(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ランレオチドの持続的及び/又は制御放出のための注射可能な調製物、シリンジ及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20240315BHJP
A61M 5/28 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
A61M5/32
A61M5/28
(21)【出願番号】P 2020551959
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2019057845
(87)【国際公開番号】W WO2019185786
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-17
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519094341
【氏名又は名称】エディックス エスエー
【氏名又は名称原語表記】EDIX SA
【住所又は居所原語表記】5, Boulevard de La Petrusse, L-2320 Luxembourg,Luxembourg
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス ガルシア,マリア イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ロカ トレラス,ホセ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ブルゴア,タバサ
(72)【発明者】
【氏名】ラシャン,ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ラコンブ,フレデリク
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-500950(JP,A)
【文献】特表2013-517228(JP,A)
【文献】特表2016-523945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)その直径が3.00mmを超え
7.00mmまで、好ましくは3.50mmを超え
7.00mmまで、より好ましくは4.00mm~7.00mmであって、外径が1.00mm以下、内径が0.80mm以下、長さ
が10~40mm、より好ましくは20~30mmであるニードルを備え、
b)1)水と、任意に、水と混和可能な有機溶媒、好ましくはアルコール、より好ましくはエタノールとからなる水性溶媒
2)当該組成物の総重量に対して11~25重量%、好ましくは18~25重量%、より好ましくは18~22重量%、更により好ましくは18~21重量%の濃度範囲のランレオチド又はその1つの塩、好ましくはランレオチド酢酸塩
3)任意に、1又は2以上のアミノ酸、好ましくはアルギニン
4)任意に、薬学的に許容される単量体の賦形剤
を含むか又はからなる医薬組成物を含むことを特徴とするプレフィルドシリンジ。
【請求項2】
前記シリンジを用いる前記組成物の通常若しくは深部皮下注射又は筋肉内注射による患者への非経口投与が少なくとも7日間、7~14日間、14~28日間、好ましくは少なくとも28日間にわたってランレオチド又はランレオチドの塩を放出するように、該シリンジが該組成物を含むことを特徴とする請求項1に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項3】
前記組成物が、該組成物の総重量に対し
て3~23重量%、より好ましくは3~10重量%の割合でエタノールを含むことを特徴とする、請求項1に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項4】
前記組成物が、該組成物の総重量に対して0.1~13重量%の濃度範囲のアミノ酸、好ましくは、アルギニン含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項5】
0.80~1.00mmの外径、0.60~0.80mmの内径及び20~30mmの長さを有するルアーロック型標準ニードルを備え、ピストンロッドを有する手動シリンジであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項6】
0.80~1.00mmの外径、0.60~0.80mmの内径及び20~30mmの長さを有するルアーロック型標準ニードルを備え、ピストンロッドを有し、
非経口投与用徐放性医薬組成物が予め充填され、
該組成物が、水と任意に3%エチルアルコールとからなる水性溶媒、ランレオチド濃度が該組成物の総重量に対し
て18
~25重量%
、好ましくは18~22重量%、より好ましくは18~21重量%となるに十分な量のランレオチド酢酸塩、及び任意に該組成物の総重量に対して0.1~13重量%の濃度範囲のアルギニンを含む、
請求項5に記載の手動シリンジ。
【請求項7】
0.80mmの外径
、0.60mmの内径及
び20mmの長さを有するルアーロック型標準ニードルを備え、ピストンロッドを有し、
非経口投与用徐放性医薬組成物が予め充填され、
該組成物が、
水及び
ランレオチド酢酸塩を含み、ランレオチド濃度が
該組成物の総重量に対して18
~25重量%
、好ましくは18~22重量%、より好ましくは18~21重量%である、
請求項5又は6に記載の手動シリンジ。
【請求項8】
非経口投与用の延長及び/又は制御放出性医薬組成物と、1.00mm以下の外径、0.80mm以下の内径及
び10~40mmの長さを有するニードルを備えるシリンジとを含んでなり、該組成物が
a)水と、任意に、水と混和可能な有機溶媒、好ましくはアルコール、より好ましくはエタノールとからなる水性溶媒
b)当該組成物の総重量に対して11~25重量%、好ましくは18~25重量%、より好ましくは18~22重量%、更により好ましくは18~21重量%の濃度範囲のランレオチド又はその1つの塩、好ましくはランレオチド酢酸塩
c)任意に、1又は2以上のアミノ酸、好ましくはアルギニン
d)任意に、薬学的に許容される単量体の賦形剤
を含む、キット。
【請求項9】
a)水と、任意に、水と混和可能な有機溶媒、好ましくはアルコール、より好ましくはエタノールとからなる水性溶媒
b)当該組成物の総重量に対して11~25重量%、好ましくは18~25重量%、より好ましくは18~22重量%、更により好ましくは18~21重量%の濃度範囲のランレオチド又はその1つの塩、好ましくはランレオチド酢酸塩
c)任意に、1又は2以上のアミノ酸、好ましくはアルギニン
d)任意に、薬学的に許容される単量体の賦形剤
を含んでなり
、
4.00mm
~7.00m
mの直径を有し、1.00mm以下の外径、0.80mm以下の内径
、10~40mm、より好ましくは20~30mmの長さを有するニードルを備えるシリンジを用いて患者に通常若しくは深部皮下注射又は筋肉内注射により投与したとき、少なくとも7日間、好ましくは少なくとも28日間にわたってランレオチド又はランレオチドの塩を放出することを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
皮膚科学又は眼科学における末端肥大症又は神経内分泌腫瘍の治療において、通常若しくは深部皮下注射、筋肉内、皮内又は眼内注射に用いる請求項9に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランレオチドの持続的及び/又は制御放出を目的とする医薬組成物の新たな注射可能調製物に関する。
より具体的には、本発明の主題は、ランレオチド又はその1つの塩の持続的又は制御放出のための組成物を含んでなる新たな注射可能な調製物、キット又はシリンジである。
【背景技術】
【0002】
酢酸塩形態で使用されることが多い上市されているランレオチドは、天然ソマトスタチンのオクタペプチドアナログである。ソマトスタチンと同様に、ランレオチドは、種々の内分泌性、神経内分泌性、外分泌性及び傍分泌性機能のインヒビターである。ランレオチドは、ヒトソマトスタチン受容体(SSTR)2及び5に高親和性を示し、SSTR1、3、4に対しては低親和性を示す。成長ホルモン阻害の主たる理由は、SSTR2及び5受容体での当該活性である。ランレオチドは、天然ソマトスタチンより活性が強く、より長い作用期間を有する。成長ホルモン分泌に関するインスリンの選択性と比較した著明な選択性により、初めて、末端肥大症の治療に適切な組成物を含む製剤が可能となった。
現在、ランレオチド適用の主要分野は、神経内分泌腫瘍(NET)治療の分野であり、最初に、カルチノイド症候群の症状について、その後、抗増殖活性によるこの腫瘍の抑制についてである。これらについて、これまでは、末端肥大症を治療するために開発された組成物が用いられてきた。この組成物は、低用量を連続的に長年にわたって送達することができる。
【0003】
神経内分泌腫瘍の治療に関して、各治療を疾患の各進展に対して迅速に適応可能であるだけでなく、より高い用量を容易に投与可能であることも重要であり、このことの利点は、カルチノイド症候群の治療について知られている。なぜなら、そのことにより、当該腫瘍の進展を長期間にわたってより良好に抑制できるからである。このことは、投与期間が数週間又は数か月であっても、必要なレベルを迅速にもたらし、その放出がより迅速に中断され得る製剤を用いることによって、より容易となる。この目的は、注射がより容易で痛みの少ない製剤によって達成されることが望ましい。
ランレオチド組成物は、特許出願WO9607398に記載され、同出願は、ゲル化してランレオチドの長期放出をもたらす、ランレオチドを含む固形又は半固形のゲル化可能ペプチドを記載する。体液との相互作用後にゲルを自動的に形成する半固形の稠度を得るために溶媒が添加される、高粘性又はペースト状と説明される懸濁液又は半固形組成物にも言及している。ランレオチド組成物の制御放出は、注射された製剤の粘度及び体積に高度に依存すると記載されている。これら半固形物は、注射された製剤の形状保存をもたらす重要性と、大口径のニードルにより製剤を注射するように指定された義務とに関連して、ロッド又は射出「バー」と記載されている。注射部位でゲル化する耐久性堆積物を保存するために、溶媒(水)の量は、ゲル化可能なランレオチドの可溶化のリスクを回避するように制限されなければならないと指定される。
