻されてもよい。
【0021】
幾つかの実施形態では、コントローラは、入力信号を処理し、フロー・リストリクターを通過して測定された圧力差と、上述のキャリブレーション・プロセス中に決定された関係によって計算されたフローレート及び/又は所望の発泡剤の量(例えば、質量)に対応する所望の圧力差とを比較する。フロー・リストリクターの上流圧力を調整するため、必要に応じて、所望の圧力差を維持し、コントローラは、適切な出力信号を上流側圧力レギュレーターへと送信する。したがって、選択された割合の発泡剤を有する発泡剤とポリマー材料との混合物を生成するため、エクストルーダー内のポリマー材料への発泡剤の量及びフローレートは、選択された値に維持されてもよい。例えば、エクストルーダーのポリマー材料内の圧力変動に応じて、フロー・リストリクターの下流側の圧力が変化したとしても、選択された発泡剤の量及び/又はフローレートを供するため、その導入システムは、それに応じて上流側の圧力を調整することによって対応してもよい。
【0022】
発泡剤導入システムは、射出成形システムと組み合わせて使用されるものとして示されているが、発泡剤導入システムは、発泡剤が導入される任意のポリマー・処理装置と組み合わせて使用されてもよいことを理解されたい。上記のように、システム及び方法は、成形サイクル時間が短い不連続ポリマー・プロセスでの使用に特によく適している。例えば、成形サイクル時間は、15秒未満(例えば、1秒~15秒、3秒~15秒など)、10秒未満、8秒未満又は5秒未満でもよい。最小サイクルタイムは、1秒、2秒、又は3秒である。本明細書において、成形サイクル時間は、当該技術分野で一般に知られているように用いられ、モールドから第1成形品を取り外してから、後続のモールディング・ステップで製造されたモールドから第2成形品の取り外しまでの合計時間を指す。成形サイクル時間には、可塑化期間と射出期間、時には、他の期間の間が含まれる。
【0023】
一般に、任意のタイプのポリマー・フォーム材料を製造するため、発泡剤導入システムは、ポリマー・処理システムとともに使用されてもよい。幾つかの実施形態では、マイクロセルラー・ポリマー・フォーム材料を製造するポリマー・処理システムに発泡剤を導入するため、発泡剤導入システムが使用されてもよい。幾つかの実施形態では、製造されたマイクロセルラー・ポリマー・フォーム材料は、100ミクロン未満の平均気泡サイズを有してもよい。より大きなセルサイズを有するポリマー・フォーム材料もまた、本明細書に記載されたシステム及び方法を使用して形成されても良いことを理解されるべきである。
【0024】
特定のプロセスで必要とされる広範囲の異なるフローレートにわたってエクストルーダー内のポリマー材料に発泡剤を導入するために、発泡剤導入システムが用いられてもよい。例えば、発泡剤の質量流量は、一般に約5mg/秒~約10g/秒であり、場合によっては約25mg/秒~約2g/秒である。発泡剤は、典型的には、所望の発泡剤レベルの混合物を供するために、ポリマー材料に導入される。所望の発泡剤の量は、特定のプロセスに依存し、一般に、ポリマー材料及び発泡剤に対して約10%未満である。多くの実施形態では、発泡剤レベルは、ポリマー材料及び発泡剤の混合物の重量に対して、約5%未満、他の場合、約3%未満、他の場合、約1%未満、他の場合、約0.5%未満、さらに他の場合、約0.1%未満であり、又はさらに低い。
【0025】
発泡剤ソースは、窒素、二酸化炭素、炭化水素、クロロフルオロカーボン、希ガスなど又はそれらの混合物を含む、当業者に知られている任意の種類の物理的発泡剤を導入システムに供給してもよい。発泡剤は、気体、液体、又は超臨界流体などの任意の流動可能な物理的状態で供給してもよい。好ましい一実施形態によれば、ソースは、発泡剤として二酸化炭素を供する。別の好ましい実施形態では、ソースは、発泡剤として窒素を供する。特定の実施形態では、二酸化炭素又は窒素のみが使用される。エクストルーダーへの射出後(任意選択で、射出前も同様)に超臨界流体状態、特に、超臨界二酸化炭素及び超臨界窒素である発泡剤が、特定の実施形態では好ましい。
【0026】
発泡剤導入システムの導管は、発泡剤を搬送するのに適した当該技術分野で既知のタイプのいずれであってもよい。例えば、導管は、金属管などの、加圧ガス、液化ガス、及び/又は超臨界流体を搬送するのに適した材料で作られた管(又は、チューブ)であってもよい。場合によっては、導管はステンレス鋼の金属管であってもよい。他の実施形態では、導管は、材料のブロック内の通路、例えば、ステンレス鋼等の金属のブロック内のドリル通路によって定められる。導管は典型的には、約1cm~約0.1mmの断面直径を有する。しかしながら、導管の長さ及び構成は制約されず、一般に、利用可能な製造スペース並びにポリマー・プロセッシング及び発泡剤導入システムのレイアウト等の要因に依存することを理解されたい。場合によっては、例えば、通過する発泡剤の圧力損失を最小限にするために、導管の長さを最小限にすることが望ましい。場合によっては、導管は、例えば、様々なコンポーネントとの接続を容易にするために、1つ又は複数の分岐を有していてもよい。
【0027】
