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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240315BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20240315BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H05K3/28 B
H01L23/12 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021015368
(22)【出願日】2021-02-02
(65)【公開番号】P2022118673
(43)【公開日】2022-08-15
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 宏義
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 寛
(72)【発明者】
【氏名】山崎 信良
(72)【発明者】
【氏名】松元 大輔
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/176246(WO,A1)
【文献】特開昭62-128191(JP,A)
【文献】特開2008-177422(JP,A)
【文献】特開2005-259795(JP,A)
【文献】特開2004-146476(JP,A)
【文献】特開2013-008726(JP,A)
【文献】特開2003-218534(JP,A)
【文献】特開2007-184455(JP,A)
【文献】特開2011-135111(JP,A)
【文献】実開平05-055580(JP,U)
【文献】特開2004-273990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/28
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された絶縁体に回路が形成される積層板と、前記積層板の積層方向に貫通するスルーホールと、前記スルーホールの周囲に形成されるスルーホールランドとを備えたプリント配線板であって、
前記プリント配線板の外層面における前記スルーホールランドと接続または近接して前記スルーホールランドで発生した余剰ハンダを流入させる補助ランドを設け
前記プリント配線板の両側の前記外層面に前記補助ランドを設けたプリント配線板。
【請求項2】
請求項1に記載されたプリント配線板において、
前記補助ランドは、前記スルーホールランドの外周部の一部と接続または近接して設けられていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項3】
請求項1に記載されたプリント配線板において、
前記スルーホールランドと前記補助ランドの間に、前記スルーホールランド上に一定量以上のハンダが貯留され前記余剰ハンダが発生した場合に、前記余剰ハンダを前記補助ランドに流入させる流入抑制部を設けたことを特徴とするプリント配線板。
【請求項4】
請求項3に記載されたプリント配線板において、
前記流入抑制部は、前記補助ランドの前記スルーホールランドに近い位置にシルク印刷により形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項5】
請求項3に記載されたプリント配線板において、
前記流入抑制部として、前記スルーホールランドと前記補助ランド間に、前記余剰ハンダが前記補助ランドに流入することを許容する細幅ソルダーレジストを形成したことを特徴とするプリント配線板。
【請求項6】
請求項5に記載されたプリント配線板において、
前記ソルダーレジストの中央部には、前記余剰ハンダが前記補助ランドに流入することを円滑にするための案内部を設けたことを特徴とするプリント配線板。
【請求項7】
請求項1に記載のプリント配線板であって
前記補助ランドのエリア内に、余剰ハンダ流入用の補助スルーホールを形成したことを特徴とするプリント配線板。
【請求項8】
請求項1に記載のプリント配線板であって
