(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】投影システム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/74 20060101AFI20240315BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
H04N5/74 A
G03B21/00 D
(21)【出願番号】P 2020558315
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2019044454
(87)【国際公開番号】W WO2020105519
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2018217501
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】595086410
【氏名又は名称】コニカミノルタプラネタリウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 全利
【審査官】鈴木 隆夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05053934(US,A)
【文献】特開2008-288714(JP,A)
【文献】特開2002-072361(JP,A)
【文献】特開2016-024331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/74
G03B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッジブレンディングを行なうための複数のプロジェクタを含む、投影システムであって、
前記複数のプロジェクタの各々は、映像表示素子と、前記映像表示素子から出射した光束のうちエッジの重なり部分の光量を減らすための遮光板と、前記映像表示素子に表示される映像を被投影物に投影する投影レンズユニットとを備え、
前記投影レンズユニットは、前記映像表示素子から前記被投影物に向かう光量を変えるための開口絞りを備え、
前記開口絞りの完全開放時に得られる光通過領域の最外周がなす円を基準円とすると、前記開口絞りは、前記基準円の内部で光通過領域の面積が前記基準円の半分になるように前記開口絞りを絞った状態において、前記基準円の外形線が3以上に分割された状態で表れるように、前記基準円の内部を部分的に覆い隠す、投影システム。
【請求項2】
前記開口絞りは、互いに対向する2方向から前記基準円の半径方向に前進および後退が可能なように保持され、光を遮断する2つの絞り板を含む、請求項1に記載の投影システム。
【請求項3】
前記2つの絞り板の各々は、櫛形形状を有する、請求項2に記載の投影システム。
【請求項4】
前記櫛形形状は複数の突起部を含み、前記複数の突起部の各々は、先端に近づくほど幅が狭くなるテーパ形状を有する、請求項3に記載の投影システム。
【請求項5】
前記開口絞りは、3以上の方向から前記基準円の半径方向に前進および後退が可能なように保持された3以上の絞り板を含む、請求項1に記載の投影システム。
【請求項6】
前記3以上の絞り板の各々は、先端に近づくほど幅が狭くなるテーパ形状を有する、請求項5に記載の投影システム。
【請求項7】
前記投影レンズユニットは、前記映像表示素子側から順に、リレー系レンズ群と投影系レンズ群とを含み、
前記開口絞りは、前記リレー系レンズ群または前記投影系レンズ群の内部に設けられる、請求項1から6のいずれか1項に記載の投影システム。
【請求項8】
エッジブレンディングを行なうための複数のプロジェクタを含む、投影システムであって、
前記複数のプロジェクタの各々は、映像表示素子と、前記映像表示素子から出射した光束のうちエッジの重なり部分の光量を減らすための遮光板と、前記映像表示素子から被投影物に向かう光量を変えるための開口絞りとを備え、
前記開口絞りの完全開放時に得られる光通過領域の最外周がなす円を基準円とすると、
前記開口絞りは、3以上の方向から前記基準円の半径方向に前進および後退が可能なように保持された3以上の絞り板を含み
、
前記開口絞りは、前記基準円の内部で光通過領域の面積が前記基準円の半分になるように前記開口絞りを絞った状態において、前記基準円の外形線が3以上に分割された状態で表れるように、前記基準円の内部を部分的に覆い隠す、投影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数のプロジェクタによる投射映像を並列させて、1つの大画面を構成するマルチ投射に関連した技術が、知られている。その一例が特開2017-175301号公報(特許文献1)に記載されている。特許文献1では、隣り合う投射映像同士は一部重なるように投射することが記載されている。このとき、投射映像が重畳する領域に黒浮模様が生じるという問題が着目されている。特許文献1では、黒浮模様の発生を抑制するために改良したプロジェクタについて記載されている。
【0003】
また、特許第5939718号(特許文献2)では、投射映像の周縁部をグラデーションにする目的で、共役像の一次結像位置からずらした位置に絞り板を配置したシステムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-175301号公報
【文献】特許第5939718号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のプロジェクタで1つの大画面を構成するように投影する場合、映像の重なり部分が明るくなりすぎるので、これを避けるために、明るさをコントロールする必要がある。そこで、レンズの前や内部に遮光板を配置して重なる部分の明るさを均一にする方法が考えられる。しかし、たとえば星空を移すプラネタリウムに映像を重ねる場合には、プロジェクタの黒画面の明るさでも好ましくない状況があり、その際にはレンズの絞りを絞ることが好ましい。
【0006】