ソースが十分に高い圧力で発泡剤を供給しない場合等の幾つかの実施形態では、導入システム内の発泡剤の圧力を増加及び/又は維持するため、ポンプは、ソースの出口に接続されていてもよい。一般に、導入システム内の発泡剤の圧力は、少なくとも1000psiよりも高く、多くの場合、少なくとも2000psiよりも高くに維持される。導入システム内の最大発泡剤圧力は、一般に10,000psi未満、場合によっては、5000psi未満、場合によっては、3000psi未満である。
【0028】
発泡剤導入システム10で使用される温度及び圧力測定デバイス及び圧力調整デバイスは、当該技術分野で知られているタイプのいずれであってもよい。例えば、適切な圧力測定デバイスは、圧力トランスデューサーを含む。適切な圧力レギュレーターは、幾つかの実施形態では、約500psi~約7000psiの圧力を制御してもよい。圧力レギュレーターは、例えば、コントローラからの出力信号に応じて、アクチュエータを動かすことによって変更され得る制限を含んでもよい。
【0029】
上流側の圧力測定デバイス及び圧力調整デバイスは、フロー・リストリクターの上流側及びソースの下流側の任意の点に配置されてもよいが、一般に、圧力測定デバイスはレギュレーターとフロー・リストリクターの間に配置される。幾つかの実施形態では、それらの間の導管を通る圧力損失を最小化することによって、フロー・リストリクターの上流側の圧力の正確な測定を提供するため、上流側の圧力測定デバイス及びレギュレーターをフロー・リストリクターの近傍及び/又は互いに近接して配置されてもよい。
【0030】
一般に、下流側圧力測定デバイスは、フロー・リストリクターの下流側かつ発泡剤ポートの上流側の任意の点に配置されてもよい。幾つかの実施形態では、それらの間の導管を通る圧力損失を最小化することによって、フロー・リストリクターの下流側の圧力の正確な測定を提供するため、下流側の圧力測定デバイスをフロー・リストリクターの近くに配置されてもよい。幾つかの実施形態では、下流側圧力測定デバイスとフロー・リストリクターとの間の距離は、約0.1インチ~約12.0インチであってもよい。
【0031】
上記のように、本明細書に記載の発泡剤導入システムの1つの利点は、エクストルーダーへの発泡剤の流れが、頻繁に開閉され、それ故に、性能を犠牲にする可能性のある摩耗状態にさらされる遮断バルブ(例えば、開閉はエアアシストで可能なバネ式バルブ)によって制御されないことである。そのような実施形態において、システムは、成形サイクル中に開閉するように構成され、フロー・リストリクターとエクストルーダーのバレル内の発泡剤ポートとの間に配置されるバルブを含まなくてもよい。しかしながら、幾つかの実施形態では、発泡剤導入システムは、成形サイクル中に開閉するように構成されていない、及び/又は、エクストルーダーへの発泡剤の導入を制御するように構成されていない発泡剤ポートと、フロー・リストリクターとの間に、バルブ39(例えば、ボールチェックバルブ)を含んでもよい。幾つかの実施形態では、そのようなバルブを使用して、エクストルーダーからのポリマー材料の逆流を防止してもよい。
【0032】
コントローラは、コンピュータなどの当技術分野で既知の任意のタイプであってもよい。上記のように、コントローラは、入力信号(例えば、圧力測定デバイス、温度測定デバイス、スクリューの位置と回転に関連する入力信号)を受信可能であり、適切な出力信号(例えば、上流側の圧力レギュレーター)を送信可能である。幾つかの実施形態では、入力信号は、コントローラによって連続的に受信されてもよく、出力信号は、コントローラによって連続的かつ同時に(例えば、リアルタイムで)送信されてもよい。他の場合では、入力信号及び出力信号はそれぞれ連続的に受信及び送信されてもよい。入力信号が受信されるレートは、出力信号が送信されるレートと一致する必要はない。例えば、入力信号は継続的に受信されてもよく、一方で、出力信号は間隔を空けて提供されてもよい。
【0033】
一般に、フロー・リストリクターは、発泡剤の流れが通過する経路を有し、任意の適切な構造で提供されてもよい。幾つかの実施形態では、経路の寸法は固定されてもよい。つまり、経路の寸法は変更することができない。例えば、フロー・リストリクターは、ブロックを通る穴(hole)として形成されてもよい。幾つかの実施形態では、異なる寸法のフロー・リストリクターを利用可能な導入システムを提供するため、フロー・リストリクターは、別のフロー・リストリクターと交換可能としてもよい。穴は、その全長にわたって一定の断面を有する環状穴であってもよい。環状穴は、機械加工が容易であるが、他の形状の穴としてもよい。幾つかの実施形態では、フロー・リストリクターは、可変寸法である経路を有する。例えば、流路の直径は、異なるプロセスのために必要に応じて変更することができる。フロー・リストリクターの特定の寸法(変数が固定されているかどうかにかかわらず)は、特定のプロセスの発泡剤を導入する条件に依存してもよい。幾つかの実施形態では、経路は、約0.010インチ~約0.040インチの長さL、約0.001インチ~約0.01インチの直径Dを有することができ、L/D比(長さ/直径)は、約1:1~約6:1である。
【0034】
他のタイプのフロー・リストリクターが導入システムで使用されてもよいことが理解されるべきである。
図1