前記補助ランドは、前記スルーホールランドの周囲に複数個設けたことを特徴とすることを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術として、特開2007-184455号公報(特許文献1)が知られている。この特許文献1には、電子回路基板(プリント配線板)において、ハンダ(はんだ)が充填されるスルーホールに空洞が生じるのを防止することにより、電子部品の基板裏面への放熱性およびハンダ付けの信頼性を向上させるようにした技術が開示されている。具体的には、特許文献1では、電子部品がハンダ付けされる位置にスルーホールを設けると共に、基板裏面においてスルーホールの周囲に枠状のハンダ流出阻止層を設けることで、スルーホールから基板裏面(1B)に流出しようとするハンダを塞ぎ止め、スルーホール内にハンダを充填する。また、枠状のハンダ流出阻止層に切れ目部を形成することで、スルーホール内の充填量を超える余剰なハンダをハンダ流出阻止層の枠外に逃がすようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-184455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、基盤の裏面側のスルーホールの周辺に枠状のハンダ流出阻止層を設け、スルーホールから基板裏面(1B)に流出しようとするハンダを塞ぎ止め、スルーホール内にハンダを充填する。これにより、スルーホール内にハンダを充填することができ、信頼性の高いプリント配線板を実現することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1の場合、ハンダ付けを行う側の外層面(ハンダ付け面)において、余剰のハンダが生じた場合における不具合についての検討はなされていない。
【0006】
特に、人手作業のハンダ付けにおいて、挿入タイプ部品のハンダ付けを行なった際、スルーホール部にハンダが過剰につきすぎてしまう場合がある。これは鉛フリーハンダの融点が高いため、長時間ハンダ鏝とハンダをスルーホールに当てる必要があることから、ハンダの量が過剰になりやすくなったものと考えられる。
このような過剰に溶け出した余剰ハンダは、隣接する電子部品のランドに流れて(拡散して)しまい短絡状態になるリスクがある。
【0007】
そこで、本発明は、プリント配線板の外層面における余剰ハンダの拡散を防ぎ、信頼性の高いプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、その一例を挙げると、積層された絶縁体に回路が形成される積層板と、前記積層板の積層方向に貫通するスルーホールと、前記スルーホールの周囲に形成されるスルーホールランドとを備えたプリント配線板であって、前記プリント配線板の外層面における前記スルーホールランドと接続または近接して前記スルーホールランドで発生した余剰ハンダを流入させる補助ランドを設けたプリント配線板である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スルーホールに挿入された電子部品の端子をハンダ付けする際に、余剰ハンダが生じた場合にはその余剰ハンダを補助ランドに流入させるようにし、信頼性の高いハンダ付を行うことができるプリント配線板を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】スルーホールメッキ前のプリント配線板を示す図である。
図1B】スルーホールメッキ後のプリント配線板を示す図である。
図2A】ハンダ付け前のプリント配線板を示す図である。
図2B】ハンダ付け中のプリント配線板を示す図である。
図2C】ハンダ付け後のプリント配線板を示す図である。
図2D】ハンダ付け途中におけるプリント配線板の過剰ハンダの状態を示す図である。
図3】スルーホールを有するプリント配線板の斜視図である。
図4A】本発明の実施例1におけるプリント配線板の斜視図である。
図4B】本発明の実施例1におけるプリント配線板の上面図である。
図4C】本発明の実施例1におけるプリント配線板を説明するための図である。
図4D】本発明の実施例1におけるプリント配線板を説明するための図である。
図5】本発明の実施例2におけるプリント配線板を説明するための図である。
図6】本発明の実施例3におけるプリント配線板を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体的な実施例により説明する。なお、以下に説明する実施例は本発明を実施するための一形態を示すものであり、本発明はこの実施例に限定されるものではない。また、以下の各図において同一機器(部材あるいは部品)には同一符号を付し、原則として、すでに説明した機器に関する説明を省略する。また、以下の実施例において、要素数に言及する場合、その要素数の必要性を説明する場合を除き、その特定の数に限定されるものではない。
【0012】
最初に、プリント配線板の概要と、プリント配線板における余剰ハンダの問題について説明する。