ところが、遮光板を採用した方式のエッジブレンディングにおいて単純な絞りを用いる場合、映像の重なり部分に所望のグラデーションを発生させることができないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、遮光板を採用した方式のエッジブレンディングにおいて、遮光板が進入する方向にかかわらず、所望のグラデーションを発生させることができる投影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に基づく投影システムは、エッジブレンディングを行なうための複数のプロジェクタを含む、投影システムであって、上記複数のプロジェクタの各々は、映像表示素子と、上記映像表示素子から出射した光束のうちエッジの重なり部分の光量を減らすための遮光板と、上記映像表示素子から被投影物に向かう光量を変えるための開口絞りとを備える。上記開口絞りの完全開放時に得られる光通過領域の最外周がなす円を基準円とすると、上記開口絞りは、上記基準円の内部で光が通る領域の面積が上記基準円の半分になるように上記開口絞りを絞った状態において、上記基準円の外形線が3以上に分割された状態で表れるように、上記基準円の内部を部分的に覆い隠す。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、遮光板を採用した方式のエッジブレンディングにおいて、遮光板が進入する方向にかかわらず、所望のグラデーションを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に基づく実施の形態1における投影システムの概念図である。
【
図2】本発明に基づく実施の形態1における投影システムで生成された映像の正面図である。
【
図3】本発明に基づく実施の形態1における投影システムに含まれるプロジェクタの構造の概念図である。
【
図4】参考例1において遮光板が第1の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図5】参考例1において遮光板が第2の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図6】参考例1において遮光板が第3の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図7】参考例1において遮光板が第4の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図8】参考例1において遮光板が第5の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図9】参考例1での直線A1-A2上の各位置における明るさを示すグラフである。
【
図10】参考例2において遮光板が第1の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図11】参考例2において遮光板が第2の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図12】参考例2において遮光板が第3の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図13】参考例2において遮光板が第4の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図14】参考例2において遮光板が第5の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図15】参考例2での直線A1-A2上の各位置における明るさを示すグラフである。
【
図16】参考例3において遮光板が第1の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図17】参考例3において遮光板が第2の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図18】参考例3において遮光板が第3の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図19】参考例3において遮光板が第4の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図20】参考例3において遮光板が第5の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図21】参考例3での直線B1-B2上の各位置における明るさを示すグラフである。
【
図22】本発明に基づく実施の形態1における投影システムにおいて、下側から入り込む遮光板の影が第1の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図23】本発明に基づく実施の形態1における投影システムにおいて、下側から入り込む遮光板の影が第2の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図24】本発明に基づく実施の形態1における投影システムにおいて、下側から入り込む遮光板の影が第3の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図25】本発明に基づく実施の形態1における投影システムにおいて、下側から入り込む遮光板の影が第4の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図26】本発明に基づく実施の形態1における投影システムにおいて、下側から入り込む遮光板の影が第5の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図27】本発明に基づく実施の形態1での直線A1-A2上の各位置における明るさを示すグラフである。
【
図28】本発明に基づく実施の形態1における投影システムにおいて、右側から入り込む遮光板の影が第1の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図29】本発明に基づく実施の形態1における投影システムにおいて、右側から入り込む遮光板の影が第2の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図30】本発明に基づく実施の形態1における投影システムにおいて、右側から入り込む遮光板の影が第3の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図31】本発明に基づく実施の形態1における投影システムにおいて、右側から入り込む遮光板の影が第4の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図32】本発明に基づく実施の形態1における投影システムにおいて、右側から入り込む遮光板の影が第5の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図33】本発明に基づく実施の形態1での直線A1-A2上の各位置における明るさを示すグラフである。