【0004】
文献WO9607398はまた、堆積物の形状と体積の重要性を説明する。注射の間にランレオチド堆積物の直径を減少させることで、インビトロ放出のより一層の可変制御が観察されることが示されている。注射後に分散して製剤の徐放を担うゲルを形成しないので、過度に希釈した組成物は望ましくないと考えられる。
文献WO2015004125は、当該組成物の総重量に対して35~55重量%の濃度範囲の活性成分としてのランレオチドと、低分子量の水溶性高分子、例えばポリビニルピロリドン(PVP)及びポリエチレングリコール(PEG)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、プロピレングリコール、グリセロール、グリコフロール、エタノール、ベンジルアルコール及びこれらの混合物から選択される共溶媒と、水と含んでなる、少なくとも2か月間の長期作用のための医薬組成物を記述する。
【0005】
ランレオチド製剤は、上市されており、Somatuline(登録商標)、Autogel(登録商標)、Somatuline L.P.又はSomatuline(登録商標) Depotなどの製剤に使用されている。例えば、製剤Somatuline(登録商標)L.P 120mgは、自動安全システムと、1.20mm×20mmの特定の組立済みのニードルとを備える0.5mLの特異的なプレフィルド(予め充填された)シリンジの形態である。上市されている組成物は、白色で半透明の外観のペースト状形態のランレオチド酢酸塩を含み、臀部の上部外側四分円内に、ニードルをその全長にわたって押し込んで(深部皮下経路により)注射しなければならない。以下、簡潔性を目的として、「Somatuline(登録商標)」との表現により、限定されないが、「Somatuline(登録商標)」、「Autogel(登録商標)」、「Somatuline L.P.」、「Somatuline(登録商標) Depot」又は当該製剤に付された他の商品名が理解されるべきである。
上市されている組成物は、ランレオチド酢酸塩の注入後、体液と接触して、その場でゲル化に至る形態及び堆積量が得られるように処方される。この効果を達成するため、少なくとも1.00mmの内径を有するニードルを用いてコンパクトな堆積物を得る必要がある。このタイプのニードルにより、半固形、ペースト状又は高粘性の製剤の注射が可能となる。
【0006】
今日まで存在している市販の組成物は、25重量%のランレオチド濃度を含む。このペースト状製剤の注射を可能にするため、約3.00mmの小さな内径及び80mmの長さを有する特別なシリンジを用いる必要がある。注射される製剤は、最大体積がわずか0.5mLであり得る。しかし、シリンジの薄さ及び長さは、大きなニードルの差し込みや、高粘性製剤の快適で正確な注射に支障を来す。
更に、少なくとも1.00mmの内径を有するニードルはまた、注射部位での又は結節形成の結果としての疼痛の原因であることに留意する。25重量%のランレオチド組成物を用いて遭遇する、ランレオチドのペースト状の稠度に関連する別の制限は、長さが少なくとも25mmのニードルの圧力低下に関連する過剰な注入力に起因して、当該製剤を筋肉内注射することができないことである。ニードルの過剰な直径、及び然程変形可能ではない堆積物の低い局所耐性のために、表在皮下経路によるこのような組成物のランレオチドを注射することも望ましくない。
上市されているランレオチドベース組成物は、数年に及び得る治療のために、特定の患者において数週間から月に1回又は2月に1回まで変化し得る期間にわたって、深部皮下投与に使用される。
現在の長さ20mmのニードルを用いると、この深部皮下経路は、時に、筋肉内又は当該2つの組織の境界になることがある。したがって、注射経路をより正確に選択できる注射可能調製物及び組成物を提供することは有用である。或る場合には、例えば、起こり得る局所耐性のリスク又は活性化合物に関係する免疫反応のリスクを回避するために、筋肉内経路を選択する方が望ましいこともある。
【0007】
したがって、注射の痛みが少なくなるよう、そして結節の問題を回避するために堆積物のタイプ及び位置を変更することができるように、注射を簡易化する必要性は大きい。末端肥大症の症例において再注射前のインターバル終時でのニーズを満たすよう、又は神経内分泌腫瘍の症例において放出レベルを上昇させ、放出プロファイルをより良好に制御するように、ランレオチド放出プロファイルを改善する必要性もある。手動で駆動されるピストンを備えるシリンジタイプの単純な又は標準的なデバイスにより投与することができる新たな組成物の提案で解決することが望ましい未達成の医学的ニーズの存在は明白である。
現在上市されているランレオチドの持続放出組成物の開発がスタートして以来、より高用量のランレオチドに対する必要性に応えるために選択される組成物は、時間的に近接した注射を行うか又は同時の注射を増やすことからなるものであり、注射に関連する問題を満足に解決していない。
【0008】
実際、より細いニードルを備える標準シリンジタイプの手動デバイスを、ランレオチドの低粘性組成物と組み合わせて用いることはこれまで想定されたことはない。なぜなら、このような組成物は当業者の好ましくないとの先入観に反するものであるからである。
事実、医薬組成物の分野の当業者は、ランレオチド濃度の数%の低下でさえ、粘度を減少させる効果を有し、したがって注射部位で体液と接触するランレオチド組成物の可溶化が早くなると理解している。
従来技術の教示、特に出願WO9607398の教示を考慮すれば、濃縮した製剤のゲル化により引き起こされる遅滞効果はもはや生じず、当該製剤の迅速な放出がもたらされると期待することができる。
更に、出願WO9607398はまた、製剤堆積物が少なくとも15日間の放出プロファイルを維持するようにランレオチドを注射するために、少なくとも1.00mmの内径を有するニードルの使用を推薦する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、上記出願に記載の濃度より低い濃度を有するランレオチド組成物を1.00mm未満の内径のニードルを用いて投与することは、本発明の特徴である2つの要点で従来技術の教示に反するものである。
全く予期せぬことに、本発明者らは、鋭意研究を行った結果、ランレオチドの低粘性組成物が、市販の組成物に用いられるニードルより細いニードルを用いて注射したとき、上記のゲルとは異なるが、ランレオチドの制御放出をもたらすことができる堆積物に至る事実を証明した。この発見により、現在上市されている組成物の特異な製造及び複雑な使用に関連する欠点を低減又は除去するランレオチド組成物の製造が可能になる。
よって、本発明によりなされた注射の改善点及び簡素化により、通常のガラス若しくはポリマー(例えばシクロオレフィンポリマー又はCOC(環式オレフィンコポリマー))製シリンジ又はカートリッジのような標準的注射デバイスの従来型レザバーにおける、ランレオチドの持続及び/又は制御放出組成物のプレフィルド調製物が可能になる。これら改善点により、長期の及び/又は制御された注射のニーズ及び現行組成物(その市販調製物は、大径のニードルと組み合わされた小径のレザバーに充填する特別な技術を要する)に適応しなかった、プレフィルド調製物の従来のサイズ及び直径のレザバーの使用、又は長期又は制御放出堆積物を注射することができる特別な注射デバイスが可能になる。
【0010】
発明の説明
よって、本発明は、下記のこと:
- 注射の問題、例えば、少なくとも1.00mmの内径を有するニードルの刺入の困難性を減少させること
- 注射部位における望ましくない効果、結節の出現を低減させて、例えば筋肉内、皮内、眼球内又は表在皮下投与を提供することによる治療範囲を拡大させること
を可能にする、ランレオチド又はその誘導体(例えば塩)をベースにする新たな注射可能組成物を提供することから本質的になる。
より詳しくは、本発明は、下記:
a)水と、任意に、水と混和可能な有機溶媒、好ましくはアルコール、より好ましくはエタノールとからなる水性溶媒
b)当該組成物の総重量に対して11~25重量%、好ましくは18~25重量%、より好ましくは18~22重量%、更により好ましくは18~21重量%の濃度範囲のランレオチド又はその1つの塩
c)任意に、1又は2以上のアミノ酸、好ましくはアルギニン
d)任意に、薬学的に許容される単量体の賦形剤
を含んでなる医薬組成物の新規な注射可能調製物であって、これら新たな組成物が、3.00mmを超える直径、好ましくは3.50mm以上の直径、より好ましくは4.00mmを超え7.00mmまでの直径を有するシリンジであって、1.00mm以下の外径、0.80mm以下の内径及び10~40mmの長さ、より好ましくは20~30mmの長さを有するニードルを備えるシリンジにパッケージされている注射可能調製物に関する。
具体的には、HyPakTM又はHyLokTMタイプのシリンジ又はClearject(登録商標)タイプのCOP製プラスチックシリンジを用いる場合、シリンジの内径は、より好ましくは、4.00mmを超え7.00mmまでの直径である。
【0011】
したがって、本発明の別の1つの観点によれば、本発明は、
a)1.00mm以下の外径と0.80mm以下の内径と好ましくは10~40mmの長さ、より好ましくは20~30mmの長さとを有するニードルを備え、その直径が3.00mmを超え、好ましくは3.50mm以上、より好ましくは4.00mmを超え7.00mmまでであるシリンジであって、
b)1)水と、任意に、水と混和可能な有機溶媒、好ましくはアルコール、より好ましくはエタノールとからなる水性溶媒
2)当該組成物の総重量に対して11~25重量%、好ましくは18~25重量%、より好ましくは18~22重量%、更により好ましくは18~21重量%の濃度範囲のランレオチド又はその1つの塩、好ましくはランレオチド酢酸塩