プリント配線板に搭載する電子部品の形状は、主に挿入タイプの電子部品と表面実装タイプの電子部品に分けられる。挿入タイプの電子部品は、電極端子が電線形状になっており、プリント配線板上のスルーホールに電極端子が挿入され、ハンダにて接着される。表面実装タイプの電子部品は、電極端子が角形になっており、プリント配線板の表面(外層面)上に搭載され、ハンダにて接着される。
【0013】
プリント配線板は、銅箔パターン(導体パターン)を基材(絶縁体で構成された板)の外層面(プリント配線板表面)または内層面(プリント配線板内部)に形成したもので、電子部品をプリント配線板上に実装するためのスルーホールや、部品間を接続するための信号銅箔パターンで構成されているのが一般的である。
【0014】
またスルーホールは、ドリルによりプリント配線板を貫通する穴をあけて、その穴の内壁(基材)を銅メッキすることによって外層面、穴の内層面の電気的導通を可能としたものであり、電気的な接続の役割とプリント配線板に搭載する部品の固定穴としての役割を兼ねる。
【0015】
スルーホールには、スルーホールランドと呼ばれる銅箔パターンが、プリント配線板の外層面および内層面に形成されている。スルーホールランドは一般的に円形の形状をしており、プリント配線板の外層面では、ハンダ付けを行うためスルーホールランドが必ず形成されている。
【0016】
また内層面は、部品間を接続する信号銅箔パターンが、内層面のスルーホールと接続があるときのみ内層面にスルーホールランドを形成し、信号銅箔パターンの接続が無い場合はスルーホールランドを形成しない仕様が一般的である。
【0017】
挿入タイプ部品や表面実装タイプ部品を、プリント配線板の外層面上に、装置を使いハンダ付けする主な方法として、フロー方式とリフロー方式がある。
【0018】
フロー方式は、ハンダ槽と呼ばれる溶融ハンダを噴流させた装置の中に、部品の電極端子を接触させてハンダ付けを行う方法であり、挿入タイプ部品の電極端子を、プリント配線板のスルーホールに挿入後、プリント配線板をコンベアでハンダ槽へ送り、プリント配線板の裏面側(部品を挿入した面の逆側)に飛び出た電極端子を、ハンダ槽に接触させハンダ付けを行う。
【0019】
また、表面実装タイプ部品は、自動搭載機により、部品に接着剤を塗布し、プリント配線板上に仮止め接着し、接着した面を、ハンダ槽に接触させハンダ付けを行う。
【0020】
フロー方式は、主に挿入タイプ部品のハンダ付けに適しているが、プリント配線板の両面から、挿入タイプ部品の電極端子を挿入した場合は、ハンダ付けを行うことはできない。また、表面実装タイプ部品は、直接部品をハンダ槽に接触させるため、熱に弱い部品は搭載できない。さらに、部品に接着剤を塗布する領域が必要なので、極小の表面実装タイプ部品には適用できない。
【0021】
リフロー方式は、プリント配線板にあらかじめ、クリームハンダ(ハンダが半練状になったもの)を供給しておき、その場所に自動搭載機により部品を搭載する。その後、プリント配線板を、リフロー炉と呼ばれる赤外線や熱風などを使用した熱源装置の中へコンベアで送り、クリームハンダを溶かして、部品の電極端子とプリント配線板上の銅箔パターンを接着させる。
【0022】
リフロー方式は、表面実装タイプ部品のハンダ付けに適した方式で、極小の表面実装タイプ部品を効率よく搭載でき、プリント配線板の両面に実装が可能である。フロー方式のように、直接部品をハンダ槽に接触させないので、熱に弱い部品にも対応できる。しかしながら、リフロー方式は、表面実装タイプ部品専用の方式のため、挿入タイプ部品に対応できない。
【0023】
フロー方式とリフロー方式のどちらにも適さない挿入タイプ部品も存在し、このような挿入タイプ部品については人手作業となる。人手作業によるハンダ付けは、プリント配線板の外層面上のスルーホールと挿入タイプ部品の電極端子に、ハンダ鏝で熱を十分に加えてから、ハンダを溶かして接着を行う。
【0024】
近年、電機製品の鉛フリー化に伴い、プリント配線板で使用されるハンダ材料についても、鉛フリーハンダが使用されている。鉛フリーハンダは、従来使用していた有鉛ハンダよりハンダの融点が高い。
【0025】
このため、フロー方式の場合は、ハンダ槽の温度を上昇させる、またはハンダ槽にプリント配線板上のスルーホールと挿入タイプ部品の電極端子が接触する時間を延長するなど、熱を十分に加える対応がとられている。
【0026】
また、リフロー方式の場合、リフロー炉の温度を上昇させる、または炉内送り時間を延長するなどにより、熱を十分に加える対応がとられている。
【0027】
そして、人手作業の場合は、高温のハンダ鏝を使用し、プリント配線板上のスルーホールと挿入タイプ部品の端子(電極端子)に、ハンダ鏝を当てて熱を十分に加えてからハンダ付けを行う。
【0028】