【
図34】本発明に基づく実施の形態2における投影システムにおいて、下側から入り込む遮光板の影が第1の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図35】本発明に基づく実施の形態2における投影システムにおいて、下側から入り込む遮光板の影が第2の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図36】本発明に基づく実施の形態2における投影システムにおいて、下側から入り込む遮光板の影が第3の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図37】本発明に基づく実施の形態2における投影システムにおいて、下側から入り込む遮光板の影が第4の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図38】本発明に基づく実施の形態2における投影システムにおいて、下側から入り込む遮光板の影が第5の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図39】本発明に基づく実施の形態2における投影システムにおいて、右側から入り込む遮光板の影が第1の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図40】本発明に基づく実施の形態2における投影システムにおいて、右側から入り込む遮光板の影が第2の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図41】本発明に基づく実施の形態2における投影システムにおいて、右側から入り込む遮光板の影が第3の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図42】本発明に基づく実施の形態2における投影システムにおいて、右側から入り込む遮光板の影が第4の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図43】本発明に基づく実施の形態2における投影システムにおいて、右側から入り込む遮光板の影が第5の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図44】本発明に基づく実施の形態3における投影システムに備わる開口絞りの説明図である。
【
図45】本発明に基づく実施の形態3における投影システムを用いて半球形状のドーム天井の全体に対して映像を投影する様子の説明図である。
【
図46】本発明に基づく実施の形態3における投影システムに含まれる1つのプロジェクタが投影する映像を平面的に展開した図である。
【
図47】本発明に基づく実施の形態3における投影システムにおいて、左側から入り込む遮光板の影が第1の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図48】本発明に基づく実施の形態3における投影システムにおいて、左側から入り込む遮光板の影が第2の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図49】本発明に基づく実施の形態3における投影システムにおいて、左側から入り込む遮光板の影が第3の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図50】本発明に基づく実施の形態3における投影システムにおいて、左側から入り込む遮光板の影が第4の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図51】本発明に基づく実施の形態3における投影システムにおいて、左側から入り込む遮光板の影が第5の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図52】本発明に基づく実施の形態3における投影システムにおいて、下側から入り込む遮光板の影が第1の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図53】本発明に基づく実施の形態3における投影システムにおいて、下側から入り込む遮光板の影が第2の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図54】本発明に基づく実施の形態3における投影システムにおいて、下側から入り込む遮光板の影が第3の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図55】本発明に基づく実施の形態3における投影システムにおいて、下側から入り込む遮光板の影が第4の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図56】本発明に基づく実施の形態3における投影システムにおいて、下側から入り込む遮光板の影が第5の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図57】本発明に基づく実施の形態3における投影システムにおいて、右側から入り込む遮光板の影が第1の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図58】本発明に基づく実施の形態3における投影システムにおいて、右側から入り込む遮光板の影が第2の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図59】本発明に基づく実施の形態3における投影システムにおいて、右側から入り込む遮光板の影が第3の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図60】本発明に基づく実施の形態3における投影システムにおいて、右側から入り込む遮光板の影が第4の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図61】本発明に基づく実施の形態3における投影システムにおいて、右側から入り込む遮光板の影が第5の位置にある場合の光の通過状況の説明図である。
【
図62】本発明に基づく実施の形態4における投影レンズユニットの概念図である。
【
図63】本発明に基づく実施の形態4における投影レンズユニットの変形例の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