3)任意に、1又は2以上のアミノ酸、好ましくはアルギニン
4)任意に、薬学的に許容される単量体の賦形剤
を含む医薬組成物を含むことを特徴とするプレフィルドシリンジに関する。
【0012】
本発明の別の1つの観点によれば、本発明は、医薬組成物が予め充填されたシリンジから構成されるアセンブリ(組立体)であって、
a)プレフィルドシリンジは、3.00mmを超える直径、好ましくは3.50mm以上、より好ましくは4.00mmを超え7.00mmまでの直径を有し、1.00mm以下の外径と0.80mm以下の内径と好ましくは10~40mmの長さ、より好ましくは20~30mmの長さとを有するニードルを備え、
b)医薬組成物は
1)水と、任意に、水と混和可能な有機溶媒、好ましくはアルコール、より好ましくはエタノールとからなる水性溶媒
2)当該組成物の総重量に対して11~25重量%、好ましくは18~25重量%、より好ましくは18~22重量%、更により好ましくは18~21重量%の濃度範囲のランレオチド又はその1つの塩、好ましくはランレオチド酢酸塩
3)任意に、1又は2以上のアミノ酸、好ましくはアルギニン
4)任意に、薬学的に許容される単量体の賦形剤
を含むか又はからなり、
前記医薬組成物は前記シリンジに含有されていることを特徴とする組立体に関する。
【0013】
本発明の好適な実施形態によれば、単量体賦形剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、フコース、クエン酸又はその塩若しくはエステル、乳酸又はその塩若しくはエステル、酢酸又はその塩若しくはエステル及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つ化合物であり、本発明の医薬組成物は、重合体賦形剤、例えば(d,l)ポリ乳酸(PLA)、酪酸とグリコール酸とのコポリマー(PLGA)、ポリフェニレンプロピレン、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、脂肪酸/セバシン酸コポリマー、ポリ(エルカ酸二量体-セバシン酸)コポリマー、ポリ(フマル酸-セバシン酸)コポリマー、キチン、コラーゲン、ゼラチン、モノメチルポリエチレングリコール/ポリ乳酸、モノメチルポリエチレングリコール/ポリ乳酸コポリマー、ポリエチレングリコール/ポリ乳酸又はポリエチレングリコール/ポリ乳酸コポリマーを含まない。
【0014】
好適な実施形態によれば、本発明は、ピストンロッドを備え、0.80~1.00mmの外径と0.60~0.80mmの内径と約20mmの長さとを有するルアーロック型標準ニードルを備える手動シリンジであって、非経口投与用の持続放出医薬組成物が予め充填されており、該組成物が、
水と、任意に、3%エチルアルコールとからなる水性溶媒、
ランレオチド濃度が当該組成物の総重量に対して好ましくは約18~25重量%、より好ましくは18~22重量%、更により好ましくは18~21重量%となるに十分な量のランレオチド酢酸塩
任意に、当該組成物の総重量に対して0.1~13重量%の濃度範囲のアルギニン
を含む、手動シリンジに関する。
【0015】
より具体的には、本発明は、ピストンロッドを備え、約0.80mmの外径と約0.60mmの内径と約20mmの長さとを有するルアーロック型標準ニードルを備える手動シリンジであって、非経口投与用の持続放出医薬組成物が予め充填されており、該組成物が、水と、水に対して約20重量%のランレオチド濃度となるに十分な量のランレオチド酢酸塩を含んでなる、手動シリンジに関する。
本発明の1つの実施形態によれば、キットは、上記の医薬組成物と、1.00mm以下の外径と0.80mm以下の内径と好ましくは10~40mmの長さを有するニードルを備えるシリンジとを含んでなる。
注射は、ピストンロッドをシリンジに沿って手動で駆動させることにより実施される。
好適な実施形態によれば、本発明はまた、活性化合物を少なくとも1か月間持続放出するための上記医薬組成物を含むプレフィルドシリンジに関する。
【0016】
本発明の別の1つの実施形態によれば、シリンジは、標準的なピストンロッドを備え、0.90~1.00mmの外径と0.70~0.80mmの内径と20~30mmの長さとを有するニードル(標準的なニードルであり得る)を備えるルアーロック型の標準的な手動シリンジである。
本発明の別の好適な実施形態によれば、シリンジは、標準的なピストンロッドを備え、0.90mmの外径と0.70mmの内径と20mmの長さを有するニードル(標準的なニードルであり得る)を備えるルアーロック型の標準的な手動シリンジであって、非経口投与用の持続放出医薬組成物が予め充填されており、前記組成物が、水と当該組成物の総重量に対して3重量%のエチルアルコールとからなる水性溶媒、当該組成物の総重量に対して好ましくは18~25重量%、より好ましくは18~22重量%、更により好ましくは18~21重量%の濃度のランレオチド、及び、当該組成物の総重量に対して0.1~13重量%のアルギニンを含んでなる、ルアーロック型の標準的な手動シリンジである。
本発明の別の好適な実施形態によれば、手動シリンジは、ピストンロッドを備え、約0.80mmの外径と約0.60mmの内径と約20mmの長さを有するルアーロック型の標準的なニードルを備え、非経口投与用の持続放出医薬組成物が予め充填されており、該組成物が、水と、当該組成物の総重量に対して20重量%のランレオチド濃度のランレオチド酢酸塩とを含んでなる。
【0017】
好適な実施形態によれば、本発明の組成物は、患者に対して、標準若しくは深部皮下注射により非経口的に又は筋肉内に投与される。
好適な実施形態によれば、本発明の組成物は、前記シリンジを用いて患者に標準又は深部皮下注射により非経口的に又は筋肉内に投与すると、少なくとも7日間、7~14日間、14~28日間、好ましくは少なくとも28日間にわたってランレオチド又はランレオチドの塩を放出するものである。
好適な実施形態によれば、本発明の組成物は、少なくとも7日間、7~14日間、14~28日間、好ましくは少なくとも28日間にわたってランレオチド又はランレオチドの塩を放出する、前記シリンジを用いる患者に標準若しくは深部皮下注射又は筋肉内注射による非経口投与に好適な剤形である。
【0018】
好適な実施形態によれば、ランレオチドは、塩又は遊離塩基の形態である。
本発明に使用できるランレオチドの塩は、好ましくは、有機酸の薬学的に許容される塩、例えば、酢酸、フェニル酢酸、乳酸、リンゴ酸、パモン酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、メタンスルホン酸若しくはトルエンスルホン酸の薬学的に許容される塩、又は無機酸の薬学的に許容される塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸若しくはリン酸の薬学的に許容される塩である。
好適な実施形態によれば、ランレオチドはランレオチド酢酸塩の形態である。
別の好適な実施形態によれば、ランレオチドは遊離塩基の形態である。
本発明の意味において、ランレオチドの形態が何であれ(すなわち、塩形態であっても遊離塩基形態であっても)、ランレオチドの量(例えば組成物中の濃度又は比率で表される)は、遊離塩基の形態のランレオチドを指す。
有利には、ランレオチドは、組成物の総重量に対して18重量%、18.5重量%、19重量%、19.5重量%、20重量%、20.5重量%、21重量%、21.5重量%、22%重量%、22.5%重量%、23重量%、23.5重量%、24重量%、24.5重量%又は25重量%の濃度で存在する。
【0019】
注射後に操作可能な固形押出物を形成する組成物を注射可能な半固体として定義する場合、医薬組成物は、それ自体又は本発明のプレフィルドシリンジ中に存在するものも、粘性組成物であるが、半固体ではない。この組成物は、標準的な注射デバイス(例えば、備えた手動で駆動するピストンロッドを備え、従来型ニードルを取り付けられたシリンジ)を用いて注射可能である。シリンジ及びニードルの好ましいサイズは上記のとおりである。
【0020】
組成物の粘性その他の物理的状態の特性は、投与ステップの評価時に、注射可能性として評価され得る。注射可能性は、模擬注射試験を行うことにより及び異なる物理的方法により決定することができる。注射可能性は、注射力又はシリンジ注射力(SIF)として報告することができる。
用語「注射可能性」(注射力を測定することにより決定することができる)は、注射デバイス(例えば、シリンジ又はインジェクタ)を用いる非経口投与に関する当該組成物の適合性をいう。SIFは較正したセル(NLC 100N、Lloyd Instruments Ltd.)が取り付けられたダイナモメータ(L1000R、Lloyd Instruments Ltd.)を用いて測定することができる。本発明の医薬組成物は、その直径が3.00mmを超え、好ましくは3.50mm以上、より好ましくは4.00mmを超え7.00mmまでであるシリンジであって、現行ニードルに匹敵する0.60~1.00mmの内径を有する20mm長のニードルに連結されたシリンジ中にパッケージすることができ、100mm/分の低速での模擬射出の間に注射に関する適合性について試験することができる。ここで、装置によってピストンに加えられる力及びピストンの変位が記録される。
模擬注射は空気中で垂直に実施される。ニュートン(N)で表わされる最大注射力は、射出の間に収集されたデータから導かれる。注射力の例は実施例9で詳述する。
【0021】
微細ニードルを用いても、Somatuline(登録商標)タイプの微小シリンジでさえも、Somatuline(登録商標)タイプの市販製剤の手動注射を行えず、したがってより大きい内径を有する標準的なシリンジであれば尚更であることは当業者に知られている。
好適な実施形態によれば、医薬組成物は、それ自体又は本発明のプレフィルドシリンジ中に存在するものも、上記の方法により試験したとき、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14Nの範囲のSIFにより定義される注射可能性を有する。