図1Aは、スルーホールの穴を含む内層面に2枚の銅箔パターン層が積層された4層プリント配線板のスルーホールの断面の例を示す図である。プリント配線板の構成では、コア材と呼ばれる絶縁性のある板状の基材204があり、基材204には、あらかじめ銅箔103及び銅箔104が両面に貼り付けてある。
【0029】
なお、図1Aにおいて、基材204は、スルーホール102の穴101があるため、図面上では分かれて見えるように記載しているが、1枚の基材204である。このように、基材204以外でも、図面上、スルーホールの穴により分かれて見える場合があるが、それらは1枚の基材を示す。
【0030】
プリント配線板の構成は、さらに基材204が、プリプレグと呼ばれる、粘着性と絶縁性を兼ねた板状の基材203,205で上面と下面を挟まれ、それらの上面と下面に銅箔105,106を乗せて加熱加圧を行うと、基材203,205が溶けて、銅箔103,104,105,106と密着した構成となる。これらの銅箔は、スルーホールランドを構成する。したがって、以下では、この銅箔をスルーホールランドあるいは単にランドと称する場合がある。
【0031】
以上の積層構成により、プリント配線板では、半田付け面であるA面201(この図では上側の外層面)とB面202(下側の外層面)が、プリント配線板の外層面として、プリント配線板の外へ露出する。
【0032】
プリント配線板のスルーホール102の成形加工は、まず、ドリル301で穴開け加工を行い、スルーホールの穴101を形成する。このとき、スルーホールの穴101の内壁には、銅箔はない状態である。
【0033】
図1Bには、スルーホールの穴101の内壁に、導体によりメッキをした状態のプリント配線板の断面図を示している。図1Bにおいて、図1Aで示した部材と同じ部材には、同じ符号を付している。したがって、既に説明した部材についての説明は省略する。このことは、以下の他の図面の説明においても同様であり、それ以前に説明したもの(部材)には同じ符号を付し、原則として、その説明を省略する。
【0034】
ドリル301による穴開け加工(図1A参照)後、図1Bに示すように、スルーホールの穴101の内壁に銅メッキ処理が行なわれ、穴101の内壁に銅箔が密着され、スルーホール102が完成する。穴101の内壁の銅箔は、銅箔103,104,105,106のそれぞれと密着し、あるいは一体化する。これらの銅箔は、スルーホール102のランド(スルーホールランド)を構成することは上述したとおりである。なお、スルーホールランドは、通常は円形(ドーナツ状)であるが、本発明において、スルーホールランドは四角形状やその他の形状であっても構わない。
【0035】
図2Aは、挿入タイプの電子部品401の電極端子402がスルーホール102に挿入された状態のプリント配線板の断面図を示す。図2Aの例では、挿入タイプの電子部品401の電極端子402は、プリント配線板のB面202より、スルーホール102に挿入され、A面201側に飛び出た状態となっている。
【0036】
挿入タイプの電子部品は、図2Aのように、電子部品をB面202の側より挿入し、A面201側でハンダ付けする場合と、反対に、A面201側の外層面より電極端子を挿入し、B202側に飛び出た電極端子402にハンダ付けする場合とがある。図2Aのように、A面201側ではんだ付する場合は、フロー方式とリフロー方式とが使用できず、人手作業によりハンダ付けされる。
【0037】
図2Bは、人手作業でハンダ付けが行なわれるプリント配線板の断面の例を示す図である。電子部品401の電極端子402とスルーホール102とを、人手作業によりハンダ付けする。
【0038】
すなわち、プリント配線板上のはんだ付け面であるA面201側より、スルーホール102と、電子部品401の電極端子402とに、ハンダ鏝302で熱を十分に加えてから、ハンダ鏝でハンダ303を溶かし、スルーホール102内にハンダ303が溶け込み充填して、ハンダ付けを行う。
【0039】
図2Cは、正常にハンダ付けされた場合のプリント配線板の断面の例を示す図である。ハンダ303は、A面201側からB面202側へ溶け込み、スルーホール102と電極端子402との間はハンダ303が充填されて隙間なく埋まり、スルーホールの穴101の内壁に密着した銅箔(ランド)と電極端子402とがハンダにより接着される。
【0040】
図2Dは、挿入タイプの電子部品401の電極端子402が挿入されたスルーホール102をハンダ付け作業中に、余剰ハンダが生じた状態のプリント配線板の断面図を示している。
【0041】
良好なハンダ付けを行うには、所定温度にするために長時間ハンダ鏝302とハンダ303をスルーホールに当てる必要がある。しかし、過度にハンダ鏝302とハンダ303をA面201側のスルーホールランド(銅箔)105に当てると大量のハンダが溶け出して流れるため、溢れたハンダ(余剰ハンダ)がスルーホールランド105の面積(エリア)を超えて拡散してしまい、隣接した部品のスルーホールと繋がり短絡状態になる恐れがある。また、図2Dに示すように、電極端子402を伝わりB面202側へハンダ304が流出し、電子部品401に付着する恐れもある。