このあといくつかの実施の形態について説明するが、その前に、本発明に基づく投影システムとして共通する構成について説明する。投影システム101の概要を
図1に示す。投影システム101は、プロジェクタ501,502,503を含む。ここでは、説明の便宜のため3台のプロジェクタのみを図示しているが、実際には、1つの投影システム101に含まれるプロジェクタの数は2台であってもよく4台以上であってもよい。
【0012】
プロジェクタ501,502,503からは投影対象場所に映像511,512,513がそれぞれ投影される。投影対象場所は、予め用意された専用のスクリーンであってもよく、建物の壁、天井などであってもよい。投影対象場所は平面とは限らず曲面であってもよい。たとえば投影対象場所はドーム状の天井であってもよい。映像511と映像512との間には重なり部分41が生じている。映像511と映像513との間には重なり部分42が生じている。
【0013】
スクリーン上に現れている映像に注目し、これを正面から見たところを
図2に示す。重なり部分41に点A1,A2を規定する。重なり部分42に点B1,B2を規定する。重なり部分41のA1-A2の区間に注目したときには、映像511の明るさは、A1からA2に向かって徐々に一律の勾配で減少し、A1で100%、A2で0%となることが求められる。一方、映像512の明るさは、A2からA1に向かって徐々に一律の勾配で減少し、A2で100%、A1で0%となることが求められる。重なり部分42のB1-B2の区間に注目したときにも、映像511の明るさと映像513の明るさとの間に同様のことがあてはまる。
【0014】
映像511を映し出すプロジェクタ501の構造をより詳しく示すと、たとえば
図3に示すようになる。光の進む向きに沿って、映像表示素子1、リレー系レンズ群2、投影系レンズ群3の順に配列されている。映像表示素子1はパネル状のものであってよい。映像表示素子1は光源を兼ねていてよい。映像表示素子1に映像が表示されることにより、映像表示素子1から出射した光が図中右側に向かって進行する。投影系レンズ群3を出射した光によってスクリーンに映像511が投影される。リレー系レンズ群2および投影系レンズ群3は、それぞれ複数のレンズを組み合わせたものであるが、ここでは説明の便宜のためにそれぞれ円柱形状で表示されている。リレー系レンズ群2と投影系レンズ群3との間にL字形の遮光板4が配置されている。映像511の2辺に遮光板4の影の領域6が生じる。ここで示す例では、領域6は重なり部分41と重なり部分42に対応する。領域6では映像511の中央部分に比べて暗くなっている。映像511の全体の明るさを所望の程度にまで暗くするために、投影系レンズ群3の内部に開口絞り5が配置されている。開口絞り5によって光量を減らすことによって、領域6の明るさを所望のレベルにすることができる。
【0015】
本発明に基づく投影システムで採用する開口絞り5の説明に入る前に、発明者らが検討した参考例について説明する。
【0016】
(参考例1)
ここで、まず、参考例1として、開口絞りが円形絞りである場合について説明する。
【0017】
円形絞りを絞っていくことにより、光が通過する領域は、円形の外形を維持したまま直径が小さくなっていく。円形絞りをある程度絞った状態では、
図4に示すように、絞り開放時に光が当たる領域の外形線である基準円11に比べて同心状の小さな円12で囲まれた領域の内部のみに光が当たっている状態となる。絞りの度合いを調整することにより、円12の直径が変化する。ここでは、絞りの度合いを
図4に示す状態に設定したものとして説明を続ける。
【0018】
映像表示素子1の各点から出射した光は、それぞれリレー系レンズ群2を通過することによって光束として投影系レンズ群3へと進行する。どの位置の光束に注目するかによって、遮光板4との相対的な位置関係が変化する。遮光板4の相対的な位置関係によって、遮光板4の影13の現れ方は、
図4~
図8に示すように変化する。光束は、投影系レンズ群3の内部で円形絞りによって絞られるが、円形絞りを完全に開放したときに通過可能な仮想的な光束がなす円は基準円11である。この仮想的な光束を以下「基準光束」と呼ぶこととし、基準光束と遮光板4との位置関係に注目する。実際には、基準光束のサイズのままで光がプロジェクタ501から出射しているのではなく、円形絞りによって絞られたことによって、通過できる光束は基準光束より細くなり、円12の内部のみが光通過領域となる。この光通過領域が遮光板との位置関係によってさらに変化していくが、以下の説明では、基準光束と遮光板4との位置関係に注目している。
【0019】
遮光板4が基準光束を全く遮らない場合には、
図4に示すような状態である。映像の重なる部分の明るさを抑えるための遮光板4は、直線状の外形を有するので、直線状の辺を有する影を生じる。
図4では、遮光板4の影13は基準円11の下側の外にある。
【0020】
次に、遮光板4が基準光束に対してある程度入り込んだ状態では
図5に示すようになる。
図5の状態では、遮光板4の影13は、基準円11の内部には入り込んでいるが、円12の内部までは入り込まない。
図4から
図5にかけては、実際に通過する光量、すなわち、円12の内部の光量は変化しない。
【0021】
遮光板4が基準光束に対してさらに深く入り込んでいる状態では、
図6に示すようになる。この図では、円12の半分まで遮光板4の影13が覆っている。したがって、円12の内部の光量が半分になっている。すなわち、実際に通過する光量が半分になっている。
【0022】
遮光板4が基準光束に対してさらに深く入り込んだ状態では、
図7に示すようになる。この状態では、円12の内部は完全に遮光板4の影13によって覆われる。したがって、円12の内部は完全に暗くなっている。すなわち、実際に通過する光量がゼロとなっている。
【0023】
遮光板4が基準光束に対してさらに深く入り込んだ状態では、
図8に示すようになる。この状態においても実際に通過する光量はゼロとなっている。
図7から
図8にかけては、円12の内部の光量は変化しない。
【0024】
遮光板4の影13がどこまで入り込むかは、映像511の中の注目する点の位置に対応づけて考えることもできる。
図2における点A1,A2を結ぶ直線を考え、この直線上の各位置における明るさをグラフにすると、