好適な実施形態によれば、医薬組成物は、それ自体又は本発明のプレフィルドシリンジ中に存在するものも、好ましくは18~25%、より好ましくは18~22%、更により好ましくは18~21%のランレオチドを含む組成物について上記の方法及び1.00mmの内径を有するニードルを用いて試験したとき、5~12Nの範囲又は5~14Nの範囲のSIFにより定義される注射可能性を示す。
好ましくは、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物のSIFは5~6Nの範囲である。
別の好適な実施形態によれば、医薬組成物は、それ自体又は本発明のプレフィルドシリンジ中に存在するものも、好ましくは18~25%、より好ましくは18~22%、更により好ましくは18~21%のランレオチドを含む組成物について上記の方法及び0.80mmの内径を有するニードルを用いて試験したとき、(市販の25%ランレオチ製剤のSIFより常に小さい)7~12N又は5~14Nの範囲のSIFにより定義される注射可能性を有する。好ましくは、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物のSIFは7~9Nの範囲である。
【0022】
好適な実施形態によれば、医薬組成物は、それ自体又は本発明のプレフィルドシリンジ中に存在するものも、好ましくは18~25%、より好ましくは18~22%、更により好ましくは18~21%のランレオチドを含む組成物について上記の方法及び0.60mmの内径を有するニードルを用いて試験したとき、9~14Nの範囲のSIFにより定義される注射可能性を有する。
好ましくは、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物のSIFは9~12Nの範囲である。
対して、市販の25%ランレオチド組成物は、3.50mmを超える直径を有するシリンジを備えるデバイスから手動で押し出すことができない。このような組成物を注射するためには、長さ20mmで内径1.00mmのニードルに連結された直径3.50mmのシリンジを用い、14Nより大きな力を加えて、非常にゆっくりと注射する必要がある。
全ての場合において同一条件下で市販デバイスと異なるデバイスを用いて測定される注入力(ニュートン)は、例えば、市販のSomatuline(登録商標)タイプを代表する「24.6%組成物」を用いたときの14.3Nから、水中の19%ランレオチド組成物についての5.5Nまで変化する。
空注射の際にもデバイスの摩擦に関連する2Nのオーダーの残留力が存在することが知られているので、これは、(依然として類似する)これら2つの組成物の注射に必要とされる力の70%を超える減少であり、本発明により開発可能な特性の有用な閾値を証明する。予想外なことに、濃度の相対的に僅かな減少が、注入力の非常に大きな低減をもたらす。
【0023】
埋込力に関して、ニードル直径の減少は、(例えば患者自身により)簡単に埋め込むことができるニードルと、専門家の経験、技術及び訓練を必要とする複雑な埋込手順との間で明白な違いが生じ得る減少を導く。
ニードルの埋込力はニードルの口径に比例する。直径の一見小さな差(例えば、1.00mmと1.20mmとの差)は、1.5倍大きい衝撃表面又は域に相当する。
痛みを回避して注射を容易にするために注射ニードルの直径をできる限り減少させることの重要性は、Barnettらによる論文「Fracture mechanics model of needle cutting tissue」(2015)において説明されており、著者らは、皮膚を通すニードルの貫通又は刺入の力に関して閾値が存在することを証明している:
- 1.60mm(16G)~1.2mm(18G)の範囲の外径を有するニードルについては、力は同等であり、(当業者が高いと考える)2.5~3Nの間で変動し、
- 0.80mm(21G)~0.50mm(25G)の範囲の外径を有するニードルについては、力は2減少して、1~1.5Nの間で変動する。
事実、このような直径の一見小さな差は、圧力低下、よって注入力の上昇に対応し、同一の製剤でも手動の投与ができなくなることもある。
【0024】
Somatuline(登録商標)などの現在の市販調製物に用いられるニードルの別の限界は、外径を増加させないように、例えば0.10mmの細い壁のカニューレを使用する必要性にも関係する。これは長いベベルを有する可能性を低下させ、鋭くなるように働き、したがって埋込の間の変形及びコアリングのリスクを上昇させる。このことが、ニードルを埋め込む前に皮膚を引っ張るなどの通常でない複雑な技術を要求し得る。このことから、織へのニードルの挿入が複雑となり、更に痛いものとなる。したがって、本発明の利点の1つは、例えば0.10mm~0.20mmの範囲、好ましくは0.15mmのより厚い壁を有するカニューレに戻すことができることである。
実際、ニードルのベベルは、製剤を注射するためにカニューレが刺入される切開の作られ方を決定する。外径が1.00mmを超えるニードルでは、ベベル設計により自由度がある厚い壁を有することがより興味深い;事実、薄い壁では、ニードルの先端を自由に成形することが困難であり、このことにより切開が複雑となるため患者に苦痛となり得る。
【0025】
本発明の標準的なニードル(外径が1.00mm以下)を用いることで、ベベルのカスタマイズが可能であるため、現在市販の組成物のニードルより小さいままの外径を有するニードルについてユーザの快適性を向上させることができる。
最後に、外径が1.00mm以下のニードルは、貫通力が弱いと考えられるため、僅か0.10mmの厚さの壁にベベルが作られ、外径は内径に匹敵して減少する。
逆に、外径が1.20mm以上のニードルは、貫通力が強いと考えられるため、むしろベベルは0.150mmの厚さで作られる必要があり、その外径は、内径に比べて更に増加する。
最大で21%又は22%、更には25%のランレオチドの組成物は、ルアーロック型ストッパが嵌め込まれた1mLのシリンジBD Hypak(登録商標) Long又はClearject(登録商標)タイプ(Gerresheimer)のCOPの0.5mLプラスチックシリンジに、(例えばブチル製の)ピストンを配置する前に、通常に装填できる。ルアーロック端に標準的な21Gの25mm又は16mmニードルを取り付けることにより、また堆積条件により、異なる注射条件及び深度で同じプロファイルを得るように注射することができる。
【0026】
本発明の別の主題によると、医薬組成物は、それ自体又は本発明のプレフィルドシリンジ中に存在するものも、アルコール、好ましくはエタノールを更に含んでなる。当業者は、水中約5~10重量%の低濃度の有機溶媒の添加でさえ安定性の問題に繋がると考えるであろう。
発明者らは、本発明の調製物において、水中少なくとも5%、最大25%の濃度でエタノールを含む混合物を用いることができ、このことにより、安定で均一なランレオチド組成物の取得が可能であることを発見した。
予期せぬことに、発明者らは、注射の際の痛み又は局所耐性の問題を起こさない低い割合のアルコールを用いて、これら組成物が、同じ濃度のランレオチドで、水のみを用いて得られたものより粘度が高いく、おそらく、この条件下での活性物質の安定性を説明できることを見出した。
一方、3~23%、優先的には3~10%のエタノールを含む医薬組成物は、それ自体又は本発明のプレフィルドシリンジ中に存在するものも、最終滅菌にてガンマ線を用いない、即時使用可能な無菌調製物のための方法をより容易に使用でき有効化できる。また、注射する製剤の簡単で迅速な即時調製物を用いて、室温で安定なランレオチドの固体調製物を想起できる。
【0027】
別の好適な実施形態によると、医薬組成物は、それ自体又は本発明のプレフィルドシリンジ中に存在するものも、当該組成物の総重量に対して3~23重量%、好ましくは3~10重量%の濃度のエタノールを含んでなる。
別の好適な実施形態によると、水中20重量%のランレオチド、水中5~25重量%の濃度のエタノールを含む医薬組成物は、それ自体又は本発明のプレフィルドシリンジ中に存在するものも、上記方法で試験されるとき、7~9Nの範囲のSIFにより定義される注射可能性を有する。
好ましくは、医薬組成物のSIFは7~8Nの範囲である。例えば水中20重量%のランレオチド及び5%又は10%のエタノールを含む医薬組成物を用いて実施される注入強度試験は、それぞれ8.3Nと7.3Nの注入強度を示す。
この力は、25%の市販製剤の代表的混合物と比べ50%ほど低い。約15Nの手による注入力が試験条件下で許容可能な最大であると考えるならば、この最大から十分に離れている本発明の調製物で示される力の減少は顕著な改善である。
【0028】
水‐エタノール混合物をベースとする新たな組成物により、例えば市販製剤に匹敵する25%に近い、より高濃度のランレオチドの調製も可能であり、高い割合であるが、依然として問題なく注射可能である少量、例えば水中25%のエタノールを用いることも可能である。更に、現在の製剤より大幅に流動性の高い組成物が得られる(実施例9参照)。注入力の試験によると、この組成物は、例えば、内径0.80mmのニードルを7.3Nの力(市販の25%ランレオチド製剤の代表的混合物の70%未満である)で用いて注射することができる。
したがって、本発明の主題はまた、組成物の総重量に対して約18~25重量%の濃度のランレオチドと、3~23重量%の濃度のエタノールとを含む、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物である。
動物で得られ実施例に示された結果から、本発明の水‐エタノール組成物は、市販形態と比べて、ランレオチドの放出についての新たなプロファイルを想定することを可能にし、したがって例えば、市販製剤と比べてバースト又はCmaxを1.5~2倍減少させることができ、このことはまた、注射後2~4週間の循環ランレオチドレベルを少なくとも2倍にすることができることを示す(
図2~4参照)。
好ましくは、エタノールを含まない本発明の組成物、キット又はプレフィルドシリンジは、当該組成物の総重量に対して18~25重量%、より好ましくは18~22重量%、更により好ましくは18~21重量%のランレオチドを含んでなり、エタノールを含むものは当該組成物の総重量に対して18~25重量%のランレオチドを含む。