【0042】
そのため、以下説明する本発明の実施例では、ハンダ付けを行う外層面のスルーホールランドに対し、余剰ハンダを流入させる(受け入れる)ための補助ランドを設置し、ハンダが過剰となりスルーホールランドよりハンダがプリント配線板状上に溢れ出て拡散する前に補助ランド側へハンダを流すようにし、余剰ハンダの拡散を抑制する。
【0043】
ここで、発明の実施例における補助ランドは、スルーホールランドの全周に設けるのではなく、その外周の一部分と接続(または近接)するように設けている。これは、スルーホールランド全体の面積を必要以上に大きくすることを防ぐためである。また、好ましい本発明の実施例では、外層面のハンダ鏝を当てる側に補助ランドを追加している。また、補助ランドは、スルーホールランドに対し部分的に接続するようにし、他のスルーホールや銅箔パターンに、極力影響しないようにする。
【0044】
(実施例1)
次に、本発明の実施例1について、図3図4A図4Dにより説明する。図3は、4層プリント配線板の各層にスルーホールランドや銅箔パターンが配置された状態を示した図である。図4Aは、本発明の実施例1におけるプリント配線板の斜視図である。図4Bは、実施例1におけるプリント配線板の上面図である。図4C図4Dは、実施例1におけるプリント配線板を説明するための図である。
【0045】
まず、図3により、一般的なプリント配線板の概略構造を説明する。図3の例では、スルーホール112、113が並んで配置されており、スルーホール112には、スルーホールランド601が、各層に配置されている。また、スルーホール113にはスルーホールランド602が、各層に配置されている。
【0046】
このような構成のプリント配線板では、スルーホール112に電子部品(図3では図示せず)の端子を挿入し、スルーホール112内にハンダを充填して端子のハンダ付けを行う際に、スルーホールランド上に余剰のハンダが生じた場合、その余剰ハンダがプリント配線版の外層面上に拡散する場合がある。
【0047】
これに対し、図4Aに示す本発明の実施例1のプリント配線板の場合、余剰ハンダが生じた場合でも、その余剰ハンダを受入れるエリア(補助ランド)を設けて、余剰ハンダが拡散して隣接する電子部品に流入して短絡するなどの不具合を無くすことができる。スルーホールランド601と補助ランド605とは、図示する様に直接接続してもよいが、余剰ハンダが補助ランドに流入する程度にスルーホールランドに近接して補助ランドを設置しても良い。すなわち、スルーホールランド上に余剰ハンダが生じた場合に、その余剰ハンダを補助ランドに流すことが出来る構成であれば問題はない。
【0048】
このように、図4Aに示す例では、A面201におけるスルーホールランド601に、さらに余剰ハンダを流入させる(受け入れる)ための補助ランド605を追加(設置)した構成にしている。この補助ランド605を追加した構成により、スルーホールランド601から溢れた余剰ハンダは、補助ランド605側にスムーズに流入させることができる。したがって、スルーホールランド601の面積を実質的に補助ランド605の面積分だけ増大させることができ、余剰ハンダを収容する面積を確保することができる。また、この実施例1において、この補助ランド605は、スルーホールランド601の全周と接続(または近接)するのではなく、スルーホールランド601の外周の一部分と接続(または近接)して設置している。このような構成により、余剰ハンダが補助ランドに流入しても隣接する電子部品との距離を確保することが容易となる。つまり、ハンダの拡散を防ぎハンダ付の信頼性を確保するとともに、プリント配線板の部品配置の有効面積に影響を与えることが少ない。言いかえれば、プリント基板上に多くの電子部品を搭載できるプリント配線板を実現することができる。
【0049】
なお、図4Aに示す実施例1では、一方の外層面のスルーホールランド601のみに補助ランド605を設けているが、半田付け面(A面)と反対側の外層面(B面)のスルーホールランド602にも同様の補助ランドを設置しても良い。
【0050】
図4Bは、図4Aのスルーホール112の上面から見た図である。基本的に、本実施例における補助ランド605は、図4Bの上側の図に示すように、スルーホールランド601の周の一部分と接続する構成を採用する。これにより、余剰ハンダは補助ランド605上に流入し、プリント配線板状に余剰ハンダ拡散するのを防止することができる。
【0051】