図9に示すようになる。絞りを完全に開放した場合の明るさを基準に本来求められる明るさは破線で示される。すなわち、元の明るさが100%であるとすると、A1より手前では100%であるが、A1-A2の区間ではA1から遠ざかるにつれて一定の勾配で明るさが減っていき、A2で0%になり、さらに、A2より先でも0%である。実際には全体的に明るさのレベルを下げたものが求められるので、A1およびその手前における明るさの値は小さくしたものが求められるが、A1-A2の区間ではA1から遠ざかるにつれて一定の勾配で明るさが減っていき、A2で0%となることが求められる。すなわち、範囲G1において一定の勾配で明るさが減っていくことが重要である。このような条件が満たされることによって、A1-A2間の明るさが適切なグラデーションとなる。しかし、円形絞りの場合には、
図4~
図8を参照して説明したような状況となるので、実際には、
図9に実線で示すようになってしまう。これは求められるグラデーションとは一致しない。本来求められるグラデーションの範囲G1に比べて小さな範囲G2のグラデーションが得られるのみとなってしまう。範囲G2は、目標とするグラデーションの範囲G1に比べて大きく異なっている。
【0025】
(参考例2)
次に、参考例2として、開口絞りが板状絞りである場合について説明する。ここでいう板状絞りとは、直線状の辺を有する板を1方向に前進および後退させて光量を調節する方式の絞りをいう。参考例2では、遮光板4の影13が基準円11に対して下から入り込んでくる例を示す。これは、
図2における重なり部分41に対応する。板状絞りを半分程度絞った状態では、
図10に示すようになる。絞り板14によって基準円11の半分が隠されている。ここでは、絞りの度合いを
図10に示す状態に設定したものとして説明を続ける。
【0026】
遮光板4が基準光束を全く遮らない場合には、
図10に示すような状態である。
図10では、遮光板4の影13は基準円11の外にある。
【0027】
遮光板4が基準光束に対してある程度入り込んだ状態では、
図11に示すようになる。
図11の状態では、遮光板4の影13は、基準円11の内部にある程度入り込んでいる。これにより、実際に通過する光量がある程度減っている。
【0028】
遮光板4が基準光束に対して半分入り込んだ状態では、
図12に示すようになる。
図12の状態では、遮光板4の影13は、基準円11の内部に半分入り込んでいる。これにより、実際に通過する光量が半分にまで減っている。
【0029】
遮光板4が基準光束に対してさらに深く入り込んでいる状態では、
図13に示すようになる。
図13の状態では、遮光板4の影13は、基準円11の内部の大部分を覆っており、その結果、実際に通過する光量はごく一部に限られている。
【0030】
遮光板4が基準光束に対してさらに深く入り込んだ状態では、
図14に示すようになる。この状態では、基準円11の内部が完全に遮光板4の影13によって覆われる。したがって、実際に通過する光量がゼロとなっている。
【0031】
参考例2の場合には、
図10~
図14を参照して説明したような状況となるので、点A1,A2を結ぶ直線上の各位置における明るさをグラフにすると、
図15に示すようになる。この場合、A1からA2にかけて一定の勾配で明るさが減っていくので、A1-A2間の明るさが適切なグラデーションとなる。A1-A2間でグラデーションが得られるのは範囲G3であって、これは目標とするグラデーションの範囲G1とほぼ一致している。
【0032】
(参考例3)
参考例3では、遮光板4の影13が基準円11に対して右から入り込んでくる例を示す。これは、
図2における重なり部分42に対応する。参考例3における板状絞りの絞りの程度は、参考例2と同様であるものとする。遮光板4の影13が基準円11に全く入り込んでいない状態では、
図16に示すようになる。遮光板4の影13は基準円11の外にある。影13は、基準円11にとって、絞り板14が入り込んでいる側とは反対側にある。
【0033】
遮光板4が基準光束に対してある程度入り込んだ状態では、
図17に示すようになる。
図17の状態では、遮光板4の影13は、基準円11の内部にある程度入り込んでいる。これにより、実際に通過する光量がある程度減っている。
【0034】
遮光板4が基準光束に対して半分入り込んだ状態では、
図18に示すようになる。
図18の状態では、遮光板4の影13は、基準円11の内部で光が通過していた部分を完全に覆っている。その結果、実際に通過する光量はゼロとなっている。
【0035】
遮光板4が基準光束に対してさらに深く入り込んだ状態では、
図19に示すようになる。この状態でも、基準円11の内部で光が通過していた部分が遮光板4の影13によって完全に覆われているという状況は変わらない。
【0036】
遮光板4が基準光束に対してさらに深く入り込んだ状態では、
図20に示すようになる。この状態でも、基準円11の内部で光が通過していた部分が遮光板4の影13によって完全に覆われているという状況は変わらない。
図18から
図20にかけては、基準光束に対する遮光板4の相対的な位置としてはそれぞれ異なるが、結果的に基準円11の内部を通過できる光量としては、いずれもゼロであって変化がない。
【0037】
参考例3の場合には、
図16~
図20を参照して説明したような状況となるので、点B1,B2を結ぶ直線上の各位置における明るさをグラフにすると、
図21に示すようになる。この場合、B1からB2にかけて一定の勾配で明るさが減っていくのではなく、B1から遠ざかるにつれて早々に明るさが減っていき、B2に到達するよりはるか手前で明るさがゼロになってしまっている。すなわち、B1-B2間の明るさは、適切なグラデーションになっていない。B1-B2間でグラデーションが得られるのは範囲G4のみであって、これは目標とするグラデーションの範囲G1とは大きく異なっている。
【0038】
参考例2,3のいずれも同じく板状絞りを採用した場合の話であるが、遮光板4の影13がどちら側から入り込んでくるかによって、グラデーションが適切であるか否かの違いが生じている。参考例2に示したように、A1-A2間では明るさが適切なグラデーションとなるが、参考例3に示したように、B1-B2間では明るさが適切なグラデーションになっていない。このようなばらつきがある状態では、重なり部分が延在する方向によって重なり部分の画質に差が生じてしまい、全体として良好な映像を生成できない。
【0039】
そこで、参考例1~3での問題を解消するものとして、本発明がなされた。以下では、本発明に基づく投影システムについて説明する。
【0040】
(実施の形態1)
図22~
図33を参照して、本発明に基づく実施の形態1における投影システムについて説明する。全体的な構成は
図1を参照して説明したものと同様であるので、説明を繰り返さない。この投影システムは、