【0029】
別の実施形態によると、本発明の組成物は、当該組成物の総重量に対して0.1~13重量%の範囲の濃度で存在する少なくとも1つのアミノ酸、好ましくはアルギニンを含んでなる。
発明者らはまた、ランレオチドと少なくとも1つのアミノ酸との比率及び混合条件(媒体のタイプ、温度及び時間)に依存して、Somatuline(登録商標)などの現在の製剤より良好に制御されたランレオチド放出プロファイル及び1週間~数週間の作用期間が得られることを証明した。
アミノ酸を添加するこのアプローチは、種々の新たな組成物を導く。例えば、アルギニンは、種々の濃度のランレオチド、例えば水中21%若しくは22%以下又は25%以下の濃度のランレオチドを含む組成物に添加することができる。
アルギニンの重量は、組成物の総重量に対して0.1~13%の間で変わり得る。
【0030】
別の好適な実施形態によると、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は、少なくとも1か月間のランレオチドの持続放出が意図され、
- 18重量%、18.5重量%、19重量%、19.5重量%、20重量%、20.5重量%、21重量%、21.5重量%、22重量%、22.5重量%、23重量%、23.5重量%、24重量%、24.5重量%、又は25重量%のランレオチド
- 0~23重量%、好ましくは3~10重量%のエタノール
- 0~13重量%、好ましくは1~13重量%、より好ましくは2~13重量%のアルギニン
を含むか又は本質的になる。
皮下(SC)又は筋肉内(IM)投与経路の選択により、同一組成物から、放出プロファイルを必要に応じて適応させることが可能である。これら有利で新規な特徴は本発明の別の主題をも構成する。
【0031】
微細なニードルに関係するこれら全ての希釈された形態は、その場でのゲル化について制御された容量の堆積物をもたらさないが、注射位置でのより広い拡散又は分布を導き、又は更に、ランレオチドのその場での沈殿の後でより平坦な形状の堆積物に至る。
この条件下で、例えばランレオチドの可溶化により、迅速な又は非制御の放出が得られると期待されるが、予想外にも、交換表面の増大は、放出を異なって制御する小容量の沈殿物の形成を導き、有用で再現可能な様式で、より通常の注射により上記の種々の問題を解決する。
本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は、非経口投与される。好適な実施形態によると、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は、皮下注射、筋肉内注射又は深部皮下注射、より好ましくは皮下注射又は筋肉内注射により投与される。
【0032】
新たな組成物として、本発明者らは、とりわけ、皮下注射され、2週間ごと又は4週間ごとの注射で、現在の形態より高い最終レベル又はCminを有するより平坦なレベルが得られる、最大で21%若しくは22%又は25%のランレオチドを含む、より希釈された組成物の可能性を見出した。このタイプのプロファイルは、例えば末端肥大症に有用であり、各注射間隔の終時の低効率の問題を解決する可能性が高い。筋肉内注射される同じ形態により、例えばNET(神経内分泌腫瘍)に有用な高用量のニーズに対して2週間未満の期間であっても、各症例に特異的な注射間隔に従って各患者に適応させるニーズを可能にするプロファイルで、現在の形態より高いレベル及びCminが得られる。
この新たな調製物は、眼科学、糖尿病学又は皮膚科学などのランレオチドの局部的適用に大いに有利である。
これら新たな調製物はすべて、注射が簡単で、より細いニードルを用いる注射と、密でなく又は抵抗性が低く、よってよりフラットである堆積物とにより、現在の製剤より確実に痛みが少ない。したがって、これらは、近接した注射でも相性が良い。上記のとおり、注入力は、例えば、市販製剤に比べて3倍以上も低くなり得、このことは好ましく、標準シリンジタイプの手動装置を用いて患者自身又は周囲の人による投与さえも可能にする。
【0033】
本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は、非経口投与される。
好適な実施形態によると、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は、皮下注射、筋肉内注射又は深部皮下注射、より好ましくは皮下注射又は筋肉内注射により投与される。好ましい皮下経路に関して、注射容量は、好ましくは、組成物の総重量に対して18~25重量%、より好ましくは18~22重量%、更により好ましくは18~21重量%の範囲のランレオチドを含むランレオチド組成物で、2又は1.9又は1.8又は1.7又は1.6又は1.5又は1.4又は1.3又は1.2又は1.1又は1mLを超えない。好適な実施形態によると、ランレオチドの持続放出は、ヒトで少なくとも2か月間である。
好適な実施形態によると、ランレオチドの持続放出は、ヒトで少なくとも3か月間である。
本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は、少なくとも7日間、7~14日間、14~28日間、2か月間若しくは60日間又は2か月間以上、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89若しくは90日間の持続放出を可能にする。
【0034】
好適な実施形態によると、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は、少なくとも60日間の持続放出を可能にする。
別の好適な実施形態によると、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は、少なくとも7日間の持続放出を可能にする。
別の好適な実施形態によると、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は、少なくとも90日間の持続放出を可能にする。
より好適な実施形態によると、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は、少なくとも14日間の持続放出を可能にする。
別のより好適な実施形態によると、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は、少なくとも28日間の持続放出を可能にする。
【0035】
上記のように、ランレオチドは、ソマトスタチンの市販アナログである。これは、下垂体性又は非下垂体性成長ホルモン分泌腫瘍により起こされる末端肥大症の治療、症状管理、神経内分泌腫瘍(特に、カルチノイド腫瘍及びVIポーマ(VIPoma))の抗増殖治療及び甲状腺刺激アデノーマの治療に適応される。
したがって、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は神経内分泌腫瘍により起こる症状の管理と制御において、特にカルチノイド腫瘍とポーマの抗増殖治療に、及び甲状腺刺激アデノーマの治療において、下垂体性又は非下垂体性腫瘍分泌成長ホルモンによる末端肥大症治療に有用である。好適な実施形態によると、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は末端肥大症又は神経内分泌腫瘍の治療に、例えば機能性及び非機能性胃腸膵管神経内分泌腫瘍に有用である。
【0036】
本発明の態様によると、末端肥大症又はNETの患者は、下記の実施形態のいずれかに示す医薬組成物を治療有効量で投与することにより治療することができる。
1つの実施形態によると、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は、2週間ごと又は好ましくは4週間若しくは8週間若しくは12週間若しくは16週間ごとを超えない頻度で必要とする患者へ投与若しくは注射されるか又はそのような投与若しくは注射のために調製される。4週間ごとに投与又は注射することが好ましい。
別の好適な実施形態によると、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は、単回注射で投与されるか又は単回注射での投与のために調製される。
好ましくは、かかる方法は、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物を、2週間ごと又は4週間ごと又は8週間ごと又は12週間ごと又は14週間ごと又は16週間ごとに少なくとも1回投与することを含む。より詳しくは、かかる方法は、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物を12週間ごとに少なくとも1回投与することを含む。
【0037】
別の実施形態によると、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は、単回注射により投与される。好ましくは、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は、筋肉内、皮下又は深部皮下に注射される。
別の実施形態によると、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は、60、90、120、240又は360mgのランレオチドの用量で投与される。好ましくは、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は、120、240又は360mgのランレオチドの用量で投与される。より微細なニードルを用いたより容易な注射及びより小さくより目立たず、したがってより快適なその場(in situ)堆積を可能にする本発明の利点は、単回注射用により高用量、例えば市販製剤の2倍以上の用量(例えば神経内分泌腫瘍などの治療に必要となる用量)の調製を可能にする。