そのようなスルーホールランド601に補助ランド605を設置した構成に対し、図4Bの下側の図に示す改良された構成では、さらに、スルーホールランド601と補助ランド605の間にハンダの流入抑制部701を設けた構成を示している。流入抑制部701は、例えば、シルク印刷により形成することができる。この例においては、スルーホールランド601と補助ランド605の厚みは同一としている。
【0052】
この流入抑制部701は、スルーホールランド601上にハンダが溶け出しスルーホール内を充填し、電子部品の端子とスルーホールとのハンダ付が確実に行われる程度のハンダ量になるまでは、ハンダをスルーホールランド601に貯留させてハンダの流出を抑制し、確実にハンダをスルーホール112内に充填させる。そして、スルーホールランド上に必要以上のハンダが溶け出した状態、すなわち余剰ハンダが発生した状態になれば、その余剰ハンダを補助ランド605上に流出させるようにする(余剰ハンダの流出を許容する)機能を有している。なお、この流入抑制部701は、この例では直線状の形状としたが、湾曲状や,その他の形状であっても良い。例えば、流入抑制部701を、補助ランド605先端側に凸状となるような形状に形成すれば、余剰ハンダをより円滑に補助ランド605側に流入させることができる。
【0053】
図4Cには、スルーホール112を上方から見た平面図(上側の図)と断面図(下側の図)を示す。断面図は、上面図の1点鎖線801の範囲で矢印802の方向から見た図である。なお、プリント配線板においてハンダ付けしない場所(エリア)は全てソルダーレジスト901を塗布している。
【0054】
図4Cの断面図中、流入抑制部701と基材上に塗布されたソルダーレジスト901がある。通常、ソルダーレジスト901の厚みと補助ランド605、流入抑制部701の厚みの関係は、「補助ランド605の厚み+流入抑制部701の厚み < ソルダーレジスト901の厚み」となる。
【0055】
図4Dは、図4Aにおいてスルーホール112に電子部品401の電極端子402を挿入し、人手作業でハンダ付けを行った場合の図を示している。図4Dの上側の図は上面から見た平面図であり、下側の図はその断面図を示している。
【0056】
図4Dにおいて、スルーホールランド601に溜まったハンダ303は、流入抑制部701の厚みを超えたとき(余剰ハンダが発生したとき)、流入抑制部701を越えて補助ランド605側へ流れる。これにより、補助ランド605への余剰ハンダの流入を許し、余剰ハンダが周辺に拡散することを防ぐ。
【0057】
なお、この実施例1では、ハンダ鏝を当てるA面201側にのみスルーホールランドに補助ランド605を設置しているが、B面202側にも同様の補助ランドを設置してもよい。また、スルーホール112をスルーホールから面実装用の片面ランドに置き換えても良い。また、この実施例では、4層プリント配線板を例にしているが、多層に積層されたプリント配線板や2層プリント配線板でも良い。また、流入抑制部701は、シルク印刷に限らず、ハンダの侵入を防ぐことが可能な材料を使用して任意の方法で形成してもよい。
【0058】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。図5は、本発明の実施例2を説明するための図であり、実施例1の図4Dに対応する図である。図5において、上側の図はスルーホール112の上面から見た平面図であり、下図は平面図の1点鎖線801の断面を示す断面図であり、矢印802の方向から見た断面図である。
【0059】
まず、図5における符号の内、実施例1における符号と同じ符号の部材は同一の部材であり、それらの部材についての説明は省略する。なお、図5において、プリント配線板の表面においてハンダ付けを行わないエリアには、全てソルダーレジスト901を塗布している。
【0060】
外層面(ハンダ付け面)のスルーホールランド601には、補助ランド605を追加(設置)した構成となっている。この点は実施例1の場合と同じである。この構成により、補助ランドの面積が増大した分、余剰ハンダを十分に補助ランド上に流すことができる。それにより、余剰ハンダがスルーホールランドから拡散することを抑制することができる。
【0061】
実施例2では、図5から明らかなように、スルーホールランド601と補助ランド605の間には、流入抑制部として機能する線状の細幅ソルダーレジスト902が塗布された構成となっている。つまり、この構成により、余剰ハンダが生じた場合に、細幅ソルダーレジスト902を超えて余剰ハンダが補助ランド605に流入するのを許容する流入抑制部を形成している。
【0062】
そして、更に、この細幅ソルダーレジスト902は、中央部にてソルダーレジストを塗布しない細幅の案内部803を設けている。この構成により、スルーホールランド601上に発生した余剰ハンダを、確実かつ円滑に補助ランド605側に流す(案内する)ことができる。