図3における開口絞り5として開口絞り15を備える。開口絞り15は、絞り板15a,15b,15cを含む。絞り板15a,15b,15cの各々は略二等辺三角形の形状を有する。絞り板15a,15b,15cは、等角度間隔、すなわち、120°間隔で配置されている。絞り板15a,15b,15cは、
図22において矢印で示すように3つの方向から基準円11の半径方向にそれぞれ前進および後退が可能である。開口絞り15をある程度絞った状態を
図22に示す。ここでは、絞りの度合いを
図22に示す状態に設定したものとして説明を続ける。
【0041】
第一に、影13が基準円11に対して下から上に向かって入り込んでくる例について説明する。まず、遮光板4が基準光束を全く遮らない場合には、
図22に示すような状態である。映像の重なる部分の明るさを抑えるための遮光板4は、直線状の外形を有するので、直線状の辺を有する影を生じる。この図では、遮光板4の影13は基準円11の下側の外にある。
【0042】
次に、遮光板4が基準光束に対してある程度入り込んだ状態では
図23に示すようになる。この図の状態では、遮光板4の影13は、基準円11の内部に入り込んでいる。絞り板15aと絞り板15bとの間にあった光通過領域は、影13によって大部分が覆い隠されている。
【0043】
遮光板4が基準光束に対してさらに深く入り込んでいる状態では、
図24に示すようになる。この図では、基準円11の半分まで遮光板4の影13が入り込んでいる。絞り板15aと絞り板15bとの間にあった光通過領域は、影13によって完全に覆い隠されている。絞り板15bと絞り板15cとの間にあった光通過領域は、影13によって半分近く覆い隠されている。
【0044】
遮光板4が基準光束に対してさらに深く入り込んでいる状態では、
図25に示すようになる。この図では、基準円11の大部分を覆うように遮光板4の影13が入り込んでいる。絞り板15aと絞り板15bとの間にあった光通過領域は、影13によって完全に覆い隠されている。絞り板15bと絞り板15cとの間にあった光通過領域も、影13によって完全に覆い隠されている。絞り板15cと絞り板15aとの間にあった光通過領域は、影13によって部分的に覆い隠されている。
【0045】
遮光板4が基準光束に対してさらに深く入り込んでいる状態では、
図26に示すようになる。この図では、基準円11の全体を覆うように遮光板4の影13が入り込んでいる。絞り板15a,15b,15cの隙間にあった光通過領域は、いずれも、影13によって完全に覆い隠されている。
【0046】
図2における点A1,A2を結ぶ直線を考え、この直線上の各位置における明るさをグラフにすると、
図27に示すようになる。A1からA2にかけて一定の勾配で明るさが減っていくので、A1-A2間の明るさが適切なグラデーションとなる。A1-A2間でグラデーションとなる範囲がG5であり、これは目標とするグラデーションの範囲G1とほぼ一致している。
【0047】
第二に、影13が基準円11に対して右から左に向かって入り込んでくる場合について説明する。まず、遮光板4が基準光束を全く遮らない場合には、
図28に示すような状態である。この図では、遮光板4の影13は基準円11の右側の外にある。
【0048】
遮光板4が基準光束に対してある程度入り込んだ状態では
図29に示すようになる。遮光板4が基準光束に対してさらに深く入り込んでいる状態では、
図30に示すようになる。遮光板4が基準光束に対してさらに深く入り込んでいる状態では、
図31に示すようになる。遮光板4が基準光束に対してさらに深く入り込んでいる状態では、
図32に示すようになる。この図では、基準円11の全体を覆うように遮光板4の影13が入り込んでいる。
図2における点
B1,
B2を結ぶ直線を考え、この直線上の各位置における明るさをグラフにすると、
図33に示すようになる。B1からB2にかけて一定の勾配で明るさが減っていくので、B1-B2間の明るさが適切なグラデーションとなる。B1-B2間でグラデーションとなる範囲がG6であり、これは目標とするグラデーションの範囲G1とほぼ一致している。
【0049】
ただし、
図27および
図33のグラフはあくまで明るさの変化の概略を示したものである。実際には、
図27および
図33に示したように正確にリニアな変化があるとは限らない。たとえば
図33においては、B1からB2にかけて明るさが常に正確に一定の勾配で下がっていくわけではなく、途中の一部に明るさがほぼ変わらない区間がありうる。このように、一部の区間において明るさが変化しなったり、異なる勾配になったりしてもよい。これらのグラフは、説明の便宜のため、細かい不一致は省略しておおまかに示したものである。
【0050】
本実施の形態における投影システムの構成は、以下のように表現することができる。この投影システムは、エッジブレンディングを行なうための複数のプロジェクタを含む、投影システムであって、前記複数のプロジェクタの各々は、映像表示素子1と、映像表示素子1から出射した光束のうちエッジの重なり部分の光量を減らすための遮光板4と、映像表示素子1から被投影物に向かう光量を変えるための開口絞り5とを備える。開口絞り5の完全開放時に得られる光通過領域の最外周がなす円を基準円11とすると、開口絞り5は、基準円11の内部で光通過領域の面積が基準円11の半分になるように開口絞り5を絞った状態において、基準円11の外形線が3以上に分割された状態で表れるように、基準円11の内部を部分的に覆い隠す。
【0051】
本実施の形態では、遮光板4の影13がどちら側から入り込んでくるかにかかわらず、目標とするグラデーションの範囲とほぼ一致する範囲でグラデーションを生成することができる。言い換えれば、本実施の形態では、遮光板を採用した方式のエッジブレンディングにおいて、遮光板が進入する方向にかかわらず、所望のグラデーションを発生させることができる。
【0052】
本実施の形態で示したように、開口絞り15は、3以上の方向から基準円11の半径方向に前進および後退が可能なように保持された3以上の絞り板15a,15b,15cを含むことが好ましい。この構成を採用することにより、単純な形状の絞り板であっても基準円の内部を均等に覆っていくことができる。
【0053】
前記3以上の絞り板15a,15b,15cの各々は、先端に近づくほど幅が狭くなるテーパ形状を有することが好ましい。この構成を採用することにより、光透過領域の面積を徐々に減らしていくことが容易となる。
【0054】
(実施の形態2)
図34~
図43を参照して、本発明に基づく実施の形態2における投影システムについて説明する。全体的な構成は
図1を参照して説明したものと同様であるので、説明を繰り返さない。この投影システムは、