本発明の態様によると、神経内分泌腫瘍の患者は、上記の実施形態のいずれかに示す医薬組成物を治療有効量で投与することにより治療することができる。好ましくは、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物は、神経内分泌腫瘍の抗増殖管理のため又は神経内分泌腫瘍が引き起こす症状を回避するために投与される。
1つの実施形態によると、これら症状は、潮紅、下痢及び腹部痙攣から選択される。
【0038】
本発明の態様によると、甲状腺刺激アデノーマの患者は、上記の実施形態のいずれかに示す医薬組成物を治療有効量で投与することにより治療できる。
別の実施形態によると、本発明は、高度に濃縮されておらず、より微細なニードルで投与されるので、より小さな堆積物の形成及びより高精度の投薬量を可能にし、よって例えば眼科学におけるランレオチドの適用について、より少なくより低粘度の用量、例えば緑内障、黄斑浮腫、炎症、糖尿病性網膜症又は加齢性黄斑変性症の患者について20mg以下又は0.1mL以下用量の調製を可能にする。これら特性はまた、皮膚科学における製剤の適用、例えばケロイドの治療に適切である。
また、本発明のシリンジ及び製剤の利点により、この少容量について短いピストンストロークで迅速に注射を行うことが可能になる。
本発明の態様によると、ランレオチドの装填量が低いこの低粘性製剤はまた、1以上の別の活性成分(例えば眼科学では、デキサメタゾンなどのグルココルチコイド若しくはモノクローナル抗体又はこれら活性化合物の2以上の混合物)がランレオチドに加えられた組合せ組成物(同じ治療のために組合せ放出を制御することができる)のより効果的な生産を可能にする。
【0039】
上記の医薬組成物は、下記のステップを含んでなる方法により製造される:
・ シリンジ内の、水と任意にエタノール及び/又はアミノ酸、例えばアルギニンとを含む水性溶媒の調製
・ 適切な容器、例えば第2のシリンジ又はシリンジ状容器へのランレオチドの導入
・ 第2のシリンジ又はシリンジ状容器と2方向コネクタとの接続、及び、水性溶媒によるランレオチドの水和、及び、5~70℃の温度、好ましくは室温での混合による組成物の均質化。
加えて、製造プロセス全体は、当業者に公地の装置により、重要なプロセスパラメータ(例えば温度、圧力、サイクル数及びシリンジ対バルブ直径比)に関して制御され得る。
【0040】
本発明の別の好適な実施形態によると、活性成分は、水媒体中単独で又はアルギニンともに、放出制御の必要性に応じて変化する比率と回数で、予備処理され得る。例えば、ランレオチドは、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物の製造前に、凍結乾燥、乾燥、粉砕、造粒、圧縮成形、篩分けにより処理され得る。
ガンマ線照射、電子ビーム照射、蒸気又は滅菌ろ過などのプロセス滅菌技術を用いて無菌医薬組成物を取得することができる。
本発明の別の好適な実施形態によると、本発明の医薬組成物それ自体又はプレフィルドシリンジ中に存在する医薬組成物の製造は、無菌条件下で行われる。
本発明の医薬組成物は、予め充填された即時使用可能な調製物として利用可能であってもよいし、即時再構成可能な調製物(活性成分を含む凍結乾燥製剤が水性溶媒及び再構成用溶媒としての必要な他の添加物を用いて即時に再構成され得る調製物)として利用可能であってもよい。
別の実施形態として、医薬組成物は、プレフィルドシリンジに詰められている。
【0041】
本発明はまた、非経口投与用の延長及び/又は制御放出性医薬組成物と、1.00mm以下の外径、0.80mm以下の内径及び好ましくは10~40mmの長さを有するニードルを備えるシリンジとを含んでなり、該組成物が
a)水と、任意に、水と混和可能な有機溶媒、好ましくはアルコール、より好ましくはエタノールとからなる水性溶媒
b)当該組成物の総重量に対して11~25重量%、好ましくは18~25重量%、より好ましくは18~22重量%、更により好ましくは18~21重量%の濃度範囲のランレオチド又はその1つの塩、好ましくはランレオチド酢酸塩
c)任意に、1又は2以上のアミノ酸、好ましくはアルギニン
d)任意に、薬学的に許容される単量体の賦形剤
を含む、キットに関する。
本発明の新規条件下で、堆積物は、注射部位で患者の体組織及び体液との相互作用後にランレオチドの沈降により得られる。より小さくより平坦なタイプのこの堆積物は、抵抗性に優れる。
予想外なことに、現在の市販組成物の半固体又はペースト状形態より希釈された形態で用いられるランレオチドは、外径が少なくとも1.20mmの現在のニードルより薄いニードルを備えた注射デバイスを用いる調製物において組み合わすことができる。この新たな調製物による注射は、この製剤の全ての治療的ニーズに有用であり、現在の制御された形態による限界又は問題を解決することができる、有利な新たな特性を有する制御された形態をもたらす異なる堆積物を導く。
【0042】
別の好適な実施形態によると、本発明は、
a)水と、任意に、水と混和可能な有機溶媒、好ましくはアルコール、より好ましくはエタノールとからなる水性溶媒
b)当該組成物の総重量に対して11~25重量%、好ましくは18~25重量%、より好ましくは18~22重量%、更により好ましくは18~21重量%の濃度範囲のランレオチド又はその1つの塩、好ましくはランレオチド酢酸塩
c)任意に、1又は2以上のアミノ酸、好ましくはアルギニン
d)任意に、薬学的に許容される単量体の賦形剤
を含んでなり、
3.50mmのオーダーの直径、より好ましくは4.00mmを超えて7.00mmまでの直径を有し、1.00mm以下の外径、0.80mm以下の内径、好ましくは10~40mm、より好ましくは20~30mmの長さを有するニードルを備えるシリンジを用いて患者に通常若しくは深部皮下注射又は筋肉内注射により投与したとき、少なくとも7日間、好ましくは少なくとも28日間にわたってランレオチド又はランレオチドの塩を放出することを特徴とする医薬組成物に関する。
得られた堆積物は、たとえ異なっても、ランレオチドの制御又は遅延放出効果を維持することを証明するために動物実験が実施された。
【0043】
目的に応じて、本発明のランレオチド組成物を有する多くの異なる新たな製剤及びキット又はプレフィルドシリンジを製造することができる。制限されないが、例として、下記の種々のタイプのものが可能である:
- 皮下投与について、外径0.80mm及び長さ20mmのニードルを取り付けた直径3.50mmのシリンジにおける、水中20%のランレオチドを含む組成物を最大で120mgの用量にて用いて4週間にわたる現在の形態、例えばSomatuline(登録商標)のランレオチド放出プロファイルに類似するランレオチド放出プロファイル
- 皮下投与について、外径1.00mm及び長さ20mmのニードルを取り付けた内径3.50mmのシリンジにおける、水中20%のランレオチドを含む組成物を240mg以上の用量にて用いて4週間にわたる現在の形態、例えばSomatuline(登録商標)のランレオチド放出プロファイルより高いランレオチド放出プロファイル
- 筋肉内投与について、外径0.80mm及び長さ40mmのニードルを取り付けた直径3.50mmのシリンジにおける、水中20%のランレオチドを含む組成物を最大で120mgの用量にて用いて2週間にわたる現在の形態、例えばSomatuline(登録商標)のランレオチド放出プロファイルより高いランレオチド放出プロファイル。
【0044】
- 皮下投与について、外径0.60mm及び長さ20mmのニードルを取り付けた直径3.00mmのシリンジにおける、水中20%のランレオチドを含む組成物を最大で100mgの用量にて用いて4週間にわたる現在の形態、例えばSomatuline(登録商標)のランレオチド放出プロファイルに類似するランレオチド放出プロファイル
- 外径0.60mm以下のニードルを取り付けた直径3.00mm以下のシリンジにおける、水中20%のランレオチドを含む組成物を20mg以下の用量にて用いて4週間にわたる現在の形態、例えばSomatuline(登録商標)のランレオチド放出プロファイルに類似するランレオチド放出プロファイル
- 筋肉内投与について、外径0.70mm及び長さ30mmのニードルを取り付けた直径3.00mmのシリンジにおいて、水中20%のランレオチドを含む組成物を最大で100mgの用量にて用いて2週間にわたる現在の形態、例えばSomatuline(登録商標)のランレオチド出プロファイルより高いランレオチド出プロファイル
- 21又は20Gの短い皮下用又は長い筋肉内用ルアーロック型ニードルを取り付けた従来の標準のプレフィルドシリンジにおける、水中「20%組成物」を120mg以上までにて用いて4又は2週間にわたる現在の形態、例えばSomatuline(登録商標)のランレオチド放出プロファイルに類似するか又はより高いランレオチド放出プロファイル
【0045】
- 皮下又は筋肉内投与について、無菌的に製造され即時に調製された室温で安定な、標準シリンジにおいて、5:95のアルコール/水混合液中20%のランレオチドを含む組成物を120mg以上までにて用いて4又は2週間にわたる現在の形態、例えばSomatuline(登録商標)のランレオチド放出プロファイルに類似するか又はより高いランレオチド放出プロファイル
- 皮下又は筋肉内投与について、無菌的に製造され即時に調製された室温で安定な、標準シリンジにおいて、25:75のアルコール/水混合液中25%のランレオチドを含む組成物を120mg以上までにて用いて4又は8週間にわたる現在の形態、例えばSomatuline(登録商標)のランレオチド放出プロファイルより平坦なランレオチド放出プロファイル
- 短い皮下用又は長い筋肉内用ルアーロック型ニードルを取り付けた従来の標準のプレフィルドシリンジにおける、水中20%のランレオチド及び12%のアルギニンを含む組成物を120mg以上までにて用いて2、4、8又は12週間にわたる現在の形態、例えばSomatuline(登録商標)のランレオチド放出プロファイルより平坦なランレオチド放出プロファイル。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は、内径が1.00mmのニードルを備えた直径3.50mmのシリンジに含まれる19重量%及び25重量%ランレオチド組成物の空気中への注射後に得られた同等のランレオチド酢酸塩押出物を示す。