案内部803のスペース寸法はプリント配線板製造上のソルダーレジストが間隙できる限界値100~80μ程度とする。
【0063】
このような構成にすることにより、スルーホールランド601にハンダ303が所定量以上溜まり、余剰ハンダが発生すると、案内部803に導かれ、余剰ハンダはソルダーレジスト902を越えて補助ランド605側へ円滑に流れる。これにより余剰ハンダの拡散を抑制することができる。
【0064】
なお、この実施例2では、ハンダ鏝302を当てるA面201側にのみ補助ランド605を追加し、スルーホールランド601の余剰ハンダを受け入れるようにした構成にしているが、B面202側にも同様に補助ランドを追加する構成にしてもよい。また、スルーホール112をスルーホールから面実装用の片面ランドに置き換えても良い。また、実施例2では4層プリント配線板を例にしているが、より多層に積層されたプリント配線板や2層プリント配線板でも適用してよい。また、流入抑制部は、ソルダーレジストに限らず、ハンダの侵入を防ぐ材料(金属、部品も含)を使用して形成してもよい。
【0065】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3について説明する。図6は、本発明の実施例3を説明するための図であり、実施例1における図4Dに対応する図である。図6において、上側の図はスルーホール112の上面から見た平面図であり、下側の図はその断面図である。
【0066】
まず、図6における符号の内、実施例1および実施例2における符号と同じ符号の部材は同一の部材であり、それらの部材についての説明は省略する。
【0067】
実施例3では、実施例1と同じように、ハンダ鏝を当てるA面201側のランドは、スルーホールランド601に、補助ランド605と流入抑制部701とを設置した構成になっている。
【0068】
そして、実施例3(図6)の場合は、B面202側にも補助ランド605を設ける。このとき、B面202側の補助ランドには流入抑制部は設けていない。さらに、補助ランド605内に、補助スルーホール121を追加配置している。
【0069】
このような構成において、スルーホールランド601上のハンダが過剰となり,余剰ハンダが発生した場合、補助ランド605側へ過剰分のハンダが流れる。しかし、余剰ハンダの量が多量となり、補助ランド605上に余剰ハンダを十分貯留することができない場合が考えられる。そのような場合、この実施例3に示すように、補助ランド605のエリア内に補助スルーホール121を設けておけば、補助ランド605に流入した余剰ハンダの一部を補助スルーホール121の穴へ流すことができる。なお、この実施例3では、1個の補助スルーホール121を設けた例を示しているが、補助スルーホールは複数個設けても良い。なお、補助スルーホール121は、補助ランドのエリア内に設けられる必要はあるが、その径の大小は問わない。
【0070】
なお、スルーホール112をスルーホールから面実装用の片面ランドに置き換えても良い。また、スルーホール112は複数個設けても良い。また、実施例3では、4層プリント配線板の例を示しているが、それ以外の多層に積層されたプリント配線板でもよい。
【0071】
(その他の実施例)
以上、本発明を具体的な実施例により説明したが、本発明は上述した実施例に限定されるものではない。すなわち、本発明は、プリント配線板の表面層のスルーホールの一部と接続または近接して補助ランドを設けて余剰ハンダの拡散を抑制することを実現するような構成であれば種々の変形した構成も含む。例えば、上記した各実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明が、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を、他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0072】
101…穴、102…スルーホール、103~106…スルーホールランド、112…スルーホール、113…スルーホール、114…スルーホール、121…補助スルーホール、201…外層面(A面)、202…外装面(B面)、203~205…基材、301…ドリル、302…ハンダ鏝、303,304…ハンダ、401…電子部品、402…電極端子、601…スルーホールランド、602…スルーホールランド、605…補助ランド、701…流入抑制部、803…案内部、901…ソルダーレジスト、902…細幅ソルダーレジスト
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6