図3における開口絞り5として開口絞り16を備える。開口絞り16は、絞り板16a,16bを含む。絞り板16aは3つの略二等辺三角形を組み合わせた形状を有する。絞り板16bは、2つの略二等辺三角形を組み合わせた形状を有する。絞り板16a,16bの形状は櫛形形状ということもできる。絞り板16a,16bは、互いに対向するように配置されており、
図34において矢印で示すように2つの方向から基準円11の半径方向にそれぞれ前進および後退が可能である。開口絞り16を完全に絞り切った状態では、絞り板16a,16bの凹凸形状が互いに完全に組み合わさって開口部がゼロとなる。
【0055】
本実施の形態では、開口絞り16は、互いに対向する2方向から基準円11の半径方向に前進および後退が可能なように保持され、光を遮断する2つの絞り板16a,16bを含む。本実施の形態では、2つの絞り板16a,16bの各々は、櫛形形状を有する。
【0056】
図34は、開口絞り16をある程度絞った状態を示す。ここでは、絞りの度合いを
図34に示す状態に設定したものとして説明を続ける。
【0057】
第一に、影13が基準円11に対して下から上に向かって入り込んでくる場合について説明する。まず、遮光板4が基準光束を全く遮らない場合には、
図34に示すような状態である。この図では、遮光板4の影13は基準円11の下側の外にある。
【0058】
次に、遮光板4が基準光束に対してある程度入り込んだ状態では
図35に示すようになる。この図の状態では、遮光板4の影13は、基準円11の内部に入り込んでいる。
【0059】
遮光板4が基準光束に対してさらに深く入り込んでいる状態では、
図36に示すようになる。この図では、基準円11の半分まで遮光板4の影13が入り込んでいる。基準円11の内部で光が通過できる領域は、2つの略三角形の領域として存在する。
【0060】
遮光板4が基準光束に対してさらに深く入り込んでいる状態では、
図37に示すようになる。この図では、基準円11の大部分を覆うように遮光板4の影13が入り込んでいる。基準円11の内部で光が通過できる領域は図中で上の方に小さく2ヶ所あるのみである。
【0061】
遮光板4が基準光束に対してさらに深く入り込んでいる状態では、
図38に示すようになる。この図では、基準円11の全体を覆うように遮光板4の影13が入り込んでいる。絞り板16a,16bの隙間にあった光通過領域は、いずれも、影13によって完全に覆い隠されている。
【0062】
第二に、影13が基準円11に対して右から左に向かって入り込んでくる場合について説明する。まず、遮光板4が基準光束を全く遮らない場合には、
図39に示すような状態である。この図では、遮光板4の影13は基準円11の下側の外にある。
【0063】
次に、遮光板4が基準光束に対してある程度入り込んだ状態では
図40に示すようになる。この図の状態では、遮光板4の影13は、基準円11の内部に入り込んでいる。
【0064】
遮光板4が基準光束に対してさらに深く入り込んでいる状態では、
図41に示すようになる。この図では、基準円11の半分まで遮光板4の影13が入り込んでいる。
【0065】
遮光板4が基準光束に対してさらに深く入り込んでいる状態では、
図42に示すようになる。この図では、基準円11の大部分を覆うように遮光板4の影13が入り込んでいる。基準円11の内部で光が通過できる領域は図中で左の方に小さく1ヶ所あるのみである。
【0066】
遮光板4が基準光束に対してさらに深く入り込んでいる状態では、
図43に示すようになる。この図では、基準円11の全体を覆うように遮光板4の影13が入り込んでいる。絞り板16a,16bの隙間にあった光通過領域は、いずれも、影13によって完全に覆い隠されている。
【0067】
第一の場合(
図34~
図38)も、第二の場合(
図39~
図43)も、基準円11内の光通過領域の面積は、100%から始まって徐々に減っていき、遮光板4の影13が基準円11の内部領域を完全に覆うことによってようやく0%となる。影13の入り込みの度合いと、光通過領域の面積とは、完全に正確に比例するわけではないが、比例する場合に近い変化ぶりとすることができる。
【0068】
本実施の形態においても、遮光板4の影13がどちら側から入り込んでくるかにかかわらず、目標とするグラデーションの範囲とほぼ一致する範囲でグラデーションを生成することができる。言い換えれば、本実施の形態では、遮光板を採用した方式のエッジブレンディングにおいて、遮光板が進入する方向にかかわらず、所望のグラデーションを発生させることができる。
【0069】
本実施の形態で示したように、前記櫛形形状は複数の突起部を含み、前記複数の突起部の各々は、先端に近づくほど幅が狭くなるテーパ形状を有することが好ましい。この構成を採用することにより、光透過領域の面積をなるべく均等に徐々に減らしていくことが容易となる。
【0070】
(実施の形態3)
図44~
図61を参照して、本発明に基づく実施の形態3における投影システムについて説明する。全体的な構成は
図1を参照して説明したものと同様であるので、説明を繰り返さない。この投影システムは、
図3における開口絞り5として開口絞り17を備える。開口絞り17は、絞り板17a,17bを含む。絞り板17a,17bの各々は、複数の略二等辺三角形を組み合わせた櫛形形状を有する。絞り板17a,17bは、互いに対向するように配置されており、
図44において矢印で示すように2つの方向から基準円11の半径方向にそれぞれ前進および後退が可能である。開口絞り17を完全に絞り切った状態では、絞り板17a,17bの凹凸形状が互いに完全に組み合わさって開口部がゼロとなる。
図44は、開口絞り17をある程度絞った状態を示す。
【0071】
図45に、本実施の形態における投影システムを用いて半球形状のドーム天井10の全体に対してひとまとまりの映像を投影する様子を示す。本実施の形態における投影システムはプロジェクタ504,505を含む。ここでは、説明の便宜のため2台のプロジェクタのみを図示しているが、実際には、3台以上のプロジェクタを組み合わせてもよい。ドーム天井10は、プラネタリウムの天井であってもよい。本実施の形態における投影システムは、夜空の様子を映し出すものであってもよい。
【0072】
プロジェクタ504は映像514を生成し、プロジェクタ505は映像515を生成する。映像514,515はそれぞれドーム天井10のほぼ半分を占める。映像514,515は重なり部分45を有する。プロジェクタ505によって生成される映像515に注目して、映像515を平面的に展開したところを