【
図2】
図2は、実施例13により調製された2つの組成物A及びBについて、時間関数としてランレオチド血漿濃度の変化を示す。
【
図3】
図3は、実施例14により調製された2つの組成物A及びBについて、時間関数としてランレオチド血漿濃度の変化を示す。
【
図4】
図4は、実施例15により調製された2つの組成物A及びBについて、時間関数としてランレオチド血漿濃度の変化を示す。
【
図5】
図5は、実施例17により調製された2つの組成物A及びBについて、時間関数としてランレオチド血漿濃度の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
発明の詳細な説明
本発明の実施形態に関するいくつかの例を明細に記載することで、より詳細に本発明を説明することができる。
【実施例】
【0048】
実施例1:2つのタイプの溶媒、水及び95:5%水/エチルアルコール混合液中の、ランレオチド酢酸塩の形態の18%~21%又は22%又は25%のランレオチド組成物の調製
調製は、一方がピストンで閉じられ、他方が開口して、バルブ開口を制御することにより真空下でランレオチド酢酸粉体を詰め込み、該粉体を溶媒と水和させて、生成物を前進後退させて混合することが随意にできるようにバルブに接続された2つのシリンジ型容器の間で前進後退させることにより行い、任意に、製造される混合物のタイプを制御するために、働いている力を測定することにより行う。
これら混合物の製造方法を、市販製剤と同等の25%ランレオチド組成物の製造方法と比較することにより、18~22%調製物の製造がはるかに容易で迅速であり、混合力も小さくて済むことが分かる。このタイプの混合物をより大容量にも適用でき、半固体又はペースト状混合物に特化した方法以外の技法により当該混合物を製造することもできる。
混合は、当業者に公知のプロトコルにより、流体形態で行われるようにシリンジに充填し、又は使用時に即時に水和させて手で混合できる粉末若しくは凍結乾燥形態で各シリンジに必要用量を詰めることができるように簡潔化される。
本発明のランレオチドの別の調製物により、室温で安定である延長及び/又は制御放出性組成物を想定することが可能となり、異なる治療ニーズに適応したプロファイルが得られるように、単一用量のランレオチドからの種々の濃度の組成物を想定することさえも可能となる。
【0049】
実施例2:水中19.0%のランレオチドを含む組成物
1.88gのランレオチド酢酸塩及び精製水からバッチを調製した。
調製は、ランレオチド酢酸塩粉末の水による水和後に混合を可能にするコネクタに接続された2つのプラスチックシリンジを用いて実施例1に記載された前進後退技法により行う。得られる組成物は、注入力その他のパラメータ(例えば、ペプチド含量及びクロマトグラフィーによる純度)を評価する種々の注入システムに分配される。
【0050】
実施例3:水及びエチルアルコール中19.5%のランレオチドを含む組成物
0.36gのランレオチド酢酸塩と、95:5の精製水とエチルアルコールとの混合液からバッチを調製した。95:5の水-アルコール混合液は、1.906gの精製水と0.103gの96%エチルアルコールを混合して調製する。
調製は、水/エチルアルコール混合液でのランレオチド酢酸粉末の水和後に混合を可能にするコネクタに接続された2つのプラスチックシリンジを用いて実施例1に記載された前進後退技法により行う。得られた組成物は、注入力その他のパラメータ(例えば、ペプチド含量及びクロマトグラフィーによる純度)を評価する種々の注入システムに分配される。
【0051】
実施例4:注入力測定の説明
実施例1に記載のように調製された組成物の注入力測定は、データの取得及び処理用コンピュータシステムに接続された較正済み力捕捉セル(NLC 100N、Lloyd Instruments Ltd.)を備えたダイナモメータ(L1000R、Lloyd Instruments Ltd.)を用いて行う。各測定について、組成物を含む注入システム(シリンジ及びニードル)は、支持体上に垂直位置で(ニードルを下向きに)配置され、ダイナモメータを用いて、シリンジ内のピストンを移動させて注射をシミュレートする。測定は、100mm/分の一定変位速度で行い、セルにより検出された力は、ピストン変位の関数として記録する。各試験の間に排出された組成物は、物理化学的分析(例えば、実施例5に記載されるサンプルのペプチド含量)のために、容量フラスコに回収することもできる。
【0052】
実施例5:ペプチド含量及びクロマトグラフィー純度を測定するプロセスの説明
実施例1、2及び3に記載のとおり調製した組成物を、RP-HPLC(逆相高圧液体クロマトグラフィーの略)モードで液体クロマトグラフィーにより分析する。クロマトグラフィー純度の測定については、ランレオチドに相当する主要ピークの面積を、検出した全てのピークの面積に対して比較する(%)。ペプチド含量の測定については、ランレオチドに相当する主要ピークの面積を用いて、ランレオチド参照標準の組成物の注入について得られた応答(面積)を考慮して、注射された組成物の濃度を計算する。注射した組成物の濃度、分析したサンプルの質量及び溶解容量から、組成物のペプチド含量(質量%)を計算できる。
発明者らが用いたRP-HPLC条件及び方法:
- サンプル調製用の溶媒:HPLCグレードの水中0.1%酢酸又はHPLCグレードの水中の酢酸(0.1%)とアセトニトリルの85:15混合液
- カラム:C18 XBridge 150×4.6mm
- カラム温度:35℃
- 移動相A:HPLCグレードの水中0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)
- 移動相B:80:20のアセトニトリル/0.1% TFAを含むHPLCグレードの水混合液
- 流速:0.9mL/分
- 溶出:A中のBのグラジエント(15%、21.5分で53.7%、22.5分で70%、23.5分で85.0%)
- 注入容量:10~100μL
- 組成物の濃度:80~800μg/mLのランレオチド
- 検出:280nmのUV
【0053】
実施例6:市販のインスリンタイプの細いシリンジ及び従来のプレフィルドシリンジ又は容器への調製物の詰め込み
本発明者らは、実施例1に記載のとおりに調製した組成物のシリンジへの充填が、市販の25%製剤に等価な混合物を用いた場合と比べて、より容易、より迅速、より問題なく行えることを見出した。その差は非常に大きく、液体注射剤の場合と同様に従来の方法でシリンジタイプの容器に充填可能であり、より大きな直径の標準容器(例えば、ガラス製又はプラスチック製の市販のプレフィル可能なカートリッジ又はシリンジ)を用いることもできる。例えば、標準のガラス製シリンジ(例えば、HyPakTM、HyLokTMタイプのもの)又はClearject(登録商標)タイプのプラスチック製COPシリンジにプレフィルされた用量で製造することも可能である。
【0054】
実施例7:「細い」インスリンタイプシリンジへの「19%組成物」の分配の説明
水中19%のランレオチドを含む実施例2に記載のように調製したバッチを、内径3.50mmのインスリンタイプの細いプラスチック製シリンジに充填する。シリンジには、組成物の調製に用いた大きなシリンジの端に細いシリンジを接続して前方から充填する。組成物の充填により、その間に細いシリンジのピストンは後退する。
1.00(OD)×0.80(ID)×20mm(L)のニードルを用いた30mgのランレオチドの投与については、各プラスチック製シリンジに162mgの組成物を装填する。その後、ニードルをシリンジに接続して標準のブチルストッパで保護する。
【0055】
実施例8:市販のプレフィル可能なシリンジへの「19%組成物」の分配の説明
水中19%ランレオチドを含む実施例2のように調製したバッチを、1.0mLガラス製シリンジに充填する。ガラス製シリンジには、工業的な充填の場合と同様に後方から、ガラス製シリンジの内径より小さい外径を有する内径3.5mmのプラスティックカニューレを用いて充填する。
21Gニードル(長さ16又は25mm)を用いる30mgのランレオチドの投与については、約225mgの組成物を、各ガラス製シリンジの底から充填する。その後、ブロモブチル製ピストンを、組成物とピストンの間に残存する空気量ができる限り最小となるように配置する。
【0056】
実施例9:注入力測定の例
注入力試験は実施例4の記載のとおり校正され正当化されたプロトコルに従って行う。
ニュートン(N)で表する最大注入力を、射出中に集めたデータから導く。
本実施例では、実施例1、2及び3に従って調製した組成物の注入力を、市販製剤のSomatulineの代表的ニードル(外径1.20mmm及び内径1.00mm)と、より直径が小さいニードルとで比較し、同じニードル及び異なる注入システム(シリンジ及びニードル)でも比較した。
【0057】
得られた結果を下記の表に示す:
【表1】
市販の深部皮下注射用製品よりはるかに薄く長いニードルを選択したにもかかわらず、より稀薄な組成物を用いて、本発明の条件下で、注入力が少なくとも3又は4減少することが観察された。
【0058】
実施例10:種々のニードルによる注射によって得られる押出物の視覚的外観及び比較
刺入前に、既知の方法に従う大口径ニードルの重要性を証明するため、市販の25%ランレオチド製剤の少なくとも1mmの内腔又は内径のニードルを、より希薄な組成物の1つとともに用いて、インビトロでの注射後に同じ直径の押出物又は円筒状物が得られることが実証される。より希薄な組成物と組み合わせたより微細ニードルを用いて、本発明者らは、インビトロ注射後に、この形状を維持しない製剤の取得に成功し、堆積物に依存せずにランレオチドの放出を制御する、より微細なニードル及びより希薄な組成物を有する本発明の新たな調製物の能力を証明した。
種々のニードルによる、実施例1のとおりに調製した2つのランレオチド組成物の押出物の視覚的外観及び幾何形状を評価する試験を行った。
結果を
図1に示す:
- 左に、内径1.00mmのニードルによる25%のランレオチドを含む組成物の押出物
- 中央に、内径1.00mmのニードルによる19%のランレオチドを含む組成物の押出物
- 右は、内径0.60mmのニードルによる19%のランレオチドを含む組成物の押出物。
内径1.00mmのニードルを用いて得られた結果は、類似する押出物であった。内径0.60mmのニードルとは同様の比較はできなかった: 19%ランレオチド組成物のみ、手で押し出すことができ、押出物は顕著に異なる。
【0059】
実施例11:手動注射
実施例2に従って調製し、標準の1.00mLガラスシリンジに予め充填した、19%ランレオチド組成物の投与については、25mmの21G標準皮下ニードルを用いて手動注射が可能であることが実証できた。この手動注射は、標準のフィンガーレストを用いて行い、標準の市販シリンジに使用可能である。
試験は、種々のシリンジに即時に取り付けられる標準ニードルを用いて行い、10~20mmのニードル長に応じて通常又は深部皮下注射であると考えられ、例えば、25~40mmの長いニードルでは筋肉内注射と考えられる。
少ない力でのニードル埋込及び製剤の送達の組合せの利点、注射部位の選択、形状が保持され難いか又はより拡散する低粘性堆積物、及び減少したランレオチド沈着量は全て、
この治療を、より容易にし、より快適にし、投与時の痛みがより少ないものとし、敏感な結節を避けることによって堆積部位でより寛容にすることに寄与するファクターである。
【0060】
実施例12:水中及び水-エタノール混合物中19%ランレオチド組成物の安定性研究
75:25の精製水及びエチルアルコール混合液を用いて実施例1に記載のように調製した25%ランレオチド組成物を、5℃及び25℃/60%RHでの安定性について試験した。この条件下で1か月間の貯蔵後、RP-HPLCにより測定しペプチド純度を初期の純度と比較する。結果を下記の表に表す。
【表2】
【0061】
種々の製造条件下、無菌的に又は最終滅菌による即時使用可能調製物の実現可能性の予測を可能とするため、プロトコールに従って、種々の組成物の安定性を調べた。
予想外にも、低比率の有機溶媒での他のデータを考慮すると、10%以下のエタノールを含む水混合物の組成物も安定であることが判明した。
したがって、これら2タイプの低粘度の持続及び/又は制御放出性組成物を用いて、注射前に製剤再構成ステップを要さない即時使用可能注射製剤調製物を提供することが可能である。
【0062】
実施例13:ラットで得られた薬物動態(PK)プロファイル
この新たな調製物に基づく新たな注射製剤の機能性及び実現可能性を実証するために、ラット及びイヌに関する薬物動態研究を行った。
ランレオチド酢酸塩から実施例1に従って調製した下記の2つの組成物をラットで試験した:
- 製剤A:75:25の精製水及びエチルアルコール混合液中24.6%のランレオチド
- 製剤B:精製水中27.9%のランレオチド
約15mgの用量を皮下注射し、本研究を通じて血液サンプルを採取する。血液サンプル由来の種々の血漿サンプルをLC-MSにより分析して血漿ランレオチド濃度を測定した。
【0063】
結果を
図2に示す。図では、2つの組成物A及びBについて、血漿ランレオチド濃度の変化が時間関数としてプロットされている。両方ともに、ランレオチドの延長された放出が観察される。しかし、組成物Aは、低比率のランレオチドを含むにもかかわらず、放出プロファイルを改善をもたらす:初期バースト又はCmaxが減少し、これにより4週間でのランレオチドレベルがほぼ2倍になる。
例えば、直径1.00mmのニードル及び20%のランレオチドを含む組成物を有する新たな調製物を試験し、直径1.20mmのニードルで注射される市販の25%組成物の既知の参照値と比較することができる。
本実施例で得られた結果は、本発明の新たな調製物を用いることで、堆積物が特定の沈着態様でもたらされるため、同等の又はより良好な制御放出プロファイルを得ることが可能であることを示唆する。適切なニードルを用いるこのタイプの新たな調製物により、例えば末端肥大症の場合に、少ないバースト及びインターバル終時でのより高レベルを示す放出プロファイルで28日ごとの皮下投与が可能となり、また例えば神経内分泌腫瘍の治療については、全てのポイントでランレオチドレベルがより高く、その後急速に低下する放出プロファイルで14日ごとの筋肉内投与が可能になると推察される。
新たな制御された形態の機能化を検証するため、例えば95:5%の水とアルコールとの混合液中20%のランレオチドを含む調製からの新たな調製物を、はるかにより低粘性である極端な条件下で検査することも可能である。この場合、この限度に向けた放出の制御を維持することができ、新たなより有利なプロファイル、例えば、NETの場合のような特定の治療について必要なより良好に適合されたより高い放出レベルを得ることができる可能性を提供することも可能である。
【0064】
実施例14:イヌにおいて得られた薬物動態(PK)プロファイルの例
一般に、本発明の調製物は、イヌではラットに投与する量より高い用量のプロファイルをもたらすので、クリニックにおいてヒトに用いる用量との比較が容易である。
精製水中のランレオチド酢酸塩から実施例1に従って調製したバッチを、イヌにおいて20.2%ランレオチド濃度で試験する。60mg(ランレオチド)の用量を筋肉内注射し、本研究を通じて血液サンプルを採取する。この用量を0.8×0.6×19mmのニードルに取り付けた直径3.0mmのシリンジに詰め込む。この小径ニードルを用いる筋肉内投与が問題なく行える。
血液サンプル由来の種々の血漿サンプルをLC-MSにより分析して血漿ランレオチド濃度を測定する。
ランレオチドの延長放出が少なくとも1月間にわたり観察される。結果を
図3に示す。図では、血漿濃度の変化が時間関数としてプロットされている。
【0065】
実施例15:イヌにおいて得られた薬物動態(PK)プロファイル
ランレオチド酢酸塩及び93:7%の精製水/エチルアルコール混合液から実施例1に従い調製した製剤を、20.7%のランレオチド濃度でイヌについて試験する。60mg(ランレオチド)の用量を筋肉内注射し、本研究を通じて血液サンプルを採取する。血液サンプル由来の種々の血漿サンプルをLC-MSにより分析して血漿ランレオチド濃度を測定する。
結果を
図4に示す。図では、血漿ランレオチド濃度の変化が時間関数としてプロットされている。
ランレオチドの延長放出が少なくとも1月間にわたり観察される。
【0066】
実施例16:アルギニンを含む水性ランレオチド組成物の調製及純度の分析結果
新たな組成物を、0.40gのランレオチド酢酸塩及び精製水中0.072g/gのL-アルギニン溶液から得る。ランレオチド酢酸塩と2.67gのアルギニン溶液との混合により組成物を得る。2つの成分を5mLプラスチックシリンジ中に秤量する。
混合は、実施例1に記載のように、コネクタにより接続された2つのシリンジ間を前進後退させて動かすことにより行う。混合の終時に、組成物を1.0mlプラスチックシリンジに分配する(シリンジあたり約530mgの組成物)。この組成物は、そのまま注射することができるか、又は注射前に再構成する形態が得られるように凍結乾燥することができる。この製剤について実施例5に記載ように行うRP-HPLC分析により、ペプチドの純度が95%を超えて維持される(98.6%)ことが示される。
【0067】
実施例17:アルギニン含有組成物でラットにおいて得られる薬物動態(PK)プロファイル
L-アルギニン含有ランレオチド酢酸塩固形組成物をラットで試験する。組成物を、11%のランレオチドを含む水性組成物から調製して、最終的に、ランレオチド1g当たり約0.57gのアルギニンを含む、57.9%w/wのランレオチド含量を得る。
約3.5mgの用量を皮下注射し、本研究を通じて血液サンプルを採取する。血液サンプル由来の種々の血漿サンプルをLC-MSにより分析して血漿ランレオチド濃度を測定する。
結果を
図5に示す。図では、血漿ランレオチド濃度の変化が時間関数としてプロットされている。ランレオチドの延長された放出が少なくとも4週間観察される。比較すると、プロファイルが、アルギニンを含まない等価形態のもののPKプロファイルと比較して向上している。
【0068】
実施例18:ウサギに皮下注射した種々の組成物の堆積物の、触診及び即席サンプリングによる形態の決定、結果及び外挿可能性
異なる濃度による溶液を実施例1に記載のように調製する。
製剤A:水中20%のランレオチドを含む製剤
製剤B:95:5%の水/エタノール混合物中20%のランレオチドを含む製剤
参照製剤:現在の市販製品の条件を再現する水中25%のランレオチドを含む製剤
これら製剤を下記のモデルに従ってウサギに注射する:
第1の腕には、t=0日にて30mgの製剤A及び30mgの参照製剤を2つの異なる注射部位で注射し;t=7日にて30mgの製剤Aを第3の注射部位で、t=11日にて30mgの製剤Aを第4の注射部位で注射する。すなわち、合計4回注射する;
第2の腕には、t=0日にて30mgの製剤B及び30mgの参照製剤を2つの異なる注射部位で注射し;t=7日にて30mgの製剤Bを第3の注射部位で、t=11日にて30mgの製剤Bを第4の注射部位で注射する。すなわち、合計4回注射する。
【0069】
種々の堆積物を触診により経皮的に感知して、その形状及び粘稠度の変化を追跡し、2週間後に、即席サンプリングによりその性質を検証することができる。
同じ低用量(30mgのランレオチド)での注射については、参照製剤(体積はより少ない)による堆積物は、製剤A又はBによる堆積物より敏感又は触知可能であることが判明した。水-アルコール混合物の製剤Bから作られた低粘性堆積物は触知可能性が最も低い。
2週間後に動物を犠牲にした際には、3、7又は14日後の20%製剤A又はBによる全ての堆積物は、ランレオチド沈殿物に相当する、ほぼ固体の白色塊を示すことが判明した。
これら堆積物のランレオチド含量を分析して、このペプチドの残存量が、注射後、時間に反比例し、2週目に参照製剤の堆積物で得られるものに匹敵することが見出された。
このことは、より微細なニードル及びより希釈された組成物を組み合わせた新たな調製物を用いて、異なる放出プロセスに従い1週間以上にわたってランレオチドを制御放出する組成物を取得できる可能性を証明する。