図46に示す。この図に示すように、ドーム天頂20を点Eとし、左右の端を点D,Fとする。映像515は、遮光板の影13iによって光の一部が遮られた結果として投射されているものである。影13iは長方形から半円形DEFを切り欠いた形状である。この場合にも、円弧DEFの各点において、遮光板の影13iによってどのようにグラデーションが生成されるかが重要となる。点D,E,Fのいずれの近傍においても、遮光板がどの程度入り込むかは、注目する光束の位置による。
【0073】
点D近傍の光束に注目すると、左からある程度遮光板が入り込むこととなる。点D近傍では、図中左から右に向かうにつれて明るくなるようなグラデーションが求められる。
【0074】
点E近傍の光束に注目すると、下からある程度遮光板が入り込むこととなる。点E近傍では、図中下から上に向かうにつれて明るくなるようなグラデーションが求められる。
【0075】
点F近傍の光束に注目すると、右からある程度遮光板が入り込むこととなる。点F近傍では、図中右から左に向かうにつれて明るくなるようなグラデーションが求められる。
【0076】
第一に、遮光板の影13iが図中左から右に向かって徐々に深く入っていく場合について説明する。これは、点D近傍の状況に対応する。
図47から始まって、基準円11に対する影13iの入り込み度合いが変化するにつれて、
図48、
図49、
図50、
図51に順にそれぞれ示すように光通過領域の面積が変化する。
図51では、絞り板17a,17bの隙間にあった光通過領域は、影13iによって完全に覆い隠されている。
【0077】
第二に、遮光板の影13iが図中下から上に向かって徐々に深く入っていく場合について説明する。これは、点E近傍の状況に対応する。
図52から始まって、基準円11に対する影13iの入り込み度合いが変化するにつれて、
図53、
図54、
図55、
図56に順にそれぞれ示すように光通過領域の面積が変化する。
図56では、絞り板17a,17bの隙間にあった光通過領域は、影13iによって完全に覆い隠されている。
【0078】
第三に、遮光板の影13iが図中右から左に向かって徐々に深く入っていく場合について説明する。これは、点F近傍の状況に対応する。
図57から始まって、基準円11に対する影13iの入り込み度合いが変化するにつれて、
図58、
図59、
図60、
図61に順にそれぞれ示すように光通過領域の面積が変化する。
図61では、絞り板17a,17bの隙間にあった光通過領域は、影13iによって完全に覆い隠されている。
【0079】
第一の場合(
図47~
図51)も、第二の場合(
図52~
図56)も、第三の場合(
図57~
図61)も、基準円11内の光通過領域の面積は、100%から始まって徐々に減っていき、遮光板4の影13
iが基準円11の内部領域を完全に覆うことによってようやく0%となる。影13
iの入り込みの度合いと、光通過領域の面積とは、完全に比例するわけではないが、比例する場合に近い変化ぶりとすることができる。
【0080】
本実施の形態では、遮光板4の影13iがどちら側から入り込んでくるかにかかわらず、目標とするグラデーションの範囲とほぼ一致する範囲でグラデーションを生成することができる。言い換えれば、本実施の形態では、遮光板を採用した方式のエッジブレンディングにおいて、遮光板が進入する方向にかかわらず、所望のグラデーションを発生させることができる。これにより、
図46における点D近傍、点E近傍、点F近傍のいずれにおいても同様にグラデーションを発生させることができる。このグラデーションを
図45における重なり部分45に一致させることで、ドーム天井10の全体にわたって映像同士の継ぎ目が目立たない良好な映像を生成することができる。
【0081】
(実施の形態4)
図62~
図63を参照して、本発明に基づく投影レンズユニットについて説明する。実施の形態1の
図3では、プロジェクタ501を示したが、プロジェクタ501から映像表示素子1および遮光板4を除いたものとして、投影レンズユニットを実現することができる。投影レンズユニット401の概念図を
図62に示す。投影レンズユニット401は、プロジェクタ501の一部である。投影レンズユニット401は、開口絞り5を備え、開口絞り5の特徴は、実施の形態1で説明したものと同様である。したがって、投影レンズユニット401の構成については、以下のように表現することができる。
【0082】
投影レンズユニット401は、通過する光量を変えるための開口絞り5を備え、開口絞り5の完全開放時に得られる光通過領域の最外周がなす円を基準円11とすると、開口絞り5は、基準円11の内部で光通過領域の面積が基準円11の半分になるように開口絞り5を絞った状態において、基準円11の外形線が3以上に分割された状態で表れるように、基準円11の内部を部分的に覆い隠す。
【0083】
本実施の形態における投影レンズユニット401によれば、遮光板を採用した方式のエッジブレンディングにおいて、遮光板が進入する方向にかかわらず、所望のグラデーションを発生させることができる。
【0084】
図62では、投影レンズユニット401がリレー系レンズ群2と投影系レンズ群3とを含み、投影系レンズ群3が開口絞り5を含んでいる例を示した。このような構成に限らず、たとえば
図63に示すような投影レンズユニット402のようなものであってもよい。投影レンズユニット402は、リレー系レンズ群2と投影系レンズ群3とを含み、リレー系レンズ群2が開口絞り5を含んでいる。投影レンズユニット402においても、投影レンズユニット401と同様の効果を得ることができる。
【0085】
なお、これまで説明した全ての実施の形態にあてはまることだが、遮光板4は、完全に光を遮断するものに限らない。たとえばレンズ光軸に近づくにつれて光の透過率が大きくなるような特性を有する遮光板を用いてもよい。
【0086】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0087】
1 映像表示素子、2 リレー系レンズ群、3 投影系レンズ群、4 遮光板、5 開口絞り、6 (遮光板によって生じた影の)領域、10 ドーム天井、11 (絞り開放時の)円、12 (円形絞りで絞った)円、13,13i (遮光板の)影、14 (板状絞りの)絞り板、15,16,17 開口絞り、15a,15b,15c (三角形の)絞り板、16a,16b,17a,17b (櫛形形状の)絞り板、20 ドーム天頂、41,42,45 重なり部分、401,402 投影レンズユニット、501,502,503,504,505 プロジェクタ、511,512,513,514,515 映像。